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特開2023-32818ソフトカプセルの製造方法及びソフトカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032818
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ソフトカプセルの製造方法及びソフトカプセル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20230302BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230302BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230302BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139138
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】503315676
【氏名又は名称】中日本カプセル 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山中 利恭
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康博
(72)【発明者】
【氏名】井辰 かおる
(72)【発明者】
【氏名】今村 星香
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA56
4C076BB01
4C076DD38H
4C076EE42H
4C076FF63
4C076FF70
4C076GG05
(57)【要約】
【課題】安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】ゼラチン、グリセリン、エリスリトール、及び、水を含有する皮膜原液を調製し、ロータリーダイ式成形装置により、前記皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に内容物が充填されたソフトカプセルを成形し、成形後の前記ソフトカプセルを乾燥させることにより、前記ソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることにより、前記ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールを結晶化させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン、グリセリン、エリスリトール、及び、水を含有する皮膜原液を調製し、
ロータリーダイ式成形装置により、前記皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に
内容物が充填されたソフトカプセルを成形し、
成形後の前記ソフトカプセルを乾燥させることにより、前記ソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることにより、前記ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールを結晶化させる
ことを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項2】
ロータリーダイ式成形装置で成形されたことにより形成された継ぎ目を有するソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルであり、
前記ソフトカプセル皮膜は、ゼラチン、グリセリン、及び、エリスリトールを含有し、
前記ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化している
ことを特徴とするソフトカプセル。
【請求項3】
ゼラチン、グリセリン及びエリストールは、次の条件(a)~(e)の何れかを満たす、ことを特徴とする請求項2に記載のソフトカプセル。
(a)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン50重量部~65重量部、且つ、エリスリトール30重量部~50重量部
(b)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン60重量部、且つ、エリスリトール15重量部~50重量部
(c)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~100重量部、且つ、エリスリトール40重量部
(d)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~65重量部、且つ、エリスリトール40重量部~50重量部
(e)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部、且つ、エリスリトール40重量部~60重量部
【請求項4】
ゼラチン、グリセリン及びエリストールは、次の条件(A)を満たす、ことを特徴とする請求項2に記載のソフトカプセル。
(A)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン55重量部~60重量部、且つ、エリスリトール30重量部~40重量部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性を有するソフトカプセル皮膜を備えるソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルには、光に不安定な成分が内容物として充填されることがある。そのような場合、従前より、ソフトカプセル皮膜に遮光性を付与することを目的として、二酸化チタンが添加されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、二酸化チタンについては、DNAに損傷を与える遺伝毒性を有し発がん性のリスクがあるとの報告があり、安全性に関して懸念されている。そのため、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルが要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5-15691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるソフトカプセルの製造方法は、
「ゼラチン、グリセリン、エリスリトール、及び、水を含有する皮膜原液を調製し、
ロータリーダイ式成形装置により、前記皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に
内容物が充填されたソフトカプセルを成形し、
成形後の前記ソフトカプセルを乾燥させることにより、前記ソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることにより、前記ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールを結晶化させる」ものである。
【0007】
「内容物」は、光に不安定な成分を含む内容物が適しており、医薬成分、健康食品成分、栄養補助成分などの目的物質を、油脂または油状物質に溶解又は懸濁させたもの、或いは、上記の目的物質自体が油状やペースト状であるものとすることができる。
【0008】
本発明は、ゼラチンを皮膜基剤としグリセリンを可塑剤とする皮膜原液にエリストールを含有させておき、ロータリーダイ式成形装置を使用してソフトカプセルを成形した後で、乾燥によってソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることによりエリスリトールを結晶化させるものである。本来、ゼラチン製のソフトカプセル皮膜は透明であるが、エリスリトールの結晶が析出することにより、白濁・不透明化する。白濁・不透明化したソフトカプセル皮膜は遮光性を発揮するため、ソフトカプセル皮膜に充填される内容物に、光に不安定な成分を含有させることができる。
【0009】
エリスリトールは四単糖の糖アルコールであり、糖代謝に影響を与えない甘味料として広く使用されている。また、ブドウ糖を原料として酵母の発酵により生産されるものであり、しょう油、味噌、ワイン、清酒など、古くからの馴染みが深い食品に含まれている。国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、エリスリトールを許容一日摂取量を特定しない食品添加物としており、欧州連合の食品科学委員会(SCF)はエリスリトールの食品への使用は安全であると結論しているなど、エリスリトールは安全性の高い成分であると評価されている。従って、本発明によれば、安全性が疑われている二酸化チタンに代替して、安全性の高いエリスリトールによってソフトカプセル皮膜に遮光性を付与することができる。
【0010】
また、ロータリーダイ式成形装置を使用してソフトカプセルを成形する場合、皮膜原液に不溶成分が含まれていると、ヒートシールが阻害されるおそれがある。この点で、従来、ソフトカプセル皮膜に遮光性を付与するために使用されてきた二酸化チタンは、ゼラチンを皮膜基剤とする皮膜原液(水溶液)に不溶である。これに対し、本発明は、皮膜原液の調製の段階、及び、ロータリーダイ式成形装置によるソフトカプセル皮膜の成形の段階では、エリスリトールを溶解状態としておき、その後の乾燥工程でソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることによって析出させる。そのため、エリストールの存在が、ソフトカプセル皮膜の成形の際のヒートシールに影響を及ぼさない利点がある。
【0011】
次に、本発明にかかるソフトカプセルは、
「ロータリーダイ式成形装置で成形されたことにより形成された継ぎ目を有するソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルであり、
前記ソフトカプセル皮膜は、ゼラチン、グリセリン、及び、エリスリトールを含有し、
前記ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化している」ものである。
【0012】
これは、上記の製造方法により製造されるソフトカプセルの構成である。
【0013】
本発明にかかるソフトカプセルは、上記構成に加え、
「ゼラチン、グリセリン及びエリストールは、次の条件(a)~(e)の何れかを満たす、ことを特徴とする。
(a)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン50重量部~65重量部、且つ、エリスリトール30重量部~50重量部
(b)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン60重量部、且つ、エリスリトール15重量部~50重量部
(c)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~100重量部、且つ、エリスリトール40重量部
(d)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~65重量部、且つ、エリスリトール40重量部~50重量部
(e)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部、且つ、エリスリトール40重量部~60重量部」
【0014】
これらの条件の何れかを満たすことにより、詳細は後述するように、エリスリトールの結晶が全体的に均一に析出しているか、或いは、エリスリトールの結晶の分布が部分的に均一ではないものの遮光性を発揮する程度に白濁しているソフトカプセル皮膜、を備えるソフトカプセルを提供することができる。
【0015】
本発明にかかるソフトカプセルは、上記構成において、
「ゼラチン、グリセリン及びエリストールは、次の条件(A)を満たす、ことを特徴とする。
(A)ゼラチン100重量部に対し、グリセリン55重量部~60重量部、且つ、エリスリトール30重量部~40重量部」
【0016】
この条件(A)を満たすことにより、詳細は後述するように、エリスリトールの結晶が全体的に均一に析出しているソフトカプセル皮膜、を備えるソフトカプセルを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態であるソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルについて説明する。
【0019】
本実施形態の製造方法は、ロータリーダイ式成形装置を使用してソフトカプセルを製造するものであり、ソフトカプセル皮膜の原液である皮膜原液を調製する皮膜原液調製工程と、ソフトカプセル皮膜の成形と同時にソフトカプセル皮膜内に内容物を充填し封入する成形・充填工程と、成形・充填工程後のソフトカプセルを乾燥させる乾燥工程と、を具備している。
【0020】
皮膜原液調製工程では、皮膜基剤であるゼラチンを加熱しながら水に溶解し、可塑剤としてのグリセリン、及び、エリスリトールの粉末を、混合し脱泡して流延に適する粘度の皮膜原液を調製する。
【0021】
ロータリーダイ式成形装置は、一般的に、皮膜原液をフィルム状に成形するキャスティングドラムと、外表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配されたくさび状のセグメントと、セグメント内に内容物を圧入すると共にセグメントの先端から内容物を押し出すポンプとを主に具備している。
【0022】
そして、成形・充填工程では、まず、皮膜原液がキャスティングドラム表面に流延され、ゲル化することによりフィルム化される。次に、形成されたフィルムの二枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送入される。そして、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、二枚のフィルムがヒートシールされて上方に開放したカプセルが形成されると、この中にセグメントから押し出された内容物が充填される。これと同時に、二枚のフィルムが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に内容物が充填されたソフトカプセルが形成される。
【0023】
乾燥工程では、ソフトカプセル皮膜が所定の水分含有率となるまで、調湿乾燥機内で乾燥させる。乾燥によってソフトカプセル皮膜の水分含有率を低下させることにより、それまで溶解状態にあったエリスリトールが結晶化し析出する。
【0024】
ゼラチン、グリセリン、及び、水を含有しエリスリトールを含有しない皮膜原液から、成形・充填工程、乾燥工程を経て得られる従来のソフトカプセル皮膜は、透明な外観を呈している。これに対し、本実施形態のソフトカプセルは、エリスリトールの結晶が析出していることにより、ソフトカプセル皮膜が白濁している。これにより、光がソフトカプセル皮膜を透過しにくいため、光に不安定な成分を内容物に含有させることができる。
【0025】
次に、ソフトカプセル皮膜においてエリスリトールを結晶化させるために適した条件を、検討した結果を説明する。エリスリトールをソフトカプセル皮膜に含有させない従来のゼラチン製ソフトカプセルの場合、ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部、水80重量部の割合で、良好なソフトカプセルを操作性良く製造することができる。そこで、この組成を基準として、ゼラチンに対するエリスリトールまたはグリセリンの割合を異ならせた試料について、流延性、流延後の皮膜物性、乾燥による結晶化の有無、結晶均一性について、次の方法で評価した。
【0026】
<流延性>
皮膜原液の粘度を測定し、流延し易い粘度であった場合を、流延性が良好であるとして「〇」で評価し、粘度が高く流延に適していない場合を「×」で評価した。ここで、粘度は、B型粘度計を使用し(No.4ローター,回転速度6rpm)、温度60℃で測定した。
【0027】
<流延後の皮膜物性>
平滑な面上に皮膜原液を流延することによりシート状に成形されたソフトカプセル皮膜について、キャスティング面からのはがれやすさやべたつきの有無、手で引っ張ったときの伸びや切れの有無、ヒートシールが可能な可塑性の有無、を確認した。べたつきなくキャスティング面からはがすことができ、シートが切れることなく適度な伸びを有していると共に、ヒートシールが可能であった場合を、可塑性、柔軟性、弾力性、機械的強度を含む皮膜物性が非常に良好であるとして「○」で評価し、何れかの物性にやや不十分な点があるもののロータリーダイ式成形装置による成形が可能な場合を、皮膜物性が良好であるとして「△」で評価し、ロータリーダイ式成形装置による成形に適していない場合を、皮膜物性が不良であるとして「×」で評価した。
【0028】
<結晶化、結晶均一性>
乾燥工程を経たソフトカプセル皮膜を肉眼で確認し、エリスリトールが結晶化していた場合を「○」で、結晶化していない場合を「×」で評価した。結晶化していた試料については、結晶が全体的に均一に析出している場合を、結晶化均一性が非常に良好であるとして「○」で評価し、結晶の分布が部分的に均一ではないものの遮光性を発揮する程度に白濁している場合を、結晶化均一性が良好であるとして「△」で評価し、結晶の分布が不均一で遮光性を発揮するためには不十分である場合を、結晶化均一性が不良であるとして「×」で評価した。
【0029】
まず、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、グリセリン40重量部と一定にし、エリスリトールの割合を異ならせた試料S1-1~S1-5について、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、ゼラチン100重量部に対しエリスリトールを20重量部以上含有させた試料S1-2~S1-5では、乾燥工程を経たソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化していた。ゼラチン100重量部に対するエリスリトールの割合が40重量部以上の試料S1-3~S1-5では結晶均一性は良好「△」であったが、20重量部の試料S1-2の結晶均一性は不良であった。エリスリトールの割合が20重量部では、結晶化はするものの、結晶が均一に分布するためにはエリスリトールの含有量が不十分であると考えられた。
【0032】
ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、グリセリン20重量部と一定にし、エリスリトールの割合を異ならせた試料S2-1~S1-7について、上記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
ゼラチン100重量部に対するグリセリンの割合が20重量部と小さいこれらの試料S2-1~S2-7では、エリスリトールの割合が60重量部以上となると、流延後の皮膜物性においてべたつきや伸びが増す傾向があり、エリスリトールの割合が80重量部以上の試料S2-6、S2-7ではキャスティング面からの剥がれが悪く、皮膜物性は不良であった。上述したように、試料S1-2ではエリスリトールの割合が20重量部と小さくても結晶化が確認されたのに対し、試料S2-1~S2-7では、エリスリトールの割合が20重量部以上であるにも関わらず結晶化しなかった。このことから、エリスリトールの結晶化には、エリスリトールの割合だけではなく、グリセリンの割合も影響を及ぼしていると考えられた。
【0035】
そこで、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、エリスリトールを40重量部と一定にし、グリセリンの割合を異ならせた試料S3-1~S3-7について、上記の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
ゼラチン100重量部に対するエリスリトールの割合が40重量部であり、グリセリンの割合が40重量部~100重量部であるこれらの試料S3-1~S3-7は、いずれも乾燥工程後のソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化しており、結晶均一性も良好「△」以上であった。特に、グリセリンの割合が、55重量部の試料S3-3及び60重量部の試料S3-4は、結晶均一性が非常に良好「○」であった。なお、グリセリンの割合が増加するのに伴い、エリスリトールの析出までの所要時間が長くなる傾向があった。
【0038】
グリセリンの割合を、結晶均一性が非常に良好であった60重量部に固定し、エリストールの割合が与える影響を検討した。すなわち、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、グリセリン60重量部と一定にし、エリスリトールの割合を異ならせた試料S4-1~S4-7について、上記の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
ゼラチン100重量部に対するグリセリンの割合が60重量部であるこれらの試料S4-1~S4-7では、エリスリトールの割合として、少なくとも15重量部~50重量部という広い範囲で、乾燥工程後のソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化しており、結晶均一性も良好「△」以上であった。特に、エリスリトールの割合が30重量部~40重量部の試料S4-4~S4-6は、結晶均一性が非常に良好「○」であった。エリスリトールの割合が試料S4-4~S4-6より大きい試料S4-7で結晶均一性が少し低下するのは、エリスリトールの含有量が多いために短時間で析出するためと考えられた。一方、エリスリトールの割合が試料S4-4~S4-6より小さい試料S4-1~S4-3でも結晶均一性が少し低下するのは、均一に分散するためにはエリスリトールの含有量が不足しているためと考えられた。
【0041】
結晶均一性が非常に良好であった範囲におけるエリスリトールの割合を参照し、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、エリスリトール30重量部と一定にし、グリセリンの割合を異ならせた試料S5-1~S5-4について、上記の評価を行った。また、結晶均一性が少なくとも良好である範囲を明確にする目的で、上述した試料による評価で結晶均一性が少なくとも良好であった範囲の周辺の割合として、ゼラチン100重量部に対して水80重量部と一定にし、グリセリン及びエリスリトールの割合を異ならせた試料S5-5~S5-7について、上記の評価を行った。これらの結果を、表5に合わせて示す。
【0042】
【表5】
【0043】
ゼラチン100重量部に対するエリスリトールの割合が30重量部である試料S5-1~S5-4では、グリセリンの割合として、少なくとも50重量部~65重量部の範囲において、乾燥工程後のソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化しており、結晶均一性も良好「△」以上であった。特に、グリセリンの割合が55重量部、及び60重量部である試料S5-1、及びS5-2は、結晶均一性が非常に良好「○」であった。
【0044】
また、ゼラチン100重量部に対するグリセリンの割合が55重量部である試料S5-2及びS5-5の結果と、上述した試料S3-3の結果を合わせると、エリスリトールの割合として、少なくとも30重量部~40重量部の範囲において、乾燥工程後のソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化しており、結晶均一性も非常に良好「○」であった。加えて、ゼラチン100重量部に対するグリセリンの割合が65重量部である試料S5-4、S5-6及びS5-7の結果と、上述した試料S3-5の結果を合わせると、エリスリトールの割合として、少なくとも30重量部~50重量部の範囲において、乾燥工程後のソフトカプセル皮膜においてエリスリトールが結晶化しており、結晶均一性も良好「△」以上であった。
【0045】
以上の結果を総合すると、流延性、流延後皮膜物性、及び、結晶化が何れも「○」であって、結晶均一性が良好「△」または非常に良好「○」である条件は、少なくとも次の条件(a)~(e)の「和」を包含している。
・条件(a):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン50重量部~65重量部、且つ、エリスリトール30重量部~50重量部
・条件(b):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン60重量部、且つ、エリスリトール15重量部~50重量部
・条件(c):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~100重量部、且つ、エリスリトール40重量部
・条件(d):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部~65重量部、且つ、エリスリトール40重量部~50重量部
・条件(e):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部、且つ、エリスリトール40重量部~60重量部
【0046】
また、流延性、流延後皮膜物性、及び、結晶化が何れも「○」であって、結晶均一性が非常に良好「○」である条件は、少なくとも次の条件(A)である。
・条件(A):ゼラチン100重量部に対し、グリセリン55重量部~60重量部、且つ、エリスリトール30重量部~40重量部
【0047】
なお、エリスリトールの飽和溶解度(水100[g]に溶解する溶質の質量[g]の割合)は36%である。この飽和溶解度を上記の試料の組成における水とエリストールの重量比に単純に当てはめると、皮膜原液においてエリストールが過飽和になっているはずの試料も存在する。しかしながら、実際には何れの試料も、皮膜原液の状態ではエリストールの沈殿は確認されず、成形・充填工程後で乾燥工程前のソフトカプセル皮膜においても、エリストールの結晶は確認されなかった。ロータリーダイ式で成形するソフトカプセルの場合、皮膜原液に不溶成分が含まれているとヒートシールが阻害されるおそれがあるところ、本実施形態の製造工程では、そのような事態は生じていないと考えられた。
【0048】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0049】
例えば、本実施形態の製造方法で製造されるソフトカプセルは、光に不安定な成分を内容物とする場合に適しているが、それ以外の成分を内容物に含有させることができる。