(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032903
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20230302BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230302BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20230302BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/00 302
G09F9/00 342
G06F3/041 660
H05K7/12 M
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139268
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 淳朗
【テーマコード(参考)】
2H189
4E353
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA53
2H189AA55
2H189AA58
2H189AA62
2H189AA64
2H189AA70
2H189AA71
2H189LA25
2H189MA08
2H189MA15
4E353AA30
4E353BB03
4E353CC22
4E353CC32
4E353DD01
4E353GG40
5G435AA09
5G435BB12
5G435BB13
5G435EE02
5G435EE05
5G435EE09
5G435FF08
5G435GG13
5G435GG43
5G435HH18
5G435LL07
5G435LL17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粘着テープに無駄が生じることなく、枠部材に前面パネルの縁部を確実に接合できる表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】枠部材11の接合面に、テープ接合領域14xとテープ接合領域14yとの間に位置する塗布領域15が設けられ、テープ接合領域14xと塗布領域15との境界に堤部16xが、テープ接合領域14yと塗布領域15との境界に堤部16yが設けられている。テープ接合領域14x,14yに粘着テープ21x、21yが貼られ、塗布領域15に粘着剤25が塗布されて、枠部材11に前面パネル2が接合される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、が形成され、
前記テープ接合領域に貼られた粘着テープと、前記塗布領域に塗布された粘着剤または接着剤と、を介して、前記縁部の背面と前記接合面とが固定されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記前面パネルが角部を有しており、前記接合面の前記角部が接合される領域に前記塗布領域が設けられている請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記テープ接合領域の表面から前記堤部の頂部までの高さ寸法よりも、前記堤部の頂部からの前記塗布領域の深さ寸法の方が大きい請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記塗布領域を前記枠部材の内方側から仕切る内側堤部が設けられ、前記境界に位置する前記堤部と前記内側堤部とが同じ高さで連続して形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記堤部が、前記枠部材の材料とは異なる弾性材料で形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置の製造方法において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、を形成し、
前記テープ接合領域に粘着テープを貼り、前記塗布領域に半硬化後または硬化後に粘着性を呈する液状の粘着剤を供給し、前記粘着テープと半硬化後または硬化後の粘着剤を介して、前記縁部の背面と前記接合面とを接合することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置の製造方法において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、を形成し、
前記テープ接合領域に粘着テープを貼り、前記塗布領域に液状の接着剤を供給し、前記粘着テープを介して、前記縁部の背面と前記接合面とを接合した後に、前記接着剤を硬化させることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記堤部を、前記枠部材の材料とは異なる弾性材料で形成する請求項6または7記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性の前面パネルの縁部の背面が、粘着テープを介して枠部材に接合されている表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に表示装置に関する発明が記載されている。この表示装置は、表示素子を収容するフレームの前方に、タッチパネルを備えた保護部材が接着部材を介して貼り合わせられている。接着部材として両面テープが使用されている。段落〔0019〕には、フレームの矩形状の開口部に合わせて両面テープを枠状にすると材料費の点で好ましくない、と記載されており、そのために、両面テープを矩形状とし、開口部の各辺に対応させて設置している。ただし矩形状の両面テープを矩形状の開口部の各辺に配置すると、開口部の角部に両面テープが存在しない隙間が形成される。そこで、前記角部に、両面テープの隙間を埋める樹脂が設けられている。樹脂は光硬化性樹脂であり、紫外線で硬化させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された表示装置は、矩形状の開口部の角部に、両面テープの隙間を埋める樹脂を設けることで、両面テープが間欠している部分での密閉性の低下を補完できるようにしている。しかし、樹脂は光硬化性樹脂であり硬化前は液体状であるため、塗布直後に両面テープの表面などに流れ出やすい。この状態で樹脂が硬化すると両面テープの表面の粘着力が低下させられ、保護部材を十分に粘着接合することができなくなる。また、光硬化性樹脂の供給量を、両面テープの表面に流れ出ないように少なくすると、開口部の角部において、タッチパネルと樹脂との間に隙間が形成されて密閉性が低下しやすくなる。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、粘着テープ間の隙間を粘着剤または接着剤で確実に埋めることができ、しかも粘着剤や接着剤が粘着テープの粘着表面に流れ出るのを抑制しやすい構造の表示装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、が形成され、
前記テープ接合領域に貼られた粘着テープと、前記塗布領域に塗布された粘着剤または接着剤と、を介して、前記縁部の背面と前記接合面とが固定されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の表示装置は、前記前面パネルが角部を有しており、前記接合面の前記角部が接合される領域に前記塗布領域が設けられているものとして構成できる。
【0008】
本発明の表示装置は、前記テープ接合領域の表面から前記堤部の頂部までの高さ寸法よりも、前記堤部の頂部からの前記塗布領域の深さ寸法の方が大きいことが好ましい。
【0009】
本発明の表示装置は、前記塗布領域を前記枠部材の内方側から仕切る内側堤部が設けられ、前記境界に位置する前記堤部と前記内側堤部とが同じ高さで連続して形成されているものが好ましい。
【0010】
次に本発明は、表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置の製造方法において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、を形成し、
前記テープ接合領域に粘着テープを貼り、前記塗布領域に半硬化後または硬化後に粘着性を呈する液状の粘着剤を供給し、前記粘着テープと半硬化後または硬化後の粘着剤を介して、前記縁部の背面と前記接合面とを接合することを特徴とするものである。
【0011】
あるいは本発明は、表示デバイスと、前記表示デバイスの前方を覆う透光性の前面パネルと、前記前面パネルの縁部の背面と平行な接合面が形成された枠部材と、を有する表示装置の製造方法において、
前記接合面に、テープ接合領域と、隣り合う前記テープ接合領域の間に位置する塗布領域と、前記テープ接合領域と前記塗布領域の境界に位置して前記テープ接合領域から隆起する堤部と、を形成し、
前記テープ接合領域に粘着テープを貼り、前記塗布領域に液状の接着剤を供給し、前記粘着テープを介して、前記縁部の背面と前記接合面とを接合した後に、前記接着剤を硬化させることを特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明の表示装置およびその製造方法では、前記堤部が、前記枠部材の材料とは異なる弾性材料で形成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、枠部材の接合面で、テープ接合領域と塗布領域の境界に堤部を設けているため、接合領域に塗布された液状の粘着剤や接着剤が粘着テープの粘着面に付着しにくくなる。しかも、隣り合う粘着テープの隙間を粘着剤や接着剤で埋めることができるため、枠部材の接合面と前面カバーとの間の密閉性を高めることができる。さらに粘着テープを枠形状に切断して使用する必要がないため、粘着テープの無駄を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の表示装置を示す斜視図、
【
図3】
図1に示した表示装置をIII-III線で切断した部分断面図、
【
図4】
図1に示した表示装置の製造方法を示すものであり、
図2に示した分解斜視図のIV部分を拡大した拡大部分斜視図、
【
図5】(A),(B)は、
図1に示した表示装置の製造方法を示すものであり、
図4をV-V線で切断し切断面を平面に展開して示す部分断面図、
【
図6】(A),(B)は、
図1に示した表示装置の製造方法の効果を説明するものであり、
図5と同様に展開した部分断面図、
【
図7】本発明の第2実施形態の表示装置を示すものであり、
図5と同様に展開した部分断面図、
【
図8】本発明の第3実施形態の表示装置を示すものであり、
図5と同様に展開した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に本発明の第1実施形態の表示装置1が示されている。表示装置1は、車載用であり、
図1に示される姿勢で車室内のインストルメントパネルやダッシュボードに設置される。
図1に示される使用状態では、Z1方向が表示方向の前方であり、Z2方向が後方である。
図2以下は、表示装置1の組立工程を示しているため、Z1方向が上方でZ2方向が下方(重力方向)である。表示装置1は長方形であり、X方向が横方向でY方向が縦方向である。なお、表示装置1の用途は車載用に限られず、家庭用、事務用などの各種機器に付随するものであってもよいし、モバイル端末として使用されるものであってもよい。
【0016】
表示装置1はケース10を有している。
図2と
図3に示されるように、ケース10は、枠部材11と底部材12とが一体に形成されている。枠部材11は、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)の4辺を囲む形状である。底部材12は、枠部材11で囲まれる空間を後方(Z2)で塞いでいる。ケース10には、枠部材11で囲まれ、底部材12で後方が塞がれ、さらに前方(Z1方向)で解放された収納空間18が形成されている。ケース10は合成樹脂材料で形成されまたは金属材料で形成されている。なお、枠部材11と底部材12とが別体に形成されて、ねじ結合などで互いに固定されていてもよい。あるいは枠部材11が底部材12を有することなく独立して形成されており、4辺を囲む形状の枠部材11が、金属製の筐体に固定され、またはインストルメントパネルなどに固定されてもよい。
【0017】
図2に示されるように、枠部材11のZ1方向に向く表面11aに、矩形状の開口部13が形成されている。枠部材11の開口部13の内部では、表面11aから後方(Z2方向)に一段下がった位置に接合面14が形成されている。接合面14は開口部13の内辺に沿う枠形状である。枠部材11の開口部13の内部に前面パネル2が設置される。前面パネル2は、ガラス板またはポリカーボネート板などの透光性の板材で形成されている。前面パネル2は、Y方向に沿う長辺2yとX方向に沿う短辺2x、および長辺2yと短辺2xとが交差する4か所の角部2cを有する矩形状(長方形状)である。前面パネル2は長辺2yと短辺2xおよび角部2cに沿う縁部2aを有しており、
図3に示されるように各辺2x,2yおよび各角部2cの縁部2aが枠部材11の接合面14に接合されている。縁部2aは、前面パネル2の長辺2yと短辺2xおよび角部2cにおいて、接合面14と重ねられる領域を意味している。
【0018】
前面パネル2の後方(Z2方向)に向く背面は検知面3である。検知面3には、透光性のタッチパネルが設けられている。タッチパネルは静電容量の変化を検知するものであり、透光性の樹脂フィルムにITOなどで形成された複数の透光性の電極部が形成されている。操作者の指または手が前面パネル3に前方から接近しまたは接触すると、複数の電極部間の相互容量が変化し、または個々の電極部の自己容量が変化する。この容量変化により、制御回路において、前面パネル2の前面のどの箇所に指または手が接近しまたは接触したかを判別することができる。タッチパネルは前面パネル2の背面の全域に貼られて、縁部2aにもタッチパネルが重ねられており、縁部2aに位置するタッチパネルの一部が、枠部材11の接合面14に接合されている。あるいは、タッチパネルが縁部2aを除く領域に設けられ、前面パネル2は縁部2aを除く領域が検知面3になっていてもよい。この場合、前面パネル2の縁部2aは、タッチパネルの一部を介在させることなく、直接に接合面14に接合される。
【0019】
図3に示されるように、前面パネル2の検知面3の後方に表示デバイス5が設けられている。表示デバイス5は透過型のカラー液晶表示デバイスである。表示デバイス5は、前面パネル2の検知面3に接着されている。表示デバイス5の後方にバックライトユニット6が配置されている。表示デバイス5とバックライトユニット6は、ケース10の収納空間18内に収められている。なお表示デバイス5がエレクトロクロミック表示デバイスなどであってもよい。
【0020】
前面パネル2の縁部2aは、粘着テープ21x,21yと粘着剤25とによって、枠部材11の接合面14に接合される。
図2と
図4に示されるように、枠部材11の開口部13に沿って形成された接合面14には、Y方向に沿うテープ接合領域14yとX方向に沿うテープ接合領域14xとが形成されている。また、接合面14には、矩形状の開口部13の角部に対応する領域に塗布領域15が形成されている。塗布領域15は、隣り合うテープ接合領域14yとテープ接合領域14xとの間欠部に形成されている。
【0021】
図4に、開口部13の角部における接合面14の構造が拡大して示されている。テープ接合領域14yは、Y方向が長手方向となる長尺の長方形状であり、X方向の幅寸法はW1である。テープ接合領域14xは、X方向が長手方向となる長尺の長方形状であり、Y方向の幅寸法はW1である。テープ接合領域14yの幅寸法W1とテープ接合領域14xの幅寸法W1は互いに同じ値であり、W1は1.0mmから3.0mm程度である。テープ接合領域14yとテープ接合領域14xの表面は、前面パネル2の縁部2a背面と平行な平面、すなわちX-Y平面と平行な平面である。塗布領域15は、接合面14の角部に位置しており、その表面(底面)も、前面パネル2の縁部2a背面と平行な平面、すなわちX-Y平面と平行な平面である。
【0022】
図5には、
図4に示される接合面14の角部をV-V線で切断し、その切断面を平面に展開して示す部分断面図が示されている。
図4と
図5に示されるように、接合面14では、テープ接合領域14yと塗布領域15との境界に堤部16yが前方(Z1方向)へ隆起して形成されており、テープ接合領域14xと塗布領域15との境界に堤部16xが前方に隆起して形成されている。堤部16yのX方向の長さ寸法は、テープ接合領域14yの幅寸法W1と同じであり、堤部16xのY方向の長さ寸法は、テープ接合領域14xと同じ幅寸法W1である。
図4に示されるように、接合面14に、塗布領域15を枠部材11の内方側から仕切る内側堤部16iが形成されている。内側堤部16iは、堤部16x,16yと前方(Z1方向)へ向けて同じ高さ寸法で隆起し、堤部16x,16yと連続して形成されている。塗布領域15は、堤部16x,16yと内側堤部16i、および枠部材11の表面11aと接合面14との段差を形成している段差壁部17とで、その周囲の全長が囲まれている。
【0023】
図4に示されるように、接合面14のテープ接合領域14yに粘着テープ21yが貼られ、テープ接合領域14xに粘着テープ21xが貼られる。粘着テープ21x,21yは、基材テープのZ1側とZ2側の表面に粘着剤層が形成された両面粘着テープである。粘着テープ21x、21yの幅寸法W2は、テープ接合領域14x,14yの幅寸法W1と同じである。
図5(A)に示される粘着テープ21x、21yの厚さ寸法Tは、0.2mmから1.2mm程度である。
図5(A)に示されるように、テープ接合領域14x,14yの表面から堤部16x,16yまでの高さ寸法hは、粘着テープ21x,21yの厚さ寸法Tとほぼ同じであることが好ましい。あるいは、高さ寸法hを、粘着テープ21x,21yの厚さ寸法Tよりも0.1mmから0.3mm程度高くしてもよい。高さ寸法hを厚さ寸法Tよりもわずかに高くすることで、粘着テープ21x、21yで貼られた前面パネル2の後方に向く背面が堤部16x,16yの頂部に密着しやすくなる。
【0024】
図5(A)に示されるように、堤部16x,16yの頂部から塗布領域15の表面(底面)までの深さ寸法Hは、テープ接合領域14x,14yの表面から堤部16x,16yの頂部までの高さ寸法hよりも大きい。例えば、深さ寸法Hは高さ寸法hの3倍以上であり、深さ寸法Hは、1.5mmから5mm程度である。堤部16xのX方向での幅寸法および堤部16yのY方向での幅寸法Bは、共に0.3mmから2.0mm程度である。
【0025】
次に、第1実施形態の表示装置1の製造方法、すなわち前面パネル2の枠部材11への接合方法を説明する。
図4に示されるように、枠部材11の開口部13の内側に段差を介して形成されている接合面14のテープ接合領域14xに粘着テープ21xを貼り、テープ接合領域14yに粘着テープ21yを貼る。
図5(A)に示されるように、粘着テープ21x,21yの端部は、堤部16x,16yの頂部に乗り上がらないように、また粘着テープ21x,21yの端部と堤部16x,16yの側面との間になるべく隙間が形成されないように、粘着テープ21x,21yを貼ることが好ましい。
【0026】
図4に示されるように、接合面14の4か所の角部に位置する塗布領域15に、ディスペンサ26を使用して、液状の粘着剤25を供給する。液状の粘着剤25は、半硬化または硬化状態で粘性と弾性を発揮するものが使用される。液状の粘着剤25は、ディスペンサ26から塗布領域15に供給しやすいように、液体状態で10Pa・sから60Pa・sの粘度を呈するものが好ましい。粘度がこの範囲の液状の粘着剤25は塗布領域15の内面への濡れ性に優れ、空気を介在させることなく塗布領域15に充填することができる。また、粘着剤25は、ディスペンサ26から塗布領域15に塗布するときは前記数値範囲の比較的に低粘度で、塗布領域15に塗布された後は粘度がやや高くなるチクソトロピー性を有するものが好ましい。液状の粘着剤25としては、例えば商品名(セメダイン製のBBX909)が使用される。この粘着剤25は、特殊変成シリコーンポリマーを主成分とする湿気硬化型アクリル変成シリコーン系の粘着剤である。常温23℃での粘度は20Pa・sから30Pa・s程度であり、常温23℃で7から10分程度で半硬化または硬化状態となり、半硬化または硬化状態で表面の粘着性とゲル状の弾性を呈する。
【0027】
図5(A)に示されるように、液状の粘着剤25は、堤部16x,16yの上部からやや上方(Z1方向)に盛り上がる程度の量で塗布されることが好ましい。粘着剤25が半硬化または硬化状態で粘着性と弾性を呈しているときに、
図5(B)に示されるように、タッチパネルおよび表示デバイス5と一体化された前面パネル2が、枠部材11の開口部13内に設置され、前面パネル2の縁部2aの背面が接合面14に接合される。前面パネル2の縁部2aに後方(Z2方向)への加圧力を与えることにより、縁部2aが粘着テープ21x,21yの粘着力により接合され、さらに前面パネル2の角部2cが、粘着性を有する粘着剤25により接合される。半硬化または硬化状態の粘着剤25は弾性を有するため、粘着テープ21x,21yの粘着力で前面パネル2が強固に粘着されると、その圧力で粘着剤25が柔軟に変形し、
図5(B)に示されるように、粘着剤25が塗布領域15に隙間なく充填される。その結果、前面パネル2が枠部材11に確実に接合され、前面パネル2の角部2cにおいて、前面パネル2の縁部2aと接合面14との間に隙間が形成されにくくなり、密閉性が維持される。
【0028】
枠部材11の接合面14では、堤部16x,16yが設けられているため、ディスペンサ26から塗布領域15に供給された液状の粘着剤25が、テープ接合領域14x,14yに流れ出にくくなっている。そのため、塗布領域15に粘着剤25が適量で存在するようになり、この適量の粘着剤25と粘着テープ21x,21yとによって、隙間を形成することなく前面パネル2の縁部2aを接合することが可能になる。
【0029】
図6(A)は、ディスペンサ26から塗布領域15に供給された液状の粘着剤25の一部25aが、堤部16x,16yの頂部に向けてはみ出す現象が生じた例を示している。液状の粘着剤25が粘着テープ21x,21yの粘着面にはみ出したとしても、堤部16x,16yの存在により、はみ出しをわずかな量に制御できる。また一部25aがはみ出しても、半硬化または硬化状態で粘着性を呈しているため、粘着テープ21x,21yの粘着力を大幅に低下させることはなく、前面パネル2の接合不良は生じにくい。
【0030】
図6(B)は、粘着テープ21x,21yが貼られたときに、その一部21aが堤部16xの頂部から塗布領域15上にはみ出した例を示している。このような現象が生じたとしても、ディスペンサ26から塗布領域15に液状の粘着剤25が供給される時点で、粘着剤25の粘度が低いため、粘着剤25が、はみ出している粘着テープの一部21aの下側に回り込むことができ、塗布領域15内に大きな空隙が生じるのを防止できる。
【0031】
図4に示されるように、塗布領域15は、堤部16x,16yと内側堤部16i、および枠部材11の表面11aと接合面14との段差を形成している段差壁部17とで、その周囲の全長が囲まれている。また、
図5(A)に示されるように、塗布領域15の深さ寸法Hが、テープ接合領域14x,14yの表面から堤部16x,16yの頂部までの高さ寸法hよりも大きい。そのため、ディスペンサ26から塗布領域15に供給された液状の粘着剤25が、塗布領域15に溜まりやすくなっており、例えば、枠部材11の収納空間18内に流れ出にくくなる。
【0032】
図7に本発明の第2実施形態の表示装置101の部分断面図が示されている。この表示装置101に設けられた塗布領域115は、X-Y平面に平行な底面115aと、X側とY側において、底面115aから垂直に立ち上がる垂直内壁115bと、垂直内壁115bに連続し、前方(Z1方向)に向かうにしたがってX方向とY方向に向けて広がる傾斜内壁115cを有している。堤部16x,16yの塗布領域115に向く内壁部は、塗布領域115の面積を広げる方向、すなわち前方(上方)に向かうにしたがってテープ接合領域14x、14yに向かう方向へ傾斜している。なお、塗布領域115は、垂直内壁115bを有しておらず、傾斜内壁115cのみを有する形状であってもよい。
【0033】
図7に示される表示装置101では、塗布領域115の開口面積が広くなるため、液状の粘着剤25を塗布領域115の凹部内に充填しやすくなる。また粘着剤25が半硬化または硬化状態で前面パネル2が枠部材11に接合されると、前面パネル2の貼り付け圧力によって、弾性を有する粘着剤25が傾斜内壁115cに向けて柔軟に変形するようになる。傾斜内壁115cでの粘着剤25の柔軟な変形により前面パネル2に作用する前方(Z1方向)への反力が過大となることがなく、塗布領域115と前面パネル2との間に粘着剤25が隙間なく充填されるようになる。
【0034】
図8に本発明の第3実施形態の表示装置201の部分断面図が示されている。この表示装置201では、テープ接合領域14x,14yと塗布領域15との境界に位置する堤部116x,116yが弾性材料で形成されている。この弾性材料は、枠部材11を構成する樹脂材料や金属材料よりも弾性係数が大幅に低く、例えば、天然ゴムや合成ゴムあるいは発泡樹脂材料などで形成されている。堤部116x,116yは少なくとも頂部が弾性材料で形成されていればよく、例えば、枠部材11と一体に形成された堤部16x,16yの頂部に弾性材料の小片が接着された構造であってもよい。
【0035】
図8に示される表示装置201では、粘着テープ21x,21yと、半硬化または硬化状態の粘着剤25で、前面パネル2が粘着されるときに、堤部116x,116yが収縮変形する。そのため、前面パネル2の角部2cと、枠部材11の接合面14との接合部に隙間が形成されなくなり、密閉性を高めることができるようになる。
【0036】
表示装置1,101,201の製造方法、すなわち前面パネル2の枠部材11への接合方法において、液状の粘着剤の代わりに液状の接着剤を使用することが可能である。粘着剤は、表面の粘着力(タック力)によって、枠部材11と前面パネル2を吸着するのに対し、接着剤は分子間の一次結合や二次結合を発揮して枠部材11と前面パネル2を固着させるものである。接着剤は、UVなどを使用した光硬化性と湿気硬化性を備えたもので、液状での粘度が40Pa・s程度のものが使用される。接着剤は、ウレタン系など、半硬化または硬化状態で接着力と共に柔軟性で弾性を備えたものが好ましく使用される。例えば、接着剤として積水化学工業製の製品名(フォトレックB-200)が使用される。
【0037】
液状の接着剤はチクソトロピー性を有するものが使用され、ディスペンサ26から塗布領域15,115に塗布されるときは粘度が40Pa・s程度で、塗布領域15.115に供給しやすく、塗布領域15,115に塗布された後は、やや粘度が高くなり、塗布領域15,115に留まりやすくなる。テープ接合領域14x,14yに粘着テープ21x,21yが貼られ、塗布領域15,115に液状の接着剤が塗布された後に、前面パネル2の縁部2aが枠部材11の接合面14に貼り付けられる。その後に、前面パネル2の前方から、塗布領域15,115にUVなどの光エネルギーが照射され、接着剤が硬化させられる。
【0038】
粘着テープ21x,21yの粘着力で前面パネル2を接合させた後に、液状の接着剤を硬化させることにより、硬化前の液状の接着剤が堤部16x,16yを乗り越えて粘着テープ21x,21yの粘着面に付着したとしても、粘着テープ21x,21yの粘着力を大幅に低下させることがない。
【0039】
なお、前記各実施形態では、塗布領域15,115が枠部材11の矩形状の接合面14の角部に設けられているが、この角部の塗布領域15,115に代えて、または角部の塗布領域15,115に加えて、Y方向に沿う長辺またはX方向に沿う短辺において、テープ接合領域14x,14yの途中に塗布領域15,115が形成されていてもよい。
【0040】
本発明の実施形態では、矩形状の枠形状の粘着テープを使用する必要がなく、長方形状などに分割された粘着テープが使用されるため、粘着テープに無駄な廃棄部分が生じるのを避けることができる。しかも、隣り合うテープ接合領域の間に塗布領域が形成され、テープ接合領域と塗布領域とが堤部で区分されているため、塗布領域内に粘着剤や接着剤を留めることができ、前面パネルを確実に接合させることができ、密閉性も高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,101,201 表示装置
10 ケース
11 枠部材
13 開口部
14 接合面
14x,14y テープ接合領域
15,115 塗布領域
16x,16y,116x,116y 堤部
16i 内側堤部
21x,21y 粘着テープ
25 粘着剤