IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大社 一樹の特許一覧

特開2023-32850被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法
<>
  • 特開-被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法 図1
  • 特開-被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法 図2
  • 特開-被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法 図3
  • 特開-被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法 図4
  • 特開-被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032850
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】被覆肥料包装体、植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230302BHJP
【FI】
A01G31/00 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139186
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】521381543
【氏名又は名称】大社 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大社 一樹
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NA23
2B314NB04
2B314NC23
2B314NC24
2B314NC44
2B314ND02
2B314ND06
2B314ND14
2B314PC02
2B314PC22
2B314PC26
2B314PD05
(57)【要約】
【課題】被覆肥料を用い、肥料組成の調整が容易であり、かつ、肥料焼けの抑制に優れる肥料を提供することを課題とする。
【解決手段】被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体により課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆肥料が半透性袋で包装された、被覆肥料包装体。
【請求項2】
前記半透性袋が、生分解性袋である、請求項1に記載の被覆肥料包装体。
【請求項3】
前記半透性袋が、セロハン製袋である、請求項1又は2に記載の被覆肥料包装体。
【請求項4】
水耕栽培に用いられる、請求項1~3の何れか1項に記載の被覆肥料包装体。
【請求項5】
植物体、
前記植物体を支持する植物体支持部材、及び
被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体
を有する植物体栽培ユニット。
【請求項6】
植物体支持部材が、培土及び鉢である、請求項5に記載の植物体栽培ユニット。
【請求項7】
前記鉢は、前記被覆肥料包装体を配置するための肥料配置部を少なくとも1つ有する、請求項6に記載の植物体栽培ユニット。
【請求項8】
水耕栽培に用いられる、請求項5~7の何れか1項に記載の植物体栽培ユニット。
【請求項9】
被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体及び植物体を植物体支持部材に配置して植物体栽培ユニットを準備する植物体栽培ユニット準備工程、
前記植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材の前記開口部に、前記植物体栽培ユニットを保持する保持工程、及び
前記植物体栽培ユニットを保持した前記フロート部材を栽培槽の水面上に浮遊させる浮遊工程
を含む植物体の栽培方法。
【請求項10】
複数種の被覆肥料を選択する被覆肥料選択工程、
開口を有する鉢と培地とを含む植物体支持部材に、植物体の種子と前記複数種の被覆肥料とを配置し、水耕で育苗する育苗工程、及び
前記育苗工程により得られた苗を、前記植物体支持部材を用いて水耕栽培する水耕栽培工程
を含む、植物体の栽培方法。
【請求項11】
前記開口を有する鉢が、ループ状の樹脂線材が絡み合わさり、前記ループ状の樹脂線材同士の接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目構造の鉢である、請求項10に記載の栽培方法。
【請求項12】
前記樹脂線材が生分解性樹脂線材であり、前記培地が培土である、請求項11に記載の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体、並びに該被覆肥料包装体を用いた植物体栽培ユニット及び植物体の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物体の栽培には、窒素肥料、リン肥料、カリウム肥料等の化学肥料が広く用いられている。化学肥料は速効性であり、長期にわたって肥効を持続させることができない。また、一度に大量の施肥を行うと、肥料焼け(濃度障害)が発生し、植物体の生育が衰えるという問題があった。
このような問題を解決するため、各種の肥効調節型肥料が提案されている。例えば、特許文献1~3には、肥効調節型肥料として、樹脂等の被覆材料により化学肥料を被覆した被覆肥料が開示されている。被覆肥料は、肥料成分の溶出スピードがコントロールされ、肥効を持続させることができるとともに、肥料焼けも抑制することのできる肥料であるとして、その利用が拡大している。
【0003】
被覆肥料としては、複数種類の肥料成分を含む被覆肥料の他、一成分のみを含む被覆肥料、例えば窒素肥料のみを含む被覆肥料、カリウム肥料のみを含む被覆肥料等も市販されており、栽培する植物体の種類に適した組成となるよう複数種の被覆肥料を配合することが行われている。しかしながら、被覆肥料は粒が大きく、また、被覆肥料の種類毎にサイズが異なることがほとんどであるため、施肥前に複数種の被覆肥料をムラなく混ぜることは困難であった。そのため、植物体の生長のばらつきを招いていた。
また、被覆肥料は、肥料を被覆することにより肥料成分の溶出スピードをある程度制御できるものの、植物体の根が直接被覆肥料に接触すると、肥料焼けを回避できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-59382号公報
【特許文献2】特開2008-1550号公報
【特許文献3】国際公開第2012/147668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、被覆肥料を用い、肥料組成の調整が容易であり、かつ、肥料焼けの抑制に優れる肥料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、被覆肥料を半透性袋で包装することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
[1]
被覆肥料が半透性袋で包装された、被覆肥料包装体。
[2]
前記半透性袋が、生分解性袋である、[1]に記載の被覆肥料包装体。
[3]
前記半透性袋が、セロハン製袋である、[1]又は[2]に記載の被覆肥料包装体。
[4]
水耕栽培に用いられる、[1]~[3]の何れかに記載の被覆肥料包装体。
[5]
植物体、
前記植物体を支持する植物体支持部材、及び
被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体
を有する植物体栽培ユニット。
[6]
植物体支持部材が、培土及び鉢である、[5]に記載の植物体栽培ユニット。
[7]
前記鉢は、前記被覆肥料包装体を配置するための肥料配置部を少なくとも1つ有する、[6]に記載の植物体栽培ユニット。
[8]
水耕栽培に用いられる、[5]~[7]の何れかに記載の植物体栽培ユニット。
[9]
被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体及び植物体を植物体支持部材に配置して植物体栽培ユニットを準備する植物体栽培ユニット準備工程、
前記植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材の前記開口部に、前記植物体栽培ユニットを保持する保持工程、及び
前記植物体栽培ユニットを保持した前記フロート部材を栽培槽の水面上に浮遊させる浮遊工程
を含む植物体の栽培方法。
[10]
複数種の被覆肥料を選択する被覆肥料選択工程、
開口を有する鉢と培地とを含む植物体支持部材に、植物体の種子と前記複数種の被覆肥料とを配置し、水耕で育苗する育苗工程、及び
前記育苗工程により得られた苗を、前記植物体支持部材を用いて水耕栽培する水耕栽培工程
を含む、植物体の栽培方法。
[11]
前記開口を有する鉢が、ループ状の樹脂線材が絡み合わさり、前記ループ状の樹脂線材同士の接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目構造の鉢である、[10]に記載の栽培方法。
[12]
前記樹脂線材が生分解性樹脂線材であり、前記培地が培土である、[11]に記載の栽培方法。
【0008】
[13]
複数の水耕栽培用フロート部材同士を互いに連結する方法であって、
隣接するフロート部材同士を、連結及び連結解除可能な連結部材により連結する連結工程を含み、
前記フロート部材は、植物体支持部材を脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能な部材である、フロート部材の連結方法。
[14]
前記連結部材が、かすがいである、[13]に記載の水耕栽培用フロート部材の連結方法。
[15]
被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体及び植物体を植物体支持部材に配置して植物体栽培ユニットを準備する植物体栽培ユニット準備手段、
前記植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材の前記開口部に、前記植物体栽培ユニットを保持する保持手段、及び
前記植物体栽培ユニットを保持した前記フロート部材を栽培槽の水面上に浮遊させる浮遊手段
を有する、水耕栽培装置。
[16]
前記植物体栽培ユニット準備手段が、重量変化の検出により被覆肥料包装体が植物体支持部材に配置されたことを確認する検出手段を含む、[15]に記載の水耕栽培装置。
[17]
前記植物体栽培ユニット準備手段が、赤外線センシングにより被覆肥料包装体が植物体支持部材に配置されたことを確認する検出手段を含む、[15]又は[16]に記載の水耕栽培装置。
[18]
前記植物体栽培ユニット準備手段が、画像解析により被覆肥料包装体が植物体支持部材に配置されたことを確認する検出手段を含む、[15]~[17]の何れかに記載の水耕栽培装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被覆肥料を用い、肥料組成の調整が容易であり、かつ、肥料焼けの抑制に優れる肥料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る被覆肥料包装体の一例を示す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る植物体栽培ユニットの一例を示す模式図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る植物体栽培ユニットの一例を示す模式図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る植物体の栽培方法のフローの一例を示す図である。(a)は被覆肥料包装体を植物体支持部材の支持体に配置するステップ、(b)は植物体が定植された培地を支持体に配置するステップ、(c)は保持工程、(d)は浮遊工程を示す。
図5】(a)は本発明の第4の実施形態に係るフロート部材の連結方法の一例を示す模式図である。(b)は、(a)に示すA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。
また、説明に用いる図面は、いずれも本発明の構成要素を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、図面を用いた説明に用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することができる。
【0012】
1.被覆肥料包装体
本発明の第1の実施形態は、被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体である。以下、図1を参照して本実施形態に係る被覆肥料包装体について説明する。
被覆肥料包装体10においては、栽培期間中、半透性袋12の中に水が浸透することにより被覆肥料11から肥料成分が溶出し、この肥料成分が半透性袋外へ溶出することで、
肥料成分が植物体に供給される。肥料成分は被覆肥料の被覆材及び半透性袋12を通して溶出するため、肥料成分の溶出速度が緩やかになる。その結果、被覆肥料包装体10を施肥することで、長期にわたって植物体に肥料成分を供給することができ、また、被覆肥料自体を使用するよりも更に肥料焼けを抑制することができる。
加えて、被覆肥料包装体10では、被覆肥料11が包装されているため、施肥の作業中に粒状の被覆肥料11が散乱することがなく、施肥の作業効率の向上及び肥料ロスの低減が可能となる。
【0013】
本実施形態に係る被覆肥料包装体10は、土耕栽培、水耕栽培等の種々の栽培方法において利用することができ、水耕栽培、特には露地水耕栽培(すなわち、屋外で行われる水耕栽培)において好適に利用することができる。
【0014】
被覆肥料包装体10は、被覆肥料11を計量して開口部を有する半透性袋の中に投入し、半透性袋の開口部をシールすることにより製造することができる。半透性袋の開口部をシールする手段は、特に限定されず、ヒートシールであってよく、接着剤によりシールしてもよい。また、半透性袋がジッパー付きの袋であれば、ジッパーを閉めることでシールすればよい。
【0015】
被覆肥料包装体は、上述したように製造することができるため、栽培する植物体の種類、培地の状態、生育ステージ等に応じた適切な種類及び量の被覆肥料11を、容易に半透性袋12中に包装することができる。
また、例えばポット栽培を行うに際は、各ポットに同数の被覆肥料包装体10を投入することで、各ポットにほぼ同等の成分比及び肥料量の被覆肥料を施肥することができ、植物体の生長にばらつきが生じることを抑制することができる。
以下、被覆肥料包装体10を構成する各要素について説明する。
【0016】
1-1.被覆肥料
本実施形態における被覆肥料11は、肥料が樹脂等の被覆材で被覆された肥料粒子である。
肥料に含まれる肥料成分は、植物体の栽培において、培地である土壌、水等に施され、植物体に供給される成分であり、例えば窒素、リン、カリウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等を含有する成分である。また、肥料成分は、半透性袋を透過し得る水溶性の無機成分又は有機成分であり、無機成分であることが好ましい。具体的な肥料成分としては、尿素、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム等の窒素成分;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸成分;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム成分;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム成分;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム成分;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン等のマンガン成分;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素成分;等が挙げられる。
肥料成分は、栽培する植物体の種類、栽培期間、培地の状態等に応じて、1又は2以上の成分を適宜選択すればよい。
【0017】
被覆材を形成する材料は、特に限定されず、被覆肥料の被覆材に用いられる公知の材料を使用することができる。公知の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂;ポリウレタン、アルキド樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂;等を挙げられる。
被覆材を形成する材料は、被覆する肥料の種類、所望の溶出スピード等に応じて、1又
は2以上の材料を適宜選択すればよい。
【0018】
また、被覆肥料11は、例えば特許文献1~3に従って準備してもよく、また市販品も存在するため市販品を購入してもよい。
【0019】
1-2.半透性袋
本実施形態における半透性袋12は、水及び水に溶解している肥料成分を透過し、被覆肥料そのものを透過しない袋である限り特に限定されない。
半透性袋12は、生分解性材料のフィルムより形成された生分解性袋であることが好ましい。半透性袋12が生分解性であることにより、使用済みの被覆肥料包装体10を土壌中に廃棄しても環境汚染を引き起こしにくく、環境負荷が少ないため、廃棄の労力、コスト等を低減することができる。
生分解性材料としては、セルロース系樹脂、キトサン系樹脂、澱粉系樹脂等の天然物材料;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリビニルアルコール等の合成樹脂;等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。生分解性材料は、これらのうち、セルロース系樹脂であることが好ましい。セルロース系樹脂のフィルム(セロハンフィルム)は、水及び肥料成分の透過性が良好であり、また、適度な生分解性を有するため植物体の栽培中は被覆肥料を袋内に保持することができるとともに、廃棄後には完全に水と二酸化炭素に分解され、環境負荷が少ないからである。
【0020】
半透性袋12は、穴を有しない半透性フィルムにより形成され、被覆肥料を密封しうる構成であることが好ましいが、半透性袋を12構成する半透性フィルムの表面に、肥料成分の溶出スピードを調整するための穴を有していてもよい。穴の形状は、特に限定されず、半透性袋12の強度を確保する観点から、円形であることが好ましい。なお、本明細書において円形とは、真円に限定されず、楕円、円と同視し得る多角形等も含むものとする。
また、肥料成分の溶出スピードの調整は、半透性フィルムに穴を設ける以外にも、半透性フィルムの厚みを調整することによっても行うことができる。半透性フィルムの厚みは、通常10μm~500μmであり、この範囲で厚みを調整すればよい。
【0021】
半透性袋12のサイズ及び形状は、特に限定されず、被覆肥料包装体10のサイズに対応するものであるため、栽培期間、被覆肥料の種類、施肥方法等に応じて適宜変更すればよい。例えば、被覆肥料包装体10を後述する植物体栽培ユニットに用いる場合、植物体支持部材に収容可能なサイズ及び形状とすればよい。また、植物体支持部材が肥料配置部を有する場合には、肥料配置部に収容でき、かつ、肥料配置部から脱落しにくいサイズ及び形状とすればよい。
或いは、半透性袋12は、半透性袋12の内部容積に対して被覆肥料11が占める量が、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、また、通常50体積%以上、好ましくは60体積%以上、より好ましくは70体積%以上となるようなサイズに設定される。半透性袋12の内部容積と被覆肥料11の体積を上記関係とすることで、溶出スピードを適切な範囲に維持することができ、長期にわたって一定の肥効を持続させる易くなる。
【0022】
2.植物体栽培ユニット
本発明の第2の実施形態は、植物体;植物体を支持する植物体支持部材;及び被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体;を有する植物体栽培ユニットである。
【0023】
本実施形態に係る植物体栽培ユニットは、土耕栽培、水耕栽培等の種々の栽培方法において利用することができ、水耕栽培、特には露地水耕栽培(すなわち、屋外で行われる水耕栽培)において好適に利用することができる。
【0024】
本実施形態は、被覆肥料包装体を含む植物体栽培ユニットである。本実施形態では、被覆肥料包装体として、本発明の第1の実施形態に係る被覆肥料包装体が用いられる。
図4は、本実施形態に係る植物体の栽培方法のフローを示す図である。以下、図1~3を参照して本実施形態に係る植物体の栽培方法について説明する。
【0025】
2-1.植物体
本実施形態に係る植物体栽培ユニット20において、植物体22としては、特に限定されず、具体的には、パンジー、スイセン、クロッカス、ポトス、ガジュマル、サボテン等の観葉植物;レタス、トマト、ホウレンソウ、ベビーリーフ等の野菜類;等が挙げられる。なお、本明細書においては、植物体は、成長段階を問わず、種子(図示せず)であってもよい。
【0026】
2-2.植物体支持部材
本実施形態における植物体支持部材25は、植物体22を植物体支持部材25に配置したときに植物体22の根に水を供給できるよう植物体22を支持する部材である。植物体支持部材25は、植物体栽培ユニット20を水耕栽培に利用する際には植物体22の根に水を供給するために、また、土耕栽培する際には良好な水はけを確保するために、底面若しくは底面付近に開口部26を有する部材である。或いは、植物体支持部材25は、透水性若しくは吸水性を有する材料により構成される部材である。
【0027】
植物体支持部材25は、好ましくは、培土、ロックウール、発泡フェノール、ウレタンスポンジ及び綿繊維から選択される少なくとも1種の培地23であり、より好ましくは、培土、ロックウール、発泡フェノール、ウレタンスポンジ及び綿繊維から選択される少なくとも1種の培地23と、鉢、メッシュポット、セルトレイ及び不織布から選択される少なくとも1種の培地充填用の支持体24とを組み合わせた部材である。
これらのうち、培地23としては、土中への廃棄が容易であり、かつ、土壌汚染の原因となりにくい点で、培土又は綿繊維が好ましく、培土がより好ましい。また、これらのうち、支持体24としては、植物体22の保持性の観点から、鉢又はセルトレイが好ましく、鉢がより好ましい。そして、植物体支持部材25は、培土と鉢とを組み合わせた部材であることが好ましい。
なお、培地23が綿繊維、培土のような柔軟な材料から構成される場合、又は支持体24が不織布のような柔軟な材料から構成される場合は、植物体22の保持力を高める観点から、これらの培地23又は支持体24は、接着剤等により成形されていてもよい。
【0028】
ここで、鉢の好ましい態様について図3を参照して説明する。本実施形態においては、鉢24’は、被覆肥料包装体10を配置するための肥料配置部24bを少なくとも1つ有することが好ましい。肥料配置部は、鉢24’の底面又は底面付近に設けられていてもよく、鉢本体24aの側面に設けられていてもよい。本実施形態に係る植物体栽培ユニット20を水耕栽培に用いる場合、被覆肥料包装体10は水に浸る位置に配置されることが好ましい。しかるに、鉢24’の底面又は底面付近には植物体22の根に水を供給するための開口部26が設けられていることから、肥料配置部24bは鉢24’の底面又は底面付近に設けられていることが好ましい。
【0029】
肥料配置部24bは、植物体22の根が侵入しない程度に被覆肥料包装体10で充填されていることが好ましい。植物体22の根が肥料配置部24bに侵入しない構成とすることで、植物体22の根と被覆肥料包装体10との接触が最小限となり、肥料焼けを効果的に防止することができる。また、植物体22の根が被覆肥料包装体10を包み込むように伸びることがないため、被覆肥料包装体10から植物体22の根を分離することが容易となる。
【0030】
鉢24’は、鉢本体24aと肥料配置部24bとの間に、穴を有するセパレータ(図示せず)を有していてもよい。植物体22の根が被覆肥料包装体10に直接接触しないようにすることで、肥料焼けをより効果的に防止することができる。鉢24’がセパレータを有する場合、植物体22の根が侵入しないほどの量の被覆肥料包装体10を肥料配置部14bに充填しなくても、肥料焼けの防止効果が得られる点で好ましい。
セパレータは、水及び肥料成分を透過し、植物体22の根を透過しない限り特に限定されず、具体的には、金属網、プラスチック網、薄葉紙、不織布等が挙げられる。
【0031】
2-3.被覆肥料包装体
本実施形態における被覆肥料包装体10は、被覆肥料11が半透性袋12で包装されたものであり、植物体支持部材25に配置される。
【0032】
植物体支持部材25における被覆肥料包装体10の配置位置は、植物体22の根に肥料成分を供給することができる限り、特に限定されない。
植物体栽培ユニット20を水耕栽培に用いる場合は、被覆肥料包装体10は、常に水に浸る位置、具体的には植物体支持部材25の底面付近に配置されることが好ましい。これにより、肥料焼けが生じにくくなるため、植物体22の生長を促進することができる。
植物体栽培ユニット20を土耕栽培に用いる場合は、被覆肥料包装体10は、植物体22の定植(植物体が種子の場合は播種;本明細書において、「定植」には「播種」も含むものとする。)位置から1mm以上200mm以下の深さで地中に埋没させてよく、10mm以上50mm以下の深さで地中に埋没させることが好ましい。
また、図3に示すように、植物体支持部材25が肥料配置部24bを有する場合には、被覆肥料包装体10は、肥料配置部24bに配置してもよく、肥料配置部24b以外の位置に配置してもよく、その両方に配置してもよい。
【0033】
植物体支持部材25に配置する被覆肥料包装体10中の被覆肥料11の量は、特に限定されず、栽培期間、培地の状態等に応じて適宜選択すればよい。
また、植物体支持部材25に配置される被覆肥料包装体10の数は、特に限定されず、被覆肥料の量、栽培期間、培地の状態等に応じて適宜選択すればよい。例えば、1つの植物体栽培ユニット20に投入する被覆肥料の全量を、1つの半透性袋に包装し、植物体支持部材25に配置してもよく、複数に分けて半透性袋に包装し、植物体支持部材25の1箇所又は複数箇所に配置してもよい。
【0034】
3.植物体の栽培方法I
本発明の第3の実施形態は、被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体及び植物体を植物体支持部材に配置して植物体栽培ユニットを準備する植物体栽培ユニット準備工程;植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材の開口部に、植物体栽培ユニットを保持する保持工程;及び植物体栽培ユニットを保持したフロート部材を栽培槽の水面上に浮遊させる浮遊工程;を含む植物体の栽培方法である。
【0035】
本実施形態は、植物体栽培ユニットを用いて植物体を水耕栽培する方法である。本実施形態では、植物体栽培ユニットとして、本発明の第2の実施形態に係る植物体栽培ユニットが用いられる。
図4は、本実施形態に係る植物体の栽培方法のフローの一例を示す図である。以下、図1~4を参照して本実施形態に係る植物体の栽培方法について説明する。
【0036】
3-1.植物体栽培ユニット準備工程
本工程は、被覆肥料包装体10及び植物体22を植物体支持部材25に配置して、第2
の実施形態に係る植物体栽培ユニット20を準備する工程である。
【0037】
被覆肥料包装体10及び植物体22を植物体支持部材25に配置する方法は、特に限定されず、植物体の種類、植物体の生育ステージ等に応じて適宜選択すればよい。
被覆肥料包装体10の配置位置及び数、並びに被覆肥料包装体10中の被覆肥料11の量は、「2-3.被覆肥料包装体」で説明した通りである。
植物体22の配置方法は、植物体22が支持されるように植物体支持部材25に配置できる限り、特に限定されない。例えば、挿し木による定植であってよく、ポット苗等の定植であってよい。また、植物体が種子の場合、培地23に播種してもよく、別途種から芽だしを行った種子を培地23に埋設又は培地23の上に配置してもよい。芽だしを行った種子を用いると、植物体22の生育がそろい、栽培期間が短縮される点で好ましい。植物体の種子の芽だしを行う方法は、特に限定されず、例えば培土、ウレタンスポンジ等の上に播種し、土耕栽培又は水耕栽培により芽だしを行う方法が挙げられる。
【0038】
本工程の一例を、図4中の(a)及び(b)に示す。このように、空の支持体24の底部に被覆肥料包装体10を配置し、その上に培地23に植物体22が定植されたポット苗を配置する方法により、植物体栽培ユニット20が得られる。
また、上記例の他、支持体24の内部に配置された培地23に被覆肥料包装体10を埋設し、その後植物体22を配置する方法;培地23又は支持体24に釘、蝶番等の固定具又は接着剤で被覆肥料包装体10を取り付け、その後植物体22を配置する方法;鉢24’の肥料配置部の一部又は全部に被覆肥料包装体10を充填し、その後、培地23及び植物体22を順次配置する方法;等によっても植物体栽培ユニット20を得ることができる。
【0039】
本実施形態では、肥料の供給に、被覆肥料包装体10を用いる。すなわち、被覆肥料11が半透性袋12で包装されており、本工程中に被覆肥料11の粒子が散乱することがないため、施肥の作業効率の向上及び肥料ロスの低減が可能となる。
また、本実施形態では、被覆肥料包装体10を用いて植物体22に肥料成分を供給することから、植物体栽培ユニット20を水耕栽培に用いる場合であっても、養液(液肥)を使用する必要がない。そのため、例えば露地水耕栽培において、雨水の流入や水の蒸発による溶液の濃度変化等を考慮する必要がなく、従来要求されていたビニルハウスなどの雨除けが不要となる。
【0040】
3-2.保持工程
本工程は植物体栽培ユニット20を脱着可能に保持することができる開口部32を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材31の前記開口部に、前記植物体支持部材を保持する工程である。本工程の一例を、図4中の(c)に示す。
【0041】
フロート部材31としては、上述の構成を有する限り特に限定されず、水耕栽培において、植物体を栽培槽の水面上に浮遊した状態で保持するために用いられる公知のフロート部材を採用することができる。公知のフロート部材としては、例えば国際公開2017/104703号に記載のフロート部材が挙げられる。
【0042】
3-3.浮遊工程
本工程は、植物体支持部材25を保持したフロート部材31を栽培槽33の水面上に浮遊させる工程であり、植物体22は水面上で栽培される。本工程の一例を、図4中の(d)に示す。
【0043】
栽培槽33は、水を保持することができれば場所、大きさ、形状ともに特に限定されない。栽培槽33は、例えば休耕中の水田、使用しなくなった屋外プール、貯水槽、ため池
など、水耕栽培とは別の目的で準備された水溜であってもよい。このように、使用していない水溜を水耕栽培に再利用することができるため、低コストで植物体を栽培することが可能となる。
栽培槽中33の水は、液肥(養分)を実質的に含まないものであっても、植物体支持部材25に被覆肥料包装体10が配置されていることから、水耕栽培が可能となる。液肥を使用しない栽培においては、栽培槽33中の水を循環させる設備が必要ないため、設備コストを低減することができる。このように、本実施形態に係る植物体の栽培方法は、栽培槽33中の水が実質的に養分を含まない態様において好適に適用することができる。
なお、液肥(養分)を実質的に含まないとは、液肥(養分)を植物体への栄養供給を目的として水に含有させる状態を除くことを意図しており、水中に養分が全く入っていない状態のみを意図するものではない。例えば、液肥の主成分、カリウム、ナトリウム、リンの濃度はいずれも1ppm以下であってよく、これらを含めた全ての溶解物の濃度が50ppm以下であってもよい。従って、栽培槽33中の水としては、地下水に加え、水道水等の飲用水を用いることもできる。
【0044】
植物体支持部材25を保持したフロート部材31を栽培槽33の水面上に浮遊させる方法は、特に限定されない。例えば、図4中の(d)に示すように、植物体栽培ユニット20が準備された位置と栽培槽33との間に、水平方向に距離がある場合は、植物体栽培ユニットが20脱落しない程度に勾配が調整された斜面に沿ってフロート部材31を傾斜させながら栽培槽33へ移動し、水面に浮遊させればよい。
なお、フロート部材31は、少なくとも1つの他のフロート部材31と、後述するフロート部材の連結方法により連結した状態で栽培槽33へ移動し、栽培槽33の水面上に浮遊させてもよい。
【0045】
4.フロート部材の連結方法
本発明の第4の実施形態は、複数の水耕栽培用フロート部材同士を互いに連結する方法であって、隣接するフロート部材同士を、連結及び連結解除可能な連結部材により連結する連結工程を含む。
【0046】
本発明の第4の実施形態は、本発明の第3の実施形態に係る植物体の栽培方法を水耕栽培、特に露地水耕栽培に適用する場合において好適である。フロート部材同士が連結されることで、フロート部材が発砲スチロールのような計量な材料により構成されていたとしても、フロート部材が雨風等で飛ばされたり、裏返ったり、栽培槽の水面の外へ移動する等の不都合を防止することができる。
【0047】
4-1.連結工程
連結するフロート部材の数は、2以上であり、上限は特に特に限定されず、栽培槽のサイズ、フロート部材のサイズ等に応じて適宜選択すればよい。
また、連結工程は、本発明に係る第3の実施形態に係る植物体の栽培方法における植物体栽培ユニット準備工程、保持工程、及び浮遊工程の前後及び途中に行うことができる。
【0048】
連結部材は、隣接するフロート部材同士を連結及び連結解除することができる部材であれば、特に限定されないが、連結部材が破壊されることなくフロート部材同士の連結を解除できる部材であることが好ましい。例えば結束バンドのように、フロート部材同士の連結を解除する際に切断するなどして破壊される連結部材は、簡便さがメリットではある一方で、連結解除後に廃棄することとなり、環境問題上は望ましくないためである。
【0049】
フロート部材同士の連結を解除する際に破壊されない連結部材としては、糸、ロープ等の紐状部材;プラスチックチェーン、金属チェーン等の鎖状部材、かすがい、また釘等の釘類;Uボルト及びナット、コの字ボルト及びナット等のボルト類;等が挙げられる。紐
状部材又は鎖状部材で、隣接する2つのフロート部材の開口部を通して結ぶことで、フロート部材同士を連結することができる。鎖状部材の場合、鎖の輪を南京錠、スイベルフック、カラビナ等のリング状部材で固定してもよい。釘類は、隣接する2つのフロート部材の開口部又はフロート部材の開口部が設けられていない部分に挿し込むことで、フロート部材同士を連結することができる。また、ボルト類は、隣接する2つのフロート部材の開口部又はフロート部材の開口部が設けられていない部分に挿し込み、ナットを取り付けることで、フロート部材同士を連結することができる。
【0050】
なお、連結に利用される開口部は、植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部(以下、「第1の開口部」と称する場合がある。)であってもよく、第1の開口部とは別に連結用に設けた開口部(以下、「第2の開口部」と称する場合がある。)であってもよい。
また、連結に利用される開口部の形状は、特に限定されず、円形であってもよく、多角形であってもよい。
連結に利用される開口部の位置は、特に限定されず、フロート部材の周縁から0.5cm~10cm程度の周縁部であってもよく、それよりも内側の中心部であってもよいが、フロート部材における単位面積あたりの栽培数を多くできる点で、周縁部であることが好ましい。
さらに、フロート部材が、発泡プラスチック類のように、強度の高くない材料により構成される場合は、雨風等によりフロート部材が動くことにより、連結用の開口部を起点としてフロート部材が破損する虞があるため、連結に用いる開口部をハトメのような補強具で補強することが好ましい。
【0051】
本実施形態では、連結及び連結解除の作業の簡便さ、連結の強度及びフロート部材の破損抑制の観点から、連結部材として釘類、特にかすがいを用い、連結用の開口部をハトメのような補強具を装着することで補強することが好ましい。
ここで、図5の(a)は、連結部材としてかすがいを用い、第2の開口部がハトメにより補強されている態様の一例を示す模式図であり、図5の(b)は、(a)の一部の断面図(A-A断面図)である。図5中、連結する2つのフロート部材41は、植物体栽培ユニットを脱着可能に保持するための第1の開口部42の他に、連結用に設けられた第2の開口部43を有する。また、第2の開口部43には、ハトメ44が装着されている。そして、隣接するフロート部材41の第2の開口部43に、かすがい45が嵌め込まれることにより、フロート部材41同士が連結される。連結されたフロート部材41は、かすがい45を取り外すことで容易に連結を解除することができる。
【0052】
5.水耕栽培装置
本発明の第5の実施形態は、被覆肥料が半透性袋で包装された被覆肥料包装体及び植物体を植物体支持部材に配置して植物体栽培ユニットを準備する植物体栽培ユニット準備手段;植物体栽培ユニットを脱着可能に保持することができる開口部を複数有し、水面上に浮遊可能なフロート部材の開口部に、植物体栽培ユニットを保持する保持手段;及び植物体栽培ユニットを保持したフロート部材を栽培槽の水面上に浮遊させる浮遊手段;を有する水耕栽培装置である。
本発明の第5の実施形態に係る水耕栽培装置は、本発明の第3の実施態様に係る植物体の栽培方法における植物体栽培ユニット準備工程、保持工程及び浮遊工程のうち少なくとも一部、好ましく全工程を自動化するための装置である。
【0053】
5-1.植物体栽培ユニット準備手段、保持手段及び浮遊手段
本実施形態における植物体栽培ユニット準備手段、保持手段、及び浮遊手段は、それぞれ、本発明の第3の実施形態に係る植物体の栽培方法における植物体栽培ユニット準備工程、保持工程、及び浮遊工程の一部又は全部を自動化できる手段であれば、特に限定され
ない。
【0054】
5-2.検出手段
植物体栽培ユニット準備手段は、植物体支持部材に被覆肥料包装体が配置されたことを確認する検出手段を含むことが好ましい。また、検出手段により被覆肥料包装体が配置されていないことが確認された植物体支持部材に、被覆肥料包装体を配置する肥料配置手段を含むことが好ましい。このように、被覆肥料包装体が配置されていない植物体支持部材の数を低減することで、植物体の生長のばらつきを抑制及び歩留まりの向上を実現することができる。
【0055】
検出手段としては、植物体支持部材に被覆肥料包装体が配置されたことを確認することができる限り、特に限定されない。例えば、被覆肥料包装体を配置する前後での重量変化の検出により被覆肥料包装体の配置の有無を確認する重量センサ;赤外線センシングにより被覆肥料包装体の配置の有無を確認する赤外線センサ;被覆肥料包装体を配置する前後の画像解析により被覆肥料包装体の配置の有無を確認する画像解析装置;等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0056】
本実施形態に係る水耕栽培装置は、隣接するフロート部材同士を、連結及び連結解除可能な連結部材により連結する連結手段を有することが好ましい。連結手段は、本発明の第4の実施形態に係るフロート部材の連結方法における連結工程を自動化できる手段であれば、特に限定されない。連結手段は、植物体栽培ユニット準備手段、保持手段、及び浮遊手段の何れかに含まれていてもよく、これらの手段とは別に設けられていてもよい。
【0057】
6.植物体の栽培方法II
本発明の第3の実施形態は、複数種の被覆肥料を選択する被覆肥料選択工程;開口を有する鉢と培地とを含む植物体支持部材に、植物体の種子と前記複数種の被覆肥料とを配置し、水耕で育苗する育苗工程;及び前記育苗工程により得られた苗を、前記植物体支持部材を用いて水耕栽培する水耕栽培工程;を含む植物体の栽培方法である。本実施形態で栽培する植物体としては、上記「2-1」で例示した植物体と同様のものが挙げられる。
【0058】
植物体の栽培では、播種、育苗、苗の生長等の生育ステージによって、求められる養分が異なる。そのため、生育ステージごとに肥料を変更することが望ましく、一般的には、生育ステージが変わるごとに植物体の植え替えが行われている。植物体の植え替えには手間及びコストがかかるため、植え替えを省略するため、播種の段階から各生育ステージで必要となる肥料を全て培地に添加したり、生育ステージが変わる毎に肥料を追加したりすることも行われている。しかしながら、各生育ステージで必要となる肥料をまとめて培地に添加すると、肥料成分の溶出量が過剰となり、肥料焼けが生じるという問題がある。また、生育ステージが変わる毎に肥料を追加する場合は、低減できる手間やコストは限定的であり、さらなる改善が求められている。
【0059】
本実施形態では、栽培する植物体の各育成ステージに応じた被覆肥料を複数種選択して用いることにより、植物体の植え替えや植物体の栽培途中での肥料の追加を要することなく、播種から苗の生長までを一の植物体支持部材により行うことができる栽培方法を提供する。本実施形態に係る植物体の栽培方法は、手間及びコストが低減された簡便な方法である。
【0060】
6-1.被覆肥料選択工程
本工程は、複数種の被覆肥料を選択する工程である。本実施形態における被覆肥料は、肥料が樹脂等の被覆材で被覆された肥料粒子であって、本発明の第1の実施形態における被覆肥料と同様に定義される。被覆肥料の詳細は、上記「1-1.被覆肥料」で説明した
通りである。
【0061】
本工程では、植物体の種類、栽培期間中の温度、各生育ステージの期間等の諸条件に基づき、一の生育ステージに必要な肥料成分(養分)を含有する肥料、及びその生育ステージで当該肥料成分を溶出させるために適した被覆材を有する被覆肥料を選択する。そして、他の生育ステージについても同様にして被覆肥料を選択することで、植物体の播種から苗の生長にかけて必要な肥料成分を必要な期間に順次溶出することのできる被覆肥料混合物が得られる。生育ステージが細分化された植物体を栽培する場合は、その植物体の生育ステージ数に応じて選択する被覆肥料の種類数を変更すればよい。
【0062】
なお、「その生育ステージで当該肥料成分を溶出させるために適した被覆材」とは、対象とする生育ステージの初期、中期、後期、初期から中期、中期から後期、初期から後期等の期間に当該肥料成分を溶出させることのできる被覆材であってよく、対象とする生育ステージの初期から後期にかけて当該肥料成分を溶出させることのできる被覆材であることが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上記期間には、対象とする生育ステージの前後の期間を含んでいてもよい。
【0063】
6-2.育苗工程
本工程では、開口を有する鉢と培地とを含む植物体支持部材に、植物体の種子と被覆肥料選択工程で選択した複数種の被覆肥料とを配置し、水耕で育苗する。
【0064】
植物体支持部材は、少なくとも育苗工程及び水耕栽培工程において、植物体の種子又は植物体の根に水を供給できるよう植物体の種子又は植物体を支持する部材であり、開口を有する鉢と培地とを含む。
【0065】
開口を有する鉢は、植物体の種子又は植物体の根に水を供給するための開口を有する限り、特に限定されない。開口の位置は、鉢の底面、底面付近、及び側面の1以上であればよく、また、開口のサイズ、数等は特に限定されず、植物体の種類に応じて適宜選択すればよい。
開口を有する鉢としては、本発明の第2の実施形態に係る植物体栽培ユニットが備える植物体支持部材の支持体である鉢であってよく、メッシュポットであってよく、好適にはループ状の樹脂線材が絡み合わさり、前記ループ状の樹脂線材同士の接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目構造の鉢である。立体網目構造の鉢は、特に限定されないが、好適な市販品の例としてクラスマン・ダイルマン社製「Growcoon」が挙げられる。
開口を有する鉢の構成材料は、特に限定されず、熱可塑性樹脂、生分解性樹脂等から適宜選択することができる。これらのうち、鉢の構成材料は、生分解性樹脂であることが好ましい。生分解性樹脂で構成された鉢は、植物体の栽培中には植物体を支持する強度を維持でき、また、植物体の栽培終了後に土壌中に廃棄しても分解されるため環境負荷が少なく、廃棄の労力、コスト等を低減することができるからである。
【0066】
培地としては、培土、ロックウール、発泡フェノール、ウレタンスポンジ、綿繊維等が挙げられる。これらのうち、鉢の開口から脱落したり、植物体の栽培終了後に土壌中に廃棄したりしても環境汚染を引き起こしにくい点で、培地は培土であることが好ましい。
【0067】
本工程において、植物体の種子と被覆肥料選択工程で選択した複数種の被覆肥料とを植物体支持部材に配置する方法は、特に限定されず、例えば鉢の底に被覆肥料を配置し、その上に培地を配置し、その後培地に播種する方法;被覆肥料及び培地を含む混合物を鉢に充填し、当該混合物に播種する方法;鉢の底に被覆肥料を配置し、その上に被覆肥料及び培地を含む混合物を配置し、その後当該混合物に播種する方法;等が挙げられる。
また、本工程において、水耕で育苗する方法は、特に限定されず、一般的な水耕栽培により育苗を行えばよい。一般的な水耕栽培としては、屋内で行う水耕栽培の他、露地水耕栽培(すなわち、屋外で行われる水耕栽培)が挙げられ、好ましくは露地水耕栽培である。
【0068】
6-3.水耕栽培工程
本工程は、育苗工程により得られた苗を、育苗工程で用いた植物体支持部材に支持されたまま水耕栽培する工程である。水耕栽培としては、特に限定されず、育苗工程と同様、屋内外での一般的な水耕栽培を採用することができ、屋外における水耕栽培である露地水耕栽培であることが好ましい。また、本工程における水耕栽培は、育苗工程の後に特段の作業をすることなく水耕栽培工程を行うことができる点で、育苗工程と同一の方法により行うことも好ましい。
【0069】
被覆肥料選択工程において、育苗工程で必要な肥料成分を育苗工程で溶出する被覆肥料に加え、水耕栽培工程で必要な肥料成分を水耕栽培で溶出する被覆肥料が選択されており、さらに育苗工程でこれらの被覆肥料が植物体支持部材に配置されている。そのため、本工程前及び/又は本工程中に、育苗工程により得られた苗を植え替えずとも、苗の生長に適した肥料成分を十分に供給しながら植物体を栽培することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 被覆肥料包装体
11 被覆肥料
12 半透性袋
20 植物体栽培ユニット
22 植物体
23 培地
24 支持体
24’ 鉢
24a 鉢本体
24b 肥料配置部
25 植物体支持部材
26 開口部
31 フロート部材
32 開口部
33 栽培槽
41 フロート部材
42 第1の開口部
43 第2の開口部
44 ハトメ
45 かすがい
図1
図2
図3
図4
図5