(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032439
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】レーザー血流計用プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138570
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000126757
【氏名又は名称】株式会社アドバンス
(72)【発明者】
【氏名】大内 俊治
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋
(72)【発明者】
【氏名】今井 和貞
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AC26
(57)【要約】
【課題】光ファイバープローブを用いるレーザー血流計の光ファイバープローブをより小さくして患者の負担を低減すると共にレーザー伝達経路での減衰を少なくする。
【解決手段】
レーザー光を生体皮膚表面に照射する照射部と、前記照射部から照射されたレーザー光が生体内部で反射した反射した反射光を受光する受光部をそれぞれ光ファイバー端部で構成したレーザー血流計用プローブにおいて、
光ファイバーの前記端部近傍を光ファイバーを プローブの底面に対し垂直方向を0°とした場合の10°~30°の角度で曲げた状態で照射部と受光部を一体的に形成することで、薄く小型化したプローブ及び2つの光ファイバーを並行移動による接続により接触接続することで、ずれを無くしたコネクタ構造体を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を生体皮膚表面に照射する照射部と、前記照射部から照射されたレーザー光が生体内部で反射した反射光を受光する受光部をそれぞれ光ファイバー端部で構成したレーザー血流計用プローブにおいて、
前記光ファイバーを光ファイバーを プローブの底面に対し垂直方向を0°とした場合の10°~ 30°の角度で曲げた屈曲部を有するレーザー血流計用プローブ。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記プローブの照射部と受光部の端部に近い部位の光ファイバーに形成してなる請求項1に記載のレーザー血流計用プローブ。
【請求項3】
前記プローブの厚みが3.5mm~8mmである請求項1に記載のレーザー血流計用プローブ。
【請求項4】
光ファイバーを用いたレーザー血流計の光ファイバー同士の接合が、摺動移動による接触接合であるレーザー血流計用プローブ。
【請求項5】
レーザー光を生体皮膚表面に照射する照射部と、前記照射部から照射されたレーザー光が生体内部で反射又は透過した反射光又は透過光を受光する受光部をそれぞれ光ファイバー端部同士が接触固定する請求項4に記載のレーザー血流計用プローブ。
【請求項6】
前記光ファイバーを構成するコアとクラッドの組み合わせの直径が125nm~250mmである請求項4,5に記載のレーザー血流計用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー血流計用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー血流計は、生体に侵襲することなく、比較的、皮膚から浅い部分の血流を測定することができる装置であり、レーザー血流計の装置内に、レーザー発光ダイオード等の光源を持ち、集光させた後、光ファイバー等で形成されるリード線状の導光路を介して、生体表面や、生体組織にレーザー光を照射して、その反射光を受光するものや、プローブに光ファイバー等の導光路を用いず、レーザーダイオード及び受光用光ダイオードの組み合わせを用いるレーザー血流計も出てきており、小型化によりウェアラブルな健康機器にも使用されている。
【0003】
光ファイバーを用いる場合は、生体へのレーザー光を照射、受光するプローブを小型化、簡素化でき、取り扱いが簡便である。
又、レーザー血流計を生体皮膚表面に長時間装着して血流測定を行う試みもおこなわれていることから、小型、軽量で患者に負担を与えない形態が好ましい。
【0004】
特開平2-203838号公報では、光ファイバーのレーザー光照射部にプリズムを配置して照射角度を調整した構成が示され、特開平7-250862号公報には、レーザー光照射部に反射板等を配置したものや、直角に折り曲げたもの等が示されているように、光路の変更を行う構成を持つものである。
特開2018-138173号公報は、光ファイバー内を通過するレーザー光の進路方向を変更させる反射板付きキャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-203838号公報
【特許文献2】特開平7-250862号公報
【特許文献3】特開2018-138173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した先行技術で示すプリズムや反射板を使用する場合、プリズムや反射板と光ファイバーの接触界面でレーザー光の乱反射等により減衰が生じる。減衰を受けると、低出力のレーザー光を用いるレーザー血流計では、正確なデータの取得に影響を与える場合がある。そこで、なるべくレーザー光の減衰を抑える為には、ファイバー端末をインターフェースに用いることが好ましく、光ファイバー端部を、生体皮膚に長時間装着できる構成が求められる。
【0007】
生体に光ファイバーの端部を直接使用し、生体皮膚に長時間装着使用するプローブを形成するには、直角に曲げる構成が提案されている。
特開平2-203838号公報には、光ファイバーを端部で折り曲げた構成が従来技術として示されているが、このように端部で光ファイバーを直角に曲げる構成とするには、光ファイバーの製造に特別な仕様が必要となり、製作に費用がかかる。
【0008】
光ファイバーを直角に折り曲げる場合、例えば、
図3で示すように光ファイバーコア32の周囲を光ファイバーコアと同様の材質で形成される被覆する部分(クラッド)33の厚み、硬さ等の影響から端部からある程度余裕を持ったところで、光ファイバーコア32とクラッド33を直角に折り曲げることとなり、プラスチック、金属で形成されるプローブ本体31は、ある程度厚みt2が必要になる。
この厚みt2により、皮膚への安定的な装着には、レーザー血流計から延びた光ファイバーケーブル34の重みを考慮するなどして、生体に巻き付ける専用の固定具を使用したり、使用時は患者に行動を制限するなど負担が大きくなる。
【0009】
また、取り扱うレーザー光は、人間にとって、影響が少ない低出力であることから、コネクタ部品など光ファイバー同士の接触による接合面における減衰は、なるべく小さくすることが好ましい。
光ファイバーの端部同士を接触接続するコネクタを形成する場合は、実際規格部品にも備わる歪み、品質のばらつき、コネクタの接触接続構造も問題となる。
【0010】
例えば、
図4に従来例として光ファイバー同士を接続するコネクタを示す。
図4に示す光ファイバー接合コネクタは、凸側を回転させながら凹側と接合して両者を結合する構成を示す。
その際、光ファイバーの断面の微小な歪みや、回転部分の機械的な遊び等により、その接合面に微小なずれ4aが生じる場合がある。
【0011】
具体的には、
図4において、41は、円筒状の凹側コネクタであって、42は、光ファイバーコア、43は、クラッド被覆層であり、レーザー光出力用又はレーザー光受光用の何れか又は両方であり、コネクタ中央に配置され端部421が表出している。
44は、凸側コネクタ挿入部であり、内周には、凸部50を誘導挿入する為に長軸方向に直線状に形成された溝誘導路49とこの誘導路49に接続し、内周に長軸方向に向かって180度らせん状の溝部45が形成されている。
46は、円筒状の凸側コネクタであり、中心に光ファイバーコア47が配置され、その周囲に被覆部(クラッド)48が形成されており、光ファイバーコア47の端部471は、表出している。凸側コネクタ46の外周には、突起50が形成されている。
【0012】
凸側コネクタ46を凹側コネクタ41に挿入して結合する際、凸側コネクタの外周の突起50を凸側コネクタ挿入部44の内側に設けられた誘導路49に沿って挿入し、らせん状の溝部45へ到達した後、らせん状の溝部45に沿って180度回動させながら移動させることで、光ファイバーコア47の端部471と光ファイバーコア42の端部421が接触接合するが、その際、回転むら等により接合面にずれ4aが生じ、伝達されるレーザー光の漏れによる減衰が生じ、ノイズの原因になる等、データの安定した伝達が損なわれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記に鑑み本発明は、レーザー光を生体に照射し、生体皮膚表面近傍の血管で反射した反射光又は透過光を受光する皮膚に接触又は非接触型のプローブと、このプローブと本体を接続する光ファイバーの組み合わせによるレーザー血流計において、
前記光ファイバーを所定角度(プローブの底面(光ファイバーの入出力端面が表出している面、以下同じ)に対し垂直方向を0°とした場合の角度10° ~30°好ましくは20°前後)に屈曲させて配置することにより、安定した受光データが得られながら、プローブの厚みを小さくすることができる。
又、当該角度の範囲であれば、レーザー光の損失が少なく、直角に折り曲げた場合と(同様7~9割程度)の生体へのレーザー光の照射及び、生体で反射したレーザー光の受光を可能とする。
【0014】
尚、皮膚に非接触で使用するプローブについては、レーザー光を皮膚へ照射する端部等に偏光板を装着して使用する場合もある。
又、レーザー血流計の光ファイバー同士を接続するコネクタに、光ファイバーを摺動、挿入等の平行移動による端部同士を接合するコネクタを用いることで、光の減衰がなく、しかも患者の負担が小さいレーザー血流計用プローブを実現するものである。
【0015】
本発明では、レーザーを生体に照射し、生体から反射又は透過したレーザー光を受光する医療機器であって、光ファイバーを分離、結合するコネクタ構造であれば、適用可能である。
本発明における光ファイバー端部同士の摺動接続とは、光ファイバー同士が接触接続する時点で両光ファイバーを同軸上で平行に移動させ接触させることであり、接続は、押す接続、引く接続の他、少なくとも同軸上で回動接触接続以外の平行接続であればよい。
本発明において用いられる光ファイバーコアの口径は50μm~100μm、被覆の厚みは200μm~1000μmが例示され、曲げ角度は、プローブの底面に対し垂直方向を0°とした場合の10°~30°が好ましく、特に20°前後が好ましい。
又、用いられるレーザー光の波長は、350nm ~850nm で出力は、1mW~5mWで好ましくは4mW、が例示される。
尚、本発明でしめすコネクタ構造は、光ファイバー端部同士の接触接続でなく、偏光板等を介在した場合もある。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、プローブ内部の光ファイバーをプローブの底面に対し垂直方向を0°とした場合の10°~30°の角度、半径を3mm~7mmで折り曲げることで、薄く全体で小型化されたプローブが形成でき、患者に負担が無く、バンデージ等で固定容易可能なレーザー血流計用プローブが形成できる。
当該プローブを用いて得られるデータは、データとして歪みが無く、正確なデータが得られる。
又、平行移動による接触接続を行う光ファイバー接続構成により、ズレのない接触界面を形成することでレーザー光の減衰を最小限に抑えたコネクタ構造体が形成でき、出力が限られたレーザー光の利用が可能になり、より低電力でしかも精度が高い計測装置が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、光ファイバーの端部をインターフェースとして用いるレーザー血流計用プローブにおいて、光ファイバーを プローブの底面に対し垂直方向を0°とした場合の10°~30°の角度で屈曲させることで、薄く小さいプローブが形成可能となることから、患者に負担が少ない長時間の装着を可能とする。
当該プローブの高さt1は、光ファイバーのコア径にもよるが、例えば、コア径 50 nm~ 100 mmで、屈曲部の半径Rが3.5nm ~8.0mmの光ファイバーとし、プローブの皮膚との接触する面の直径をφ5mm~30mmとした場合、3.5mmから8mmで形成可能である。
更に、光ファイバー同士の接続を平行移動による接続構成を備えたコネクタとすること
で、レーザー光の減衰を抑えた接続具が形成できる。
光ファイバーを所定の角度で屈曲させた血流計用プローブと、光ファイバー同士の接続を平行移動による接続構成を備えたコネクタは、1つの光ファイバーケーブルを利用してプローブを形成する場合に両方の構成を用いてもよい。
又、光ファイバーを所定の角度で屈曲させた血流計用プローブと、光ファイバー同士の接続を平行移動による接続構成を備えたコネクタの一方の構成を用いたレーザー光学計測用プローブ又は医療用レーザー機器のコネクタを形成するものであっても良い。
【実施例0019】
光ファイバーを用いた血流計用プローブ
本発明の一実施例を
図1を参照して詳細に説明する。
図1において、
図1(a)は、プローブ10を底面から見た図であり、
図1(b)は、
図1(a)の側面であってx-x’の断面図である。
11は、筐体であり、その内部に例えば石英ガラスの光ファイバーを配置し、生体の測定部位に、プローブの外観を形成するものであって、ステンレス,ABS、POM、シリコン等の金属、プラスチックで形成され、内部を屈曲した部位を示す屈曲部A15、屈曲部B16を有する光ファイバーコアA12及び被覆クラッドA122、光ファイバーコアB13及び被覆クラッドB132が配置形成されている。
【0020】
12は、光ファイバーコアAであり、光ファイバーを構成するコアの部分を示し、周囲に石英ガラス等で形成された被覆部(クラッド)、更にその外周に紫外線硬化性樹脂等によって形成された保護層としての1次被覆等の多重被覆状態で形成された被覆クラッドA122を形成し、レーザー光源(図示せず)から出力したレーザー光を外部へ伝達するものであり、出力端部121は、レーザー光出力端部を形成する。
13は、光ファイバーコアBであり、光ファイバーを構成するコアの部分を示し、光ファイバーコアA12と同様の材料で形成され、更に光ファイバーコアB13と同じ材料で形成したクラッドと一次被覆層等の保護層の組み合わせを示す被覆クラッドB132を有し、出力端部121から出力されたレーザー光が生体で反射した反射戻り光を受光する受光端部131を形成している。
【0021】
被覆クラッドA122、被覆クラッドB132は、周囲の筐体が一次被覆層、2次被覆層等の保護層を兼ねる場合は、クラッドのみの場合もある。
121は、出力端部であり、光ファイバーコアA12を伝達してきたレーザー光を生体表面に照射する部分であり、筐体11の底面は、凹凸がなく一体化した平面となるよう形成されるが、測定部位等によっては、出力端部121と受光端部131の間でレーザー光が皮膚表面に沿って伝達しないように連続した突起を設ける場合もある。
131は、受光端部であり、生体内で反射した反射光を受光し、光ファイバーコアB13へ伝達する為のもので筐体11の底面に対し凹凸がなく一体化した面を形成している。
図中、被覆クラッドA122、被覆クラッドB132が、筐体11の底面から表出しているが、一例であり、クラッドを表出させない場合もある。
出力端部121と受光端部131との距離は、0.25nm~2mmが例示される。
【0022】
光ファイバーコアA12、光ファイバーコアB13は、それぞれ周囲に石英ガラス、他成分ガラス、からなるクラッド及び保護層が形成される。
保護層は、筐体11で代用される場合は、不要になる場合もある。
14は、光ファイバーケーブルであって、光ファイバー(光ファイバーコアA12、光ファイバーコアB13を含む)を束ねたものであり、1つの樹脂製チューブに収容されている場合もある。
15は、屈曲部A、16は屈曲部Bであり、それぞれ角度17(筐体11の底面に対して垂直方向を0°とした場合の10°~30°)の範囲で屈曲している。この屈曲部の角度(半径Rが3mmから7mmとなる)は、生体へのレーザー照射と受光に対し、
図3で示すような従来タイプと変わらない効率で、レーザー光の送受光を行うことができる。
【0023】
図1で示すプローブ10は、例えば、厚みt1が3.5~8mmであって、直径φ5~30mmで示され、厚みが小さく、小型で薄く形成可能であり、生体の様々な計測部位の表面に接触、又は非接触状態で当接され、上部からサージカルテープ等の粘着テープで固定されて使用される。
尚、光ファイバーケーブル14が、四肢等で固定される場合等は、筐体11の底面部に粘着層が形成されて、自己貼着状態が形成されても良い。
筐体11のレーザー血流計(図示せず))から出力されたレーザー光を光ファイバーコアA12を伝達して、出力端部121から出力される。出力端部121から照射されたレーザー光は、生体の皮膚の比較的浅い毛細血管部位で反射した反射光を受光端部131で受光し、光ファイバーコアB13、光ファイバーケーブル14を介してレーザー血流計へ伝達する。
コネクタA21において、211は、光ファイバーコアAであり、光ファイバーコアAと同様の材料で形成された被覆クラッドA212が周囲に形成されている。213は、コネクタB挿入部であって、例えばコネクタA21とコネクタB22と対向する側に、コネクタB挿入部213が中空の円筒体で形成され、中空体内の途中には、係止用孔214が形成されている。コネクタB挿入部213は、コネクタA21が挿入後、そのまま平行に移動(摺動)できるようなガイド機構を有している。
214は、係止用孔であり、コネクタB22の係止用突起224がバネ部材226の上方への復元力により押し上がってきて係止状態が形成され、コネクタB22がコネクタA内21で係止固定する為のものである。
215は、光ファイバーコアA211の一方の端部Aを示す。
216は、コネクタA筐体であり、ステンレス、ABS、POM、シリコンで形成されており、例えば、レーザー血流計のフロント操作表示パネルのプローブ装着部に使用される。
コネクタA筐体216は、内部に光ファイバーコアA211及び被覆クラッドA212を収容しているが、更に光ファイバーを構成する保護層を備えている場合もある。
22は、コネクタBであり、プラグを形成し、例えばレーザー血流計用のプローブを一端に接続した光ファイバーコアB221の他端に形成されるものである。
221は、光ファイバーコアBであり、光ファイバーコアA211と同一の断面積、同一材料で形成されている。222は、被覆クラッドBであり、被覆クラッドA212と同一の断面積で、同一素材で形成されている。
被覆クラッドB222は、光ファイバーコアB221と同様の部材で形成され、光ファイバーコアB221の周囲を被覆したものである。被覆クラッドB222は、単層又は多重層で形成されている。
光ファイバ-コアB221のコネクタA21側には端部B225が形成されている。
223は、係止用支持体であり、板状で形成され、一端が筐体B227に固定され、他端には、係止用突起224が形成されており、更に係止用支持体223は、この係止用突起224を光ファイバーコアB221から外側方向へ押圧する様な弾力構造を有している。