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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032540
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】臓器結紮用テープ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138731
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】390029702
【氏名又は名称】株式会社河野製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 多久磨
(72)【発明者】
【氏名】岩立 力
(72)【発明者】
【氏名】久家 聖一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD33
4C160HH20
(57)【要約】
【課題】牽引を解いた場合であっても、結紮にゆるみが生じることのない臓器結紮用テープを提供する。
【解決手段】長尺状のテープ部材と、前記テープ部材に固定され前記テープ部材が先端部側から挿入される環状部と、前記環状部に挿入した前記テープ部材の前記環状部に対する摺動を制限するために前記テープ部材に固定されたストッパとを備えた臓器結紮用テープである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のテープ部材と、
前記テープ部材に固定され前記テープ部材が先端部側から挿入される環状部と、
前記環状部に挿入した前記テープ部材の前記環状部に対する摺動を制限するために前記テープ部材に固定されたストッパとを備えた
臓器結紮用テープ。
【請求項2】
前記環状部は、前記テープ部材の後端側に設けられている
請求項1に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項3】
前記環状部および/または前記ストッパは、前記テープ部材を中間部において結束することによって形成されている
請求項1または2に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項4】
前記環状部および/または前記ストッパは、前記テープ部材を折りたたんで前記テープ部材の積層部を固着させることによって形成されている
請求項1または2に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項5】
前記環状部および/または前記ストッパは、前記テープ部材の長手方向に前記テープ部材を線状に硬化させた硬化部を有する
請求項3または4に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項6】
前記ストッパは、前記テープ部材に固定され前記テープ部材が前記先端部側から挿入されるもう一つの環状部によって構成されている
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項7】
前記環状部と前記もう一つの環状部とは、結紮対象となる臓器の結紮周長よりも短い所定間隔で設けられている
請求項6に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項8】
前記ストッパは、前記テープ部材の結び目によって構成されている
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項9】
前記ストッパは、前記テープ部材の少なくとも一方側の主面において前記環状部側に突出して設けられている
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項10】
前記ストッパは、前記テープ部材において前記環状部との摩擦力が強められた部分からなる
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項11】
前記ストッパは、前記テープ部材において前記テープ部材の幅方向の縁部に形成した切り込み部からなる
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項12】
前記ストッパとして、前記テープ部材に固定され前記テープ部材が先端部側から挿入されるもう一つの環状部と、前記もう一つの環状部とは別の構成のストッパとを有し、
前記別の構成のストッパは、前記環状部および前記もう一つの環状部よりも前記テープ部材の前記先端部側に設けられている
請求項1~11のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【請求項13】
前記テープ部材の先端部は、斜めに切断されている
請求項1~12のうちの何れか1項に記載の臓器結紮用テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡手術に際して用いられる臓器結紮用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡手術においては、例えば手術部位の視野を確保することを目的として、臓器を結紮して所望の方向へ牽引するためのテープ部材が用いられている。下記特許文献1には、テープの一端部に固着して取付ける外科用針と、テープの他端部側に形成して設けた所望の大きさのループ部を備えた内視鏡手術用臓器牽引用デバイスが開示されている。このデバイスは、テープを子宮の頸部に巻き付け、外科用針をループ部に挿入して貫通させ、テープを子宮頸部に巻回した状態で、外科用針を腹壁に刺入し腹壁を貫通させて用いられる。そして、腹壁を貫通させた外科用針を患者の体外から牽引することにより、腹腔内において子宮を所望の方向へ牽引し、子宮の周辺の視野(術野)を広げることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3229109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したデバイスは、子宮を摘出する際にテープの牽引を解くと、結紮にゆるみが生じるため、子宮頚部に腫瘍がある場合には、子宮頚部から腹腔内へ大量に腫瘍が散布されてしまうことが危惧される。
【0005】
そこで本発明は、牽引を解いた場合であっても、結紮にゆるみが生じることのない臓器結紮用テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、長尺状のテープ部材と、テープ部材に固定されテープ部材が先端部側から挿入される環状部と、環状部に挿入したテープ部材の環状部に対する摺動を制限するためにテープ部材に固定されたストッパとを備えた臓器結紮用テープである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、牽引を解いた場合であっても、結紮にゆるみが生じることのない臓器結紮用テープを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る臓器結紮用テープの全体図である。
図2】第1実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図3】第1実施形態に係る臓器結紮用テープによる臓器の結紮手順を説明する模式図である。
図4】第1実施形態の変形例1を示す図である。
図5】第1実施形態の変形例2を示す図である。
図6】第2実施形態に係る臓器結紮用テープの全体図である。
図7】第2実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図8】第3実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図9】第4実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図10】第5実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図11】第6実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図である。
図12】第7実施形態に係る臓器結紮用テープの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の臓器結紮用テープに関する各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る臓器結紮用テープ1の全体図である。図1に示す臓器結紮用テープ1は、長尺状のテープ部材10と、テープ部材10に設けられた2つの環状部11,12とを有する。以下に、これらの構成を詳細に説明する。
【0011】
<テープ部材10>
テープ部材10は、臓器に対して巻き回して用いられるものである。このようなテープ部材10は、引張り強度が強く、ある程度の剛性を有しつつ、伸縮しない特性を有するものが好ましく用いられる。このような特性を有するものとして、例えばポリエステルテープを用いることができる。またテープ部材10は、内視鏡手術に際して、取り扱いのしやすい長さおよび幅を有することとする。例えば、この臓器結紮用テープ1が子宮頚部の結紮に用いるためのものであれば、一例としてテープ部材10の幅[W]は5mm程度、長さ[L]は400mm程度である。
【0012】
また、テープ部材10の先端部10aは、テープ部材10の長さ方向に対して垂直ではなく、斜めにカットされていることが好ましい。これにより、テープ部材10の先端部10aは、次に説明する環状部11,12に対しての挿入が容易となる。
【0013】
<環状部11,12>
図2は、第1実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図であって、環状部11,12のうちの何れか一方とその周辺を拡大した図である。この図に示すように、環状部11,12は、テープ部材10の先端部10aが挿入される部分であって、テープ部材10に取り付けられている。これにより、環状部11,12に対して、テープ部材10を先端部10a側から挿入して形成される大口径の環状部分が、臓器を結紮する結紮部[A]となる。
【0014】
このような環状部11,12は、テープ部材10の中間部を結束することによって形成した部分である。ここでテープ部材10の中間部を結束するとは、テープ部材10を折り畳んで2本に束ね、束ねた部分に結び目を形成することを言う。環状部11,12は、このようにして形成した結び目において、2本に束ねたテープ部材10が連続している部分よって構成される。このテープ部材10からなる環状部11,12は、環状の開口形状が可変であり、環状部11,12を平坦に押し潰した状態においての結束部13からの突出高さ[H]が、テープ部材10の幅[W]よりも大きい。例えばテープ部材10の幅[W]が5mm程度である場合、この突出高さ[H]は10~15mm程度である。これにより、環状部11,12は、テープ部材10の挿通が可能であり、環状部11,12に挿通された状態のテープ部材10が、環状部11,12に対して摺動自在となる。
【0015】
また図1および図2に示すように、環状部11,12は、典型的にはテープ部材10の後端部10bに近接して設けられることとする。これにより、臓器を結紮する際に使用することのない環状部11,12よりも後端部10b側を短くして、臓器結紮用テープ1をコンパクトにすることができる。また2つの環状部11,12の間隔[D]は、結紮対象となる臓器の大きさによって適宜に設定され、結紮対象となる臓器の結紮周長よりも短いことが好ましい。例えば、子宮頚部の結紮に用いる臓器結紮用テープ1であれば、環状部11,12の間隔[D]は55mm程度であるが、これに限定されることはない。これにより、以降に説明する結紮の手順で臓器を結紮する際に、環状部11と環状部12との干渉を防止することができる。
【0016】
そして、以上のような環状部11,12は、何れか一方が、何れか他方に挿通したテープ部材10の摺動を制限し、テープ部材10によって形成された結紮部[A]の緩みを防止するためのストッパとして用いられる。以下においては、一例として2つの環状部11,12のうち、テープ部材10の先端部10a側に設けられた環状部12をストッパとして用いることとし、以下、環状部12を環状ストッパ12と称して説明する。この場合、臓器を結紮する際には、テープ部材10の後端部10b側に設けられている他方の環状部11に対して、先にテープ部材10の先端部10aを挿入して結紮部[A]を形成する。またこの場合、上述したテープ部材10の長さ[L]は、環状ストッパ12ではなく、先にテープ部材10の先端部10aが挿入される環状部11から先端部10aまでの長さであることとする。
【0017】
<結紮の手順>
図3は、第1実施形態に係る臓器結紮用テープ1による臓器[Or]の結紮を説明する模式図である。この図に示す結紮の手順は、腹壁を貫通させて腹腔内に挿入した鉗子(図示省略)の操作によって実施される。また、臓器結紮用テープ1は、その全体が、腹壁を貫通させた穴から腹腔内に挿入されていることとする。以下、環状部11,12のうち、テープ部材10の先端部10a側に設けられた環状部12を環状ストッパ12と称し、図3に基づいて、臓器結紮用テープ1による結紮の手順を説明する。
【0018】
先ず、図3(1)に示すように、臓器結紮用テープ1の環状部11を所定部に保持した状態で、テープ部材10を臓器[Or]に対して第1方向から巻き回す。次に図3(2)に示すように、テープ部材10の先端部10aを環状部11内に挿入し、テープ部材10を環状部11に挿通させた状態とする。その後、図3(3)に示すように、環状部11に挿通させたテープ部材10の先端部10a側を、第1方向と逆の第2方向に折り返す。この折り返しにより、環状部11を折り返した周方向に牽引することで、環状部11を扁平形状とし、弾力性を有する臓器[Or]からの反発によって環状部11を扁平形状に保持し、環状部11に挿通されたテープ部材10の摺動を抑制する。
【0019】
続いて図3(4)に示すように、環状部11を挿通させたテープ部材10の先端部10a側を、臓器[Or]に対して第2方向から巻き回す。次いで図3(5)に示すように、テープ部材10の先端部10aを、環状ストッパ12に挿入し、テープ部材10を環状ストッパ12に挿通させた状態とする。その後は、図3(6)に示すように、環状ストッパ12に挿通させたテープ部材10の先端部10a側を、第2方向とは逆の第1方向側に折り返して牽引する。この折り返しにより、環状ストッパ12を扁平形状とし、弾力性を有する臓器[Or]からの反発によって環状ストッパ12を扁平形状に保持し、環状ストッパ12に挿通されたテープ部材10の摺動を抑制する。さらに、臓器[Or]をテープ部材10で二重巻きにし、弾力性を有する臓器[Or]からの反発によってテープ部材10の重なり部分に摩擦力を生じさせてテープ部材10の摺動を抑制する。
【0020】
以上により、臓器[Or]は、臓器結紮用テープ1によって結紮される。この際、テープ部材10を牽引するほど、臓器[Or]に対する結紮力を強めることができる。また、環状ストッパ12に挿通させたテープ部材10の先端部10a側を所定方向に牽引することにより、腹腔内において結紮された臓器[Or]を所定の方向に移動させることができる。
【0021】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態の臓器結紮用テープ1によれば、テープ部材10に環状部11と環状ストッパ12とを設けたことにより、上述のように臓器[Or]を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。これにより、テープ部材10の牽引を解いた場合であっても、結紮にゆるみが生じることがなく、結紮力を維持することが可能となる。この結果、臓器[Or]を摘出するためにテープ部材10の牽引を解いた場合に、結紮による止血が可能であり、また臓器[Or]から腹腔内へ大量に腫瘍が散布されてしまうことを防止した内視鏡手術が可能となる。
【0022】
また、この臓器結紮用テープ1によれば、臓器[Or]を結紮した状態において、鉗子の操作によって環状部11または環状ストッパ12を変形させることで、環状部11または環状ストッパ12とテープ部材10との間の摩擦力が低減する。これにより、環状部11または環状ストッパ12においてのテープ部材10の摺動性を回復させ、容易に結紮力を緩めることも可能である。
【0023】
≪第1実施形態の変形例1≫
図4は、第1実施形態の変形例1を示す図である。図4に示すように、臓器結紮用テープ1の環状部11,12は、テープ部材10の一部を折り畳んで縫い合わせ、または熱圧着によって固着させた構成であってもよい。この場合、テープ部材10の一部を折り畳んだ頂部から、テープ部材10の長さ方向の所定位置を固着部13aとし、この固着部13aにおいて、2枚に重なるテープ部材10が縫い合わされ、または熱圧着されている。
【0024】
このような固着部13aによって形成された環状部11,12も、第1実施形態の環状部と同様に、テープ部材10が挿通可能であり、環状部11、12に対して摺動自在にテープ部材10が挿通されるように設計されていることとする。
【0025】
なお、環状部11,12は、別体で用意したテーブ材料を環状にして、テープ部材10に対して固着させた構成であってもよい。さらに環状部11、12のうちの何れか一方は、第1実施形態で示したような結束によって形成されたものであってもよい。
【0026】
このような変形例1の構成であれば、環状部11,12が、テープ部材10の固着によって形成されているため、テープ部材10の結束によって形成した場合に生じる結束部の緩みや変形がなく、環状部11,12の大きさを維持することが可能である。
【0027】
≪第1実施形態の変形例2≫
図5は、第1実施形態の変形例2を示す図である。図5に示すように、臓器結紮用テープ1の環状部11,12は、テープ部材10の長手方向に、縫い目または加熱による線状の硬化部13bを有していてもよい。このような硬化部13bは、環状部11,12を構成するテープの幅方向の中央において、テープの長手方向に沿って設けられている。
【0028】
なお、図5においては、環状部11,12が、テープ部材10の固着によって形成されている場合を図示したが、環状部11,12は、第1実施形態で示したようなテープ部材10の結束によって形成されたものであってもよい。
【0029】
このような変形例2の構成であれば、環状部11,12に設けた硬化部13bが、環状部11,12に挿通されたテープ部材10に対して摩擦を与えてストッパとして機能する。これにより、牽引を解いた場合の結紮力の保持を、さらに確実とすることができる。
【0030】
≪第2実施形態≫
図6は、第2実施形態に係る臓器結紮用テープ2の全体図である。この図に示す第2実施形態の臓器結紮用テープ2が、第1実施形態で説明した臓器結紮用テープ1と異なるところは、ストッパ20の構成にある。テープ部材10および環状部11の構成は、第1実施形態と同様であり、環状部11については変形例1,2(図4図5参照)の適用が可能である。このため、ここではストッパ20の構成のみを説明する。
【0031】
<ストッパ20>
ストッパ20は、環状部11に挿通したテープ部材10の摺動を制限し、テープ部材10の先端部10aを環状部11に挿通したことによって形成された結紮部[A](図2参照)の緩みと拡大を防止する部分である。図7は、第2実施形態に係る臓器結紮用テープの要部拡大図であって、ストッパ20の周辺を拡大した図である。
【0032】
これらの図6および図7に示すように、第2実施形態におけるストッパ20は、テープ部材10に形成した結び目によって構成されている。このようなストッパ20は、テープ部材10に対して所定間隔で複数配置され、図6に示した例においては5つのストッパ20が設けられた状態を示している。
【0033】
複数のストッパ20の配置領域は、結紮対象となる臓器の大きさ等によって、適宜に設定されていることとする。またストッパ20の配置間隔は、狭い程、結紮部[A](図2参照)の大きさを多段階で制御し易いが、ストッパ20の個数が多い程、臓器結紮用テープ2が嵩張り、ストッパ20が配置された領域におけるテープ部材10の柔軟性が損なわれる。このため、ストッパ20の配置間隔および配置個数は、これらを考慮して適宜に設定されていることとする。
【0034】
<結紮の手順>
このような構成の臓器結紮用テープ2を用いた臓器の結紮は、腹腔内に挿入した鉗子の操作によって実施される。この場合、臓器結紮用テープ2の環状部11を所定部に保持した状態で、テープ部材10を臓器に対して巻き回し、テープ部材10の先端部10aを環状部11に挿通させる。また、環状部11に挿通させたテープ部材10の先端部10a側を、挿通の方向とは逆の方向に牽引する。この際、複数のストッパ20のうちの1つ以上が環状部11を通過し、臓器が結紮されるまで、環状部11の位置を固定した状態でテープ部材10の先端部10a側を牽引する。これにより、臓器結紮用テープ2は、環状部11が扁平形状となり、弾力性を有する臓器[Or]からの反発によって環状部11が扁平形状に保持される。また、環状部11を通過したストッパ20が、扁平形状に潰れた環状部11に引っかかり、環状部11に挿通されたテープ部材10の摺動を抑制する。その後は、テープ部材10の先端部10a側を所定方向に牽引する。これにより、臓器結紮用テープ2によって結紮された臓器は、所定の方向に牽引されて腹腔内において移動する。
【0035】
<第2実施形態の効果>
以上説明した第2実施形態の臓器結紮用テープ2も、テープ部材10に環状部11とストッパ20とを設けたことにより、上述のように臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。これにより、第1実施形態と同様に、テープ部材10の牽引を解いた場合に、結紮力を維持することが可能となる。
【0036】
≪第3実施形態≫
図8は、第3実施形態に係る臓器結紮用テープ3の要部拡大図である。この図に示す第3実施形態の臓器結紮用テープ3は、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態とは各ストッパ30の構成のみが異なる。なお、図8においては、環状部11がテープ部材10の一部を折り畳んで縫い合わせ、または熱圧着によって固着させた固着部13aによって構成された状態を示している。しかしながら、テープ部材10および環状部11の構成は、第1実施形態と同様であり、環状部11は、テープ部材10の結束によって形成されたもの(図2参照)であってもよく、また変形例2のように硬化部13b(図5参照)を有していてもよい。以下、ストッパ30の構成を説明する。
【0037】
<ストッパ30>
本第3実施形態のストッパ30は、テープ部材10の一主面側において、環状部11側に向かって突出する形状を有する。このようなストッパ30は、例えばテープ部材10の中間部を環状部11側に折り畳んで重ね合わせ、重ね合わせた部分において環状部11から離れた位置を縫い合わせ、または熱圧着によって固着した構成である。また、このようなストッパ30は、別体で用意したテーブ材料を、テープ部材10の一主面側に固着させた構成であってもよい。
【0038】
テープ部材10に対する固着部30aからのストッパ30の突出長さは、ある程度の長さまでは、長い程、環状部11に挿通したテープ部材10の摺動を制限する効果が高いが、臓器結紮用テープ3が嵩張る要因となるため、適宜の長さに設定されていることとする。またストッパ30の配置領域、配置間隔および配置個数は、第2実施形態と同様に適宜に設定されていることとする。
【0039】
<結紮の手順>
第3実施形態の臓器結紮用テープ3を用いた臓器の結紮の手順は、第2実施形態で説明した結紮の手順と同様に実施する。
【0040】
<第3実施形態の効果>
以上説明した第3実施形態の臓器結紮用テープ3も、テープ部材10に環状部11とストッパ30とを設けたことにより、第2実施形態で説明したように臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。また、ストッパ30は、環状部11側に向かって突出した形状であるため、テープ部材10の先端部10aを環状部11に挿入してテープ部材10を牽引した場合に、ストッパ30は環状部11を通過し易い。しかしながら、環状部11を通過させたストッパ30は、挿入方向と逆方向にテープ部材10を牽引した場合に環状部11に引っかかる。このため、臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動による結紮の緩みを、確実に防止することが可能である。
【0041】
≪第4実施形態≫
図9は、第4実施形態に係る臓器結紮用テープ4の要部拡大図である。この図に示す第4実施形態の臓器結紮用テープ4は、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態とは各ストッパ40の構成のみが異なる。なお、図9においては、環状部11がテープ部材10の一部を折り畳んで縫い合わせ、または熱圧着によって固着させた固着部13aによって構成された状態を示している。しかしながら、テープ部材10および環状部11の構成は、第1実施形態と同様であり、環状部11は、テープ部材10の結束によって形成されたもの(図2参照)であってもよく、また変形例2のように硬化部13b(図5参照)を有していてもよい。以下、ストッパ40の構成を説明する。
【0042】
<ストッパ40>
本第4実施形態のストッパ40は、テープ部材10の両側主面において、環状部11側に向かって突出する形状を有する。このようなストッパ40は、例えばテープ部材10の中間部をテープ部材10の両面側において環状部11側に折り畳んで重ね合わせ、重ね合わせた部分において環状部11から最も離れた位置を縫い合わせ、または熱圧着によって固着された構成である。また、このようなストッパ40は、別体で用意したテーブ材料を、テープ部材10の両面側に固着させた構成であってもよい。なお、このようなストッパ40は、テープ部材10の両側主面において、テープ部材10の長さ方向にずらした位置に交互に配置されていてもよい。
【0043】
テープ部材10に対する固着部40aからのストッパ40の突出長さは、ある程度の長さまでは、長い程、環状部11に挿通したテープ部材10の摺動を制限する効果が高いが、臓器結紮用テープ4が嵩張る要因となるため、適宜の長さに設定されていることとする。またストッパ40の配置領域、配置間隔および配置個数は、第2実施形態と同様に適宜に設定されていることとする。
【0044】
<結紮の手順>
第4実施形態の臓器結紮用テープ4を用いた臓器の結紮の手順は、第2実施形態で説明した結紮の手順と同様に実施する。
【0045】
<第4実施形態の効果>
以上説明した第4実施形態の臓器結紮用テープ4も、テープ部材10に環状部11とストッパ40とを設けたことにより、第2実施形態で説明したように臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。また、ストッパ40は、テープ部材10の両側主面において環状部11側に向かって突出した形状であるため、第3実施形態の構成と比較して、さらにテープ部材10の摺動による結紮の緩みを、確実に防止することが可能である。
【0046】
≪第5実施形態≫
図10は、第5実施形態に係る臓器結紮用テープ5の要部拡大図である。この図に示す第5実施形態の臓器結紮用テープ5は、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態とは各ストッパ50の構成のみが異なる。なお、図10においては、環状部11がテープ部材10の一部を折り畳んで縫い合わせ、または熱圧着によって固着させた固着部13aによって構成された状態を示している。しかしながら、テープ部材10および環状部11の構成は、第1実施形態と同様であり、環状部11は、テープ部材10の結束によって形成されたもの(図2参照)であってもよく、また変形例2のように硬化部13b(図5参照)を有していてもよい。以下、ストッパ50の構成を説明する。
【0047】
<ストッパ50>
本第5実施形態のストッパ50は、テープ部材10を幅方向にわたって線状に硬化させることで、環状部11との摩擦力が強められた部分からなる。テープ部材10の硬化は、加熱または縫い目の形成による。各ストッパ50は、テープ部材10の幅方向にわたる長さであることとするが、これに限定されることはない。また、ストッパ50の配置領域は、第2実施形態と同様であり、結紮対象となる臓器の大きさ等によって、適宜に設定されていることとする。またストッパ50の配置間隔は、狭い程、結紮部[A](図2参照)の大きさを制御し易いが、ストッパ50の個数が多い程、ストッパ50が配置された領域におけるテープ部材10の柔軟性が損なわれる。このため、ストッパ50の配置間隔および配置個数は、これらを考慮して適宜に設定されていることとする。
【0048】
<結紮の手順>
第5実施形態の臓器結紮用テープ5を用いた臓器の結紮の手順は、第2実施形態で説明した結紮の手順と同様に実施する。
【0049】
<第5実施形態の効果>
以上説明した第5実施形態の臓器結紮用テープ5も、テープ部材10に環状部11とストッパ50とを設けたことにより、第2実施形態で説明したように臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。さらに、テープ部材10を幅方向に線状に硬化させたストッパ50は、臓器を結紮することによって扁平形状に変形した環状部11との間で摩擦力を強めることにより、環状部11に挿通されたテープ部材10の摺動を抑制する。このため、この臓器結紮用テープ5によれば、臓器を結紮した状態において、鉗子の操作によって環状部11を変形させることで、環状部11とテープ部材10との間の摩擦力が低減する。これにより、環状部11においてのテープ部材10の摺動性を回復させ、容易に結紮力を緩めることも可能である。
【0050】
なお、第5実施形態においては、テープ部材10の幅方向にテープ部材10を線状に硬化させることで、環状部11との摩擦力を強めた構成のストッパ50を例示した。しかしながら、環状部11との摩擦力を強めたストッパ50の別の例として、テープ部材10を表面処理することで、摩擦力を強めた構成を例示することができる。このような表面処理としては、例えばプラズマ処理またはウレタンコート処理などが例示され、本第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
≪第6実施形態≫
図11は、第6実施形態に係る臓器結紮用テープ6の要部拡大図である。この図に示す第6実施形態の臓器結紮用テープ6は、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態とは各ストッパ60の構成のみが異なる。なお、図11においては、環状部11がテープ部材10の一部を折り畳んで縫い合わせ、または熱圧着によって固着させた固着部13aによって構成された状態を示している。しかしながら、テープ部材10および環状部11の構成は、第1実施形態と同様であり、環状部11は、テープ部材10の結束によって形成されたもの(図2参照)であってもよく、また変形例2のように硬化部13b(図5参照)を有していてもよい。以下、ストッパ60の構成を説明する。
【0052】
<ストッパ60>
本第6実施形態のストッパ60は、テープ部材10の幅方向の端縁に形成した切り込み部分からなる。ストッパ60を構成する切込み形状および切り込みの大きさは、テープ部材10の強度が保たれるように設定されていることとする。また、ストッパ60の配置領域は、第2実施形態と同様であり、結紮対象となる臓器の大きさ等によって、適宜に設定されていることとする。またストッパ60の配置間隔は、狭い程、結紮部[A](図2参照)の大きさを制御し易いが、ストッパ60の個数が多い程、テープ部材10の強度が損なわれる。このため、ストッパ60の配置間隔および配置個数は、これらを考慮して適宜に設定されていることとする。
【0053】
<第6実施形態の効果>
以上説明した第6実施形態の臓器結紮用テープ6も、テープ部材10に環状部11とストッパ60とを設けたことにより、第2実施形態で説明したように臓器を結紮した状態においてのテープ部材10の摺動を防止することができる。また、テープ部材10の幅方向の両端に形成した切り込みからなるストッパ60は、臓器を結紮することによって扁平形状に変形した環状部11の縁部に対して引っ掛かりが生じることにより、環状部11に挿通されたテープ部材10の摺動を抑制する。このため、この臓器結紮用テープ6によれば、臓器を結紮した状態において、鉗子の操作によって環状部11を変形させることで、環状部11の縁部に対するストッパ60の引っ掛かりが解消され易くなる。これにより、環状部11においてのテープ部材10の摺動性を回復させ、容易に結紮力を緩めることも可能である。
【0054】
≪第7実施形態≫
図12は、第7実施形態に係る臓器結紮用テープ7の全体図である。この図に示す第7実施形態の臓器結紮用テープ7は、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成のものである。すなわち、この臓器結紮用テープ7は、長尺状のテープ部材10によって構成されたものであり、何れか一方がストッパとして用いられる2つの環状部11,12と、さらにテープ部材10の結び目からなる複数のストッパ20を有する。
【0055】
例えば、2つの環状部11,12のうち、テープ部材10の先端部10a側に設けられた環状部12が環状ストッパ12として用いられる。この場合、他方の環状部11に対して、結び目からなる複数のストッパ20の配置領域は、結紮対象となる臓器の大きさ等によって、適宜に設定されていることとする。またストッパ20の配置間隔および配置個数は、第2実施形態と同様に適宜に設定されていることとする。
【0056】
なお、環状部11,12は、第1実施形態の変形例1,2(図4図5参照)の構成であってもよい。複数のストッパ20は、第3~第6実施形態(図8図11参照)の構成であってもよい。
【0057】
<結紮の手順>
このような構成の臓器結紮用テープ7を用いた臓器を結紮は、図3を用いて説明した第1実施形態の臓器結紮用テープ1を用いた手順と同様に実施される。
【0058】
<第7実施形態の効果>
以上説明した第7実施形態の臓器結紮用テープ7によれば、第1実施形態の効果に加えて、さらに第2実施形態の効果を得ることができるため、結紮状態の維持を確実とすることができる。
【0059】
なお、第7実施形態は、第1実施形態およびその変形例1,2の何れかと、第2実施形態~第6実施形態の何れかとの組み合わせとすることができ、組み合わせることによってそれぞれの効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3,4,5,6,7…臓器結紮用テープ
10…テープ部材
10a…先端部
10b…後端部
11…環状部
12…環状ストッパ(環状部)
13b…硬化部
20,30,40,50,60…ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12