(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000329
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ポリマー成形品、電子機器、電子機器の通信速度向上方法、電子機器の作動速度向上方法、電子機器部品及びポリマー成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221222BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221222BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221222BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20221222BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221222BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/04
C08K3/04
C08K3/08
C08K3/22
C08J5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101079
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】521266826
【氏名又は名称】JHJC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 茂明
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA02
4F071AA03
4F071AA10
4F071AB02
4F071AB03
4F071AB18
4F071AD02
4F071AD06
4F071AH12
4F071AH16
4F071BB04
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC03
4J002AA011
4J002AA021
4J002AC001
4J002DA017
4J002DA027
4J002DA116
4J002DE238
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品及び電子機器部品を提供する。
【解決手段】ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有することを特徴とするポリマー成形品及び電子機器部品である。このとき、シリコン微粒子が純度90%以上のケイ素からなるテラヘルツ鉱石の粉末であり、ナノカーボン粉末がカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンを含む群から選択される少なくとも1種以上であり、カルシウム粉末がホタテ貝の貝殻又は卵殻に由来する水酸化カルシウムであるとよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料と、
シリコン微粒子と、
ナノカーボン粉末と、
カルシウム粉末と、
を含有することを特徴とするポリマー成形品。
【請求項2】
前記ポリマー材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴムを含む群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項3】
前記シリコン微粒子は、純度90%以上のケイ素からなるテラヘルツ鉱石の粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー成形品。
【請求項4】
前記ナノカーボン粉末は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンを含む群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリマー成形品。
【請求項5】
前記カルシウム粉末は、ホタテ貝の貝殻又は卵殻に由来する水酸化カルシウムを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリマー成形品。
【請求項6】
シート形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー成形品。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー成形品を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー成形品を電子機器に適用することを特徴とする電子機器の通信速度向上方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー成形品を電子機器に適用することを特徴とする電子機器の作動速度向上方法。
【請求項10】
ポリマー材料と、
シリコン微粒子と、
ナノカーボン粉末と、
カルシウム粉末と、
を含有することを特徴とする電子機器部品。
【請求項11】
請求項10に記載の電子機器部品を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有する混合物を得る混合工程と、
前記混合物を成形する成形工程と、
を行うことを特徴とするポリマー成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー成形品、電子機器、電子機器の通信速度向上方法、電子機器の作動速度向上方法、電子機器部品及びポリマー成形品の製造方法に係り、特に、シリコン微粒子を利用したポリマー成形品、電子機器、電子機器の通信速度向上方法、電子機器の作動速度向上方法、電子機器部品及びポリマー成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の発展とともに、通信システムは第5世代移動通信システム(5G)や更なる次世代の高速通信へと進歩している。また、パーソナルコンピュータやスマートフォンに代表される無線通信機器などの電子機器においてもCPUの高速化、高性能化が進んでいる。
【0003】
電子機器の動作周波数及び電子機器で利用される伝送周波数が高周波側にシフトするにつれて、電磁波の干渉を防ぐ目的でノイズを吸収するノイズ吸収体の開発が行われてきた。例えば、特許文献1には、布帛の少なくとも一方の面に、金属が金属加工されたノイズ吸収布帛が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、ノイズの吸収を目的としており、電子機器の作動速度や通信速度そのものを向上させる技術が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品、電子機器部品及びポリマー成形品の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品及び電子機器部品を利用した電子機器、電子機器の通信速度向上方法及び電子機器の作動速度向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明に係るポリマー成形品によれば、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有すること、により解決される。
【0009】
上記のように構成された本発明のポリマー成形品では、ポリマー材料に、シリコン微粒子、ナノカーボン粉末及びカルシウム粉末を組み合わせることで、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
【0010】
また、上記の構成において、前記ポリマー材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴムを含む群から選択される少なくとも1種以上を含有するとよい。
また、上記の構成において、前記シリコン微粒子は、純度90%以上のケイ素からなるテラヘルツ鉱石の粉末であるとよい。
また、上記の構成において、前記ナノカーボン粉末は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンを含む群から選択される少なくとも1種以上を含有するとよい。
また、上記の構成において、前記カルシウム粉末は、ホタテ貝の貝殻又は卵殻に由来する水酸化カルシウムを含有するとよい。
また、上記の構成において、シート形状であるとよい。
【0011】
また、前記課題は、本発明に係る電子機器によれば、上記のポリマー成形品を備えることにより解決される。
上記の構成では、通信速度や作動速度を向上させた無線通信機器などの電子機器を提供することが可能である。
【0012】
また、前記課題は、本発明に係る電子機器の通信速度向上方法によれば、上記のポリマー成形品を電子機器に適用することにより解決される。
上記の構成では、無線通信機器などの電子機器の通信速度を向上させることが可能である。
【0013】
また、前記課題は、本発明に係る電子機器の作動速度向上方法によれば、上記のポリマー成形品を電子機器に適用することにより解決される。
上記の構成では、無線通信機器などの電子機器の作動速度を向上させることが可能である。
【0014】
また、前記課題は、本発明に係る電子機器部品によれば、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有することにより解決される。
また、前記課題は、本発明にかかる電子機器によれば、上記の電子機器部品を備えることにより解決される。
上記のように構成された本発明の電子機器部品及び電子機器では、ポリマー材料に、シリコン微粒子、ナノカーボン粉末及びカルシウム粉末を組み合わせることで、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
【0015】
また、前記課題は、本発明に係るポリマー成形品の製造方法によれば、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有する混合物を得る混合工程と、前記混合物を成形する成形工程と、を行うことにより解決される。
本発明のポリマー成形品の製造方法では、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリマー成形品、電子機器及び電子機器部品では、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
また、本発明に係る電子機器の通信速度向上方法及び電子機器の作動速度向上方法によれば、無線通信機器などの電子機器の通信速度及び作動速度を向上させることが可能である。
また、本発明に係るポリマー成形品の製造方法によれば、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る電子機器の一例としての無線通信機器を示す模式図である。
【
図2】本発明に係るシート状のポリマー成形品を無線通信機器に適用した状態を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明に係る電子機器部品を適用した無線通信機器を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明に係るポリマー成形品の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る、ポリマー成形品、電子機器、電子機器の通信速度向上方法、電子機器の作動速度向上方法、電子機器部品及びポリマー成形品の製造方法に関する実施形態(以下、「本実施形態」)について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る電子機器の一例としての無線通信機器を示す模式図であり、
図2は、本発明に係るシート状のポリマー成形品を無線通信機器に適用した状態を示す模式的断面図であり、
図3は、本発明に係る電子機器部品を適用した無線通信機器を示す模式的断面図であり、
図4は、本発明に係るポリマー成形品の製造方法を示すフロー図である。
【0020】
<ポリマー成形品>
本実施形態に係るポリマー成形品は、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有するポリマー成形品である。以下、各成分について、説明をする。
【0021】
(ポリマー材料)
本実施形態に係るポリマー成形品が含有するポリマー材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴムを含む群から選択される少なくとも1種以上である。なお、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴムは、それぞれを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0022】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂とは、加熱により軟化する樹脂である。熱可塑性樹脂の例としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体、シクロオレフィン系(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(耐熱PS)、スチレン-ブタジエン共重合体(HIPS)などのスチレン系樹脂ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性PPE)、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。なお、これらの熱可塑性樹脂は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂とは、加熱により硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂の例としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂および不飽和ポリエステル樹脂フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ジリアフタレート樹脂などが挙げられる。なお、これらの熱硬化性樹脂は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0024】
ポリマー材料として、生分解性樹脂を用いることも可能である。生分解性樹脂の例としては、特に限定されるものではないが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等のポリヒドロキシアルカン酸;ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)(PCLBS)、ポリ(ブチレンスクシネート/アジペート)(PBSA)、ポリ(ブチレンスクシネート/カーボネート)(PEC)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)(PETS)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PTMAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリ(エチレンサクシネート/アジペート)、(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシエート系)ブロックコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、変性でんぷん、酢酸セルロース、キチン、キトサン、リグニンなどが挙げられる。なお、これらの生分解性樹脂は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
(ゴム)
ゴムの例としては、特に限定されるものではないが、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、エチレン-ブテン-1共重合ゴム、エチレン-ヘキセン共重合ゴム、エチレン-オクテン共重合ゴム、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、部分水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合ゴム、部分水添スチレン-イソプレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンゴム、スチレングラフト-エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-グラフト-エチレン-プロピレン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル-グラフト-エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル-グラフト-エチレン-プロピレン共重合ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコンゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴムなどが挙げられる。なお、これらのゴムは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
(シリコン微粒子)
本実施形態に係るポリマー成形品が含有するシリコン微粒子は、純度90%以上のケイ素からなるテラヘルツ鉱石の粉末であることが好ましい。テラヘルツ鉱石とは、純度の高いケイ素(Si)である単結晶シリコンからなり、光波と電波の中間の領域に位置し、周波数が1THz(テラヘルツ)前後、具体的には、周波数が0.3~10THz(波長に換算して1000~30μm)の電磁波であるテラヘルツ波を放出する人工鉱石である。
【0027】
テラヘルツ鉱石の粉体は、単結晶シリコンのインゴット又は単結晶シリコンウエハを粉砕して粒状化することによって得られる。単結晶シリコンのインゴットは、例えば、高純度の多結晶シリコンを溶融させた後、従来公知の単結晶育成法を用いて製造することができる。また、単結晶シリコンウエハは、単結晶シリコンのインゴットをダイヤモンドブレードなどによってスライスすることによって得ることができる。
【0028】
このようにして得られた単結晶シリコンのインゴット又はウエハを粒状化することで、テラヘルツ鉱石の粉体が製造される。例えば、ジェットミルを用いて単結晶シリコンのインゴット又はウエハを粉砕することで、微細なテラヘルツ鉱石の粉体を得ることができる。ポリマー成形品に用いられるテラヘルツ鉱石の粉体の粒径は特に限定はされないが、ポリマー材料に均一に粒子を分散させるために、例えば、100nmから1.5μmの範囲内であることが好ましく、平均粒径0.1~500μm、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.5~40μm、最も好ましくは0.5~10μmの微粉末とする。また、テラヘルツ鉱石の粉体の粒径は、比較的均一であることが好ましい。粒径をより細かくすることにより、ポリマー材料に分散させる際、均一に分散させることができる。
【0029】
また、テラヘルツ鉱石から放射されるテラヘルツ波による分子を分解する力は、身体の中を流れる血流に作用する。テラヘルツ波は遠赤外線より波長が長く、身体の深部へ浸透していくため、より効果的に血流に作用する。
【0030】
(ナノカーボン粉末)
本実施形態に係るポリマー成形品は、ナノカーボン粉末を含有する。ここで、ナノカーボンとは、ナノサイズの炭素材料であり、例えば、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレン等を挙げることができる。
【0031】
本実施形態に係るポリマー成形品が含有するナノカーボン粉末は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンを含む群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。なお、ナノカーボンとして使用可能なカーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)であっても、二層以上のマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよい。
【0032】
(カルシウム粉末)
本実施形態に係るポリマー成形品は、カルシウム粉末を含有する。本実施形態に係るポリマー成形品が含有するカルシウム粉末は、貝殻又は卵殻を高温焼成して得られる水酸化カルシウムであることが好ましい。水酸化カルシウムは、当業者に既知の方法により、例えば炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムとした後、水和させることにより得られる。
【0033】
水酸化カルシウムとして、貝殻のなかでも特にホタテ貝(Scallop)の貝殻に由来するものを用いると好適である。ホタテ貝の貝殻を、特殊高温焼成分解炉にて焼成し、焼成工程で水分を加えることにより、強アルカリ性(pH12.8~13.2)で抗菌力のある貝殻焼成カルシウム(水酸化カルシウム)となる。
炭酸カルシウム源としては、動物性由来のカルシウムを使用することができ、例えばホタテ貝殻、アワビ貝殻、サザエ貝殻、ホッキ貝殻、ウニ貝殻の天然か養殖の貝類又は珊瑚殻等を原料に使用することができる。これらのうち、貝殻組成が均一である点及び供給量が多いなどの点から、ホタテ貝殻を使用することが好ましい。
【0034】
これらの貝殻は、粉砕して貝殻粉末(或いは粒状物)とし、800℃~1500℃で、より好ましくは850℃~1200℃で、例えば炭酸ガスを導入しながら焼成する。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。焼成時間は焼成温度等によって適宜設定されるが、通常、雰囲気温度が所定の焼成温度に到達した後、10~120分、好ましくは15~90分である。こうした焼成処理により、不要な有機物を熱分解によって除去する。
【0035】
焼成後、水和させて水酸化カルシウム主体の粉末を得る。焼成又は水和の過程で、必要に応じてさらに粉砕を行い、最終的には平均粒径0.1~500μm、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.5~40μm、最も好ましくは0.5~10μmの微粉末とする。粒径をより細かくすることにより、ポリマー材料に分散させる際、均一に分散させることができる。
【0036】
卵殻を用いた場合の水酸化カルシウム粉末の製造プロセスも、上記に示した貝殻を主原料として用いた場合の製造プロセスとほぼ同様である。但し、卵殻の場合は前述の貝殻の場合と異なり、殻の厚みが非常に薄く質量も小さいため、焼成温度を低く設定し、また焼成時間も短く設定する。本実施例において主原料として卵殻を用いた場合は、焼成温度を摂氏900度程度にし、焼成時間は5~10分間程度(好適には6分間程度)とすることが望ましい。
【0037】
また、卵殻の場合は貝殻と異なり原材料に含まれる不純物が少ないため、前述の貝殻の場合に比較して、ほぼ純粋な水酸化カルシウムを得ることが可能となる。なお、焼成後における微粉砕工程や、粉砕粒径などの各種のパラメータに関しては、前述した貝殻の場合の製造プロセスと同様である。
【0038】
(配合量)
本実施形態に係るポリマー成形品におけるシリコン微粒子、ナノカーボン粉末及びカルシウム粉末の配合量は、特に限定されるものではないが、例えばポリマー成形品の総質量に基いて1質量%乃至80質量%、好ましくは10質量%乃至70質量%、より好ましくは30質量%乃至65質量%、特に好ましくは40質量%乃至60質量%配合すればよい。
【0039】
(その他成分)
本実施形態に係るポリマー成形品は、所望により、従来のポリマー材料の成形製品に慣用されている添加剤、例えば可塑剤、安定剤、酸化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料、染料など)、つや消し剤、劣化防止剤、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤、粘度調整剤、抗菌剤等の補助成分を添加することもできる。これらは、ポリマー材料をシリコン微粒子、ナノカーボン粉末、カルシウム粉末と混合した後に添加することができる。また、シリコン微粒子、ナノカーボン粉末、カルシウム粉末とポリマー材料との混合時に、これら補助成分を添加してもよい。
【0040】
<電子機器、電子機器部品>
本実施形態に係るポリマー成形品は、電子機器部品として電子機器に適用することが可能である。このとき、ポリマー成形品をシート形状に成形して電子機器に貼り付けるなどして適用することも可能であるし、ポリマー成形品を電子機器の筐体(電化製品、OA機器等のハウジング)として利用することも可能である。ここで、シート形状とは、所定の厚みを有するシートやフィルムを含むものである。
【0041】
つまり、本実施形態に係る電子機器部品は、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有する。そして、本実施形態に係る電子機器は、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有する電子機器部品を備えることを特徴とするものである。
【0042】
本実施形態に係る電子機器は、特に限定されるものではないが、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話端末、デスクトップ又はノートブックタイプのパーソナルコンピュータ、車載機器、ゲーム機器、デジタルカメラ、スマートウォッチ、メディアプレイヤ、電子書籍リーダ、プリンター、複写機、その他のOA機器、電化製品等を挙げることができる。
【0043】
図1に、無線通信機器などの電子機器の例としてスマートフォン10を示す。スマートフォン10には、ケース30が装着されている。
図2に模式的に示すように、本実施形態に係るポリマー成形品としてのシート部材20をスマートフォン10とケース30の間に配置するとよい。なお、
図3に模式的に示すように、スマートフォン10の裏面11に、本実施形態に係るポリマー成形品としてのシート部材20を、粘着剤を介して又は粘着性のポリマー材料でポリマー成形品を形成することで貼り付けるようにしてもよい。さらに、本実施形態に係るポリマー成形品をケース30の形態とすることも可能である。
【0044】
また、本実施形態に係るポリマー成形品をスマートフォン10などの電子機器の筐体(ハウジング)として利用することも可能である。つまり、本実施形態に係るポリマー成形品を電子機器部品として利用することが可能である。
【0045】
以上のような本実施形態に係るポリマー成形品、電子機器及び電子機器部品は、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
【0046】
<ポリマー成形品の製造方法>
本実施形態に係るポリマー成形品の製造方法は、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を含有する混合物を得る混合工程(ステップS1)と、前記混合物を成形する成形工程(ステップS2)と、を行うことを特徴とするポリマー成形品の製造方法である。
【0047】
混合工程(ステップS1)では、ポリマー材料と、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を混合して含有する混合物を得る。このとき、従来の樹脂混練物を製造する方法、すなわち、溶融樹脂に各種材料を配合する方法で混合物を得ても良いが、従来技術とは異なり、まずシリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末とを、粉末状態にて混合すると好適である。つまり、混合工程(ステップS1)では、シリコン微粒子と、ナノカーボン粉末と、カルシウム粉末と、を混合して粉末混合物を得る工程(ステップS11)と、前記粉末混合物と、ポリマー材料と、を混合して混合物を得る工程(ステップS12)と、を行うと好適である。粉末混合物として均一に混合した後、粉末混合物とポリマー材料を混練し、粉末混合物とポリマー材料が均一に混合したポリマー組成物を得る。
【0048】
混合工程(ステップS1)における混合は、当業者に既知の装置、例えばタンブラー、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミルを用いて実施することが可能である。粉末状態で十分に均一となるように混合した後、必要に応じて溶融させて、混練してポリマー組成物(樹脂組成物)とする。
【0049】
成形工程(ステップS2)では、混合工程で得られた混合物(ポリマー組成物)を成形する。成形工程における成型方法は、特に限定されるものではないが、射出成形、押出成形、ブロー成形等を用いることができ、所望の形状に成形されてポリマー成形品が製造される。成形工程においてカレンダー法やキャスティング法などにより、混合物(ポリマー組成物)をフィルム状又はシート状に成形してもよいし、製品の用途によっては発泡させたポリマー成形品としてもよい。
【0050】
<電子機器の通信速度向上方法、電子機器の作動速度向上方法>
本実施形態に係る電子機器の通信速度向上方法及び電子機器の作動速度向上方法は、上述した本実施形態に係るポリマー成形品を無線通信機器などの電子機器に適用することを特徴とする方法である。電子機器としては、上述したスマートフォン、タブレット端末、携帯電話端末、デスクトップ又はノートブックタイプのパーソナルコンピュータ等の電化製品等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0051】
なお、ポリマー成形品を無線通信機器などの電子機器に適用するとは、ポリマー成形品を電子機器部品として電子機器に組み込むことのみならず、ポリマー成形品を電子機器の筐体として用いることや、ポリマー成形品を電子機器の内部や外部に貼り付けるなどして組み合わせることも含む概念である。
【0052】
本実施形態に係る電子機器の通信速度向上方法及び電子機器の作動速度向上方法によれば、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
【0053】
<実施例>
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
テラヘルツ鉱石の粉末、カーボンナノチューブ、ホタテ貝の貝殻に由来する水酸化カルシウムを含有するカルシウム粉末(WM株式会社製、製品名:スカロープレミアム)を混合して粉末組成物を調製した。得られた粉末組成物(50重量%)を各種ポリマー材料(50重量%)と混合した混合物を様々な形態のポリマー成形品として製造した。
【0055】
ポリマー成形品を、スマートフォンやパーソナルコンピュータの躯体ケース(筐体)としたり、シート部材20としてスマートフォン10の裏面11に貼り付けたり、シート部材20をスマートフォン10とケース30の間に挟み込むことで通信速度(又は通信電波の伝播速度)が向上した。例えば、ポリマー成形品であるシート部材20をスマートフォン10とケース30の間に挟み込んだ状態で、電波状況を測ると7dB(デシベル)の差があり、これは約4倍の電力量(電力パワー)を示し、通信速度が高速化していた。また、通信速度だけではなく、作動速度も同様に向上して高速化していた。
【0056】
(まとめ)
以上のように本実施形態に係るポリマー成形品、電子機器及び電子機器部品では、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能である。
また、本実施形態に係る電子機器の通信速度向上方法及び電子機器の作動速度向上方法によれば、無線通信機器などの電子機器の通信速度及び作動速度を向上させることが可能である。
また、本実施形態に係るポリマー成形品の製造方法によれば、無線通信機器などの電子機器の通信速度や作動速度を向上させることが可能なポリマー成形品を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
10 スマートフォン(無線通信機器、電子機器)
11 裏面
20 シート部材(ポリマー成形品)
30 ケース