(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032676
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】溶着施工管理システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20230302BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20230302BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01S19/14
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138953
(22)【出願日】2021-08-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
【テーマコード(参考)】
2G024
5J062
【Fターム(参考)】
2G024AD28
2G024AD34
2G024BA30
2G024CA01
2G024FA11
5J062BB08
5J062CC07
5J062HH03
(57)【要約】
【課題】取得した溶着施工管理データが敷設対象上のどの位置のものであるかを確実かつ容易に特定する。
【解決手段】土木構造物又は建築構造物からなる敷設対象1に敷設された不透液シート2における溶着施工管理データ38cを、溶着施工管理システム3のデータ取得部3aによって取得する。位置情報取得部30によって、前記溶着施工管理データ38cを取得した位置情報38eをGPS電波から取得する。溶着施工管理データ38c及び位置情報38eを記憶部34に記憶する。表示部30によって、前記記憶された溶着施工管理データ38cを位置情報38eと紐付けて表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物又は建築構造物からなる敷設対象に敷設された不透液シートにおける溶着施工管理データを取得するデータ取得部と、
前記溶着施工管理データの取得箇所の位置情報をGPS電波から取得する位置情報取得部と、
前記溶着施工管理データ及び前記位置情報を記憶する記憶部と、
記憶された溶着施工管理データを前記位置情報と紐付けて表示する表示部とを備えたことを特徴とする溶着施工管理システム。
【請求項2】
前記位置情報取得部が、前記敷設対象のマップにおける前記取得箇所と対応するマップ座標位置を、前記マップ上の特定位置情報に基づいて算出する座標算出部を含み、
前記表示部が、前記マップを表示するマップ表示部と、前記溶着施工管理データを対応するマップ座標位置と紐付けて前記マップに表示するデータ表示部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶着施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築構造物に敷設される不透液シートの溶着施工管理データを取得するシステムに関し、特に、不透液シートの継ぎ目や補修部における溶着施工や溶着温度等を管理するのに適した溶着施工管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、産業廃棄物処分場などの敷設対象に遮水シート、防水シート等の不透液シートを敷設して、汚水が地下に浸透したり、地下水が処分場上へ湧いたりするのを防止することは公知である(特許文献1等参照)。通常、敷設対象は、1枚の不透液シートの幅より大面積であるから、敷設対象上の複数の不透液シートが並べられて敷き詰められ、隣接する不透液シートどうしの継ぎ目が溶着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の不透液シートにおいては、継ぎ目における溶着施工不良が起きやすい。溶着施工不良があると、そこから液漏れが起きる。したがって、継ぎ目の溶着施工の良否を点検することは重要である。また、敷設した不透液シートに損傷が見つかったときは、その損傷部に、例えば不透液シートと同じ材質のパッドを被せて溶着する等して補修するが、該補修部分の溶着施工の良否を点検することも重要である。また、溶着施工時の溶着温度を取得して、溶着不良の有無の推定することも考えられる。
このような継ぎ目や補修部分の溶着施工の良否や溶着温度などの溶着施工管理データを用いて溶着施工状況を管理する際、敷設対象のどの箇所で取得されたデータなのかが特定されていないと、管理に支障を来す。
本発明は、取得した溶着施工管理データが敷設対象上のどの位置のものであるかを特定し、ひいては敷設対象の各位置における溶着施工状況を容易に把握可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る溶着施工管理システムは、土木構造物又は建築構造物からなる敷設対象に敷設された不透液シートにおける溶着施工管理データを取得するデータ取得部と、
前記溶着施工管理データの取得箇所の位置情報をGPS(Global Positioning System)電波から取得する位置情報取得部と、
前記溶着施工管理データ及び前記位置情報を記憶する記憶部と、
記憶された溶着施工管理データを前記位置情報と紐付けて表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
前記位置情報取得部が、前記敷設対象のマップにおける前記取得箇所と対応するマップ座標位置を、前記マップ上の特定位置情報に基づいて算出する座標算出部を含み、
前記表示部が、前記マップを表示するマップ表示部と、前記溶着施工管理データを対応するマップ座標位置と紐付けて前記マップに表示するデータ表示部とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取得した溶着施工管理データが敷設対象上のどの位置のものであるかを確実かつ容易に特定することができる。ひいては、敷設対象の各位置における溶着施工状況を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、敷設対象の一例である産業廃棄物処分場に敷設された不透液シートの継ぎ目溶着部の良否点検用の溶着施工管理システムの構成図である。
【
図2】
図2は、前記溶着施工管理システムの記憶部のデータ構造の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、前記溶着施工管理システムによる管理画面の表示例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態を示し、敷設対象の一例である産業廃棄物処分場に敷設された不透液シートの補修溶着部の良否点検用の溶着施工管理システムの構成図である。
【
図5】
図5は、前記第2実施形態に係る溶着施工管理システムによる管理画面の表示例を示す正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態を示し、敷設対象の一例である産業廃棄物処分場の不透液シートの継目溶着施工時の溶着温度管理用の溶着施工管理システムの構成図である。
【
図7】
図7は、前記第3実施形態に係る溶着施工管理システムによる管理画面の表示例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図3)>
図1は、例えば産業廃棄物処分場(土木構造物)からなる敷設対象1に敷設された不透液シート2の継ぎ目2cの溶着施工の良否を点検する様子を解説的に示したものである。敷設対象は、GPS衛星からのGPS電波を受信可能であればよく、産業廃棄物処分場に限らず、河川敷、貯水池、GPS電波を受信可能なトンネルその他の土木構造物であってもよく、更に土木構造物に限らず、ビル屋上などの建築構造物であってもよい。
【0010】
産業廃棄物処分場用の不透液シート2としては、遮水シートが用いられている。遮水シートの材質としては、産業廃棄物などからの液体が地中に浸み込んだり、地下水が産業廃棄物処分場に湧き出したりするのを防止できるものであれば、ゴムでもよく、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンその他の樹脂等であってもよい。敷設対象によっては、EVAシート等の防水シートが用いられていてもよい。敷設対象1上に複数枚の不透液シート2が並べられて敷き詰められている(
図3参照)。隣接する不透液シート2どうしの継ぎ目2cは溶着によって接合されている。継ぎ目2cは、敷設対象1の各所に遍く分布されている(
図3参照)。
図1に示すように、例えば、継ぎ目2cには、2条の溶着部2dが平行に形成されている。これら溶着部2dどうしの間に溶着部間空間2eが設けられている。溶着施工管理システム3によって、溶着部間空間2eの密封状態が検査されることによって、溶着部2dの良否管理がなされる。
【0011】
図1に示すように、溶着施工管理システム3は、空気圧路10(検査圧路)と、信号処理回路20と、スマートフォン30を含む。好ましくは、これらシステム構成要素10~30は、持ち運び可能な筐体4に収容されている。空気圧路10は、ガス用チューブ等によって構成されており、筐体4から出し入れ可能である。空気圧路10の手元端(
図1において上端)には、検査圧供給部12が接続されている。詳細な図示は省略するが、検査圧供給部12は、コンプレッサ等の空気圧(ガス圧)源、圧力制御弁、開閉弁等を含む。前記圧力制御弁で設定された大きさの空気圧(検査圧)が空気圧路10に供給される。空気圧路10の先端(
図1において下端)には、プローブ13が設けられている。
【0012】
空気圧路10に信号処理回路20が接続されている。詳細な図示は省略するが、信号処理回路20は、空気圧路10のガス圧に応じた電気信号(電圧又は電流信号)を生成する圧電素子と、該電気信号をデジタル変換して出力するA/D変換器を含む。
空気圧路10と信号処理回路20とによって、継ぎ目2cの溶着施工管理データ(良否検査データ)を取得するデータ取得部3aが構成されている。
【0013】
図1に示すように、信号処理回路20にケーブル25を介してスマートフォン30が有線接続されている。スマートフォン30は、CPU31と、GPS受信部33と、記憶部34と、ディスプレイ35と、通信部36を含む。
なお、スマートフォン30に代えて、タブレット、ノートパソコンなどの、スマートフォン30以外の携帯可能な小型パソコンを用いてもよい。
【0014】
CPU31は、スマートフォン30における後記プログラム37その他の各種プログラムを実行する。
GPS受信部33は、GPS衛星からのGPS電波を受信する。これによって、スマートフォン30の現在位置が得られる。溶着施工管理データの取得中は、その取得箇所の実際の位置(以下、適宜「実位置」と称す)の情報が得られる。
なお、厳密には、GPS受信部33が搭載されたスマートフォン30と、前記取得箇所に位置するプローブ13とは、数センチメートル~数十センチメートル程度離れているが、敷設対象の大きさやGPSの精度などからして、その程度の離間距離は許容誤差内であり、GPSによるスマートフォン30の位置情報は溶着施工管理データの取得箇所を示すと見做して差し支えない。
スマートフォン30は、溶着施工管理データを取得した位置の情報をGPS電波から取得する位置情報取得部を構成する。
【0015】
図2に示すように、記憶部34には、溶着施工管理のためのプログラム37及びデータ38が記憶されている。
プログラム37として、ディスプレイ35に敷設対象1のマップ40(
図3)を表示するためのマップ表示プログラム37aと、マップ40における前記取得箇所の実位置と対応するマップ座標位置41を算出するための座標算出プログラム37bと、取得した溶着施工管理データを対応するマップ座標位置(位置情報)と紐付けて前記マップに表示するためのデータ表示プログラム37c等を含む。
スマートフォン30は、記憶された溶着施工管理データを前記位置情報と紐付けて表示する表示部と、マップ座標位置41を算出する座標算出部を構成する。さらに、スマートフォン30は、マップ40を表示するマップ表示部と、溶着施工管理データを対応するマップ座標位置と紐付けてマップ40に表示するデータ表示部とを構成する。
【0016】
図2に示すように、データ38としては、敷設対象1のマップ40の画像データ38a、マップ座標位置41の算出に必要な特定位置情報38bなどを含む。更に、記憶部34には、データ取得部3aによって取得された溶着施工管理データ38c及びその取得箇所の位置情報38eの格納領域が設けられている。
【0017】
マップ画像データ38aは、好ましくはラスタ形式のデータであるが、ベクタ形式のデータであってもよい。マップ40は、平面(xy)座標上の二次元マップであるが、高さ方向のz座標を含む三次元マップであってもよい。マップ40は、例えば敷設対象1における不透液シート2の割り当て図などを用いて作成される。
【0018】
特定位置情報38bは、マップ40上の特定位置a,bと対応する実際の特定位置の情報である。実際の特定位置は、敷設対象の内側に限らず、敷設対象の外側の位置であってもよい。好ましくは、実際の特定位置の情報は、スマートフォンのGPS機能による出力形式に準拠する。二次元のマップ40における特定位置a,bの必要数は、少なくとも2つである。ラスタ形式の場合、各特定位置a,bは、例えばマップの画像の左下隅を(0,0)とするxy座標で表される。
なお、マップ40が三次元データの場合、前記特定位置の最小必要数は3つである。
【0019】
図1に示すように、スマートフォン30は、インターネットなどの公衆通信網8を介して、管理PC50等の他のPCとの通信可能である。
スマートフォン30のデータは、管理PC50へ転送される。
詳細な図示は省略するが、管理PC50は、スマートフォン30と同様のプログラム及びデータを有している。
【0020】
溶着施工管理システム1は、次のように使用される。
<溶着施工管理データの取得工程>
継ぎ目2cにおける検査箇所の近くに筐体4を置き、そこから空気圧路10を出して、プローブ13を溶着部間空間2eに接続する。
次に、検査圧供給部12の開閉弁を開くことで、所定の大きさの空気圧(検査圧)を空気圧路10から溶着部間空間2e内へ導入する。その後、前記開閉弁を閉じる。
溶着部2dが良好であれば、溶着部間空間2eの内圧が前記検査圧に保持される。溶着部2dが不良であると、そこから空気が漏れるために、溶着部間空間2eの内圧が前記検査圧よりも低くなる。
【0021】
前記溶着部間空間2eの内圧値(溶着施工管理データ)をデータ取得部3aによって取得する。詳しくは、溶着部間空間2eの内圧が、空気圧路10を介して信号処理回路20の圧電素子に印加されることによって、前記内圧の大きさに応じた電気信号が生成され、さらに該電気信号がA/D変換器によってデジタル変換されてスマートフォン30へ出力される。
スマートフォン30のCPU31は、取得した内圧値すなわち溶着施工管理データ38cを時間情報と共に記憶部34に記憶する。データの取得時間は、例えば数秒~数分間である。
【0022】
さらに、CPU31において、前記取得した内圧値を良否判定の閾値と比較し、内圧値が閾値を下回ることがなければ、検査箇所の溶着施工状態を「良好」と判定し、内圧値が閾値を下回ったら検査箇所の溶着施工状態を「不良」と判定する。該判定結果をも溶着施工管理データ38cの一部として記憶部34に記憶する。
なお、前記判定工程は、後述する表示工程の際に行うことにしてもよい。
または、溶着施工管理データ38cとしては、良否判定結果だけを記憶し、内圧値は記憶しないことにしてもよい。
【0023】
<実位置情報の取得工程>
スマートフォン30のCPU31は、前記溶着施工管理データの取得工程と併行して、GPS受信部33によって自機の現在位置ひいては前記溶着施工管理データの取得箇所の実位置情報38dを取得して、取得時間と共に記憶部34に記憶させる。
スマートフォン30が位置情報を自動取得するから、溶着施工管理データの取得の度に、作業者が位置情報を手入力する必要は無い。
【0024】
<マップ座標位置算出工程>
さらに、CPU31は、座標算出プログラム37bを起動するとともに記憶部34の特定位置情報38bを読み出して、該特定位置情報38bと実位置情報38dとを所定の演算式に当てはめることによって、前記取得箇所の実位置と対応するマップ座標位置41を算出する。得られたマップ座標位置41を、対応する実位置情報38d及び取得時間と紐付けして記憶部34に記憶させる。
【0025】
実位置情報38d及びマップ座標位置41は、溶着施工管理データの取得箇所の位置情報38eを構成する。
なお、実位置情報38dを記憶部34に記憶させずに、マップ座標位置41だけを溶着施工管理データの取得箇所の位置情報として記憶部34に記憶させてもよい。
マップ座標位置41の算出工程は、後述する表示工程で行なってもよい。この場合、実位置情報38d及びマップ座標位置41のうち、実位置情報38dだけを記憶部34に記憶させておいてもよい。
【0026】
敷設対象1の複数箇所において、前記と同様にして継ぎ目2cの溶着施工管理データ38c及び位置情報38eを取得して、記憶部34に蓄積させる。
好ましくは、スマートフォン30において記憶したデータは、適宜、管理PC50へ転送される。管理PC50が、スマートフォン30と同じ機能を有していてもよい。
【0027】
<表示工程>
その後、作業管理者又は作業者が、スマートフォン30のディスプレイ35に溶着施工管理メニュー(図示省略)を表示させ、該メニュー中の溶着施工状況表示指令を選択すると、これを受けたCPU31が、記憶部34の蓄積情報を読み出し、継ぎ目2cの溶着施工管理データ38cと位置情報38eとを紐付けた継目良否管理画面(
図3)すなわち溶着施工状況表示を作成して、ディスプレイ35に表示させる。
【0028】
<マップ表示工程>
具体的には、マップ表示プログラム37aによって、記憶部34のマップの画像データ38aを読み出し、
図3に示すように、敷設対象1のマップ40を表示する。
併行して、データ表示プログラム37cによって、記憶部34の溶着施工管理データ38c及びマップ座標位置41を含む位置情報38eを読み出し、ディスプレイ35のマップ40上の各マップ座標位置41に、該マップ座標位置41と対応する溶着施工管理データ38cを表示する。
【0029】
例えば、
図3に示すように、溶着施工管理データ38c中の良否判定が「良好」との判定結果であれば、青色等の寒色系の標示42を、対応するマップ座標位置41に表示する。「不良」との判定結果であれば、赤色等の暖色系の標示43を、対応するマップ座標位置41に表示する。これによって、作業管理者又は作業者は、敷設対象1の各所における継ぎ目2cの溶着施工の良否状況及び良否の分布状況を視覚的に一目で把握できる。
【0030】
さらに好ましくは、ポップアップ表示44をマップ座標位置41と結び付けて表示し、該ポップアップ表示44内に、対応する良否点検箇所についての点検時刻、検出圧力値等を含む詳細な溶着施工管理データを表記してもよい。マップ40上のマップ座標位置41を選択すると、ポップアップ表示44がなされるようにしてもよい。これによって、作業管理者又は作業者は、敷設対象1の各所における継ぎ目2cの溶着施工状況の詳細を容易に把握することができる。溶着施工の良否の試験データをマップに落とし込んで表示することで、施工管理に有益な情報を提供できる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図4~
図5)>
図4に示すように、本発明の第2実施形態は、産業廃棄物処分場その他の敷設対象1に敷設された不透液シート2に孔などの損傷部5があったときの処置に関する。損傷部5には、例えば不透液シート2と同じ材質のパッド6を被せられている。該パッド6の周縁部が不透液シート2と溶着されることで、損傷部5が補修され、不透液シート2に補修部分7が形成されている。パッド6の周縁部と不透液シート2との間には、溶着部7bが形成されている。
【0032】
第2実施形態においては、損傷部5の補修部分におけるパッド6の溶着施工の良否すなわち溶着部6bの良否を溶着施工管理システム3Bによって点検する。第2実施形態に係る溶着施工管理システム3Bは、真空圧路60(検査圧路)と、信号処理回路20と、スマートフォン30を含む。真空圧路60は、真空圧用ガスチューブ等によって構成されており、筐体4から出し入れ可能である。真空圧路60の手元端(
図4において上端)には、検査圧供給部62が接続されている。詳細な図示は省略するが、検査圧供給部62は、真空ポンプ等の負圧源、圧力制御弁、開閉弁等を含む。前記圧力制御弁で設定された大きさの真空圧(検査圧)が真空圧路60に供給される。真空圧路60の先端(
図4において下端)には、コネクタ64を介して閉止治具63が連なっている。
【0033】
閉止治具63は、例えばドーム状(半円球状)の容器状に形成されている。閉止治具63の材質は、特に限定が無く、ゴム、樹脂、金属等が挙げられる。閉止治具63が透明である必要はない。閉止治具63の形状は、ドーム状に限らず、ベローズ状(蛇腹状)であってもよい。
【0034】
真空圧路60に信号処理回路20が接続されている。真空圧路60における信号処理回路20との接続部には、好ましくは、安全弁としてリリース弁(図示省略)が設けられている。
信号処理回路20にスマートフォン30が接続されている。
信号処理回路20及びスマートフォン30の構成は、第1実施形態と同様である。
【0035】
溶着施工管理システム3Bによる補修部点検の際は、点検対象の補修部分7に閉止治具63が被せられる。検査圧供給部62の真空ポンプ(図示省略)を駆動して開閉弁(図示省略)を開くことによって、真空圧路60を介して、閉止治具63の内部のガスを真空引きする。これによって、閉止治具63の内圧が、大気圧より低圧(負圧)の所定の検査圧になる。その後、前記開閉弁を閉じる。
【0036】
補修部分7の溶着部7bが良好であれば、外気が補修部分7から負圧の閉止治具63内へ侵入することが無く、閉止治具63の内圧は前記検査圧に保持される。
溶着部7bが不良であれば、外気が補修部分7から負圧の閉止治具63内へ侵入して、閉止治具63の内圧が前記検査圧(負圧)よりも大気圧に近づく。
【0037】
前記閉止治具63の内圧値(溶着施工管理データ)がデータ取得部3aによって取得されて、スマートフォン30の記憶部34に記憶される。併せて、スマートフォン30において、位置情報38eを取得して記憶する点、及び表示指令に応じて、溶着施工管理データ38cを位置情報38eと紐付けた溶着施工状況画面(
図5)を作成してディスプレイ表示する点は、第1実施形態の溶着施工管理システム3と同様である。
図5に示すように、第2実施形態の溶着施工管理システム3Bにおける溶着施工状況画面は、敷設対象1の補修部分7の良否状況を表す「補修良否管理画面」である。これによって、作業管理者又は作業者は、敷設対象1における補修施工の良否状況、及び補修箇所7の位置もしくは分布を視覚的に一目で把握できる。
なお、
図5においては省略するが、第2実施形態の補修良否管理画面においても、各補修部分7における詳細な検査状況を表記したポップアップ表示44(
図3参照)を補修箇所と結びつけて表示してもよい。
【0038】
<第3実施形態(
図6~
図7)>
図6に示すように、本発明の第3実施形態に係る溶着施工管理システム3Cは、不透液シート2の継ぎ目2cの溶着工程時に、溶着機70による溶着温度などの溶着状況を管理するものである。溶着機70は、対向する一対のローラー72と、ヒーター73を有している。溶着対象の隣接する2つの不透液シート2の端部どうしが、上下に重ね合わせられ、一対のローラー72によって挟み付けられている。各ローラー72には、図示しないモーターが接続されている。
【0039】
溶着機70の前進方向(
図6の白抜き矢印方向)におけるローラー72の直近前方(
図6において左側)にヒーター73が設けられている。ヒーター73は、前記2つの不透液シート2の端部どうし間に介在されている。ヒーター73には熱電対などからなる溶着温度計74が設けられている。溶着温度計74によってヒーター73による溶着温度が検出される。
【0040】
さらに、溶着機70には、GPS電波を受信するGPS受信部75が設けられている。
溶着温度計74及びGPS受信部75は、処理部76と接続されている。処理部76が、ケーブル77を介してスマートフォン30と接続されている。
【0041】
<溶着工程>
溶着の際は、ヒーター73が発熱されるとともに、一対のローラー72が互いに同期して回転駆動される。これによって、前記2つの防水シート2の端部が、ヒーター73によって加熱されたうえで一対のローラー72間に導入されて溶着される。同時に、溶着機70が、継ぎ目2cの延び方向(
図6において白抜き矢印方向)に沿って自走される。
【0042】
<溶着施工管理データの取得工程>
溶着工程中、ヒーター73の出力温度(溶着温度)が、溶着温度計74によって連続的又は短時間置きに検出される。検出された溶着温度情報は、処理部76によるヒーター出力のフィードバック制御に供されるとともに、デジタル変換されて処理部76からスマートフォン30へ出力される。スマートフォン30においては、前記溶着温度情報(溶着施工管理データ)が、受け取った時間とともに、記憶部34に記憶される。
なお、ヒーター73の出力温度(溶着温度)が正常範囲を下回ったときは、処理部76が警報ブザー等で報知するようにしてもよい。
【0043】
<位置情報の取得工程>
併せて、GPS受信部75によってGPS電波を受信することによって、溶着機70の現在位置が計測される。溶着機70に直にGPS受信部75が設けられているから、溶着機70とスマートフォン30とが離れていたとしても、溶着機70の正確な位置情報が得られる。該位置情報は、処理部76においてデジタル変換されて、スマートフォン30へ出力される。スマートフォン30においては、溶着温度情報(溶着施工管理データ)の取得箇所の実位置情報38dとして、取得時間と共に記憶部34に記憶される。さらに、スマートフォン30において、マップ座標位置45が算出されて、実位置情報38dと紐付けされて記憶部34に記憶される。
このようにして、敷設対象1の継ぎ目2cごとに溶着時の溶着温度情報及び位置情報38d,45が取得され、記憶部34に蓄積される。
【0044】
<表示工程>
その後、作業管理者又は作業者が、スマートフォン30を操作して、溶着施工状況表示指令を出すと、これを受けたCPU31が、記憶部34の蓄積情報から溶着温度情報と位置情報38d,45とを紐付けた溶着温度管理画面(
図7)を作成して、ディスプレイ35に表示させる。
【0045】
<マップ表示工程>
具体的には、
図7に示すように、ディスプレイ35に敷設対象1のマップ40が表示されるとともに、該マップ40上の各マップ座標位置45に、該マップ座標位置45における溶着温度情報(溶着施工管理データ)が表示される。溶着温度情報は、マップ40上の対応する継ぎ目2cに沿って連続することでライン状標示46になる。ライン状標示46上の各マップ座標位置45における、対応する溶着温度情報が正常な溶着温度範囲であれば、そのマップ座標位置45は、例えば青色などの寒色系の色で表示される。正常な溶着温度範囲から外れているマップ座標位置では、例えば赤色などの暖色系の色で表示される。これによって、作業管理者又は作業者は、敷設対象1の各所における継ぎ目2cの溶着温度状況を視覚的に一目で把握できる。
1のライン状標示46上で一箇所でも正常な溶着温度範囲から外れている場合は、そのライン状標示46の全体を赤色などの暖色系で表示してもよい。
【0046】
さらに好ましくは、ポップアップ表示47をライン状標示46と結び付けて表示し、該ポップアップ表示47内に、溶着温度が正常範囲か否かの情報のほか、溶着施工の開始時刻、終了時刻、開始時の溶着温度、終了時の溶着温度等の、詳細な溶着施工管理データが表記されるようにしてもよい。マップ40上のライン状標示46を選択すると、ポップアップ表示47が表示されるようにしてもよい。ライン状標示46上の各マップ座標位置45についての詳細な溶着施工管理データが表記されたポップアップ表示がなされるようにしてもよい。これによって、作業管理者又は作業者は、敷設対象1の各所における継ぎ目2cの溶着施工状況の詳細を容易に把握することができる。溶着施工管理データをマップに落とし込んで表示することで、施工管理に有益な情報を提供できる。
【0047】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の改変をなすことができる。
例えば、溶着施工管理データと位置情報とを紐付けた表示は、マップに限らず、表、マトリックスなどであってもよい。
第1実施形態において、プローブ13又はその近くの検査圧路10にGPS受信部を設け、該GPS受信部によって継ぎ目2cの良否点検箇所の位置情報を取得してもよい。
第2実施形態において、閉止治具63又はその近くの検査圧路60にGPS受信部を設け、該GPS受信部によって補修部分7の良否点検箇所の位置情報を取得してもよい。
第3実施形態において、スマートフォン30のGPS機能によって溶着施工箇所の位置情報を取得してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、産業廃棄物処分場の遮水シートの継ぎ目溶着の良否管理などに適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 敷設対象
2 不透液シート
2c 継ぎ目
2d 溶着部
2e 溶着部間空間
3 溶着施工管理システム
3a データ取得部
3B,3C 溶着施工管理システム
5 損傷部
7 補修部分
7b 溶着部
10 空気圧路(検査圧路)
20 信号処理回路
30 スマートフォン(位置情報取得部、表示部、マップ表示部、データ表示部)
33 GPS受信部
34 記憶部
35 ディスプレイ
37a マップ表示プログラム
37b 座標算出プログラム
37c データ表示プログラム
38a マップ画像データ
38b 特定位置情報
38c 溶着施工管理データ
38d 実位置情報
38e 位置情報
a,b 特定位置
40 マップ
41 マップ座標位置
44 ポップアップ表示
45 マップ座標位置
47 ポップアップ表示
50 管理PC
60 真空圧路(検査圧路)
63 閉止治具
70 溶着機
73 ヒーター
74 溶着温度計
75 GPS受信部
76 処理回路
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物又は建築構造物からなる敷設対象に敷設された不透液シートにおける継ぎ目又は損傷補修用のパッドの溶着施工後の良否点検のデータである溶着施工管理データを取得するデータ取得部と、
前記溶着施工管理データの取得箇所の位置情報をGPS電波から取得する位置情報取得部と、
前記溶着施工管理データ及び前記位置情報を記憶する記憶部と、
記憶された溶着施工管理データを前記位置情報と紐付けて表示する表示部とを備え、
前記データ取得部が、
前記継ぎ目の平行な2条の溶着部間に形成された溶着部間空間に接続されるプローブ、又は前記パッドに被せられるドーム状もしくはベローズ状の閉止治具が、先端部に設けられた検査圧路と、
設定された大きさのガス圧を、前記検査圧路ひいては前記プローブ又は前記閉止治具に供給した後、前記検査圧路と遮断される検査圧供給部と、
前記検査圧路に接続されて、前記遮断後の前記検査圧路のガス圧に応じた電気信号をデジタル変換して前記溶着施工管理データを得る信号処理回路と、を含むことを特徴とする溶着施工管理システム。
【請求項2】
前記位置情報取得部が、前記敷設対象のマップにおける前記取得箇所と対応するマップ座標位置を算出する座標算出部を含み、
前記表示部が、前記マップを表示するマップ表示部と、前記溶着施工管理データを対応するマップ座標位置と紐付けて前記マップに表示するデータ表示部とを含み、
前記座標算出部は、取得された前記取得箇所のGPS出力形式の位置情報を、前記マップ上の特定位置と対応する実際の位置についてのGPS出力形式の特定位置情報に基づいて、前記マップ座標位置に変換し、
前記記憶部は、前記変換されたマップ座標位置を記憶し、
前記データ表示部が、前記記憶されたマップ座標位置を用いて前記紐付けを行なうことを特徴とする請求項1に記載の溶着施工管理システム。