(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032917
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】自重利用型立ち上がり補助具
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20230302BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20230302BHJP
A47C 3/26 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A47C7/02 D
A47C3/26
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139291
(22)【出願日】2021-08-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】391006809
【氏名又は名称】阿多 實孝
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】阿多 實孝
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量で持ち運び便利で、着座姿勢の利用者の体重や体の動きを利用して、介護不要に着座位置を昇降可能な着座具を提供する。
【解決手段】着座部12と、それを支持する着座部支持部14とを有し、着座部支持部の側部に互いに高さ方向に複数の凸部18が設けられた一対の直立体重受け部と、直立体重受け部に支持され上下方向に揺動可能な着座部保持部とを有し、一対の直立体重受け部は対向配置され、着座部保持部は一対の直立体重受け部間にかけ渡され、揺動可能な揺動部材であり、上端部が弾性手段を介して着座部保持部に連結され、下端部がいずれかの凸部に係止され、着座部保持部を支点として、揺動可能に支持される係止部材とを有し、弾性手段は係止部材の下端部を凸部に向かって付勢し、利用者が着座部に対する体重のかけ方を移動させることにより、係止部材の下端を係止する凸部を交互に変え、前座部の昇降を可能とする自重利用型立ち上がり補助具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座する着座部と、着座部を支持する着座部支持部とを有し、
着座部支持部は、それぞれ、一方の側部に、互いに高さ方向に所定間隔を隔てた複数の凸部が設けられた、一対の直立体重受け部と、
一対の直立体重受け部に支持され、上下方向に揺動可能な着座部保持部とを有し、
前記一対の直立体重受け部は、一方の側部同士を、所定間隔を隔てて対向配置され、
前記着座部保持部は、それぞれ、前記一対の直立体重受け部間にかけ渡され、互いに連結され一体に揺動可能な一対の揺動部材であり、一方の揺動部材は、一方の直立体重受け部に支持され、他方の揺動部材は、他方の直立体重受け部に支持され、前記一対の直立体重受け部により二点支持され、
前記着座部保持部は、それぞれ、上端部が弾性手段を介して前記着座部保持部に連結され、下端部が対応する直立体重受け部の前記複数の凸部のいずれかに係止され、着座部保持部を支点として、揺動可能に支持される、一対の係止部材を有し、
前記弾性手段は、前記係止部材の下端部を前記凸部に向かって付勢するように構成され、
前記着座部に着座する利用者が、前記着座部に対する体重のかけ方を前記着座部保持部の延び方向に移動させることにより、前記係止部材の下端が係止する前記凸部を、前記一対の係止部材間で交互に変えることを通じて、前記着座部の昇降を可能とする、自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項2】
それぞれ、上下方向に整列する複数の凸部を側部に有する一対の縦部材であって、一方の複数の凸部と、他方の複数の凸部とを横方向に所定間隔を隔てて対向配置した一対の縦部材と、
利用者が着座する着座部を支持する横部材であって、横部材の中心が該一対の縦部材間に位置するように該一対の縦部材間を跨ぐように横方向に延びる横部材と、
それぞれ、該横部材の中心に関して互いに反対側に配置され、該横部材に対して上下方向に交差するように設けられ、前記横部材を前記縦部材に対して支持する、一対の係止部材と、
該一対の係止部材それぞれを対応する前記縦部材の複数の凹部各々に向かって付勢する弾性手段と、を有し、
該一対の係止部材それぞれは、対応する前記縦部材の複数の凹部各々に対して、利用者の自重を受ける係止位置と、係止解除位置との間で、前記横部材に対する連結点を中心に、揺動可能に設けられる、
ことを特徴とする、自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項3】
利用者が、自重を利用して前記着座部保持部を傾斜させることにより、前記係止部材の下端部が係止されている前記凸部から係止解除される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項4】
前記凸部は、最引っ込み部から最突出部まで延びる第1係合部と、最引っ込み部から最突出部まで上方に傾斜する第2係合部とを有する鋸刃状をなし、前記係止部材を介して、利用者の自重を受ける第1係合部に対して、その下方の第2係合部まわりの張り出し部が補強部を構成するとともに、第2係合部が前記係止部材の下端の案内面を形成する一方、前最引っ込み部が、前記係止部材に対する係止位置を形成する、請求項2に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項5】
前記第1係合部は、最引っ込み部から最突出部まで、第2係合部の上方傾斜角度より小さい傾斜角度で、下方に傾斜する、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項6】
前記凸部は、前記係止部材の前記第2係合部に沿う上方への移動により、引っ込み可能に可動である一方、前記係止部材の前記第1係合部に対する下方への移動により、固定保持される、請求項5に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項7】
前記係止部材は、前記縦部材に平行に配置される上板部と、該上板部の下縁から前記縦部材に交差する向きに延びる底板部と有する縦断面がL字状をなし、
前記上板部の上部が、前記弾性手段に連結され、前記底板部の下面が、対応する前記凸部への利用者の自重伝達部を構成するとともに、前記底板部の前記上板部の前記下縁から延びる一方の縁部が、対応する前記凸部の前記第2係合部に対する係合部を構成する、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項8】
前記横部材は、上下面が左右方向に間隔を隔てた対向した一対の板材で構成され、各上下面の対向内面により構成されるスペース内に、前記一対の縦部材および前記係止部材が収容され、二組の一対の板材が、前記上下面に直交する向きに所定間隔を隔てて配置され、前記着座部が、二組の一対の板材間に跨って配置される、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項9】
前記一対の縦部材それぞれは、前後方向に沿う正面部と、左右方向に沿う側面部とに構成されるL字状横断面の部材であり、前記正面部の側縁同士が、左右方向に所定間隔を隔てて固定配置され、側縁に形成される複数の凸部同士が、左右方向にオフセット配置される、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項10】
利用者が自重を利用して前記着座部を傾斜することにより、傾斜下方側の一方の前記係止部材が、傾斜下方側の一方の縦部材の対応する前記凸部の最引っ込み部に係止されつつ、傾斜上方側の他方の前記係止部材が傾斜上方側の他方の縦部材の対応する前記凸部の前記第2係合部に案内されながら上方に移動する際、前記横部材の傾斜下方側への横ずれにより、一方の前記係止部材の係止離脱を防止する、前記着座部の落下防止治具が、前記横部材に設けられる、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項11】
前記落下防止治具の側面には、前記落下防止治具が設けられる側と反対側の前記係止部材が対応する前記凸部の引っ込み部に係止され、そこを支点として、前記落下防止治具が設けられる側の前記係止部材が上方の凸部に上がる際、傾斜下方側の前記縦部材の側面に当たりながら、前記横部材の横方向への移動を制限しつつ、前記横部材の傾斜を可能とするように、湾曲部が形成される、請求項10に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項12】
前記横部材の上面には、前記縦部材の外側面との間の間隔を調整可能とすることにより、前記横部材の傾斜角度を調整可能な最大傾斜角度調整部材を設ける、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項13】
前記横部材の傾斜角度は、5°ないし15°に設定される、請求項12に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項14】
前記一対の係止部材それぞれの前記横部材に対する連結位置は、該横部材の中心に関して対称に配置され、前記連結位置間の間隔は、上下方向に隣接する凸部の前記第1係止部間の間隔および/または利用者による着座部の最大可能傾斜角度および/または前記一対の係止部材間の間隔に応じて、設定される、請求項2に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項15】
前記一対の係止部材の前記横部材に対する連結位置は、前記第1係合部の傾斜角度との関係において、前記両係止部材の前記底面部の下面が、対応する凸部の前記第1係合部に対して面支持されるように設定される、請求項14に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項16】
前記着座部支持部は、安定保持可能なコの字状横断面のフレーム状スタンドを有し、対向するフレーム部それぞれに、前記一対の直立体重受け部の一つが固定支持される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項17】
前記着座部は、前記着座部支持部の上面に着脱自在に設置される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項18】
前記着座部は、その上面が、臀部が収まり可能な中央部が窪んだ湾曲状である、請求項17に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項19】
一方の前記縦部材の凸部の前記第1係合部と、他方の前記縦部材の対応する凸部の前記第1係合部とは、高さ方向に隣接する凸部同士の間隔の範囲内で、高さ方向にオフセット配置されている、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項20】
前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記係止部材の前記底面部との距離は、前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記弾性手段の前記横部材に対する連結点との距離よりも小さく設定され、
前記弾性手段は、1本または複数の輪ゴムであり、前記係止部材と前記着座部保持部との間にワンタッチで交換可能にかけ渡される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項21】
高さ方向に隣接する前記凸部の間隔は、0.5センチないし2センチ、前記縦部材の前記側部同士の間隔は、2センチないし5センチである、請求項2に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項22】
前記着座部と、前記着座部支持部と、前記一対の直立体重受け部とは、利用者の体重を支持可能な強度を有する硬質樹脂製である、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自重利用型立ち上がり補助具に関し、より詳細には、軽量で持ち運び便利であるとともに、着座姿勢の利用者の体重および体の動きを利用して、介護不要に、着座位置を自動的に昇降可能な自重利用型立ち上がり補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高齢者向けの介護具が種々開発されている。
特に、高齢者は、脚力が弱り、椅子に座った状態で、自力で立ち上がるのが困難であるところ、座位状態の高齢者を立位状態に立ち上げる際に用いられる介護具が開発されている。
【0003】
第1のタイプは、たとえば、特許文献1および特許文献2に開示されているように、駆動装置を用い、座位状態の高齢者を立位状態に立ち上げるタイプである。
より詳細には、特許文献1に開示の立ち上がり補助装置は、土台となるベースと、使用者の体を支持する支持部を先端に備え、ベースに回動可能に固定される第一アームと、第一アームの内側に沿ってスライド可能な第二アームと、ベース内部に収納され第一アーム及び第二アームを駆動する駆動装置とを備え、駆動装置はモータとそれと同軸上に設けられたウォームギヤと、ウォームギヤと噛合し水平軸まわりに回転するウォームホイールと、ウォームホイールと同軸上に設けられたピニオンと、ピニオンと噛合するギヤと、ギヤと噛合するシャフトと、シャフトに取付けられた、かさ歯車と遊星歯車機構を構成する太陽歯車とを備えて構成し、かさ歯車の駆動により第一アームを、太陽歯車の駆動により第二アームを駆動する。
以上の構成によれば、第一アームは円の動きを第二アームは直線の動作をそれぞれ担当している。この第一アーム及び第二アームの描く円と直線を組み合わせた円弧の軌跡は、人が立ち上がる自然な動作と一致するため、立ち上がり補助装置を使用することで要介護者にとって自然な動作での立ち上がり補助を行なうことが可能となる。
【0004】
特許文献2に開示の起立補助装置は、着座するための座部と、座部を着座位置から離座位置まで移動させるための駆動手段と、を備え、駆動手段は、座部を着座位置から前記離座位置まで移動させる際に、座部を、前方傾動させつつ、前方移動させた後、上昇移動させつつ、斜め後方移動させ、座部は、第1の孔と、第2の孔と、を有し、駆動手段は、座部を昇降させるための昇降駆動手段と、支柱と、支柱を回動させるための回動駆動手段と、を有し、昇降駆動手段は、第1の孔において座部と連結され、支柱の一端は、回動駆動手段に回動自在に軸支され、支柱の他端は、第2の孔において座部と連結されてなる。
以上の構成によれば、便座などから起立するときの足裏の浮きや臀部の滑り落ちを軽減して、起立しやすくすることができる。
【0005】
第2のタイプは、たとえば、特許文献3に開示されているように、手摺補助具である。
より詳細には、この手摺補助具は、ベッドからの起き上がりや歩行に不安を覚えた高齢者等に、起立や歩行の障害の程度を日常的に把握できるように、各種のセンサを設けた起立補助型スマート手すり装置であり、この起立補助型スマート手すり装置から得られたデータをもとに、生活自立度( 筋力バランス) を評価する起立動作観察・分析システム、その評価を家族や施設などの関係者に送付する起立動作・分析・支援システムであり、ベッドサイドに置いた起立補助型スマート手すり装置を利用して、高齢者等が起き上がる動作を行ったときに手すりに生ずる力の方向と大きさ、および、床面にかかる荷重の大きさ、分布などを日々継続して取得することにより、立ち上がり動作の変化を観察して、見守りと必要な対処方法の提示に役立てるものである。
起立補助型スマート手すり装置の基本構造は、底板の左右に支柱を取り付け、支柱の上部に手すり部を設けている。支柱の基部は高さが調整できるように調整手段を設けることができる。支柱の上部に水平バーを有する手すり部を装着している。支柱の中間部には水平の中間バーを設けている。手すり部に手すりを把持したときにかかる負荷を計測するセンサを設けているので、手すり部を支柱に対して装着するタイプとしている。
【0006】
しかしながら、両タイプには、以下のような技術的問題点が存する。
第1のタイプにおいては、駆動装置、たとえば、駆動モーター、駆動機構等を要することから高価であり、重量物であり移動に不便であるとともに、高齢者は完全に体重を預けて、立ち上げられるものであり、高齢者自身の体力を用いるものではなく、このような介護ロボットまがいに頼るほど、高齢者は、日々体力、特に足を弱らせる原因となる。
【0007】
第2のタイプにおいては、第1のタイプとは異なり、駆動装置を用いず、軽量で持ち運び容易であり、高齢者自身の体力、特に腕力を利用するものではあるが、脚力のみならず腕力が弱っている高齢者には、利用が困難である。
さらに、椅子に座っている高齢者であれば、腕力があれば、立ち上がりの補助に用いることは可能であるが、たとえば、入浴中に浴槽から立ち上がる場合には、利用困難である
また、高齢者が座位姿勢から完全に立ち上がって足で踏ん張れる姿勢となるまでは、手で自身の体を支える他なく、途中の姿勢状態から座位高さまでストンと臀部を落としてしまるリスクもある。
加えて、高齢者が手摺補助具に掴まって、座位レベルの途中の所望高さまで体を支えながら下降するのも同様に困難である。
以上のように、いずれのタイプも、高齢者の状況に応じて、椅子に座っている場合、正座している場合、浴槽につかっている場合等多方面で、自身の体力を利用することで体力維持を確保しつつ活用可能なように、軽量で持ち運び可能な昇降具になっていない。
【特許文献1】特開2014-8341
【特許文献2】特開2009-297461
【特許文献3】特開2021-62123
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、軽量で持ち運び便利であるとともに、着座姿勢の利用者の体重および体の動きを利用して、介護不要に、利用者のリハビリも可能としつつ、着座位置を自動的に昇降可能な自重利用型立ち上がり補助具を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、その場で簡便に組み込むことにより、種々の着座状態に適用可能な自重利用型立ち上がり補助具を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、自重を利用して、着座しながら所望の高さレベルに昇りおよび降りが安全に可能である、自重利用型立ち上がり補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の自重利用型立ち上がり補助具は、
利用者が着座する着座部と、着座部を支持する着座部支持部とを有し、
着座部支持部は、それぞれ、一方の側部に、互いに高さ方向に所定間隔を隔てた複数の凸部が設けられた、一対の直立体重受け部と、
一対の直立体重受け部に支持され、上下方向に揺動可能な着座部保持部とを有し、
前記一対の直立体重受け部は、一方の側部同士を、所定間隔を隔てて対向配置され、
前記着座部保持部は、それぞれ、前記一対の直立体重受け部間にかけ渡され、互いに連結され一体に揺動可能な一対の揺動部材であり、一方の揺動部材は、一方の直立体重受け部に支持され、他方の揺動部材は、他方の直立体重受け部に支持され、前記一対の直立体重受け部により二点支持され、
前記着座部保持部は、それぞれ、上端部が弾性手段を介して前記着座部保持部に連結され、下端部が対応する直立体重受け部の前記複数の凸部のいずれかに係止され、着座部保持部を支点として、揺動可能に支持される、一対の係止部材を有し、
前記弾性手段は、前記係止部材の下端部を前記凸部に向かって付勢するように構成され、
前記着座部に着座する利用者が、前記着座部に対する体重のかけ方を前記着座部保持部の延び方向に移動させることにより、前記係止部材の下端が係止する前記凸部を、前記一対の係止部材間で交互に変えることを通じて、前記着座部の昇降を可能とする、構成としている。
【0010】
以上の構成を有する自重利用型立ち上がり補助具によれば、着座部に着座する利用者が、着座部に対する体重のかけ方を前後に移動させることにより、着座部保持部が上下方向に揺動し、その際、着座部保持部は一対の直立体重受け部により二点支持され、一対の直立体重受け部の複数の凸部のいずれかに係止部材の下端部を係合するとともに、弾性手段が、下端部を凸部に向かって付勢するように構成されることから、係止部材の下端を支持する凸部を左右交互に変えることを通じて、着座部の昇降が可能であり、駆動モーター等駆動装置の必要なく、軽量で持ち運び便利であるとともに、着座姿勢の利用者の体重および体の動きを利用して、介護不要に、着座位置を自動的に昇降可能であるとともに、高齢者の体力維持に資することが可能である。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の自重利用型立ち上がり補助具は、
それぞれ、上下方向に整列する複数の凸部を側部に有する一対の縦部材であって、一方の複数の凸部と、他方の複数の凸部とを横方向に所定間隔を隔てて対向配置した一対の縦部材と、
利用者が着座する着座部を支持する横部材であって、横部材の中心が該一対の縦部材間に位置するように該一対の縦部材間を跨ぐように横方向に延びる横部材と、
それぞれ、該横部材の中心に関して互いに反対側に配置され、該横部材に対して上下方向に交差するように設けられ、前記横部材を前記縦部材に対して支持する、一対の係止部材と、
該一対の係止部材それぞれを対応する前記縦部材の複数の凹部各々に向かって付勢する弾性手段と、を有し、
該一対の係止部材それぞれは、対応する前記縦部材の複数の凹部各々に対して、利用者の自重を受ける係止位置と、係止解除位置との間で、前記横部材に対する連結点を中心に、揺動可能に設けられる、構成としている。
【0012】
以上の構成を有する自重利用型立ち上がり補助具によれば、利用者が上体を前方に傾斜して着座部の前部に体重をかけることにより、横部材は前部を下方に傾斜させつつ前方に移動する一方、後部を上方に傾斜させ、その際、横部材の前部側の係止部材は、弾性手段により、対応する凸部に対して係止位置に付勢保持されながら、つまり、横部材はその位置を基点に支持されながら、後部側が上方に傾斜することを通じて、後部側の係止部材は、弾性手段により対応する凸部に対する付勢力に抗して、対応する凸部に対して係止位置から、係止解除位置、さらに、上方の凸部に対する係止位置まで上方に移動し、横部材は両側で支持されることが可能となる。
このように、一方の係止部材の係止位置に基づいて、他方の係止部材の係止位置を、係止解除位置、かくして、上方の凸部の係止位置に移動し、利用者が上体の前後の動きを繰り返すことにより、利用者のリハビリも兼ねつつ、横部材、つまり横部材が支持する着座部は、前部および後部を交互に上方に移動させ、以て着座部を上方に移動させ、利用者の立ち上がりを補助することが可能となる。なお、横部材の傾斜角度に応じて、凸部を一段ずつでなく、複数段上がることが可能であり、横部材の両側での支持を係止解除することにより、元の着座レベルに戻すことが可能である。
【0013】
また、利用者が、自重を利用して前記着座部保持部を傾斜させることにより、前記係止部材の下端部が係止されている前記凸部から係止解除されるのがよい。
さらに、前記凸部は、最引っ込み部から最突出部まで延びる第1係合部と、最引っ込み部から最突出部まで上方に傾斜する第2係合部とを有する鋸刃状をなし、前記係止部材を介して、利用者の自重を受ける第1係合部に対して、その下方の第2係合部まわりの張り出し部が補強部を構成するとともに、第2係合部が前記係止部材の下端の案内面を形成する一方、前最引っ込み部が、前記係止部材に対する係止位置を形成するのがよい。
さらにまた、前記第1係合部は、最引っ込み部から最突出部まで、第2係合部の上方傾斜角度より小さい傾斜角度で、下方に傾斜するのがよい。
加えて、前記凸部は、前記係止部材の前記第2係合部に沿う上方への移動により、引っ込み可能に可動である一方、前記係止部材の前記第1係合部に対する下方への移動により、固定保持されるのがよい。
【0014】
また、前記係止部材は、前記縦部材に平行に配置される上板部と、該上板部の下縁から前記縦部材に交差する向きに延びる底板部と有する縦断面がL字状をなし、
前記上板部の上部が、前記弾性手段に連結され、前記底板部の下面が、対応する前記凸部への利用者の自重伝達部を構成するとともに、前記底板部の前記上板部の前記下縁から延びる一方の縁部が、対応する前記凸部の前記第2係合部に対する係合部を構成するのがよい。
さらに、前記横部材は、上下面が左右方向に間隔を隔てた対向した一対の板材で構成され、各上下面の対向内面により構成されるスペース内に、前記一対の縦部材および前記係止部材が収容され、二組の一対の板材が、前記上下面に直交する向きに所定間隔を隔てて配置され、前記着座部が、二組の一対の板材間に跨って配置されるのがよい。
さらにまた、前記一対の縦部材それぞれは、前後方向に沿う正面部と、左右方向に沿う側面部とに構成されるL字状横断面の部材であり、前記正面部の側縁同士が、左右方向に所定間隔を隔てて固定配置され、側縁に形成される複数の凸部同士が、左右方向にオフセット配置されるのがよい。
【0015】
加えて、利用者が自重を利用して前記着座部を傾斜することにより、傾斜下方側の一方の前記係止部材が、傾斜下方側の一方の縦部材の対応する前記凸部の最引っ込み部に係止されつつ、傾斜上方側の他方の前記係止部材が傾斜上方側の他方の縦部材の対応する前記凸部の前記第2係合部に案内されながら上方に移動する際、前記横部材の傾斜下方側への横ずれにより、一方の前記係止部材の係止離脱を防止する、前記着座部の落下防止治具が、前記横部材に設けられるのがよい。
また、前記落下防止治具の側面には、前記落下防止治具が設けられる側と反対側の前記係止部材が対応する前記凸部の引っ込み部に係止され、そこを支点として、前記落下防止治具が設けられる側の前記係止部材が上方の凸部に上がる際、傾斜下方側の前記縦部材の側面に当たりながら、前記横部材の横方向への移動を制限しつつ、前記横部材の傾斜を可能とするように、湾曲部が形成されるのがよい。
さらに、前記横部材の上面には、前記縦部材の外側面との間の間隔を調整可能とすることにより、前記横部材の傾斜角度を調整可能な最大傾斜角度調整部材を設けるのがよい。
【0016】
さらにまた、前記横部材の傾斜角度は、5°ないし15°に設定されるのがよい。
加えて、前記一対の係止部材それぞれの前記横部材に対する連結位置は、該横部材の中心に関して対称に配置され、前記連結位置間の間隔は、上下方向に隣接する凸部の前記第1係止部間の間隔および/または利用者による着座部の最大可能傾斜角度および/または前記一対の係止部材間の間隔に応じて、設定されるのがよい。
また、前記一対の係止部材の前記横部材に対する連結位置は、前記第1係合部の傾斜角度との関係において、前記両係止部材の前記底面部の下面が、対応する凸部の前記第1係合部に対して面支持されるように設定されるのがよい。
さらに、前記着座部支持部は、安定保持可能なコの字状横断面のフレーム状スタンドを有し、対向するフレーム部それぞれに、前記一対の直立体重受け部の一つが固定支持されるのがよい。
【0017】
さらにまた、前記着座部は、前記着座部支持部の上面に着脱自在に設置されるのがよい。
加えて、前記着座部は、その上面が、臀部が収まり可能な中央部が窪んだ湾曲状であるのがよい。
また、一方の前記縦部材の凸部の前記第1係合部と、他方の前記縦部材の対応する凸部の前記第1係合部とは、高さ方向に隣接する凸部同士の間隔の範囲内で、高さ方向にオフセット配置されているのがよい。
さらに、前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記係止部材の前記底面部との距離は、前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記弾性手段の前記横部材に対する連結点との距離よりも小さく設定され、
前記弾性手段は、1本または複数の輪ゴムであり、前記係止部材と前記着座部保持部との間にワンタッチで交換可能にかけ渡されるのがよい。
さらにまた、高さ方向に隣接する前記凸部の間隔は、0.5センチないし2センチ、前記縦部材の前記側部同士の間隔は、2センチないし5センチであるのがよい。
加えて、前記着座部と、前記着座部支持部と、前記一対の直立体重受け部とは、利用者の体重を支持可能な強度を有する硬質樹脂製であるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る自重利用型立ち上がり補助具の第1実施形態を図面を参照しながら、自重利用型立ち上がり補助具自体を利用者の着座具として活用する場合を例に、以下に詳細に説明する。
図1ないし
図5に示すように、自重利用型立ち上がり補助具10は、利用者が着座する着座部12と、着座部12を支持する着座部支持部14とから構成され、着座部支持部14は、直立体重受け部20と、着座部保持部22とから概略構成され、利用者が、着座部12に着座して上体を前後に繰り返し傾斜することにより、着座部12を上方に移動して、利用者が前部から立ち上がるのを補助するようにしている。
着座部12は、通常の椅子の着座面と同様であり、矩形状着座面で、クッション性を有する、たとえば、中実のウレタン状であり、その上面が、臀部が収まり可能な中央部が窪んだ湾曲状である。これにより、着座部12に着座状態の利用者が上体を前後に傾斜させる際、着座部12の上面で前後へのずれを引き起こさないようにしている。着座部12の前後方向長さLも、通常の椅子と同様であるのがよい。
【0019】
図3に示すように、着座部保持部22は、それぞれ、上下面46が左右方向に間隔を隔てて対向した一対の横部材200を有し、着座部12が跨るように、一対の横部材200の上面に板材51、53で着座部12の底部を支持する。なお、着座部12は、着座部支持部14に対して着脱自在が好ましい。
着座部支持部14は、一対の横部材200の各上下面46の対向内面により構成されるスペース21内に、直立体重受け部20および係止部材32が収容され、二組の一対の横部材200が、上下面46に直交する向き(左右方向)に所定間隔を隔てて配置され、着座部12が、二組の一対の横部材200間に跨って配置される。
【0020】
後に詳細に説明するように、着座部12に着座する利用者が、着座部12に対する体重のかけ方を着座部保持部22の延び方向(前後方向)に移動させることにより、係止部材32の下端を係止する凸部18を、一対の係止部材32間で交互に変えることを通じて、着座部12の昇降を可能とする。
横部材200の傾斜角度は、5°ないし15°に設定されるのが好ましい。5°より小さいと、着座部12を同じ高さ範囲に亘って上げるのに、利用者の上体の前後方向の傾斜運動の繰り返し数が多くなりすぎ、一方、15°より大きいと、このような繰り返し数は低減可能であるが、一回の利用者の傾斜運動がきつくなるからである。
着座部支持部14は、例えば、床面に対して安定保持可能なコの字断面のフレーム状スタンド42を有し、対向するフレーム部44それぞれに、一対の直立体重受け部20の一つが固定支持され、対向配置される。フレーム部44は、たとえば、パイプ状の一体物がよい。
【0021】
図4および
図5に示すように、直立体重受け部20は、一対の縦部材300により構成され、側部16同士を、所定間隔Dを隔てて対向配置され、左右側それぞれに設けられ、互いに対向配置される。
より詳細には、所定間隔Dは、横部材200の必要な傾斜角度を制限する観点から、尻幅20センチを超えないのが好ましい。
縦部材300は、それぞれ、前後方向に沿う正面部68と、左右方向に沿う側面部70とに構成されるL字状横断面の部材であり、一対の縦部材300の上下それぞれの間にスペーサ85をかまして、正面部68の側縁同士が、左右方向に所定間隔を隔てて固定配置され、側縁に形成される複数の凸部18同士が、左右方向にオフセット配置される。
一対の横部材200は、左右側それぞれに設けられ、それぞれ、横部材200の中心Cが一対の縦部材300間に位置するように一対の縦部材300間を跨ぐように横方向に延び、互いに連結され一体に揺動可能であり、一方の横部材200は、一方の縦部材300に支持され、他方の横部材200は、他方の縦部材300に支持され、横方向(前後方向)に移動可能に、一対の縦部材300により二点支持されている。
【0022】
各側部16には、互いに高さ方向に所定間隔hを隔てた複数の凸部18が設けられている。
図6に示すように、凸部18は、最引っ込み部39から最突出部35まで延びる第1係合部34と、最引っ込み部39から最突出部35まで上方に傾斜する第2係合部38とを有する鋸刃状をなし、係止部材32(後に説明)を介して、利用者の自重を受ける第1係合部34に対して、その下方の第2係合部38まわりの張り出し部が補強部を構成するとともに、第2係合部38が係止部材32の下端の案内面を形成する一方、最引っ込み部39が、係止部材32に対する係止位置となる。最突出部35は、尖点となることから、縦部材300が特に金属製の場合は、利用者がけがをしないように、面取り加工するのがよい。
利用者が、自重を利用して着座部保持部22を傾斜させることにより、係止部材32の下端部30が係止されている凸部18から係止解除されるようにしてある。
第1係合部34は、最引っ込み部39から最突出部35まで、第2係合部38の上方傾斜角度Θ4より小さい傾斜角度Θ3で、下方に傾斜する。
たとえば、Θ4は、係止部材32の下端部30が第2係合部38に案内される観点から、45° ないし75°、Θ3は、係止部材32の下端部30が第1係合部34に係合する観点から、5°ないし10°が好ましい。
変形例として、凸部18は、係止部材32の第2係合部38に沿う上方への移動により、引っ込み可能に可動である一方、係止部材32の第1係合部34に対する下方への移動により、固定保持されるのでもよい。
【0023】
高さ方向に隣接する凸部18の間隔hは、利用者が上体を前後に繰り返し傾斜させる際の体力への負担を考慮し、0.5センチないし2センチ、側部16同士の間隔Dは、2センチないし5センチであるのが好ましい。
変形例として、
図7に示すように、一対の縦部材300間で、対応する複数の凸部18は、高さが互い違いに配置されているが、そろっていてもよく、一方の側の凸部18の間隔hと、他方の側の凸部18の間隔hとが異なっていてもよく、互い違いの高さとの組み合わせでもよい。
これにより、後に説明するように、利用者の状況により、たとえば、高齢者で体力が弱っている場合には、凸部18の間隔hは、1センチで互い違いとして、凸部18を一段ずつ少しずつ上がっていき、たとえば、高齢者で体力がある場合には、凸部18の間隔hは、2センチでそろえて、凸部18を数段飛び前提に、上がっていくのでもよい。
【0024】
着座部12の高さ方向の移動範囲であるRの範囲は、着座状態から立ち上がり状態までをカバーする範囲であり、通常、20センチないし40センチであり、着座具として用いる場合、最低レベル(着座レベル)は、床面から30センチないし40センチである。
【0025】
係止部材32について、説明すれば、
図4に示すように、係止部材32は、上端部26が弾性手段28を介して着座部保持部22に連結され、下端部30が複数の凸部18のいずれかに係止され、横部材200に対する連結点43を中心として、揺動可能に支持される。
係止部材32は、縦部材300に平行に配置される上板部60と、上板部60の下縁62から縦部材300に交差する向きにスペース21内に向かって延びる底板部64と有する縦断面がL字状をなし、上板部60の上部が、弾性手段に連結され、底板部64の下面が、対応する凸部18への利用者の自重伝達部を構成するとともに、底板部64の上板部60の下縁62から延びる一方の縁部66が、対応する凸部18の第2係合部38に対する係合部を構成する。係止部材32は、利用者の体重を横部材200から縦部材300に伝達することから、金属製または硬質樹脂製が好ましい。
左右それぞれに設けられる縦部材300に対して、内方(着座部12側)と外方とにそれぞれ、係止部材32A、32Bが設けられるところ、係止部材32Aの対応する横部材200に対する連結点43Aと、係止部材32Bの対応する横部材200に対する連結点43Bとは、横部材200の中心Cに関して、距離dを隔てて、対称に配置されており、距離dは、小さいほど好ましい。
【0026】
利用者が上体を前方に傾斜させることにより、着座部12の前部を下方に傾斜させる場合、一対の係止部材32のうち、前部側の一方の係止部材32の下端面が対応する凸部18の第1係合部34に対して支持された状態で横部材200と一体で移動する一方、後部側の他方の係止部材32が対応する連結点43を中心として揺動しつつ対応する凸部18の第2係合部38に案内されながら上方に移動し、ついには、凸部18の第1係合部34に係合するところ、凸部18の第1係合部34の傾斜角度Θ3と、係止部材32の下端面と係止部材32の横部材200に対する連結点43との距離とを調整することにより、両係止部材32の下端面がともに、対応する第1係合部34に面接触して、利用者の体重を安定的に面支持することが可能となり、凸部18を備えた縦部材300の材質を硬質樹脂製等軽量化が達成できる。これにより、持ち運びに便利であり、腐食性が低いことから、入浴の際、浴槽内に配置して活用するのに適する。軽量アルミ製でもよい。金属製であれば、凸部18は切削加工により形成すればよく、樹脂製であれば、凸部18は、成形加工により形成すればよい。なお、後に説明する落下防止治具40が付設されることから、計4つの係止部材32それぞれが、対応する凸部18の第1係合部34に対して、面支持される必要はなく、点支持に近い形態でもよい。
【0027】
利用者が自重を利用して着座部12を傾斜することにより、傾斜下方側の一方の係止部材32が、傾斜下方側の一方の縦部材300の対応する凸部18の最引っ込み部39に係止されつつ、傾斜上方側の他方の係止部材32が傾斜上方側の他方の縦部材300の対応する凸部18の第2係合部38に案内されながら上方に移動する際、横部材200の傾斜下方側への横ずれにより、他方の係止部材32の係止離脱を防止する、着座部12の落下防止治具40が設けられる。
より詳細には、落下防止治具40は、係止部材32が係止する凸部18が設けられる縦部材300の側面19と対向する側面19近傍に設けられ、落下防止治具40の側面81には、落下防止治具40が設けられる側と反対側の係止部材32が対応する凸部18の最引っ込み部39に係止され、そこを支点として、落下防止治具40が設けられる側の係止部材32が上方の凸部18に上がる際、側面に当たりながら、横方向への移動を制限しつつ、横部材200の傾斜を可能とするように、湾曲部83が形成される。湾曲部83の形状は、このような観点から定めればよい。
以上のように、左右側それぞれにおいて、落下防止治具40が2基ずつ設けられるところ、着座部12の前部を下方に傾斜させる際、横部材200の後方への横ずれにより、前部側の係止部材32の対応する凸部18の第1係合部34に対する係合が解除されるのを防止するのに、左右側それぞれにおいて、前部側の係止部材32に対して前後方向後方に位置する落下防止治具40が機能して、着座部12の落下を確実に防止し、一方、着座部12の後部を下方に傾斜させる際、横部材200の前方への横ずれにより、後部側の係止部材32の対応する凸部18の第1係合部34に対する係合が解除されるのを防止するのに、左右側それぞれにおいて、後部側の係止部材32に対して前後方向前方に位置する落下防止治具40が機能して、着座部12の落下を確実に防止する、要するに、落下防止治具40が交互に機能する。
【0028】
弾性手段28は、係止部材32の下端部30を凸部18に向かって常時付勢するように構成される。弾性手段は、通常のコイルばねでよい。
連結部25と連結点43との距離l2および下端部30と連結点43との距離l1は、係止部材32の凸部18に対する付勢力にてこの原理を利用する観点、および着座部12の安定支持を考慮して、係止部材32が凸部18の第1係合部34に係止される際、係止部材32の連結点43が係止位置の真上に位置するのが好ましいところ、このための横部材200の横移動距離を短くする観点から、l2をl1より大きく設定するのが好ましい。
【0029】
l1とl2とにより、てこの原理により、小さい付勢力を利用して、係止部材32の底面部66の対応する凸部18への押し付け力を拡大可能である。
この意味で、弾性手段28は、1本または複数の輪ゴムでもよく、係止部材32と着座部保持部22との間にワンタッチで交換可能にかけ渡すのでもよい。複数の輪ゴムであれば、1本切れても、安全である。
【0030】
着座部12と、着座部支持部14と、一対の直立体重受け部20とは、利用者の体重を支持可能な硬質樹脂であるのが好ましい。これにより、安全かつ持ち運び便利である。
下端部30と連結点43との距離l1と第1係合部34の傾斜角度Θ3の調整により、係止部材32が対応する凸部18の第1係合部34に対して支持される際、安定的に面支持可能である。
【0031】
最大傾斜角度調整部材41が、横方向部材の縦部材300の両脇に、上面に所定間隔Wを隔てて配置されている。より詳細には、上面に配置された矩形板材であり、矩形板材の縦部材300寄りの縁との縦部材300との所定間隔Wは、調整可能とされ、それにより、横部材200が傾斜する際、縦部材300の側部に当たり、これ以上、傾斜できないように制限する。傾斜角度調整部材は、横部材200の最大傾斜角度を調整するのであり、たとえば、所定間隔Wを凸部18の2段までに傾斜可能なように設定した場合、凸部18を1段ずつ傾斜させるように用いる場合には、傾斜角度調整部材は、機能しない。
【0032】
以上より、利用者が上体を前後に繰り返し傾斜させることにより、着座状態から立ち上がり直前状態まで、着座部12を上昇させる際、着座状態および立ち上がり直前状態においては、着座部12は、横部材200を介して縦部材300に対して安定的に4点支持され、着座部12を上昇させている最中においては、着座部12は、落下防止治具40および最大傾斜角度調整部材41により、着座部12の落下の恐れなく、横部材200を介して縦部材300に対して安定的に2点支持される。
より詳細には、着座状態および立ち上がり直前状態の静的状態においては、左側の一対の係止部材32により、2点、右側の一対の係止部材32により、2点、計4点で、着座部12が支持され、利用者が着座する着座部12、着座部12を支持する横部材200、および横部材200および縦部材300間を連絡する係止部材32を介して、利用者の体重が、縦部材300の凸部18の第1係合部34に伝達される。
【0033】
一方、着座部12を上昇させる動的状態においては、たとえば、利用者が上体を前かがみに傾斜させることにより、着座部12は、前部が下方に、後部が上方に傾斜するところ、左右側それぞれにおいて、前部側の係止部材32の底板部64が、弾性手段28の付勢力により、前部側の側面16の対応する凸部18の最引っ込み部39に押し付けられて、係止されながら、後部側の係止部材32の底板部64が、弾性手段28の付勢力により、後部側の側面16の対応する凸部18の第2係合部38に押し付けられ、第2係合部38に案内されながら、上方に移動し、一段上の凸部18の第1係合部34に係合するに至る。
【0034】
その際、利用者が上体を前かがみに傾斜させることにより、着座部12は、それに応じて、前部を下方に向きに傾斜するとともに、前後方向への横ずれが可能である。
それを前提に、前部側の係止部材32については、横部材200との連結点43を中心に回動自在に連結されているが、係止部材32の下部が最引っ込み部39に押し付けられた状態で、かかる連結点43が前方へ移動することから、前部側の係止部材32は横部材200と一体で動くところ、たとえば、利用者が着座部12上で上体を前方に傾斜させつつ尻部を後方にずらすことにより、横部材200が後方へ横ずれする可能性があるが、落下防止治具40により、側面81の湾曲部83が後部側の縦部材300の側面16に当たりつつ、前部側の係止部材32の第1係合部34に対する後方への係合解除を抑制しつつ、前部側の係止部材32の最引っ込み部39に対する係止位置を支点として、後部側の係止部材32の上方の移動を可能としている。
なお、最大傾斜角度調整部材41により、着座部12、すなわち、横部材200の傾斜角度は最大傾斜角度以内に制限され、たとえば、利用者の上体の前部側、または後部側への1回の傾斜による着座部12の傾斜により、傾斜上方側の凸部18をどれだけ上昇可能かについて、最大傾斜角度調整部材41の縦部材300の外側面との間隔調整により、1段に制限したり、3段まで可能とする等が可能である。この場合、たとえば、3段まで可能とする場合、落下防止治具40により、着座部12の落下を防止しつつ、利用者の上体の前部側、または後部側への1回の傾斜により、1段または2段上昇することは、当然に可能である。
【0035】
以上の構成を有する自重利用型立ち上がり補助具10について、その使用方法を含め、作用を
図8および
図9を参照しながら、以下に説明する。
図8は、横部材200の後部が下方に傾斜している場合において、利用者が上体を前側に倒すことにより、横部材200の前部を下方、後部を上方に傾斜させて、着座部12を上げる状況を示す。より詳細には、
図8(A)は、後部側の係止部材32の底板部64が対応する凸部18の第1係合部34に支持される一方、前部側の係止部材32の底板部64が、それより上の対応する凸部18の第1係合部34に支持されることにより、横部材200が後部側へ下方へ傾斜している状況を示し、
図8(B)は、前部側の係止部材32の底板部64が対応する凸部18の第1係合部34に支持されながら、後部側の係止部材32の底板部64が、対応する凸部18の第2係合部38に当たりながら、上方に案内されている状況を示し、
図8(C)は、前部側の係止部材32の底板部64が対応する凸部18の第1係合部34に支持されながら、後部側の係止部材32の底板部64が、1段上の凸部18の最突出部35まで達している状況を示し、
図8(D)は、前部側の係止部材32の底板部64が対応する凸部18の第1係合部34に支持され、一方、後部側の係止部材32の底板部64が、1段上の凸部18の第1係合部34に支持され、
図8(A)から後部側の係止部材32の底板部64が、1段上がった状況を示す。
【0036】
一方、
図9は、利用者が着座状態から立ち上がり状態までに着座部12のレベルが上がっていく状況を示し、
図9(A)は、利用者が着座状態の状況、
図9(B)は、利用者が上体を前後に繰り返し傾斜させることにより、着座部12のレベルが上がっていく途中の状況、
図9(C)は、利用者が立ち上がれる状態の状況を示す。
まず、
図9(A)に示すように、最大傾斜角度調整部材41により、対応する縦部材300の外側面との間隔を調整しておいて、高齢者である利用者が着座する。
次いで、
図8(A)に示すように、利用者が着座部12を着座位置から立ち上げようとする際、着座部12における利用者の体重のかけ方を変更する。
より詳細には、着座部12に載置される利用者の尻部の位置を前方にずらすことにより、着座部支持部14が後部が下方に傾く。
それにより、低レベルに位置する後部側の一方の係止部材32の下端部が凸部18の受け面から係止解除される一方、高レベルに位置する前部側の他方の係止部材32の下端部が凸部18の受け面に係止される。
その間、落下防止治具40により、着座部12が落下するのを防止することが可能である。最大傾斜角度調整部材41により、横部材200の傾斜角度が制限されている。
【0037】
次いで、
図8(B)に示すように、着座部12に着座状態の利用者が上体を前側に傾斜させることにより、体重をさらに前部側に負荷させることにより、横部材200の後部側が上方、前部側が下方の向きにさらに傾斜しながら、前部側に横ずれすると、前部側の係止部材32については、底板部66の一方の縁部64が対応する凸部19に対して、弾性手段28の付勢力により押し付けられて最引っ込み部39に対して係止しつつ、前部側の係止部材32の横部材200への連結点43が前部側に横ずれすることにより、係止部材32は横部材200に対して連結点43を中心に回動自在に連結されているが、横部材200と一体で図面上右方向に傾斜し、後部側の係止部材32については、横部材200は、前部側の係止部材32により支持されながら、底板部の一方の縁部が対応する凸部19に対して、弾性手段28の付勢力により押し付けられて第2係合部38に案内されつつ、第2係合部38を上方に移動する。
【0038】
次いで、
図8(C)に示すように、前部側を下方に傾斜させる際、横部材200は縦部材300に対して前部側に横方向に若干移動するが、その際、落下防止治具40の側面81が縦部材300の側面19に当接することにより、前部側へのそれ以上の横方向の移動を制限しつつ、縦部材300に関して落下防止治具40と反対側に位置する一方の係止部材32の底板部66が対応する凸部18の最引っ込み部39に係止され支持されつつ、縦部材300に関して落下防止治具40と同じ側で前部側に位置する他方の係止部材32が対応する凸部18の傾斜面に対して、弾性手段28により押し付けられながら上方に案内されるところ、落下防止治具40の側面81、特に下部が後部側に凸に湾曲状に形成されていることにより、このような一方の係止部材32を支点とする他方の係止部材32の上方への動きが可能となる。
【0039】
次いで、
図8(D)に示すように、着座部12に着座状態の利用者が上体を前側に傾斜させることにより、体重をさらに前部側に負荷させることにより、横部材200の後部側が上方、前部側が下方の向きにさらに傾斜しながら、落下防止治具40により、側面81の湾曲部83が後部側の縦部材300の側面に当たりながら、横部材200の後部側への横ずれを防止しつつ、横部材200は、前部側の係止部材32により支持されながら、後部側の係止部材32の底面部が、
図8(A)に比べ、一段上の凸部18の第1係合部34により支持され、これにより、利用者の前側への一回の傾斜により、横部材200の後部側が上方に移動する。
なお、着座部12を元の着座レベルに戻すには、一対の係止具それぞれの対応する直立体重受け部の凸部18に対する係止を解除することにより、着座部12をフリーにして、着座レベルまで落下させ、その位置の凸部18に再度係止させればよい。
【0040】
着座中は、着座部12は水平でもよい。
以上、
図9(B)に示すように、着座レベルから立ち上がりレベルまで昇る間は、横部材200は、前後方向に移動可能としつつ、たとえば、前部側に体重をかけて、着座部12の前部を下方に傾斜させる一方、着座部12の後部を上方に傾斜する際、前部側の一方の係止部材32は連結点が前部側に移動しつつ弾性手段28により下部が対応する凸部18に押し付けられながら、着座部12と一体で回転することで、第1係合部34 を支点に、他方の係止部材32は、第2係合部38に案内されつつ、上方の凸部18の第1係合部34レベルに至る。その間、落下防止治具40により、横部材200が横方向に移動しつつ、移動制限することにより、一方の係止部材32がずれ落ちるのを防止する。なお、最大傾斜角度調整部材41により、着座部12の傾斜角度は、一定限度に制限される。
他方の係止部材32が、上方の凸部18の第1係合部34レベルに至る際、着座部12は、両方の係止部材32により、対応する凸部18の第1係合部34に対して面支持され、利用者の体重が、安定的に支持される。
【0041】
図9(C)に示すように、この繰り返しにより、立ち上がりレベルに達する際、膝下に対して大腿部のなす角度が鈍角になり、前側に踏ん張りやすいように、2段飛びがよい。
【0042】
以上の構成を有する自重利用型立ち上がり補助具10によれば、着座部12に着座する利用者が、着座部12に対する体重のかけ方を前後に移動させることにより、着座部保持部22が上下方向に揺動し、その際、着座部保持部22は一対の直立体重受け部20により二点支持され、一対の直立体重受け部20の複数の凸部18のいずれかに係止部材32の下端部30を係合するとともに、弾性手段28が、下端部30を凸部18に向かって付勢するように構成されることから、係止部材32の下端を支持する凸部18を左右交互に変えることを通じて、着座部12の昇降が可能であり、駆動モーター等駆動装置の必要なく、軽量で持ち運び便利であるとともに、着座姿勢の利用者の体重および体の動きを利用して、介護不要に、着座位置を自動的に昇降可能であるとともに、高齢者の体力維持に資することが可能である。
【0043】
以上の構成を有する自重利用型立ち上がり補助具によれば、利用者が上体を前方に傾斜して着座部12の前部に体重をかけることにより、横部材200は前部を下方に傾斜させつつ前方に移動する一方、後部を上方に傾斜させ、その際、横部材200の前部側の係止部材32は、弾性手段28により、対応する凸部18に対して係止位置に付勢保持されながら、つまり、横部材200はその位置を基点に支持されながら、後部側が上方に傾斜することを通じて、後部側の係止部材32は、弾性手段28により対応する凸部18に対する付勢力に抗して、対応する凸部18に対して係止位置から、係止解除位置、さらに、上方の凸部18に対する係止位置まで上方に移動し、横部材200は両側で支持されることが可能となる。
このように、一方の係止部材32の係止位置に基づいて、他方の係止部材32の係止位置を、係止解除位置、かくして、上方の凸部18の係止位置に移動し、利用者が上体の前後の動きを繰り返すことにより、利用者のリハビリも兼ねつつ、横部材200、つまり横部材200が支持する着座部12は、前部および後部を交互に上方に移動させ、以て着座部12を上方に移動させ、利用者の立ち上がりを補助することが可能となる。なお、横部材200の傾斜角度に応じて、凸部18を一段ずつでなく、複数段上がることが可能であり、横部材200の両側での支持を係止解除することにより、元の着座レベルに戻すことが可能である。
【0044】
変形例として、利用者の自重および体の動きを利用して高さ調整可能な着座具である点において、第1実施形態と同様であるが、本実施形態においては、着座部12の左右それぞれに設ける一対の縦部材300について、第1実施形態においては、一対の縦部材300が着座部12の左右方向にオフセット配置され、それに応じて、一対の縦部材300において、着座部12の外方側に位置する一方の縦部材300に対応する係止部材32は、着座部12の外方側に配置され、着座部12の内方側に位置する一方の縦部材300に対応する係止部材32は、着座部12の内方側に配置されているが、一対の縦部材300が着座部12の左右方向にオフセット配置されず、対向配置され、それに応じて、一対の係止部材32がいずれも、着座部12の内方側に配置されていてもよい。
一対の係止部材32がいずれも、着座部12の内方側に配置されていることから、一対の係止部材32が対応する連結点を中心として揺動する際、一対の係止部材32同士が衝突しないように、対向配置される一対の縦部材300間の間隔をその分広くする必要がある。
以上の構成によれば、第1実施形態に比べて、構造の単純化、部品点数の低減が可能であるとともに、軽量化が達成されるので着座補助具の持ち運びに便利であり、さらには、着座部12の左右方向の寸法を短くすることが可能であり、よりコンパクト化が達成できる。
なお、利用者の自重および体の動きを利用して、着座部12の高さを調整する作用については、第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0045】
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、利用者の自重および体の動きを利用して高さ調整可能な自重利用型立ち上がり補助具である点で、第1実施形態と同様であるが、第1実施形態においては、自重利用型立ち上がり補助具自体が、利用者が着座具として利用するものであるが、本実施形態においては、通常の椅子に対して適用可能な立ち上がり補助具である点である。
より詳細には、第1実施形態においては、それ自身が着座具として椅子のように機能するものであることから、一体組立品であるのに対して、本実施形態においては、通常の椅子CHに対して適用可能なように、一体組立品ではなく、パーツごとの分解品セットであり、適用の際、椅子CHに対して組付け可能としている。
【0046】
より具体的には、
図10に示すように、自重利用型立ち上がり補助具は、立ち上がり補助部材パーツが2セット100A、100B、および立ち上がり補助部材パーツ同士を連結固定する、伸縮自在な連結フレームパーツ100Cから構成される。
立ち上がり補助部材パーツ100A、100Bそれぞれは、E字状のフレーム部をなし、上部水平フレームと中部水平フレームとの間に、第1実施形態と同様な、縦部材300、横部材200および縦部材300と横部材200とを連絡する係止部材32が組付けられ、下部水平フレームが、椅子CHの底面と床面との間に配置されている。
伸縮自在な連結フレームパーツ100Cは、一対の水平フレーム部44および一対の鉛直フレーム部45により矩形フレーム状とされ、一対の水平フレーム部44それぞれが、一対の縦部材300パーツ100A、100Bそれぞれの上部水平フレームおよび下部水平フレーム同士を連結し、たとえば、水平フレーム部44を内管と外管とからなる二重管として、内管の外管に対する内嵌長さを調整可能とするのが好ましい。
これにより、立ち上がり補助部材パーツ100A、100B間の間隔が調整された状態で、その間に、着座部12を設置可能である。
以上、立ち上がり補助部材パーツ100A、100Bが連結フレームパーツ100Cにより組付けられた状態で、立ち上がり補助部材パーツ100A、100Bそれぞれの下部水平フレームにより安定的に保持される。
【0047】
たとえば、両側にひじ掛けのある椅子CHに適用する場合、一方のひじ掛けの外側面部に立ち上がり補助部材パーツ100A、他方のひじ掛けの外側面部に立ち上がり補助部材パーツ100Bをあてがった状態で、椅子CHの背面側において、連結フレームパーツ100Cにより、立ち上がり補助部材パーツ同士100A、Bを、たとえば、凹凸による嵌合によりネジにより連結固定すればよい。
これにより、椅子CHの座面の左右各側に立ち上がり補助部材部材が安定的に固定配置され、第1実施形態のように、左右の一対の縦部材300により支持された着座部12が高さ調整可能とされる。以上により、予め、長椅子CHに対して、本実施形態の自重利用型立ち上がり補助具を予めセットして、利用者は自重利用型立ち上がり補助具の着座部12に着座し、他の人は、長椅子CHの着座面に着座する態様で、着座者同士でのコミニケーションの支障なく、立ち上がりの際の補助として利用可能である。
なお、利用者の自重および体の動きを利用して、着座部12の高さを調整する作用については、第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、一対の直立体重受け部において、スペーサ85をかませて左右方向にオフセット配置させることにより、一対の直立体重受け部の凸部18が設けられる側部を左右方向にずらせて配置するものとして説明したが、それに限定されることなく、一対の直立体重受け部の凸部18が設けられる側部を左右方向にずらさずに、スペーサ85なしに対向配置してもよい。
【0049】
たとえば、本実施形態において、利用者が着座部12を前後方向に繰り返し傾斜させることにより、着座部12を昇降させる場合、上下方向に隣接する凸部18を一段ずつ昇降するものとして説明したが、それに限定されることなく、最大傾斜角度調整部材41により調整を前提に、利用者が着座部12を左右方向に傾斜させる傾斜角度を大きくすることにより、上下方向に隣接する凸部18を数段ずつ昇降するのでもよく、それにより、利用者が着座部12を左右方向に傾斜させるのに必要な上体の動かし回数を低減することが可能である。
たとえば、本実施形態において、高さを調整可能な着座具または椅子CHに適用する自重利用型立ち上がり補助具として説明したが、それに限定されることなく、本自重利用型立ち上がり補助具は、単純な構造で軽量であることから、入浴する際、浴槽の底に予め配置し、湯舟につかる際、着座部12に着座し、浴槽から出る際、本自重利用型立ち上がり補助具を利用するのでもよい。
【0050】
たとえば、本実施形態において、高さを調整可能な着座具または椅子CHに適用して、立ち上がりの補助としての自重利用型立ち上がり補助具として説明したが、それに限定されることなく、本自重利用型立ち上がり補助具を用いて、利用者が上体の前後への傾斜を繰り返すことにより、リハビリ専用具として活用するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、高さを調整可能な着座具または椅子CHに適用して、単独の立ち上がりの補助としての自重利用型立ち上がり補助具として説明したが、それに限定されることなく、従来の手摺具と併用して、本自重利用型立ち上がり補助具を用いて、利用者が上体の前後への傾斜を繰り返すことにより、着座部12のレベルを一定高さに達した段階で、手摺具を用いて、足が踏ん張りやすい状況で手の力も利用して、立ち上がってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具を示す側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具を示す部分斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具の着座部支持部14まわりを示す側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具の縦部材300を示す側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具の縦部材300の変形例の概略図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具の作動状況を示す概略部分側面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態による自重利用型立ち上がり補助具において、着座姿勢の利用者が着座状態からたちあがり状態まで上がっていく様子を示す概略図である。
【
図10】本発明の第2実施形態による自重利用型立ち上がり補助具の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
h 上下方向に隣接する凸部間の間隔
C 横部材200の中心
D 直立体重受け部間の間隔
d 中心Cと連結点43との距離
Θ1 着座部12の傾斜角度
Θ2 着座部12の最終傾斜角度
Θ3 第1係合部34の傾斜角度
Θ4 第2係合部38の傾斜角度
l1 連結部25と連結点43との距離
l2 下端部30と連結点43との距離
R 凸部の範囲
L 着座部の前後方向長さ
CH 椅子
10 自重利用型立ち上がり補助具
12 着座部
14 着座部支持部
16 側部
18 凸部
19 側面
20 直立体重受け部
21 スペース
22 着座部保持部
23 連結部
24 揺動部材
25 連結部
26 上端部
27 細長部材
28 弾性手段
30 下端部
31 L字部
32 係止部材
34 第1係合部
35 最突出縁
38 第2係合部
39 最引っ込み部
40 落下防止治具
41 側面
42 フレーム状スタンド
43 連結点
44 水平フレーム部
45 鉛直フレーム部
46 上下面
47 側面
48 水平面
50 最大傾斜角度調整部材
51 板部材
53 板部材
55 上面
60 上板部
62 下縁
64 底板部
66 一方の縁部
68 正面部
70 側面部
81 側面
83 湾曲部
85 スペーサ
100 パーツ
200 横部材
300 縦部材
【手続補正書】
【提出日】2021-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座する着座部と、着座部を支持する着座部支持部とを有し、
着座部支持部は、それぞれ、一方の側部に、互いに高さ方向に所定間隔を隔てた複数の凸部が設けられた、一対の直立体重受け部と、
一対の直立体重受け部に支持され、上下方向に揺動可能な着座部保持部とを有し、
前記一対の直立体重受け部は、一方の側部同士を、所定間隔を隔てて対向配置され、
前記着座部保持部は、それぞれ、前記一対の直立体重受け部間にかけ渡され、互いに連結され一体に揺動可能な一対の揺動部材であり、一方の揺動部材は、一方の直立体重受け部に支持され、他方の揺動部材は、他方の直立体重受け部に支持され、前記一対の直立体重受け部により二点支持され、
前記着座部保持部は、それぞれ、上端部が弾性手段を介して前記着座部保持部に連結され、下端部が対応する直立体重受け部の前記複数の凸部のいずれかに係止され、着座部保持部を支点として、揺動可能に支持される、一対の係止部材を有し、
前記弾性手段は、前記係止部材の下端部を前記凸部に向かって付勢するように構成され、
前記着座部に着座する利用者が、前記着座部に対する体重のかけ方を前記着座部保持部の延び方向に移動させることにより、前記係止部材の下端が係止する前記凸部を、前記一対の係止部材間で交互に変えることを通じて、前記着座部の昇降を可能とする、自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項2】
それぞれ、上下方向に整列する複数の凸部を側部に有する一対の縦部材であって、一方の複数の凸部と、他方の複数の凸部とを横方向に所定間隔を隔てて対向配置した一対の縦部材と、
利用者が着座する着座部を支持する横部材であって、横部材の中心が該一対の縦部材間に位置するように該一対の縦部材間を跨ぐように横方向に延びる横部材と、
それぞれ、該横部材の中心に関して互いに反対側に配置され、該横部材に対して上下方向に交差するように設けられ、前記横部材を前記縦部材に対して支持する、一対の係止部材と、
該一対の係止部材それぞれを対応する前記縦部材の複数の凹部各々に向かって付勢する弾性手段と、を有し、
該一対の係止部材それぞれは、対応する前記縦部材の複数の凹部各々に対して、利用者の自重を受ける係止位置と、係止解除位置との間で、前記横部材に対する連結点を中心に、揺動可能に設けられる、
ことを特徴とする、自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項3】
利用者が、自重を利用して前記着座部保持部を傾斜させることにより、前記係止部材の下端部が係止されている前記凸部から係止解除される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項4】
前記凸部は、最引っ込み部から最突出部まで延びる第1係合部と、最引っ込み部から最突出部まで上方に傾斜する第2係合部とを有する鋸刃状をなし、前記係止部材を介して、利用者の自重を受ける第1係合部に対して、その下方の第2係合部まわりの張り出し部が補強部を構成するとともに、第2係合部が前記係止部材の下端の案内面を形成する一方、前最引っ込み部が、前記係止部材に対する係止位置を形成する、請求項2に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項5】
前記第1係合部は、最引っ込み部から最突出部まで、第2係合部の上方傾斜角度より小さい傾斜角度で、下方に傾斜する、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項6】
前記凸部は、前記係止部材の前記第2係合部に沿う上方への移動により、引っ込み可能に可動である一方、前記係止部材の前記第1係合部に対する下方への移動により、固定保持される、請求項5に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項7】
前記係止部材は、前記縦部材に平行に配置される上板部と、該上板部の下縁から前記縦部材に交差する向きに延びる底板部と有する縦断面がL字状をなし、
前記上板部の上部が、前記弾性手段に連結され、前記底板部の下面が、対応する前記凸部への利用者の自重伝達部を構成するとともに、前記底板部の前記上板部の前記下縁から延びる一方の縁部が、対応する前記凸部の前記第2係合部に対する係合部を構成する、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項8】
前記横部材は、上下面が左右方向に間隔を隔てた対向した一対の板材で構成され、各上下面の対向内面により構成されるスペース内に、前記一対の縦部材および前記係止部材が収容され、二組の一対の板材が、前記上下面に直交する向きに所定間隔を隔てて配置され、前記着座部が、二組の一対の板材間に跨って配置される、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項9】
前記一対の縦部材それぞれは、前後方向に沿う正面部と、左右方向に沿う側面部とに構成されるL字状横断面の部材であり、前記正面部の側縁同士が、左右方向に所定間隔を隔てて固定配置され、側縁に形成される複数の凸部同士が、左右方向にオフセット配置される、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項10】
利用者が自重を利用して前記着座部を傾斜することにより、傾斜下方側の一方の前記係止部材が、傾斜下方側の一方の縦部材の対応する前記凸部の最引っ込み部に係止されつつ、傾斜上方側の他方の前記係止部材が傾斜上方側の他方の縦部材の対応する前記凸部の前記第2係合部に案内されながら上方に移動する際、前記横部材の傾斜下方側への横ずれにより、一方の前記係止部材の係止離脱を防止する、前記着座部の落下防止治具が、前記横部材に設けられる、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項11】
前記落下防止治具の側面には、前記落下防止治具が設けられる側と反対側の前記係止部材が対応する前記凸部の引っ込み部に係止され、そこを支点として、前記落下防止治具が設けられる側の前記係止部材が上方の凸部に上がる際、傾斜下方側の前記縦部材の側面に当たりながら、前記横部材の横方向への移動を制限しつつ、前記横部材の傾斜を可能とするように、湾曲部が形成される、請求項10に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項12】
前記横部材の上面には、前記縦部材の外側面との間の間隔を調整可能とすることにより、前記横部材の傾斜角度を調整可能な最大傾斜角度調整部材を設ける、請求項8に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項13】
前記横部材の傾斜角度は、5°ないし15°に設定される、請求項12に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項14】
前記一対の係止部材それぞれの前記横部材に対する連結位置は、該横部材の中心に関して対称に配置され、前記連結位置間の間隔は、上下方向に隣接する凸部の前記第1係合部間の間隔および/または利用者による着座部の最大可能傾斜角度および/または前記一対の係止部材間の間隔に応じて、設定される、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項15】
前記一対の係止部材の前記横部材に対する連結位置は、前記第1係合部の傾斜角度との関係において、前記両係止部材の前記底板部の前記下面が、対応する凸部の前記第1係合部に対して面支持されるように設定される、請求項7に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項16】
前記着座部支持部は、安定保持可能なコの字状横断面のフレーム状スタンドを有し、対向するフレーム部それぞれに、前記一対の直立体重受け部の一つが固定支持される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項17】
前記着座部は、前記着座部支持部の上面に着脱自在に設置される、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項18】
前記着座部は、その上面が、臀部が収まり可能な中央部が窪んだ湾曲状である、請求項17に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項19】
一方の前記縦部材の凸部の前記第1係合部と、他方の前記縦部材の対応する凸部の前記第1係合部とは、高さ方向に隣接する凸部同士の間隔の範囲内で、高さ方向にオフセット配置されている、請求項4に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項20】
前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記係止部材の前記底板部との距離は、前記係止部材の前記横部材に対する連結点と前記弾性手段の前記横部材に対する連結点との距離よりも小さく設定され、
前記弾性手段は、1本または複数の輪ゴムであり、前記係止部材と前記着座部保持部との間にワンタッチで交換可能にかけ渡される、請求項7に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項21】
高さ方向に隣接する前記凸部の間隔は、0.5センチないし2センチ、前記縦部材の前記側部同士の間隔は、2センチないし5センチである、請求項2に記載の自重利用型立ち上がり補助具。
【請求項22】
前記着座部と、前記着座部支持部と、前記一対の直立体重受け部とは、利用者の体重を支持可能な強度を有する硬質樹脂製である、請求項1に記載の自重利用型立ち上がり補助具。