(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032772
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置
(51)【国際特許分類】
B65H 75/48 20060101AFI20230302BHJP
B66D 1/14 20060101ALI20230302BHJP
B66D 3/18 20060101ALI20230302BHJP
A61G 3/06 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B65H75/48 A
B66D1/14 Z
B66D3/18 D
A61G3/06 711
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139080
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 研一朗
【テーマコード(参考)】
3F068
【Fターム(参考)】
3F068AA14
3F068BA12
3F068CA02
3F068DA01
3F068EB03
3F068FA07
3F068FB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、シャフトが軸方向に移動することを抑制し、かつ、付勢機構の動作時に、シャフトとハウジングとの間に設けられた隙間に、ゼンマイバネの一部が入り込んで拘束されてしまうことを抑制する、付勢機構の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の付勢機構は、ハウジング2と、ゼンマイバネと、シャフト4とを備え、ハウジング2は、ゼンマイバネのうち、軸方向で一方側を少なくとも部分的に覆うように設けられた被覆部22を有し、シャフト4は、取付軸部41と、取付軸部41の外周に対して径方向外側に延出した延出部42とを有し、延出部42の径方向外側の先端部423と、被覆部22の開口縁部221とは、互いに対して非接触状態となるように隙間を介して径方向に対向して設けられ、先端部423と開口縁部221とは、軸方向に見たときに径方向でオーバーラップしている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されたゼンマイバネと、
前記ゼンマイバネの付勢力によって前記ハウジングに対して軸周りに回転するシャフトと
を備えた付勢機構であって、
前記ゼンマイバネの径方向内側の一端は、前記シャフトに取り付けられ、前記ゼンマイバネの径方向外側の他端は、前記ハウジングに取り付けられ、
前記ハウジングは、前記ゼンマイバネのうち、前記シャフトの軸方向で一方側を少なくとも部分的に覆うように設けられた被覆部を有し、
前記被覆部は、前記シャフトが挿通される挿通孔を有し、
前記シャフトは、前記ハウジングの内部に位置し、前記ゼンマイバネの一端が取り付けられる取付軸部と、前記取付軸部の外周に対して径方向外側に延出した延出部とを有し、
前記延出部の径方向外側の先端部と、前記被覆部の前記挿通孔を画定する開口縁部とは、互いに対して非接触状態となるように隙間を介して径方向に対向して設けられ、
前記先端部と前記開口縁部とは、前記シャフトが前記ハウジングから離脱する方向の移動が規制されるように、前記軸方向に見たときに前記径方向でオーバーラップしている、
付勢機構。
【請求項2】
前記被覆部は、前記ハウジングの外側を向く外側面と、前記ハウジングの内側を向く内側面とを有し、前記開口縁部は、前記外側面の径方向内側の外側エッジと、前記内側面の径方向内側の内側エッジとを繋ぐ連結部分であり、前記開口縁部は、前記外側面から前記内側面に向かうにつれて、径方向外側へと延びるように傾斜または湾曲した案内面を有している、請求項1に記載の付勢機構。
【請求項3】
前記延出部は、前記開口縁部に径方向で対向する対向面を有し、
前記案内面は、前記軸方向に見たときに前記対向面と前記径方向でオーバーラップしていない、前記内側エッジから前記外側エッジに向かう所定の領域に設けられ、
前記案内面と前記対向面との間の径方向の間隔は、前記軸方向で前記内側エッジに近付くにつれて広くなるように構成されている、請求項2に記載の付勢機構。
【請求項4】
前記延出部は、前記開口縁部に径方向で対向する対向面を有し、前記開口縁部および前記対向面は、少なくとも部分的に、前記ハウジングの内側に向かうにつれて、径方向外側へと延びるように互いに略平行に傾斜または湾曲している、請求項2または3に記載の付勢機構。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の付勢機構と、
前記付勢機構の前記シャフトに直接または間接的に接続される巻取部と、
前記巻取部に巻き取りされ、および、前記巻取部から繰り出される長尺部材と、
前記巻取部を、前記長尺部材を巻き取る方向に駆動する駆動部と
を備えた、ウインチ装置。
【請求項6】
前記ウインチ装置は、車両の内部に車椅子を牽引するように構成される、請求項5に記載のウインチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ゼンマイバネを有する付勢機構(付勢手段)を備えたウインチ装置が開示されている。特許文献1のウインチ装置は、ベルトをリールから引き出して車椅子に連結し、モータの駆動力によってベルトをリールに巻き取ることで車椅子を牽引している。ベルトはゼンマイバネを有する付勢機構によってリールに巻き取られる方向に付勢されており、車椅子からベルトが外されたときなどに、ベルトはリールに自動で巻き取られる。
【0003】
上述した付勢機構のゼンマイバネはハウジング内に収容され、ゼンマイバネの径方向外側に位置する一端はハウジングに取り付けられ、ゼンマイバネの径方向内側に位置する他端は、ハウジングに対して回転可能に設けられたシャフトに接続されている。シャフトが一方向に回転するとゼンマイバネに付勢力が蓄積され、シャフトを回転させる外力が取り除かれると、蓄積された付勢力によって、シャフトが他方向に回転する。具体的には、ベルトがリールから繰り出されるように引っ張られたときに、シャフトが一方向に回転して、ゼンマイバネが縮んで付勢力が蓄積され、ベルトが車椅子から外されたときに、ゼンマイバネの付勢力によって、ベルトがリールに巻き取られる。
【0004】
ゼンマイバネを収容するハウジングの形状は限定されないが、通常、ゼンマイバネを収容できるように、軸方向の一方に開口部を有する有底筒状の収容部分と、収容部分に収容されたゼンマイバネの軸方向の一方を覆うように収容部分の開口部を閉鎖する被覆部を有している。被覆部は、ゼンマイバネの径方向で、被覆部の中央部に、ハウジングに対して回転するシャフトが通過する挿通孔を有している。シャフトは、ゼンマイバネの径方向内側に位置する他端が取り付けられ、ハウジング内部に位置する取付軸部と、取付軸部の外周に対して径方向外側に延出した延出部とを有している。延出部は、軸方向で被覆部と対応した位置において径方向外側に延出している。延出部の径方向外側の先端と、被覆部の挿通孔の開口縁とは、所定の隙間が設けられた状態で径方向に対向している。これにより、シャフトがハウジングに対して回転するときに、シャフトがハウジングの被覆部に対する摺動抵抗が抑制され、シャフトが円滑に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼンマイバネおよびハウジングを有する付勢機構は、リールなどの付勢対象となる別のユニットに組み付けられることで、所定の付勢対象に付勢力を加える。例えば、付勢機構が付勢対象となる別のユニットに取り付けられる前に、付勢機構は、ゼンマイバネの一端がハウジングに、他端がシャフトに取り付けられた状態で搬送される場合がある。このような付勢機構の搬送時においては、シャフトはゼンマイバネの他端に接続されているだけであり、軸方向への移動が規制されていない。シャフトが軸方向に移動すると、ゼンマイバネとの接続が解除されたり、ゼンマイバネがシャフトの移動により力を受けて変形してしまったりする可能性がある。
【0007】
また、シャフトの延出部と、被覆部の挿通孔の開口縁とは、径方向に離間して設けられているので、径方向に所定の大きさの隙間が形成されている。このような隙間が形成されていると、付勢機構の動作時(付勢機構がウインチ装置などの付勢対象に取り付けられて使用されるとき)において、ゼンマイバネが伸縮するときに、ゼンマイバネがその隙間に入り込んで、ゼンマイバネが隙間内で拘束されてしまう場合がある。特に、ゼンマイバネの径方向内側に位置する他端が、ゼンマイバネの自然状態で、ゼンマイバネの外周円の中心付近に位置する(
図10参照)のではなく、ゼンマイバネの中心に対して径方向外側にずれた位置に位置付けられるゼンマイバネの場合(
図11参照)、ゼンマイバネの他端がシャフトに接続されたときに、シャフトが径方向外側に力を受ける。そのため、ゼンマイバネによってシャフトが径方向外側に移動することで、シャフトの延出部の先端と、被覆部の挿通孔の開口縁との間の隙間が広がる領域が生じてしまう。このように、シャフトの延出部の先端と、被覆部の挿通孔の開口縁との間の隙間が広がると、ゼンマイバネの一部が、伸縮動作時にその隙間に入り込んでしまう場合がある。ゼンマイバネの一部が隙間に入り込んで拘束されると、ゼンマイバネが径方向に伸縮できなくなり、シャフトに付勢力を加えることが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、付勢機構のシャフトがハウジングから離脱する方向となる軸方向に移動することを抑制し、かつ、付勢機構の動作時に、シャフトとハウジングとの間に設けられた隙間に、ゼンマイバネの一部が入り込んで拘束されてしまうことを抑制する、付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の付勢機構は、ハウジングと、前記ハウジングに収容されたゼンマイバネと、前記ゼンマイバネの付勢力によって前記ハウジングに対して軸周りに回転するシャフトとを備えた付勢機構であって、前記ゼンマイバネの径方向内側の一端は、前記シャフトに取り付けられ、前記ゼンマイバネの径方向外側の他端は、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングは、前記ゼンマイバネのうち、前記シャフトの軸方向で一方側を少なくとも部分的に覆うように設けられた被覆部を有し、前記被覆部は、前記シャフトが挿通される挿通孔を有し、前記シャフトは、前記ハウジングの内部に位置し、前記ゼンマイバネの一端が取り付けられる取付軸部と、前記取付軸部の外周に対して径方向外側に延出した延出部とを有し、前記延出部の径方向外側の先端部と、前記被覆部の前記挿通孔を画定する開口縁部とは、互いに対して非接触状態となるように隙間を介して径方向に対向して設けられ、前記先端部と前記開口縁部とは、前記シャフトが前記ハウジングから離脱する方向の移動が規制されるように、前記軸方向に見たときに前記径方向でオーバーラップしている。
【0010】
また、本発明のウインチ装置は、上記付勢機構と、前記付勢機構の前記シャフトに直接または間接的に接続される巻取部と、前記巻取部に巻き取りされ、および、前記巻取部から繰り出される長尺部材と、前記巻取部を、前記長尺部材を巻き取る方向に駆動する駆動部とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置によれば、付勢機構のシャフトがハウジングから離脱する方向となる軸方向に移動することを抑制し、かつ、付勢機構の動作時に、シャフトとハウジングとの間に設けられた隙間に、ゼンマイバネの一部が入り込んで拘束されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の付勢機構を備えたウインチ装置の斜視図である。
【
図3】ウインチ装置によって車椅子が車内に牽引される状態を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態の付勢機構の正面図である。
【
図6】
図5において、被覆部の開口縁部と延出部の先端部とが径方向に対向している領域の拡大図である。
【
図7】変形例の付勢機構における、被覆部の開口縁部と延出部の先端部とが径方向に対向している領域の拡大図である。
【
図8】被覆部の開口縁部と延出部の先端部とがオーバーラップしていない参考例を示す図である。
【
図9】
図8に示される参考例において、被覆部の開口縁部と延出部の先端部との間の隙間が広がって、ゼンマイバネの一部が隙間を貫通した状態を示す図である。
【
図10】ゼンマイバネがハウジングに収容されたときに、ゼンマイバネの径方向内側に位置する端部が、ゼンマイバネの自然状態でハウジングの中心近傍に位置している状態を示す模式図である。
【
図11】ゼンマイバネがハウジングに収容されたときに、ゼンマイバネの径方向内側に位置する端部が、ゼンマイバネの自然状態でハウジングの中心から径方向外側にずれて位置付けられている状態を示す模式図である。
【
図12】
図10および
図11に示されるそれぞれのゼンマイバネがシャフトに取り付けられてハウジングに収容されたときのシャフトの変位を説明するための模式図である。
【
図13】被覆部の開口縁部と延出部の先端部との間の隙間に入ったゼンマイバネが案内部によって隙間から排出されるように案内されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の付勢機構および付勢機構を備えたウインチ装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0015】
図1および
図2は、本実施形態の付勢機構1が設けられたウインチ装置Wを示している。本実施形態では、ウインチ装置Wは、
図1および
図2に示されるように、付勢機構1と、付勢機構1のシャフト4(
図5参照)に直接または間接的に接続される巻取部WIと、巻取部WIに巻き取りされ、および、巻取部WIから繰り出される長尺部材Lと、巻取部WIを、長尺部材Lを巻き取る方向に駆動する駆動部DRとを備えている。
【0016】
ウインチ装置Wは、駆動部DRを駆動することによって、巻取部WIを所定の軸X(
図2参照)周りに回転させて、長尺部材Lを操作する。より具体的には、ウインチ装置Wは、駆動部DRを駆動することによって、長尺部材Lを巻き取る方向に巻取部WIを回転させて、長尺部材Lが接続された操作対象(例えば
図3に示される車椅子WCなど)に牽引操作を加えるように構成されている。なお、所定の軸Xは、後述するシャフト4の軸(中心軸)であり、本実施形態では、シャフト4の軸Xは、巻取部WIの回転軸と実質的に一致している。
【0017】
本実施形態では、ウインチ装置Wは、長尺部材Lの一端を操作対象に係合させて、長尺部材Lを巻き取ることにより操作対象に所定の操作を加えるように構成されている。より具体的には、ウインチ装置Wは、
図3に示されるように、車両Vの内部に車椅子WCを牽引するように構成されている。ウインチ装置Wは、車椅子WCを車両Vの内部に牽引した後、車椅子WCを車両V内において固定するために用いられていてもよい。例えば、車両Vに複数のウインチ装置Wを設け、車両V内に車椅子WCが搭載された後、複数のウインチ装置Wの長尺部材Lによって複数の方向に車椅子WCを牽引することによって、車椅子WCを車両V内で安定して固定することができる。なお、ウインチ装置Wが適用される用途は、長尺部材Lの一端を操作対象に係合させて、長尺部材Lを巻き取ることにより操作対象に所定の操作を加えるように構成されていれば、特に限定されない。例えば、ウインチ装置Wは、スロープSLを介して、車椅子WCを地面から車室内に引き上げたり、車室から地面へと引き下げたりする際に用いることができる。なお、ウインチ装置Wの操作対象は車椅子WC以外のものであっても構わない。
【0018】
長尺部材Lは、巻取部WIに巻き取られ、巻取部WIから繰り出される長尺の部材である。本実施形態では、長尺部材Lは、操作対象に取り付けられ、ウインチ装置Wによって操作されることで、操作対象に所定の操作を加える。長尺部材Lは、巻取部WIに巻き取られ、巻取部WIから繰り出される長尺の部材であれば、特に限定されない。長尺部材Lは、例えば、ベルトやワイヤ等とすることができる。本実施形態では、長尺部材Lは、
図1および
図2に示されるように、巻取部WIに巻き取られるベルトL1と、ベルトL1の先端に設けられたフックL2とを有している。しかし、長尺部材LのベルトL1に代えて、ワイヤなど他の長尺の部材が用いられていてもよい。また、長尺部材Lの先端に設けられたフックL2に代えて、ワイヤの先端がループ状に形成されたものなど、他の係止部や固定部が設けられていてもよい。
【0019】
駆動部DRは、巻取部WIを回転させる駆動力を発生させる。駆動部DRが駆動して巻取部WIが回転することによって、巻取部WIに巻き取られた長尺部材Lが操作される。駆動部DRは、
図1および
図2に示されるように、モータDR1と、モータDR1と巻取部WIとの間に設けられ、モータDR1の駆動力を巻取部WIへと伝達する伝動部材(図示せず)とを備えている。駆動部DRは、巻取部WIを軸X周り方向の一方向のみに回転させるように構成されていてもよいし、巻取部WIを軸X周り方向の一方向および他方向の両方に回転させるように構成されていてもよい。本実施形態では、駆動部DRは、巻取部WIとの接続状態をクラッチ機構などによって接続または非接続状態に切替可能に構成されていてもよい。例えば、ウインチ装置Wは、操作対象に牽引力を加えるために長尺部材Lを巻き取るときには、駆動部DRと巻取部WIとが接続状態となり、長尺部材Lを操作対象に接続させるために、長尺部材Lを手動で巻取部WIから引き出す際や、操作対象から長尺部材Lを外して長尺部材Lを後述する付勢機構1の付勢力によって巻取部WIに巻き取る際に、駆動部DRと巻取部WIとが非接続状態となるように構成されていてもよい。
【0020】
巻取部WIは、長尺部材Lを巻き取りおよび繰り出すことができるように構成されている。巻取部WIは、
図2に示されるように、長尺部材Lが巻き取られる筒部WI1と、筒部WI1の軸X方向で両端に設けられたフランジ部WI2とを備えている。巻取部WIは、軸X周りに回転可能である。本実施形態では、巻取部WIは、巻取部支持体Sに回転可能に支持されている。巻取部WIが軸X周りの一方向に回転したときに、長尺部材Lは巻取部WIに巻き取られ、巻取部WIが軸X周りの他方向に回転したときに、長尺部材Lは巻取部WIから繰り出される。
【0021】
巻取部WIは、付勢機構1に直接または間接的に接続されている。本実施形態では、巻取部WIは、巻取部WIを巻き取る方向に付勢する付勢機構1に接続されている。これにより、巻取部WIは、巻取部WIから繰り出された長尺部材Lを自動的に巻き取ることができるように構成されている。
【0022】
巻取部支持体Sは、巻取部WIを軸X周りに回転可能に支持する支持体である。巻取部支持体Sの形状および構造は、巻取部WIを軸X周りに回転可能に支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、巻取部支持体Sに対して、軸X方向の一方側に駆動部DRが設けられ、軸X方向の他方側に付勢機構1が設けられている。
【0023】
付勢機構1は、
図4および
図5に示されるように、ハウジング2と、ハウジング2に収容されたゼンマイバネ3と、ゼンマイバネ3の付勢力によってハウジング2に対して軸X周りに回転するシャフト4とを備えている。
【0024】
付勢機構1は、ゼンマイバネ3の付勢力によって、シャフト4が軸X周りで一方の方向に回転するようにシャフト4を付勢する。これにより、付勢機構1は、付勢対象を軸X周りで一方の方向に付勢する。本実施形態では、付勢機構1の付勢対象は、シャフト4に接続された巻取部WIである。しかし、付勢機構1の付勢対象は、ゼンマイバネ3の付勢力によって所定の方向に付勢可能であれば、付勢機構1の付勢対象は巻取部WIに限定されない。例えば、シャフト4自体が付勢対象であってもよい。なお、本実施形態では、付勢機構1の付勢力によって、巻取部WIが軸X周り方向で一方の方向に回転し、これにより、長尺部材Lが巻取部WIに巻き取られるように構成されている。
【0025】
ハウジング2は、ゼンマイバネ3を収容する。ハウジング2は、本実施形態では、
図4および
図5に示されるように、ハウジング本体21と、後述する被覆部22とを有している。
【0026】
ハウジング本体21は、被覆部22と共にゼンマイバネ3を収容する収容空間を形成する。本実施形態では、ハウジング本体21は、軸X方向で一方側(本実施形態では巻取部WI側)が開放した有底筒状に形成されている。より具体的には、ハウジング本体21は、
図5に示されるように、軸X方向に垂直に延びる円板状の底部21aと、底部21aの外周から軸X方向に沿って延びる周壁21bとを備えた、有底の円筒体である。ハウジング本体21の底部21aに対して軸X方向で反対側には、被覆部22によって覆われる開口を有している。底部21aの中央部には、貫通孔Hが形成されており、後述する回転軸部材Aがシャフト4に差し込まれた状態で、回転軸部材Aの軸X方向で一方の端部が、貫通孔Hの内部でナット等の固定部材Nによってシャフト4に固定されている。
【0027】
被覆部22は、
図4および
図5に示されるように、ゼンマイバネ3のうち、シャフト4の軸X方向で一方側を少なくとも部分的に覆うように設けられている。本実施形態では、被覆部22は、ハウジング本体21の軸X方向で一方側の開口を覆うように設けられている。被覆部22は、本実施形態では、
図4および
図5に示されるように、ゼンマイバネ3の自然状態で、ゼンマイバネ3の大部分(ゼンマイバネ3の中心近傍以外の大部分)を覆っている。
【0028】
被覆部22の形状は、ゼンマイバネ3のうち、軸X方向で一方側を少なくとも部分的に覆うことができれば特に限定されない。本実施形態では、被覆部22は、円板状に形成されている。より具体的には、被覆部22は、中央部に後述する挿通孔22bが形成されたドーナツ形状に形成されている。なお、被覆部22は、本実施形態では、被覆部22の外周に係合爪22aを有し、係合爪22aがハウジング本体21(周壁21b)の外周に設けられた被係合部21cに係合するように構成されている。しかし、被覆部22は、ネジ等の固定部材によってハウジング本体21に固定されてもよいし、融着等によってハウジング本体21と一体に形成されていてもよい。
【0029】
被覆部22は、
図5に示されるように、ハウジング2の外側を向く外側面OSと、ハウジング2の内側を向く内側面ISとを有している。本実施形態では、被覆部22の内側面ISは、軸X方向でゼンマイバネ3と対向する面であり、外側面OSは内側面ISの反対側の面であり、巻取部WIと対向している。被覆部22は、
図4および
図5に示されるように、シャフト4が挿通される挿通孔22bを有している。挿通孔22bは、シャフト4が軸X周りに回転できるように構成されている。具体的には、挿通孔22bは、被覆部22の中央領域を軸X方向に貫通する、軸X方向で見たときに円形の孔である。被覆部22の詳細については後述する。
【0030】
ゼンマイバネ3は、シャフト4が軸X周りで一方の方向に回転するようにシャフト4を付勢する。
図4に示されるように、ゼンマイバネ3の径方向内側(ゼンマイバネ3の螺旋の内側)の一端3aは、シャフト4に取り付けられている。また、ゼンマイバネ3の径方向外側(螺旋の外側)の他端3bは、ハウジング2に取り付けられている。ゼンマイバネ3の一端3aは、
図4に示されるように、シャフト4の後述する取付軸部41のバネ係合部E1に係合し、ゼンマイバネ3の他端3bは、ハウジング本体21の周壁21bに設けられたバネ係合部E2に係合している。
【0031】
ゼンマイバネ3は、本実施形態では、金属製の板状片が軸X周りに螺旋状に巻かれることによって構成されており、ゼンマイバネ3の板状片は、
図5に示されるように、径方向に厚さを有し、軸X方向に所定の幅を有している。ゼンマイバネ3は、
図4および
図5に示される初期状態(ゼンマイバネ3に力が加わっていない状態またはほぼ力が加わっていない状態)において、径方向外側が密となり、径方向内側が疎となるように構成されている。
図4および
図5に示される状態では、ハウジング2内の径方向外側の領域において、ゼンマイバネ3の板状片が径方向に何重にも重なった状態で外側に寄っている。
【0032】
シャフト4が初期状態から軸X周り方向で他方の方向(ゼンマイバネ3の付勢方向と反対の方向)に回転すると、ゼンマイバネ3は、径方向内側が密となり、径方向外側が疎となるようにシャフト4の周りに巻かれて、ゼンマイバネ3に付勢力が蓄積される。ゼンマイバネ3に付勢力が蓄積された状態で、シャフト4を他方の方向に回転させる力が解除されると、シャフト4は、ゼンマイバネ3の付勢力によって、軸X周り方向で一方の方向に回転する。
【0033】
シャフト4は、ハウジング2に対して軸X周りに回転する軸部材である。シャフト4は、本実施形態では、巻取部WIに直接または間接的に接続されて、巻取部WIと共に回転する。本実施形態では、シャフト4は、上述したように、ゼンマイバネ3と接続され、軸X周り方向で一方の方向に付勢されている。本実施形態では、シャフト4がゼンマイバネ3の付勢力によって軸X周りで一方の方向に回転することによって、シャフト4に直接または間接的に接続された巻取部WIを軸X周りで一方の方向に回転させる。なお、本実施形態では、シャフト4は、巻取部WIに対して、回転軸部材Aを介して間接的に接続されている。回転軸部材Aは、
図5に二点鎖線で示されるように、シャフト4の貫通孔H2に挿通されるとともに、巻取部WIの筒部WI1に挿入されて、シャフト4と巻取部WIとを間接的に接続している。回転軸部材Aと巻取部WIとは互いに対する軸X周りの相対回転が規制されるように接続され、回転軸部材Aとシャフト4とは軸X周りの相対回転が規制されるように接続され、これにより、シャフト4と巻取部WIとは共に回転する。
【0034】
回転軸部材Aは、
図5に示されるように、軸X方向の一端の外周にネジ部を有し、ネジ部にナットNが螺合されることで、シャフト4に対して固定され(軸X方向の相対移動が規制され)、シャフト4と共に軸X周りに回転するように構成されている。なお、シャフト4と回転軸部材Aとは、他の公知の方法で接続されてもよい。また、回転軸部材Aを用いずに(またはシャフトを、
図5に示されるシャフト4と回転軸部材Aとを一体とした形状とすることにより)、シャフト4と巻取部WIとを直接接続しても構わない。
【0035】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、シャフト4は、ベアリングBを介して、巻取部支持部Sに回転可能に支持されている。より具体的には、ベアリングBは、後述するシャフト4の外側軸部43の外周に設けられ、シャフト4の延出部42にベアリングBの内輪の軸X方向の一端が支持されている。ベアリングBの外輪は、巻取部支持部Sに取り付けられ、ベアリングBの外輪の軸方向の一端は被覆部22の外側面OSに支持されている。付勢機構1がウインチ装置Wに設けられたときに、シャフト4は、ベアリングBによって軸X周りに安定して回転し、巻取部WIを円滑に回転させることができる。なお、ベアリングBは任意の構成であり、また、ベアリングBが設けられる位置は図示する位置に限定されない。
【0036】
シャフト4は、
図5に示されるように、ハウジング2の内部に位置し、ゼンマイバネ3の一端3aが取り付けられる取付軸部41と、取付軸部41の外周に対して径方向外側に延出した延出部42とを有している。また、シャフト4は、取付軸部41に軸X方向で連続し、ハウジング2の外部に位置する外側軸部43を有している。本実施形態では、取付軸部41と外側軸部43とは軸X方向に垂直な断面において、外面が円形、内面が四角形状となる筒状に形成されている。取付軸部41と外側軸部43の内側に形成された貫通孔H2には、貫通孔H2の形状に対応して、軸X方向に垂直な断面が四角形状の回転軸部材Aが挿通されて、シャフト4と回転軸部材Aとの間の軸X周りの相対回転が規制されている。
【0037】
取付軸部41は、ゼンマイバネ3の一端3aが取り付けられ、ハウジング2の内部で軸X周りに回転する部分である。本実施形態では、シャフト4とハウジング2との間の関係では、取付軸部41がゼンマイバネ3を介してハウジング2に回転可能に接続されているだけであり、シャフト4の他の部位は基本的にはハウジング2に接続されていない(偶発的に接触することを除く)。なお、付勢機構1は、例えば、ハウジング本体21の底部21aと取付軸部41の軸X方向の端部(
図5における下側の端部)とが摺動しながら回転するように構成されていてもよい。
【0038】
取付軸部41の形状は、ゼンマイバネ3の一端3aを取り付けることができれば、特に限定されない。本実施形態では、取付軸部41は円筒状に形成されている。取付軸部41は、
図4に示されるように、ゼンマイバネ3の一端3aを係合させるバネ係合部E1を有している。
【0039】
延出部42は、取付軸部41の外周から径方向外側に突出している。本実施形態では、延出部42は、
図5に示されるように、取付軸部41の外周の全周から径方向外側に突出しているが、延出部42は、取付軸部41の外周の周方向で少なくとも一部から突出するように構成されていてもよい。延出部42の形状および構造は、取付軸部41の外周から径方向外側に突出していれば、特に限定されない。本実施形態では、延出部42は、取付軸部41および外側軸部43の両方の外周に対して、軸X方向に垂直な方向に所定の長さで延びている円板状に形成されている。延出部42の径方向外側への延出量は特に限定されない。延出部42は、
図6に示されるように、ハウジング2の外側を向く外側面421と、ハウジング2の内側を向く内側面422とを有している。また、延出部42は、
図6に示されるように、延出部42の径方向外側に位置する先端部423を有している。
【0040】
本実施形態では、
図6に示されるように、延出部42の径方向外側の先端部423と、被覆部22の挿通孔22bを画定する開口縁部221とは、互いに対して非接触状態となるように隙間を介して径方向に対向して設けられている。これにより、シャフト4が被覆部22と接触せずに、シャフト4を円滑に回転させることができる。ここで、「互いに対して非接触」とは、付勢機構1の各部材の設計上で、先端部423と開口縁部221とが軸X方向および径方向で非接触となるように構成されていることをいい、各部材の寸法誤差や各部材の一時的な位置ズレに起因する偶発的な接触は除かれる。
【0041】
なお、開口縁部221は、延出部42の先端部423と径方向に対向する部位である。本実施形態では、開口縁部221は、被覆部22の外側面OSの径方向内側の外側エッジOS1と、内側面ISの径方向内側の内側エッジIS1とを繋ぐ連結部分である。延出部42は、開口縁部221に径方向で対向する対向面Fを有している。本実施形態では、先端部423の対向面Fは、延出部42の外側面421の径方向外側の外側エッジ421aと、延出部の内側面422の径方向外側の内側エッジ422aとの間の部分(外側エッジ421aから内側エッジ422aまでの面全体)である。
【0042】
なお、先端部423と開口縁部221との間の軸X方向および径方向の隙間の大きさは、先端部423と開口縁部221とが互いに接触せず、隙間の大きさが所定範囲(例えば、軸X方向および径方向の隙間が1mm以下、好ましくは0.5mm以下)であり、かつ、後述するように軸X方向に見たときに先端部423と開口縁部221とが径方向でオーバーラップするように設定されていれば、特に限定されない。
【0043】
本実施形態では、
図6に示されるように、先端部423と開口縁部221とは、シャフト4がハウジング2から離脱する方向の移動が規制されるように、軸X方向に見たときに径方向でオーバーラップするように構成されている。ここで、「シャフト4がハウジング2から離脱する方向の移動が規制されるように」とは、付勢機構1がウインチ装置Wに組み付けられる前(
図5の実線部分の状態)の搬送中などにおいて、シャフト4がハウジング2から離脱する方向となる軸X方向の移動が、先端部423と開口縁部221とが径方向でオーバーラップしていることによって所定の範囲に規制されることを意味している。具体的には、シャフト4が軸X方向でハウジング2から離脱する方向に移動した際に、シャフト4の先端部423が、開口縁部221とオーバーラップしている領域R(
図6参照)で開口縁部221と軸X方向に当接することによって、シャフト4の軸X方向の移動を所定範囲に制限する。本実施形態では、
図6に示されるように、先端部423と開口縁部221とがオーバーラップしている領域Rにおいて、先端部423が軸X方向で開口縁部221に対してハウジング2の内部に近く、開口縁部221が先端部423に対してハウジング2の内部から遠くなるように配置されている。
【0044】
なお、先端部423および開口縁部221の形状および構造は、シャフト4がハウジング2から離脱する方向の移動が規制されるようにオーバーラップしていれば、特に限定されない。本実施形態では、
図6に示されるように、オーバーラップしている領域Rにおいて、先端部423および開口縁部221は傾斜面として構成されているが、湾曲面であってもよい。
【0045】
本実施形態では、開口縁部221および対向面Fは、少なくとも部分的に、ハウジング2の内側に向かうにつれて、径方向外側へと延びるように互いに略平行に傾斜または湾曲している。この場合、シンプルな構成で、被覆部22の開口縁部221と、延出部42の対向面Fとの間に径方向および軸X方向に一定の隙間を形成しつつ、先端部423と開口縁部221とをオーバーラップさせることができる。なお、本実施形態では、先端部423と開口縁部221とがオーバーラップしている領域Rから外側面OS側の部分は互いに平行であるが、後述する案内面Gが設けられた部分では、開口縁部221と対向面Fとは互いに平行ではない。しかし、開口縁部221および対向面Fは、外側面OSから内側面ISまでの全体が互いに略平行になっていてもよい。
【0046】
なお、開口縁部221および対向面Fは、
図7に示されるように、オーバーラップしている領域Rにおいて、軸Xに垂直な平面によって構成されていてもよい。また、先端部423および開口縁部221は、互いに異なる角度や異なる表面形状を有するなど、互いに平行でなくてもよい。
【0047】
また、先端部423と開口縁部221との間の径方向のオーバーラップ量は、シャフト4やハウジング2に寸法誤差が生じた場合や、シャフト4がハウジング2に対する理想の位置(設計上の位置)に対して径方向に位置ズレした場合においても、先端部423と開口縁部221との間の径方向のオーバーラップが維持されるように設定されていることが好ましい。例えば、先端部423と開口縁部221との間の径方向のオーバーラップ量は、特に限定されないが、先端部423と開口縁部221との間の設計上の径方向の隙間(
図6における隙間の大きさD)よりも大きくすることが好ましい。この場合に、仮に
図5において、設計上の位置に対してシャフト4が左側に位置ズレして配置され、
図5において軸Xに対して左側におけるシャフト4の先端部423と被覆部22の開口縁部221との間の隙間が無くなったとしても、
図5において軸Xに対して右側における先端部423と開口縁部221の間のオーバーラップは維持される。
【0048】
上述したように、先端部423と開口縁部221とが軸X方向に見たときに径方向でオーバーラップしていることによって、シャフト4がハウジング2から離脱する方向の移動が、所定範囲(先端部423と開口縁部221との間の軸X方向の隙間の大きさの範囲)に規制される。したがって、付勢機構1の搬送中など、取付対象に組み付けられる前の状態において、シャフト4がハウジング2から離脱することや、シャフト4がハウジング2に対して軸X方向に大きく移動することで、ゼンマイバネ3が望ましくない変形を受けることが抑制される。
【0049】
また、先端部423と開口縁部221とが軸X方向に見たときに径方向でオーバーラップしていることによって、ウインチ装置Wに組み付けられたときなど、付勢機構1の動作時に、シャフト4とハウジング2との間に設けられた隙間に、ゼンマイバネ3の一部が入り込んで隙間に拘束されてしまうことを抑制することができる。以下、参考例を用いて、隙間にゼンマイバネ3が拘束されてしまう理由と、本実施形態の、隙間にゼンマイバネ3が拘束されることを抑制する効果について詳述する。
【0050】
図8は、シャフト40の延出部420の先端部4230と、被覆部220の開口縁部2210とがオーバーラップしていない参考例の構造を示している。
図8に示されるように、先端部4230と開口縁部2210とがオーバーラップしていない構造であっても、ゼンマイバネ30は完全な円形ではなく螺旋状に延びているので、先端部4230と開口縁部2210との間の隙間が所定の範囲内の大きさで、軸X周り方向で隙間の大きさが等間隔になっていれば、ゼンマイバネ30が隙間に入り込む可能性はそれほど大きくない。
図10に示されるように、ゼンマイバネ30の中心が自然状態(シャフト40に組み付けられる前の状態)で、ハウジング20の中心(軸X)に近い位置となっている場合は、シャフト40にゼンマイバネ30が組み付けられたときに、シャフト40はゼンマイバネ30から径方向にずらされる力をほとんど受けない。したがって、シャフト40にゼンマイバネ30が組み付けられて付勢機構とされたときに、シャフト40の先端部4230と、被覆部220の開口縁部2210との間の隙間は、
図12に実線で示されるように、周方向で比較的に等間隔となる。なお、
図12では理解を容易にするため、先端部4230と開口縁部2210との間の隙間の大きさを誇張している。
【0051】
一方、
図11に示されるように、ゼンマイバネ30の中心が自然状態で、ハウジング20の中心(軸X)に対して径方向でずれた状態(
図11では軸Xに対して下方にずれた状態)となってしまうゼンマイバネ30がシャフト40に組み付けられる場合がある。この場合、シャフト40にゼンマイバネ30が組み付けられたときに、シャフト40はゼンマイバネ30から径方向(
図12では下方に)にずらされる力を受ける。すると、シャフト40にゼンマイバネ30が組み付けられて付勢機構とされたときに、シャフト40の先端部4230(
図12において二点鎖線で示す)と、被覆部220の開口縁部2210との間の隙間は、径方向の一方側(
図12の下側)では狭くなり、径方向の他方側(
図12の上側)においては広くなる。
【0052】
この状態の付勢機構がウインチ装置などの取付対象に組み付けられて、シャフト40が軸X周りに回転すると、シャフト40にゼンマイバネ30が巻き付けられていく。シャフト40にゼンマイバネ30が巻き付けられていくと、ゼンマイバネ30は径方向内側において疎な状態であったのが、徐々に密な状態となり、ゼンマイバネ30の形状も円形に近い形状となる。そのため、
図9に示されるように、先端部4230と開口縁部2210との間の隙間が大きくなった部分に、ゼンマイバネ30の一部が入り込んでしまう。特に、
図9のように先端部4230と開口縁部2210とが径方向にオーバーラップしていない場合、ゼンマイバネ30は、被覆部220の外側面OSを突き抜けて深く入り込んでしまい、ゼンマイバネ30が隙間から離脱しにくく隙間内で拘束されてしまう。この場合、付勢機構のゼンマイバネ30の付勢力が付勢対象(例えば巻取部WI)に作用しなくなるので、付勢機構の所望の付勢作用を得ることができなくなる。
【0053】
これに対して、本実施形態では、
図6および
図13に示されるように、先端部423と開口縁部221とが径方向にオーバーラップしていることによって、
図13に示されるように、仮に先端部423と開口縁部221との間の隙間にゼンマイバネ3が入ってしまったとしても、ゼンマイバネ3が隙間に深く入ることが抑制され、隙間から離脱しやすい。したがって、ゼンマイバネ3が先端部423と開口縁部221との間の隙間内で拘束されることが抑制される。
【0054】
このように、本実施形態では、シャフト4の延出部42の径方向外側の先端部423と、被覆部22の開口縁部221とが径方向でオーバーラップしている構成は、付勢機構1の搬送時等におけるシャフト4のハウジング2からの離脱防止と、付勢機構1の作動時におけるゼンマイバネ3の拘束防止との両方の作用を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、
図6および
図13に示されるように、開口縁部221は、外側面OSから内側面ISに向かうにつれて、径方向外側へと延びるように傾斜または湾曲した案内面Gを有している。案内面Gは、先端部423と開口縁部221との間の隙間に入り込んだゼンマイバネ3を隙間から排出するように案内する面である。本実施形態では、
図6および
図13に示されるように、案内面Gは、(開口縁部221のうち)軸X方向に見たときに対向面Fと径方向でオーバーラップしていない、内側エッジIS1から外側エッジOS1に向かう所定の領域に設けられている。
【0056】
上述したように、ゼンマイバネ3は、径方向外側が密な初期状態から、シャフト4が回転することで径方向内側へとシャフト4に巻き取られることで付勢力が蓄積される。したがって、シャフト4を軸X周りで他方の方向に回転させる力が解除されると、シャフト4に巻き取られたゼンマイバネ3は、径方向内側から径方向外側に向かって戻るように移動する(
図13において右側にシフトするように移動する)。したがって、ゼンマイバネ3が先端部423と開口縁部221との間の隙間に入り込んだとしても、ゼンマイバネ3が付勢力によって元の状態に復元しようとしたときに、
図13に示されるように、径方向外側に移動しようとするゼンマイバネ3は、案内面Gによって隙間から外れる方向(ハウジング2内に向かう方向)に案内される。したがって、案内面Gによって、ゼンマイバネ3が先端部423と開口縁部221との間の隙間に拘束されることがさらに抑制される。
【0057】
また、本実施形態では、
図6および
図13に示されるように、案内面Gと対向面Fとの間の径方向の間隔は、軸X方向で内側エッジIS1に近付くにつれて広くなるように構成されている。すなわち、案内面Gと対向面Fとの間の径方向の間隔が、ゼンマイバネ3が隙間から出る出口となる、開口縁部221の内側エッジIS1と先端部423の内側エッジ422aとによって画定される開口部OPに向かって隙間が広くなるように構成されている。この場合、案内面Gと対向面Fとの間の隙間に、
図13に示されるように、一時的にゼンマイバネ3の一部が入り込んだとしても、案内面Gと対向面Fとの間の径方向の間隔が開口部OPに向かって徐々に広くなっているので、ゼンマイバネ3は隙間内で引っ掛かって拘束されにくく、容易に隙間から外れる。
【符号の説明】
【0058】
1 付勢機構
2、20 ハウジング
21 ハウジング本体
21a 底部
21b 周壁
21c 被係合部
22、220 被覆部
22a 係合爪
22b 挿通孔
221、2210 開口縁部
3、30 ゼンマイバネ
3a ゼンマイバネの一端
3b ゼンマイバネの他端
4、40 シャフト
41 取付軸部
42、420 延出部
421 外側面
421a 外側エッジ
422 内側面
422a 内側エッジ
423、4230 先端部
43 外側軸部
A 回転軸部材
B ベアリング
D 隙間の大きさ
DR 駆動部
DR1 モータ
E1、E2 バネ係合部
F 対向面
G 案内面
H、H2 貫通孔
IS 内側面
IS1 内側エッジ
L 長尺部材
L1 ベルト
L2 フック
N 固定部材(ナット)
OP 開口部
OS 外側面
OS1 外側エッジ
R 先端部と開口縁部とがオーバーラップしている領域
S 巻取部支持体
SL スロープ
V 車両
W ウインチ装置
WC 車椅子
WI 巻取部
WI1 筒部
WI2 フランジ部
X 軸