(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032457
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】人体シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G09B 23/32 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G09B23/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138600
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】大島 崇司
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】人体シミュレーション装置において、臓器モデルのX線画像を実際の臨床像に近づけると共に、装置の操作性を向上させる。
【解決手段】人体シミュレーション装置は、臓器の外形を模擬し内部に液体を収容可能な空間である液体収容部を有する臓器モデルと、気体と液体を分離して収容する内部空間を有する気液分離槽と、気液分離槽に気体を供給し、気液分離槽に収容されている気体を吸引する気体供給吸引装置とを備える。気液分離槽と臓器モデルの液体収容部とは気液分離槽内に収容されている液体を流通させる連通部材により接続されており、気液分離槽に気体が供給された時、気体の量に応じた量の液体が気液分離槽から液体収容部に供給されることにより臓器モデルが拡張し、気液分離槽から気体が吸引された時、気体の量に応じた量の液体が液体収容部から気液分離槽へと吸引されることにより臓器モデルが収縮する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体シミュレーション装置であって、
臓器の外形を模擬し、内部に液体を収容可能な空間である液体収容部を有する臓器モデルと、
気体と液体を分離した状態で収容する内部空間を有する気液分離槽と、
前記気液分離槽の前記内部空間に気体を供給し、または、前記気液分離槽の前記内部空間に収容されている気体を吸引する気体供給吸引装置と、
を備え、
前記気液分離槽の前記内部空間と、前記臓器モデルの前記液体収容部とは、前記気液分離槽内に収容されている液体を流通させる連通部材により接続されており、
前記気体供給吸引装置から前記気液分離槽に気体が供給された時、供給された気体の量に応じた量の液体が前記気液分離槽から前記液体収容部に供給されることにより、前記臓器モデルが拡張し、
前記気体供給吸引装置によって前記気液分離槽から気体が吸引された時、吸引された気体の量に応じた量の液体が前記液体収容部から前記気液分離槽へと吸引されることにより、前記臓器モデルが収縮する、人体シミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の人体シミュレーション装置であって、
前記気液分離槽は、
前記気液分離槽の前記内部空間を、気体を収容するための第1空間と、前記第1空間よりも鉛直方向下側に位置し、液体を収容するための第2空間とに区画する区画部材を備え、
前記第1空間と外部とを連通する第1開口と、前記第2空間と外部とを連通する第2開口とを有し、
前記第1開口を介して前記気体供給吸引装置と接続され、前記第2開口を介して前記臓器モデルの前記液体収容部と接続されている、人体シミュレーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載の人体シミュレーション装置であって、
前記区画部材は、前記第1空間に面した第1主面と、前記第2空間に面した第2主面とを有する平板状であり、
前記区画部材には、さらに、前記第1主面と前記第2主面とを貫通する貫通孔が形成されている、人体シミュレーション装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の人体シミュレーション装置であって、さらに、
前記気体供給吸引装置による気体の供給量及び供給時間と、前記気体供給吸引装置による気体の吸引量及び吸引時間と、を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽への第1所定量の気体の供給を第1所定時間かけて行わせた後、前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽からの第2所定量の気体の吸引を第2所定時間かけて行わせる動作を繰り返し、
前記制御装置の起動後において、前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽への気体の供給を初めて行う場合は、前記気液分離槽への前記第1所定量の気体の供給を、前記第1所定時間よりも長い第3所定時間をかけて行わせる、人体シミュレーション装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の人体シミュレーション装置であって、
前記臓器モデルは、心臓の外形を模擬した心臓モデルであり、
前記気体供給吸引装置と前記気液分離槽とは、前記心臓モデルを拡張及び収縮させることにより、前記心臓モデルの拍動を模擬する拍動部として機能する、人体シミュレーション装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の人体シミュレーション装置であって、
前記臓器モデルは、横隔膜の外形を模擬した横隔膜モデルであり、
前記気体供給吸引装置と前記気液分離槽とは、前記横隔膜モデルを拡張及び収縮させることにより、呼吸動作に伴う前記横隔膜モデルの動きを模擬する呼吸動作部として機能する、人体シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
循環器系や消化器系等の生体管腔内への低侵襲な治療または検査のために、カテーテル等の医療用デバイスが使用されている。例えば、特許文献1には、医師等の術者が、これらの医療用デバイスを用いた手技を模擬することが可能な心臓シミュレータが開示されている。特許文献1に記載の心臓シミュレータでは、相互に独立した複数の心室を有する心臓モデルと、心臓モデルに対する流体の供給及び排出を行う流体給排装置とを備え、心臓モデルの各心室に対して流体の供給及び排出を行うことにより、心臓モデルを拍動させる。また、特許文献2には、収容する液体に気体が混入することを抑制可能な液体容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-276258号公報
【特許文献2】特開2019-1542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、医師等の術者は、心臓モデルや心臓モデル内の医療用デバイスの挙動を確認しつつ手技をするために、心臓モデルのX線画像を取得し、当該X線画像を確認しつつ手技を行う。しかし、特許文献1に記載の心臓シミュレータにおいて、流体として空気等の気体を使用した場合、心臓モデル内に充填された空気がX線画像上で白く映り込み、実際の臨床像とかけ離れたX線画像が得られるという課題があった。また、特許文献1に記載の心臓シミュレータにおいて、流体として水等の液体を使用した場合、実際の臨床像に近いX線画像が得られる一方で、水漏れを伴わずに、流体給排装置における液体の制御を行うことが容易ではなく、操作性に劣るという課題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術では、液体を心臓モデルの拍動に利用することについて、何ら考慮されていない。なお、このような課題は、心臓モデルの拍動を再現する場合に限らず、呼吸動作に伴う横隔膜モデルの動きを模擬する場合や、呼吸動作に伴う肺モデルの動きを模擬する場合等、人体の臓器モデルに共通する課題であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、人体シミュレーション装置において、臓器モデルのX線画像を実際の臨床像に近づけると共に、装置の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、人体シミュレーション装置が提供される。この人体シミュレーション装置は、臓器の外形を模擬し、内部に液体を収容可能な空間である液体収容部を有する臓器モデルと、気体と液体を分離した状態で収容する内部空間を有する気液分離槽と、前記気液分離槽の前記内部空間に気体を供給し、または、前記気液分離槽の前記内部空間に収容されている気体を吸引する気体供給吸引装置と、を備える。前記気液分離槽の前記内部空間と、前記臓器モデルの前記液体収容部とは、前記気液分離槽内に収容されている液体を流通させる連通部材により接続されており、前記気体供給吸引装置から前記気液分離槽に気体が供給された時、供給された気体の量に応じた量の液体が前記気液分離槽から前記液体収容部に供給されることにより、前記臓器モデルが拡張し、前記気体供給吸引装置によって前記気液分離槽から気体が吸引された時、吸引された気体の量に応じた量の液体が前記液体収容部から前記気液分離槽へと吸引されることにより、前記臓器モデルが収縮する。
【0009】
この構成によれば、液体が気液分離槽から液体収容部に供給されることにより臓器モデルが拡張し、液体が液体収容部から気液分離槽へと吸引されることにより臓器モデルが収縮する。すなわち、臓器モデルの拡張及び収縮のために、臓器モデルの液体収容部には水や生理食塩水等の液体が充填されるため、空気等の気体が充填される場合と比較して、X線画像上で白く写りこむことを抑制し、臓器モデルのX線画像を実際の臨床像に近づけることができる。また、気体供給吸引装置から気液分離槽に気体が供給された時、供給された気体の量に応じた量の液体が気液分離槽から液体収容部に供給され、気体供給吸引装置によって気液分離槽から気体が吸引された時、吸引された気体の量に応じた量の液体が液体収容部から気液分離槽へと吸引される。すなわち、気液分離槽による液体の供給及び吸引は、気体供給吸引装置による気体の供給及び吸引に応じて行われる。このため、気体供給吸引装置においては、水漏れを伴わずに気体の制御を行うことができ、人体シミュレーション装置の操作性を向上できる。
【0010】
(2)上記形態の人体シミュレーション装置において、前記気液分離槽は、前記気液分離槽の前記内部空間を、気体を収容するための第1空間と、前記第1空間よりも鉛直方向下側に位置し、液体を収容するための第2空間とに区画する区画部材を備え、前記第1空間と外部とを連通する第1開口と、前記第2空間と外部とを連通する第2開口とを有し、前記第1開口を介して前記気体供給吸引装置と接続され、前記第2開口を介して前記臓器モデルの前記液体収容部と接続されていてもよい。
この構成によれば、気液分離槽は、気液分離槽の内部空間を、気体を収容するための第1空間と、液体を収容するための第2空間とに区画する区画部材を備え、気液分離槽は、第1空間と外部とを連通する第1開口を介して気体供給吸引装置と接続され、第2空間と外部とを連通する第2開口を介して臓器モデルの液体収容部と接続されている。このため、気体供給吸引装置から第1空間内に気体が供給された際、区画部材が第1及び第2空間の間に存在することによって、第2空間内の液体にキャビテーションが生じることを抑制できる。また、気体供給吸引装置によって第1空間内の気体が吸引された際、区画部材が第1及び第2空間の間に存在することによって、第1空間内に液体が浸入することを抑制できる。この結果、人体シミュレーション装置の操作性をより一層向上できる。
【0011】
(3)上記形態の人体シミュレーション装置において、前記区画部材は、前記第1空間に面した第1主面と、前記第2空間に面した第2主面とを有する平板状であり、前記区画部材には、さらに、前記第1主面と前記第2主面とを貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
この構成によれば、区画部材は、第1空間に面した第1主面と、第2空間に面した第2主面とを有する平板状であるため、第2空間内の液体に対して気泡が混入すること、及び、第1空間内に液体が浸入することを効果的に抑制できる。また、第2空間は第1空間よりも鉛直方向下側に位置すると共に、区画部材には第1主面と第2主面とを貫通する貫通孔が形成されている。このため、第1空間内に供給された液体を、区画部材の貫通孔を介して第2空間へと誘導できる。
【0012】
(4)上記形態の人体シミュレーション装置では、さらに、前記気体供給吸引装置による気体の供給量及び供給時間と、前記気体供給吸引装置による気体の吸引量及び吸引時間と、を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽への第1所定量の気体の供給を第1所定時間かけて行わせた後、前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽からの第2所定量の気体の吸引を第2所定時間かけて行わせる動作を繰り返し、前記制御装置の起動後において、前記気体供給吸引装置による前記気液分離槽への気体の供給を初めて行う場合は、前記気液分離槽への前記第1所定量の気体の供給を、前記第1所定時間よりも長い第3所定時間をかけて行わせてもよい。
この構成によれば、制御装置は、気体供給吸引装置による気液分離槽への第1所定量の気体の供給を第1所定時間かけて行わせた後、気体供給吸引装置による気液分離槽からの第2所定量の気体の吸引を第2所定時間かけて行わせる動作を繰り返すため、臓器モデルを規則的に拡張及び収縮させることができる。また、制御装置は、制御装置の起動後において、気体供給吸引装置による気液分離槽への気体の供給を初めて行う場合は、気液分離槽への第1所定量の気体の供給を、第1所定時間よりも長い第3所定時間をかけて行わせるため、急激な拡張に伴う臓器モデルの破損を抑制できる。
【0013】
(5)上記形態の人体シミュレーション装置において、前記臓器モデルは、心臓の外形を模擬した心臓モデルであり、前記気体供給吸引装置と前記気液分離槽とは、前記心臓モデルを拡張及び収縮させることにより、前記心臓モデルの拍動を模擬する拍動部として機能してもよい。
この構成によれば、拍動する心臓モデルを有する人体シミュレーション装置を提供できる。
【0014】
(6)上記形態の人体シミュレーション装置において、前記臓器モデルは、横隔膜の外形を模擬した横隔膜モデルであり、前記気体供給吸引装置と前記気液分離槽とは、前記横隔膜モデルを拡張及び収縮させることにより、呼吸動作に伴う前記横隔膜モデルの動きを模擬する呼吸動作部として機能してもよい。
この構成によれば、呼吸動作に伴って動く横隔膜モデルを有する人体シミュレーション装置を提供できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、人体シミュレーション装置、心臓モデルを備える心臓シミュレータ、横隔膜モデルを備える横隔膜シミュレータ、肺モデルを備える肺シミュレータ、これらの装置の制御方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】人体シミュレーション装置の構成を例示した説明図である。
【
図4】気液分離槽の断面構成を例示した説明図である。
【
図5】心臓モデルの拡縮動作について説明する図である。
【
図6】心臓モデルの拡縮動作について説明する図である。
【
図7】心臓モデルの拡縮動作について説明する図である。
【
図8】心臓モデルの拡縮動作について説明する図である。
【
図9】第2実施形態の気液分離槽の構成を例示した説明図である。
【
図10】第3実施形態の気液分離槽の構成を例示した説明図である。
【
図11】第4実施形態のモデルの構成を例示した説明図である。
【
図12】第5実施形態の人体シミュレーション装置の構成を例示した説明図である。
【
図13】第5実施形態のモデルの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、人体シミュレーション装置1の構成を例示した説明図である。本実施形態の人体シミュレーション装置1は、人体の循環器系、消化器系、呼吸器系等の生体管腔内に対する、カテーテルやガイドワイヤ等の、低侵襲な治療または検査のための医療用デバイスを用いた治療または検査の手技を模擬するために使用される装置である。人体シミュレーション装置1は、モデル10と、水槽21と、濾過フィルタ23と、ポンプ24と、制御装置30と、拍動部40と、呼吸動作部50と、脈動部60とを備えている。
【0018】
図2は、モデル10の構成を例示した説明図である。
図2に示すように、モデル10は、人体の心臓の外形を模擬した心臓モデル110と、人体の大動脈の外形を模擬した大動脈モデル160と、人体の横隔膜の外形を模擬した横隔膜モデル170とを備えている。以降、心臓モデル110及び横隔膜モデル170を「臓器モデル」とも呼ぶ。モデル10の詳細は後述する。なお、
図2では、液体22(模擬血液)が流通する部分をドットハッチングで表し、心臓モデル110及び横隔膜モデル170の拡張/収縮用の液体が流通する部分を斜線ハッチングで表す。
【0019】
水槽21は、上部が開口した略直方体状の水槽である。
図1に示すように、水槽21の内部に液体22を満たした状態で、水槽21の底面にモデル10が裁置されることで、モデル10が液体22内に没する。これにより、モデル10を実際の人体と同様に湿潤状態に保つことができる。なお、液体22としては、水、生理食塩水、任意の化合物の水溶液等を採用できる。水槽21に充填された液体22は、大動脈モデル160の内部に取り込まれ、血液を模擬した模擬血液として機能する。なお、水槽21にはさらに、液体22の表面を覆う波消し板が設けられていてもよい。波消し板を用いれば、液体22の表面に生じる波打ちを抑制し、モデル10の視認性を向上できる。水槽21及び波消し板は、X線透過性を有すると共に透明性の高い合成樹脂(例えばアクリル樹脂)のほか、任意の材料により形成できる。
【0020】
制御装置30は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、図示しないCPU、ROM、RAM、記憶部、及び入出力インタフェースを備えている。制御装置30は、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、拍動部40、呼吸動作部50、脈動部60、及びポンプ24を制御する(
図1:破線矢印)。制御装置30の入出力インタフェースとしては、任意のデバイス、例えば、タッチパネル、キーボード、操作ボタン、操作ダイヤル、フットスイッチ、マイク、モニタ、インジケータ、スピーカ等を採用できる。
【0021】
拍動部40は、モデル10の心臓モデル110を拡張及び収縮させることにより、心臓モデル110の拍動を模擬する。具体的には、拍動部40は、心臓モデル110内に液体を供給することにより、心臓モデル110を拡張させる。また、拍動部40は、心臓モデル110内の液体を吸引することにより、心臓モデル110を収縮させる。詳細は後述する。呼吸動作部50は、モデル10の横隔膜モデル170を拡張及び収縮させることにより、呼吸動作に伴う横隔膜モデル170の動きを模擬する。具体的には、呼吸動作部50は、横隔膜モデル170内に液体を供給することにより、横隔膜モデル170を拡張させる。また、呼吸動作部50は、横隔膜モデル170内の液体を吸引することにより、横隔膜モデル170を収縮させる。詳細は後述する。
【0022】
濾過フィルタ23は、管状体を介して水槽21に設けられた開口21Oと接続されている。濾過フィルタ23は、濾過フィルタ23を通過する液体22を濾過することで、液体22中の不純物(例えば、手技で使用された造影剤等)を除去する。ポンプ24は、濾過フィルタ23の下流に接続されており、濾過された液体22を一定の流量で循環させる。ポンプ24としては、例えば、非容積式の遠心ポンプを用いることができる。脈動部60は、脈動ポンプを内蔵しており、大動脈モデル160の内腔160L(
図2)に対して脈動を加えた液体22を送出することにより、大動脈モデル160からの血流を模擬する。脈動ポンプとしては、例えば、容積式の往復ポンプや、低速運転させた回転ポンプを用いることができる。
【0023】
図2に示すように、モデル10の心臓モデル110は、人体の心臓の外形を模擬した外形を有している。心臓モデル110の内部には、液体を収容可能な空間である液体収容部R110が設けられている。液体収容部R110は、心臓モデル110のうちの任意の箇所に設けられた開口110aを介して外部と連通している。液体収容部R110は、心臓モデル110のうち開口110aが設けられた位置に取り付けられた第1連通部材41によって、拍動部40(具体的には、
図3で説明する気液分離槽420)と接続されている。第1連通部材41は、内部に第1ルーメン41Lを有する管状部材であり、拍動部40(具体的には気液分離槽420)に収容されている液体を流通させるために用いられる。
【0024】
また、心臓モデル110の外表面には、心臓血管モデル111と、冠動脈モデル112とが設けられている。心臓血管モデル111は、上行大動脈の一部を模した管状の血管モデルである。心臓血管モデル111の近位端は、大動脈モデル160と内腔を連通させた状態で接続されている。心臓血管モデル111の遠位端は、冠動脈モデル112と内腔を連通させた状態で接続されている。冠動脈モデル112は、冠動脈を模した管状の血管モデルである。
図2に示すように、冠動脈モデル112は、右冠動脈を模した管状の右冠動脈モデル112Rと、左冠動脈を模した管状の左冠動脈モデル112Lとを有している。右冠動脈モデル112R及び左冠動脈モデル112Lの遠位端には、各冠動脈モデル112R,Lの内腔と外部とを連通する先端開口112Oが設けられている。
【0025】
モデル10の大動脈モデル160は、人体の大動脈の外形を模擬した外形を有している。大動脈モデル160の内部には、流体を流通させる内腔160Lが設けられている。内腔160Lは、大動脈モデル160のうちの任意の箇所に設けられた開口160aを介して外部と連通している。大動脈モデル160の内腔160Lは、大動脈モデル160のうち開口160aが設けられた位置に取り付けられた第3連通部材61によって、脈動部60(
図2)と接続されている。第3連通部材61は、内部に第3ルーメン61Lを有する管状部材であり、脈動部60から送出される液体22を流通させるために用いられる。具体的には、脈動部60から送出された液体22(模擬血液)は、第3ルーメン61Lを介して大動脈モデル160の内腔160Lを心臓モデル110がある方向に向かって進み、心臓血管モデル111の内腔と、各冠動脈モデル112R,Lの内腔を通じて、先端開口112Oから水槽21内へと排出される。
【0026】
モデル10の横隔膜モデル170は、人体の横隔膜の外形を模擬した外形を有している。横隔膜モデル170の内部には、液体を収容可能な空間である液体収容部R170が設けられている。液体収容部R170は、横隔膜モデル170のうちの任意の箇所に設けられた開口170aを介して外部と連通している。横隔膜モデル170は、横隔膜モデル170のうち開口170aが設けられた位置に取り付けられた第2連通部材51によって、呼吸動作部50と接続されている。第2連通部材51は、内部に第2ルーメン51Lを有する管状部材であり、呼吸動作部50に収容されている液体を流通させるために用いられる。
【0027】
なお、心臓モデル110、心臓血管モデル111、冠動脈モデル112、大動脈モデル160、横隔膜モデル170、第1連通部材41、第2連通部材51、及び第3連通部材61は、X線透過性を有する軟性素材の合成樹脂(例えば、シリコン等)のほか、周知の材料により形成できる。また、第1連通部材41、第2連通部材51、及び第3連通部材61は、X線透過性を有すると共に、シリコン等よりも剛性の高い合成樹脂により形成されていてもよい。心臓モデル110、心臓血管モデル111、冠動脈モデル112、大動脈モデル160、横隔膜モデル170、第1連通部材41、第2連通部材51、及び第3連通部材61は同一の材料により形成されてもよく、異なる材料により形成されてもよい。
【0028】
図3は、拍動部40の構成を例示した説明図である。
図3に示すように、本実施形態の拍動部40は、気体供給吸引装置410と、気液分離槽420とにより構成されている。
【0029】
気体供給吸引装置410は、気液分離槽420に対して気体を供給し、または、気液分離槽420内の気体を吸引する装置である。気体供給吸引装置410は、電動アクチュエータ411と、エアシリンダ412とを有している。電動アクチュエータ411は、エアシリンダ412の内部空間に配置されたピストンを電動で駆動させる装置である。エアシリンダ412は、金属製であり、内部空間にピストンが配置されている。電動アクチュエータ411が
図3のD1方向にピストンを動かすことで、エアシリンダ412の筐体内でピストンにより圧縮された気体が、エアシリンダ412のシリンダ開口410aを介して外部に送出される。また、電動アクチュエータ411が
図3のD2方向にピストンを動かすことで、エアシリンダ412の筐体内で陰圧が生じ、エアシリンダ412のシリンダ開口410aを介して、外部の気体が吸引される。なお、気体供給吸引装置410による気体の供給量及び供給時間と、気体供給吸引装置による気体の吸引量及び吸引時間とは、制御装置30(
図1)によって制御される。
【0030】
図4は、気液分離槽420の断面構成を例示した説明図である。気液分離槽420は、気体と液体とを分離した状態で収容する内部空間R1,R2を有する装置である。
図4に示すように、本実施形態の気液分離槽420は、本体部421と、上部筐体422と、下部筐体423と、第1接続部424と、第2接続部426と、第3接続部425と、第4接続部427と、区画部材4211とを備えている。
【0031】
本体部421は、円筒形状の容器である。上部筐体422は、本体部421の鉛直方向上側に設けられた蓋であり、円盤状を有している。上部筐体422には、鉛直方向上側の面と下側の面とを連通する3つの貫通孔4221,4222,4223(
図4:破線)が形成されている。下部筐体423は、本体部421の鉛直方向下側に設けられた底板であり、円盤状を有している。下部筐体423には、鉛直方向上側の面と下側の面とを連通する貫通孔4231(
図4:破線)が形成されている。
【0032】
第1接続部424は、ストレート形状の継手であり、上部筐体422のうち貫通孔4221が設けられた位置に取り付けられている。以降、第1接続部424の両端にある開口のうち、外部に露出した開口を「第1開口420a」とも呼ぶ。第1開口420aは、気液分離槽420の内部空間(第1空間R1)と外部とを連通する開口である。第2接続部426は、L字状の継手であり、下部筐体423のうち貫通孔4231が設けられた位置に取り付けられている。以降、第2接続部426の両端にある開口のうち、外部に露出した開口を「第2開口420c」とも呼ぶ。第2開口420cは、気液分離槽420の内部空間(第2空間R2)と外部とを連通する開口である。
【0033】
第3接続部425は、L字状の継手であり、上部筐体422のうち貫通孔4222が設けられた位置に取り付けられている。以降、第3接続部425の両端にある開口のうち、外部に露出した開口を「第3開口420b」とも呼ぶ。第3開口420bは、気液分離槽420の内部空間(第1空間R1)と外部とを連通する開口である。第4接続部427は、L字状の継手であり、上部筐体422のうち貫通孔4223が設けられた位置に取り付けられている。以降、第4接続部427の両端にある開口のうち、外部に露出した開口を「第4開口420d」とも呼ぶ。第4開口420dは、気液分離槽420の内部空間(第1空間R1)と外部とを連通する開口である。
【0034】
区画部材4211は、気液分離槽420の内部空間を、第1空間R1と第2空間R2とに区画するための部材であり、本体部421の内壁に沿った円形の平板状である。ここで、第1空間R1とは、気液分離槽420の内部空間において気体を収容するための空間を意味する。第2空間R2とは、気液分離槽420の内部空間において液体を収容するための空間を意味する。図示のように、第2空間R2は、第1空間R1よりも鉛直方向下側(換言すれば、下部筐体423、第2接続部426、及び第2開口420cがある側)に設けられる。このような第1空間R1と第2空間R2との位置関係は、気液分離槽420が重力によって気体と液体を分離する構造に起因する。
【0035】
区画部材4211の一対の主面4211a,4211bのうち、第1空間R1に面した面を第1主面4211aと呼び、第2空間R2に面した面を第2主面4211bと呼ぶ。
図4に示すように、区画部材4211には、第1主面4211aと第2主面4211bとを貫通する貫通孔4212が形成されている。本実施形態の例では、区画部材4211には、3つの円形状の貫通孔4212が形成されており、これら3つの貫通孔4212は、それぞれ区画部材4211の中心から均等に離れた位置に設けられている(なお、
図4は断面図のため、2つの貫通孔4212のみが図示されている)。なお、貫通孔4212の内径、数、形状については一例に過ぎず、任意に変更できる。
【0036】
なお、上述した本体部421と、上部筐体422と、下部筐体423と、第1接続部424と、第2接続部426と、第3接続部425と、第4接続部427と、区画部材4211とのうち、少なくとも一部は、別々の部材ではなく一体的に構成されていてもよい。例えば、本体部421と区画部材4211が一体的に構成されていてもよい。例えば、上部筐体422と第1接続部424と第3接続部425と第4接続部427とが一体的に構成されていてもよい。また、第1接続部424と、第2接続部426と、第3接続部425とのうちの少なくとも一部は、省略されてもよい。例えば、第1接続部424を省略した場合、上部筐体422の貫通孔4221のうち、外部に露出した開口が「第1開口420a」に相当する。同様に、第3接続部425を省略した場合、上部筐体422の貫通孔4222のうち、外部に露出した開口が「第3開口420b」に相当する。第2接続部426を省略した場合、下部筐体423の貫通孔4231のうち、外部に露出した開口が「第2開口420c」に相当する。
【0037】
図3に戻り、説明を続ける。気体供給吸引装置410は、連通部材42によって気液分離槽420の第1空間R1と接続されている。連通部材42は、内部にルーメンを有する管状部材であり、気体供給吸引装置410と気液分離槽420との間で気体を流通させるために用いられる。連通部材42の一端は、シリンダ開口410aを介して気体供給吸引装置410に取り付けられている。連通部材42の他端は、第1開口420a(
図4:第1接続部424)を介して気液分離槽420に取り付けられている。連通部材42内のルーメンは、気体供給吸引装置410と気液分離槽420との間で気体を流通させる流路として機能する。
【0038】
気液分離槽420の第2空間R2は、第1連通部材41によって心臓モデル110の液体収容部R110と接続されている。第1連通部材41は、上述の通り、内部に第1ルーメン41Lを有する管状部材であり、気液分離槽420と心臓モデル110との間で液体を流通させるために用いられる。第1連通部材41の一端は、第2開口420c(
図4:第2接続部426)を介して気液分離槽420に取り付けられている。第1連通部材41の他端は、開口110aを介して心臓モデル110に取り付けられている。すなわち、
図3において実線矢印で示すように、第1連通部材41内の第1ルーメン41Lは、気液分離槽420と心臓モデル110との間で液体を流通させる流路として機能する。
【0039】
図5~
図8は、心臓モデル110の拡縮動作について説明する図である。
図5(A)は、気液分離槽420に対する事前準備の様子を示す。
図5(B)は、
図5(A)の時の心臓モデル110の様子を示す。まず、事前準備として、気液分離槽420の第2空間R2に液体(例えば、水や生理食塩水等)を充填する。液体の充填は、第3接続部425と、第4接続部427とに対して、エアコック付きホース(図示省略)をそれぞれ取り付け、第3接続部425の第3開口420bを介して第1空間R1に液体を供給しつつ、第4接続部427の第4開口420dを介して第1空間R1から内部の気体を排出することにより行うことができる。第3開口420bから供給された液体は、第1空間R1を通過して、区画部材4211の貫通孔4212を介して、第2空間R2に満たされる。ここで、充填される液体の体積は、第2空間R2の容積以下であることが好ましい。液体の充填が完了した後、エアコックをそれぞれ閉じることで第3開口420b及び第4開口420dを封止し、第3開口420b及び第4開口420dからの気体及び液体の漏出を抑制する。
【0040】
図6(A)は、気体が供給された時の気液分離槽420の様子を示す。
図6(B)は、
図6(A)の時の心臓モデル110の様子を示す。気液分離槽420の第2空間R2に液体を充填後、
図6(A)において白抜き矢印で示すように、気体供給吸引装置410から気液分離槽420に気体を供給する。すると、
図6(A),(B)において黒矢印で示すように、供給された気体の量に応じた量の液体が、気液分離槽420の第2空間R2から、第1連通部材41の第1ルーメン41Lを介して、心臓モデル110の液体収容部R110に供給される。
図7(A)は、さらに気体が供給された時の気液分離槽420の様子を示す。
図7(B)は、
図7(A)の時の心臓モデル110の様子を示す。気体供給吸引装置410から気液分離槽420への気体の供給をさらに継続すると、
図7(B)において白抜き矢印で示すように、液体収容部R110内の液体の体積増加に応じて、軟性素材で形成された心臓モデル110が拡張する。
【0041】
図8(A)は、気体が吸引された時の気液分離槽420の様子を示す。
図8(B)は、
図8(A)の時の心臓モデル110の様子を示す。心臓モデル110の拡張後、
図8(A)において白抜き矢印で示すように、気体供給吸引装置410によって気液分離槽420から気体を吸引する。すると、
図8(A),(B)において黒矢印で示すように、吸引された気体の量に応じた量の液体が、心臓モデル110の液体収容部R110から、第1連通部材41の第1ルーメン41Lを介して、気液分離槽420の第2空間R2へと吸引される。これにより、
図8(B)において白抜き矢印で示すように、液体収容部R110内の液体の体積減少に応じて、軟性素材で形成された心臓モデル110が収縮する。
【0042】
制御装置30(
図1)は、次の処理a1,a2を繰り返すことで、規則的に心臓モデル110を拡張/収縮させて、心臓モデル110の拍動を模擬する。
(a1)制御装置30は、気体供給吸引装置410による気液分離槽420への第1所定量の気体の供給を、第1所定時間かけて行わせる。
(a2)制御装置30は、気体供給吸引装置410による気液分離槽420からの第2所定量の気体の吸引を、第2所定時間かけて行わせる。
ここで、第1所定量及び第2所定量は、拡張時の心臓モデル110の大きさの目標値に応じて任意に決定できる。第1所定量と第2所定量とは同じであってもよく、同じでなくてもよい。また、第1所定時間は心臓モデル110が拡張するために要する時間の目標値に応じて任意に決定できる。第2所定時間は心臓モデル110が収縮するために要する時間の目標値に応じて任意に決定できる。第1所定時間と第2所定時間とは同じであってもよく、同じでなくてもよい。
【0043】
なお、制御装置30は、制御装置30の起動後において、気体供給吸引装置410による気液分離槽420への気体の供給を初めて行う場合(換言すれば、初回の処理a1の実行時)は、気体供給吸引装置410による気液分離槽420への第1所定量の気体の供給を、第3所定時間かけて行わせることが好ましい。第3所定時間は、上述した第1所定時間よりも長い時間である。このようにすれば、制御装置30は、初回の処理a1の実行時に限って、心臓モデル110を、ゆっくりと時間を掛けて拡張することができる。
【0044】
図1の呼吸動作部50についても、
図3~
図8で説明した拍動部40と同様の構成を有している。すなわち、呼吸動作部50は、気体供給吸引装置と、気液分離槽とを備えている。気体供給吸引装置から気液分離槽に気体が供給された時、供給された気体の量に応じた量の液体が気液分離槽から横隔膜モデル170の液体収容部R170に供給されることにより、横隔膜モデル170が拡張する。また、気体供給吸引装置によって気液分離槽から気体が吸引された時、吸引された気体の量に応じた量の液体が横隔膜モデル170の液体収容部R170から気液分離槽へと吸引されることにより、横隔膜モデル170が収縮する。なお、呼吸動作部50についても、気体供給吸引装置による気体の供給量及び供給時間と、気体供給吸引装置による気体の吸引量及び吸引時間とが、制御装置30によって制御される。
【0045】
以上のように、第1実施形態の人体シミュレーション装置1によれば、
図6(B)及び
図7(B)で説明した通り、液体が気液分離槽420から心臓モデル110の液体収容部R110に供給されることにより心臓モデル110(臓器モデル)が拡張し、
図8(B)で説明した通り、液体が心臓モデル110の液体収容部R110から気液分離槽420へと吸引されることにより心臓モデル110が収縮する。すなわち、心臓モデル110の拡張及び収縮のために、心臓モデル110の液体収容部R110には水や生理食塩水等の液体が充填されるため、空気等の気体が充填される場合と比較して、X線画像上で白く写りこむことを抑制し、心臓モデル110のX線画像を実際の臨床像に近づけることができる。また、
図6(A)及び
図7(A)で説明した通り、気体供給吸引装置410から気液分離槽420に気体が供給された時、供給された気体の量に応じた量の液体が気液分離槽420から心臓モデル110の液体収容部R110に供給され、
図8(A)で説明した通り、気体供給吸引装置410によって気液分離槽420から気体が吸引された時、吸引された気体の量に応じた量の液体が心臓モデル110の液体収容部R110から気液分離槽420へと吸引される。すなわち、気液分離槽420による液体の供給及び吸引は、気体供給吸引装置410による気体の供給及び吸引に応じて行われる。このため、気体供給吸引装置410においては、水漏れを伴わずに気体の制御を行うことができ、人体シミュレーション装置1の操作性を向上できる。
【0046】
また、第1実施形態の人体シミュレーション装置1によれば、
図4で説明した通り、気液分離槽420は、気液分離槽420の内部空間を、気体を収容するための第1空間R1と、液体を収容するための第2空間R2とに区画する区画部材4211を備えている。また、
図3で説明した通り、気液分離槽420は、第1空間R1と外部とを連通する第1開口420aを介して気体供給吸引装置410と接続され、第2空間R2と外部とを連通する第2開口420cを介して心臓モデル110(臓器モデル)の液体収容部R110と接続されている。このため、気体供給吸引装置410から第1空間R1内に気体が供給された際、区画部材4211が第1及び第2空間R1,R2の間に存在することによって、第2空間R2内の液体にキャビテーションが生じることを抑制できる。また、気体供給吸引装置410によって第1空間R1内の気体が吸引された際、区画部材4211が第1及び第2空間R1,R2の間に存在することによって、第1空間R1内に液体が浸入することを抑制できる。この結果、人体シミュレーション装置1の操作性をより一層向上できる。
【0047】
さらに、第1実施形態の人体シミュレーション装置1によれば、
図4で説明した通り、気液分離槽420の区画部材4211は、第1空間R1に面した第1主面4211aと、第2空間R2に面した第2主面4211bとを有する平板状であるため、第2空間R2内の液体に対して気泡が混入すること、及び、第1空間R1内に液体が浸入することを効果的に抑制できる。また、第2空間R2は第1空間R1よりも鉛直方向下側に位置すると共に、区画部材4211には第1主面4211aと第2主面4211bとを貫通する貫通孔4212が形成されている。このため、
図5で説明した通り、第1空間R1内に供給された液体を、区画部材4211の貫通孔4212を介して第2空間R2へと誘導できる。
【0048】
さらに、第1実施形態の人体シミュレーション装置1によれば、制御装置30は、気体供給吸引装置410による気液分離槽420への第1所定量の気体の供給を第1所定時間かけて行わせた後(処理a1)、気体供給吸引装置410による気液分離槽420からの第2所定量の気体の吸引を第2所定時間かけて行わせる動作(処理a2)を繰り返すため、心臓モデル110(臓器モデル)を規則的に拡張及び収縮させることができる。また、制御装置30は、制御装置30の起動後において、気体供給吸引装置410による気液分離槽420への気体の供給を初めて行う場合は、気液分離槽420への第1所定量の気体の供給を、第1所定時間よりも長い第3所定時間をかけて行わせるため、急激な拡張に伴う心臓モデル110の破損を抑制できる。
【0049】
このように、第1実施形態の構成によれば、拍動する心臓モデル110を有する人体シミュレーション装置1を提供できる。また、呼吸動作に伴って動く横隔膜モデル170を有する人体シミュレーション装置1を提供できる。
【0050】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態の気液分離槽420Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の人体シミュレーション装置1は、
図4で説明した気液分離槽420に代えて、
図9に示す気液分離槽420Aを備える。気液分離槽420Aは、
図4で説明した構成において、区画部材4211を備えておらず、単一の内部空間Rを有している。
図5(A)で説明したように、気液分離槽420Aに液体が供給された場合、内部空間Rでは、重力によって鉛直方向下側に液体が溜まり、鉛直方向上側に気体が溜まることにより、気体と液体とが分離した状態で収容される。このため、気液分離槽420Aによっても、
図5~
図8で説明したと同様の動作によって、心臓モデル110を拡張及び収縮させることができる。
【0051】
このように、気液分離槽420Aの構成は種々の変更が可能であり、単一の内部空間Rを有する構成とされてもよい。このような第2実施形態の気液分離槽420Aを有する人体シミュレーション装置1によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の気液分離槽420Bの構成を例示した説明図である。第3実施形態の人体シミュレーション装置1は、
図4で説明した気液分離槽420に代えて、
図10に示す気液分離槽420Bを備える。気液分離槽420Bは、
図4で説明した構成において、区画部材4211に代えて、区画部材4211Bを有している。
図10に示すように、区画部材4211Bには、第1主面4211aと第2主面4211bとを貫通する5つの貫通孔4212Bが形成されている。これら5つの貫通孔4212Bは、それぞれ直線状であり、均等な間隔で配置されている。
【0053】
このように、気液分離槽420Bの構成は種々の変更が可能であり、第1実施形態とは異なる数及び形状の貫通孔4212Bを有する区画部材4211Bを備えてもよい。貫通孔4212Bの幅、数、形状については一例に過ぎず、任意に変更できる。また、各貫通孔4212Bは、等間隔で配置されていなくてもよい。このような第3実施形態の気液分離槽420Bを有する人体シミュレーション装置1によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態のモデル10Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態の人体シミュレーション装置1は、
図2で説明したモデル10に代えて、
図11に示すモデル10Cを備える。モデル10Cは、心臓モデル110に代えて心臓モデル110Cを有している。心臓モデル110Cは、
図2で説明した構成においてさらに、心臓モデル110Cの内部空間に収容されたバルーン119を有している。バルーン119は、ゴム等の弾性体や、軟性素材の合成樹脂(例えば、シリコン等)であって、放射線を透過する材料により形成されている。バルーン119は、第1連通部材41によって、拍動部40(
図3:気液分離槽420の第1開口420a)と接続されている。これにより、バルーン119の内部は、液体を収容可能な空間である液体収容部R119として機能する。
【0055】
このように、モデル10Cの構成は種々の変更が可能であり、心臓モデル110Cの内部空間にバルーン119が収容されており、バルーン119の内部空間が液体収容部R119として機能してもよい。なお、
図11の例では、心臓モデル110Cがバルーン119を内蔵する構成としたが、心臓モデル110Cに代えて、または心臓モデル110Cと共に、横隔膜モデル170がバルーンを内蔵する構成としてもよい。このような第4実施形態のモデル10Cを有する人体シミュレーション装置1によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の人体シミュレーション装置1では、心臓モデル110C(臓器モデル)からの水漏れをより一層抑制できる。
【0056】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態の人体シミュレーション装置1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の人体シミュレーション装置1Dは、
図1で説明した構成において、モデル10に代えてモデル10Dを有すると共に、濾過フィルタ23、ポンプ24、呼吸動作部50、及び脈動部60を有していない。
【0057】
図13は、第5実施形態のモデル10Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態のモデル10Dは、
図2で説明した構成において、心臓モデル110に代えて心臓モデル110Dを有すると共に、大動脈モデル160及び横隔膜モデル170を有していない。また、
図13に示すように、心臓モデル110Dは、
図2で説明した心臓血管モデル111及び冠動脈モデル112を有していない。すなわち、第5実施形態の人体シミュレーション装置1Dでは、心臓モデル110Dの拡張及び収縮による、心臓モデル110Dの拍動のみが模擬される。
【0058】
このように、人体シミュレーション装置1Dの構成は種々の変更が可能であり、大動脈モデル160、濾過フィルタ23、ポンプ24、及び脈動部60が省略されることで、大動脈モデル160からの血流の模擬を省略してもよい。また、横隔膜モデル170及び呼吸動作部50が省略されることで、呼吸動作に伴う横隔膜モデル170の動きの模擬を省略してもよい。
図13の例では、大動脈モデル160と、横隔膜モデル170との両方を省略したが、いずれか一方のみを省略してもよい。このような第5実施形態の人体シミュレーション装置1Dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態の人体シミュレーション装置1Dでは、人体シミュレーション装置1Dの構成を簡略化できる。
【0059】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
[変形例1]
上記第1~5実施形態では、人体シミュレーション装置1,1Dの構成の一例を示した。しかし、人体シミュレーション装置1の構成は種々の変更が可能である。例えば、人体シミュレーション装置1において、モデル10は水槽21内の液体22に浸された状態でなくてもよい。この場合、水槽21は省略可能である。例えば、人体シミュレーション装置1は、図示しない他の医療装置(例えば、FPD装置、CT装置、MRI装置等)を備えていてもよい。例えば、人体シミュレーション装置1は、図示しない他の医療用デバイス(例えば、カテーテル、モノレールガイドワイヤ、貫通用ガイドワイヤ等)を備えていてもよい。
【0061】
[変形例2]
上記第1~5実施形態では、モデル10,10C,10Dの構成の一例を示した。しかし、モデル10の構成は種々の変更が可能である。例えば、モデル10は、人体の肺の外形を模擬した肺モデル、人体の脳の外形を模擬した脳モデル、人体の下肢の外形を模擬した下肢モデル等、上述しない他の臓器モデル、筋肉モデル、血管モデル等を備えていてもよい。モデル10に肺モデルを備える構成とした場合、肺モデルに対して上述した横隔膜モデル170と同様の構成を転用することで、呼吸動作に伴う肺モデルの動きを模擬できる。例えば、心臓モデル110,110C,110Dの内部は、心房や心室を模擬した複数の空間に分割されていてもよい。この場合、各空間は、気液分離槽420から供給された液体が各空間内に充填されるよう、相互に接続されていることが好ましい。
【0062】
[変形例3]
上記第1~5実施形態では、拍動部40の構成の構成の一例を示した。しかし、拍動部40の構成は種々の変更が可能である。例えば、気体供給吸引装置410は、電動でなく手動でもよい。例えば、気液分離槽420の第1開口420a、第3開口420b、及び第2開口420cのうち少なくともいずれかは、本体部421に設けられていてもよい。例えば、気体供給吸引装置410と、気液分離槽420とが単一の装置として構成されてもよい。
【0063】
[変形例4]
上記第1~5実施形態の人体シミュレーション装置1,1Dの構成、及び、上記変形例1~3の構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2,第3実施形態のいずれかで説明した気液分離槽420A,Bと、第4実施形態で説明したモデル10Cとを組み合わせて人体シミュレーション装置1を構成してもよい。
【0064】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1D…人体シミュレーション装置
10,10C,10D…モデル
21…水槽
22…液体
23…濾過フィルタ
24…ポンプ
30…制御装置
40…拍動部
41…第1連通部材
42…連通部材
50…呼吸動作部
51…第2連通部材
60…脈動部
61…第3連通部材
110,110C,110D…心臓モデル
111…心臓血管モデル
112…冠動脈モデル
112L…左冠動脈モデル
112R…右冠動脈モデル
119…バルーン
160…大動脈モデル
170…横隔膜モデル
410…気体供給吸引装置
411…電動アクチュエータ
412…エアシリンダ
420,420A~420D…気液分離槽
420a…第1開口
420b…第3開口
420c…第2開口
420d…第4開口
421,421C,421D…本体部
422,422C,422D…上部筐体
423…下部筐体
424…第1接続部
425…第3接続部
426…第2接続部
427…第4接続部
4211,4211B,4211C,4211D…区画部材
4212,4212B…貫通孔
4213,4221,4222,4223,4231…貫通孔
R…内部空間
R1…第1空間
R110…液体収容部
R2…第2空間