(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032897
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】薄帯片の製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/38 20060101AFI20230302BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20230302BHJP
B26F 1/44 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B26F1/38 A
B26D7/08 D
B26F1/44 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139261
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144614
【氏名又は名称】株式会社三條機械製作所
(71)【出願人】
【識別番号】592190866
【氏名又は名称】株式会社江東彫刻
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 晃徳
(72)【発明者】
【氏名】助田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平位 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 芳清
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌章
(72)【発明者】
【氏名】酒寄 勇
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公二郎
(72)【発明者】
【氏名】御園生 浩
【テーマコード(参考)】
3C060
【Fターム(参考)】
3C060AA16
3C060AB01
3C060BA03
3C060BB05
3C060BD03
3C060BG03
(57)【要約】
【課題】ロータリーダイカッターの損傷を抑制できる薄帯片の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の薄帯片の製造の方法は、ダイロールとアンビルロールとを備えるロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜く打ち抜き工程を備える薄帯片の製造方法であって、ダイロールは、切刃が外周面に突設されたダイロール本体を含み、アンビルロールは、切刃が隙間を有した状態で篏合可能な溝が外周面に設けられたアンビルロール本体を含み、打ち抜き工程では、薄帯材をダイロール及びアンビルロールの間に通過させる際に、ダイロール本体の外周面の切刃の基端部の両側に配置されたダイロール側弾性体とアンビルロール本体の外周面の溝の両側との間で薄帯材を挟圧しながら、ダイロール本体の切刃を、アンビルロール本体の溝に隙間を有した状態で篏合させ薄帯材に押し込むことで薄帯材を切断することを特徴とする。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイロールとアンビルロールとを備えるロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜く打ち抜き工程を備える薄帯片の製造方法であって、
前記ダイロールは、前記薄帯片の周縁に対応する形状を有する切刃が外周面に突設されたダイロール本体を含み、
前記アンビルロールは、前記ダイロール本体の前記切刃が隙間を有した状態で篏合可能な溝が外周面に設けられたアンビルロール本体を含み、
前記打ち抜き工程では、前記ダイロール及び前記アンビルロールを互いに逆方向に回転させることで前記薄帯材を前記ダイロール及び前記アンビルロールの間に通過させる際に、前記ダイロール本体の外周面の前記切刃の基端部の両側に配置されたダイロール側弾性体と前記アンビルロール本体の外周面の前記溝の両側との間で前記薄帯材を挟圧しながら、前記ダイロール本体の前記切刃を、前記アンビルロール本体の前記溝に隙間を有した状態で篏合させ前記薄帯材に押し込むことで前記薄帯材を切断することにより、前記薄帯材から前記薄帯片を打ち抜くことを特徴とする薄帯片の製造方法。
【請求項2】
前記ダイロール本体の前記切刃の基端部の幅は、前記アンビルロール本体の前記溝の幅以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄帯片の製造方法。
【請求項3】
前記ダイロールは、前記ダイロール本体の外周面の前記切刃の基端部の両側に設けられたダイロール弾性層をさらに含み、
前記打ち抜き工程では、前記ダイロール弾性層を前記ダイロール側弾性体とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄帯片の製造方法。
【請求項4】
前記打ち抜き工程では、前記薄帯材及び前記薄帯材の前記ダイロール側の面に載せた弾性体シートを有する積層シートを前記ダイロール及び前記アンビルロールの間に通過させることで前記薄帯材を前記ダイロール及び前記アンビルロールの間に通過させ、前記弾性体シートを前記ダイロール側弾性体とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄帯片の製造方法。
【請求項5】
前記アンビルロールは、前記アンビルロール本体の外周面の前記溝の両側に設けられたアンビルロール弾性層をさらに含み、
前記打ち抜き工程では、前記ダイロール側弾性体と前記アンビルロール弾性層との間で前記薄帯材を挟圧することを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の薄帯片の製造方法。
【請求項6】
前記打ち抜き工程では、前記アンビルロール本体の外周面の前記溝の両側が前記薄帯材に直に接するように前記ダイロール側弾性体と前記アンビルロール本体の外周面の前記溝の両側との間で前記薄帯材を挟圧することを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の薄帯片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜くことで薄帯片を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属材料等から構成される金属薄板、金属薄帯、金属箔などの薄帯材から所定形状の薄帯片を製造することが求められることが多い。これは、様々な機械や電子機器に実装される部品が、このような所定形状を有する薄帯片から形成されることが多いからである。具体的には、例えば、特許文献1に記載されているように、モータコア等に用いられる積層コアは、アモルファス合金薄帯等から加工される薄帯片を積層することにより形成される。さらに、二次電池や燃料電池が備える電極の多くは金属薄帯片から形成される。
【0003】
薄帯材から所定形状の薄帯片を製造する加工方法としては、従来は、プレス打ち抜きが適用されていたが、近年、生産性の向上等の観点から、ロータリーダイカッターを用いた加工方法が適用されるようになっている。
【0004】
ロータリーダイカッターを用いた加工方法として、例えば、特許文献2には、金属薄板や金属箔等の非常に薄い金属部材(薄帯材)をせん断加工により所定形状に打ち抜くロータリーカッターを用いた加工方法が記載されている。このロータリーカッターは、第1回転部材と、第2回転部材と、弾性体と、を備えている。このロータリーカッターでは、第1回転部材は、表面に凸部及び凹部の少なくとも一つを有する。第2回転部材は、第1回転部材と反対方向に回転可能であって、表面に凸部及び凹部の少なくとも一つを有する。弾性体は、第1回転部材が有する凸部若しくは凹部により形成されるエッジの段差部分の少なくとも一部に装着される。さらに、弾性体は、第2回転部材が有する凸部若しくは凹部により形成されるエッジの段差部分の少なくとも一部に装着される。そして、第1回転部材のエッジと第2回転部材のエッジの間で金属部材をせん断する。
【0005】
さらに、ロータリーダイカッターを用いた加工方法として、例えば、特許文献3には、ロータリーダイとアンビルロールとを備えるダイカット装置を用いた加工方法が記載されている。この装置では、ロータリーダイが、ダイカットロールと、ダイカットロールの径方向外側に突出する形状の切刃とを有し、切刃が、ダイカットロールの周方向に沿って外周面から突出する形状の第1刃部をダイカットロールの軸方向に離間して一対含んでいる。さらに、ロータリーダイが、第1刃部をダイカットロールの軸方向に挟むスポンジを有し、スポンジは、ダイカットロールとアンビルロールとの離間距離が最も短い箇所での圧縮率が40%以上に設定されている。このダイカット装置では、ロータリーダイとアンビルロールとの間に電極中間体を通過させる際にロータリーダイの切刃を電極中間体等の薄帯材に進入させることで薄帯材を切断予定線で切断することによって、薄帯材から所定形状の薄帯片を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/006868号
【特許文献2】特許第6037690号公報
【特許文献3】特開2017-132019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対して、例えば、アモルファス合金薄帯等の薄帯材は、硬度が高く延性が低いため、切断が容易ではない。このため、特許文献2に記載されたロータリーカッターのようなロータリーダイカッターを用い、せん断加工により、硬度が高く延性が低い薄帯材を打ち抜く場合には、ロータリーダイカッターは、その摩耗が早期に進行するため損傷し易い。
【0008】
さらに、特許文献3に記載されたダイカット装置のようなロータリーダイカッターを用い、薄帯材を切刃で切断することにより薄帯材から薄帯片を打ち抜く場合にも、薄帯材の硬度が高く延性が低いときには、ロータリーダイカッターは、切刃に強い負荷がかかるため損傷し易い。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜くことで薄帯片を製造する方法であって、ロータリーダイカッターの損傷を抑制することができる薄帯片の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の薄帯片の製造方法は、ダイロールとアンビルロールとを備えるロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜く打ち抜き工程を備える薄帯片の製造方法であって、上記ダイロールは、上記薄帯片の周縁に対応する形状を有する切刃が外周面に突設されたダイロール本体を含み、上記アンビルロールは、上記ダイロール本体の上記切刃が隙間を有した状態で篏合可能な溝が外周面に設けられたアンビルロール本体を含み、上記打ち抜き工程では、上記ダイロール及び上記アンビルロールを互いに逆方向に回転させることで上記薄帯材を上記ダイロール及び上記アンビルロールの間に通過させる際に、上記ダイロール本体の外周面の上記切刃の基端部の両側に配置されたダイロール側弾性体と上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側との間で上記薄帯材を挟圧しながら、上記ダイロール本体の上記切刃を、上記アンビルロール本体の上記溝に隙間を有した状態で篏合させ上記薄帯材に押し込むことで上記薄帯材を切断することにより、上記薄帯材から上記薄帯片を打ち抜くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータリーダイカッターの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備を模式的に示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を使用し、薄帯材から打ち抜く薄帯片を示す概略平面図である。
【
図3A】第1実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
【
図3B】第1実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
【
図4】
図3Bに示すX部分の拡大図であり、打ち抜き工程での薄帯材の切断のメカニズムを説明する図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程の要部を模式的に示す工程断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備を模式的に示す側面図である。
【
図7A】第2実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
【
図7B】第2実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程の要部を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る薄帯片の製造方法について説明する。
最初に、実施形態に係る薄帯片の製造方法の概略について、第1実施形態及び第2実施形態に係る薄帯片の製造方法を例示して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備を模式的に示す側面図である。
図2は、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を使用し、薄帯材から打ち抜く薄帯片を示す概略平面図である。
図3A及び
図3Bは、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
図4は、
図3Bに示すX部分の拡大図であり、打ち抜き工程での薄帯材の切断のメカニズムを説明する図である。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備100は、材料供給装置10と、ロータリーダイカッター30と、材料回収装置40とを備え、これらは搬送方向D1において順番に配置されている。製造設備100は、2つの材料搬送装置20をさらに備え、これらは、搬送方向D1においてロータリーダイカッター30の上流側及び下流側にそれぞれ配置されている。
【0016】
材料供給装置10は、薄帯材Mを巻き出しロータリーダイカッター30に供給できるように矢印方向に回転可能に設けられた回転軸11を有し、回転軸11には薄帯材Mが巻かれている。薄帯材Mは、アモルファス合金薄帯である。材料搬送装置20は、薄帯材Mを挟んで回転する一対の搬送ロール21を有している。一対の搬送ロール21は、回転軸が互いに平行になるように配置され、矢印に示すように互いに逆方向に回転することで薄帯材Mを間に挟み込んで搬送する。材料回収装置40は、打ち抜き後の薄帯材M´を巻き取り回収できるように矢印方向に回転可能に設けられた回転軸41を有している。
【0017】
製造設備100では、まず、材料供給装置10から供給される薄帯材Mを上流側の材料搬送装置20によりロータリーダイカッター30に搬送する。次に、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法をロータリーダイカッター30により実施することで、薄帯材Mから
図2に示す薄帯片Pを打ち抜き製造する。薄帯片Pは、積層ステータコアの各層をなす薄帯片がさらに周方向で分割されたものであり、櫛歯状の周縁Pe及びこの周縁Peとは反対側の平坦な周縁Pfを有する。次に、打ち抜き後の薄帯材M´を下流側の材料搬送装置20により材料回収装置40に搬送し、材料回収装置40で回収する。以下、ロータリーダイカッター30及び第1実施形態に係る薄帯片の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
ロータリーダイカッター30は、
図1並び
図3A及び
図3Bに示すように、ダイロール32と、アンビルロール34とを備えている。ダイロール32は、ダイロール本体32Aと、ダイロール弾性層(ダイロール側弾性体)32Bとを含んでいる。ダイロール本体32Aは、円柱形状の金型であり、搬送ロール21の回転軸と平行なその中心軸を回転軸A1として回転可能に設けられている。ダイロール本体32Aの外周面32Asには切刃32Acが突設されている。切刃32Acは、薄帯片Pの周縁に対応する形状を有している。すなわち、ダイロール本体32Aの外周面32Asを平面に展開した場合の切刃32Acの刃先の平面視形状が薄帯片Pの周縁と同一になっている。また、切刃32Acの断面形状は三角形になっている。ダイロール弾性層32Bは、ダイロール本体32Aの外周面32Asの切刃32Acの基端部の両側に固定されて設けられており、切刃32Acの基端部の隣接領域まで延在している。ダイロール32は、ダイロール本体32Aの回転軸A1を中心としてダイロール弾性層32Bにより薄帯材Mを押圧しながら矢印方向に回転する。アンビルロール34は、アンビルロール本体34Aと、アンビルロール弾性層34Bとを含んでいる。アンビルロール本体34Aは、円柱形状の金型であり、回転軸A1と平行なその中心軸を回転軸A2として回転可能に設けられている。アンビルロール本体34Aの外周面34Asには、ダイロール本体32Aの切刃32Acが隙間Sを有した状態で篏合可能な溝34Agが設けられている。アンビルロール弾性層34Bは、アンビルロール本体34Aの外周面34Asの溝34Agの両側に固定されて設けられており、溝34Agの両側の隣接領域まで延在している。アンビルロール34は、アンビルロール本体34Aの回転軸A2を中心としてアンビルロール弾性層34Bにより薄帯材Mを支持しながら矢印方向に回転する。
【0019】
ロータリーダイカッター30では、
図3A及び
図3B並びに
図4に示すように、ダイロール本体32Aの切刃32Acの基端部の幅W1が、アンビルロール本体34Aの溝34Agの幅W2以下となっている。切刃32Acの刃先と溝34Agの縁とのクリアランスW3が、例えば、薄帯材Mの厚さ(20μm~30μm程度)の5倍程度(0.1mm~0.15mm程度)まで大きくなるように溝34Agの幅W2が設定されている。ダイロール弾性層32Bの厚さt1が、切刃32Acの高さhより厚くなっている。ダイロール弾性層32Bが樹脂製スポンジシートからなり、アンビルロール弾性層34Bが非発砲樹脂製多層品シートからなることにより、アンビルロール弾性層34Bの硬度(ショアA)がダイロール弾性層32Bの硬度(ショアA)の3倍以上となっている。切刃32Acが溝34Agに押し込まれる深さdpが、例えば、薄帯材Mの厚さの5倍程度(0.1mm~0.15mm程度)まで大きくなるように、切刃32Acの高さh及びロール本体32A、34A間のクリアランスdが設定されている。
【0020】
第1実施形態に係る薄帯片の製造方法では、ロータリーダイカッター30を用い、薄帯材Mから薄帯片Pを繰り返し打ち抜く(打ち抜き工程)。打ち抜き工程では、
図3A及び
図3Bに示すように、薄帯材Mをダイロール弾性層32Bの外周面32Bs及びアンビルロール弾性層34Bの外周面34Bsの間に挟みながら、ダイロール32及びアンビルロール34を矢印に示すように互いに逆方向に回転させる。これにより、薄帯材Mをダイロール32及びアンビルロール34の間に通過させる。この際に、ダイロール弾性層32Bとアンビルロール弾性層34Bとの間で薄帯材Mを挟圧しながら、ダイロール本体32Aの切刃32Acを、アンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込む。
【0021】
これにより、
図4に示すように、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mにおいてダイロール弾性層32Bとアンビルロール弾性層34Bとの間で挟圧された被挟持部Msをダイロール弾性層32B及びアンビルロール弾性層34Bの両方の弾性力で拘束する。同じタイミングで、ダイロール本体32Aの切刃32Acをダイロール弾性層32Bの外周面32Bsから突出させることで、薄帯材Mにおいて切刃32Acが押し込まれた押圧位置Mpをダイロール本体32Aの切刃32Acで押し下げる。このようにして、薄帯材Mの押圧位置Mpに曲げによる引張応力とともに拘束による引張応力を作用させることで、薄帯材Mを押圧位置Mpで切断する。
【0022】
そして、ダイロール32及びアンビルロール34を連続して回転させることにより、このような薄帯材Mの切断を連続して起こし、薄帯材Mから薄帯片Pを繰り返し打ち抜くことで、複数枚の薄帯片Pを製造する。
【0023】
第1実施形態に係る薄帯片の製造方法によれば、薄帯材Mの押圧位置Mpに対し曲げによる引張応力及び拘束による引張応力を作用させることで薄帯材Mを押圧位置Mpで切断することによって、薄帯材Mを打ち抜くことができる。このため、切刃32Acに強い負荷がかかることを回避できるので、せん断加工により薄帯材Mを打ち抜く場合と比較してロータリーダイカッター30の損傷を抑制できる。
【0024】
また、ダイロール本体32Aの切刃32Acの基端部の幅W1が、アンビルロール本体34Aの溝34Agの幅W2以下となっており、ダイロール弾性層32Bが、切刃32Acの基端部の隣接領域まで延在している。これにより、ダイロール本体32Aの切刃32Acを薄帯材Mに押し込むタイミングに対し遅れることなく、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mの被挟持部Msをダイロール弾性層32Bの弾性力で拘束できる。よって、薄帯材Mの溝34Agへの流入を回避し、薄帯材Mの押圧位置Mpに対し拘束による引張応力を切断に十分な大きさで作用させることができる。
【0025】
また、ダイロール本体32Aの切刃32Acをアンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込むことで薄帯材Mを切断できるので、切刃32Acの刃先と溝34Agの縁とのクリアランスW3を、例えば、薄帯材Mの厚さの5倍程度(0.1mm~0.15mm程度)にまで大きくすることができる。このため、上下一対の金型を用い、せん断加工により薄帯材Mを打ち抜くために、金型の上型及び下型のパンチ及びダイのクリアランスを薄帯材Mの厚さの10%程度(数μm程度)にする必要がある場合と比較して、ダイロール32及びアンビルロール34の位相合わせが容易となる。
【0026】
さらに、アンビルロール弾性層34Bの硬度(ショアA)がダイロール弾性層32Bの硬度(ショアA)の3倍以上となっている。このため、硬いアンビルロール弾性層34Bにより薄帯材Mを支持するとともに軟らかいダイロール弾性層32Bにより薄帯材Mを押圧することで、薄帯材Mの押圧位置Mpの押し下げに伴う薄帯材Mの被挟持部Msの変形を抑制でき、薄帯材Mの被挟持部Msを強固に拘束できる。これにより、薄帯材Mを押圧位置Mpで確実に切断でき、切刃32Acの刃先の平面視形状の精度で薄帯材Mから薄帯片Pを打ち抜くことができる。
【0027】
(第1実施形態の変形例)
図5は、第1実施形態の変形例に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程の要部を模式的に示す工程断面図である。
【0028】
図5に示すように、変形例に係るロータリーダイカッター30Vは、アンビルロール34を、アンビルロール本体34Aを含み、アンビルロール弾性層34Bを含まないものとした点のみにおいて、第1実施形態に係るロータリーダイカッター30と相違する。変形例に係る薄帯片の製造方法では、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法と異なり、打ち抜き工程において、ロータリーダイカッター30Vを用い、薄帯材Mをダイロール弾性層32Bの外周面32Bs及びアンビルロール本体34Aの外周面34Asの間に挟みながら、ダイロール32及びアンビルロール34を矢印に示すように互いに逆方向に回転させる。これにより、薄帯材Mをダイロール32及びアンビルロール34の間に通過させる。この際に、アンビルロール本体34Aの外周面34Asの溝34Agの両側の隣接領域が薄帯材Mに直に接するようにダイロール弾性層32Bとアンビルロール本体34Aの外周面34Asの溝34Agの両側の隣接領域との間で薄帯材Mを挟圧しながら、ダイロール本体32Aの切刃32Acを、アンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込む。これにより、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mにおいてダイロール弾性層32Bとアンビルロール本体34Aとの間で挟圧された被挟持部Msをダイロール弾性層32Bの弾性力で拘束する。同じタイミングで、ダイロール本体32Aの切刃32Acをダイロール弾性層32Bの外周面32Bsから突出させることで、薄帯材Mにおいて切刃32Acが押し込まれた押圧位置Mpをダイロール本体32Aの切刃32Acで押し下げる。このようにして、薄帯材Mの押圧位置Mpに曲げによる引張応力とともに拘束による引張応力を作用させることで、薄帯材Mを押圧位置Mpで切断する。これにより、薄帯片Pを打ち抜く。
【0029】
変形例に係る薄帯片の製造方法によれば、アンビルロール弾性層34Bの硬度の条件次第で得られる効果を除いて、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法と同様の効果が得られる。
【0030】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備を模式的に示す側面図である。
図7A及び
図7Bは、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程を模式的に示す工程断面図である。
【0031】
図6に示すように、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法を実施する製造設備200は、材料供給装置50と、材料搬送装置60と、ロータリーダイカッター70と、分離ロール80と、製品搬送装置90と、吸引装置98とを備え、これらは搬送方向D1において順番に配置されている。
【0032】
材料供給装置50は、積層シートLを巻き出しロータリーダイカッター70に供給できるように矢印方向に回転可能に設けられた回転軸51を有し、回転軸51には積層シートLが巻かれている。積層シートLは、薄帯材M及び薄帯材Mの後述するダイロール72側の面Maに載せた弾性体シート(ダイロール側弾性体)Eを有する。薄帯材Mは、アモルファス合金薄帯である。材料搬送装置60は、積層シートLを挟んで回転する一対の搬送ロール61を有している。一対の搬送ロール61は、回転軸が互いに平行になるように配置され、矢印に示すように互いに逆方向に回転することで積層シートLを間に挟み込んで搬送する。分離ロール80は、回転軸が搬送ロール61の回転軸と平行となるように配置されている。製品搬送装置90は、一対のプーリ94にベルト92が巻回され、ベルト92の搬送面92aに沿って、ベルト92の内側に磁石(図示せず)が設けられている。一対のプーリ94は、回転軸が分離ロール80の回転軸と平行となるように配置されており、ベルト92は、プーリ94の回転に伴い搬送面92aが搬送方向D1に移動するように設けられている。吸引装置98は、ベルト92の搬送面92aの上方に配置されている。
【0033】
製造設備200では、まず、材料供給装置50から供給される積層シートLを材料搬送装置60によりロータリーダイカッター70に搬送する。次に、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法をロータリーダイカッター70により実施することで、積層シートLの薄帯材Mから
図2に示す薄帯片Pを繰り返し打ち抜くことで、複数枚の薄帯片Pを製造する。この際には、薄帯材Mから薄帯片Pを平坦な周縁Pf側が搬送方向D1に向くように打ち抜く。次に、分離ロール80の回転により、打ち抜かれた複数枚の薄帯片Pを、それらの平坦な周縁Pf側を搬送方向D1に向けた状態で搬送方向D1に間隔を空けて順番に搬送方向D1に搬送し、それらの平坦な周縁Pf側を順番に製品搬送装置90のベルト92の搬送面92aに載せ、磁石の磁力で吸着させる。同時に、分離ロール80の回転により、打ち抜き後の積層シートL´を方向D2に搬送し薄帯片Pから分離する。次に、製品搬送装置90のプーリ94の回転により、ベルト92の搬送面92aを移動させることで搬送面92aに載せた複数枚の薄帯片Pを搬送方向D1に搬送しながら、吸引装置98により、薄帯片Pの打ち抜き時に弾性体シートEから打ち抜かれるシート片Epをそれぞれの薄帯片Pから吸引し除去する。このようにして、複数枚の薄帯片Pを回収する。以下、ロータリーダイカッター70及び第2実施形態に係る薄帯片の製造方法について詳細に説明する。
【0034】
ロータリーダイカッター70は、
図6並びに
図7A及び
図7Bに示すように、ダイロール72と、アンビルロール74とを備えている。ダイロール72は、ダイロール本体72Aを含んでいる。ダイロール本体72Aは、切刃72Acの断面形状が刃先近傍のみ三角形になっている点を除いて、第1実施形態に係るダイロール本体32Aと同様の構成を有している。ダイロール72は、ダイロール本体72Aの回転軸A1を中心としてダイロール本体72Aにより弾性体シートEを介して薄帯材Mを押圧しながら矢印方向に回転する。アンビルロール74は、第1実施形態に係るアンビルロール34と同様の構成を有し、同様に回転する。
【0035】
ロータリーダイカッター70では、ダイロール本体72Aの切刃72Acの基端部の幅が、アンビルロール本体34Aの溝34Agの幅以下となっている。切刃72Acの刃先と溝34Agの縁とのクリアランスが、例えば、薄帯材Mの厚さの5倍程度まで大きくなるように溝34Agの幅が設定されている。弾性体シートEの厚さt3が、切刃72Acの高さより厚くなっている。弾性体シートEが樹脂製スポンジシートからなることにより、アンビルロール弾性層34Bの硬度(ショアA)が弾性体シートEの硬度(ショアA)の3倍以上となっている。切刃72Acが溝34Agに押し込まれる深さが、例えば、薄帯材Mの厚さの5倍程度まで大きくなるように、切刃72Acの高さ及びロール本体72A、34A間のクリアランスが設定されている。
【0036】
第2実施形態に係る薄帯片の製造方法では、ロータリーダイカッター70を用い、積層シートLの薄帯材Mから薄帯片Pを繰り返し打ち抜く(打ち抜き工程)。打ち抜き工程では、
図7A及び
図7Bに示すように、積層シートLをダイロール本体72Aの外周面72As及びアンビルロール弾性層34Bの外周面34Bsの間に挟みながら、ダイロール72及びアンビルロール74を矢印に示すように互いに逆方向に回転させる。これにより、積層シートLをダイロール72及びアンビルロール74の間に通過させることで積層シートLの薄帯材Mをダイロール72及びアンビルロール74の間に通過させる。この際に、ダイロール本体72Aにより弾性体シートEを介して薄帯材Mを押圧し、かつアンビルロール弾性層34Bにより薄帯材Mを支持することで、ダイロール本体72Aの外周面72Asの切刃72Acの基端部の両側の隣接領域に配置された弾性体シートEとアンビルロール弾性層34Bとの間で薄帯材Mを挟圧しながら、ダイロール本体72Aの切刃72Acを、アンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込む。
【0037】
これにより、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mにおいて弾性体シートEとアンビルロール弾性層34Bとの間で挟圧された被挟持部Msを弾性体シートE及びアンビルロール弾性層34Bの両方の弾性力で拘束する。同じタイミングで、ダイロール本体72Aの切刃72Acを弾性体シートEの薄帯材M側の面Esから突出させることで、薄帯材Mにおいて切刃72Acが押し込まれた押圧位置Mpをダイロール本体72Aの切刃72Acで押し下げる。このようにして、薄帯材Mの押圧位置Mpに曲げによる引張応力とともに拘束による引張応力を作用させることで、薄帯材Mを押圧位置Mpで切断する。
【0038】
そして、ダイロール72及びアンビルロール74を連続して回転させることにより、このような薄帯材Mの切断を連続して起こし、薄帯材Mから薄帯片Pを繰り返し打ち抜くことで、複数枚の薄帯片Pを製造する。
【0039】
第2実施形態に係る薄帯片の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、薄帯材Mの押圧位置Mpに対し曲げによる引張応力及び拘束による引張応力を作用させることで薄帯材Mを打ち抜くことができるので、ロータリーダイカッター70の損傷を抑制できる。
【0040】
また、ダイロール本体72Aの切刃72Acの基端部の幅が、アンビルロール本体34Aの溝34Agの幅以下となっていることにより、ダイロール本体72Aの切刃72Acを薄帯材Mに押し込むタイミングに対し遅れることなく、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mの被挟持部Msを弾性体シートEの弾性力で拘束できる。よって、薄帯材Mの溝34Agへの流入を回避し、薄帯材Mの押圧位置Mpに対し拘束による引張応力を切断に十分な大きさで作用させることができる。
【0041】
また、ダイロール本体72Aの切刃72Acをアンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込むことで薄帯材Mを切断できるので、第1実施形態と同様に、ダイロール72及びアンビルロール74の位相合わせが容易となる。
【0042】
さらに、アンビルロール弾性層34Bの硬度(ショアA)が弾性体シートEの硬度(ショアA)の3倍以上となっている。このため、硬いアンビルロール弾性層34Bにより薄帯材Mを支持するとともに軟らかい弾性体シートEにより薄帯材Mを押圧することで、薄帯材Mの被挟持部Msの変形を抑制でき、薄帯材Mの被挟持部Msを強固に拘束できる。これにより、薄帯材Mを押圧位置Mpで確実に切断でき、切刃32Acの刃先の平面視形状の精度で薄帯材Mから薄帯片Pを打ち抜くことができる。
【0043】
(第2実施形態の変形例)
図8は、第2実施形態の変形例に係る薄帯片の製造方法の打ち抜き工程の要部を模式的に示す工程断面図である。
【0044】
図8に示すように、変形例に係るロータリーダイカッター70Vは、アンビルロール74を、アンビルロール本体34Aを含み、アンビルロール弾性層34Bを含まないものとした点のみにおいて、第2実施形態に係るロータリーダイカッター70と相違する。変形例に係る薄帯片の製造方法では、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法と異なり、打ち抜き工程において、ロータリーダイカッター70Vを用い、積層シートLをダイロール本体72Aの外周面72As及びアンビルロール本体34Aの外周面34Asの間に挟みながら、ダイロール72及びアンビルロール74を矢印に示すように互いに逆方向に回転させることにより、積層シートLの薄帯材Mをダイロール72及びアンビルロール74の間に通過させる。この際に、ダイロール本体72Aにより弾性体シートEを介して薄帯材Mを押圧し、かつアンビルロール本体34Aにより薄帯材Mを支持することで、アンビルロール本体34Aの外周面34Asの溝34Agの両側の隣接領域が薄帯材Mに直に接するように弾性体シートEとアンビルロール本体34Aの外周面34Asの溝34Agの両側の隣接領域との間で薄帯材Mを挟圧しながら、ダイロール本体72Aの切刃72Acを、アンビルロール本体34Aの溝34Agに隙間Sを有した状態で篏合させ薄帯材Mに押し込む。これにより、アンビルロール本体34Aの溝34Agの両側の隣接領域で、薄帯材Mにおいて弾性体シートEとアンビルロール本体34Aとの間で挟圧された被挟持部Msを弾性体シートEの弾性力で拘束する。同じタイミングで、ダイロール本体72Aの切刃72Acを弾性体シートEの薄帯材M側の面Esから突出させることで、薄帯材Mにおいて切刃72Acが押し込まれた押圧位置Mpをダイロール本体72Aの切刃72Acで押し下げる。このようにして、薄帯材Mの押圧位置Mpに曲げによる引張応力とともに拘束による引張応力を作用させることで、薄帯材Mを押圧位置Mpで切断する。これにより、薄帯片Pを打ち抜く。
【0045】
変形例に係る薄帯片の製造方法によれば、アンビルロール弾性層34Bの硬度の条件次第で得られる効果を除いて、第2実施形態に係る薄帯片の製造方法と同様の効果が得られる。
【0046】
続いて、実施形態に係る薄帯片の製造方法における各構成の詳細について説明する。
【0047】
1.ロータリーダイカッター
ロータリーダイカッターは、ダイロールとアンビルロールとを備える。上記ダイロールは、上記薄帯片の周縁に対応する形状を有する切刃が外周面に突設されたダイロール本体を含み、上記アンビルロールは、上記ダイロール本体の上記切刃が隙間を有した状態で篏合可能な溝が外周面に設けられたアンビルロール本体を含む。
【0048】
ロータリーダイカッターとしては、特に限定されないが、例えば、第1実施形態のように、上記ダイロールが、上記ダイロール本体の外周面の上記切刃の基端部の両側に設けられたダイロール弾性層をさらに含むものでもよい。この場合、後述する打ち抜き工程では、上記ダイロール弾性層をダイロール側弾性体としてもよい。また、ロータリーダイカッターとしては、例えば、第2実施形態のように、上記ダイロールがこのようなダイロール弾性層を含まないものでもよい。この場合、後述する打ち抜き工程では、後述する積層シートの弾性体シートをダイロール側弾性体としてもよい。
【0049】
ロータリーダイカッターとしては、特に限定されないが、例えば、第1及び第2実施形態のように、上記アンビルロールが、上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側に設けられたアンビルロール弾性層をさらに含むものでもよいし、第1及び第2実施形態の変形例のように、上記アンビルロールがこのようなアンビルロール弾性層を含まないものでもよい。
【0050】
ダイロールのダイロール本体は、特に限定されないが、例えば、円柱形状の金型であり、その中心軸を回転軸として回転可能に設けられたものである。このようなダイロール本体の外周面は、例えば、凹凸のない平滑な円筒面でもよいし、ダイロール弾性層を固定するための凸部や凹部が円筒面に設けられたものでもよい。ダイロール本体の構成材料は、特に限定されないが、例えば、日本工業規格JIS G 4403:2015に規定される冷間金型用の合金工具鋼鋼材(材料記号:SKD)及び高速度工具鋼(材料記号:SKH)や日立金属株式会社製の高速度工具鋼(材料記号:HAP)等が挙げられる。
【0051】
ダイロール本体の切刃について、「薄帯片の周縁に対応する形状を有する」とは、ダイロール本体の外周面を平面に展開した場合の切刃の刃先の平面視形状が薄帯片の周縁と同一であることを指す。なお、切刃は、ダイロール本体の一部でもよいし、ダイロール本体とは別の部材でもよい。切刃が別の部材である場合には、例えば、金属等の硬質材料からなる。
【0052】
ダイロールのダイロール弾性層は、上記ダイロール本体の外周面の上記切刃の基端部の両側に設けられたものであれば特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように切刃の基端部の隣接領域まで延在するものが好ましい。ダイロール弾性層としては、例えば、接着、溶着、機械的接合等によりダイロール本体の外周面に固定されて設けられたものが挙げられる。ダイロール弾性層の種類は、特に限定されないが、例えば、ウレタン、エチレン酢酸ビニル(EVA)等の発泡樹脂からなるフォームシートやスポンジシートなどが挙げられる。なお、後述する積層シートの弾性体シートの種類もダイロール弾性層の種類と同様である。
【0053】
アンビルロールのアンビルロール本体は、特に限定されないが、例えば、円柱形状の金型であり、その中心軸を回転軸として回転可能に設けられたものである。このようなアンビルロール本体の外周面は、例えば、凹凸のない平滑な円筒面でもよいし、アンビルロール弾性層を固定するための凸部や凹部が円筒面に設けられたものでもよい。アンビルロール本体の構成材料については、ダイロール本体の構成材料と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0054】
アンビルロール本体の溝について、「ダイロール本体の切刃が隙間を有した状態で篏合可能な」とは、ダイロール本体の切刃が隙間を有した状態で篏合でき、かつ打ち抜き工程で薄帯片を打ち抜くことができる形状及び寸法を有することを指す。なお、アンビルロール本体の外周面を平面に展開した場合の溝の平面視形状は、通常、薄帯片の輪郭形状と概ね等しく、ダイロール本体の外周面を平面に展開した場合の切刃の刃先の平面視形状を含むことができる形状となる。
【0055】
アンビルロールのアンビルロール弾性層は、上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側に設けられたものであれば特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように溝の両側の隣接領域まで延在するものが好ましい。アンビルロール弾性層としては、例えば、接着、溶着、機械的接合等によりアンビルロール本体の外周面に固定されて設けられたものが挙げられる。アンビルロール弾性層の種類は、特に限定されないが、例えば、ウレタン、ゴム、PET等の非発泡樹脂からなる非発泡樹脂シートなどが挙げられる。
【0056】
上記ダイロール本体の上記切刃の基端部の幅は、特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように上記アンビルロール本体の上記溝の幅以下であることが好ましい。ここで、「切刃の基端部の幅」とは、切刃のダイロール本体の外周面側の基端部の幅であって、ダイロール本体の外周面における切刃が延材する方向に垂直な方向の寸法を指す。また、「溝の幅」とは、アンビルロール本体の溝の開口部の幅であって、アンビルロール本体の外周面における溝が延材する方向に垂直な方向の寸法を指す。
【0057】
ダイロール側弾性体の厚さは、特に限定されないが、第1及び第2実施形態のようにダイロール本体の切刃の高さより厚いことが好ましい。ダイロール本体の切刃を薄帯材に押し込むタイミングで、薄帯材をダイロール側弾性体で強固に拘束できるからである。ダイロール側弾性体の厚さは、例えば、切刃の高さの4倍以下が好ましく、中でも切刃の高さの3倍以下が好ましい。切刃の高さは、例えば、0.2mm程度である。ここで、「ダイロール弾性層の厚さ」とは、ダイロール本体の径方向におけるダイロール弾性層の弾性変形していない状態での寸法を指す。「切刃の高さ」とは、ダイロール本体の径方向における切刃のダイロール本体の外周面側の基端部から刃先までの寸法を指す。
【0058】
アンビルロール弾性層の硬度は、特に限定されないが、第1及び第2実施形態のようにダイロール側弾性体の硬度より硬いことが好ましく、中でもダイロール側弾性体の硬度の3倍以上であることがより好ましい。薄帯材Mの押圧位置の押し下げに伴う薄帯材の被挟持部の変形を抑制でき、薄帯材の被挟持部をダイロール側弾性体及びアンビルロール弾性層で強固に拘束できるからである。ここで、「硬度」とは、例えば、日本工業規格JIS K 6253-3:2012又はJIS K 7312:1996に規定される方法で測定されるものをいう。すなわち、例えば、タイプAのデュロメータ硬度(ショアA)である。
【0059】
なお、「ダイロール本体の切刃の刃先とアンビルロール本体の溝の縁とのクリアランス」とは、切刃の刃先が溝の内部の最も深い位置にくる時における切刃の刃先と溝の開口部の縁との溝の幅方向の寸法を指す。「切刃が溝に押し込まれる深さ」とは、切刃の刃先が溝の内部の最も深い位置にくる時における溝の開口面から切刃の刃先までの寸法を指す。「ロール本体間のクリアランス」とは、アンビルロール本体の回転軸とダイロール本体の回転軸とに直交する直線におけるアンビルロール本体の外周面とダイロール本体の外周面との間の距離を指す。
【0060】
2.薄帯片の製造方法
薄帯片の製造方法は、上記ロータリーダイカッターを用い、薄帯材から薄帯片を打ち抜く打ち抜き工程を備える。
【0061】
(1)打ち抜き工程
上記打ち抜き工程では、上記ダイロール及び上記アンビルロールを互いに逆方向に回転させることで上記薄帯材を上記ダイロール及び上記アンビルロールの間に通過させる際に、上記ダイロール本体の外周面の上記切刃の基端部の両側に配置されたダイロール側弾性体と上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側との間で上記薄帯材を挟圧しながら、上記ダイロール本体の上記切刃を、上記アンビルロール本体の上記溝に隙間を有した状態で篏合させ上記薄帯材に押し込むことで上記薄帯材を切断することにより、上記薄帯材から上記薄帯片を打ち抜く。
【0062】
上記ダイロールが、上記ダイロール弾性層をさらに含む場合には、上記打ち抜き工程では、第1実施形態のように、上記ダイロール弾性層を上記ダイロール側弾性体としてもよい。上記打ち抜き工程では、第2実施形態のように、上記薄帯材及び上記薄帯材の上記ダイロール側の面に載せた弾性体シートを有する積層シートを上記ダイロール及び上記アンビルロールの間に通過させることで上記薄帯材を上記ダイロール及び上記アンビルロールの間に通過させ、上記弾性体シートを上記ダイロール側弾性体としてもよい。
【0063】
上記アンビルロールが、上記アンビルロール弾性層をさらに含む場合には、上記打ち抜き工程では、第1及び第2実施形態のように、上記ダイロール側弾性体と上記アンビルロール弾性層との間で上記薄帯材を挟圧してもよい。上記アンビルロールが、上記アンビルロール弾性層を含まない場合には、上記打ち抜き工程では、第1及び第2実施形態の変形例のように、上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側が上記薄帯材に直に接するように上記ダイロール側弾性体と上記アンビルロール本体の外周面の上記溝の両側との間で上記薄帯材を挟圧してもよい。
【0064】
(2)その他
薄帯材は、薄帯片の打ち抜きが可能であれば特に限定されないが、ビッカース硬度が300HV以上900HV以下の範囲内であるものが好ましく、中でもアモルファス合金薄帯等が好ましい。ロータリーダイカッターの損傷の抑制効果が顕著となるからである。なお、「ビッカース硬度」とは、例えば、JIS Z2244(2009)によるビッカース硬度試験において、試験力0.01kgf、かつ荷重保持時間10秒である場合の薄帯材のビッカース硬度を指す。
【0065】
薄帯材の厚さは、薄帯片の打ち抜きが可能であれば特に限定されず、薄帯材の種類によって異なるが、例えば、アモルファス合金薄帯である場合には、例えば、20μm以上30μm以下の範囲内である。
【0066】
薄帯片は、特に限定されないが、例えば、車載用等のモータにおけるステータコアやロータコア等を積層コアの各層をなす薄帯片、この薄帯片がさらに周方向で分割された薄帯片等が挙げられる。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて、実施形態に係る薄帯片の製造方法をさらに具体的に説明する。
【0068】
[実施例]
最初に、第1実施形態に係る薄帯片の製造方法を実機において実施した。具体的には、まず、実機のロータリーダイカッターとして、下記の構成を備えるものを用意した。そして、薄帯材として、アモルファス合金薄帯(厚さ:約20~30μm)を準備した。
【0069】
(ロータリーダイカッターの構成)
・ダイロール本体(上ロールの金型)
外径:所定値
切刃の高さh:所定値
切刃の基端部の幅W1:所定値(アンビルロール本体の溝の幅以下)
・ダイロール弾性層(上ロールの樹脂)
厚さt1:所定値
硬度(ショアA):所定値(アンビルロール弾性層の1/3以下)
・アンビルロール本体(下ロールの金型)
外径:所定値
溝の幅W2:所定値
・アンビルロール弾性層(下ロールの樹脂)
厚さt2:所定値
硬度(ショアA):所定値(ダイロール弾性層の硬度(ショアA)の3倍以上)
・ロータリーダイカッター
ダイロール本体の切刃の刃先とアンビルロール本体の溝の縁とのクリアランス:薄帯材の厚さの5倍になるように設定
ロール本体間のクリアランスd:ダイロール本体の切刃がアンビルロール本体の溝に押し込まれる深さが、薄帯材の厚さの5倍になるように設定
【0070】
次に、実機のロータリーダイカッターを用い、所定の打ち抜き条件で、アモルファス合金薄帯から薄帯片を繰り返し打ち抜く試験を行った(打ち抜き工程)。この結果、アモルファス合金薄帯から薄帯片を繰り返し打ち抜くことができ、複数枚の薄帯片を製造できた。
【0071】
以上、本発明に係る実施形態について詳述したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。