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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032478
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】体内留置医療器具離脱システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138630
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キアットキッティクル ピシット
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD53
4C160DD63
4C160MM33
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】目標位置で体内留置医療器具を確実に離脱させ、かつ、搬送中に体内留置医療器具が意図せず離脱することを抑制する。
【解決手段】体内留置医療器具を体内の目標位置に搬送して離脱させる体内留置医療器具離脱システムは、筒状のカテーテルと、カテーテルの先端側に配置された体内留置医療器具と、体内留置医療器具に固定されたリング状の固定ワイヤと、カテーテルの内部空間に配置されたプルワイヤとを備える。プルワイヤは、固定ワイヤの長さ方向に沿ったM個(Mは、1以上の整数)の係合位置において固定ワイヤと係合している。固定ワイヤは、プルワイヤとの係合位置とは異なる位置に位置するN個(Nは、Mより大きい2以上の整数)の支持位置において、カテーテルに支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内留置医療器具を体内の目標位置に搬送して離脱させる体内留置医療器具離脱システムであって、
筒状のカテーテルと、
前記カテーテルの先端側に配置された前記体内留置医療器具と、
前記体内留置医療器具に固定されたリング状の固定ワイヤと、
前記カテーテルの内部空間に配置され、前記固定ワイヤの長さ方向に沿ったM個(Mは、1以上の整数)の係合位置において前記固定ワイヤと係合するプルワイヤと、
を備え、
前記固定ワイヤは、前記プルワイヤとの前記係合位置とは異なる位置に位置するN個(Nは、Mより大きい2以上の整数)の支持位置において、前記カテーテルに支持されている、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項2】
請求項1に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記プルワイヤは、先端にリング部を有し、
前記固定ワイヤが前記リング部に通されていることにより、前記プルワイヤが前記固定ワイヤと係合している、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記カテーテルには、複数の孔が形成されており、
前記固定ワイヤは、前記カテーテルの前記複数の孔のそれぞれに通されていることにより、前記カテーテルに支持されている、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項4】
請求項3に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記カテーテルの前記内部空間には、前記複数の孔が形成された支持部が配置されている、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記カテーテルの前記内部空間には、複数の突出部が形成されており、
前記固定ワイヤは、前記カテーテルの前記複数の突出部のそれぞれに引っ掛けられることにより、前記カテーテルに支持されている、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記N個の支持位置は、前記プルワイヤの直径以上の距離だけ互いに離間した2つの前記支持位置の組を含む、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項7】
請求項6に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記M個の係合位置は、前記2つの支持位置の組の間に位置する少なくとも1つの前記係合位置を含む、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記体内留置医療器具は、素線が螺旋状に巻き回された構成を有する塞栓コイルを含む、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項9】
請求項8に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記体内留置医療器具は、前記塞栓コイルの先端に固定された樹脂材料製または金属材料製の先端チップを含み、
前記固定ワイヤは、前記先端チップに固定されている、
体内留置医療器具離脱システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の体内留置医療器具離脱システムであって、
前記固定ワイヤは、前記塞栓コイルの伸張を抑制する伸張抵抗部材である、
体内留置医療器具離脱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、体内留置医療器具離脱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤に対する治療法として、塞栓コイルを脳動脈瘤内に詰め、脳動脈瘤への血液の流入を阻止する塞栓術が行われている。塞栓術には、カテーテルと、塞栓コイルを含む体内留置医療器具(以下、「インプラント」という。)とを備える体内留置医療器具離脱システムが用いられる。塞栓術の際には、インプラントがカテーテルの先端側に配置された状態で脳動脈瘤の位置に搬送され、脳動脈瘤の位置でインプラントがカテーテルから離脱されて留置される。
【0003】
体内留置医療器具離脱システムには、目標位置でインプラントを確実に離脱させることができることが求められる。さらに、体内留置医療器具離脱システムには、目標位置に向けたインプラントの搬送中、例えばインプラントの位置調整のためにカテーテルを基端側に引くことによってインプラントを後退させたときに、インプラントが意図せず離脱することを防止できることが求められる。
【0004】
従来、プルワイヤを基端側に引くインプラント離脱操作を行うことにより、インプラントをカテーテルに固定する固定ワイヤ(例えば、伸張抵抗部材)を切断し、これによりインプラントをカテーテルから離脱させる体内留置医療器具離脱システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-176667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の体内留置医療器具離脱システムでは、カテーテルを基端側に引くインプラント位置調整操作を行うと、インプラントをカテーテルに固定する固定ワイヤに対してインプラント離脱操作時と同様の荷重が作用するため、該荷重によって固定ワイヤが切断されてインプラントが意図せず離脱するおそれがある。このように、従来の体内留置医療器具離脱システムには、インプラントの意図しない離脱の発生を抑制するという点で、向上の余地がある。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される体内留置医療器具離脱システムは、体内留置医療器具を体内の目標位置に搬送して離脱させるシステムであって、筒状のカテーテルと、前記カテーテルの先端側に配置された前記体内留置医療器具と、前記体内留置医療器具に固定されたリング状の固定ワイヤと、前記カテーテルの内部空間に配置されたプルワイヤとを備える。前記プルワイヤは、前記固定ワイヤの長さ方向に沿ったM個(Mは、1以上の整数)の係合位置において前記固定ワイヤと係合している。前記固定ワイヤは、前記プルワイヤとの前記係合位置とは異なる位置に位置するN個(Nは、Mより大きい2以上の整数)の支持位置において、前記カテーテルに支持されている。
【0010】
本体内留置医療器具離脱システムでは、プルワイヤはM個(Mは、1以上の整数)の係合位置において固定ワイヤと係合している一方、固定ワイヤはN個(Nは、Mより大きい2以上の整数)の支持位置においてカテーテルに支持されている。すなわち、固定ワイヤにおけるカテーテルによる支持位置の個数Nは、固定ワイヤにおけるプルワイヤとの係合位置の個数Mより多い。そのため、プルワイヤを基端側に引く離脱操作がなされた際には、固定ワイヤにおける少ない個数の係合位置にプルワイヤからの荷重(せん断力)が集中して作用し、その結果、固定ワイヤが確実に切断され、体内留置医療器具がカテーテルから確実に離脱する。一方、カテーテルを基端側に引く位置調整操作がなされた際には、固定ワイヤにおける多い個数の支持位置に荷重が分散されて作用し、その結果、固定ワイヤの意図しない切断が抑制され、体内留置医療器具が意図せずカテーテルから離脱することが抑制される。従って、本体内留置医療器具離脱システムによれば、目標位置で体内留置医療器具を確実に離脱させることができると共に、搬送中に体内留置医療器具が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0011】
(2)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記プルワイヤは、先端にリング部を有し、前記固定ワイヤが前記リング部に通されていることにより、前記プルワイヤが前記固定ワイヤと係合している構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、体内留置医療器具の搬送の際に、プルワイヤが固定ワイヤから意図せずに外れて係合状態が解消され、プルワイヤを基端側に引く操作による体内留置医療器具の離脱が実現できなくなる事態の発生を回避することができる。
【0012】
(3)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記カテーテルには、複数の孔が形成されており、前記固定ワイヤは、前記カテーテルの前記複数の孔のそれぞれに通されていることにより、前記カテーテルに支持されている構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、体内留置医療器具の搬送の際に、固定ワイヤがカテーテルから意図せずに外れて支持状態が解消され、カテーテルを基端側に引く操作による体内留置医療器具の位置調整が実現できなくなったり、体内留置医療器具が意図せず離脱したりする事態の発生を回避することができる。
【0013】
(4)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記カテーテルの前記内部空間には、前記複数の孔が形成された支持部が配置されている構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、固定ワイヤをカテーテルに支持させるための孔を、カテーテルの外周部ではなくカテーテルの内部空間に形成することができることによって、固定ワイヤがカテーテルの外周部を通る構成を回避することができ、固定ワイヤの意図しない切断の発生を抑制することができる。
【0014】
(5)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記カテーテルの前記内部空間には、複数の突出部が形成されており、前記固定ワイヤは、前記カテーテルの前記複数の突出部のそれぞれに引っ掛けられることにより、前記カテーテルに支持されている構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、比較的シンプルな構成により、固定ワイヤにおけるカテーテルによる支持位置の個数Nが固定ワイヤにおけるプルワイヤとの係合位置の個数Mより多い構成を実現することができる。
【0015】
(6)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記N個の支持位置は、前記プルワイヤの直径以上の距離だけ互いに離間した2つの前記支持位置の組を含む構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、カテーテルを基端側に引く位置調整操作がなされた際に、固定ワイヤに作用する荷重を一定以上の距離だけ離れた2つの支持位置に効果的に分散することによって、固定ワイヤの意図しない切断をより確実に抑制することができ、体内留置医療器具が意図せず離脱することをより確実に抑制することができる。
【0016】
(7)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記M個の係合位置は、前記2つの支持位置の組の間に位置する少なくとも1つの前記係合位置を含む構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、プルワイヤを基端側に引く離脱操作がなされた際に、固定ワイヤに作用する荷重を少なくとも1つの係合位置に効果的に集中させることによって、固定ワイヤのより確実な切断を実現することができ、目標位置で体内留置医療器具をより確実に離脱させることができる。
【0017】
(8)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記体内留置医療器具は、素線が螺旋状に巻き回された構成を有する塞栓コイルを含む構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、目標位置で塞栓コイルを確実に離脱させることができると共に、搬送中に塞栓コイルが意図せず離脱することを抑制することができる。
【0018】
(9)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記体内留置医療器具は、前記塞栓コイルの先端に固定された樹脂材料製または金属材料製の先端チップを含み、前記固定ワイヤは、前記先端チップに固定されている構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、カテーテルを基端側に引く位置調整操作がなされた際に、カテーテルに支持された固定ワイヤに作用する荷重を体内留置医療器具の先端に配置された先端チップに伝達することができ、より円滑な体内留置医療器具の後退動作を実現することができる。
【0019】
(10)上記体内留置医療器具離脱システムにおいて、前記固定ワイヤは、前記塞栓コイルの伸張を抑制する伸張抵抗部材である構成としてもよい。本体内留置医療器具離脱システムによれば、塞栓コイルの伸張を抑制する伸張抵抗部材を固定ワイヤとして用いることによって、新たな部材を追加することなく、目標位置での体内留置医療器具の確実な離脱と、搬送中における体内留置医療器具の意図しない離脱の抑制とを両立させることができる。
【0020】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、体内留置医療器具離脱システム、体内留置医療器具(インプラント)の搬送離脱機構および搬送離脱方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100の構成を概略的に示す説明図
図3】体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図
図4】体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図
図5】体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図
図6】体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図
図7】体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図
図8】第2実施形態における体内留置医療器具離脱システム100aの構成を概略的に示す説明図
図9】第3実施形態における体内留置医療器具離脱システム100bの構成を概略的に示す説明図
図10】第4実施形態における体内留置医療器具離脱システム100cの構成を概略的に示す説明図
図11】第5実施形態における体内留置医療器具離脱システム100dの構成を概略的に示す説明図
図12】第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
A-1.体内留置医療器具離脱システム100の構成:
図1および図2は、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、体内留置医療器具離脱システム100の縦断面(YZ断面)の構成が示されており、図2には、図1のII-IIの位置における体内留置医療器具離脱システム100の横断面(XY断面)の構成が示されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、体内留置医療器具離脱システム100の一部分について、縦断面の構成ではなく側面の構成が示されており、また、体内留置医療器具離脱システム100の他の一部分について、図示が省略されている。また、図1では、体内留置医療器具離脱システム100の中心軸がZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、体内留置医療器具離脱システム100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。これらの点は、以降の図においても同様である。本明細書では、体内留置医療器具離脱システム100およびその構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0023】
体内留置医療器具離脱システム100は、体内留置医療器具(以下、「インプラント」という。)20を体内の目標位置に搬送して離脱させるためのシステムである。より詳細には、体内留置医療器具離脱システム100は、脳動脈瘤の治療のために、塞栓コイル21を含むインプラント20を脳動脈瘤内に搬送し、その位置でインプラント20を離脱させることによって塞栓コイル21を脳動脈瘤内に詰めるための医療用デバイスである。
【0024】
体内留置医療器具離脱システム100は、カテーテル10と、インプラント20と、固定ワイヤ40と、プルワイヤ30とを備える。
【0025】
カテーテル10は、可撓性を有する長尺の筒状部材である。カテーテル10の全長は、例えば100mm~2000mm程度であり、カテーテル10の外径は、例えば0.2mm~2mm程度である。
【0026】
本実施形態では、カテーテル10は、カテーテル本体部11と、カテーテル本体部11よりも先端側に配置されたカテーテル先端部14と、例えば接着剤により構成され、カテーテル本体部11とカテーテル先端部14とを接合するカテーテル接合部19とから構成されている。
【0027】
カテーテル本体部11は、内部空間12が形成された中空筒状の部材である。カテーテル本体部11の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、本実施形態では略円環状である。カテーテル本体部11を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金等の金属材料を採用することができる。
【0028】
カテーテル先端部14は、内部空間18が形成された中空筒状の筒状部17と、筒状部17における軸方向に沿った略中央の位置に形成され、該軸方向に略直交する隔壁状の支持部15とから構成されている。筒状部17の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、本実施形態ではカテーテル本体部11と略同径の略円環状である。支持部15は、筒状部17の内部空間18を軸方向に沿って2つに分けている。支持部15には、支持部15を軸方向に貫通する2つの孔16が形成されている。Z軸方向視で、各孔16は、周方向に沿って延伸した形状である(図2参照)。カテーテル先端部14を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金等の金属材料、または、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の樹脂材料を採用することができる。筒状部17と支持部15とは、一体部材として形成されてもよいし、別部材として形成された後に互いに接合されてもよい。
【0029】
インプラント20は、体内留置医療器具離脱システム100によって目標位置(脳動脈瘤の位置)に搬送される部材であり、カテーテル10に対して先端側に配置されている。インプラント20は、塞栓コイル21と、先端チップ22と、センタリングコイル23とを備える。
【0030】
塞栓コイル21は、素線が螺旋状に巻き回された構成を有するコイル体であり、先端から基端まで延長する空間25が形成された中空円筒状の部材である。インプラント20において、脳動脈瘤の塞栓機能は、主として塞栓コイル21が担う。塞栓コイル21の全長は、例えば10mm~500mm程度である。塞栓コイル21の外径および内径は、カテーテル10(カテーテル先端部14)の外径および内径と略同一である。
【0031】
先端チップ22は、略半球状の部材であり、塞栓コイル21の先端の開口を塞ぐように、塞栓コイル21の先端に接合されている。先端チップ22の外径は、塞栓コイル21の外径に等しいか、または、塞栓コイル21の外径より僅かに小さい。
【0032】
センタリングコイル23は、素線が螺旋状に巻き回された構成を有するコイル体であり、先端から基端まで延長する空間が形成された中空円筒状の部材である。センタリングコイル23の外径は、塞栓コイル21の内径と略同一である。センタリングコイル23の先端部は、塞栓コイル21の基端部における空間25内に挿入されている。この状態で、センタリングコイル23の先端部は、塞栓コイル21の基端部に、例えばロウ付けにより接合されている。本実施形態では、塞栓コイル21とセンタリングコイル23とは、互いに同軸の位置関係となっている。センタリングコイル23の全長は、例えば0.5mm~100mm程度であり、センタリングコイル23の内径は、例えば0.2mm~1mm程度である。
【0033】
インプラント20において、センタリングコイル23の基端部は、塞栓コイル21の基端よりも基端側に突出しており、カテーテル10(カテーテル先端部14)の内部空間18内に収容されている。これにより、インプラント20とカテーテル10とが互いに同軸の位置関係となっている。この状態において、塞栓コイル21の基端とカテーテル10(カテーテル先端部14)の先端とは、軸方向に互いに対向し、かつ、互いに当接もしくは近接している。
【0034】
インプラント20を構成する塞栓コイル21およびセンタリングコイル23を形成する材料としては、例えば、白金、金、タングステン、又はこれらの金属の合金等の放射線不透過性の金属材料を採用することができる。また、先端チップ22を形成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の樹脂材料や、Au-Sn合金、Sn-Ag合金、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等の金属材料を採用することができる。
【0035】
固定ワイヤ40は、インプラント20に固定されたリング状のワイヤである。より詳細には、固定ワイヤ40は、その両端がインプラント20の先端チップ22に固定されることによりリング状に形成されている。リング状の固定ワイヤ40は、カテーテル先端部14の支持部15に形成された2つの孔16のそれぞれに通されている。すなわち、固定ワイヤ40は、先端チップ22に固定された一方の端部から基端側に延伸し、一方の孔16を通って支持部15より基端側の内部空間18に至り、さらに他方の孔16を通って支持部15より先端側に戻り、先端チップ22に固定された他方の端部に至るように、延伸している。これにより、固定ワイヤ40は、2つの孔16のそれぞれを通る位置(第1支持位置SP1および第2支持位置SP2)において、カテーテル10に支持されている。なお、本明細書において、固定ワイヤ40がカテーテル10に支持されている状態とは、固定ワイヤ40とカテーテル10とが現に当接していることによってカテーテル10から固定ワイヤ40に荷重が伝達される状態に加えて、固定ワイヤ40とカテーテル10とが軸方向に相対的に変位したときに両者が当接することによってカテーテル10から固定ワイヤ40に荷重が伝達されるようになるような、当該変位前の状態を含む。固定ワイヤ40がカテーテル10に支持されていることにより、固定ワイヤ40に固定されたインプラント20がカテーテル10から離脱することが規制されている。本実施形態では、2つの支持位置SP(SP1,SP2)は、プルワイヤ30の直径以上の距離だけ互いに離間している。固定ワイヤ40を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂材料を採用することができる。なお、本実施形態では、固定ワイヤ40は、搬送中における塞栓コイル21の伸張を阻止するためのフィラメント状の部材である伸張抵抗部材である。
【0036】
プルワイヤ30は、可撓性を有する長尺状部材である。本実施形態では、プルワイヤ30は、プルワイヤ本体部31と、プルワイヤ本体部31よりも先端側に設けられ、貫通孔33が形成されたリング状のリング部32とから構成されている。プルワイヤ30は、カテーテル10の内部空間12,18に配置されている。プルワイヤ30のリング部32の貫通孔33には、固定ワイヤ40におけるカテーテル先端部14の支持部15より基端側に位置する部分が通されている。これにより、プルワイヤ30は、1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。係合位置EPは、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置している。プルワイヤ30を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料を採用することができる。プルワイヤ30の形状および材料は、後述するようにプルワイヤ30を基端側に引くことによって、係合位置EPにおいて固定ワイヤ40を切断できるように設計されている。
【0037】
A-2.体内留置医療器具離脱システム100の動作:
次に、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100の動作について説明する。図3から図7は、体内留置医療器具離脱システム100の動作を示す説明図である。
【0038】
はじめに、図3を用いて、血管内において脳動脈瘤に向けてインプラント20を前進させる際の体内留置医療器具離脱システム100の動作を説明する。インプラント20を前進させる際には、手技者は、カテーテル10の基端部を把持してカテーテル10を先端側に押し込むような操作を行う。上述したように、体内留置医療器具離脱システム100において、インプラント20を構成する塞栓コイル21の基端とカテーテル10(カテーテル先端部14)の先端とは、軸方向に互いに対向し、かつ、互いに当接もしくは近接している。そのため、手技者によってカテーテル10を先端側に押し込むような操作がなされると、カテーテル10の先端が塞栓コイル21の基端と当接し(図3に当接位置TPを示す)、塞栓コイル21を含むインプラント20が先端側に押し込まれて前進する。
【0039】
次に、図4を用いて、血管内において例えばインプラント20の位置調整のためにインプラント20を後退させる際の体内留置医療器具離脱システム100の動作を説明する。インプラント20を後退させる際には、手技者は、カテーテル10の基端部を把持してカテーテル10を基端側に引き戻すような操作を行う。上述したように、体内留置医療器具離脱システム100において、固定ワイヤ40は、2つの支持位置SP1,SP2においてカテーテル10に支持されている。そのため、手技者によってカテーテル10を基端側に引き戻すような操作がなされると、カテーテル10に支持された固定ワイヤ40が基端側に引き戻され、固定ワイヤ40に固定されたインプラント20も基端側に引き戻されて後退する。
【0040】
次に、図5から図7を用いて、脳動脈瘤の位置でインプラント20をカテーテル10から離脱させる際の体内留置医療器具離脱システム100の動作を説明する。インプラント20を離脱させる際には、手技者は、カテーテル10の基端部を把持してカテーテル10の位置を固定した状態で、プルワイヤ30の基端部を把持してプルワイヤ30を基端側に引くような操作を行う。上述したように、体内留置医療器具離脱システム100において、プルワイヤ30は、1つの係合位置EPにおいて固定ワイヤ40に係合しており、プルワイヤ30の形状および材料は、プルワイヤ30を基端側に引くことによって係合位置EPにおいて固定ワイヤ40を切断できるように設計されている。そのため、手技者によってプルワイヤ30を基端側に引くような操作がなされると、図5に示すように、係合位置EPにおいて固定ワイヤ40にせん断力が作用し、該せん断力が固定ワイヤ40の破断強度を超えると図6に示すように固定ワイヤ40が切断され、これにより固定ワイヤ40による離脱規制が解消され、図7に示すようにインプラント20がカテーテル10から離脱する。なお、固定ワイヤ40が切断された後、カテーテル10からのインプラント20の離脱を促進するために、手技者はカテーテル10を基端側に引く操作を行ってもよい。
【0041】
インプラント20がカテーテル10から離脱した後、手技者は、カテーテル10およびプルワイヤ30の回収のために、両者を基端側に引く。これにより、インプラント20(および固定ワイヤ40)が脳動脈瘤内に留置されたまま、カテーテル10およびプルワイヤ30が基端側に移動して、最終的に体外に取り出される。以上のようにして、体内留置医療器具離脱システム100を用いたインプラント20の脳動脈瘤への搬送および留置が完了する。
【0042】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100は、体内留置医療器具であるインプラント20を体内の目標位置に搬送して離脱させるシステムである。体内留置医療器具離脱システム100は、筒状のカテーテル10と、カテーテル10の先端側に配置されたインプラント20と、インプラント20に固定されたリング状の固定ワイヤ40と、カテーテル10の内部空間12,18に配置されたプルワイヤ30とを備える。プルワイヤ30は、固定ワイヤ40の1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合している。固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である2個の支持位置SP1,SP2においてカテーテル10に支持されている。
【0043】
このように、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、プルワイヤ30は1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合している一方、固定ワイヤ40は2個の支持位置SP1,SP2においてカテーテル10に支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10による支持位置SPの個数N(=2)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、プルワイヤ30を基端側に引くインプラント離脱操作がなされた際には、固定ワイヤ40における少ない個数(具体的には、1個)の係合位置EPにプルワイヤ30からの荷重(せん断力)が集中して作用し(図5参照)、その結果、固定ワイヤ40が確実に切断され、インプラント20がカテーテル10から確実に離脱する。一方、カテーテル10を基端側に引くインプラント位置調整操作がなされた際には、固定ワイヤ40における多い個数(具体的には、2個)の支持位置SPに荷重が分散されて作用し(図4参照)、その結果、固定ワイヤ40の意図しない切断が抑制され、インプラント20が意図せずカテーテル10から離脱することが抑制される。従って、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、プルワイヤ30は先端にリング部32を有しており、固定ワイヤ40がリング部32の貫通孔33に通されていることにより、プルワイヤ30が固定ワイヤ40と係合している。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、インプラント20の搬送の際に、プルワイヤ30が固定ワイヤ40から意図せずに外れて係合状態が解消され、プルワイヤ30を基端側に引く操作によるインプラント20の離脱が実現できなくなる事態の発生を回避することができる。
【0045】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、カテーテル10に複数の孔16が形成されており、固定ワイヤ40は、カテーテル10の複数の孔16のそれぞれに通されていることにより、カテーテル10に支持されている。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、インプラント20の搬送の際に、固定ワイヤ40がカテーテル10から意図せずに外れて支持状態が解消され、カテーテル10を基端側に引く操作によるインプラント20の位置調整が実現できなくなったり、インプラント20が意図せず離脱したりする事態の発生を回避することができる。
【0046】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、カテーテル10の内部空間18に、上記複数の孔16が形成された支持部15が配置されている。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、固定ワイヤ40をカテーテル10に支持させるための孔16を、カテーテル10の外周部ではなくカテーテル10の内部空間18に形成することができることによって、固定ワイヤ40がカテーテル10の外周部を通る構成を回避することができ、固定ワイヤ40の意図しない切断の発生を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、カテーテル10による固定ワイヤ40の複数の支持位置は、プルワイヤ30の直径以上の距離だけ互いに離間した2つの支持位置SPの組(第1支持位置SP1および第2支持位置SP2)を含む。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、カテーテル10を基端側に引くインプラント位置調整操作がなされた際に、固定ワイヤ40に作用する荷重を一定以上の距離だけ離れた2つの支持位置SPに効果的に分散することによって、固定ワイヤ40の意図しない切断をより確実に抑制することができ、インプラント20が意図せず離脱することをより確実に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、固定ワイヤ40とプルワイヤ30との1つの係合位置EPは、上記2つの支持位置SPの組(第1支持位置SP1および第2支持位置SP2)の間に位置する。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、プルワイヤ30を基端側に引くインプラント離脱操作がなされた際に、固定ワイヤ40に作用する荷重を1つの係合位置EPに効果的に集中させることによって、固定ワイヤ40のより確実な切断を実現することができ、目標位置でインプラント20をより確実に離脱させることができる。
【0049】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、インプラント20は、素線が螺旋状に巻き回された構成を有する塞栓コイル21を含む。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、目標位置で塞栓コイル21を確実に離脱させることができると共に、搬送中に塞栓コイル21が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、インプラント20は、塞栓コイル21の先端に固定された樹脂材料製または金属材料製の先端チップ22を含み、固定ワイヤ40は先端チップ22に固定されている。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、カテーテル10を基端側に引くインプラント位置調整操作がなされた際に、カテーテル10に支持された固定ワイヤ40に作用する荷重をインプラント20の先端に配置された先端チップ22に伝達することができ、より円滑なインプラント20の後退動作を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100では、固定ワイヤ40は、塞栓コイル21の伸張を抑制する伸張抵抗部材である。そのため、本実施形態の体内留置医療器具離脱システム100によれば、塞栓コイル21の伸張を抑制する伸張抵抗部材を固定ワイヤ40として用いることによって、新たな部材を追加することなく、目標位置でのインプラント20の確実な離脱と、搬送中におけるインプラント20の意図しない離脱の抑制とを両立させることができる。
【0052】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における体内留置医療器具離脱システム100aの構成を概略的に示す説明図である。図8には、第2実施形態の体内留置医療器具離脱システム100aにおけるカテーテル10aの先端部付近の一部の構成が示されている。以下では、第2実施形態の体内留置医療器具離脱システム100aの構成のうち、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0053】
第2実施形態における体内留置医療器具離脱システム100aは、カテーテル10aの構成が、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100と異なっている。具体的には、第2実施形態における体内留置医療器具離脱システム100aでは、カテーテル10aが基端から先端まで一体部材として構成されている。また、カテーテル10aは、全体として、内部空間が形成された中空筒状の部材であり、先端に近い位置に、カテーテル10aの軸方向に略直交する方向(図8の例ではX軸方向)に延びる棒状の支持部15aを有する。支持部15aの位置において、カテーテル10aにおける中空筒状の部分と支持部15aとの間の空間を孔16と捉えると、支持部15aには支持部15aを軸方向に貫通する2つの孔16が形成されていると言える。固定ワイヤ40は、カテーテル10aに形成された2つの孔16のそれぞれに通されていることにより、2つの支持位置SP1,SP2においてカテーテル10aに支持されている。また、プルワイヤ30は、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置する1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。
【0054】
第2実施形態における体内留置医療器具離脱システム100aでは、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、プルワイヤ30は、1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合しており、固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である2個の支持位置SPにおいてカテーテル10aに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10aによる支持位置SPの個数N(=2)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、第2実施形態の体内留置医療器具離脱システム100aによれば、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0055】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における体内留置医療器具離脱システム100bの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態の体内留置医療器具離脱システム100bの構成のうち、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0056】
第3実施形態における体内留置医療器具離脱システム100bは、カテーテル10bの構成が、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100と異なっている。具体的には、第3実施形態における体内留置医療器具離脱システム100bでは、カテーテル10bが、内部空間12が形成された中空筒状のカテーテル本体部11bと、カテーテル本体部11bの先端に近い位置における内部空間12に充填されるように配置された支持部15bとから構成されている。支持部15bは、例えば樹脂材料により形成されている。支持部15bには支持部15bを軸方向に貫通する2つの孔16が形成されており、固定ワイヤ40は、カテーテル10bに形成された2つの孔16のそれぞれに通されていることにより、2つの支持位置SP1,SP2においてカテーテル10bに支持されている。また、プルワイヤ30は、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置する1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。
【0057】
第3実施形態における体内留置医療器具離脱システム100bでは、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、プルワイヤ30は、1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合しており、固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である2個の支持位置SPにおいてカテーテル10bに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10bによる支持位置SPの個数N(=2)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、第3実施形態の体内留置医療器具離脱システム100bによれば、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0058】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態における体内留置医療器具離脱システム100cの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第4実施形態の体内留置医療器具離脱システム100cの構成のうち、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0059】
第4実施形態における体内留置医療器具離脱システム100cは、カテーテル10cの構成が、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100と異なっている。具体的には、第4実施形態における体内留置医療器具離脱システム100cでは、カテーテル10cを構成するカテーテル先端部14の支持部15cに、4つの孔16が形成されている。固定ワイヤ40は、支持部15cに形成された4つの孔16のそれぞれに通されている。すなわち、固定ワイヤ40は、先端チップ22に固定された一方の端部から基端側に延伸し、1つ目の孔16を通って支持部15cより基端側の内部空間18に至り、2つ目の孔16を通って支持部15cより先端側に戻り、さらに3つ目の孔16を通って再度、支持部15cより基端側の内部空間18に至り、4つ目の孔16を通って再度、支持部15cより先端側に戻り、先端チップ22に固定された他方の端部に至るように、延伸している。これにより、固定ワイヤ40は、4つの孔16のそれぞれを通る位置(第1支持位置SP1、第2支持位置SP2、第3支持位置SP3および第4支持位置SP4)において、カテーテル10cに支持されている。本実施形態では、各支持位置SP1,SP2,SP3,SP4は、プルワイヤ30の直径以上の距離だけ互いに離間している。また、プルワイヤ30は、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置する1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。
【0060】
第4実施形態における体内留置医療器具離脱システム100cでは、プルワイヤ30は、1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合しており、固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である4個の支持位置SPにおいてカテーテル10cに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10cによる支持位置SPの個数N(=4)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、第4実施形態の体内留置医療器具離脱システム100cによれば、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0061】
E.第5実施形態:
図11は、第5実施形態における体内留置医療器具離脱システム100dの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第5実施形態の体内留置医療器具離脱システム100dの構成のうち、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0062】
第5実施形態における体内留置医療器具離脱システム100dは、カテーテル10dの構成が、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100と異なっている。具体的には、第5実施形態における体内留置医療器具離脱システム100dでは、カテーテル10dが、基端から先端まで一体部材であり、内部空間12が形成された中空筒状の部材である。カテーテル10dの先端付近には、カテーテル10dを径方向に貫通する4つの孔16が形成されている。固定ワイヤ40は、カテーテル10dに形成された4つの孔16のそれぞれに通されていることにより、カテーテル10dに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40は、先端チップ22に固定された一方の端部から基端側に延伸し、1つ目の孔16を通ってカテーテル10dの内部空間12から外周側に至り、2つ目の孔16を通ってカテーテル10dの内部空間12内に戻り、さらに3つ目の孔16を通って再度、カテーテル10dの外周側に至り、4つ目の孔16を通って再度、カテーテル10dの内部空間12内に戻り、先端チップ22に固定された他方の端部に至るように、延伸している。これにより、固定ワイヤ40は、4つの孔16のうち、上述した2つ目の孔および3つ目の孔を通る位置(第1支持位置SP1および第2支持位置SP2)において、カテーテル10dに支持されている。本実施形態では、各支持位置SP1,SP2は、プルワイヤ30の直径以上の距離だけ互いに離間している。また、プルワイヤ30は、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置する1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。
【0063】
第5実施形態における体内留置医療器具離脱システム100dでは、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、プルワイヤ30は、1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合しており、固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である2個の支持位置SPにおいてカテーテル10dに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10dによる支持位置SPの個数N(=2)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、第5実施形態の体内留置医療器具離脱システム100dによれば、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0064】
F.第6実施形態:
図12は、第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第6実施形態の体内留置医療器具離脱システム100eの構成のうち、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0065】
第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eは、カテーテル10eの構成が、第1実施形態における体内留置医療器具離脱システム100と異なっている。具体的には、第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eでは、カテーテル10eが、内部空間12が形成された中空筒状のカテーテル本体部11eと、カテーテル本体部11eの先端に近い位置における内部空間12に形成された2つの突出部13とから構成されている。各突出部13は、カテーテル10eの外周付近からカテーテル10eの中心軸に向かう方向に延伸し、内部空間12内で体内留置医療器具離脱システム100eの基端側に折り返された構成を有している。固定ワイヤ40は、カテーテル10eに形成された2つの突出部13のそれぞれに引っ掛けられることにより、2つの支持位置SP1,SP2においてカテーテル10eに支持されている。また、プルワイヤ30は、2つの支持位置SP1,SP2の間に位置する1つの係合位置EPにおいて、固定ワイヤ40と係合している。
【0066】
第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eでは、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、プルワイヤ30は、1個の係合位置EPにおいて固定ワイヤ40と係合しており、固定ワイヤ40は、プルワイヤ30との係合位置EPとは異なる位置である2個の支持位置SPにおいてカテーテル10eに支持されている。すなわち、固定ワイヤ40におけるカテーテル10eによる支持位置SPの個数N(=2)は、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数M(=1)より多い。そのため、第6実施形態の体内留置医療器具離脱システム100eによれば、上述した第1実施形態の体内留置医療器具離脱システム100と同様に、目標位置でインプラント20を確実に離脱させることができると共に、搬送中にインプラント20が意図せず離脱することを抑制することができる。
【0067】
また、第6実施形態における体内留置医療器具離脱システム100eでは、カテーテル10eの内部空間12に2つの突出部13が形成されており、固定ワイヤ40は、カテーテル10eの2つの突出部13のそれぞれに引っ掛けられることにより、カテーテル10eに支持されている。そのため、第6実施形態の体内留置医療器具離脱システム100eによれば、比較的シンプルな構成により、固定ワイヤ40におけるカテーテル10eによる支持位置SPの個数Nが固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数Mより多い構成を実現することができる。
【0068】
G.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
上記各実施形態における体内留置医療器具離脱システム100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態では、固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数Mは1であるが、個数Mが固定ワイヤ40におけるカテーテル10eによる支持位置SPの個数Nより少ない限りにおいて、係合位置EPの個数Mは2以上であってもよい。また、上記各実施形態では、固定ワイヤ40におけるカテーテル10eによる支持位置SPの個数Nは2または4であるが、個数Nが固定ワイヤ40におけるプルワイヤ30との係合位置EPの個数Mより多い限りにおいて、支持位置SPの個数Nは3または5以上であってもよい。
【0070】
上記各実施形態における係合位置EPと支持位置SPとの関係は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、係合位置EPが、必ずしも1つの支持位置SPと他の1つの支持位置SPとの間に位置している必要はない。
【0071】
上記各実施形態では、固定ワイヤ40として、塞栓コイルの伸張を抑制する伸張抵抗部材を用いているが、伸張抵抗部材とは別の部材として固定ワイヤ40を設けてもよい。この場合において、伸張抵抗部材は省略してもよい。
【0072】
上記各実施形態では、プルワイヤ30がリング部32を備え、固定ワイヤ40がリング部32の孔を通ることによってプルワイヤ30が固定ワイヤ40に係合しているが、両者の係合の形態はこれに限られない。例えば、プルワイヤ30がフック部を備え、固定ワイヤ40がフック部に引っ掛けられることによってプルワイヤ30が固定ワイヤ40に係合しているとしてもよい。
【0073】
上記各実施形態において、一体形成された部材を、複数の部分が互いに接合された構成に変更してもよいし、反対に、複数の部分が互いに接合された部材を、一体形成された構成に変更してもよい。また、上記各実施形態において、各部材の形成材料は、あくまで一例であり、他の材料により形成されてもよい。
【0074】
上記各実施形態では、塞栓コイル21を含むインプラント20を体内の目標位置に搬送して離脱させる体内留置医療器具離脱システム100を例に用いて説明したが、本明細書に開示される技術は、体内留置医療器具を体内の目標位置に搬送して離脱させる体内留置医療器具離脱システム一般について同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:カテーテル 11:カテーテル本体部 12:内部空間 13:突出部 14:カテーテル先端部 15:支持部 16:孔 17:筒状部 18:内部空間 19:カテーテル接合部 20:体内留置医療器具(インプラント) 21:塞栓コイル 22:先端チップ 23:センタリングコイル 25:空間 30:プルワイヤ 31:プルワイヤ本体部 32:リング部 33:貫通孔 40:固定ワイヤ 100:体内留置医療器具離脱システム EP:係合位置 SP:支持位置 TP:当接位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12