(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032919
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】旅行プラン作成支援システム及び旅行プラン作成支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/14 20120101AFI20230302BHJP
【FI】
G06Q50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139295
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆川 剛
(72)【発明者】
【氏名】足立 進吾
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁貴
(72)【発明者】
【氏名】米原 三揮
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 陽平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC26
(57)【要約】
【課題】具体的な旅行先が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能とする。
【解決手段】旅行プラン作成支援システム10において、旅行先候補地に関する情報を保持する記憶装置101と、ユーザ指定の検索条件及び前記情報に基づいて、検索条件に適合する複数の候補地を特定し、複数の候補地それぞれの混雑に関する情報等に基づき、混雑状況に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定し、その訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成し、旅程案それぞれについて、候補地及び移動手段の混雑状況に応じて評価し、その評価が相対的に高い旅程案を選択し出力する演算装置104を備えた装置100を含む構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅行先候補地に関する情報を保持する記憶装置と、
ユーザ指定の検索条件及び前記情報に基づいて、前記検索条件に適合する複数の候補地を特定する処理と、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、少なくとも混雑状況に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する処理と、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の混雑状況に応じて評価する処理と、前記評価が相対的に高い旅程案を選択して所定装置に出力する処理を実行する演算装置と、
を備えた装置を含む旅行プラン作成支援システム。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記複数の候補地を特定するに際し、所定の複数画像のうち旅行先のイメージとしてユーザが選択した画像の情報に基づき、当該画像と類似する画像を含む、既存の旅行情報を所定のデータベースにて検索し、当該旅行情報が含むキーワード群を抽出する処理と、所定のエリア紹介情報のうち、前記キーワード群と類似のキーワード群を含むものを特定し、前記特定したエリア紹介情報が示すエリアを、前記複数の候補地として特定するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の旅行プラン作成支援システム。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記複数の旅程案を作成するに際し、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、混雑状況及び候補地での滞在時間に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の旅行プラン作成支援システム。
【請求項4】
前記演算装置は、
前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間に応じて評価するものである、
ことを特徴とする請求項3に記載の旅行プラン作成支援システム。
【請求項5】
前記演算装置は、
前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間を所定ルールで判定した評価値を、当該旅程案における総時間数で除算して、単位時間当たりの評価値を算定し、当該単位時間当たりの評価値の大小に基づいて前記選択を行うものである、
ことを特徴とする請求項4に記載の旅行プラン作成支援システム。
【請求項6】
情報処理システムが、
旅行先候補地に関する情報を記憶装置で保持して、
ユーザ指定の検索条件及び前記情報に基づいて、前記検索条件に適合する複数の候補地を特定する処理と、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、少なくとも混雑状況に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する処理と、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の混雑状況に応じて評価する処理と、前記評価が相対的に高い旅程案を選択して所定装置に出力する処理を実行する、
ことを特徴とする旅行プラン作成支援方法。
【請求項7】
前記情報処理システムが、
前記複数の候補地を特定するに際し、所定の複数画像のうち旅行先のイメージとしてユーザが選択した画像の情報に基づき、当該画像と類似する画像を含む、既存の旅行情報を所定のデータベースにて検索し、当該旅行情報が含むキーワード群を抽出する処理と、所定のエリア紹介情報のうち、前記キーワード群と類似のキーワード群を含むものを特定し、前記特定したエリア紹介情報が示すエリアを、前記複数の候補地として特定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の旅行プラン作成支援方法。
【請求項8】
前記情報処理システムが、
前記複数の旅程案を作成するに際し、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、混雑状況及び候補地での滞在時間に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の旅行プラン作成支援方法。
【請求項9】
前記情報処理システムが、
前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間に応じて評価する、
ことを特徴とする請求項8に記載の旅行プラン作成支援方法。
【請求項10】
前記情報処理システムが、
前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間を所定ルールで判定した評価値を、当該旅程案における総時間数で除算して、単位時間当たりの評価値を算定し、当該単位時間当たりの評価値の大小に基づいて前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項9に記載の旅行プラン作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行プラン作成支援システム及び旅行プラン作成支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プライベートでの旅を望む者は、その目的や行き先を漠然と思いつき、それに基づいて試行錯誤しつつ旅の計画を立てるケースも多い。そのような場合、具体的な旅行先の選定や、予算や時間に見合った移動計画の作成は、非常に手間の掛かる作業である。さらに、旅行先で予想される混雑状況や、道路渋滞、公共交通機関の混雑状況などを鑑み、自分の好みに合った旅行プランを作成することは、更なる手間を要する。
【0003】
そのため、旅行プラン作成を支援する種々の従来技術が提案されてきた。そうした従来技術として、例えば、複数日にわたる旅行であっても、指定したスポットを効率良く訪問する旅行プランを作成する情報処理システム(特許文献1参照)などが存在する。
【0004】
この情報処理システムは、複数のスポットを含む旅行プラン作成条件を取得する旅行プラン作成条件取得手段と、前記複数のスポットの訪問順序を決定する訪問順序決定手段と、前記決定された訪問順序、および一日の活動時間帯に基づいて、前記複数のスポットを複数日にわたって割り当てることにより、旅行プランを作成する旅行プラン作成手段と、前記旅行プランを出力する情報出力手段と、を備えるシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが従来技術においては、目的地や経由地など、旅の主要要素が曖昧なままのユーザに対して、適宜な旅行プランの作成を支援する構成とはなっていない。つまり目的地や経由地等が当初から明確なユーザのみを対象とした技術であって、それ以外のユーザにとっては直ちに有用とは言い難いものであった。
【0007】
そこで本発明の目的は、具体的な旅行先が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の旅行プラン作成支援システムは、旅行先候補地に関する情報を保持する記憶装置と、ユーザ指定の検索条件及び前記情報に基づいて、前記検索条件に適合する複数の候補地を特定する処理と、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、少なくとも混雑状況に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する処理と、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の混雑状況に応じて評価する処理と、前記評価が相対的に高い旅程案を選択して所定装置に出力する処理を実行する演算装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の旅行プラン作成支援方法は、情報処理システムが、旅行先候補地に関する情報を記憶装置で保持して、ユーザ指定の検索条件及び前記情報に基づいて、前記検索条件に適合する複数の候補地を特定する処理と、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、少なくとも混雑状況に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する処理と、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の混雑状況に応じて評価する処理と、前記評価が相対的に高い旅程案を選択して所定装置に出力する処理を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、具体的な旅行先が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の旅行プラン作成支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態における基準画像データベースの構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における旅行記事データベースの構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態におけるエリア情報データベースの構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態におけるスポット情報データベースの構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態の旅行プラン作成支援方法のシーケンス例を示す図である。
【
図9】本実施形態における候補エリア抽出処理のフロー例を示す図である。
【
図10】本実施形態におけるキーワード推定処理のフロー例を示す図である。
【
図11】本実施形態における旅程候補作成処理のフロー例を示す図である。
【
図12】本実施形態の旅程候補情報の例を示す図である。
【
図13】本実施形態における旅程情報の例を示す図である。
【
図14】本実施形態における旅客行動ネットワークの作成処理例を示す図である。
【
図15】本実施形態における旅客行動ネットワークの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<システム構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の旅行プラン作成支援システム10の構成例を示す図である。
図1に示す旅行プラン作成支援システム10は、具体的な旅行先が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能とするコンピュータシステムである。
【0013】
本実施形態の旅行プラン作成支援システム10は、
図1で示すように、ネットワーク1を介して、サーバ100と端末装置200とが通信可能に接続されている。これらを総称して旅行プラン作成支援システムとする。
【0014】
端末装置200は、旅行プランの作成および提示を望むユーザの端末である。具体的には、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどが該当するが、それらに限定するものではない。
【0015】
<ハードウェア構成>
また、本実施形態の旅行プラン作成支援システム10を主として構成するサーバ100(旅行プラン作成支援装置)は、記憶装置101、主記憶装置103、演算装置104、
通信装置105、及びデータベース群106を備える。
【0016】
このうち記憶装置101は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。
【0017】
また、主記憶装置103は、RAM(Random Access Memory)など揮発性記憶素子で構成される。
【0018】
また、演算装置104は、記憶装置101に保持されるプログラムを主記憶装置103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central Processing Unit)である。
【0019】
また、通信装置105は、ネットワーク1と接続して端末装置200との通信処理を担うものであり、例えば、ネットワークインターフェイスカード等を採用できる。
【0020】
また、データベース群106は、例えば、RDB(Relational Database)などの適宜なデータベースの集合であって、本実施形態では、基準画像データベース125、旅行記事データベース126、エリア情報データベース127、スポット情報データベース128、及び経路情報データベース129を含んでいる。
【0021】
このうち基準画像データベース125及び旅行記事データベース126は、候補エリア抽出プログラム111(後述)による処理に際して使用する情報を蓄積したデータベースである。
【0022】
また、エリア情報データベース127は、エリア情報(後述)を蓄積したデータベースである。また、スポット情報データベース128は、スポット情報(後述)を蓄積したデータベースである。
【0023】
また、経路情報データベース129は、出発地、帰着地、スポット間の移動に関する経路探索で、例えば、旅程候補作成プログラム112(後述)が使用する情報を蓄積したデータベースである。この経路情報データベース129が蓄積する情報としては、日別・時間帯別の渋滞情報なども含むものとする。なお、渋滞情報は、過去の実績から統計的に予想された値を、1日1回など所定の時間間隔で、外部の交通制御システム等から適宜に取得し更新されるものとする。勿論、鉄道や飛行機など公共交通機関における運行情報などに基づきリアルタイムで更新する運用としてもよい。
【0024】
なお、サーバ100と端末装置200が、ネットワーク1を介さずに一体として成るような構成としてもよい。さらに、データベース群106など、ネットワーク1を介して更新される情報について、事前に格納した情報を使用する、或いはCD(コンパクトディスク)等の外部媒体を介して更新するようにすることで、旅行プラン作成支援システム10をスタンドアロンマシンとして構成することができる。
【0025】
また、記憶装置101内には、本実施形態の旅行プラン作成支援装置として必要な機能を実行する為のプログラムとして、旅行プラン作成プログラム110、候補エリア抽出プログラム111、及び旅程候補作成プログラム112が保持されている。
【0026】
このうち旅行プラン作成プログラム110は、本発明の旅行プラン作成支援方法における全体フローを制御するためのプログラムである。演算装置104によってこの旅行プラン作成プログラム110が実行される中で、候補エリア抽出プログラム111や旅程候補作成プログラム112が演算装置104によって実行され、必要な処理が行われることと
なる。
【0027】
また、候補エリア抽出プログラム111は、ユーザが指定した旅行プラン作成条件と、当該ユーザが自身の旅行イメージ等に応じて選択した選択画像情報に基づいて、訪問エリアの候補となる候補エリアを抽出するプログラムである。
【0028】
また、旅程候補作成プログラム112は、候補エリア抽出プログラムで抽出した候補エリア等に基づいて訪問先候補となるスポットを適宜選定し、混雑状況を考慮して旅客行動ネットワークを作成し(詳細は後述。
図14及び
図15参照)、当該旅客行動ネットワークにおける各ルートすなわち旅程に関して、混雑状況や滞在時間を考慮して評価し、ユーザが指定した旅行プラン作成条件に対して好適な旅程候補を選定するためのプログラムである。
【0029】
また、これらプログラム110~112の実行に際して利用する、または実行により得られる情報として、旅行プラン作成条件120、嗜好推定用画像セット121、選択画像情報122、及び旅程候補リスト123も、記憶装置101で保持される。これら情報の詳細は後述する。
【0030】
一方、端末装置200は、制御部201、通信部202、操作入力部203、及び表示部204を備えている。
【0031】
このうち制御部201は、適宜な記憶装置に保持されるプログラムを実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central
Processing Unit)である。
【0032】
制御部201は、条件取得部210及び情報出力部211の各機能を備える。このうち条件取得部210は、サーバ100と協働して、旅行プランの作成条件のユーザ入力を受け付けて取得する。また、情報出力部211は、条件取得部210による処理に伴って必要な情報を表示部204に出力し、また、サーバ100での処理結果(例えば旅程候補等)を表示部204に出力する。
【0033】
また、通信部202は、ネットワーク1と接続してサーバ100との通信処理を担うネットワークインターフェイスカード等である。
【0034】
また、操作入力部203は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付けるものであり、例えば、キーボードやマウスといった入力装置で構成される。なお、操作入力部203は必ずしもハードウェアとしてのキーボード等で構成される必要はなく、タッチパネルとソフトウェアキーボードの組み合わせ等、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして構成されるようなものでもよい。
【0035】
また、表示部204は、制御部201による処理データの表示を行うディスプレイ等の出力装置で構成される。
【0036】
<データ構造例>
続いて、本実施形態の旅行プラン作成支援システム100が用いる各種情報について説明する。
図2に、本実施形態における基準画像データベース125の構成例を示す。
【0037】
本実施形態の基準画像データベース125は、端末装置200に配信して表示させることで、ユーザの旅行イメージにフィットする画像の選択肢として提示する画像群を格納したデータベースである。なお、この画像群の一例として、
図8にて嗜好推定用の画像セッ
ト、として示している。
【0038】
この基準画像データベース125は、例えば、各画像を一意に示す画像IDをキーとして、当該画像に関して得ている特徴ベクトル、及び当該画像の画像ファイルといったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。
【0039】
なお、上述の特徴ベクトルは、元の画像(画像ファイル)を、図示しない機械学習のモデル(以下「特徴ベクトル抽出器」とも呼ぶ)に入力として与えることで得られるものとなる(勿論、これに限定しない)。上述のモデルとは、例えば、多層ニューラルネットにより構成される画像分類モデルを、所定の大規模なデータセット(写り込んでいる被写体等のタグを付けた画像群)に基づき予め機械学習(画像データとタグとの紐付けを利用した教師あり学習)させた上で、最終層にあたる、softmax関数等によって複数のクラスに
分類している部分を取り除いたものとなる。こうしたモデル(特徴ベクトル抽出器)の出力値(Embeddingベクトル)が特徴ベクトルとなる。ここで説明した特徴ベクトルの概念
やその取得方法等については、以後の説明においても同様(共通の学習済みモデルを使用する)であるものとする。
【0040】
また
図3に、本実施形態における旅行記事データベース126の構成例を示す。本実施形態の旅行記事データベース126は、所定の媒体(ネット含む)に掲載された旅行記事の情報を格納したデータベースである。この旅行記事の情報は、例えば、サーバ100が、ネットワーク1を介して適宜な旅行情報サイトにアクセスし、定期的に取得、更新したものとなる。
【0041】
この旅行記事データベース126は、例えば、各記事を一意に示す記事IDをキーとして、当該記事に関して得ている画像データ(例:旅先の画像など)、当該画像の周囲に掲載されているテキストデータ(例:旅先の様子を記載した解説文)、及び上述の画像データの特徴ベクトルといったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。この特徴ベクトルは、上述の基準画像データベース125におけるものと同様の特徴ベクトル抽出器を用いて得たものとなる。
【0042】
また
図4に、本実施形態におけるエリア情報データベース127の構成例を示す。本実施形態のエリア情報データベース127は、上述の旅行記事データベース126のデータリソースとは異なる媒体等に掲載された、地域紹介記事の情報を格納したデータベースである。地域紹介記事は、例えば、サーバ100が、ネットワーク1にアクセスし、適宜な地域情報サイトから定期的に取得、更新したものである。
【0043】
こうしたエリア情報データベース127は、エリアIDをキーとして、当該エリアIDで特定されるエリアに含まれる公園や美術館などのスポットを特定するためのスポットIDリスト、当該エリアを紹介している地域紹介記事を特定するための地域紹介記事ID、および、当該地域紹介記事に含まれているテキストデータ(例:紹介先の人気スポット等の様子を記載した解説文)、当該テキストデータから抽出したキーワードリスト(例:自然や歴史、文化等の雰囲気や質、雄大さ、豊かさ、利便性など種々の事象を表現する語彙のリスト)、当該エリアに関する時間帯別予想混雑度、及び許容混雑度といったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。
【0044】
このうち時間帯別予想混雑度は、例えば、日別、時間帯別に予想される、当該エリアにおける混雑度の値である。この値は、当該エリアの混雑度に関して観測された過去の統計値を利用したものや、外部の需要予測システムから定期的に取得して更新するものとなる。
【0045】
また、許容混雑度は、当該エリアに関して、当該エリアを管理する自治体や観光事業者が許容しうる混雑度を示すものとなる。こうした許容混雑度は、例えば、当該エリアの最大訪問想定人数のうち滞在者数が占める割合、といった値であって、例えば、前記自治体や観光事業者がオーバーツーリズムの回避等を意図して事前に定めた値を使用する。
【0046】
こうした許容混雑度の値は、当該エリアにおける旅行者の受入可否の判断に活用する。なお、許容混雑度の値は、時間帯別の粒度で管理するとしてもよい
【0047】
また
図5に、本実施形態におけるスポット情報データベース128の構成例を示す。本実施形態のスポット情報データベース128は、上述のエリア情報データベース127の各レコードでも登場する、各エリアに存在する各スポットの情報を格納したデータベースである。
【0048】
こうしたスポット情報データベース128は、例えば、スポットを一意に示すスポットIDをキーとして、当該スポットの、着発地点ペアリスト、訪問可能時間帯、許容混雑度、時間帯別予想混雑度、混雑度別標準滞在時間、キーワードリスト、標準滞在費用、及びスポット特徴ベクトル、といったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。
【0049】
このうち着発地点ペアリストは、川下りや遊覧船など到着地点と出発地点が異なるようなスポットに対処するための情報であり、当該スポットへの複数の到着地点と、当該スポットからの複数の出発地点に対して、よく使用される到着地点と出発地点の組を予め列挙して、リストにしたものである。
【0050】
他のスポット等から当該スポットへは、着発地点ペアリストに登録されている到着地点の何れかに到着し、当該スポットから他のスポット等へは、着発地点ペアリストに登録されている出発地点の何れかから出発する前提で、旅客行動ネットワーク(後述)が作成されることになる。
【0051】
また、訪問可能時間帯は、当該スポットを利用できる時間帯を表す情報である。例えば、着目しているスポットが美術館の場合であれば、当該美術館の開館時刻と閉館時刻の情報が該当する。
また、許容混雑度は、当該スポットに関して、当該スポットを管理する自治体や事業者が許容しうる混雑度を示すものとなる。こうした許容混雑度は、例えば、当該スポットの最大収容人数のうち滞在者数が占める割合、といった値であって、例えば、前記自治体や事業者がオーバーツーリズムの回避等を意図して事前に定めた値を使用する。
こうした許容混雑度の値は、当該スポットにおける旅行者の受入可否の判断に活用する。なお、許容混雑度の値は、時間帯別の粒度で管理するとしてもよい
また、時間帯別予想混雑度は、例えば、日別、時間帯別に予想される、当該スポットにおける混雑度の値である。この値は、当該スポットの混雑度に関して観測された過去の統計値を利用したものや、外部の需要予測システムから定期的に取得して更新するものとなる。
また、キーワードリストは、例えば、当該スポットの紹介記事に含まれているテキストデータから抽出したキーワードや、スポット事業者が予め登録したキーワードのリストである。
【0052】
また、混雑度別標準滞在時間は、当該スポットにおいて混雑状況に応じて待ち行列などの発生が予想される場合に、混雑度に応じて当該スポットの滞在時間を調整する際に用いる値である。例えば、当該スポットにおける混雑度が50%である場合、待ち行列は発生せず、標準滞在時間は1時間だが、混雑度が180%である場合、待ち行列の発生が予想されるため、待ち行列に並んでいる間の待ち時間30分を考慮して、標準滞在時間は90
分、といったパターンを有する。
【0053】
また、標準滞在費用は、旅行プラン作成条件に応じた標準的な滞在費用である。具体的には、旅行の同行者数などで過去の旅行実績をクラスタリングし、当該旅行実績が示す滞在費用の平均値などを登録したものとなる。
【0054】
また、スポット特徴ベクトルは、旅行プラン作成条件(旅行者情報、評価観点情報)との合致度によって組み入れ候補となるスポットを選択するために使用する情報である。スポット特徴ベクトルの各要素には、旅行者または評価観点に関する状況を、旅程候補の評価値に反映させるための重みを登録しておく。例えば、スポット特徴ベクトルの1つの要素として「家族向け」という要素を設定し、重み「1」(家族向けである)を登録した場合には、当該要素に関する評価として、旅行者情報に登録されている大人とこどもの人数がいずれも1以上の場合に「1」(好ましい)、大人のみの場合には「0」(特にプラスの評価はない)という評価が為される想定である。旅行者または評価観点に関する状況に従い、スポット特徴ベクトルの各要素に対応して求めた評価値の総和として、当該スポットの評価値が算定される。
<旅行プラン作成支援方法>
【0055】
以下、本実施形態における旅行プラン作成支援方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する旅行プラン作成支援方法に対応する各種動作は、主としてサーバ100の演算装置104が記憶装置101に格納されたプログラムをメモリ等に読み出して実行することで実現される。ただし、以下の説明では、サーバ100側の動作であるのか端末装置200側の動作であるのかを明確にするため、「サーバ100は嗜好推定用の画像セットを作成する」等、動作主体をサーバ100または端末装置200として説明する。
【0056】
図6は、本実施形態における旅行プラン作成支援方法のシーケンス例を示す図である。この場合、端末装置200は、所定の入力画面(
図7参照)を表示部204で表示し、この入力画面を通じて、旅行者が指定した旅行プラン作成条件を取得する(s100)。
【0057】
図7で示す入力画面は、例えば、出発地、帰着地、出発日、出発時刻、帰着日、帰着時刻、概算予算、旅行プランに求めるイメージを指定する条件(例えば、特段の指定をしない「おまかせ」、旅行者が抱く旅のイメージを指定する「キーフレーズ」)など旅行条件に関する情報(旅行条件情報)、大人やこどものそれぞれの男女別人数など旅行者の属性に関する情報(旅行者情報)、及び評価観点(スポット混雑、移動時混雑、道路渋滞、及びその他のお好み)に関する情報(評価観点情報)、といった旅行プラン作成条件を指定する画面である。ここで指定を受けた各評価観点の情報は、後述の各処理において利用される。例えば、本システムを利用する旅行者が移動制約者である場合、スポット混雑を「回避」、移動時混雑を「回避」と選択することで、所定の基準以上に混雑しているスポットや移動手段について選択肢の対象外とするような処理となる。「できれば避けたい」や「気にしない」が選択された場合には、選択肢の対象外とすることはしないが、評価値を算出する際の重みの値に反映することによって、旅行者の嗜好が旅程候補の評価に反映されるような処理となる。これらの処理の詳細は、後述する。
【0058】
また、端末装置200は、s100で得た旅行プラン作成条件を、サーバ100に送信する(s101)。
【0059】
サーバ100は、旅行プラン作成条件を端末装置200から受信すると、嗜好推定用の画像セットを作成する(s102)。なお、この作成に際し、サーバ100は、旅行者が旅行プラン作成条件として「おまかせ」を選択している場合、基準画像データベース12
5からランダムに画像を抽出して嗜好推定用の画像セットとする。一方、旅行プラン作成条件として、旅行者が「キーフレーズ」の指定をしている場合、サーバ100は、旅行記事データベース126内を当該キーフレーズで検索し、該当する記事に使用されている画像を抽出して嗜好推定用の画像セットとする。
【0060】
続いて、サーバ100は、作成した嗜好推定用の画像セットを、端末装置200に送信する(s103)。
【0061】
端末装置200は、嗜好推定用の画像セットをサーバ100から受信すると、受信した嗜好推定用の画像セットを表示部204に表示する(s104)。この時の表示画面の例を
図8に示す。この例では、旅行者に対して、訪問先のイメージに近い画像を、8枚の画像中から選ばせる画面例を示している。
【0062】
続いて、端末装置200は、上述の嗜好推定用の画像セット中における、ユーザによる画像選択の結果を取得する(s105)。このとき、選択される画像は、1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0063】
ユーザによる画像選択の結果を取得後、端末装置200は、s105で得た選択結果をサーバ100に送信する(s106)。
【0064】
サーバ100は、端末装置200から送信されてきた選択結果を受信する(s107)と、候補エリア抽出処理を実行する(s108)。s108の候補エリア抽出処理の詳細は、後述する(
図9)。
【0065】
続いて、サーバ100は、旅程候補作成処理を実行する(s109)。この旅程候補作成処理の詳細は、後述する(
図11)。
【0066】
続いて、サーバ100は、s109で特定した旅程候補のうち推奨される旅行プランの情報、すなわち推奨旅行プラン情報を、端末装置200に送信する(s110)。
【0067】
こうした推奨旅行プランは、s109で得た旅程候補のうち、評価値が最も高いもの、または、評価値が上位のものから順に所定の個数分など、を選択する。或いは、候補エリアごとに評価値がもっとも高い旅程候補から選択するようにしてもよい。なお、上述の評価値の考え方については後述する。
【0068】
端末装置200は、推奨旅行プラン情報をサーバ100から受信すると、これを表示部204に出力し(s111)、処理を終了する。なお、端末装置200において、推奨旅行プランの出力後、宿泊予約などが入力されることによって、あるプランが採択されたことが検出可能である場合、当該採択結果を用いて評価関数のパラメータ(例えば、線形結合で表現された評価関数を用いている場合には、各項の係数の相対的な大きさ等)を調整し、次回提案時の採択率向上を図るような構成としてもよい。
【0069】
<候補エリア抽出処理>
ここで候補エリア抽出処理(s108)の詳細について説明する。
図9は、本実施形態における候補エリア抽出処理のフローを示す図である。
【0070】
この場合、サーバ100は候補エリア抽出プログラム111を用いて、s105で得ている選択画像の情報に基づき、対応するキーワードの集合を抽出する(s200)。
【0071】
このキーワード集合の抽出は、例えば、
図10のフローで示す処理を実行することで実
施する。以下、
図10を用いて、キーワード集合の抽出処理について説明する。
【0072】
具体的には、サーバ100は、まず選択画像それぞれの特徴ベクトルを算定する(s300)。この特徴ベクトルの算定手法は、既に述べたとおり、特徴ベクトル抽出器を用いた手法である。
【0073】
続いて、サーバ100は、旅行記事データベース126における各記事について、当該記事に含まれる画像の特徴ベクトルと、s300で得ている特徴ベクトルとの類似度を算定する(s301)。各記事に含まれる画像の特徴ベクトルについては、s300と同様の方法で予め求めた特徴ベクトルを、旅行記事データベース126を参照して取得すればよい。類似度の尺度としては、例えば、コサイン類似度を用いる。
【0074】
サーバ100は、s301で得た類似度を、例えば、主記憶装置103に設けた類似度リストに登録する(s302)。類似度リストとは、一時的に作成される中間データであり、s301で求めた類似度を、旅行記事及び選択画像の識別情報のペアに紐づけて記憶したものとなる。
【0075】
続いて、サーバ100は、上述の類似度リストを参照し、類似度が所定の値以上のペア、または、類似度が上位所定個数に含まれるペア、を類似度が高いペアと判定する(s303)。
【0076】
上述の判定の結果、サーバ100は、類似度が高いペアを特定し(s303:Yes)、特定したペアが示す旅行記事データを参照して、当該旅行記事の画像データ近傍のテキストを抽出し、主記憶装置103に設けたコンテキスト情報リストに登録する(s304)。
【0077】
コンテキスト情報リストは、一時的に作成される中間データであり、s303で特定したペアにおける旅行記事から抽出したテキスト、すなわち選択画像と類似度が高い画像を説明している可能性が高い旅行記事のテキスト集合を記憶しておくものである。
【0078】
続いて、サーバ100は、上述のコンテキスト情報リストを参照し、これに登録されているテキストからキーワード群を推定する。例えば、サーバ100は、コンテキスト情報リストに登録したテキスト、すなわち複数の選択画像それぞれについて旅行記事から得たテキストに基づき、当該テキストの複数で共通するキーワード(例えば「山歩き」「渓流」「おしゃれ」「見晴らしがいい」「豪華な食事」等)を、例えば、形態素解析等のテキストマイニング技術によって抽出する。
【0079】
図9のフローの説明に戻る。サーバ100は、エリア情報データベース127における各エリアのキーワードリスト欄の値を抽出し、このキーワードと、s200で選択画像に関して得ているキーワード群の各キーワードとの類似度を求める(s201)。キーワード群の比較における類似度の尺度としては、例えば、コサイン類似度を用いる。Word2Vec等、公知の技術を用いればよい。このように、複数の画像それぞれに関連する旅行記事のテキスト全体を用いて推定したキーワード群の比較によって類似度を判定する処理とすることで、雰囲気や感動の内容など、旅行者が関心を持つ観点における類似性が、単純に画像の類似度を判定する処理に比べ、より反映された選択結果を得ることができる。
【0080】
続いて、サーバ100は、s201で求めた類似度が所定の閾値以上か判定する(s202)。この判定の結果、所定の閾値以上の類似度である場合(s202:Yes)、サーバ100は、旅行プラン作成条件に基づき、対象エリアに関して予想される混雑度を、エリア情報データベース127の時間帯別混雑度の情報を参照して特定し、この値が当該
エリアの許容混雑度以下か判定する(s203)。
【0081】
この判定の結果、当該エリアの混雑度が許容混雑度以下である場合(s203:Yes)、サーバ100は、対象エリアを訪問先の候補として、主記憶装置103に設けた候補エリアのリストに加える(s204)。サーバ100は、上述の一連の処理を繰り返すことで、候補エリアのリストを生成する。
【0082】
<旅程候補作成処理>
次に、旅程候補作成処理(s109)の詳細について説明する。
図11は、本実施形態における旅程候補作成処理のフローを示す図である。
【0083】
まずサーバ100は、主記憶装置103に設けた旅程候補リストを空にする(s400)。続いて、サーバ100は、
図9のフローで求めている各候補エリアについて、以下のs401~s407の各処理を実行する。
【0084】
サーバ100は、まず、メインスポットの候補を選定する(s401)。例えば、スポット情報データベース127を参照し、候補エリアに紐付けられたスポットのうち、旅行プラン作成条件が示すキーワード(旅行者が指定したものや、選択画像キーワードリスト内のキーワード)と、スポット情報に登録されているキーワードリスト欄が示す値との間の類似度が相対的に高いスポットを選定する。
【0085】
続いて、サーバ100は、サブスポットの候補を選定する(s402)。例えば、旅行プラン作成条件が類似する過去の事例から、着目している候補エリア内で訪問可能性が高いと推測される(メインスポット以外の)スポットを1つ以上選定する。
【0086】
続いて、サーバ100は、旅客行動ネットワークの作成処理を実行する(s403)。この旅客行動ネットワークの作成処理の詳細について、以下、
図14を用いて詳細に説明する。
【0087】
図14は、本実施形態における旅客行動ネットワークの作成処理例を示す図である。旅客行動ネットワーク作成処理は、旅行者の滞在や移動に関する状態遷移の可能性と、滞在や移動に関する評価のほどを表現した有向グラフである、旅客行動ネットワークを作成する処理である。
【0088】
まずサーバ100は、出発地と帰着地に対応するノードを作成する(s500)。出発地に対応するノードには、少なくとも出発地の地理的な位置と出発時刻に関する情報とを紐づけて記憶しておく。同様に、帰着地に対応するノードには、少なくとも帰着地の地理的な位置と門限時刻に関する情報とを紐づけて記憶しておく。
【0089】
続いて、サーバ100は、メインスポットの候補とサブスポットの候補に対して、離散化された各時刻に対応する到着ノードと出発ノードを作成する(s501)。
【0090】
なお、到着ノードや出発ノードといった各ノードは、着目エリアにおける各スポットに対応したものである。到着ノードには、少なくとも当該スポットの識別情報(スポットID)と、到着地点の地理的な位置と、到着時刻に関する情報とを含むものとする。同様に、出発ノードには、少なくとも当該スポットの識別情報(スポットID)と、出発地点の地理的な位置と、出発時刻に関する情報とを含むものとする。
【0091】
ここで、到着ノードと出発ノードの地理的な位置は、必ずしも同じであるとは限らない。例えば、 川下りを体験できるスポットの場合、到着ノードに対応するのは相対的に川
の上流の位置となり、出発ノードに対応するのは相対的に川の下流の位置となることもある。なお、到着地点の地理的な位置が同一であっても、到着時刻の違いによって、複数の到着ノードが作成され得る。出発ノードに関しても同様である。時刻の離散化の方法については、単純には「1時間毎」などとする。
【0092】
なお、遊覧船の出発時刻など特別な時刻がある場合、当該時刻に合わせるものとする。その際、待ち行列の発生が予想されるなら、到着ノードに対応する時刻を、待ち時間の分だけ早めて設定する。
【0093】
次に、サーバ100は、各スポットでの滞在に対して状態遷移が可能である場合にはリンク(「有向辺」や「アーク」と呼ばれることもある)を作成する(s502)。具体的には、始点(到着ノード)と終点(出発ノード)の時刻を参照し、以下の両方の条件を満たす場合にリンクを作成する。
【0094】
条件1)旅行プラン作成条件に照らして、許容できる混雑状況である。例えば、旅行プラン作成条件でスポット混雑を「回避」するよう指定されている場合には、混雑状況が所定の閾値よりも大きい場合、「許容できない」と判断する。この判断においては、例えば、到着ノードに対応する時刻から出発ノードに対応する時刻までの間の最大の混雑状況を用いて許容できるか否かを判断する。条件2)滞在時間が最小滞在時間以上となる。ここで、最小滞在時間は、混雑度に依存して変わる可能性のある値である。例えば着目しているスポットがテーマパークの場合であれば、現地到着後、各アトラクションを利用するまでに待ち行列に並ぶことが想定される場合等に対応して、同等の体験をするために必要な滞在時間を混雑度に応じて予め推定し、スポット情報データベース128に登録しておく。
【0095】
各スポットにおける滞在に対応するリンクには、スポット滞在に関する情報(評価値含
む)を保持する。ここで評価値は、例えば、当該スポットに対応するスポット特徴ベクト
ルと、旅行プラン作成条件が示す旅行者情報及び評価観点情報と、当該スポットにおける時間帯別予想混雑度や混雑度別標準滞在時間とを照合して、各評価観点についての評価値を求め、それらの結果を合算することで算定する。
【0096】
続いて、サーバ100は、出発地、各スポット、帰着地の各々の間の移動に対して、状態遷移が可能である場合にはリンクを作成する(s503)。具体的には、始点と終点の時刻を参照し、以下の両方の条件を満たす場合のみリンクで接続するものとする。条件1)旅行プラン作成条件に照らして、許容できる混雑状況である、条件2)予測到着時刻が終点ノードに対応する到着時刻よりも早い。ここで、予測到着時刻は混雑に依存して変わる可能性のある値(渋滞影響等)である。また、同じノードのペアに対して複数のリンクが存在し得る。例えば、鉄道とクルマ、別の列車、など移動手段1つ1つが各々リンクに対応する。各々のリンクには、移動経路に関する情報(評価値含む)を保持する。ここで、評価値は旅行プラン作成条件を用いて計算する。また、渋滞等の影響の反映については、渋滞予測の機能を含む公知の経路探索(ルート検索)の技術を用いて実施すればよい。また、演算時間を抑制するため、可能性のあるすべてのリンクを作成することはせず、例えば移動時間等、所定の評価観点を優先して経路探索を掛けた場合の上位から順に数本分の移動経路を採用するようにする。
【0097】
s503の処理の終了後、サーバ100は旅客行動ネットワーク作成処理を終了する。
【0098】
こうして生成した旅客行動ネットワークの例を
図15に示す。
図15で例示する旅客行動ネットワークにおいて、同じスポットに対して、ノードは所定のルールに基づく離散的な時刻毎に複数作成されている(例:公園に関して複数の異なる時刻で到着・出発)。
【0099】
また、破線は滞在に対応するリンク、実線は移動に対応するリンクである。混雑度も考慮の上、遷移可能な部分にのみリンクが作成される。また、滞在に対応するリンクにはスポット情報を紐づけて管理し、移動に対応するリンクには移動経路情報を紐づけて管理する。これは、評価値を算出する際に、それらの情報を参照するためである。
【0100】
また、出発地から公園16:00着のように、複数の経路が存在する場合は、その各々に対
応するリンクが生成される。また、川下りのように、到着と出発が異なる地点となる場合であっても、訪問目的そのものである場合には、スポット滞在の扱いとする。本旅客行動ネットワーク上でリンクをたどり、出発地からメインスポットを経由して帰着地まで到達できる各々のパスが、各々、概略旅程案に対応する。
【0101】
図11のフローの説明に戻る。サーバ100は、概略旅程案を選定する(s404)。この概略旅程案の選定は、旅客行動ネットワークが示す各経路に関して、例えば、k-最
短路問題を解くことにより、評価値が高い方からk個の経路を概略旅程案として求めればよい。
【0102】
続いて、サーバ100は、概略旅程案それぞれについて、時刻を確定して旅程案とする(s405)。この場合、サーバ100は、出発から到着までの予測時刻を再計算して旅程案を作成するものとする。なお、各スポットを結ぶ移動経路は、(混雑を考慮し)到着可能なもっとも早い時刻で到着し、訪問地は(混雑を考慮し)次の移動に間に合うもっとも遅い時刻で出発する、などの条件で探索する。このように、一旦、概略旅程案を作成後、詳細な時刻を再計算して実際の旅程候補を求めるような構成とすることで、全体としてCoarse to Fine のアプローチとなり、効率よく旅程候補を求めることができる。サーバ
100は、こうして作成される旅程案を、旅程候補情報129(
図12)に格納する。
【0103】
続いて、サーバ100は、旅程案の総合評価値を算定する(s406)。具体的には、サーバ100は、確定した時刻に基づいて、旅行者情報と評価観点情報を用いて移動経路と訪問スポットの評価値を再度算出し、旅程案の総合的な評価値を算出する。
【0104】
続いて、サーバ100は、旅程候補情報を作成し、主記憶装置103に設けた旅程候補リストに登録する(s407)。旅程識別情報と総合評価値と具体的な旅程情報をセットにして旅程候補情報(
図12参照)とし、旅程候補リストに追加登録する。
【0105】
旅程候補情報は、
図12で示すように、旅程識別情報、総合評価値、及び旅程情報から構成される。旅程識別情報は、旅行プラン作成処理で作成される旅程候補全体の中におけるシリアル番号である。或いは、エリアIDとエリア内におけるシリアル番号の組としてもよい。また、総合評価値は、上述のs406の処理で算定した、旅程全体の評価値となる。
【0106】
旅程情報は、出発地を出発してから帰着地に帰着するまでの一連の、移動手段の情報(どういう移動手段で何時に出発、何時に到着)と、訪問スポットの情報(何時に到着して何時に出発)のリストとなる。なお、旅程情報に、予想される混雑状況などを一緒に保持していてもよい。
【0107】
図13に旅程情報1291の例を示す。ここで例示する旅程情報1291は、旅程案に対して、移動手段リスト、出発地/到着地、出発時刻/予想到着時刻、予想混雑度、渋滞待ち時間、乗換回数、及び料金、といった値を対応付けたものとなっている。
【0108】
移動手段リストは、鉄道、バス、車、などの情報であり、出発から到着までに使用する
移動手段の並びとなっている。なお、鉄道やバスなどの場合、使用する便や指定席使用有無まで特定する。
【0109】
出発時刻は、最初の移動手段が電車やバスなど時刻表に従って運行されている交通機関である場合はダイヤ時刻である。その他の場合は、所望する到着時刻に到着できると予想される最も遅い出発時刻である。
【0110】
また、予想到着時刻は、交通事業者等の運行管理システムやルート案内サービス事業者などから過去取得した情報に基づき予測した、渋滞の影響や運行乱れを反映した到着時刻となる(過去情報に基づく予測値だけでなく、当日の情報に基づき予測されるものであってもよい)。
【0111】
なお、予想混雑度、渋滞待ち時間、乗換回数、及び料金の情報は、旅行プラン作成条件(旅行者情報,評価観点情報)との合致度によって組み入れ候補となる経路を選択するために使用した値を登録しておく。これは、経路評価値の算出にも使用された値となる。乗換回数を少なく、できれば安価で、混雑忌避傾向、といった条件がどのように反映されているかを提示可能とするため、評価項目(
図7に関して示したスポット混雑、移動時混雑、道路渋滞、など)ごとの値を保持しておく。
【0112】
なお、サーバ100は、旅程候補の選定に際し、極度に類似する候補の重複登録は排除する。また、帰着地への帰着時刻に曖昧性が残っている場合、旅程が長時間になり様々なスポットを旅程に詰め込むほど評価が高くなる現象を避けるため、「単位時間当たりの評価値」に換算した上で旅程候補を比較するようにしてもよい。その場合、門限にあたる時刻を離散化して、各々上位k個の旅程候補を作成し、評価値を正規化した後に比較を行うようにすればよい。
【0113】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0114】
こうした本実施形態によれば、具体的な旅行先が未確定な者に対して、嗜好を踏まえ、訪問先として複数エリア(複数スポット)の候補を採択して、それらスポットの訪問順序やスポット間の移動手段を混雑状況等に基づき適宜に判定し、具体的な旅程プランを複数作成することが可能である。このように作成された旅程プランは、訪問先が明確には決まっていない旅行者に向けて、当該旅行者自身の嗜好に合った訪問先を含むよう構成された良質なものであるほか、比較的混雑の少ないエリアやスポットに旅行者を誘導するような旅程プランが採択され易くなることから、有名な観光地に旅行者が集中する現象を緩和する効果も期待できる。
【0115】
すなわち、具体的な旅行先が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能となる。
【0116】
また、本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態の旅行プラン作成支援システムにおいて、前記演算装置は、前記複数の候補地を特定するに際し、所定の複数画像のうち旅行先のイメージとしてユーザが選択した画像の情報に基づき、当該画像と類似する画像を含む、既存の旅行情報を所定のデータベースにて検索し、当該旅行情報が含むキーワード群を抽出する処理と、所定のエリア紹介情報のうち、前記キーワード群と類似のキーワード群を含むものを特定し、前記特定したエリア紹介情報が示すエリアを、前記複数の候補地として特定するものである、としてもよい。
【0117】
これによれば、旅程案の提示を望むが、目的地等が明確ではないユーザに対し、当該ユ
ーザが抱く漠然とした旅先のイメージなどにマッチする旅行先を推定し、これに基づいて適宜な旅程案作成を遂行可能となる。ひいては、具体的な旅行先が未確定である者に対して、さらにその嗜好にマッチし、混雑による影響が抑えられ効率よく旅ができるような適宜な旅程を提案可能となる。
【0118】
また、本実施形態における旅行プラン作成支援システムにおいて、前記演算装置は、前記複数の旅程案を作成するに際し、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、混雑状況及び候補地での滞在時間に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成するものである、としてもよい。
【0119】
これによれば、候補地において十分な滞在時間を確保できる内容となっている適宜な旅程案を作成・提示可能となる。ひいては、旅行内容が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、かつ効率性にも優れた適宜な旅程を提案可能となる。
【0120】
本実施形態における旅行プラン作成支援システムにおいて、前記演算装置は、前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間に応じて評価するものである、としてもよい。
【0121】
これによれば、旅先を堪能するための時間や移動効率をあわせて考慮した形で旅程案を選定し、ユーザに提示可能となる。ひいては、旅行内容が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、かつ効率性にも優れた適宜な旅程を提案可能となる。
【0122】
また、本実施形態における旅行プラン作成支援システムにおいて、前記演算装置は、前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間を所定ルールで判定した評価値を、当該旅程案における総時間数で除算して、単位時間当たりの評価値を算定し、当該単位時間当たりの評価値の大小に基づいて前記選択を行うものである、としてもよい。
【0123】
これによれば、全体の所要時間が徒に長い旅程が高評価となる状況を回避し、総所要時間に依存しない形で、好適な旅程案を作成・提案することが可能となる。ひいては、旅行内容が未確定である者に対して、その嗜好にマッチし、かつ効率性にも優れた適宜な旅程を提案可能となる。
【0124】
本実施形態における旅行プラン作成支援方法において、前記情報処理システムが、前記複数の候補地を特定するに際し、所定の複数画像のうち旅行先のイメージとしてユーザが選択した画像の情報に基づき、当該画像と類似する画像を含む、既存の旅行情報を所定のデータベースにて検索し、当該旅行情報が含むキーワード群を抽出する処理と、所定のエリア紹介情報のうち、前記キーワード群と類似のキーワード群を含むものを特定し、前記特定したエリア紹介情報が示すエリアを、前記複数の候補地として特定する、としてもよい。
【0125】
また、本実施形態における旅行プラン作成支援方法において、前記情報処理システムが、前記複数の旅程案を作成するに際し、前記複数の候補地それぞれの混雑に関する情報、及び前記複数の候補地それぞれに至る移動手段に関する情報に基づき、混雑状況及び候補地での滞在時間に関して基準を満たす候補地及び移動手段を選定して、当該候補地の間の訪問順序及び移動手段を規定した複数の旅程案を作成する、としてもよい。
【0126】
また、本実施形態における旅行プラン作成支援方法において、前記情報処理システムが
、前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間に応じて評価する、としてもよい。
【0127】
また、本実施形態における旅行プラン作成支援方法において、前記情報処理システムが、前記評価を行うに際し、前記複数の旅程案それぞれについて、当該旅程案に含まれる前記候補地及び前記移動手段の前記混雑状況及び前記滞在時間を所定ルールで判定した評価値を、当該旅程案における総時間数で除算して、単位時間当たりの評価値を算定し、当該単位時間当たりの評価値の大小に基づいて前記選択を行う、としてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 ネットワーク
10 旅行プラン作成支援システム
100 サーバ(旅行プラン作成支援装置)
101 記憶装置
103 主記憶装置
104 演算装置
105 通信装置
106 データベース群
110 旅行プラン作成プログラム
111 候補エリア抽出プログラム
112 旅程候補作成プログラム
120 旅行プラン作成条件
121 嗜好推定用画像セット
122 選択画像情報
123 旅程候補リスト
125 基準画像データベース
126 旅行記事データベース
127 エリア情報データベース
128 スポット情報データベース
129 旅程候補情報
1291 旅程情報
200 端末装置
201 制御部
202 通信部
203 操作入力部
204 表示部
210 条件取得部
211 情報出力部