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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032956
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230302BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230302BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/205
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139347
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】平村 建夫
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BC06
5F004BD04
5F004CA09
5F004DA18
5F004DB00
5F004DB01
5F004EA11
5F004EA28
5F004EB04
5F045BB20
5F045DQ17
(57)【要約】
【課題】処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中の基板に対する処理を適切に再開することが可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】この基板処理装置100は、基板処理部10と、基板処理部10に対して基板1の搬入出を行う搬入出装置20と、処理ステップPSを含む処理レシピ50に基づいて基板処理部10に基板1の処理を実行させる制御を行う制御部30と、を備える。制御部30は、基板処理部10からの基板1の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件52aが満たされた場合に、実行中の処理ステップPSの処理の進行状況51を記録するとともに、処理を中断させて基板処理部10から処理中基板1bを搬出させ、搬出させた処理中基板1bを基板処理部10に再搬入するとき、進行状況51と処理の再開時点66とを取得し、中断した処理ステップPSの処理を、再開時点66から再開するように基板処理部10を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する加工処理を実施する基板処理部と、
前記基板処理部に対して前記基板の搬入出を行う搬入出装置と、
処理ステップを含む処理レシピに基づいて前記基板処理部に前記基板の処理を実行させる制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板処理部からの前記基板の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件が満たされた場合に、実行中の前記処理ステップの処理の進行状況を記録するとともに、処理を中断させて前記基板処理部から処理中基板を搬出させ、
搬出させた前記処理中基板を前記基板処理部に再搬入するとき、前記進行状況と処理の再開時点とを取得し、中断した前記処理ステップの処理を、前記再開時点から再開するように前記基板処理部を制御する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、処理の中断時点と、指定された指定時点とのいずれかを、前記再開時点に選択する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記再開時点を前記中断時点とする場合、中断時に記録された前記進行状況に基づいて、前記中断時点を取得するように構成されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板処理部の動作を制御する処理制御部と、前記処理制御部に対して処理の中断および再開を指示する主制御部とを含み、
前記処理制御部は、前記搬出中断条件が満たされた場合、前記進行状況を前記主制御部に出力し、
搬出させた前記処理中基板を再搬入する際に、前記主制御部は、前記進行状況に基づく再開指示を前記処理制御部に出力して、前記中断時点から前記処理中基板に対する処理を再開させる、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
操作入力を受け付ける入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記再開時点を前記指定時点とする場合、前記入力部を介して、前記指定時点を取得するように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記処理レシピに基づいて、前記再開時点における前記基板処理部内の処理状況を取得し、
前記処理中基板に対する処理を再開する前に、前記再開時点における処理状況を再現するための再現処理を実行するように前記基板処理部を制御する、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
再開する前記処理ステップが、処理中にパラメータ値を変化させる処理を含む場合、前記再開時点における処理状況は、前記再開時点の前記パラメータ値を含む、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記搬出中断条件は、予め設定された所定の搬出事象が発生したことを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記搬出中断条件は、実行中の前記処理ステップの処理以外の、他の割り込み処理が発生したことを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記処理中基板に対する処理を中断させて前記処理中基板を搬出させた後、前記基板処理部に、中断した前記処理ステップの処理以外の他の処理を実行させる制御を行う、請求項1~9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記他の処理は、前記基板処理部の処理室に対するクリーニング処理を含む、請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記基板の搬出を伴わずに処理を中断する一時中断条件が満たされた場合に、前記処理中基板を搬出させることなく前記基板処理部の処理を中断させ、
前記処理中基板の処理を再開する場合に、中断した前記処理ステップの処理を、指定された時点から再開するように前記基板処理部を制御する、請求項1~11のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板に対する加工処理を実施する基板処理方法であって、
前記基板を処理室に搬入する工程と、
処理ステップを含む処理レシピに基づいて前記処理室内の前記基板の処理を実行する工程と、を備え、
処理中に前記基板の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件が満たされた場合、
実行中の前記処理ステップの処理の進行状況を記録する工程と、
処理を中断させて前記処理室から処理中基板を搬出させる工程と、を実行し、
搬出させた前記処理中基板を前記処理室に再搬入する場合、
前記進行状況と処理の再開時点とを取得する工程と、
中断時に実行中の前記処理ステップの処理を、前記再開時点から再開する工程と、を実行する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関し、特に、処理レシピに基づいて基板処理を実行する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理レシピに基づいて基板処理を実行する基板処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数のステップを含むレシピに基づいて、基板に反応性イオンエッチング(RIE)処理を施す基板処理装置が開示されている。上記特許文献1では、レシピに対応したRIE処理の途中でエラーの発生を検知すると、RIE処理を中断し、操作者によるレシピの修正入力を受け付け、修正内容に応じて、修正されたレシピでエラー発生ステップの直前のステップを実行してからエラー発生ステップをエラー発生時の残りの処理時間だけ実行するなどの処理を行うことが開示されている。これにより、上記特許文献1では、処理が中止された基板を処理室内から取り出すことなく処理を再実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4900904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板処理においては、基板の処理を中断して基板を基板処理部から搬出する必要がある事象も発生することがある。上記特許文献1では、レシピに従った処理を途中で中断して基板処理部から基板が搬出された場合については考慮されていない。そのため、処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中に搬出された基板に対する処理を適切に再開できるようにすることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中の基板に対する処理を適切に再開することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明による基板処理装置は、基板に対する加工処理を実施する基板処理部と、基板処理部に対して基板の搬入出を行う搬入出装置と、処理ステップを含む処理レシピに基づいて基板処理部に基板の処理を実行させる制御を行う制御部と、を備え、制御部は、基板処理部からの基板の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件が満たされた場合に、実行中の処理ステップの処理の進行状況を記録するとともに、処理を中断させて基板処理部から処理中基板を搬出させ、搬出させた処理中基板を基板処理部に再搬入するとき、進行状況と処理の再開時点とを取得し、中断した処理ステップの処理を、再開時点から再開するように基板処理部を制御する。
【0008】
第1の発明による基板処理装置では、上記のように、基板処理部からの基板の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件が満たされた場合に、実行中の処理ステップの処理の進行状況を記録するとともに、処理を中断させて基板処理部から処理中基板を搬出させるので、実行中の処理を中断させて基板処理部から処理中基板を搬出させる場合でも、中断した処理の進行状況を記録しておくことができる。そして、搬出させた処理中基板を基板処理部に再搬入するとき、進行状況と処理の再開時点とを取得し、中断した処理ステップの処理を、再開時点から再開することによって、一旦基板処理部の外部へ搬出した処理中基板でも、中断した処理ステップの再開時点から、処理を再開することができる。これらの結果、処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中の基板に対する処理を適切に再開することができる。
【0009】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、制御部は、処理の中断時点と、指定された指定時点とのいずれかを、再開時点に選択する。これにより、処理中基板の処理を、処理の中断時点から再開するか、操作者が指定した指定時点から再開するかを、中断した状況等に応じて選択できる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、再開時点を中断時点とする場合、中断時に記録された進行状況に基づいて、中断時点を取得するように構成されている。このように構成すれば、中断時に記録された進行状況を利用することにより、操作者が中断時点を指定することなく、中断時点からの処理を自動的に再開できる。
【0011】
上記中断時に記録された進行状況に基づいて、中断時点を取得する構成において、好ましくは、制御部は、基板処理部の動作を制御する処理制御部と、処理制御部に対して処理の中断および再開を指示する主制御部とを含み、処理制御部は、搬出中断条件が満たされた場合、進行状況を主制御部に出力し、搬出させた処理中基板を再搬入する際に、主制御部は、進行状況に基づく再開指示を処理制御部に出力して、中断時点から処理中基板に対する処理を再開させる。このように構成すれば、処理制御部が処理中基板の搬出後に進行状況を保持しておく必要がないため、処理中基板を搬出してから、処理再開のために再搬入するまでの間に、基板処理部に別の処理を実行させることができる。
【0012】
上記中断時点と指定時点とのいずれかを、再開時点に選択する構成において、好ましくは、操作入力を受け付ける入力部をさらに備え、制御部は、再開時点を指定時点とする場合、入力部を介して、指定時点を取得するように構成されている。このように構成すれば、操作者が、中断した状況に応じて、任意の時点から処理を再開させることができる。
【0013】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、制御部は、処理レシピに基づいて、再開時点における基板処理部内の処理状況を取得し、処理中基板に対する処理を再開する前に、再開時点における処理状況を再現するための再現処理を実行するように基板処理部を制御する。このように構成すれば、処理レシピに基づいて、処理を中断しなければ再開時点で実現していたと考えられる状況を再現して、処理を再開できる。
【0014】
この場合、好ましくは、再開する処理ステップが、処理中にパラメータ値を変化させる処理を含む場合、再開時点における処理状況は、再開時点のパラメータ値を含む。このように構成すれば、処理を中断しなければ再開時点で到達していたパラメータ値で、処理を再開できる。
【0015】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、搬出中断条件は、予め設定された所定の搬出事象が発生したことを含む。このように構成すれば、基板搬出が必要な事象が発生した場合でも、搬出事象発生時に処理されていた処理中基板に対する処理を、処理レシピの再設定等を行うことなく再開できる。
【0016】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、搬出中断条件は、実行中の処理ステップの処理以外の、他の割り込み処理が発生したことを含む。このように構成すれば、処理中に発生した割り込み処理により基板処理部から一旦搬出された基板に対する処理を、処理レシピの分割等を行うことなく再開できる。
【0017】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、制御部は、処理中基板に対する処理を中断させて処理中基板を搬出させた後、基板処理部に、中断した処理ステップの処理以外の他の処理を実行させる制御を行う。通常、処理の途中に基板を搬出して他の処理を実行させる場合、搬出前の前半部の処理と、他の処理を実行させた後の後半部の処理とを、別々の処理レシピとして用意する必要がある。これに対して、上記のように構成すれば、同じ1つの処理レシピのまま、搬出した処理中基板に対する処理を再開できる。
【0018】
この場合、好ましくは、他の処理は、基板処理部の処理室に対するクリーニング処理を含む。このように構成すれば、レシピを変更することなく、クリーニング処理後の処理室に処理中基板を再搬入することで処理を再開することができる。
【0019】
上記第1の発明による基板処理装置において、好ましくは、制御部は、基板の搬出を伴わずに処理を中断する一時中断条件が満たされた場合に、処理中基板を搬出させることなく基板処理部の処理を中断させ、処理中基板の処理を再開する場合に、中断した処理ステップの処理を、指定された時点から再開するように基板処理部を制御する。このように構成すれば、基板の搬出が不要な一時中断条件が満たされた場合にも、再開可能となった場合に、基板の搬入出を行わずにそのまま処理を再開できる。
【0020】
第2の発明による基板処理方法は、基板に対する加工処理を実施する基板処理方法であって、基板を処理室に搬入する工程と、複数の処理ステップを含む処理レシピに基づいて処理室内の基板の処理を実行する工程と、を備え、処理中に基板の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件が満たされた場合、実行中の処理ステップの処理の進行状況を記録する工程と、処理を中断させて処理室から処理中基板を搬出させる工程と、を実行し、搬出させた処理中基板を処理室に再搬入する場合、進行状況と処理の再開時点とを取得する工程と、中断時に実行中の処理ステップの処理を、再開時点から再開する工程と、を実行する。
【0021】
第2の発明による基板処理方法では、上記第1の発明と同様に、実行中の処理を中断させて処理室から処理中基板を搬出させる場合でも、中断した処理の進行状況を記録しておくことができ、一旦処理室の外部へ搬出した処理中基板でも、中断した処理ステップの再開時点から、処理を再開することができる。これらの結果、処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中の基板に対する処理を適切に再開することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、処理の途中で基板が搬出された場合にも、処理中の基板に対する処理を適切に再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】基板処理装置の概略構成を示した模式図である。
図2】制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図3】処理レシピを説明するための図である。
図4】基板処理部における処理の中断、基板の搬出および再搬入の流れを示した模式図である。
図5】割り込み処理を説明するための図である。
図6】処理中断時の処理の進行状況を説明するための図である。
図7】処理中基板に対する処理の再開指示を説明するための図である。
図8】再開時点の選択を説明するための図である。
図9】再開時点における処理状況の再現を説明するための図である。
図10】基板処理の流れを示したフロー図である。
図11】搬出中断処理の流れを示したフロー図である。
図12】処理中基板に対する処理を再開する際のフロー図である。
図13】一時中断処理の流れを示したフロー図である。
図14】処理レシピの具体例を示した図である。
図15】処理ステップ中のエッチングガス流量(a)、保護膜形成ガス流量(b)、排気ガス流量(c)の各パラメータの時間変化を示したタイミングチャートである。
図16】パラメータが時間変化する場合の具体例を示したタイミングチャートである。
図17】パラメータが時間変化する場合の再現処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1図13を参照して、基板処理装置100の構成について説明する。基板処理装置100は、基板1に対して、処理ステップPS(図3参照)を含む処理レシピ50(図3参照)に従った加工処理を行う装置である。基板1は、半導体基板である。
【0026】
図1に示すように、基板処理装置100は、基板処理部10と、搬入出装置20と、制御部30と、を備える。搬入出装置20が設置された真空搬送室21を中心にして、ロードロック室40と、複数の基板処理部10とが真空搬送室21に対して放射状に接続されている。2つのロードロック室40と、4つの基板処理部10とが設けられている。ロードロック室40には、基板1を保持するカセット41が設置される。
【0027】
搬入出装置20は、基板1を把持して搬送する真空搬送ロボットにより構成される。搬入出装置20は、基板処理部10に対して基板1の搬入出を行う。搬入出装置20は、ロードロック室40に設置されたカセット41から基板1を取り出し、いずれかの基板処理部10の処理室11内に基板1を搬入すること、基板処理部10の処理室11内から基板1を搬出し他の箇所へ搬送することができる。
【0028】
基板処理部10は、それぞれ、基板1に対する加工処理を実施する。加工処理は、エッチング、成膜、基板表面の膜の除去などを含む。基板処理部10は、基板1に対する処理を行うための処理室11を備え、処理室11内で基板1の加工処理を行う。
【0029】
制御部30は、基板処理部10および搬入出装置20を含む基板処理装置100の全体の動作を制御する。制御部30は、搬入出装置20に基板1の搬送動作を実行させる制御を行う。
【0030】
図2に示すように、制御部30は、複数の処理ステップPS(図3参照)を含む処理レシピ50に基づいて基板処理部10に基板1の処理を実行させる制御を行う。制御部30は、主制御部31と、処理制御部32と、搬送制御部33とを含む。主制御部31は、プロセッサと記憶部31aとを備えたコンピュータである。主制御部31は、操作入力を受け付ける入力部34と接続されている。
【0031】
記憶部31aには、主制御部31が実行するプログラム、処理レシピ50のデータ、および、各基板処理部10における処理の進行状況51のデータが記録される。記憶部31aには、後述する搬出中断条件52aおよび一時中断条件52bが記録されている。進行状況51のデータは、処理制御部32の記憶部(図示せず)に記録してもよい。
【0032】
処理制御部32は、基板処理部10の動作を制御するコントローラである。処理制御部32は、それぞれの基板処理部10に対して1つずつ設けられている。処理制御部32は、主制御部31から送信される処理レシピ50に従って基板1に対する処理を実行するように、基板処理部10を制御する。搬送制御部33は、搬入出装置20の動作を制御するコントローラである。搬送制御部33は、主制御部31から送信される情報に基づいて、搬入出装置20を制御する。
【0033】
図3に示すように、処理レシピ50は、基板1に対する加工処理を、処理ステップPS単位で規定したものである。処理レシピ50は、1つ以上の処理ステップPSを含む。処理レシピ50には、個々の処理ステップPSについて、処理条件(パラメータ)を規定した設定情報が登録される。
【0034】
処理レシピ50に従った基板処理部10による処理ステップPSの実行中に、実行中の処理を中断する事象が発生する場合がある。たとえば図3に示す「Step3」の時間Taにおいて処理が中断する、といった事象が発生する。本実施形態では、予め設定された中断条件が満たされた場合に、制御部30(主制御部31または処理制御部32)が、基板処理部10による実行中の処理を中断させる。
【0035】
本明細書では、中断条件を、中断時の基板搬出の有無に応じて2種類に区別する。すなわち、図2に示したように、中断条件の1つは、基板処理部10からの基板1の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件52aである。中断条件の他の1つは、基板1の搬出を伴わずに処理を中断する一時中断条件52bである。
【0036】
図4に示すように、本明細書では、処理レシピ50による一連の処理が開始されていない基板1を、未処理基板1aと呼ぶ。いずれかの処理ステップPSの実行途中で処理が中断された基板1を、処理中基板1bと呼ぶ。本実施形態では、処理中基板1bを基板処理部10に再搬入することで、処理レシピ50を変更することなく処理を再開できる。
【0037】
本実施形態では、搬出中断条件52aは、予め設定された所定の搬出事象が発生したことを含む。搬出中断条件52aに設定される搬出事象は、特に限定されないが、たとえば、基板1を搬出して処理室11内の状況を確認する必要がある異常、などが該当する。搬出事象は、異常発生には限られず、経過時間が閾値を越えたといった異常以外の事象でもよい。搬出事象の発生源(搬出事象のトリガー)としては、タイマーの計測時間(たとえば高周波印加時間)、各種センサの検出値(たとえば冷媒流量、静電チャック電流値、圧力制御弁開度など)などがある。
【0038】
また、搬出中断条件52aは、実行中の処理ステップPSの処理以外の、他の割り込み処理が発生したことを含む。図5に示すように、割り込み処理が発生した場合、制御部30は、処理中基板1bに対する処理を中断させて処理中基板1bを搬出させた後、基板処理部10に、中断した処理ステップPSの処理以外の他の処理を実行させる制御を行う。他の処理は、基板処理部10の処理室11に対するクリーニング処理を含む。たとえば、処理中のOES(発光分光)検出による発光強度に基づいてクリーニング処理の割り込みが判断される。高周波印加時間とクリーニング処理の間隔設定値とに基づいて割り込みが判断されてもよい。クリーニング処理は、処理室11内にダミー基板を搬入して実行してもよく、基板なしで実行してもよい。
【0039】
図2に示した一時中断条件52bは、搬出中断条件52aに設定された搬出事象以外の中断事象であって、予め設定された所定の中断事象が発生したことを含む。一時中断条件52bに設定される中断事象は、特に限定されないが、たとえば、処理室11内で監視される測定パラメータの一時的な異常などが該当しうる。
【0040】
〈搬出中断条件に基づく制御動作〉
(中断時)制御部30は、搬出中断条件52aが満たされた場合に、実行中の処理ステップPSの処理の進行状況51(図2参照)を記録するとともに、処理を中断させて基板処理部10から処理中基板1bを搬出させるように構成されている。
【0041】
進行状況51は、図6に示すように、基板識別情報61と、レシピ名62と、中断ステップ63と、中断時点64と、の各情報を含む。基板識別情報61は、基板1の個体識別情報(ID)である。レシピ名62は、基板1に対して実行されていた処理レシピ50を特定する名称(または番号)である。中断ステップ63は、中断した処理ステップPSを特定する情報(ステップ番号)である。中断時点64は、中断した処理ステップPSにおける中断した時点を特定する情報(処理ステップ開始からの経過時間)である。
【0042】
図2を参照して、進行状況51は、搬出中断条件52aを満たした基板処理部10を制御する処理制御部32によって生成される。処理制御部32から主制御部31に進行状況51が出力され、主制御部31が進行状況51を記憶部31aに記録する。そして、主制御部31が、搬送制御部33を介して、搬入出装置20に処理中基板1bを処理室11から搬出させる。処理制御部32において処理中基板1bについての進行状況51のデータがクリアされても、処理中基板1bを処理室11に再搬入する場合には、記憶部31aに記録された進行状況51に基づいて、処理中基板1bに対する処理が再開される。
【0043】
(再搬入時)制御部30は、搬出させた処理中基板1bを基板処理部10に再搬入するとき、進行状況51と処理の再開時点66(図7参照)とを取得し、中断した処理ステップPSの処理を、再開時点66から再開するように基板処理部10を制御する。
【0044】
具体的には、搬出させた処理中基板1bを基板処理部10に再搬入する際に、主制御部31は、進行状況51に基づく再開指示53(図7参照)をその基板処理部10の処理制御部32に出力して、再開時点66から処理中基板1bに対する処理を再開させる。
【0045】
図7に示すように、再開指示53は、基板識別情報61と、レシピ名62と、再開ステップ65と、再開時点66と、の各情報を含む。再開ステップ65は、処理中基板1bに対する処理を再開する処理ステップPSを特定する情報(ステップ番号)である。再開時点66は、再開ステップ65における、処理を再開する時点を特定する情報(処理ステップ開始からの経過時間)である。
【0046】
本実施形態では、処理の再開時点66は、処理の中断時点64には限られない。制御部30(主制御部31)は、図8に示すように、処理の中断時点64と、指定された処理ステップPS内で指定された指定時点67とのいずれかを、再開時点66に選択する。
【0047】
制御部30は、再開時点66を中断時点64とする場合、中断時に記録された進行状況51に基づいて、中断時点64を取得するように構成されている。この場合、再開指示53の再開ステップ65と再開時点66とは、記憶部31aに記録された進行状況51の中断ステップ63と中断時点64とに一致する。
【0048】
制御部30は、再開時点66を指定時点67とする場合、入力部34を介して、指定時点67を取得する。再開時点66を指定時点67とする場合、処理レシピ50に含まれる任意の処理ステップPSを再開ステップ65として指定することができ、指定された再開ステップ65における任意の時点を再開時点66として指定することができる。指定時点67は、処理ステップPSの開始からの経過時間で指定してもよいし、「中断時点64のZ秒前から再開」のように中断時点64に対するオフセット値で指定してもよい。
【0049】
〈再開時の処理〉
制御部30は、処理レシピ50に基づいて、再開時点66における基板処理部10内の処理状況を取得し、処理中基板1bに対する処理を再開する前に、再開時点66における処理状況を再現するための再現処理を実行するように基板処理部10を制御する。
【0050】
再現処理は、処理条件として設定されたパラメータ値を、再開ステップ65の再開時点66における値に近づけるように調整する処理である。再開すべき処理ステップPSが、処理中にパラメータ値を変化させる処理を含む場合、再開時点66における処理状況は、再開時点66のパラメータ値を含む。たとえば図9に示したように、再開時点66が経過時間Tbとして与えられると、制御部30は、初期値、最終値、および総処理時間Tcから、経過時間Tbにおけるパラメータ値Vrを算出する。そして、制御部30は、処理中基板1bに対する処理を再開する前に、そのパラメータがパラメータ値Vrとなるように再現処理を実行する。
【0051】
〈一時中断条件に基づく制御〉
制御部30は、一時中断条件52bが満たされた場合に、処理中基板1bを搬出させることなく基板処理部10の処理を中断させる。制御部30は、処理室11内に収容したままの処理中基板1bの処理を再開する場合に、中断した処理ステップPSの処理を、指定された時点から再開するように基板処理部10を制御する。指定された時点は、中断時点でも、中断時点以外の時点でもよい。
【0052】
(基板処理装置の動作)
図10図13を参照して、基板処理装置100の動作を説明する。基板処理装置100は、本実施形態の基板処理方法を実施する。
【0053】
〈基板処理〉
まず、図10を参照して、基本的な基板処理の流れを説明する。ステップS1において、搬入出装置20が、処理対象となる基板1(未処理基板1a)をカセット41から基板処理部10の処理室11内へ搬入する。搬入される未処理基板1aは、基板識別情報61(図6参照)に基づいて制御部30により個別に識別される。ステップS2において、基板処理部10が、処理室11内に搬入された未処理基板1aに対して、処理レシピ50に基づいて加工処理を実行する。処理レシピ50に含まれる全ての処理ステップPSが完了すると、基板処理が完了する。ステップS3において、搬入出装置20が、処理が完了した基板1を基板処理部10から搬出し、カセット41へ搬送する。処理が完了した基板1に対応する基板識別情報61は、処理済みとされる。
【0054】
ステップS4において、制御部30が、処理対象となる未処理基板1aがあるか否かを判断する。未処理基板1aが存在する場合、制御部30は、その未処理基板1aを次の処理対象として処理をステップS1に戻し、基板処理を開始する。未処理基板1aが存在しない場合、制御部30は、基板処理を終了させる。
【0055】
〈搬出中断処理〉
次に、図11を参照して、搬出中断処理の流れを説明する。搬出中断処理は、図10のステップS1~S4の繰り返しの過程で、搬出中断条件52aが充足されることに基づき実行される処理である。
【0056】
ステップS11において、制御部30は、搬出中断条件52aが充足された否かを判断する。搬出中断条件52aが満たされていない場合、ステップS11が繰り返される。制御部30は、いずれかの基板処理部10において搬出中断条件52aが満たされた場合、ステップS12以降に処理を進める。
【0057】
ステップS12において、制御部30は、搬出中断条件52aを満たした基板処理部10における基板処理を中断させる。ステップS13において、制御部30は、実行中の処理ステップPSの処理の進行状況51を記憶部31aに記録する。ステップS14において、搬入出装置20が、基板処理を中断した基板処理部10の処理室11から、処理中基板1bを搬出し、カセット41に搬送する。処理中基板1bの搬出先は、真空搬送ロボットのハンド上、バッファステージ、クーリングステージなどでもよい。
【0058】
ステップS15において、制御部30は、搬出中断条件52aの内容に基づき、処理中基板1bを搬出した基板処理部10について、他の処理があるか否かを判断する。制御部30は、割り込み処理の発生により搬出中断条件52aが充足した場合、他の処理があると判断する。その場合、ステップS16において、制御部30は、処理中基板1bの搬出後の基板処理部10に対して、他の処理(割り込み処理)を実行させる。
【0059】
一方、制御部30は、割り込み処理がない場合、他の処理がないと判断する。制御部30は、ステップS17において、基板搬出後の基板処理部10の処理動作を再開するか否かを判断する。たとえば、処理再開の指示が入力部34を介して受け付けられた場合、制御部30は、処理動作を再開すると判断する。処理再開の指示が受け付けられない場合、制御部30は、ステップS17の判断を繰り返す。なお、図11では図示を省略するが、異常発生により搬出中断条件52aが充足した場合で、処理の再開ができない場合には、基板処理自体が中止(アボート)される。
【0060】
ステップS16の実行後、またはステップS17で処理動作を再開すると判断された場合、搬出中断処理が終了し、基板処理部10における基板処理が再開される。
【0061】
〈処理中基板の処理再開時の制御〉
次に、図12を参照して、処理中基板1bが基板処理部10に再搬入されることにより、処理中基板1bへの基板処理を再開するための処理の流れを説明する。処理中基板1bに対する基板処理は、搬出中断後、基板処理部10における基板処理が再開された直後に実行されてもよく、他の未処理基板1aに対する基板処理の後に実行されてもよい。
【0062】
ステップS21において、制御部30は、基板識別情報61に基づき、処理対象となる基板1が処理中基板1bであるか否かを判断する。処理対象が処理中基板1bでない(未処理基板1aである)場合、図10に示した通常の基板処理が実行される。処理対象が処理中基板1bである場合、制御部30は、ステップS22において、処理中基板1bに対する処理の進行状況51を記憶部31aから取得する。
【0063】
ステップS23において、制御部30は、処理中基板1bに対する処理の再開時点66の指定があるか否かを判断する。制御部30は、再開時点66の指定を受け付けた場合、ステップS24において、指定時点67を再開時点66に設定する。制御部30は、時間指定がない場合、または中断時点64を選択する入力を受け付けた場合、ステップS25において、中断時点64を再開時点66に設定する。
【0064】
ステップS26において、制御部30は、処理レシピ50に基づいて、設定された再開時点66における基板処理部10内の処理状況を取得する。
【0065】
ステップS27において、制御部30は、基板処理部10に、処理中基板1bに対する処理を再開させる。まず、搬入出装置20により、処理中基板1bが基板処理部10の処理室11に搬入(再搬入)される。主制御部31が、基板処理部10の処理制御部32に対して、再開指示53と再開時点66における処理状況とを出力する。処理制御部32は、再開時点66に応じた再現処理を基板処理部10に実行させる。そして、再現処理の完了とともに、処理制御部32は、再開ステップ65の再開時点66から再開するように基板処理部10を制御する。
【0066】
処理が再開された後の制御は、図10のステップS2に戻される。つまり、再開した処理ステップPS以降、処理レシピ50に含まれる残り全ての処理ステップPSが完了するまで、順番に処理ステップPSが実行される。この結果、図4に示したように、搬出および再搬入を挟んで処理中基板1bについての処理が完了する。
【0067】
〈一時中断処理〉
次に、図13を参照して、一時中断処理の流れを説明する。
【0068】
ステップS31において、制御部30は、一時中断条件52bが充足されたか否かを判断する。一時中断条件52bが充足されていない場合、ステップS31が繰り返される。制御部30は、一時中断条件52bが充足された場合、ステップS32に処理を進める。
【0069】
ステップS32において、制御部30は、一時中断条件52bを満たした基板処理部10における基板処理を中断させる。ステップS33において、制御部30は、処理動作を再開するか否かを判断する。たとえば処理再開の指示が受け付けられない場合、ステップS33の判断を繰り返す。
【0070】
処理動作を再開する場合、ステップS34において、制御部30は、一時中断した処理の再開時点の指定があるか否かを判断する。制御部30は、再開時点の指定がある場合、ステップS35において、指定された時点を再開時点に設定する。制御部30は、指定がない場合または中断時点を選択する入力を受け付けた場合、ステップS36に処理を進め、処理の一時中断時点を再開時点に設定する。
【0071】
ステップS37以降において、制御部30は、基板処理部10に、一時中断した処理を再開時点から再開させる。再開時点が中断時点とは異なる場合、その再開時点における処理状況を再現するための再現処理が行われてもよい。
【0072】
(具体例)
以下、基板処理装置100の動作の具体例を説明する。
【0073】
図14は、処理レシピ50の一例を示す。図14に示す処理レシピ50は、シリコン基板である基板1に対して、ドライエッチング処理と、成膜(保護膜の形成)と、の2つの処理ステップPSを繰り返すことにより、基板1に高アスペクト比の凹部(穴、溝または貫通孔)を形成する深掘り加工を実施するものである。基板処理部10は、誘導結合プラズマ(ICP)装置である。なお、処理ステップPSは、1つの処理ステップ(親ステップ)の中に、エッチング処理と成膜といった複数のステップ(子ステップ)を含む多層構造で定義されてもよい。
【0074】
図15は、図14の処理レシピ50で定義された処理ステップPSのタイミングチャートであって、処理ステップPSの途中でパラメータ値が変化するマルチフェーズプロセス(MPP)の例を示す。横軸が経過時間を示し、縦軸がパラメータ値を示す。MPPは、パラメータ(ガス流量)変化によって処理室11内のガス置換を効率化することで、エッチング速度を速くしたり、マスク選択比を高くしたり、高精度なエッチング形状を得ることを可能とする処理手法である。
【0075】
Step1およびStep3の処理ステップPSでは、処理レシピ50で設定された処理時間Tetchの間、エッチング処理が実行される。エッチング処理では、基板処理部10は、処理室11内にエッチングガス(SF)を供給するとともに所定の高周波電力を供給することにより、エッチングガスをプラズマ化する。プラズマに含まれるFラジカルがシリコン原子と化学反応したり、プラズマに含まれるイオンが電位差により基板1に向けて移動して衝突したりする結果、基板1に凹部が形成される。
【0076】
Step2およびStep4の処理ステップPSでは、処理レシピ50で設定された処理時間Tdepoの間、成膜処理が実行される。成膜処理では、基板処理部10は、処理室11内に保護膜形成ガス(C)を供給するとともに所定の高周波電力を供給することにより、保護膜形成ガスをプラズマ化する。プラズマに含まれるラジカルから重合物が生成されて、基板1の凹部の側壁および底面に等方的に堆積する。堆積した重合物により、エッチングガスから生成されるラジカルと反応しない保護膜が形成される。
【0077】
なお、図15(c)に示すように、エッチング処理と成膜処理との間で処理室11内が排気され、エッチングガスと保護膜形成ガスとの入れ替えが行われる。
【0078】
保護膜形成後にエッチング処理が行われると、イオンの方向性に起因して、イオン照射の多い凹部の底面では、イオン照射により保護膜が除去される一方、イオン照射の少ない凹部の側壁では保護膜が残る。そのため、保護膜が残る側壁はエッチングから保護されたまま、保護膜が除去された凹部の底面でラジカル及びイオン照射によるエッチングが進行する。これにより、エッチングは凹部の深さ方向にのみ進行し、高アスペクト比の凹部が基板1に形成される。凹部底面における保護膜の除去処理の処理ステップPSと、保護膜除去後のエッチング処理の処理ステップPSとを別個に設けてもよい。
【0079】
ここで、エッチング(Step3)の処理ステップPSにおける時間Tdにおいて、基板処理部10で搬出中断条件52aが充足した場合を仮定する。この場合、進行状況51として、基板識別情報61と、レシピ名62と、中断ステップ63の情報(エッチング処理)と、中断時点64である時間Tdの情報(処理ステップPSの開始からの経過時間Pa)とが記憶部31aに記録される。
【0080】
中断時点64から処理が再開される場合、制御部30が、再開時点66のパラメータ値を特定する。図15の例では、処理ステップPSの開始からの経過時間Paにおいて、エッチングガス流量V、保護膜形成ガス流量V、排気ガス流量Vが特定される。ガス制御パラメータには、この他に処理室11内の圧力値などが含まれる。
【0081】
この他、パラメータ値には、プラズマを生成するためのコイルに接続された高周波電源周波数、供給電力、基板1が設置される基台に接続された高周波電源周波数、基台に供給されるバイアス電力、などの電力制御パラメータ、基台の温度などの温度制御パラメータなどが含まれる。
【0082】
図14および図15のケースでは、再搬入後の処理中基板1bに対する処理は、中断が発生した3番目の処理ステップPSの時間Td以降の処理および4番目の処理ステップPSの処理となる。
【0083】
次に、図16および図17を参照して、再現処理の例を説明する。図16は、処理レシピ50におけるN番目の処理ステップPSにおける、あるパラメータXのパラメータ値の変化の一例を示す。横軸が経過時間を示し、縦軸がパラメータ値を示す。図16は、処理の進行に伴ってパラメータ値を経時的に変化させるパラメータランピングと呼ばれる処理手法の例を示している。パラメータは、高値Hv(High)と低値Lv(Low)との二値の切り替えを基本としつつ、高値Hvおよび低値Lvが経過時間に対して所定の変化率(傾き)となる。パラメータXの変化は、処理レシピ50に予め設定されている。
【0084】
N番目の処理ステップPSの時間Teを再開時点66として処理が再開される場合を仮定する。図16では、時間Te以前のパラメータの変化を実線で示し、時間Te以降を点線で示すことにより、時間Teで処理が中断されたことを示している。
【0085】
制御部30は、処理レシピ50で設定された図16のパラメータ変化と、再開時点66である時間Teとから、再開時点66のパラメータ値を取得する。図16の例では、時間Teでの高値Hvに対応するパラメータ値Vrが取得される。
【0086】
制御部30は、処理を再開する際、図17に示すように、再現処理を実行するための準備期間PPを、再開時点66(時間Te)の直前に設定する。準備期間PPの終了時点が、再開時点66となる。準備期間PPにおいて再現処理が行われる。
【0087】
一方、制御部30は、準備期間PP中に基板処理が進行しないように、各種パラメータを制御する。たとえば上述の誘導結合プラズマ装置でエッチングまたは成膜処理を行う場合、プラズマ生成に関わるパラメータについては準備期間PPでは制御を停止する。制御部30は、準備期間PPの終了時(再開時点66の到達時)に、高周波電力の印加を開始させる。これにより、時間Tfから再開時点66までの準備期間PPにおいて予め再現可能な処理状況を整えた上で、再開時点66(時間Te)から処理が再開される。
【0088】
準備期間PPの長さは、各種パラメータを安定化させることが可能な所定時間に設定される。準備期間PPの長さ設定値は、入力部34を介して入力を受け付けることにより、設定および設定変更可能である。
【0089】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0090】
本実施形態の基板処理装置100では、上記のように、基板処理部10からの基板1の搬出を伴って処理を中断する搬出中断条件52aが満たされた場合に、実行中の処理ステップPSの処理の進行状況51を記録するとともに、処理を中断させて基板処理部10から処理中基板1bを搬出させるので、実行中の処理を中断させて基板処理部10から処理中基板1bを搬出させる場合でも、中断した処理の進行状況51を記録しておくことができる。そして、搬出させた処理中基板1bを基板処理部10に再搬入するとき、進行状況51と処理の再開時点66とを取得し、中断した処理ステップPSの処理を、再開時点66から再開することによって、一旦基板処理部10の外部へ搬出した処理中基板1bでも、中断した処理ステップPSの再開時点66から、処理を再開することができる。これらの結果、処理の途中で基板1が搬出された場合にも、処理中の基板1に対する処理を適切に再開することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、処理の中断時点64と、指定された指定時点67とのいずれかを、再開時点66に選択する。これにより、処理中基板1bの処理を、処理の中断時点64から再開するか、操作者が指定した指定時点67から再開するかを、中断した状況等に応じて選択できる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように制御部30は、再開時点66を中断時点64とする場合、中断時に記録された進行状況51に基づいて、中断時点64を取得するように構成されている。このように構成すれば、操作者が中断時点64を指定することなく、中断時点64からの処理を自動的に再開できる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、処理制御部32は、搬出中断条件52aが満たされた場合、進行状況51を主制御部31に出力し、搬出させた処理中基板1bを再搬入する際に、主制御部31は、進行状況51に基づく再開指示53を処理制御部32に出力して、中断時点64から処理中基板1bに対する処理を再開させる。これにより、処理制御部32が処理中基板1bの搬出後に進行状況51を保持する必要がないため、処理中基板1bの搬出後、処理再開のために再搬入するまでの間に、基板処理部10で別の処理を実行できる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、再開時点66を指定時点67とする場合、入力部34を介して、指定時点67を取得するように構成されている。これにより、操作者が、中断した状況に応じた任意の時点から処理を再開させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、処理レシピ50に基づいて、再開時点66における基板処理部10内の処理状況を取得し、処理中基板1bに対する処理を再開する前に再現処理を実行する。これにより、処理レシピ50に基づいて、処理を中断しなければ再開時点66で実現していた状況を再現して、処理を再開できる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、再開する処理ステップPSが、処理中にパラメータ値を変化させる処理を含む場合、再開時点66における処理状況は、再開時点66のパラメータ値を含む。これにより、処理を中断しなければ再開時点66で到達していたパラメータ値で、処理を再開できる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、搬出中断条件52aは、予め設定された所定の搬出事象が発生したことを含む。これにより、基板1の搬出が必要な事象が発生した場合でも、搬出事象発生時に処理されていた処理中基板1bに対する処理を、処理レシピ50の再設定等を行うことなく再開できる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、搬出中断条件52aは、実行中の処理ステップPSの処理以外の、他の割り込み処理が発生したことを含む。これにより、割り込み処理により基板処理部10から一旦搬出された基板1に対する処理を、処理レシピ50の分割等を行うことなく再開できる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、処理中基板1bに対する処理の中断および搬出後、基板処理部10に、中断した処理ステップPSの処理以外の他の処理を実行させる制御を行う。これにより、搬出前と、他の処理を実行させた後の再搬入後とで、別々の処理レシピ50として用意することなく、同じ1つの処理レシピ50のまま、搬出した処理中基板1bに対する処理を再開できる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、他の処理は、基板処理部10の処理室11に対するクリーニング処理を含む。このように構成すれば、レシピを変更することなく、クリーニング処理後の処理室11に処理中基板1bを再搬入することで処理を再開することができる。
【0101】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、基板1の搬出を伴わずに処理を中断する一時中断条件52bが満たされた場合に、処理中基板1bを搬出させることなく基板処理部10の処理を中断させ、処理中基板1bの処理を再開する場合に、中断した処理ステップPSの処理を、指定された時点から再開するように基板処理部10を制御する。これにより、基板1の搬出が不要な一時中断条件52bが満たされた場合にも、再開可能となった場合に、基板1の搬入出を行わずにそのまま処理を再開できる。
【0102】
また、本実施形態の基板処理方法では、実行中の処理を中断させて処理室11から処理中基板1bを搬出させる場合でも、中断した処理の進行状況51を記録しておくことができ、一旦処理室11の外部へ搬出した処理中基板1bでも、中断した処理ステップPSの再開時点66から、処理を再開することができる。これらの結果、処理の途中で基板1が搬出された場合にも、処理中の基板1に対する処理を適切に再開することができる。
【0103】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0104】
たとえば、上記実施形態では、基板処理装置100が複数(4つ)の基板処理部10を備える例を示したが、本発明はこれに限らない。基板処理部10の数は任意である。同様に、基板処理装置100は、複数の搬入出装置20を備えていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、主制御部31と、処理制御部32と、搬送制御部33とが別々に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。これらの個別の制御部が単一の制御部(単一のハードウェア)として統合されていてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、基板処理部10による加工処理の例として、エッチング、成膜および膜の除去などの例を示したが、本発明はこれに限られない。基板処理部10による加工処理は、処理室11内で実行される処理であれば特に限定されない。
【0107】
また、上記実施形態では、基板1がシリコン基板(半導体基板)である例を示したが、本発明はこれに限らない。基板1はシリコン基板以外の半導体基板でもよいし、ガラス基板などの半導体以外の基板でもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、処理中基板1bに対する処理の再開時点66を、中断時点64および指定時点67から選択する例を示したが、本発明はこれに限られない。中断時点64のみを再開時点66としてもよい。指定時点67のみを再開時点66としてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、処理中基板1bに対する処理を再開する前に、再開時点66における処理状況を再現するための再現処理を実行する例を示したが、本発明はこれに限られない。再現処理を行うことなく、再開時点66から処理を再開してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1:基板、1b:処理中基板、10:基板処理部、11:処理室、20:搬入出装置、30:制御部、31:主制御部、32:処理制御部、34:入力部、50:処理レシピ、51:進行状況、52a:搬出中断条件、52b:一時中断条件、53:再開指示、64:中断時点、66:再開時点、67:指定時点、100:基板処理装置、PS:処理ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17