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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032766
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ステータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20230302BHJP
   H02K 3/487 20060101ALI20230302BHJP
   H02K 3/48 20060101ALI20230302BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/487 Z
H02K3/48
H02K11/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139073
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 国士
(72)【発明者】
【氏名】為国 宏高
(72)【発明者】
【氏名】井口 卓郎
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB15
5H604BB17
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB15
5H604PB03
5H604QC01
5H611BB01
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611UA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ステータにおいて絶縁紙を適切に配置することができる技術を提供する。
【解決手段】ステータは、上下に延びる中心軸を中心とする環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティース112と、前記ティースに配置される巻線12と、前記ティースと前記巻線との周方向間に配置される絶縁紙142と、前記絶縁紙よりも少なくとも一部が前記コアバックから径方向に離れた位置に配置され、かつ、周方向に隣り合う前記ティースの間であるスロット15内に配置される部材と、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心とする環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、
前記ティースに配置される巻線と、
前記ティースと前記巻線との周方向間に配置される絶縁紙と、
前記絶縁紙よりも少なくとも一部が前記コアバックから径方向に離れた位置に配置され、かつ、周方向に隣り合う前記ティースの間であるスロット内に配置される部材と、
を有する、ステータ。
【請求項2】
前記スロット内に少なくとも一部が配置される位置センサをさらに有し、
前記位置センサは、前記部材の軸方向上方に配置される、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記部材は、複数の前記スロットのうちの一部のスロット内に配置され、
前記一部のスロットには、前記位置センサが配置されるスロットが含まれる、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記部材は、軸方向に延びる柱状である、請求項1から3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記部材は、前記ティースよりも軸方向の長さが短い、請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記部材は、前記コアバックから径方向に離れる方向に凸となる第1曲面部を有する、請求項4又は5に記載のステータ。
【請求項7】
前記部材は、周方向に隣り合う前記ティースから周方向に離れるにつれて前記コアバックに近づく第2曲面部又は傾斜面部を有する、請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記部材は、前記コアバックと径方向に対向するとともに前記第2曲面部又は前記傾斜面部と繋がる平面部を有する、請求項7に記載のステータ。
【請求項9】
前記絶縁紙は、
前記ティースと接触するティース接触部と、
前記ティース接触部と繋がり、前記コアバックに向けて折り返される折返し部と、
を有し、
前記折返し部の少なくとも一部は、前記部材と接触する、請求項1から8のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に対向するマグネットを有するロータと、
を有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータおよびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティース間にスロットを有するステータとロータとを備えた電動機において、スロットの内周側開口部を閉じるように、絶縁性を有する材料で形成されたウェッジを設ける構成が知られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-245403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ティースに巻線を配置するに際して、絶縁を確保するために、ティースの側面と巻線との間に絶縁紙が配置されることがある。絶縁紙は、巻線をティースに巻き付ける際などに、径方向に移動する可能性がある。絶縁紙が径方向に移動すると、スロット内のスペースに変更が生じ、設計通りに部品を配置し難くなる可能性がある。また、スロット内にウェッジを配置する場合に、ウェッジをやみくもに配置すると、ウェッジが絶縁紙に好ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本開示は、ステータにおいて絶縁紙を適切に配置することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的なステータは、上下に延びる中心軸を中心とする環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、前記ティースに配置される巻線と、前記ティースと前記巻線との周方向間に配置される絶縁紙と、前記絶縁紙よりも少なくとも一部が前記コアバックから径方向に離れた位置に配置され、かつ、周方向に隣り合う前記ティースの間であるスロット内に配置される部材と、を有する。
【0007】
本開示の例示的なモータは、上記構成のステータと、前記ステータと径方向に対向するマグネットを有するロータと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ステータにおいて絶縁紙を適切に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る電動バイクの構成を示す概略図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るモータの構成を示す概略断面図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係るステータの構成を示す概略斜視図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係るステータコアの構成を示す概略斜視図である。
図5図5は、巻線を取り除いたステータの一部を拡大して示した概略斜視図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係る絶縁樹脂の構成を示す概略斜視図である。
図7図7は、本開示の実施形態に係る絶縁紙の構成を示す概略斜視図である。
図8図8は、ステータが有する回路基板の周辺の構造を示す概略斜視図である。
図9図9は、ウェッジの周辺の構造を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、本開示の実施形態に係るモータ100を有する電動バイク200の説明に際して、電動バイク200を運転する運転者を基準として前後の表現を用いる。また、モータおよびステータの説明に際して、図2に示すモータ100の中心軸Aの延びる方向を単に「軸方向」と呼び、モータ100の中心軸Aを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。また、本明細書では、モータおよびステータの説明に際して、図2に示す方向にモータ100を配置した場合の軸方向と平行な方向を上下方向と定義する。本明細書で定義される方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。
【0011】
<1.電動バイク>
図1は、本開示の実施形態に係る電動バイク200の構成を示す概略図である。電動バイク200は、運転者が座る座部201aを有するバイク本体部201を有する。バイク本体部201の前方には、前輪202が配置される。バイク本体部201の後方には、後輪203が配置される。バイク本体部201は、前輪202および後輪203を利用して、地面に対して移動可能に設けられる。
【0012】
座部201aに座る運転者は、前方に配置されるハンドル204を握って電動バイク200の進行方向を操作する。後輪203は、モータ100を有する。モータ100は、いわゆるインホイールモータである。ハンドル204には、不図示のスロットルが設けられている。電動バイク200においては、運転者によるスロットルの操作に応じて、モータ100の駆動が制御される。
【0013】
なお、本実施形態では、後輪203にモータ100が設けられる構成としたが、前輪202にモータ100が設けられる構成としてもよい。また、本開示のモータは、電動バイクに限らず、他の移動体に適用されてもよい。移動体には、例えば、自動車、二輪車、船舶、航空機が含まれてよい。また、本開示のモータは、移動体に限らず、家電に適用されてもよい。
【0014】
<2.モータ>
図2は、本開示の実施形態に係るモータ100の構成を示す概略断面図である。なお、図2には、モータ100の中心軸Aを基準として、モータ100の半分の構造のみが示されている。図2に示すように、モータ100は、ステータ1とロータ2とを有する。モータ100は、シャフト3と、ステータホルダ4と、軸受5とをさらに有する。
【0015】
シャフト3は、中心軸Aを中心として軸方向に延びる柱状である。シャフト3は、電動バイク200のバイク本体部201に対して回転不能に取り付けられる。ステータホルダ4は、中心軸Aを中心とする円筒状である。詳細には、ステータホルダ4は、軸方向に延びる有底筒状である。ステータホルダ4の中心には、中心軸Aを中心として軸方向に延びるステータホルダ筒部41が設けられる。シャフト3は、ステータホルダ筒部41に入れられ、ステータホルダ筒部41の上下から突き出す。例えば、シャフト3がステータホルダ筒部41に圧入されることにより、ステータホルダ4はシャフト3に固定される。
【0016】
ステータ1は、モータ100の電機子である。ステータ1は、中心軸Aを中心とする円環状である。ステータ1は、ステータホルダ4の径方向外方に配置され、ステータホルダ4に固定される。すなわち、ステータ1は、シャフト3に対して回転不能に固定される。ステータ1の詳細については後述する。
【0017】
ロータ2は、ステータ1と径方向に対向するマグネット21を有する。本実施形態では、マグネット21は、ステータ1の径方向外方に隙間を介して配置される。マグネット21は、周方向に複数配置される。詳細には、マグネット21は、周方向に等間隔に複数配置される。ただし、マグネットは、複数でなくてもよく、1つの環状のマグネットであってもよい。
【0018】
ロータ2は、詳細には、リム22と、ホイールカバー23と、ブレーキドラム24とを有する。リム22は、中心軸Aを中心として軸方向に延びる筒状である。マグネット21は、リム22の内周面に固定される。リム22の径方向外方には、不図示のタイヤが取り付けられる。
【0019】
ホイールカバー23は、リム22の上部において、径方向内方に配置される。ホイールカバー23は、玉軸受等の軸受5を介してシャフト3に対して回転可能に取り付けられる。ホイールカバー23は、外周部がリム22に固定される。すなわち、ホイールカバー23は、リム22と共に、中心軸Aを中心として回転可能に設けられる。
【0020】
ブレーキドラム24は、リム22の下部において、径方向内方に配置される。ブレーキドラム24は、玉軸受等の軸受5を介してシャフト3に対して回転可能に取り付けられる。ブレーキドラム24は、外周部がリム22に固定される。すなわち、リム22と、ホイールカバー23と、ブレーキドラム24とは、中心軸Aを中心として回転可能に設けられる。
【0021】
ステータ1は、筒状のリム22にホイールカバー23とブレーキドラム24とが取り付けられることにより形成される内部空間300に配置される。ロータ2は、ステータ1に駆動電流が供給されることにより発生する周方向のトルクによって、中心軸Aを中心として回転する。
【0022】
なお、本実施形態のモータ100は、ロータ2のマグネット21がステータ1の径方向外方に配置される、いわゆるアウターロータ型のモータである。ただし、本開示の技術は、アウターロータ型のモータに限らず、ロータのマグネットがステータの径方向内方に配置される、いわゆるインナーロータ型のモータにも適用可能である。
【0023】
<3.ステータ>
(3-1.ステータの構成の概要)
図3は、本開示の実施形態に係るステータ1の構成を示す概略斜視図である。なお、図3には、ステータ1の他に、シャフト3およびステータホルダ4も示されている。図3に示すように、ステータ1は、ステータコア11と巻線12とを有する。ステータ1は、回路基板13をさらに有する。
【0024】
ステータコア11は、マグネット21の径方向内方に、マグネット21に対して隙間をあけて配置される。ステータコア11は磁性体である。本実施形態においては、ステータコア11は、電磁鋼板を積層して構成される。図4は、本開示の実施形態に係るステータコア11の構成を示す概略斜視図である。
【0025】
図4に示すように、ステータコア11は、コアバック111と、複数のティース112とを有する。すなわち、ステータ1は、コアバック111と、複数のティース112とを有する。コアバック111は、上下に延びる中心軸Aを中心とする環状である。コアバック111は、詳細には円環状である。ティース112は、コアバック111から径方向に延びる。本実施形態では、ティース112は、コアバック111から径方向外方に延びる。複数のティース112は、周方向に間隔をあけて配置される。本実施形態では、複数のティース112は、周方向に等間隔に配置される。
【0026】
図4に示すように、各ティース112は、コアバック111から径方向外方に延びるティース本体部112aと、ティース本体部112aの径方向外方に配置されるアンブレラ部112bとを有する。アンブレラ部112bは周方向に延びる。アンブレラ部112bは、ティース本体部112aの周方向一端に対して周方向一方側に延びる部分を有する。また、アンブレラ部112bは、ティース本体部112aの周方向他端に対して周方向他方側に延びる部分を有する。すなわち、アンブレラ部112bは、ティース本体部112aよりも周方向の幅が広い。
【0027】
巻線12は、ティース112に配置される。詳細には、複数のティース112のそれぞれに、巻線12が配置される。より詳細には、ステータコア11が有する全てのティース112に、巻線12が配置される。巻線12は、絶縁体で被覆された導線をティースに巻き付けて形成される。より詳細には、巻線12は、ティース本体部112aに導線をコイル状に巻き付けて形成される。すなわち、巻線12は、詳細には、ティース本体部112aに配置される。
【0028】
なお、本実施形態のモータ100は、U相、V相、および、W相を有する3相モータである。このために、巻線12を構成する導線には、U相導線と、V相導線と、W相導線が含まれる。巻線12に駆動電流が供給されると、ティース112に径方向の磁束が発生する。これにより、マグネット21を有するロータ2に周方向のトルクが発生して、ロータ2が中心軸Aを中心として回転する。
【0029】
図5は、巻線12を取り除いたステータ1の一部を拡大して示した概略斜視図である。図5に示すように、詳細には、巻線12は、ティース112に対してインシュレータ14を介して配置される。すなわち、ステータ1は、インシュレータ14を有する。インシュレータ14は絶縁体である。
【0030】
本実施形態では、インシュレータ14は、第1インシュレータ141と第2インシュレータ142とを有する。第1インシュレータ141と第2インシュレータ142とは別の部材である。詳細には、第1インシュレータ141は樹脂製である。第2インシュレータ142は紙製である。なお、第2インシュレータ142は樹脂製であってもよい。以下、第1インシュレータ141のことを絶縁樹脂141と表現する。第2インシュレータ142のことを絶縁紙142と表現する。すなわち、ステータ1は、絶縁樹脂141を有する。ステータ1は、絶縁紙142を有する。
【0031】
図5に示すように、絶縁樹脂141は、ステータコア11の軸方向上方と軸方向下方とに配置される。本実施形態においては、ステータコア11の軸方向上方に配置される絶縁樹脂141と、軸方向下方に配置される絶縁樹脂141とは、同じ形状である。図6は、本開示の実施形態に係る絶縁樹脂141の構成を示す概略斜視図である。図6に示すように、絶縁樹脂141は、インシュレータ環状部1411と、複数のインシュレータ突起部1412とを有する。
【0032】
インシュレータ環状部1411は、中心軸Aを中心とする円環状、かつ、板状である。インシュレータ環状部1411は、コアバック111と接触する位置に配置される。ステータコア11の軸方向上方に配置される絶縁樹脂141においては、インシュレータ環状部1411は、コアバック111の上面と接触し、コアバック111の上面の少なくとも一部を覆う。ステータコア11の軸方向下方に配置される絶縁樹脂141においては、インシュレータ環状部1411は、コアバック111の下面と接触し、コアバック111の下面の少なくとも一部を覆う。
【0033】
インシュレータ突起部1412は、インシュレータ環状部1411から径方向外方に突出する。インシュレータ突起部1412は、インシュレータ環状部1411と同様に板状である。複数のインシュレータ突起部1412は、周方向に等間隔に配置される。インシュレータ突起部1412は、ティース112と接触する位置に配置される。複数のインシュレータ突起部1412の数は、複数のティース112の数と同じである。ステータコア11の軸方向上方に配置される絶縁樹脂141においては、各インシュレータ突起部1412は、ティース112の上面と接触し、ティース112の上面の少なくとも一部を覆う。ステータコア11の軸方向下方に配置される絶縁樹脂141においては、各インシュレータ突起部1412は、ティース112の下面と接触し、ティース112の下面の少なくとも一部を覆う。
【0034】
以上の説明からわかるように、絶縁樹脂141は、ティース112と巻線12との軸方向間に配置される。詳細には、インシュレータ突起部1412が、ティース112と巻線12との軸方向間に配置される。
【0035】
図7は、本開示の実施形態に係る絶縁紙142の構成を示す概略斜視図である。図5および図7に示すように、絶縁紙142は、周方向に隣り合うティース112の間であるスロット15内に配置される。詳細には、複数のスロット15のそれぞれに、絶縁紙142が配置される。なお、複数のスロット15は、複数のティース112の数と同数である。すなわち、絶縁紙142も、複数のティース112の数と同数存在する。絶縁紙142は、折り曲げられてスロット15内に配置される。
【0036】
図7に示すように、折り曲げられた絶縁紙142は、一対のティース接触部1421と、コアバック接触部1422とを有する。一対のティース接触部1421の一方は、周方向に隣り合う2つのティース112のうちの一方の周方向の側面と接触する。一対のティース接触部1421の他方は、周方向に隣り合う2つのティース112のうちの他方の周方向の側面と接触する。コアバック接触部1422は、コアバック111の径方向の外周面と接触する。
【0037】
絶縁紙142は、ティース112と巻線12との周方向間に配置される。詳細には、ティース接触部1421が、ティース112と巻線12との周方向間に配置される。絶縁体として絶縁紙142が利用されると、板状の樹脂を絶縁体として利用する場合に比べて、スロット15内における絶縁体の体積を減らすことができる。すなわち、絶縁体として絶縁紙142が利用されることにより、スロット15の体積を大きくして巻線12の巻き数を増やすことができる。
【0038】
図8は、ステータ1が有する回路基板13の周辺の構造を示す概略斜視図である。回路基板13には、例えば、不図示の外部ドライバからの出力電流を巻線12に供給するための配線パターンが設けられる。回路基板13は、巻線12の軸方向上方に配置される。回路基板13は、軸方向と直交する面と平行な方向に広がる。本実施形態では、図3に示すように、回路基板13は、軸方向からの平面視において、ステータ1の周方向の一部分に配置される。回路基板13は、例えば、インシュレータ14、又は、専用の支持部材によって支持される。
【0039】
図8に示すように、回路基板13には位置センサ16が取り付けられる。位置センサ16は、ロータ2の回転角を検出する。本実施形態において、位置センサ16はホールICである。位置センサ16の数は、少なくとも1つであってよい。本実施形態では、位置センサ16の数は3つである。
【0040】
位置センサ16は、回路基板13の下面から軸方向下方に延びる。位置センサ16は、少なくとも一部がスロット15内に配置される。すなわち、ステータ1は、スロット15内に少なくとも一部が配置される位置センサ16をさらに有する。位置センサ16は、ロータ2が有するマグネット21と径方向に対向する。本実施形態では、位置センサ16の一部がスロット15内に配置される。
【0041】
図8に示すように、ステータ1は、スロット15内に配置される部材17を有する。部材17は、絶縁紙142とは別部材である。部材17は、例えば樹脂又は繊維等で構成される絶縁性の部材である。部材17は、例えばノーメックス(登録商標)で構成される。この部材17のことを、以下においてはウェッジ17と表現する。以下、このウェッジ17について説明する。
【0042】
(3-2.ウェッジ)
図9は、ウェッジ17の周辺の構造を示す概略平面図である。図8および図9に示すように、スロット15内に配置されるウェッジ17は、絶縁紙142よりも少なくとも一部がコアバック111から径方向に離れた位置に配置される。換言すると、ステータ1は、絶縁紙142よりも少なくとも一部がコアバック111から径方向に離れた位置に配置され、かつ、周方向に隣り合うティース112の間であるスロット15内に配置される部材17を有する。
【0043】
巻線12は、巻き数を増やすために、ティース112のコアバック111側の端部である根元部分から、コアバック111から径方向に離れるティース112の先端に近い位置まで配置される。そして、絶縁紙142は、絶縁距離の確保のために、径方向において、巻線12が配置される範囲よりも広い範囲に配置される。すなわち、絶縁紙142は、巻線12よりもティース112の先端に近い位置に配置される部分を有する。上述のように、巻線12をティース112に巻き付ける際に、絶縁紙142がコアバック111から離れる方向に移動する可能性がある。ただし、本実施形態では、上述した位置にウェッジ17が配置されるために、絶縁紙142の径方向の一端部がコアバック111から径方向に一定距離以上離れることを規制することができる。より詳細には、絶縁紙142が径方向外方に移動しようとしても、ティース112間に固定されているウェッジ17が絶縁紙142に接触するため、絶縁紙142の移動を抑制できる。したがって、ウェッジ17は、絶縁紙142の位置を規制する規制部材と言える。
【0044】
なお、本実施形態では、ウェッジ17は、絶縁紙142よりも少なくとも一部が径方向外方に配置される。ウェッジ17は、例えば、スロット15内に接着剤等で固定される。ウェッジ17は、絶縁紙142の径方向外方の端部がコアバック111から径方向外方に一定距離以上離れることを規制することができる。
【0045】
ところで、巻線12をティース112に巻き付ける際に、絶縁紙142がコアバック111から離れる方向に移動すると、絶縁紙142が、スロット15内の位置センサ16が配置されるべきスペースに入り込む可能性がある。すなわち、絶縁紙142の移動によって、位置センサ16が配置し難くなる可能性がある。
【0046】
この点、本実施形態では、ウェッジ17の軸方向上方に位置センサ16が配置される。換言すると、位置センサ16は、部材17の軸方向上方に配置される。このような構成とすることにより、コアバック111から径方向に離れる方向に移動しようとする絶縁紙142の動きをウェッジ17によって阻止することができる。この結果、位置センサ16を配置するスペースに絶縁紙142が入り込むことをウェッジ17によって阻止することができる。すなわち、ウェッジ17によって位置センサ16を配置するスペースを適切に確保することができる。
【0047】
なお、本実施形態において、位置センサ16およびウェッジ17は、スロット15の径方向外方の端部に配置される。詳細には、位置センサ16とウェッジ17とは、軸方向間に隙間をあけて配置される。
【0048】
以上から分かるように、本実施形態のモータ100は、ウェッジ17が配置されることにより、ステータ1の組み立て性を良くすることができる。すなわち、本実施形態のモータ100は、効率良く製造することができる。
【0049】
ウェッジ17は、ステータ1が有する複数のスロット15の全てに配置されてもよい。ただし、本実施形態では、ウェッジ17は、複数のスロット15のうちの一部のスロット15に配置される。換言すると、部材17は、複数のスロット15のうちの一部のスロット15に配置される。一部のスロット15には、位置センサ16が配置されるスロット15が含まれる。このような構成によれば、ウェッジ17によって位置センサ16を配置するスペースを適切に確保しつつ、ウェッジ17の数をできるだけ減らして製造コストおよび作業負担の低減を図ることができる。
【0050】
本実施形態では、ウェッジ17が配置される一部のスロット15の数は7つである。ただし、位置センサ16の数が3つであるために、ウェッジ17の数は3つであってもよい。本実施形態では、3つの位置センサ16は、周方向において、3スロットごとにスロット15に配置される。すなわち、周方向において、3つの位置センサ16が配置される範囲は7スロット分となる。この7スロット分に、ウェッジ17が配置されている。このような構成とすると、位置センサ16を配置する場所を把握し易くすることができる。すなわち、作業性を向上することができる。
【0051】
本実施形態において、ウェッジ17は、軸方向に延びる柱状である。換言すると、部材17は、軸方向に延びる柱状である。このような構成とすることにより、作業時のウェッジ17の取り扱い性を向上することができる。詳細には、ウェッジ17は、軸方向にまっすぐに延びる。なお、ウェッジ17は、中空状等、他の形状であってもよい。
【0052】
また、ウェッジ17は、ティース112よりも軸方向の長さが短い。換言すると、部材17は、ティース112よりも軸方向の長さが短い。このような構成によれば、位置センサ16を配置する目的でウェッジ17に凹部を設ける等の加工を行う必要がなく、位置センサ16をスロット15内に配置するための構造を単純化することができる。
【0053】
詳細には、ウェッジ17の上面は、ティース112の上面よりも低い。ウェッジ17の上面は、スロット15内の所定の位置に位置センサ16を配置することができる高さ位置とされる。なお、ウェッジ17の下面は、ティース112の下面と同じか、ティース112の下面よりも高い位置であってもよい。また、ウェッジ17の下面は、ティース112の下面よりも下方であってもよい。ただし、ウェッジ17の下面は、ステータコア11の下方に配置される絶縁樹脂141の下面と同じ高さ位置か、当該下面よりも高い位置であることが好ましい。
【0054】
図9に示すように、ウェッジ17は、コアバック111から径方向に離れる方向に凸となる第1曲面部171を有する。換言すると、部材17は、コアバック111から径方向に離れる方向に凸となる第1曲面部171を有する。なお、第1曲面部171は、ウェッジ17の軸方向に延びる側面を構成する。このようにウェッジ17が曲面構造の側面を有する構成とすることにより、曲面構造とされるアンブレラ部112bの径方向内方の面に沿ってウェッジ17を配置し易くすることができる。
【0055】
本実施形態では、ウェッジ17は、スロット15の径方向外方の端部に配置される。スロット15の径方向外方の端部は、アンブレラ部112bの径方向内方の面によって構成される。アンブレラ部112bの径方向内方の面は、径方向内方に向かうにつれてティース本体部112aからの周方向への突出量が小さくなる曲面構造となっている。当該曲面は、詳細には凹面である。ウェッジ17が凸面状の第1曲面部171を有することにより、凹面構造とされるアンブレラ部112bの径方向内方の面に沿ってウェッジ17を配置し易くすることができる。本実施形態において、第1曲面部171は、アンブレラ部112bの径方向内方の面と対向している。第1曲面部171とアンブレラ部112bとは、直接的に接触してもよいし、接着剤等の介在物を介して間接的に接触してもよい。第1曲面部171は、例えば、円弧状又は楕円弧状の曲面等であってよい。
【0056】
また、ウェッジ17は、周方向に隣り合うティース112から周方向に離れるにつれてコアバック111に近づく第2曲面部172又は傾斜面部を有する。換言すると、部材17は、周方向に隣り合うティース112から周方向に離れるにつれてコアバック111に近づく第2曲面部172又は傾斜面部を有する。なお、第2曲面部172又は傾斜面部は、ウェッジ17の軸方向に延びる側面を構成する。
【0057】
このように構成すると、巻線12をティース112に巻き付ける際に、コアバック111から径方向に離れる方向に移動しようとする絶縁紙142の一部を、第2曲面部172又は傾斜面部に沿わせてコアバック111に近づく方向に向かい易くすることができる。すなわち、絶縁紙142の一端部を第2曲面部172に沿わせて、コアバック111が存在する方向に折返し易くすることができる。
【0058】
本実施形態では、ウェッジ17は、第2曲面部172を有する。第2曲面部172は、第1曲面部171と繋がる。詳細には、ウェッジ17は、周方向の一方側に配置されるティース112と周方向に対向する第2曲面部172と、周方向の他方側に配置されるティース112と周方向に対向する第2曲面部172と、の2つの第2曲面部172を有する。第2曲面部172は、第1曲面部171と同じ曲率の曲面であってもよいし、第1曲面部171と異なる曲率の曲面であってもよい。第2曲面部172は、凸状の曲面に限らず凹状の曲面であってもよい。曲面は、例えば、円弧状又は楕円弧状の曲面等であってよい。ウェッジ17が、第2曲面部172の代わりに傾斜面部を有する場合には、当該傾斜面部が第1曲面部171と繋がる。
【0059】
また、本実施形態では、ウェッジ17は、コアバック111と径方向に対向するとともに第2曲面部172又は傾斜面部と繋がる平面部173を有する。換言すると、部材17は、コアバック111と径方向に対向するとともに第2曲面部172又は傾斜面部と繋がる平面部173を有する。なお、平面部173は、ウェッジ17の軸方向に延びる側面を構成する。このような構成によれば、ウェッジ17がコアバック111に近づく方向に突出する量を減らして、巻線12を巻くスペースを確保し易くすることができる。本実施形態では、平面部173は2つの第2曲面部172を連結する。
【0060】
なお、平面部173は設けられなくてもよい。この場合、例えば、2つの第2曲面部172が連結されて、連結された2つの第2曲面部172が、コアバック111へ径方向に近づく方向に凸となる1つの曲面を構成してよい。当該曲面は、例えば円弧状又は楕円弧状の曲面であってよい。また、第2曲面部172又は傾斜面部が設けられず、ウェッジ17は、第1曲面部171と平面部とのみを有する構成とされてもよい。この場合、ウェッジ17は、例えば、軸方向からの平面視において半円形状又は半楕円形状とされてよい。
【0061】
上述のように、絶縁紙142は、ティース112と接触するティース接触部1421を有する。本実施形態では、図9に示すように、絶縁紙142は、ティース接触部1421と繋がり、コアバック111に向けて折り返される折返し部1423をさらに有する。そして、折返し部1423の少なくとも一部は、ウェッジ17と接触する。換言すると、折返し部1423の少なくとも一部は、部材17と接触する。このような構成とすると、ウェッジ17によって絶縁紙142を折り返した状態で維持することができる。この結果、絶縁紙142が不適切な方向に広がることを防止できる。
【0062】
<4.留意事項>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の技術は、例えば電動バイクおよび自動車等の車両、船舶、航空機、ロボット、家電等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・ステータ
2・・・ロータ
12・・・巻線
15・・・スロット
16・・・位置センサ
17・・・部材、ウェッジ
21・・・マグネット
100・・・モータ
111・・・コアバック
112・・・ティース
142・・・第2インシュレータ、絶縁紙
171・・・第1曲面部
172・・・第2曲面部
173・・・平面部
1421・・・ティース接触部
1423・・・折返し部
A・・・中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9