(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032928
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】電動工具システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230302BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B25F5/00 C
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139305
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大橋 徹也
(72)【発明者】
【氏名】原 勇太
【テーマコード(参考)】
3C064
3C100
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AA02
3C064AA03
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA04
3C064BA12
3C064BA24
3C064BA35
3C064BB81
3C064BB89
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA28
3C064CA43
3C064CA53
3C064CA80
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB62
3C064CB71
3C064CB81
3C064DA08
3C064EA02
3C064EA05
3C100AA22
3C100AA27
3C100AA59
3C100AA68
3C100BB13
3C100BB19
3C100CC02
3C100CC07
3C100CC14
(57)【要約】
【課題】無線通信が可能な電動工具と受信機との通信の設定を簡易に行うことのできる電動工具システム、制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】電動工具システム1は、電動工具2、中継機3及び受信機4を備える。電動工具2は、固有の識別情報である第1識別情報を持つ。中継機3は、固有の識別情報である第2識別情報を持ち、電動工具2と無線通信が可能である。受信機4は、固有の識別情報である第3識別情報を持ち、中継機3と接続される。受信機4は、第1通信部41と、第2通信部42と、を有する。電動工具2と第1通信部41とは、中継機3を経由して通信を行うことにより、電動工具2による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。電動工具2と第2通信部42とは、無線通信を行うことにより、電動工具2と受信機4との通信に関連する通信情報の授受を行う。通信情報は、第1識別情報と、第2識別情報と、第3識別情報と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別情報である第1識別情報を持つ無線通信が可能な電動工具と、
固有の識別情報である第2識別情報を持ち、前記電動工具と無線通信が可能な中継機と、
固有の識別情報である第3識別情報を持ち、前記中継機と接続される受信機と、を備え、
前記受信機は、第1通信部と、第2通信部と、を有し、
前記電動工具と前記第1通信部とは、前記中継機を経由して通信を行うことにより、前記電動工具による作業内容に関連する作業情報の授受を行い、
前記電動工具と前記第2通信部とは、無線通信を行うことにより、前記電動工具と前記受信機との通信に関連する通信情報の授受を行い、
前記通信情報は、前記第1識別情報と、前記第1識別情報を持つ前記電動工具と無線通信を行う前記中継機が持つ前記第2識別情報と、前記第2識別情報を持つ前記中継機と接続される前記受信機が持つ前記第3識別情報と、を含む
電動工具システム。
【請求項2】
前記電動工具は、前記第2通信部との無線通信を、前記中継機との無線通信と比較して、低い出力電力で行う
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記第2通信部は、前記電動工具と前記通信情報の授受を行う場合に稼働するように制御される
請求項1又は2に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記電動工具と前記第2通信部とは、無線通信を行うことにより、前記作業情報の授受を更に行う
請求項1又は2に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記電動工具は、前記第2通信部との無線通信の開始及び終了を切り替える切替操作部を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動工具システム。
【請求項6】
電動工具システムの制御方法であって、
前記電動工具システムは、
固有の識別情報である第1識別情報を持つ無線通信が可能な電動工具と、
固有の識別情報である第2識別情報を持ち、前記電動工具と無線通信が可能な中継機と、
固有の識別情報である第3識別情報を持ち、前記中継機と接続される受信機と、を備え、
前記電動工具と前記受信機とが前記中継機を経由して通信を行うことにより、前記電動工具による作業内容に関連する作業情報の授受を行う第1通信ステップと、
前記電動工具と前記受信機とが無線通信を行うことにより、前記電動工具と前記受信機との通信に関連する通信情報の授受を行う第2通信ステップと、を含み、
前記通信情報は、前記第1識別情報と、前記第1識別情報を持つ前記電動工具と無線通信を行う前記中継機が持つ前記第2識別情報と、前記第2識別情報を持つ前記中継機と接続される前記受信機が持つ前記第3識別情報と、を含む
制御方法。
【請求項7】
コンピュータシステムに、請求項6に記載の制御方法を実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具システム、制御方法及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、無線通信が可能な電動工具を備える電動工具システム、この電動工具システムの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、受信したネジ締め情報に基づいてモータの回転制御を行う電動工具と、予め設定されたネジ締め情報をネットワークを介して電動工具に送信するセンター装置とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような電動工具とセンター装置において、電動工具とセンター装置とがそれぞれ複数存在する場合に、複数の電動工具と複数のセンター装置との通信の設定の簡易化が望まれていた。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、無線通信が可能な電動工具と受信機との通信の設定を簡易に行うことのできる電動工具システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具システムは、電動工具と、中継機と、受信機と、を備える。前記電動工具は、固有の識別情報である第1識別情報を持ち、無線通信が可能である。前記中継機は、固有の識別情報である第2識別情報を持ち、前記電動工具と無線通信が可能である。前記受信機は、固有の識別情報である第3識別情報を持ち、前記中継機と接続される。前記受信機は、第1通信部と、第2通信部と、を有する。前記電動工具と前記第1通信部とは、前記中継機を経由して通信を行うことにより、前記電動工具による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。前記電動工具と前記第2通信部とは、無線通信を行うことにより、前記電動工具と前記受信機との通信に関連する通信情報の授受を行う。前記通信情報は、前記第1識別情報と、前記第1識別情報を持つ前記電動工具と無線通信を行う前記中継機が持つ前記第2識別情報と、前記第2識別情報を持つ前記中継機と接続される前記受信機が持つ前記第3識別情報と、を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る制御方法は、電動工具システムの制御方法である。前記電動工具システムは、電動工具と、中継機と、受信機と、を備える。前記電動工具は、固有の識別情報である第1識別情報を持ち、無線通信が可能である。前記中継機は、固有の識別情報である第2識別情報を持ち、前記電動工具と無線通信が可能である。前記受信機は、固有の識別情報である第3識別情報を持ち、前記中継機と接続される。前記制御方法は、第1通信ステップと、第2通信ステップと、を含む。前記第1通信ステップは、前記電動工具と前記受信機とが前記中継機を経由して通信を行うことにより、前記電動工具による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。前記第2通信ステップは、前記電動工具と前記受信機とが無線通信を行うことにより、前記電動工具と前記受信機との通信に関連する通信情報の授受を行う。前記通信情報は、前記第1識別情報と、前記第1識別情報を持つ前記電動工具と無線通信を行う前記中継機が持つ前記第2識別情報と、前記第2識別情報を持つ前記中継機と接続される前記受信機が持つ前記第3識別情報と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、前記制御方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、無線通信が可能な電動工具と受信機との通信の設定を簡易に行うことのできる電動工具システム、制御方法及びプログラムを提供することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動工具システムのシステム構成図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具システムが備える電動工具の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具システムのペアリングモードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具システムの作業モードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【
図6】
図6は、変形例1の電動工具システムのペアリングモードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【
図7】
図7は、変形例1の電動工具システムの作業モードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【
図8】
図8は、変形例2の電動工具システムのペアリングモードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【
図9】
図9は、変形例2の電動工具システムの作業モードにおける動作を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態に係る電動工具システム1について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態(変形例を含む)は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0012】
(1)概要
まず、本実施形態に係る電動工具システム1の概要について
図1及び
図2を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、電動工具システム1は、電動工具2と、中継機3と、受信機4と、を備える。
【0014】
電動工具2は、例えば工場や建築現場などで使用される事業者向けの工具である。電動工具2は、例えば、作業対象(例えばボルト、ネジ等の締結部材)を締め付けることで取付対象(例えば太陽電池パネル等)を被取付部材(例えば架台等)に取り付ける取付作業を行うために使用される。電動工具2は、ここでは、作業対象としてのボルト等を回転させて打撃力を加えることによって締め付ける、電動式のインパクトレンチである。なお、電動工具2は、電動式のインパクトレンチに限定されず、電動式のインパクトドライバでもよいし、打撃力を与えるタイプではない電動式のトルクレンチ、電動ドリルドライバ等でもよい。
【0015】
電動工具2は無線通信が可能であり、ネットワーク上における個別の識別情報である例えばIPアドレス等の第1識別情報を持つ。
【0016】
中継機3は、電動工具2と無線通信が可能であり、電動工具2と、受信機4との通信を中継する所謂無線アクセスポイントである。中継機3は、ネットワーク上における個別の識別情報である例えばSSID(Service Set Identifier)及び当該SSIDに対応するパスワード等の第2識別情報を持つ。
【0017】
受信機4は、中継機3と例えばEthernet(登録商標)等の有線ネットワークで接続される。受信機4は、ネットワーク上の固有の識別情報である例えばIPアドレス等の第3識別情報を持つ。
【0018】
また受信機4は、第1通信部41と第2通信部42を有する。
【0019】
電動工具2と受信機4の第1通信部41とは、中継機3を経由して通信を行うことにより、電動工具2による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。
【0020】
電動工具2と受信機4の第2通信部42とは、無線通信を行うことにより、電動工具2と受信機4との通信に関連する通信情報の授受を行う。
【0021】
ここで、通信情報は、第1識別情報と、第1識別情報を持つ電動工具2と無線通信を行う中継機3が持つ第2識別情報と、第2識別情報を持つ中継機3と接続される受信機4が持つ第3識別情報と、を含む。
【0022】
上記の構成により、電動工具2と受信機4との間で、通信の設定に必要な第1識別情報~第3識別情報の授受を一括で行うことが可能となり、第1識別情報~第3識別情報の授受を電動工具2、受信機4及び中継機3の間で個別で行う場合と比較して、通信の設定を簡易化できる。また、これにより、通信の設定ミスが発生する可能性を低減することができる。
【0023】
(2)詳細
以下、実施形態に係る電動工具システム1の詳細について説明する。
【0024】
(2.1)電動工具システムの構成
以下、電動工具システム1の構成について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0025】
電動工具システム1は、
図1に示すように、複数(図示では4つ)の電動工具2(2A~2D)と、複数(図示では2つ)の中継機3(3A、3B)と、複数(図示では2つ)の受信機4(4A、4B)と、を備える。また電動工具システム1は、上位装置5と、HUB装置6と、を更に備える。
図1に示すように、上位装置5と複数の受信機4、及び、複数の受信機4と複数の中継機3とは、HUB装置6を介して例えばEthernet等の有線ネットワークで接続される。なお、電動工具システム1が上位装置5及びHUB装置6を備えることは必須ではなく、適宜省略が可能である。
【0026】
次に、電動工具システム1を構成する各機器の詳細について
図2を参照して説明する。なお
図2においてはHUB装置6については図示を省略している。
【0027】
電動工具2は、
図2に示すように、制御部21と、操作部22と、締付部23と、センサ部24と、通信部25と、電源部26と、記憶部27と、表示部28と、切替操作部29と、を備える。
【0028】
また、
図3に示すように、電動工具2は、各部を収容又は保持するためのボディ200を備えている。ボディ200は、筒形状の胴体部201と、胴体部201の周面から径方向に突出する握り部202とを備える。胴体部201の軸方向における一端側からは出力軸231が突出している。出力軸231には、作業対象の締付け部材に合わせた先端工具(例えばトルクレンチビットなど)が着脱自在に取り付けられるソケット232が設けられている。握り部202の一端(
図3における下端)には、樹脂製のケース内に電源部26を収納した電池パック203が着脱自在に取り付けられている。
【0029】
制御部21は、締付部23、センサ部24、通信部25等の動作を制御する。制御部21は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部21として機能する。プログラムは、ここでは制御部21のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部21は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。制御部21を構成するマイクロコントローラ(回路基板等)は、握り部202の内部に収容されている。
【0030】
操作部22は、握り部202に設けられたトリガスイッチ221を備える。トリガスイッチ221がユーザ等により操作されると、トリガスイッチ221の引き込み量(操作量)に比例した大きさの操作信号が、制御部21に入力される。制御部21は、操作部22からの操作信号に応じた速度で回転するように、モータ233の速度を調整する。
【0031】
締付部23は、モータ233に加えて、駆動回路(図示せず)と、インパクト機構234と、出力軸231と、を備えている。駆動回路は、制御部21から入力される制御信号に応じて、モータ233の回転を制御する。モータ233の回転は、インパクト機構234を介して出力軸231に伝達される。出力トルクが所定レベル以下であれば、インパクト機構234は、モータ233の出力軸の回転を減速して出力軸231に伝達する。出力トルクが所定レベルを超えると、インパクト機構234は、出力軸231に打撃力を加えて、作業対象の締結部品(ボルト等)を回転させるように構成されている。
図3に示すように、モータ233及びインパクト機構234は、胴体部201内に収容されている。
【0032】
センサ部24は、締付部23による締付トルクを測定する。センサ部24は、出力軸231に取り付けられた磁歪式のトルクセンサ241を備えている。磁歪式のトルクセンサ241は、モータ233の出力軸にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。これによりセンサ部24は、出力軸231に加わったトルクを測定する。つまり、センサ部24は、電動工具2が作業対象に与えるトルク(締付トルク)を測定する。センサ部24は、測定したトルク(締付トルク)を制御部21へ送信する。
【0033】
制御部21は、締付トルクがトルク設定値となるように締付部23を制御する。制御部21は、例えば、トルクセンサ241で測定された締付けトルクが、トルク設定値に達したら、モータ233の回転を停止させる。なおトルク設定値は変更可能であり、受信機4から電動工具2に送信されるトルク値情報に基づいて制御部21によって変更される。
【0034】
通信部25は、例えばWi-Fi(登録商標)に準拠した近距離無線通信を行う通信モジュールである。通信部25は、この種の通信方式で、中継機3及び受信機4との間で無線通信を行う。なお、通信部25と中継機3、及び通信部25と受信機4との間の無線通信の方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信であってもよい。
【0035】
電源部26は、蓄電池を備えている。電源部26は、電池パック203内に収容されている。電池パック203は、樹脂製のケース内に電源部26を収容して構成されている。電池パック203を握り部202から取り外し、取り外した電池パック203を充電器に接続することによって、電源部26の蓄電池を充電することができる。電源部26は、蓄電池に充電された電力で、制御部21を含む電気回路とモータ233とに動作に必要な電力を供給する。
【0036】
記憶部27は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部27は、制御部21が実行する制御プログラムを記憶する。また記憶部27は、個々の電動工具2に割り当てられた識別情報(第1識別情報)や、個々の電動工具2の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報(工具種別の情報)を記憶する。ここで、第1識別情報は、例えば電動工具2に割り当てられるIPアドレスを含む。
【0037】
表示部28は、ボディ200の表面に露出して設けられた例えば青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとを有している。
【0038】
切替操作部29は、
図3に示すように、ボディ200上面に設けられたペアリングスイッチ291を含む。ペアリングスイッチ291は例えばオルタネイト動作をする押釦スイッチである。ペアリングスイッチ291が操作されたときの電動工具2の動作については「(2.2)動作説明」において説明する。
【0039】
中継機3は、
図2に示すように、第1通信部31と、第2通信部32と、制御部33と、記憶部34と、を備える。
【0040】
制御部33は、第1通信部31、第2通信部32等の動作を制御する。制御部33は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部33として機能する。プログラムは、ここでは制御部33のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部33は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0041】
第1通信部31は、通信線を介して有線通信を行う通信モジュールである。第1通信部31は、受信機4の第1通信部41と例えばEthernet等の有線ネットワークを介した有線通信を行う。
【0042】
第2通信部32は、電動工具2の通信部25の通信方式と同じ通信方式(例えばWi-Fi)で、近距離の無線通信を行う通信モジュールである。第2通信部32は、電動工具2の通信部25と無線通信を行う。
【0043】
記憶部34は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部34は、個々の中継機3に割り当てられた識別情報(第2識別情報)や、個々の中継機3の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報を記憶する。ここで、第2識別情報は、例えば中継機3に割り当てられたSSID及びSSIDに対応するパスワードを含む。
【0044】
受信機4は、
図2に示すように、第1通信部41と、第2通信部42と、制御部43と、操作部44と、表示部45と、記憶部46と、を備えている。
【0045】
制御部43は、第1通信部41、第2通信部42、表示部45等の動作を制御する。制御部43は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部43として機能する。プログラムは、ここでは制御部43のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部43は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0046】
第1通信部41は、通信線を介して有線通信を行う通信モジュールである。第1通信部41は、電動工具2の通信部25と中継機3を介して通信を行う。詳細には、第1通信部41が中継機3の第1通信部31と例えばEthernet等の有線ネットワークを介して有線通信を行い、中継機3の第2通信部32と電動工具2の通信部25とが例えばWi-Fi(登録商標)に準拠した近距離無線通信を行う。これにより、第1通信部41は、電動工具2の通信部25と通信を行う。
【0047】
また第1通信部41は、上位装置5の通信部51と例えばEthernet等の有線ネットワークを介して有線通信を行う。
【0048】
第2通信部42は、電動工具2の通信部25の通信方式と同じ通信方式(例えばWi-Fi)で、近距離の無線通信を行う通信モジュールである。第2通信部42は、電動工具2の通信部25と無線通信を行う。
【0049】
操作部44は、例えばペアリングスイッチ441を備える。ペアリングスイッチ441は例えばオルタネイト動作をする押釦スイッチである。ペアリングスイッチ441が操作されたときの受信機4の動作については「(2.2)動作説明」において説明する。
【0050】
表示部45は例えば8つの発光部451~458(
図1参照)を含む。発光部451~458のそれぞれは、例えば発光ダイオードを含む。なお表示部45は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置を含んでもよい。
【0051】
記憶部46は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部46は、個々の受信機4に割り当てられた識別情報(第3識別情報)や、個々の受信機4の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報を記憶する。ここで、第3識別情報は、例えば受信機4に割り当てられるIPアドレスを含む。また、記憶部46は第2識別情報(個々の中継機3に割り当てられる識別情報)を記憶してもよい。
【0052】
上位装置5は、例えばサーバである。上位装置5は、通信部51と、記憶部52と、制御部53を備えている。
【0053】
通信部51は、通信線を介して有線通信を行う通信モジュールである。通信部51は、受信機4の第1通信部41と例えばEthernet等の有線ネットワークを介して有線通信を行う。
【0054】
記憶部52は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。記憶部52は、電動工具2が行う作業内容、電動工具2が行なった作業の履歴等を記憶する。
【0055】
制御部53は、通信部51等の動作を制御する。制御部53は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部53として機能する。プログラムは、ここでは制御部53のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部53は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0056】
制御部53は、通信部51に、電動工具2が行う作業内容を受信機4に対して送信させる。
【0057】
また制御部53は、受信機4から送信される電動工具2が行なった作業の履歴を記憶部52に記憶させる。
【0058】
(2.2)動作説明
以下に、本実施形態の電動工具システム1の動作を説明する。
【0059】
(2.2.1)ペアリングモード
まず、電動工具2と受信機4とのペアリングを行うペアリングモードにおける電動工具システム1の動作について
図1~
図3及びシーケンス図である
図4を参照して説明する。上述したように電動工具2と受信機4とは、電動工具2による作業内容に関連する作業情報の授受を行うためにペアリングされる。
【0060】
ペアリングは、例えば一日の始業時又は作業の切り替わり時に例えば電動工具2のユーザによって行われる。ここで、電動工具2のユーザは、例えば太陽電池パネルをボルトによって架台に取り付ける作業(取付作業)を行う作業者であるとする。なお、ペアリングは、現場監督等の電動工具2のユーザとは別の人物によって行われてもよい。
【0061】
まずユーザは、取付作業に使用する電動工具2(2A)を、ペアリングさせる受信機4(4A)に近づける。具体的には、ユーザは、電動工具2Aと受信機4Aとを、両者を同時に視認可能な距離まで近づける。これにより、意図していない電動工具2と受信機4とがペアリングされる可能性を低減することができる。
【0062】
ユーザは電動工具2Aと受信機4Aとが近づけられた状態で、受信機4Aのペアリングスイッチ441を押下する。ユーザによってペアリングスイッチ441が押下されると、受信機4Aが備える発光部451~458のうち例えば発光部451が点滅を開始する。
【0063】
なお本実施形態では、受信機4Aには最大8つの電動工具2をペアリングすることができ、発光部451~458は、受信機4Aにペアリングされる電動工具2に割り当てられるペアリング番号No1~No8にそれぞれ対応している。
【0064】
ユーザが再度ペアリングスイッチ441を押下すると、発光部451は消灯し、発光部452が点滅を開始する。このように、ユーザがペアリングスイッチ441を押下するたびに発光部451~458が順に1つずつ点滅を開始する。
【0065】
ここでは、ユーザは電動工具2Aにペアリング番号No1を割り当てるとする。ユーザは、ペアリング番号No1に対応する発光部451が点滅しているときに、ペアリングスイッチ441を所定期間(例えば3秒)長押しする。これにより、受信機4Aはペアリングモードとなり(ステップS1)、ペアリング番号No1を割り当ててペアリングを行う電動工具2の検出を開始する。発光部451は受信機4Aがペアリングモードとなった場合に例えば点滅周期が早くなり、ユーザにペアリングモードとなったことを通知する。
【0066】
ユーザは、受信機4Aがペアリングモードであるときに、電動工具2Aの切替操作部29に含まれるペアリングスイッチ291(
図3参照)を押下する。これにより、電動工具2Aはペアリングモードとなり(ステップS2)、受信機4Aによってペアリング対象として検出される。このとき、電動工具2Aは、例えば表示部28が有する青色発光ダイオードを点滅させ、電動工具2Aがペアリングモードとなったことをユーザに通知する。なお、電動工具2Aは、例えばトリガスイッチ221の操作によってペアリングモードとなってもよい。この場合、例えば電池パック203が握り部202に取り付けられた直後のトリガスイッチ221の操作が、ペアリングモード移行の操作となる。
【0067】
受信機4Aに検出されると、電動工具2Aには受信機4Aによってペアリング番号No1が割り当てられる。以後、ペアリング番号No1は、受信機4Aと電動工具2Aとのペアリングが解除されるまでは他の電動工具2に割り当てられない。つまり、受信機4Aと電動工具2Aとがペアリングされている間は、他の電動工具2が受信機4Aとペアリングされる場合は、他の電動工具2にはペアリング番号No2~No8のいずれかが割り当てるられる。
【0068】
電動工具2Aが受信機4Aに検出されると、電動工具2Aと受信機4Aとはペアリングを開始する。
【0069】
まず、電動工具2Aと受信機4Aとは通信の確立を行う(ステップS3)。ここで通信の確立とは、電動工具2Aと受信機4Aとの間でデータの受け渡しが可能な状態とすることである。具体的には、通信の確立は、例えばWi-Fi(登録商標)に準拠した無線通信接続の確立及び例えばTSL(Transport Layer Security)等の通信プロトコルを使用した暗号化接続の確立等を含む。
【0070】
通信の確立が完了すると、電動工具2Aは通信部25を介して、受信機4Aに接続開始要求を送信する(ステップS4)。
【0071】
受信機4Aは第2通信部42を介して電動工具2Aからの接続開始要求を受信すると、第2通信部42を介して電動工具2Aに通信情報を送信する(ステップS5)。ここで通信情報は、例えば予め受信機4Aに割り当てられたIPアドレス(第3識別情報)と、例えば電動工具2Aを用いた取付作業が行われる場所に最も近い中継機3(例えば中継機3A)に割り当てられたSSID及びSSIDに対応するパスワード(第2識別情報)と、を含む。また、通信情報は、例えばDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)等の通信プロトコルを使用して、受信機4Aから電動工具2Aへ自動で割り当てられるIPアドレス(第1識別情報)を含む。受信機4Aから電動工具2Aに送信された通信情報は、電動工具2Aの記憶部27に記憶される。
【0072】
なお上述したように、ペアリング時における電動工具2Aと受信機4Aとの無線通信は、電動工具2Aと受信機4Aとを、ユーザが両者を同時に視認可能な程度の距離(例えば数十cm)まで近づけて行われる。一方、中継機3Aは、「(2.2.2)作業モード」で説明する作業モードにおける電動工具2Aを用いた取付作業の妨げにならないように、電動工具2Aを用いる作業場所から例えば数mの距離が保たれる場所に設置される。ここで、電動工具2Aは、受信機4Aの第2通信部42との無線通信を、中継機3Aとの無線通信と比較して、低い出力電力で行うことが好ましい。これにより、電動工具2Aから受信機4Aに対して送信される無線信号が、ペアリングする相手の受信機4A以外の受信機4によって受信される可能性を低減することができる。なお、電動工具2Aから受信機4Aに対して送信される無線信号の出力電力の調整は例えば制御部21によって制御される。具体的には、制御部21は、ペアリングモードで動作中は、ペアリングモード以外のモードで動作中に比べて、通信部25の送信電力を低下させている。
【0073】
電動工具2Aが受信機4Aからの通信情報の受信を完了すると、電動工具2Aと受信機4Aとは通信を切断する(ステップS6)。
【0074】
次に電動工具2Aは、通信対象を中継機3Aに切り替える(ステップS7)。
【0075】
電動工具2Aは、通信情報に含まれる中継機3AのSSID及びSSIDに対応するパスワードを用いて、中継機3Aとの通信の確立を行う(ステップS8)。
【0076】
通信の確立が完了すると、電動工具2Aは中継機3Aに接続開始要求を送信する(ステップS9)。また中継機3Aは第2通信部32を介して電動工具2からの接続開始要求を受信すると、受信機4Aに第1通信部31を介して接続開始要求を送信する(ステップS10)。これにより、電動工具2Aは、中継機3Aを介して受信機4Aと通信を行う状態となったことを受信機4Aに対して通知する。
【0077】
受信機4Aは第1通信部41を介して中継機3Aからの接続開始要求を受信すると、中継機3Aに応答信号を送信する(ステップS11)。また、受信機4Aは中継機3Aに応答信号を送信すると、ペアリングモードを終了する(ステップS12)。ペアリングモードが終了すると、受信機4Aが備える発光部451は点滅した状態から例えば常時点灯した状態に切り替わる。
【0078】
ペアリングモードが終了したときに、受信機4Aは第2通信部42の機能を停止させる(ステップS13)。換言すると、第2通信部42は、ペアリングモードにおいて電動工具2Aと通信情報の授受を行う場合に稼働するように制御される。これにより、受信機4Aがペアリングモード以外のモード(以下、作業モードと言う)のとき、受信機4Aが消費するエネルギーを低減することができる。また、作業モードのときに受信機4Aが無線通信を行うことによる不要な通信トラフィックの増加を抑制することができる。
【0079】
中継機3Aは第1通信部31を介して受信機4Aからの応答信号を受信すると、第2通信部32を介して電動工具2Aに応答信号を送信する(ステップS14)。
【0080】
電動工具2Aは中継機3Aからの応答信号を受信すると、ペアリングモードを終了する(ステップS15)。ペアリングモードが終了すると、表示部28が有する青色発光ダイオードは点滅した状態から例えば常時点灯した状態に切り替わる。
【0081】
以上のような手順で、電動工具2Aと受信機4Aとのペアリングが実施される。
【0082】
電動工具2A及び受信機4Aはペアリングモードを終了すると、中継機3Aを介して作業情報の授受を行う作業モードとなる。
【0083】
(2.2.2)作業モード
次に、作業モードにおける電動工具システム1の動作について、
図1~
図3及びシーケンス図である
図5に基づいて説明する。
【0084】
ユーザは、受信機4Aとのペアリングが完了した電動工具2Aを、例えば太陽電池パネルの架台への取付作業を行う場所において使用開始する。
【0085】
ユーザが電動工具2Aを用いて行う取付作業は複数の工程を含む。本実施形態では、複数の工程のそれぞれは、例えば1本のボルトの締結作業に対応する。なお、複数の工程のそれぞれが複数のボルトの締結作業に対応してもよいし、ボルトの締結作業以外の作業に対応してもよい。
【0086】
複数の工程の工程順は上位装置5に予め記憶されている。また複数の工程のそれぞれの内容(ボルトの種類、ボルトの締結位置、トルク値等)は受信機4Aに予め記憶されている。
【0087】
まず上位装置5は、電動工具2Aに作業を開始させるための作業開始情報を受信機4Aに対して送信する(ステップS20)。
【0088】
作業開始情報は、これから電動工具2Aが行う工程(実行工程)を指示する情報を含む。なお、上位装置5には電動工具2Aのこれまでの作業履歴等が記憶されており、上位装置5は電動工具2Aのこれまでの作業履歴等に基づいて、複数の工程のなかから電動工具2Aの実行工程を選択する。
【0089】
受信機4Aは、第1通信部41を介して作業開始情報を受信すると、上位装置5に応答信号を送信する(ステップS21)。
【0090】
また、受信機4Aは作業開始情報を受信すると、作業開始情報によって指示される実行工程に対応する例えばトルク値を記憶部46から読み出す(ステップS22)。
【0091】
受信機4Aは読み出したトルク値を含む情報(トルク値情報)を第1通信部41を介して中継機3A及び中継機3Bに送信する(ステップS23)。ここで、本実施形態では中継機3A及び中継機3BにはIPアドレスが設定されていないため、受信機4Aはトルク値情報の送信先の中継機3を指定することができない。なお、中継機3にIPアドレスが設定されており、受信機4Aがトルク値情報の送信先の中継機3を指定可能なように構成されてもよい。この場合、中継機3は無線ルータとして動作する機器である。
【0092】
中継機3A及び中継機3Bは、それぞれの第1通信部31を介してトルク値情報を受信すると、それぞれの第2通信部32を介してトルク値情報を電動工具2Aに送信する(ステップS24)。このとき、中継機3A及び中継機3Bのそれぞれから送信されるトルク値情報には、中継機3A及び中継機3BのそれぞれのSSIDに関する情報が含まれる。これにより、電動工具2Aは、電動工具2Aとペアリングされた中継機3Aから送信されたトルク値情報のみを選択的に受信することが可能となる。
【0093】
電動工具2Aは、中継機3Aから送信されたトルク値情報を受信すると、通信部25に応答信号を送信させる(ステップS25)。このとき、応答信号には中継機3AのSSIDに関する情報が含まれる。これにより、電動工具2Aから送信された応答信号は、中継機3Aのみに選択的に受信されることが可能となる。なお、電動工具2Aは、トルク設定値を設定した後に、通信部25に応答信号を送信させてもよい。
【0094】
中継機3Aは、第2通信部32を介して、電動工具2Aから送信された応答信号を受信すると、第1通信部31を介して受信機4Aに応答信号を送信する(ステップS26)。
【0095】
電動工具2Aは応答信号を送信すると、受信したトルク値情報に基づいて、トルク設定値を設定する(ステップS27)。トルク設定値の設定は電動工具2Aの制御部21によって行われる。電動工具2Aの表示部28が有する赤色発光ダイオードは、トルク設定値の設定が完了すると例えば所定期間点滅する。
【0096】
ユーザは、表示部28が有する赤色発光ダイオードの点滅によりトルク設定値の設定が完了したことを確認すると、電動工具2Aを用いて、実行工程に対応する例えば1本のボルトの締結作業を行う(ステップS28)。
【0097】
電動工具2Aは、実行工程に対応する例えば1本のボルトの締結作業が完了すると、作業結果情報を中継機3Aに送信する(ステップS29)。ここで、実行工程に対応する締結作業の完了は、トルクセンサ241で測定された締付けトルクがトルク設定値に達したことをもって電動工具2Aの制御部21によって判断される。また、作業結果情報は、例えばトルクセンサ241で測定された締付けトルクの値、締結作業に要した時間等が含まれる。
【0098】
中継機3Aは、電動工具2Aから作業結果情報を受信すると、受信機4Aに作業結果情報を送信する(ステップS30)。つまり中継機3Aは、電動工具2Aから受信機4Aへの作業結果情報の送信を中継する。
【0099】
受信機4Aは、中継機3Aから作業結果情報を受信すると、中継機3Aに応答信号を送信する(ステップS31)。
【0100】
中継機3Aは、受信機4Aからの応答信号を受信すると、電動工具2Aに応答信号を送信する(ステップS32)。つまり中継機3Aは、受信機4Aから電動工具2Aへの応答信号の送信を中継する。
【0101】
受信機4Aは、上位装置5に作業結果情報を送信する(ステップS33)。
【0102】
上位装置5は、受信機4Aから作業結果情報を受信すると、作業結果情報を記憶部52に記憶し(ステップS34)、受信機4Aに応答信号を送信する(ステップS35)。
【0103】
以上のような手順を繰り返すことにより、ユーザは、電動工具2Aを用いて、取付作業の複数の工程を実施する。
【0104】
(3)変形例
以下、上記実施形態の変形例について
図1~
図3及び
図6~
図9を参照して説明する。ただし上記実施形態と共通する構成要素については同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。また、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0105】
(3.1)変形例1
本変形例1に係る電動工具システム1は、受信機4の第2通信部42が、作業モードにおいて電動工具2と作業情報の授受を行う場合にも稼働するように制御される点で、実施形態の電動工具システム1と相違する。換言すると、本実施形態に係る電動工具システム1は、電動工具2と受信機4の第2通信部42とが、無線通信を行うことにより、作業情報の授受を行う点で、実施形態1の電動工具システム1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0106】
本変形例1では、電動工具2と受信機4の第2通信部42とが、作業情報の授受を中継機3を介して行う(間接通信モード)か、直接無線通信によって行う(直接通信モード)かを、電動工具2と受信機4とのペアリング前に切り替える。本変形例1では、電動工具2の切替操作部29は第2通信部42との無線通信の開始及び終了を切り替える切替スイッチ(図示せず)を備え、間接通信モードと直接通信モードとの切り替えは切替スイッチの操作によって行われる。切替スイッチは例えばオルタネイト動作をする押釦スイッチであり、押釦スイッチがオフのとき、電動工具2と第2通信部42とは間接通信モードで通信を行い、押釦スイッチがオンのとき、電動工具2と第2通信部42とは直接通信モードで通信を行う。なお、ペアリングスイッチ291が切替スイッチの機能を兼ねてもよい。
【0107】
本変形例1においては、中継機3を介さずとも電動工具2と受信機4とが無線通信可能な場所で、ユーザが例えば太陽電池パネルの架台への取付作業を行う状況を想定している。
【0108】
以下、電動工具2及び受信機4のペアリングモードにおける動作について、シーケンス図である
図6を参照して説明する。なおペアリング前の状態において、切替スイッチはオフであり、電動工具2及び受信機4は間接通信モードであるとする。
【0109】
ユーザは、取付作業に使用する電動工具2(2A)と受信機4(4A)とをペアリングする前に、電動工具2Aの切替スイッチをオンにして、電動工具2Aを直接通信モードに切り替える(ステップS40)。その後、ユーザは電動工具2Aと受信機4Aとをペアリングする。
【0110】
電動工具2A及び受信機4Aが通信の確立を行うステップS41~S43までの手順は、実施形態におけるステップS1~S3と同様であるため説明を省略する。
【0111】
通信の確立が完了すると、電動工具2Aは、受信機4Aに接続開始要求を送信する(ステップS44)。ここで、接続開始要求には、電動工具2Aが直接通信モードであることを通知する情報が含まれる。
【0112】
受信機4Aは電動工具2Aからの接続開始要求を受信すると、電動工具2Aに通信情報を送信する(ステップS45)。ここで通信情報は、例えば予め受信機4Aに割り当てられたIPアドレスと、受信機4Aから電動工具2Aへ自動で割り当てられるIPアドレスを含む。
【0113】
受信機4Aは電動工具2Aに通信情報を送信すると、ペアリングモードを終了する(ステップS46)。受信機4Aは、実施形態とは、異なりペアリングモードを終了した後も第2通信部42を稼働させる。
【0114】
電動工具2Aは受信機4Aから通信情報を受信すると、ペアリングモードを終了する(ステップS47)。
【0115】
次に、電動工具2A及び受信機4Aの作業モードにおける動作について、シーケンス図である
図7に基づいて説明する。
【0116】
上位装置5は、作業開始情報を受信機4Aに対して送信する(ステップS50)。
【0117】
受信機4Aは、作業開始情報を受信すると、上位装置5に応答信号を送信する(ステップS51)。
【0118】
また、受信機4Aは作業開始情報を受信すると、作業開始情報によって指示される実行工程に対応する例えばトルク値を記憶部46から読み出す(ステップS52)。
【0119】
受信機4Aは読み出したトルク値を含む情報(トルク値情報)を第2通信部42を介して電動工具2Aに送信する(ステップS53)。
【0120】
電動工具2Aは、受信機4Aから送信されたトルク値情報を受信すると、受信機4Aに応答信号を送信する(ステップS54)。
【0121】
電動工具2Aは応答信号を送信すると、受信したトルク値情報に基づいて、トルク設定値を設定する(ステップS55)。
【0122】
ユーザは、トルク設定値の設定が完了したことを確認すると、電動工具2Aを用いて、実行工程に対応する例えば1本のボルトの締結作業を行う(ステップS56)。
【0123】
電動工具2Aは、実行工程に対応する例えば1本のボルトの締結作業が完了すると、作業結果情報を受信機4Aに送信する(ステップS57)。
【0124】
受信機4Aは、電動工具2Aから作業結果情報を受信すると、電動工具2Aに応答信号を送信し(ステップS58)、上位装置5に作業結果情報を送信する(ステップS59)。
【0125】
上位装置5は、受信機4Aから作業結果情報を受信すると、作業結果情報を記憶部52に記憶し(ステップS60)、受信機4Aに応答信号を送信する(ステップS61)。
【0126】
(3.2)変形例2
本変形例2に係る電動工具システム1は、変形例1と同様に、受信機4の第2通信部42が、作業モードにおいて電動工具2と作業情報の授受を行う場合にも稼働するように制御される点で、実施形態の電動工具システム1と相違する。また本変形例2は、間接通信モードと直接通信モードとが、ペアリング後の作業モード時において、電動工具2と第2通信部42との通信状況によって適宜切り替えられる点で、変形例1と相違する。
【0127】
本変形例2においては、ユーザが例えば太陽電池パネルの架台への取付作業を電動工具2を用いて行う際に、電動工具2と受信機4とが直接無線通信可能な場所と、電動工具2と受信機4との無線通信に中継機3が必要な場所とを往来する状況を想定している。
【0128】
まずユーザは取付作業に使用する電動工具2(2A)と受信機4(4A)とをシーケンス図である
図8に示すような手順でペアリングする。なおステップS70~S81は、実施形態におけるステップS1~S12と同様であり、ステップS82、S83は、ステップS14、S15と同様であるため、説明を省略する。つまり、本変形例2におけるペアリングの手順は、受信機4Aがペアリングモードを終了した後も第2通信部42を停止させないで稼働させる点で実施形態と異なる。これにより、作業モード時に、電動工具2Aと第2通信部42とは所定の時間間隔(例えば5s)で通信を行い、通信状況の確認を行うことができる。なおここでいう「通信状況」とは、例えば、通信エラーの発生頻度、無線信号の強度等である。
【0129】
以下に作業モードでの動作をシーケンス図である
図9を参照して説明する。
【0130】
電動工具2Aと受信機4Aとが作業モードとなった後、ユーザは例えば電動工具2Aと受信機4Aとが直接無線通信可能な場所において、取付作業に含まれる例えば1本のボルトの締結作業を開始する。なお、このとき切替スイッチはオフであり、電動工具2Aは間接通信モードであるとする。
【0131】
電動工具2Aは、第2通信部42との通信状況を確認し、例えば表示部28の青色発光ダイオードを所定のパターンで点滅させて、ユーザに直接通信モードが利用可能である旨を通知する。
【0132】
ユーザは、表示部28による通知を受けて、切替スイッチをオンにして電動工具2Aを直接通信モードに切り替える(ステップS90)。なお、直接通信モードへの切り替えは、通信状況に基づいて、電動工具2Aの制御部21によって自動で行われてもよい。
【0133】
ステップS91~S102の手順はステップS50~S61と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0134】
ここで、ユーザがステップS91~S102の手順を繰り返して太陽電池パネルの架台への取付作業を進めていくなかで、ユーザが電動工具2Aと受信機4Aとの無線通信に例えば中継機3Aが必要な場所まで移動したとする。
【0135】
このとき、電動工具2Aは、第2通信部42との通信状況を確認し、例えば表示部28の赤色発光ダイオードが所定のパターンで点滅させて、ユーザに直接通信モードが利用不可となった旨を通知する。
【0136】
ユーザは、表示部28による通知を受けて、切替スイッチをオフにして電動工具2Aを間接通信モードに切り替える。なお、間接通信モードへの切り替えは、通信状況に基づいて、電動工具2Aの制御部21によって自動で行われてもよい。間接通信モードに切り替えられた電動工具2Aは、ステップS20~S35と同様の手順で、中継機3Aを介して受信機4Aと通信を行い、取付作業に含まれる例えば1本のボルトの締結作業を行う。
【0137】
(3.3)その他の変形例
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0138】
電動工具システム1と同様の機能は、制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。
【0139】
上記の実施形態に係る制御方法は、電動工具システム1の制御方法である。電動工具システム1は、電動工具2と、中継機3と、受信機4と、を備える。電動工具2は無線通信が可能であり、ネットワーク上における個別の識別情報である例えばIPアドレス等の第1識別情報を持つ。中継機3は、電動工具2と無線通信が可能であり、ネットワーク上における個別の識別情報である例えばSSID及び当該SSIDに対応するパスワード等の第2識別情報を持つ。受信機4は、中継機3と例えばEthernet等の有線ネットワークで接続される。受信機4は、ネットワーク上の固有の識別情報である例えばIPアドレス等の第3識別情報を持つ。制御方法は、第1通信ステップと、第2通信ステップと、を含む。第1通信ステップは、電動工具2と受信機4とが中継機3を経由して通信を行うことにより、電動工具2による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。第2通信ステップは、電動工具2と受信機4とが無線通信を行うことにより、電動工具2と受信機4との通信に関連する通信情報の授受を行う。通信情報は、第1識別情報と、第1識別情報を持つ電動工具2と無線通信を行う中継機3が持つ第2識別情報と、第2識別情報を持つ中継機3と接続される受信機4が持つ第3識別情報と、を含む。
【0140】
また、上記の実施形態に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上述の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0141】
本開示における電動工具システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電動工具システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0142】
(4)まとめ
以上述べたように、第1の態様に係る電動工具システム(1)は、電動工具(2)と、中継機(3)と、受信機(4)と、を備える。電動工具(2)は、固有の識別情報である第1識別情報を持ち、無線通信が可能である。中継機(3)は、固有の識別情報である第2識別情報を持ち、電動工具(2)と無線通信が可能である。受信機(4)は、固有の識別情報である第3識別情報を持ち、中継機(3)と接続される。受信機(4)は、第1通信部(41)と、第2通信部(42)と、を有する。電動工具(2)と第1通信部(41)とは、中継機(3)を経由して通信を行うことにより、電動工具(2)による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。電動工具(2)と第2通信部(42)とは、無線通信を行うことにより、電動工具(2)と受信機(4)との通信に関連する通信情報の授受を行う。通信情報は、第1識別情報と、第1識別情報を持つ電動工具(2)と無線通信を行う中継機(3)が持つ第2識別情報と、第2識別情報を持つ中継機(3)と接続される受信機(4)が持つ第3識別情報と、を含む。
【0143】
この態様によれば、無線通信が可能な電動工具(2)と受信機(4)との通信の設定を簡易に行うことができる。
【0144】
第2の態様に係る電動工具システム(1)では、第1の態様において、電動工具(2)は、第2通信部(42)との無線通信を、中継機(3)との無線通信と比較して、低い出力電力で行う。
【0145】
この態様によれば、無線通信の範囲を狭めることで、別の場所で通信設定されている電動工具(2)に通信情報が誤って設定される可能性を低減できる。
【0146】
第3の態様に係る電動工具システム(1)では、第1又は第2の態様において、第2通信部(42)は、電動工具(2)と通信情報の授受を行う場合に稼働するように制御される。
【0147】
この態様によれば、通信情報の授受以外の目的で電動工具(2)と第2通信部(42)とが無線通信を行う可能性を低減することができ、電動工具(2)の電力消費量を低減できる。
【0148】
第4の態様に係る電動工具システム(1)では、第1又は第2の態様において、電動工具(2)と第2通信部(42)とは、無線通信を行うことにより、作業情報の授受を更に行う。
【0149】
この態様によれば、電動工具(2)と受信機(4)とが中継機(3)を経由せずに作業情報の授受を行うことができる。
【0150】
第5の態様に係る電動工具システム(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、電動工具(2)は、第2通信部(42)との無線通信の開始及び終了を切り替える切替操作部(29)を備える。
【0151】
この態様によれば、電動工具(2)のユーザが、電動工具(2)と第2通信部(42)とを無線通信させるか否かを適宜選択することができる。
【0152】
第6の態様に係る制御方法は、電動工具システム(1)の制御方法である。電動工具システム(1)は、電動工具(2)と、中継機(3)と、受信機(4)と、を備える。電動工具(2)は、固有の識別情報である第1識別情報を持ち、無線通信が可能である。中継機(3)は、固有の識別情報である第2識別情報を持ち、電動工具(2)と無線通信が可能である。受信機(4)は、固有の識別情報である第3識別情報を持ち、中継機(3)と接続される。制御方法は、第1通信ステップと、第2通信ステップと、を含む。第1通信ステップは、電動工具(2)と受信機(4)とが中継機(3)を経由して通信を行うことにより、電動工具(2)による作業内容に関連する作業情報の授受を行う。第2通信ステップは、電動工具(2)と受信機(4)とが無線通信を行うことにより、電動工具(2)と受信機(4)との通信に関連する通信情報の授受を行う。通信情報は、第1識別情報と、第1識別情報を持つ電動工具(2)と無線通信を行う中継機(3)が持つ第2識別情報と、第2識別情報を持つ中継機(3)と接続される受信機(4)が持つ第3識別情報と、を含む。
【0153】
この態様によれば、無線通信が可能な電動工具(2)と受信機(4)との通信の設定を簡易に行うことができる。
【0154】
第7の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに第6の態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0155】
この態様によれば、無線通信が可能な電動工具(2)と受信機(4)との通信の設定を簡易に行うことができる。
【符号の説明】
【0156】
1 電動工具システム
2 電動工具
3 中継機
4 受信機
29 切替操作部
41 第1通信部
42 第2通信部