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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032598
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】クランプ治具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B23Q3/06 302K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138831
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】和田 智生
(72)【発明者】
【氏名】菅 晋也
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CB02
3C016CC02
3C016CD01
3C016CE01
(57)【要約】
【課題】ベッドの嵌合溝に切粉が入り込むような環境下においても載置体をベッドの載置面に適切に固定することができるクランプ治具を提供する。
【解決手段】治具本体2は、上端側にクランプユニット3が取り付けられる一方、下端に嵌合プレート4が取り付けられる。嵌合プレート4は、治具本体2に対して上下方向に延びる回転軸心C1回りに回転自在に取り付けられ且つ回転軸心C1と交差する方向に延びる形状をなし、短辺側の寸法D1がベッド11の嵌合溝11bの上部分の溝幅W1よりも小さく形成されるとともに、長辺側の寸法D2が嵌合溝11bの下部分の溝幅W2よりも小さく且つ嵌合溝11bの上部分の溝幅W1よりも大きく形成される。嵌合プレート4を嵌合溝11bに嵌合させた状態でクランプユニット3がワーク10をベッド11との間で挟み込むことによりベッド11に固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側にクランプ手段が取り付けられる一方、下端に嵌合部が取り付けられた治具本体を備え、上部分よりも下部分の方が幅広な嵌合溝が複数並設されたベッドに載置体を載置するとともに、前記嵌合部を前記嵌合溝に嵌合させた状態で前記クランプ手段が前記載置体を前記ベッドとの間で挟み込むことにより当該ベッドに固定するよう構成されたクランプ治具であって、
前記嵌合部は、前記治具本体に対して上下方向に延びる回転軸心回りに回転自在に取り付けられ、且つ、回転軸心と交差する方向に延びる形状をなしており、短辺側の寸法が前記嵌合溝の上部分の溝幅よりも小さく形成されるとともに、長辺側の寸法が前記嵌合溝の下部分の溝幅よりも小さく且つ前記嵌合溝の上部分の溝幅よりも大きく形成されていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ治具であって、
前記治具本体には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
該貫通孔には、回転軸心が上下方向に向く軸部材が挿通され、該軸部材の上部には、作業者による前記軸部材の回転操作が可能な操作部が前記軸部材に回転一体に取り付けられ、前記軸部材の下部には、前記嵌合部が前記軸部材に回転一体に取り付けられていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプ治具であって、
前記操作部は、前記回転軸心と交差する方向で且つ前記嵌合部と同方向に延びる形状をなしていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のクランプ治具であって、
前記嵌合部は、異なる2つの前記嵌合溝にそれぞれ嵌合可能に一対設けられていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項5】
請求項4に記載のクランプ治具であって、
前記治具本体は、前記各嵌合部をそれぞれ回転可能に支持する一対の柱部と、水平方向に延びて前記両柱部を架橋連結する架橋部とを備え、
該架橋部には、上面に開口するとともに前記架橋部の延長方向に沿って延びる係合溝が形成され、
前記クランプ手段には、前記係合溝にスライド可能に係合する係合部が設けられていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項6】
請求項5に記載のクランプ治具であって、
前記係合溝は、上部分よりも下部分の方が幅広な形状であり、
前記係合部は、前記係合溝の下部分に対応する形状になっていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項7】
請求項6に記載のクランプ治具であって、
前記架橋部は、上下に貫通し且つ水平方向に直線状に延びるスリットが形成された梁状部と、前記スリットの下端開口部分を塞ぐように前記梁状部の下面に取り付けられたカバー部とを備え、
前記係合溝は、前記カバー部により下端開口部分を塞がれた前記スリットで構成されていることを特徴とするクランプ治具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のクランプ治具であって、
前記クランプ手段は、上下に延びて下端側が前記治具本体に繋がる螺子棒部と、水平方向に延び且つ前記螺子棒部が挿通するガイド部を有するクランプ棒部と、前記螺子棒部に螺合する固定部材と、前記クランプ棒部の一端側下方において前記ベッドに載置されたブロック体とを備え、
前記ベッドに前記載置体を載置し、且つ、前記嵌合部を前記嵌合溝に嵌合させた状態で前記クランプ棒部の一端を前記ブロック体に上方から当接させる一方、他端を前記載置体に上方から当接させ、且つ、前記固定部材の螺進操作で当該固定部材に下方へと押圧された前記クランプ棒部が前記螺子棒部により下方に案内されて前記クランプ棒部の両端部分に下方に向く力を発生させることにより、前記載置体を前記ベッドに固定するよう構成されていることを特徴とするクランプ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに載置した載置体を固定する際に用いるクランプ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、T溝と呼ばれる嵌合溝が複数並設されたベッドの載置面にプレス金型等の載置体を固定するクランプ治具が知られている。例えば、特許文献1に開示されているクランプ治具は、幅広な門型形状をなす治具本体を備え、該治具本体は、2つの嵌合溝に対応するように離間した一対の柱部と、水平方向に延びて両柱部の上部を架橋連結する架橋部とを有している。各柱部の下部には、その断面形状が嵌合溝に対応する逆T字状の嵌合部が設けられ、各嵌合部を2つの嵌合溝にそれぞれ嵌合させることができるようになっている。治具本体の上部には、略水平方向に延びるクランプ棒部が配設され、該クランプ棒部の中途部には、上下に貫通するガイド部が形成されている。該ガイド部には、上下に延びる螺子棒部が挿通され、該螺子棒部の上部には、ナットが螺合する一方、螺子棒部の下部は治具本体の架橋部略中央に固定されている。そして、ベッドに載置体を載置し、且つ、各嵌合部を各嵌合溝にそれぞれ嵌合させた状態でクランプ棒部の一端をベッドに載置されたブロック体に上方から当接させる一方、他端を載置体に上方から当接させ、且つ、ナットを螺進操作してクランプ棒部を下方に押圧することにより、クランプ棒部が螺子棒部により下方に案内されてクランプ棒部の両端部分に下方に向く力が発生して載置体がベッドの載置面に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-154821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベッドの載置面に載置される載置体は、その用途毎に大きさや形状が様々であるので、クランプ治具における治具本体の位置をベッドの載置面に載置する載置体毎に最適な位置に調節してセットする必要がある。例えば、T溝と呼ばれる嵌合溝はベッドの側面に開口しているので、当該開口部分から嵌合溝に嵌合部を嵌合させるとともに嵌合溝に沿って治具本体をスライドさせて載置体毎の適切な位置にセットする必要がある。
【0005】
しかし、上述の如きベッドは、例えば、切削加工時において発生する切粉が各嵌合溝に入り込むと、当該嵌合溝に嵌合部を嵌合させた状態でクランプ治具を嵌合溝に沿ってスライドさせる際に切粉が邪魔になってしまう。ここで、切粉が邪魔をしてクランプ治具を最適な位置よりも手前の位置にセットしてしまうと、クランプ治具と載置体との間の距離が長くなることでクランプ棒部によって載置体を押し下げる力が低下するので、例えば、加工工程において載置体に対して不意に水平方向に力が加わった際にクランプ棒部による押し下げ力の不足が起因となって載置体が動いてしまう等、ベッドの載置面に載置体を適切に固定することができなくなってしまうおそれがある。また、作業者は、クランプ治具をベッドに取り付ける際に嵌合部を嵌合溝に嵌合させるためにベッドの側面まで移動しなければならず、載置体のベッドへの固定作業が煩雑であるという問題もあった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベッドの嵌合溝に切粉が入り込むような環境下においても載置体をベッドの載置面に適切に固定することができるクランプ治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、クランプ治具における嵌合部の構造に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、上端側にクランプ手段が取り付けられる一方、下端に嵌合部が取り付けられた治具本体を備え、上部分よりも下部分の方が幅広な嵌合溝が複数並設されたベッドに載置体を載置するとともに、前記嵌合部を前記嵌合溝に嵌合させた状態で前記クランプ手段が前記載置体を前記ベッドとの間で挟み込むことにより当該ベッドに固定するよう構成されたクランプ治具を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記嵌合部は、前記治具本体に対して上下方向に延びる回転軸心回りに回転自在に取り付けられ、且つ、回転軸心と交差する方向に延びる形状をなしており、短辺側の寸法が前記嵌合溝の上部分の溝幅よりも小さく形成されるとともに、長辺側の寸法が前記嵌合溝の下部分の溝幅よりも小さく且つ前記嵌合溝の上部分の溝幅よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記治具本体には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、該貫通孔には、回転軸心が上下方向に向く軸部材が挿通され、該軸部材の上部には、作業者による前記軸部材の回転操作が可能な操作部が前記軸部材に回転一体に取り付けられ、前記軸部材の下部には、前記嵌合部が前記軸部材に回転一体に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、前記操作部は、前記回転軸心と交差する方向で且つ前記嵌合部と同方向に延びる形状をなしていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記嵌合部は、異なる2つの前記嵌合溝にそれぞれ嵌合可能に一対設けられていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、前記治具本体は、前記各嵌合部をそれぞれ回転可能に支持する一対の柱部と、水平方向に延びて前記両柱部を架橋連結する架橋部とを備え、該架橋部には、上面に開口するとともに前記架橋部の延長方向に沿って延びる係合溝が形成され、前記クランプ手段には、前記係合溝にスライド可能に係合する係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第5の発明において、前記係合溝は、上部分よりも下部分の方が幅広な形状であり、前記係合部は、前記係合溝の下部分に対応する形状になっていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第6の発明において、前記架橋部は、上下に貫通し且つ水平方向に直線状に延びるスリットが形成された梁状部と、前記スリットの下端開口部分を塞ぐように前記梁状部の下面に取り付けられたカバー部とを備え、前記係合溝は、前記カバー部により下端開口部分を塞がれた前記スリットで構成されていることを特徴とする。
【0016】
第8の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、前記クランプ手段は、上下に延びて下端側が前記治具本体に繋がる螺子棒部と、水平方向に延び且つ前記螺子棒部が挿通するガイド部を有するクランプ棒部と、前記螺子棒部に螺合する固定部材と、前記クランプ棒部の一端側下方において前記ベッドに載置されたブロック体とを備え、前記ベッドに前記載置体を載置し、且つ、前記嵌合部を前記嵌合溝に嵌合させた状態で前記クランプ棒部の一端を前記ブロック体に上方から当接させる一方、他端を前記載置体に上方から当接させ、且つ、前記固定部材の螺進操作で当該固定部材に下方へと押圧された前記クランプ棒部が前記螺子棒部により下方に案内されて前記クランプ棒部の両端部分に下方に向く力を発生させることにより、前記載置体を前記ベッドに固定するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、クランプ治具の嵌合部をベッドの嵌合溝に嵌合させる際、まず、クランプ治具の治具本体をセットするベッドの嵌合溝上方に移動させる。次に、嵌合部の短辺側と嵌合溝の上部分の溝幅方向とが略一致する状態において、嵌合部を嵌合溝の下部分に達するまで当該嵌合溝にその上端開口部分から挿入する。そして、嵌合部を治具本体に対して回転させて嵌合部の長辺側と嵌合溝の下部分の溝幅方向とを略一致する状態にすると、クランプ治具の嵌合部が嵌合溝の上端開口周縁に引っ掛かるようになり、これにより、嵌合部が嵌合溝に嵌合した状態になる。したがって、特許文献1の如きベッドの嵌合溝にベッドの側面に開放する部分からクランプ治具の嵌合部を嵌合させるとともに当該クランプ治具を嵌合溝に沿ってスライドさせるといった操作の必要が無くなる、或いは、当該スライドさせる距離を必要最小限にすることができる。これにより、作業者は、載置体をベッドに固定する際にベッドの側面まで移動するとともにベッド上を大きく移動するといった必要が無くなるので、作業効率を高めることができる。また、もし仮に、ベッドの嵌合溝に切粉が入り込んだとしても、クランプ治具の嵌合部を嵌合溝に沿ってスライドさせる必要が無くなるので、クランプ治具を所望の位置にセットする際に切粉が邪魔になり難くなり、クランプ治具をスライドさせる際に当該切粉が邪魔となって、セットされたクランプ治具の治具本体と載置体との間の距離が長くなって載置体をベッドの載置面に適切に固定できなくなるといったことを防ぐことができる。
【0018】
第2の発明では、ベッドの嵌合溝にクランプ治具の嵌合部を挿入した状態において、作業者が操作部を回転操作すると、軸部材を介して操作部と連結する嵌合部も回転するようになる。したがって、クランプ治具の嵌合部をベッドの嵌合溝に嵌合させる操作を簡単に行うことができる。
【0019】
第3の発明では、クランプ治具における操作部と嵌合部とのそれぞれの延長方向が一致するようになるので、作業者が操作部の状態を視認するだけで、嵌合部がベッドの嵌合溝に対して嵌合状態か否かを容易に把握することができる。
【0020】
第4の発明では、ベッドの上方においてクランプ治具の一対の嵌合部をベッドの2つの嵌合溝にそれぞれ対応させるとともに、各嵌合部の短辺側と各嵌合溝の上部分の溝幅方向とを略一致させた状態において治具本体を下方に移動させる。そして、各嵌合部を各嵌合溝の下部分に達するまで当該嵌合溝にその上端開口部分から挿入した後、各嵌合部を治具本体に対して回転させて各嵌合部の長辺側と各嵌合溝の下部分の溝幅方向とを略一致する状態にすると、クランプ治具の各嵌合部が各嵌合溝の上端開口周縁に引っ掛かるようになり、これにより、各嵌合部が各嵌合溝に嵌合した状態になる。したがって、クランプ治具の一対の嵌合部をベッドの2つの嵌合溝に嵌合させる際に、各嵌合部をベッドの各嵌合溝に沿ってスライドさせる必要が無くなる、或いは、当該スライドさせる距離を最小限にすることが可能となる。これにより、クランプ治具の各嵌合部をベッドの各嵌合溝にそれぞれ嵌合させた状態において各嵌合溝に沿ってクランプ治具をスライドさせる際に治具本体の各嵌合部に対応する領域のいずれか一方において荷重が強く掛かってしまい、当該荷重が強く掛かる側の嵌合部と嵌合溝とが干渉するといった事態の発生を防止することができる。
【0021】
第5の発明では、架橋部の延長方向における任意の位置にクランプ手段を移動させることが可能になる。したがって、クランプ手段の架橋部との接続位置を治具本体と載置体とが最短距離で結ばれる位置にすることができるので、クランプ手段による載置体に対する下方に押し付ける力が十分に確保されるようになり、載置体をベッドの載置面に適切に固定することができる。
【0022】
第6の発明では、クランプ手段の係合部と架橋部の係合溝とがより強固に係合するようになる。したがって、例えば、クランプ手段に対して不意に上動させるような力が作用しても、クランプ手段と架橋部との間の係合状態を確実に維持することができる。
【0023】
第7の発明では、クランプ手段における係合部を梁状部のスリットの下側の開口から上方に移動させて当該スリットに係合させた後、スリットの下端開口部分を塞ぐようにカバー部を梁状部の下面に取り付けることができるようになり、係合溝に係合する状態の治具本体における係合部の下側領域に対応する部分の強度を高めることができる。
【0024】
第8の発明では、例えば、ブロック体の上面の高さを、載置体のクランプ棒部を当接させる部分と同じ高さにすることで、クランプ棒部における載置体との接触面積が確保されるようになるので、載置体をベッドの載置面に適切に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態1に係るクランプ治具の斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2のIII矢視図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5図3のV-V線における断面図である。
図6】ベッドにクランプ治具を取り付けている途中の状態を示す図3相当図である。
図7】本発明の実施形態2の図2相当図である。
図8】本発明の実施形態2の図3相当図である。
図9】本発明の実施形態2の図4相当図である。
図10】本発明の実施形態2の図5相当図である。
図11】ベッドにクランプ治具を取り付けている途中の状態を示す図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0027】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るクランプ治具1と、該クランプ治具1が取り付けられたベッド11とを示す。該ベッド11は、厚みを有する矩形板状をなしており、切削加工機(図示せず)を用いてワーク10(載置体)に切削加工を施す際に、当該ワーク10を載置するようになっている。
【0028】
ベッド11の載置面11aには、ワーク10の固定に使用する直線状に延びる複数の嵌合溝11bが並設され、該嵌合溝11bの端部は、ベッド11の側面に開放している。
【0029】
各嵌合溝11bは、上方に開口する断面略逆T字状をなしており、上半部分の溝幅W1より下半部分の溝幅W2の方が幅広となるよう設定されている(図2参照)。
【0030】
クランプ治具1は、平面視で門型形状をなす治具本体2と、該治具本体2の上端側に取り付けられたクランプユニット3(クランプ手段)と、治具本体2の下端に取り付けられた一対の嵌合プレート4(嵌合部)とを備えている。
【0031】
治具本体2は、図2乃至図4に示すように、柱中心線が上下に延びる四角柱形状をなすとともに、水平方向に所定の間隔をあけて並設された一対の柱部21と、水平方向に延びて両柱部21の上側部分を架橋連結する架橋部22とを備えている。
【0032】
両柱部21の間隔は、ベッド11の隣り合う2つの嵌合溝11bの間隔に対応しており、両柱部21の並設方向における各柱部21の寸法は、各嵌合溝11bの上半部分の溝幅W1よりも小さく設定されている。
【0033】
各柱部21の中央部分には、上下方向に貫通する貫通孔21aが形成され、該各貫通孔21aには、回転軸心C1が上下方向に向く細棒状の軸部材23がそれぞれ挿通されている。
【0034】
該軸部材23の上端には、当該軸部材23の上端を境に水平方向両側に延びる角棒状の操作ブロック24(操作部)が軸部材23に回転一体に取り付けられ、該操作ブロック24は、作業者による軸部材23の回転操作が可能になっている。
【0035】
嵌合プレート4は、回転軸心C1と直交する方向、すなわち、水平方向に延びる形状で、且つ、操作ブロック24と同方向に延びる厚みが一定の長円形板状をなしており、短辺側の寸法D1が嵌合溝11bの上部分の溝幅W1よりも小さく形成されるとともに、長辺側の寸法D2が嵌合溝11bの下部分の溝幅W2よりも小さく形成され且つ嵌合溝11bの上部分の溝幅W1よりも大きく形成されている。
【0036】
そして、嵌合プレート4は、その中央部分が軸部材23の下部に回転一体に取り付けられている。すなわち、柱部21は、嵌合プレート4を回転自在に支持しており、作業者が操作ブロック24を回転操作すると、軸部材23を介して嵌合プレート4が回転するようになっている。
【0037】
架橋部22は、図2に示すように、水平方向に延びる四角柱状をなす梁状部25と、水平方向に延びる帯板状をなすカバー部26とを備えている。
【0038】
梁状部25には、上下に貫通し且つ当該梁状部25の延長方向に直線状に延びるスリット25aが形成され、該スリット25aは、図5に示すように、上端から中途部までの部分よりも下部分の方が幅広な形状になっている。
【0039】
カバー部26は、スリット25aの下端開口を塞ぐように梁状部25の下面に取り付けられ、本発明の係合溝27は、カバー部26により下端開口部分を塞がれたスリット25aの領域で構成されている。
【0040】
すなわち、係合溝27は、架橋部22の上面に開口するとともに架橋部22の延長方向に沿って延びる形状をなしている。
【0041】
クランプユニット3は、図1に示すように、上下に延びる細棒状をなす螺子棒部5と、水平方向に延びる平面視で長細いU字状をなすクランプ棒部6と、螺子棒部5に外嵌合されたワッシャー7と、螺子棒部5に螺合する2つのナット8(固定部材)と、ベッド11に載置されたブロック体9とを備えている。
【0042】
螺子棒部5の下端には、図2及び図5に示すように、中心線が螺子棒部5の軸心に一致する円盤状をなす係合部5aが設けられている。
【0043】
該係合部5aは、係合溝27の下部分に対応する形状になっていて、架橋部22の延長方向にスライド可能に係合溝27に係合している。
【0044】
すなわち、螺子棒部5は、下端側が治具本体2に繋がっている。
【0045】
クランプ棒部6は、図1に示すように、一端側に開放するとともに上下に貫通するガイド部6aが形成され、該ガイド部6aには、螺子棒部5が挿通している。
【0046】
そして、図3及び図6に示すように、クランプ治具1の各嵌合プレート4をベッド11の隣り合う2つの嵌合溝11bに対応させ、且つ、それらの短辺側が各嵌合溝11bの溝幅方向に沿う姿勢にした状態でクランプ治具1を下降させると、各嵌合プレート4と柱部21の下部とが嵌合溝11bに挿入されるようになっている。そして、作業者が各操作ブロック24を回転操作して各嵌合プレート4を回転させることにより、それらの長辺側を各嵌合溝11bの溝幅方向に沿う姿勢にすると、各嵌合プレート4が各嵌合溝11bの上端開口周縁に引っ掛かり、これにより、各嵌合溝11bに各嵌合プレート4が嵌合するようになっている。すなわち、各嵌合プレート4は異なる2つの嵌合溝11bにそれぞれ嵌合可能になっている。
【0047】
そして、各嵌合プレート4を各嵌合溝11bに嵌合させた状態で、図1に示すように、クランプ棒部6の一端をブロック体9に上方から当接させる一方、他端をワーク10に上方から当接させ、且つ、ナット8の螺進操作で当該ナット8に下方へと押圧されたクランプ棒部6が螺子棒部5により下方に案内されてクランプ棒部6の両端部分に下方に向く力を発生させることにより、クランプ棒部6がワーク10をベッド11との間で挟み込んで固定するように構成されている。
【0048】
次に、本発明の実施形態1に係るクランプ治具1を用いたベッド11に載置されたワーク10の固定の仕方について詳述する。
【0049】
まず、作業者は、図6に示すように、クランプ治具1の各操作ブロック24を把持するとともに回転させて各嵌合プレート4をその長辺側が架橋部22の延長方向と直交する水平方向に沿うような姿勢にする。
【0050】
次に、作業者は、クランプ治具1をベッド11においてワーク10をセットする領域周辺の嵌合溝11b上方に移動させる。
【0051】
次いで、クランプ治具1を下降させて各嵌合プレート4と各柱部21の下部とを各嵌合溝11bの下部分に達するまで当該各嵌合溝11bにその上端開口部分から挿入する。そして、作業者は、各操作ブロック24を把持するとともに回転させて各嵌合プレート4をその長辺側が架橋部22の延長方向に沿う姿勢にする。すると、各嵌合プレート4が各嵌合溝11bの上端開口周縁に引っ掛かるようになり、各嵌合プレート4が各ベッド11の各嵌合溝11bに嵌合する。
【0052】
しかる後、作業者は、架橋部22の係合溝27に対して螺子棒部5をスライドさせ、且つ、治具本体2に対するクランプ棒部6の位置を変更させた後、クランプ棒部6の一端をベッド11に載置されたワーク10に上方から当接させる一方、2つのナット8を螺進操作して当該ナット8でクランプ棒部6を下方に押圧することにより、クランプ棒部6が螺子棒部5により下方に案内されてクランプ棒部6の両端部分に下方に向く力が発生し、ワーク10がベッドの載置面11aに固定される。
【0053】
以上より、本発明の実施形態1によると、クランプ治具1の嵌合プレート4をベッド11の嵌合溝11bに嵌合させる際、特許文献1の如きベッドの嵌合溝にベッドの側面に開放する部分からクランプ治具の嵌合部を嵌合させるとともに当該クランプ治具を嵌合溝に沿ってスライドさせるといった操作の必要が無くなる、或いは、当該スライドさせる距離を必要最小限にすることができる。これにより、作業者は、ワーク10をベッド11に固定する際にベッド11の側面まで移動するとともにベッド11上を大きく移動するといった必要が無くなるので、作業効率を高めることができる。また、もし仮に、ベッド11の嵌合溝11bに切粉が入り込んだとしても、クランプ治具1の嵌合プレート4を嵌合溝11bに沿ってスライドさせる必要が無くなるので、クランプ治具1を所望の位置にセットする際に切粉が邪魔になり難くなり、クランプ治具1をスライドさせる際に当該切粉が邪魔となって、セットされたクランプ治具1の治具本体2とワーク10との間の距離が長くなってワーク10をベッド11の載置面11aに適切に固定できなくなるといったことを防ぐことができる。
【0054】
また、ベッド11の嵌合溝11bにクランプ治具1の嵌合プレート4を挿入した状態において、作業者が操作ブロック24を回転操作すると、軸部材23を介して操作ブロック24と連結する嵌合プレート4も回転するようになる。したがって、クランプ治具1の嵌合プレート4をベッド11の嵌合溝11bに嵌合させる操作を簡単に行うことができる。
【0055】
また、クランプ治具1における操作ブロック24と嵌合プレート4とのそれぞれの延長方向が一致するようになるので、作業者が操作ブロック24の状態を視認するだけで、嵌合プレート4がベッド11の嵌合溝11bに対して嵌合状態か否かを容易に把握することができる。
【0056】
また、ベッド11の上方においてクランプ治具1の一対の嵌合プレート4をベッド11の2つの嵌合溝11bにそれぞれ対応させるとともに、各嵌合プレート4の短辺側と各嵌合溝11bの上部分の溝幅方向とを略一致させた状態において治具本体2を下方に移動させる。そして、各嵌合プレート4を各嵌合溝11bの下部分に達するまで当該嵌合溝11bにその上端開口部分から挿入した後、各嵌合プレート4を治具本体2に対して回転させて各嵌合プレート4の長辺側と各嵌合溝11bの下部分の溝幅方向とを略一致する状態にすると、クランプ治具1の各嵌合プレート4が各嵌合溝11bの上端開口周縁に引っ掛かるようになり、これにより、各嵌合プレート4が各嵌合溝11bに嵌合した状態になる。したがって、クランプ治具1の一対の嵌合プレート4をベッド11の2つの嵌合溝11bに嵌合させる際に、各嵌合プレート4をベッド11の各嵌合溝11bに沿ってスライドさせる必要が無くなる、或いは、当該スライドさせる距離を最小限にすることが可能となる。これにより、クランプ治具1の各嵌合プレート4をベッド11の各嵌合溝11bにそれぞれ嵌合させた状態において各嵌合溝11bに沿ってクランプ治具1をスライドさせる際に治具本体2の各嵌合プレート4に対応する領域のいずれか一方において荷重が強く掛かってしまい、当該荷重が強く掛かる側の嵌合プレート4と嵌合溝11bとが干渉するといった事態の発生を防止することができる。
【0057】
また、クランプユニット3には係合溝27にスライド可能に係合する係合部5aが設けられているので、架橋部22の延長方向における任意の位置にクランプユニット3を移動させることができる。したがって、クランプユニット3の架橋部22との接続位置を治具本体2とワーク10とが最短距離で結ばれる位置にすることができるので、クランプユニット3によるワーク10に対する下方に押し付ける力が十分に確保されるようになり、ワーク10をベッド11の載置面11aに適切に固定することができる。
【0058】
また、係合溝27は、上部分よりも下部分の方が幅広な形状であり、係合部5aは、係合溝27の下部分に対応する形状になっているので、クランプユニット3の係合部5aと架橋部22の係合溝27とがより強固に係合するようになる。したがって、例えば、クランプユニット3に対して不意に上動させるような力が作用しても、クランプユニット3と架橋部22との間の係合状態を確実に維持することができる。
【0059】
また、クランプユニット3における係合部5aを梁状部25のスリット25aの下側の開口から上方に移動させて当該スリット25aに係合させた後、スリット25aの下端開口部分を塞ぐようにカバー部26を梁状部25の下面に取り付けることができるようになり、係合溝27に係合する状態の治具本体2における係合部5aの下側領域に対応する部分の強度を高めることができる。
【0060】
また、例えば、ブロック体9の上面の高さを、ワーク10のクランプ棒部6を当接させる部分と同じ高さにすることで、クランプ棒部6におけるワーク10との接触面積が確保されるようになるので、ワーク10をベッド11の載置面11aに適切に固定することができる。
【0061】
《発明の実施形態2》
図7乃至図11は、本発明の実施形態2のクランプ治具1を示す。この実施形態2では、治具本体2の一部構成が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0062】
実施形態2の治具本体2の上部には、図11に示すように、平面視で幅広なU字状をなす段差面部28が治具本体2の上端開口周縁に沿って形成されている。
【0063】
実施形態2の操作ブロック24は、平面視でL字状をなしており、段差面部28の長手方向一端側と他端側とにそれぞれ段差面部28の形状に沿うように配置されている。
【0064】
実施形態2の操作ブロック24は、嵌合プレート4と同方向に延びる形状をなしていて、図11に示すように、架橋部22に対して直交する姿勢となるまで回転させると、嵌合プレート4が嵌合溝11bに挿入可能な姿勢になり、図7に示すように、架橋部22に沿って延びる姿勢となる位置まで回転させると、嵌合プレート4が嵌合溝11bに嵌合するようになっている。
【0065】
また、実施形態2の各操作ブロック24は、架橋部22に沿う姿勢となった際、各操作ブロック24の間に作業者の指を挿入可能な空間S1が形成されるようになっている。
【0066】
尚、本発明の実施形態2に係るクランプ治具1を用いたベッド11に載置されたワーク10の固定の仕方については、実施形態1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0067】
以上より、本発明の実施形態2によると、クランプ治具1でワーク10を固定した際、各操作ブロック24が治具本体2の段差面部28に収まるようになる。したがって、各操作ブロック24がその後の作業の邪魔にならず、作業者はワーク10に対して効率良く作業を行うことができる。
【0068】
尚、本発明の実施形態1,2では、嵌合プレート4が平面視で長円形状をなしているが、その他の形状であってもよく、例えば、長方形状や楕円形状であってもよい。
【0069】
また、本発明の実施形態1,2では、クランプ棒部6の一端をブロック体9に当接させてワーク10を固定しているが、これに限らず、ブロック体9を使用せずにクランプ棒部6の中途部を架橋部22に当接させる一方、他端をワーク10に上方から当接させた状態においてナット8でクランプ棒部6を上方から押圧することにより、ワーク10をベッド11に固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ベッドに載置した載置体を固定する際に用いるクランプ治具に適している。
【符号の説明】
【0071】
1 クランプ治具
2 治具本体
3 クランプユニット(クランプ手段)
4 嵌合プレート(嵌合部)
5 螺子棒部
5a 係合部
6 クランプ棒部
6a ガイド部
8 ナット(固定部材)
9 ブロック体
10 ワーク(載置体)
11 ベッド
11a 載置面
11b 嵌合溝
21 柱部
21a 貫通孔
22 架橋部
23 軸部材
24 操作ブロック(操作部)
25 梁状部
25a スリット
26 カバー部
27 係合溝
C1 回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11