(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032465
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】車両のフック取付け構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B62D25/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138614
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 新之介
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 義幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB07
3D203BB24
3D203CA53
3D203CA58
3D203CB09
3D203DB03
(57)【要約】
【課題】フック部材補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両の固縛時におけるフック部材の過度の変形を抑制することにある。
【解決手段】車両の固縛時に索状体40のフック41が掛けられるフック部材20が、車両2の下面3側に配設された骨格部材8に固定され、フック部材20は、車両の固縛時における索状体40の引張によって変形するようになっており、骨格部材8に、索状体40の掛けられていない自由状態のフック部材20に隣接又は近接するように当て面部13が形成されていることにより、車両の固縛時のフック部材20が、当て面部13に当てられた状態で変形するように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の固縛時に索状体のフックが取付けられるフック部材を、車両の下面側に配設された骨格部材に固定する車両のフック取付け構造において、
前記フック部材は、車両の固縛時における前記索状体の引張によって変形するようになっており、
前記骨格部材に、前記索状体から引張されていない自由状態の前記フック部材に隣接又は近接するように当て面部が形成されていることにより、車両の固縛時の前記フック部材が、前記当て面部に当てられた状態で変形するように構成されている車両のフック取付け構造。
【請求項2】
前記フック部材には、車両の固縛時において前記当て面部に当てられる当接部が形成されており、自由状態における前記当接部は、前記当て面部に対向するように配置されている請求項1に記載の車両のフック取付け構造。
【請求項3】
前記フック部材には、前記骨格部材に対する固定箇所よりも車両の高さ方向下側に、前記索状体が掛けられて取付けられる引掛部が形成されており、
前記当て面部は、車両の高さ方向において前記固定箇所と前記引掛部の間に形成されている請求項1又は2に記載の車両のフック取付け構造。
【請求項4】
前記フック部材には、車両の固縛時において前記当て面部に当てられる当接部が形成されており、
前記当接部と前記当て面部とは、前記車両の下面から車両の高さ方向下側に延びているとともに、前記当接部の車両の高さ方向における先端部は、前記当て面部の車両の高さ方向における先端部と同じ高さ位置又はそれよりも高さ方向下側に配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の車両のフック取付け構造。
【請求項5】
前記当て面部は、前記骨格部材の縁が折り曲げられたフランジ部である請求項1~4のいずれか一項に記載の車両のフック取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の固縛時に索状体のフックが取付けられるフック部材を、車両下面の骨格部材に固定する車両のフック取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両のフック取付け構造が種々提案されている。例えば、特許文献1に記載されている車両の下面には、車両前後方向に延びるリヤサイドフレームが配設され、このリヤサイドフレームの後端側に、車両の固縛用のタイダウンが固着されている。ここでリヤサイドフレームは、車両の下面に配設される骨格部材であり、車両上側が解放された断面U字形に形成されている。そしてリヤサイドフレームの車幅方向の外側面に、タイダウンを構成するタイダウンブラケットが垂設されている。このタイダウンブラケットは上下に長い矩形の板状に形成されており、その車両下側の孔部に索状体のフックを掛けられるようになっている。そして車両の固縛時のタイダウンブラケットは、車両外引き用の索状体のフックが掛けられると共に、この索状体の引張によって車両外側に撓み変形するようになっている。
【0003】
ところで上記構成では、タイダウンブラケットの過度の変形を抑制する観点から、タイダウンやその周辺構造の強度を確保することが望まれている。例えばリヤサイドフレームを補強することもできるが、このリヤサイドフレームは、車両後突時に車両前側に変形して衝撃を吸収する機能を有している。このためリヤサイドフレームを補強する場合には、その車両後突時における衝撃吸収性、即ち、衝撃吸収ストロークの確保を考慮しなければならない。そこで上記タイダウンでは、タイダウンブラケットが、その下部背面に固着された板状のリンフォースブラケットで補強されている。このリンフォースブラケットは、その上側が車両内側に略直角に曲げられており、この曲げられたリンフォースブラケットの上面がリヤサイドフレームの下面に固着されている。更にリヤサイドフレームの内部には、タイダウンブラケットと同位置に板状のタイダウンリインフォースが装着されている。そしてタイダウンブラケット及びリンフォースブラケットは、リヤサイドフレームの外側面又は下面を挟んでタイダウンリインフォースに溶接されて補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記構成では、タイダウン(フック部材)の強度確保のために、リンフォースブラケットとタイダウンリインフォースが用いられている。このため上記構成は、部品点数が増加してコストアップになると共に、車両の重量抑制の観点からも好ましくない。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、フック部材補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両の固縛時におけるフック部材の過度の変形を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両のフック取付け構造は、車両の固縛時に索状体のフックが取付けられるフック部材を、車両の下面側に配設された骨格部材に固定するための構造である。そしてフック部材は、車両の固縛時における索状体の引張によって変形するようになっている。この種の構造においては、フック部材補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両の固縛時におけるフック部材の過度の変形を抑制することが望ましい。そこで本発明のフック取付け構造では、骨格部材に、索状体から引張されていない自由状態のフック部材に隣接又は近接するように当て面部が形成されていることにより、車両の固縛時のフック部材が、当て面部に当てられた状態で変形するように構成されている。本発明では、骨格部材の一部をなす当て面部が、フック部材に近接又は隣接して配置されて、車両の固縛時のフック部材に当てられるようになっている。このため車両の固縛時において索状体から受ける力を、フック部材と骨格部材の当て面部とに分散できるようになり、フック部材の過度の変形を抑制することができる。そして本発明では、車両の骨格となる骨格部材を利用して、車両の固縛時におけるフック部材の過度の変形を抑制するため、フック部材補強用の部品点数を極力少なくすることが可能となる。
【0007】
第2発明の車両のフック取付け構造は、第1発明の車両のフック取付け構造において、フック部材には、車両の固縛時において当て面部に当てられる当接部が形成されており、自由状態における当接部は、当て面部に対向するように配置されている。本発明では、フック部材に形成された当接部を当て面部に対向させて配置しておくことにより、この当接部を介して車両の固縛時のフック部材を当て面部により適切に当てられるようになる。
【0008】
第3発明の車両のフック取付け構造は、第1発明又は第2発明の車両のフック取付け構造において、フック部材には、骨格部材に対する固定箇所よりも車両の高さ方向下側に、索状体が掛けられて取付けられる引掛部が形成されており、当て面部は、車両の高さ方向において固定箇所と引掛部の間に形成されている。本発明では、フック部材の固定箇所と引掛部の間の部分を、当て面部により確実に当てられるようになっている。また車両の高さ方向において、当て面部を引掛部に極力重ならないように形成することにより、この引掛部に索状体を容易に掛けられるようになる。
【0009】
第4発明の車両のフック取付け構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両のフック取付け構造において、フック部材には、車両の固縛時において当て面部に当てられる当接部が形成されている。そして当接部と当て面部とは、車両の下面から車両の高さ方向下側に延びているとともに、当接部の車両の高さ方向における先端部は、当て面部の車両の高さ方向における先端部と同じ高さ位置又はそれよりも高さ方向下側に配置されている。本発明では、当接部が、車両の高さ方向において当て面部と同じ位置又はそれよりも下側に延びているため、この寸大な当接部を介して索状体の力を当て面部により確実に伝えられるようになる。
【0010】
第5発明の車両のフック取付け構造は、第1発明~第4発明のいずれかの車両のフック取付け構造において、当て面部は、骨格部材の縁が折り曲げられたフランジ部である。本発明では、当て面部としての強度に優れるフランジ部に、車両の固縛時のフック部材を当てられるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明によれば、フック部材補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両の固縛時におけるフック部材の過度の変形を抑制することができる。また第2発明によれば、車両の固縛時におけるフック部材の変形をより適切に抑制することができる。また第3発明によれば、フック部材への索状体の掛止め性を確保しつつ、車両の固縛時におけるフック部材の変形をより確実に抑制することができる。また第4発明によれば、車両の固縛時におけるフック部材の変形を更に確実に抑制することができる。そして第5発明によれば、車両の固縛時におけるフック部材の変形を一層確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両を下面側から見た概略透視斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線で破断した部分の概略縦断面図である。
【
図4】車両のフック取付け構造を示す車両の概略拡大斜視図である。
【
図6】自由状態時の骨格部材とフック部材を示す概略縦断面図である。
【
図7】車両の固縛時の骨格部材とフック部材を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図7を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。なお
図1及び
図4では、便宜上、フック部材とリヤサイドメンバ(骨格部材)の位置をわかりやすく図示するため、これらの車両外側に位置するリヤサイドレール等の他部材の図示を省略している。
【0014】
[車両の下面の概要]
まず車両2の下面3の概要を
図1~
図3を参照して説明する。車両2の後部の下面3の車幅方向中央には、
図1及び
図2に示すように、リヤフロアの下面をなすフロアパネル4が配設されている。またフロアパネル4の車幅方向両端(左右方向両端)には、
図2に示すように、車両前後方向に延びる左右のリヤサイドレール5が配設されている(
図2では、便宜上、右側のリヤサイドレール5のみ図示する)。リヤサイドレール5は、その後端が車両2の後端位置まで延びており、リヤバンパ6で覆われた車両ボディ(図示省略)に接続されている。また
図2及び
図3に示すように、リヤサイドレール5の車両外側(各図の右側)には、車両外装となるアウタパネル7が接合され、リヤサイドレール5の車両内側(各図の左側)にはリヤサイドメンバ8が接合されている。このリヤサイドメンバ8は、本発明の骨格部材に相当し、その後部側には後述するフック部材20が取付けられている。そしてリヤサイドメンバ8は、フロアパネル4とリヤサイドレール5間に配設されており、リヤサイドレール5と共に車両後突時の衝撃を受けられるようになっている。
【0015】
[車両のフック取付け構造]
そして車両のフック取付け構造は、
図3及び
図4を参照して、車両2の固縛用のフック部材20をリヤサイドメンバ8(骨格部材)に固定するための構造である。このフック部材20は、船舶や航空機や輸送車両等の所定位置に車両2を固縛する時に使用される。即ち、フック部材20には、車両2の固縛時に車両外引き用の索状体40のフック41が取付けられ、この索状体40がテンションのかけられた状態で船舶等に固定される。そして上記構成では、車両2の固縛時のフック部材20が、索状体40の引張によって車両外側(各図の右側)に撓み変形するようになる。このため車両2の固縛時のフック部材20を、その過度の変形を抑制するように補強するのであるが、この補強用の部品は極力少ないことが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成にて、フック部材補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両2の固縛時におけるフック部材20の過度の変形を抑制することとした。以下、車両のフック取付け構造の各構成について詳述する。
【0016】
[リヤサイドメンバ(骨格部材)]
リヤサイドメンバ8は、
図5に示すように、縦断面略U字形の溝状に形成されており、その車両外側(
図5の右側)が解放されている。このリヤサイドメンバ8は、車両2の高さ方向(上下方向)に延びる左壁部10と、左壁部10の上端から車両外側に延びる上壁部11と、左壁部10の下端から車両外側に延びる下壁部12とから構成されている。そしてリヤサイドメンバ8は、
図3に示すように車両2の下面3に配設された状態において、その開放された車両外側が蓋材9によって閉じられている。またリヤサイドメンバ8の左壁部10は、フロアパネル4に隣接して配置され、上壁部11と下壁部12とは、車幅方向(左右方向)に延びてフロアパネル4とリヤサイドレール5間に配置されている。
【0017】
[フランジ部(当て面部)]
また
図5に示すリヤサイドメンバ8の上壁部11には、その右縁が車両の高さ方向上側に略直角に折り曲げられた上側フランジ部11uが形成されている。またリヤサイドメンバ8の下壁部12には、その右縁が車両の高さ方向下側に略直角に折り曲げられた下側フランジ部12uが形成されている。そして下側フランジ部12uは、
図3に示すように下壁部12の車両外側(
図3の右側)で車両2の高さ方向下側に延びているとともに、蓋材9と共にリヤサイドレール5に接合されている。また下側フランジ部12uは、
図4に示すように、車両前後方向に長い略長方形状に形成されており、後述するフック部材20の車両外側に配置されている。そして本実施例では、下側フランジ部12uが、後述するフック部材20に当てられる当て面部13を構成している。
【0018】
[フック部材]
フック部材20は、
図4及び
図5を参照して、車両2の固縛時に索状体40のフック41が取付けられる部材である。このフック部材20は、リヤサイドメンバ8に固定される板状の第一フックブラケット21と、この第一フックブラケット21から車両外側(各図の右側)に突出する板状の第二フックブラケット22とから構成されている。ここで第一フックブラケット21は、
図3~
図5を参照して、頂点を下側に向けた三角形状に形成されており、その板厚方向を車幅方向(左右方向)に向けた状態でリヤサイドメンバ8に配設されている。即ち、
図3に示すように、第一フックブラケット21の底辺部211は略直角に車両外側に曲げられており、この曲げられた底辺部211が、リヤサイドメンバ8の下壁部12にボルトBT及びナットNTで締結固定されている。なおリヤサイドメンバ8には、板状のリテーナRT及びリンイフォースRFが配置されており、このリヤサイドメンバ用の部材(RT,RF)もボルトBT及びナットNTにてリヤサイドメンバ8の内側に締結固定されている。
【0019】
また
図4及び
図5を参照して、第一フックブラケット21は、その頂点をなす先端21a側が、車両後側に向けて若干傾いている。そして後側に傾いている先端21aの周縁部分に、索状体40が掛けられて取付けられる引掛部213が形成されている。この引掛部213は、上下に長い長孔(貫通孔)であり、索状体40のフック41を通して引っ掛けられるようになっている。そして第一フックブラケット21は、その周縁で囲まれた中央部分212が車両外側(各図の右側)に盛り上げられており、この盛り上げられた部分に後述する第二フックブラケット22が固着されている。
【0020】
[当接部]
第二フックブラケット22は、
図2~
図5を参照して、その板厚方向を車両前後方向に向けた状態で、その左縁220にて第一フックブラケット21に固着されている。この第二フックブラケット22は、
図4及び
図5に示すように、その車両2の高さ方向下側の下部221が略三角形状に形成され、この下部221が第一フックブラケット21に倣ってやや車両後側に傾いている。また第二フックブラケット22の車両2の高さ方向上側の上部222は車幅方向に延びる略矩形状に形成されている。この上部222は、第一フックブラケット21の底辺部211から略直角に起立したのち、その高さ方向の中央付近から下部221と同様に車両後側に傾斜している。そして第二フックブラケット22の右縁223は、
図2及び
図3に示すように、上部222側で底辺部211から車両外側(各図の右側)にはみ出しており、このはみ出した右縁223部分に当接部30が形成されている。即ち、当接部30は、右縁223のはみ出した部分を車両後側に略直角に折り曲げることで形成されている。そして当接部30は、第二フックブラケット22の上部222と共に第一フックブラケット21の底辺部211から起立して、車両2の高さ方向下側に延びている。
【0021】
[フック部材の当接部とフランジ部(当て面部)の位置関係]
ここで
図2及び
図6を参照して、フック部材20の当接部30と、リヤサイドメンバ8の下側フランジ部12u(当て面部13)との位置関係について説明する。まずフック部材20では、上述したように、第二フックブラケット22の右縁223の上部222側に当接部30が形成され、この当接部30が、底辺部211の車両外側(各図の右側)に配置されている。またリヤサイドメンバ8では、その下壁部12の右縁に形成された下側フランジ部12uが、フック部材20の車両外側に配置されている。これにより、下側フランジ部12uは、
図6に示す索状体40から引張されていない自由状態時の当接部30に車両外側から近接又は隣接して配置されるようになる(隣接又は近接配置に関する点の詳細は後述)。このため、後述する車両2の固縛時のフック部材20の当接部30は、索状体40の牽引で車両外側に変形する際に、下側フランジ部12uに当てられるようになる。更に当接部30は、上述したように、車両後側に略直角に曲げられて、車両前後方向に延びる下側フランジ部12uに対向するように配置されている。このため、車両2の固縛時の当接部30を、下側フランジ部12uに面的に当てられるようになっている。
【0022】
そして
図6に示す下側フランジ部12uは、当接部30に近接して配置させてもよく、当接部30に隣接して配置させてもよい。例えば
図6に示すように下側フランジ部12uと当接部30とを近接配置させることで、これらの間に適度な隙間C(車幅方向のクリアランス)を設けておく。この構成では、フック部材20の寸法に誤差が生じた場合にも、その寸法誤差を隙間Cで吸収することにより、第一フックブラケット21(底辺部211)の締結孔H1を、リヤサイドメンバ8(下壁部12)の締結孔H2に合わせられるようになる。またこれとは異なり、下側フランジ部12uと当接部30とを隣接配置して、これらの間に隙間を実質的に設けない構成とすることもできる。この場合には、後述する車両2の固縛時において、フック部材20の当接部30を下側フランジ部12uにてすぐに受けられるようになり、後述するフック部材20の移動を抑制することができる。
【0023】
つぎに
図6を参照して、車両2の高さ方向における当接部30と下側フランジ部12u(当て面部13)との位置関係について説明する。まずフック部材20では、第一フックブラケット21の底辺部211(リヤサイドメンバとの固定箇所)が最も上側の高さ位置X1に配置されている。そして索状体40の掛けられる引掛部213は、底辺部211よりも下側の高さ位置X2に配置されている。またリヤサイドメンバ8の下側フランジ部12uは、その下壁部12から車両2の高さ方向下側に延びているとともに、第一フックブラケット21の底辺部211と引掛部213の間に形成されている。即ち、下側フランジ部12uの下側の先端部12aの高さ位置X3は、車両2の高さ方向において底辺部211と引掛部213の間に設定されている。このため、後述する車両2の固縛時においては、フック部材20の底辺部211と引掛部213の間の部分を下側フランジ部12uに当てられるようになる。更に下側フランジ部12uが引掛部213と極力重ならない位置に配置されるようになり、引掛部213に対する索状体40の掛止め作業の際に、下側フランジ部12uが邪魔になるといった事態を極力回避できる。
【0024】
更に
図6に示すフック部材20の当接部30は、第二フックブラケット22の上部222と共に車両2の高さ方向下側に延びている。そして当接部30の下側の先端部30aの高さ位置X4は、下側フランジ部12uの高さ位置X3と同位置又はそれよりも車両2の高さ方向下側に設定されている。このように当接部30が、車両2の高さ方向において下側フランジ部12u(当て面部13)と同じ位置又はそれよりも下側に延びているため、この寸大な当接部30を介して索状体40の力を当て面部13により確実に伝えられるようになる。なお下側フランジ部12uの先端部12a及び当接部30の先端部30aの各高さ位置(X3,X4)は、索状体の掛止め性を考慮してフック部材20の上側に設定することが望ましい。例えばフック部材20を上下に二等分する仮想線(図示省略)を想定した場合、この仮想線よりも上側部分に、上記高さ位置(X3,X4)を設定できる。
【0025】
[車両の固縛時における車両のフック取付け構造の働き]
図6及び
図7に示す車両2の固縛時では、車両2の下面3側に取付けられたフック部材20に、車両外引き用の索状体40が取付けられ、この索状体40がテンションのかけられた状態で船舶等に固定される。このときフック部材20は、索状体40の引張によって車幅外側(各図の右側)に変形するようになっている。そして上記構成では、車両2の固縛時のフック部材20が、索状体40からの引張で過度に変形しないように補強されるが、この補強用の部品は極力少ないことが望ましい。そこで
図6に示すフック取付け構造では、車両2の下面3側に配設されたリヤサイドメンバ8に、フック部材20に近接する位置に下側フランジ部12u(当て面部13)が形成されていることにより、車両2の固縛時のフック部材20が、下側フランジ部12uに当てられた状態で変形するように構成されている。
【0026】
上記構成によると、まず索状体40にて張引されたフック部材20が、
図7に示すように車両外側(
図7の右側)に移動することで、その当接部30が下側フランジ部12u(当て面部13)に当てられるようになる(
図7中、符号A1で示すフック部材の移動量を参照)。即ち、フック部材20は、その下側の引掛部213に索状体40の引張力がかかることで、リヤサイドメンバ8との固定箇所となる底辺部211、特にボルトBTの挿設された箇所を基点に車両外側に傾動する。このフック部材20の傾動により、そのフック部材20に設けられた当接部30が、車両外側に移動してリヤサイドメンバ8の下側フランジ部12uに当てられるようになる。このとき当接部30は、上述したように、下側フランジ部12uに対向するように配置されているため、この下側フランジ部12uに面的に当てられた状態となる。
【0027】
つづいて
図7に示すフック部材20が索状体40に更に張引されると、このフック部材20が車両外側(
図7の右側)に撓み変形しようとする(
図7中、符号A2で示すフック部材の変形量を参照)。このときフック部材20の当接部30は、上述したように下側フランジ部12u(当て面部13)に当てられた状態となっている。このため索状体40の張引力は、第二フックブラケット22の当接部30を通じてリヤサイドメンバ8の当て面部13に伝えられるようになる。このため、索状体40から受ける張引力を、フック部材20と下側フランジ部12uとに分散できるようになり、フック部材20単独で張引力を受ける場合に比して、このフック部材20の撓み変形を抑制することができる。このとき強度に優れる下側フランジ部12uが極力変形することなく引張力を受けられるため、フック部材20の過度の変形をより確実に抑制できる。さらに当接部30は、下側フランジ部12uと同じ位置又はそれよりも下側に延びているため、この当接部30を介して索状体40の引張力を当て面部13により確実に伝えられるようになっている。
【0028】
こうして車両のフック取付け構造では、
図7に示すリヤサイドメンバ8の下側フランジ部12u(当て面部13)を利用して、フック部材20の変形を抑制している。このため上記構成によれば、フック部材20の変形量が低減されて、見栄えの良い車両構成となる。更にリヤサイドメンバ8にフック部材用の補強を施す必要がないため、車両2の衝突マネージメントに影響を与えることなく、フック部材20の変形対策を行えるようになる。またリヤサイドメンバ8の構成を大幅に変更する必要もないため、車両2のコストアップの抑制に資する構成となる。
【0029】
以上説明した通り、本実施例のフック取付け構造では、リヤサイドメンバ8(骨格部材)の一部をなす当て面部13が、フック部材20に近接又は隣接して配置されて、車両2の固縛時のフック部材20に当てられるようになっている。このため車両2の固縛時において索状体40から受ける力を、フック部材20と当て面部13とに分散できるようになり、フック部材20の過度の変形を抑制することができる。そして本実施例では、車両2の骨格となるリヤサイドメンバ8を利用して、車両2の固縛時におけるフック部材20の過度の変形を抑制するため、フック部材20補強用の部品点数を極力少なくすることが可能となる。このため本実施例によれば、フック部材20補強用の部品点数を極力少なくしつつ、車両2の固縛時におけるフック部材20の過度の変形を抑制することができる。
【0030】
更に本実施例では、フック部材20に形成された当接部30を当て面部13に対向させて配置しておくことにより、この当接部30を介して車両2の固縛時のフック部材20を当て面部13により適切に当てられるようになる。また本実施例では、フック部材20の底辺部211(固定箇所)と引掛部213の間の部分を、当て面部13により確実に当てられるようになっている。また車両2の高さ方向において、当て面部13を引掛部213に極力重ならないように形成することにより、この引掛部213に索状体40を容易に掛けられるようになる。また本実施例では、当接部30が、車両2の高さ方向において当て面部13と同じ位置又はそれよりも下側に延びているため、この寸大な当接部30を介して索状体40の力を当て面部13により確実に伝えられるようになる。そして本実施例では、当て面部13としての強度に優れる下側フランジ部12uに、車両2の固縛時のフック部材20を当てられるようになる。
【0031】
[変更例]
本実施形態の車両のフック取付け構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、骨格部材としてリヤサイドメンバを例示したが、骨格部材の構成を限定する趣旨ではない。この種の骨格部材として、車両の下面側に配設される各種の骨格部材を用いることができる。例えば車両の下面の面方向(車両前後方向又は車両左右方向等)に延びる骨格部材を用いることができ、とりわけ車両衝突時の衝撃を吸収する骨格部材を用いることができる。また骨格部材として、車両の下面の車両前部側に配設される骨格部材を用いることができ、この場合には、骨格部材の車両前部にフック部材を取付けることができる。
【0032】
また当て面部は、フック部材との位置関係を考慮して、骨格部材の適宜の部分に形成しておくことができる。例えば骨格部材に車両の高さ方向下側に突出する突部位がある場合、この突部位を当て面部として用いることができる。この種の突部位として、フランジ部のほか、骨格部材を折り曲げ形成してなる段差状の部位、リブ状の部位、ビード状の部位を例示できる。また当て面部は、車両の固縛時のフック部材に当てられるように構成されていればよく、その車両高さ方向の寸法や車両前後方向の寸法等も適宜変更可能である。そして当て面部(フランジ部)と当接部とを隣接配置する場合、これらを溶接又は締結等の手法で固定しておくこともできる。
【0033】
またフック部材の構成は適宜変更可能であり、索状体によるフック部材の引張方向(フック部材の変形する方向)も適宜設定することができる。即ち、フック部材は、索状体の引張により、車両の下面の面方向に変形するようになり、当て面部は、フック部材に対してその変形を規制する側から隣接又は近接して配置される。例えば車両内引き用の索状体を使用する場合、フック部材は、車両内側に変形するようになる。このような場合には、骨格部材の当て面部を、フック部材に対して車両内側から隣接又は近接するように配置しておくことができる。また当接部を、
図2に示すように折り曲げ形成する場合、車両後側又は車両前側のいずれかに折り曲げて、当て面部(下側フランジ部)に対向するように配置しておくことができる。また当接部は、必ずしも当て面部に面的に当てる必要はなく、また当接部の車両高さ方向等の寸法も適宜変更可能である。なお索状体のフックは、フック部材に取付け可能な構成であればよく、必ずしもJ字状に形成されている必要はない。
【符号の説明】
【0034】
2 車両
3 下面
4 フロアパネル
5 リヤサイドレール
6 リヤバンパ
7 アウタパネル
8 リヤサイドメンバ(本発明の骨格部材)
9 蓋材
10 (リヤサイドメンバの)左壁部
11 (リヤサイドメンバの)上壁部
11u 上側フランジ部
12 (リヤサイドメンバの)下壁部
12u 下側フランジ部(本発明のフランジ部)
12a (下側フランジ部の)先端部
13 当て面部
20 フック部材
21 第一フックブラケット
21a (第一フックブラケットの)先端
211 底辺部
212 中央部分
213 引掛部
22 第二フックブラケット
220 左縁
221 下部
222 上部
223 右縁
30 当接部
30a (当接部の)先端部
40 索状体
41 フック
BT ボルト
NT ナット
RF リンイフォース
RT リテーナ
C 隙間
H1 フック部材の締結孔
H2 リヤサイドメンバの締結孔