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特開2023-3297被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法
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  • 特開-被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003297
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/30 20200101AFI20221228BHJP
   C05G 3/40 20200101ALI20221228BHJP
【FI】
C05G5/30
C05G3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104385
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390021544
【氏名又は名称】ジェイカムアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061DD04
4H061DD18
4H061EE35
4H061EE42
4H061FF08
4H061FF15
4H061HH02
4H061LL26
(57)【要約】
【課題】本発明は、肥料成分の溶出がさらに抑制された被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法を提供することを課題とする。
【解決手段】粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)を19.80~79.21質量%、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)を0.1質量%以上、およびタルク(C)を19.80~79.21質量%含む、被覆粒状肥料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、
前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)を19.80~79.21質量%、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)を0.1質量%以上、およびタルク(C)を19.80~79.21質量%含む、被覆粒状肥料。
【請求項2】
前記被覆粒状肥料100質量%に対する、被膜の割合が3~15質量%である、請求項1に記載の被覆粒状肥料。
【請求項3】
前記重合体(A)は、JIS R3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による水に対する接触角が76~105°である、請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項4】
前記重合体(B)が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、および、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料。
【請求項5】
前記タルク(C)100質量%中、MgOおよびSiO2を合計で80~95質量%含み、かつ、Al23を2.5質量%以下含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料。
【請求項6】
前記重合体(A)が、オレフィン系重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびアルキッド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料。
【請求項7】
前記重合体(A)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-一酸化炭素共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、およびプロピレン-ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料と、非被覆粒状肥料を混合してなる配合肥料。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆粒状肥料、または請求項8に記載の配合肥料を用いる、植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂等の被膜材料によって粒状肥料の表面を被覆した被覆粒状肥料が知られている。被覆粒状肥料は、肥料成分の溶出コントロールに優れているため、農作業の省力化の達成や環境負荷低減等の効果が認められている。
【0003】
近年、環境中に排出するプラスチック(プラスチックとは、いわゆる合成樹脂のことである。主に石油に由来する重合体のことで、その性質から熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に分類されるもの)の量を削減することが求められており、被膜材料にプラスチックを含む被覆粒状肥料についても、環境中への排出を削減する取り組みが行われている。
【0004】
被覆粒状肥料の環境中への排出を削減するための技術として、例えば、特許文献1では、分解性を考慮した原料を用い、肥料成分の溶出が精度良く調節された被覆粒状肥料の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2では、樹脂と高純度タルクを含む被膜材料で被膜を形成し、薄膜化することで、結果的に被膜材料を減らしながら肥料成分の溶出をコントロールする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-163691号公報
【特許文献2】特開2019-156681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、プラスチックの原料にイソシアネートを用いており、環境中で分解した際に有害な成分が生成される可能性があった。特許文献2の技術では、肥料成分の溶出コントロールはできているものの、溶出を抑制する期間をさらに延ばすには満足な技術ではなかった。
このようなことから、本発明は、肥料成分の溶出がさらに抑制された被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、例えば以下の[1]~[9]である。
[1]粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)を19.80~79.21質量%、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)を0.1質量%以上、およびタルク(C)を19.80~79.21質量%含む、被覆粒状肥料。
【0010】
[2]前記被覆粒状肥料100質量%に対する、被膜の割合が3~15質量%である、[1]に記載の被覆粒状肥料。
[3]前記重合体(A)は、JIS R3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による水に対する接触角が76~105°である、[1]または[2]に記載の被覆粒状肥料。
【0011】
[4]前記重合体(B)が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、および、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
【0012】
[5]前記タルク(C)100質量%中、MgOおよびSiO2を合計で80~95質量%含み、かつ、Al23を2.5質量%以下含む、[1]~[4]のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
【0013】
[6]前記重合体(A)が、オレフィン系重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびアルキッド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、[1]~[5]のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
【0014】
[7]前記重合体(A)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-一酸化炭素共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、およびプロピレン-ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、[1]~[6]のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
【0015】
[8][1]~[7]のいずれかに記載の被覆粒状肥料と、非被覆粒状肥料を混合してなる配合肥料。
[9][1]~[7]のいずれかに記載の被覆粒状肥料、または[8]に記載の配合肥料を用いる、植物の栽培方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、肥料成分の溶出がさらに抑制された被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の被覆粒状肥料を製造する装置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の被覆粒状肥料、配合肥料、その配合肥料を用いる植物の栽培方法について具体的に説明する。
【0019】
<被覆粒状肥料>
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)を19.80~79.21質量%、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)を0.1質量%以上、およびタルク(C)を19.80~79.21質量%含む。
【0020】
<粒状肥料>
本発明において、粒状肥料は、メディアン径が好ましくは1~10mm、より好ましくは2~5mmである。粒状肥料が前記範囲内であると、粒状肥料を芯材として、その表面を被覆して被覆粒状肥料を作成しやすくなることから好ましい。
【0021】
粒状肥料としては、市販の粒状肥料、または製造した粒状肥料を用いることができ、適宜篩い等を用いることにより、メディアン径を所望の値に調製することができる。
本発明において、メディアン径は、レーザー回折法等の粒度分布計により算出されたメディアン径のことを指す。メディアン径は、ミリトラック(マイクロトラック社製)等を用いて測定することができる。なお、本発明においてメディアン径と記載されているものは、全て上述の方法により算出されたメディアン径を指す。
【0022】
本発明において、市販の粒状肥料としては、例えば、粒状尿素として、urea(PETRONAS Fertilizer(Kedah)Sdn. Bhd社製)、粒状燐安としては、りん安(セントラルグリーン株式会社製)、粒状加里としては、硫酸加里(朝日アグリア株式会社製)を用いることができる。
【0023】
本発明で用いる粒状肥料は、窒素、りん酸、加里等の肥料成分を1種以上含有するものであれば良い。粒状肥料は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。粒状肥料に含まれるその他の成分としては、例えば、担体、結合剤、界面活性剤、廃糖蜜、動物油、植物油、水素添加油、脂肪酸、脂肪酸金属塩、パラフィン、ワックス、グリセリンが挙げられ、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明で用いる粒状肥料は、製造して得ることもでき、例えば、流動層式造粒法、転動造粒法、被覆造粒法、吸着造粒法等を用いて製造することができる。
本発明で用いる粒状肥料は、これらの造粒法の何れであってもよく、粒状肥料の造粒法は特に限定されない。
【0025】
本発明に用いる粒状肥料の形状は、特に限定されるものではないが、被膜材料を表面に均一に被覆しやすいという観点から、球状が好ましい。
粒状肥料の形状は、具体的には、下記式(I)で求められる円形度係数が、0.7以上1以下が好ましく、0.75以上1以下がより好ましく、0.8以上1以下が最も好ましい。円形度係数の最大値は1であり、1に近づくほど粒状肥料の粒子は真円に近づき、粒子の形状が真円から崩れるに従って円形度係数は小さくなる。
円形度係数={(4π×粒子の投影面積)/(粒子投影図の輪郭の長さ)2}・・・式(I)
【0026】
<被膜>
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する。
被膜は、被膜を形成する材料として、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)、およびタルク(C)を含む。
本発明の被覆粒状肥料は、被覆粒状肥料100質量%に対する被膜の割合が、好ましくは3~15質量%、より好ましくは6~15質量%、さらに好ましく10~15質量%である。
【0027】
(被覆率)
本発明において、被覆粒状肥料100質量%に対する被膜の割合を被覆率と定義し、被覆率は下記式(II)で表すことができる。
被覆率(%)=(被膜を形成する材料の質量)/(被覆粒状肥料の質量)×100
・・・式(II)
被覆率は、芯材となる粒状肥料の形状や大きさによって異なるが、被覆率が前記範囲内の場合、肥料成分の溶出の抑制効果に優れるため好ましい。
【0028】
〔マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)〕
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)(以下、単に「重合体(A)」とも記す。)を19.80~79.21質量%、好ましくは19.80~60.00質量%、より好ましくは19.80~45.00質量%含む。
【0029】
ここで、本発明において、重合体とは、単一の単量体、または2種以上の異なる単量体が重合することによってできた化合物を指し、共重合が含まれる。また、本発明における重合体には、いわゆる合成樹脂と呼ばれる、加熱すると成型品になる石油由来の樹脂が含まれる。
【0030】
本発明の重合体(A)は、マレイン酸に由来する基を含有しない重合体であればよい。重合体(A)には、後述するマレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)に該当する成分は含まない。
【0031】
重合体(A)が前記範囲内にあると、肥料成分の溶出抑制に優れ、1日経過溶出率を低くすることができる。また、被膜欠陥率を低くすることができる。1日経過溶出率および被膜欠陥率の算出方法については、実施例に後述する。
【0032】
重合体(A)が前記下限量より少ないと、被膜欠陥率は低めに抑えられるものの、被膜の透湿性が高まり、1日経過溶出率が高くなってしまう傾向がある。また、重合体(A)が前記上限量より多いと、被膜の厚さが均一になりにくいため被膜欠陥率が高くなり、1日経過溶出率も高くなってしまう場合がある。
【0033】
重合体(A)としては、例えば、オレフィン系重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニリデン系重合体、ジエン系重合体、ポリエステル、天然樹脂、ワックス類が挙げられる。
【0034】
オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-一酸化炭素共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ブタジエン共重合体、ポリブテン、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素三元共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、およびエチレン-メタクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0035】
ウレタン樹脂としては、例えば、硬質ポリウレタン、軟質ポリウレタン、半硬質ポリウレタンが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミン系、ポリアミドポリアミン系、芳香族ポリアミン系、酸無水物系、メルカプタン系、フェノール系、ジシアンジアミド系が挙げられる。
【0036】
アルキッド樹脂としては、例えば、長油アルキド樹脂、中油アルキド樹脂、短油アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、エポキシエステル樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、イソシアネート変性アルキド樹脂が挙げられる。
【0037】
塩化ビニリデン系重合体としては、例えば、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体が挙げられる。
ジエン系重合体としては、例えば、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、ブタジエン-スチレン共重合体、EPDM重合体、およびスチレン-イソプレン共重合体が挙げられる。
【0038】
ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸およびポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルが挙げられる。
天然樹脂としては、例えば、天然ゴムおよびロジンが挙げられる。
【0039】
ワックス類としては、例えば、ミツロウ、モクロウ、カスターワックス、パラフィンワックスが挙げられる。
これらの中でも、重合体(A)が、オレフィン系重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびアルキッド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましく、オレフィン系重合体であることがより好ましい。
【0040】
オレフィン系重合体の中でも、重合体(A)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-一酸化炭素共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、およびプロピレン-ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることがさらに好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが特に好ましい。
【0041】
重合体(A)としてポリエチレンを用いる場合は、低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンの密度は、0.910~0.930g/cm3(JIS K 6760準拠)が好ましく、0.915~0.930g/cm3がより好ましい。
【0042】
重合体(A)としてポリエチレンを用いる場合は、メルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分(190℃、3.18N、JIS K 7210-1準拠)が好ましく、0.1~20g/10分がより好ましい。
【0043】
重合体(A)としてポリエチレンを用いる場合、市販品としては、例えば、サンテック-LD M2203(旭化成ケミカル株式会社製)、ノバテックLL UJ370(日本ポリエチレン株式会社製)を用いることができる。
【0044】
重合体(A)としてポリプロピレンを用いる場合、密度は0.900~0.910g/cm3(JIS K 6760準拠)が好ましい。
重合体(A)としてポリプロピレンを用いる場合、メルトフローレート(MFR)は0.4~55.0g/10分(190℃、3.18N、JIS K 7210-1準拠)が好ましく、3.0~30.0g/10分がより好ましい。
【0045】
重合体(A)としてポリプロピレンを用いる場合、市販品としては、例えば、プライムポリプロ F-730NV(株式会社プライムポリマー製)、プライムポリプロ J106MG(株式会社プライムポリマー製)を用いることができる。
【0046】
重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いる場合、密度は0.923~0.968g/cm3(JIS K 6760準拠)が好ましく、0.940~0.968g/cm3がより好ましい。
【0047】
本発明の重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いる場合、メルトフローレート(MFR)は0.5~30.0g/10分(190℃、3.18N、JIS K 7210-1準拠)が好ましく、0.5~5.0g/10分がより好ましい。
【0048】
重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いる場合、市販品としては、例えば、「エバフレックス360」(三井デュポンポリケミカル株式会社製)を用いることができる。
【0049】
(ぬれ性試験)
本発明において、重合体(A)は、JIS R3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による水に対する接触角が好ましくは76~105°、より好ましくは91~105°である。
【0050】
重合体(A)は、JIS R3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による水に対する接触角が上記の範囲内であると、吸湿速度が低く、1日経過溶出率も低く抑えられる傾向があるため好ましい。
【0051】
本発明において、重合体(A)は、密度が0.910~0.930g/cm3(JIS K 6760準拠)、メルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分(190℃、3.18N、JIS K 7210-1準拠)、および水に対する接触角が76~105°であることが好ましく、密度が0.915~0.930g/cm3(JIS K 6760準拠)、メルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分(190℃、3.18N、JIS K 7210-1準拠)、および水に対する接触角が91~105°であることがより好ましい。
重合体(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
〔マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)〕
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、マレイン酸に由来する基を含有する重合体(B)(以下、単に「重合体(B)」とも記す。)を0.1質量%以上、好ましくは0.1~10.71質量%、より好ましくは0.1~9.0質量%、さらに好ましくは0.3~5.7質量%含む。
【0053】
本発明の重合体(B)は、マレイン酸に由来する基を含有する重合体であればよい。重合体(B)には、上述したマレイン酸に由来する基を含有しない重合体(A)に該当する成分は含まない。
【0054】
本発明者らは、重合体(B)が前記範囲内にあると、重合体(B)に含まれるマレイン酸に由来する基が何らかの作用をして、重合体(A)およびタルク(C)とともに被膜を形成すると考えている。そして、重合体(B)が前記範囲内にあることで、肥料成分の溶出をコントロールでき、溶出を抑制する期間を延ばすことができると考えている。
【0055】
重合体(B)が前記下限量より少ないと、透湿性が高まり、吸湿速度が速くなる傾向がある。また、重合体(B)が前記上限量より多いと、被膜が脆弱化するため被膜に欠陥が生じやすくなる傾向があり、肥料成分の溶出の抑制が難しい場合がある。
【0056】
重合体(B)が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、および、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましく、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体がより好ましい。
【0057】
本発明において、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとは、無水マレイン酸を主鎖に付加させて合成されるポリオレフィンのことを指す。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、あるいはプロピレン・エチレン重合体、エチレン・α-オレフィン重合体を溶液中に溶解または固溶体化させて、ラジカル発生剤および無水マレイン酸を添加し、ポリオレフィン主鎖をラジカル化して、無水マレイン酸を主鎖に付加させて合成されるポリオレフィンのことを指す。
【0058】
重合体(B)として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを用いる場合、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの平均分子量は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは9,000~70,000、さらに好ましくは20,000~45,000である。
【0059】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンにおける無水マレイン酸の付加率は、無水マレイン酸を主鎖に付加させる反応中に主鎖が開断する可能性があるため、無水マレイン酸変性ポリオレフィン全体の0.1~20質量%であることが好ましく、0.6~9.1質量%であることがより好ましく、1.9~9.1質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
本発明において、重合体(B)が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであり、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの平均分子量が20,000~45,000であり、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンにおける無水マレイン酸の付加率が1.9~9.1質量%であることが好ましい。
【0061】
重合体(B)として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを用いる場合、市販品としては、例えば、「モディック(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社製)、「アドマー(登録商標)」(三井化学株式会社製)、「ユーメックス(登録商標)」(三洋化成工業株式会社製)、「ハードレン(登録商標)」(東洋紡株式会社製)を用いることができる。
【0062】
本発明において、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体とは、エチレンの低重合体として得られる不飽和α-オレフィン混合物と、無水マレイン酸とを、過酸化物を使ってラジカル重合させた重合体のことを指す。
【0063】
重合体(B)としてα-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体を用いる場合、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体の平均分子量は、好ましくは500~50,000、より好ましくは1,000~30,000、さらに好ましくは5,000~15,000である。
【0064】
α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体における無水マレイン酸の付加率は、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体全体の1.0~30質量%であることが好ましく、1.0~18質量%であることがより好ましい。
【0065】
α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体において、原料となるα-オレフィンの炭素数は、好ましくは5~100、より好ましくは10~100、さらに好ましくは20~70である。原料となるα-オレフィンは、1種単独で重合に用いても、2種以上組み合わせて重合に用いてもよい。
【0066】
本発明において、重合体(B)が、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体であり、前記α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体の平均分子量が5,000~15,000であり、前記α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体における無水マレイン酸の付加率が1.0~18質量%であり、前記α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体において原料となるα-オレフィンの炭素数が20~70であることが好ましい。
【0067】
重合体(B)としてα-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体を用いる場合、市販品としては、例えば、「ダイヤカルナ(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
重合体(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0068】
〔タルク(C)〕
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料であり、前記被膜を形成する材料100質量%中、タルク(C)を19.80~79.21質量%、好ましくは39.60~79.21質量%含む。
【0069】
タルク(C)は、メディアン径が、好ましくは6~35μm、より好ましくは8~20μm、さらに好ましくは8~15μmである。
タルク(C)のメディアン径が、6~35μmの中でも、好ましくは5μm未満の粒子頻度が30%以下及び50μmを越える粒子頻度が1%以下であると、肥料成分の溶出の抑制に優れる傾向があり好ましい。メディアン径が6μmを下回る場合、5μm未満の粒子頻度が30%を超える場合、または50μmを超える粒子頻度が1%を超える場合には、肥料成分の溶出が速くなる場合がある。
【0070】
タルク(C)は、タルク100質量%中、水分を好ましくは0~1.0質量%、より好ましくは0~0.6質量%、さらに好ましくは0~0.3質量%含む。
タルク(C)の水分は、粒状肥料表面を被覆する際に発泡を生じる場合があるため、少ないほど好ましいが、タルク(C)の水分が上記範囲内であれば、溶出抑制効果が得られやすい傾向があるため、好ましい。なお、タルクは一般的に粒子表面に脱吸着しやすい水分を含んでおり、タルクに含まれる水分量は湿度等の影響を受ける場合がある。
【0071】
タルク(C)の水分は、JIS K5101-15-1に準じて測定することができる。
タルク(C)は、タルク100質量%中、MgOおよびSiO2を合計で好ましくは80~93質量%、より好ましくは、85~90質量%含み、かつ、Al23を2.5質量%以下含むことがより好ましい。
【0072】
タルク(C)は、タルク100質量%中、Al23を好ましくは0~1.5質量%、より好ましくは0~1質量%含む。
タルク(C)に含まれるAl23は、不純物であるため、少量であるほど好ましい。
【0073】
タルク(C)は、市販のタルク、または製造したタルクを用いることができる。市販のタルクとしては、例えば、「MS310」(富士タルク工業株式会社製)、「クラウンタルクPP」(松村産業株式会社製)を用いることができる。
タルク(C)は、表面処理(例えばシラン化)されているものでもよい。
【0074】
〔その他成分〕
本発明の被覆粒状肥料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでいてもよい。
【0075】
その他成分は、被膜を形成する材料100質量%中、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、さらに好ましくは0.01~1質量%である。
その他成分としては、例えば、有機物のフィラー、有機金属化合物、界面活性剤、増量材を用いることができる。
【0076】
有機物のフィラーとして、具体的には、多糖類またはその誘導体等の有機物が挙げられる。多糖類またはその誘導体としては、セルロース、寒天、デンプン、キチンとその誘導体、およびキトサンとその誘導体等が挙げらる。これらの中でも、有機物のフィラーとしては、デンプンが安価で好ましい。
【0077】
デンプンとしては、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、米、甘藷由来のものを用いることができる。また、デンプンを加工したα化デンプン等の加工デンプン、およびデンプン表面をシリコーン樹脂等で処理して分散性や流動性を改良したシリコーン処理デンプン等も用いることができる。
【0078】
有機物のフィラーの粒径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは1~50μmである。粒径が上記の範囲であると、粒径が大きすぎて製膜時に被膜が剥離することや、被膜を形成する材料が噴霧ノズル等に詰まる等の問題も起きにくく、好ましい。
【0079】
有機金属化合物として、具体的には、有機金属錯体、有機酸金属塩等が挙げられる。
有機金属錯体の中でも、被膜中の重合体の光分解調節が容易なため、鉄アセチルアセトナート、鉄アセトニルアセトネート、鉄のジアルキルジチオカルバメート、ジチオホスフェート、キサンテート、およびベンズチアゾール等の鉄錯体;カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等のカルボン酸鉄を用いることが好ましく、これらの中でも、ステアリン酸鉄、鉄アセチルアセトナートを用いることがより好ましい。
【0080】
界面活性剤として、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合によるポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、ポリエチレングリコール-アルキルエーテル、ポリエチレングリコール-分岐アルキルエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール-アルキルエステル、ポリエチレングリコール-分岐アルキルエステル等のエステル型ノニオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤及びこれらの混合物等などが挙げられる。
その他成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0081】
<被覆粒状肥料の製造方法>
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、該粒状肥料表面を被覆する被膜とを有する被覆粒状肥料である。
【0082】
本発明の被覆粒状肥料は、例えば、被膜を形成する材料を溶解、分散、または懸濁させ、芯材となる粒状肥料に噴霧する方法(溶解液噴霧法)、被膜を形成する材料を粒状肥料表面に噴霧し、粒状肥料の表面でモノマーを反応させて重合(被膜を形成)する方法、噴流層被覆法、流動層被覆法、転動被覆法、粉体被覆法およびこれらを組み合せた方法など、公知の技術を用いて製造することができる。
これらのなかでも、本発明の被覆粒状肥料は、溶解液噴霧法を用いて噴流層被覆法、流動層被覆法で製造されることが好ましい。
【0083】
<配合肥料>
本発明の配合肥料は、上述の被覆粒状肥料と、非被覆粒状肥料を混合してなる配合肥料であることが好ましい。
【0084】
本発明において、非被覆粒状肥料とは、粒状肥料表面が合成樹脂を含む被膜で覆われていない粒状肥料のことを指す。
本発明の配合肥料は、対象作物に応じた最適な配合肥料において、安価で効果的に肥料成分の溶出を抑制することができる。
【0085】
本発明の配合肥料は、配合肥料100質量%中、被覆粒状肥料を好ましくは10~80質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~40質量%含む。
非被覆粒状肥料としては、例えば、窒素質肥料、りん酸質肥料、加里質肥料などが挙げられる。前記窒素質肥料の例としては、硫酸アンモニア、尿素、硝酸アンモニアのほか、イソブチルアルデヒド縮合尿素、アセトアルデヒド縮合尿素が挙げられる。前記りん酸質肥料の例としては、過燐酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥等が挙げられる。加里質肥料の例としては、硫酸加里、塩化加里、ケイ酸加里肥料が挙げられる。
【0086】
非被覆粒状肥料としては、前記窒素質肥料、前記りん酸質肥料、前記加里質肥料の合計成分量が30%以上である高度化成肥料、有機質肥料を含む化成肥料、有機質肥料等を用いることができる。
【0087】
非被覆粒状肥料の形態は、特に限定されないが、粒状であることが好ましく、球状に近いことがより好ましい。
非被覆粒状肥料の市販品としては、例えば、「硫加燐安300 (N-P25-K2O=3.5(%)-20.5(%)-20.5(%))」(ジェイカムアグリ株式会社製)を用いることができる。
【0088】
本発明の配合肥料は、被覆粒状肥料と、非被覆粒状肥料を混合してなる配合肥料であり、前記非被覆粒状肥料として尿素、窒素、りん酸、加里からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の肥料を含むことが好ましい。
【0089】
<配合肥料の製造方法>
本発明の配合肥料は、公知の混合技術によって被覆粒状肥料と、非被覆粒状肥料とを混合することにより製造することができる。製造方法としては、例えば、撹拌式としてロータリー式ドラム型、ミキシングコーン型;TVA式配合塔等;自重で落下しながら配合する累積式等;が挙げられる。
【0090】
<植物の栽培方法>
本発明の植物の栽培方法は、上述の被覆粒状肥料、または上述の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料とを混合してなる配合肥料を用いる。
【0091】
本発明の植物の栽培方法は、対象作物に応じた最適な被覆粒状肥料、または被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料とを混合してなる配合肥料を用いて栽培することによって、肥料成分の溶出を抑制し、効果的な肥効が期待できるため好ましい。また、肥料成分の溶出抑制効果に優れるため、環境への負荷を軽減できるため好ましい。
【0092】
本発明の配合肥料を植物の栽培に用いることで、施肥する肥料全量に含まれる合成樹脂量を削減することができるため好ましい。
本発明の植物の栽培方法における対象作物は特に限定されないが、例えば、水稲が挙げられる。
【0093】
本発明の植物の栽培方法において、上述の被覆粒状肥料、または上述の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料とを混合してなる配合肥料の施肥時期は特に限定されない。
本発明の植物の栽培方法において、被覆粒状肥料、および配合肥料は、苗の移植より前に施肥してもよい。また、栽培する植物の養分要求パターンや土壌等の栽培環境に合わせて、施肥時期を決めることが好ましい。
【0094】
本発明の植物の栽培方法において、被覆粒状肥料、および配合肥料を用いる場合は、肥効が栽培中の特定期間継続的にあること、および省力化の観点から、追肥は行わないことが好ましい。
【実施例0095】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特にことわりのない限り、以下の実施例における「%」は質量%を意味する。
【0096】
<試料の物性>
〔重合体(A)の物性〕
重合体(A)について、種類の異なる4種類の原料(重合体(A)-a、重合体(A)-b、重合体(A)-c、重合体(A)-d)を用意した。各原料について、溶液流延法(JISK7127:1999)にて厚さ50μmのフィルムを作成し、JIS R3257に準拠したぬれ性試験方法の静滴法による水に対する接触角を測定した。表1に重合体(A)の接触角および種類を示す。
【0097】
【表1】
【0098】
重合体(A)-aは、PP(ポリプロピレン)であり、接触角は105°であった。密度0.90g/cm3(JIS K7112)、メルトフローレート(MFR)0.4g/10min.(測定温度190℃、JIS K 7210-1)であった。
【0099】
重合体(A)-bは、PE(ポリエチレン)であり、接触角は100°であった。密度0.923g/cm3(JIS K 6760)、メルトフローレート(MFR)0.3g/10min.(測定温度190℃、荷重3.18N、JIS K 7210-1)、
重合体(A)-cは、重合体(A)-bのPEを80質量%と重合体(A)-dのEVAを20質量%とを混合させたものであり、接触角は91°であった。
【0100】
重合体(A)-dは、EVA(エチレン―酢酸ビニル共重合体「エバフレックス360」(三井デュポンポリケミカル株式会社製))であり、接触角は76°であった。密度0.950g/cm3(JIS K7112:1999)、メルトフローレート(MFR)2.0g/10min.(測定温度190℃、荷重2.16kg、JIS K 7210-1)、酢酸ビニル含量25質量%であった。
【0101】
〔重合体(B)の物性〕
重合体(B)について、種類の異なる6種類の原料(重合体(B)-a、重合体(B)-b、重合体(B)-c、重合体(B)-d、重合体(B)-e、重合体(B)-f)を用意した。表2に重合体(B)の種類と無水マレイン酸付加率とを示す。
【0102】
【表2】
【0103】
重合体(B)-aは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであった。「ユーメックス100TS」(三洋化成工業株式会社製)、密度0.89g/cm3(JIS K 6760)、分子量9000、無水マレイン酸付加率0.6%を用いた。
【0104】
重合体(B)-bは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであった。「ユーメックス110TS」(三洋化成工業株式会社製)、密度0.89g/cm3(JIS K 6760)、分子量9000、無水マレイン酸付加率1.2%を用いた。
【0105】
重合体(B)-cは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであった。「ユーメックス5200」(三洋化成工業株式会社製)、密度0.90g/cm3(JIS K 6760)、分子量70000、無水マレイン酸付加率1.9%を用いた。
【0106】
重合体(B)-dは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであった。「ユーメックス1001」(三洋化成工業株式会社製)、密度0.95g/cm3(JIS K 6760)、分子量45000、無水マレイン酸付加率4.6%を用いた。
【0107】
重合体(B)-eは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであった。「ユーメックス1010」(三洋化成工業株式会社製)、密度0.95g/cm3(JIS K 6760)、分子量30000、無水マレイン酸付加率9.1%を用いた。
【0108】
重合体(B)-fは、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体であった。「ダイヤカルナ30」(三菱ケミカル株式会社製)、原料のα―オレフィンの炭素鎖C28-60、分子量9000、無水マレイン酸付加率13.8%を用いた。
【0109】
〔タルク(C)およびマイカの物性〕
タルク(C)について、種類の異なる10種類の原料(タルクa~j)を用意した。また、比較例で用いる原料として、マイカを用意した。表3にタルク(C)のMgOおよびSiO2の合計含有量(%)、Al23含有量(%)、純度、D50(μm)、ならびに水分(%)を示す。また、比較例で用いたマイカのD50(μm)、および水分(%)を示す。
【0110】
【表3】
【0111】
<被覆粒状肥料の製造>
(実施例1~18)
図1に示す製造装置を用いて、下記の表4に示す実施例1~18の処方に従って原料を配合し、後述の方法により粒状肥料(粒状尿素)の表面に被膜を形成した。
【0112】
図1に記載の製造装置内では、熱風4が流動層1の下部から上部に向けて流れ集塵機6を通過し、凝縮器7でガスを冷却し、溶剤を凝縮回収した。凝縮器7を通過したガスはブロワー8からヒーター12を通過して加熱され熱風4として再度流動層1へ導かれるように循環していた。なお、このようなクローズドシステムを採用しているため、溶剤が外部に排出することはなかった。
【0113】
図1中の粒子3として、粒状尿素(粒子径3.0~4.0mm、平均粒径3.3mm、円形度係数0.9)15kgを流動層1の側面に設置されている投入口から投入し、流動層1下部より導入される熱風4および流動層1底部に設置される攪拌浴で流動状態にした。この際、粒子温度が60±2℃になるように、熱風流量および熱風温度を調節した。熱風流量はブロワー8と流動層1の間に設置した流量計で測定しながら調節し、熱風温度は粒子温度や排気温度(流動層1上部温度)を測定しながら調節した。
【0114】
図1中の溶解槽9に、被膜を形成する材料である、重合体(A)を40質量部として660g、重合体(B)を1質量部として16.5g、タルク(C)(メディアン径D50=10μm)を60質量部として990gを秤量して投入した。これは、被膜を形成する材料100質量%中、重合体(A)を39.60質量%、重合体(B)を0.99質量%、タルク(C)を59.41質量%投入したこととなる。
【0115】
溶解槽9には、重合体(A)、重合体(B)、およびタルク(C)の上記各成分の他に、被覆液溶剤のテトラクロロエチレン1900質量部として31.35kgを投入し、100±2℃で30分間混合撹拌することによって均一に溶解した。また、被覆が終了するまで溶解槽9は常時攪拌した。これを、図1中のポンプ10を経由して噴霧液5に注入した。
【0116】
噴霧液5を流動層1の上部に設置されているスプレーノズル2に流速約165kg/hで輸送し、流動中の粒状尿素に噴霧し吹き付けた。吹き付けられた噴霧液に含まれるテトラクロロエチレンは凝縮器7により凝縮・回収されてタンク11で貯蔵され、溶解槽9へ導かれた。
【0117】
前述の被覆操作は、流動中の粒状尿素の温度が60℃に達した時点から開始し、被覆粒状肥料100質量%に対して被膜の割合が10質量%となるまで行った。その後、粒子温度を60±2℃に維持することに留意して熱風4の温度調節をしながら10分間、熱風4のみを吹き付けて乾燥を実施した。乾燥が終了した時点で、粒状肥料表面を被覆された粒状肥料を流動層1の最下部にある抜き出し口13より排出した後、0.5~1時間の通風処理を行い、実施例および比較例の被覆粒状肥料を得た。
通風後の被覆粒状肥料中の前記溶剤含有量は500ppm以下であった。なお、通風による脱気処理後の溶剤含有ガスは活性炭を用いて分離吸着後、回収した。
【0118】
(被覆粒状肥料の製造条件)
粒状肥料(粒状尿素):15kg
被覆中の粒子温度:60℃
溶解温度:100~110℃
噴霧液温度:80~100℃
熱風温度:130~140℃
プレー流速:108kg/h
【0119】
(比較例1~3)
比較例1では、重合体(B)を用いないこと以外は、実施例1~18と同様にして被覆粒状肥料の製造を行った。
【0120】
比較例2では、タルク(C)の代わりにマイカを用いたこと、および重合体(B)を用いないこと以外は、実施例1~18と同様にして被覆粒状肥料の製造を行った。
比較例3では、タルク(C)の代わりにマイカを用いたこと以外は、実施例1~18と同様にして被覆粒状肥料の製造を行った。
【0121】
〔被覆率〕
被覆率は下記式(III)で計算して求めた。
被覆率(%)=(被膜を形成する材料の質量)/(被覆粒状肥料の質量)×100
・・・式(III)
【0122】
〔吸湿速度〕
実施例および比較例で得られた被覆粒状肥料(以下、サンプルと記す)について、水中単粒溶出挙動の測定を行い、吸湿速度を求めた。
【0123】
サンプル10.00gと25℃に調製しておいた200mlの蒸留水とを蓋付きのポリ容器に入れて25℃設定のインキュベーター内に静置した。7日経過後、該容器から水を全て抜き取り、サンプルを扇風機に当てて乾燥させた後、質量を測定した。
【0124】
下記式(IV)で、7日経過後の質量増加率を算出した。
7日経過後の質量増加率(質量%)=(7日経過後のサンプル質量-10.00)÷10.00×100 ・・・式(IV)
【0125】
7日経過後の質量増加率(上記式(IV)の値)を、下記式(V)にあてはめ、吸湿速度(%/day)を算出した。
吸湿速度(%/day)=7日経過後の質量増加率÷7 ・・・式(V)
【0126】
〔1日経過溶出率〕
サンプルについて、水中溶出挙動の測定を行った。
サンプル10.00gと、25℃に調製しておいた200mlの蒸留水を蓋付きポリ容器に加えて25℃設定のインキュベーター内に静置した。1日経過後、該容器から水を全て抜き取り、抜き取った水に含まれる尿素量(尿素溶出量)を定量分析(ジメチルアミノベンズアルデヒド法「詳解肥料分析法 第二改訂版」 越野正義著 1988年 養賢堂)により求め、1日経過溶出率(%)とした。
【0127】
〔80%溶出日数〕
上記の1日経過溶出率の測定において、ポリ容器から水を抜き取った後、1日経過溶出率の測定を行った後のサンプル、および新たな蒸留水200mlを再度該容器に入れ、同様に25℃設定のインキュベーター内に静置した。
【0128】
6日経過後同様に該容器から水を全て抜き取り、以後7日ごとに水の抜き取りをおこなった。尿素溶出量の積算値が、予め同一ロットの被覆粒状肥料を用いて測定した尿素含有量の80質量%に達するまで、この操作を繰り返した。
【0129】
尿素溶出量の積算値が、尿素含有量の80質量%に達した後、サンプルを乳鉢ですりつぶし、該サンプルの内容物を蒸留水200mlに溶解させた。上記と同様のジメチルアミノベンズアルデヒド法にて残った尿素量を定量分析した。
【0130】
尿素溶出量の積算値と残った尿素量との合計量を尿素全量とし、水中に溶出した尿素の溶出累計と日数の関係をグラフ化して溶出速度曲線を作成した。溶出速度曲線から、80質量%溶出に至った日数(d80)を、80%溶出日数(日)とした。
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
実施例19~21、比較例4~5のサンプルについて、被覆欠陥率(%)を測定した。
レコーダー赤インク G9620AN(横河電機株式会社製)3.5gに蒸留水を加えて100gの赤インク溶液を作成した。100mlビーカーにサンプルを100粒入れた後、調製された赤インク溶液を30~40ml入れ2時間静置した。静置後、付着のインクを水洗し、余分なインクを洗い落とした。被膜の欠陥部分はインクの赤色が残るので、これにより欠陥のある粒を区別した。
【0134】
部分的に着色した粒、欠陥部分が大きいため全体が着色した粒、すでに粒状肥料が溶出して被膜だけになった殻のような粒の3種類について個数を測定し、これら3種類を欠陥粒とした。被膜欠陥率は下記式(VI)によって算出した。
被膜欠陥率(%)=(欠陥粒の個数/供試した粒の個数(100粒))×100
・・・式(VI)
1日経過溶出率(%)については、実施例1~18と同様の方法で評価した。
【0135】
表5の結果から、重合体(A)―bの割合が9.9質量%と低いと、被膜欠陥率が高まることがわかった(比較例4)。また、重合体(A)―bの割合が89.11質量%と高いと、製造時に粒同士が結合と脱着を繰り返したこと、被膜の厚さが均一ではなかったことから被膜欠陥率が高まると考えられた(比較例5)。
【0136】
(実施例22~26)
重合体(A)-b、重合体(B)-f、およびタルクbの配合量について、下記の表6に記載のとおりに変更した以外は、実施例1~18と同様にして被覆粒状肥料の製造を行った。また、吸湿速度、1日経過溶出率、および80%溶出日数については、実施例1~18と同様の方法で評価した。
【0137】
【表6】
【0138】
表6の結果から、重合体(B)-fが、0.1質量%以上である場合に、肥料の溶出が良好に抑制された被覆粒状肥料が得られることが分かる。重合体(B)-fが0.30~5.66質量%である場合は、特に、肥料の溶出が良好に抑制されたことが分かる。
【0139】
(実施例27~29、比較例6)
重合体(A)-b、重合体(B)-f、およびタルクbの配合量および被覆率について、下記の表7に記載のとおりに変更した以外は、実施例1~18と同様にして被覆粒状肥料の製造を行った。また、80%溶出日数について、実施例1~18と同様の方法で評価した。
【0140】
【表7】
【0141】
表7の結果から、本発明の被覆粒状肥料は、被覆率が3~15%である場合に、肥料の溶出が2か月以上良好に抑制されたことが分かる。被覆率が、6~15%である場合には、肥料の溶出が3か月以上も良好に抑制されており、特に、肥料の溶出が抑制されたことが分かる。
表7の結果から、本発明の被覆粒状肥料は、被覆率によって、肥料の溶出を2か月~1年以上時限的にコントロールできる効果があることがわかる。
【0142】
<配合肥料の製造>
実施例7の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料の化成肥料とを用いて、以下の通り配合肥料の製造を行った。
【0143】
実施例7の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料の化成肥料(「硫加燐安300」N-P25-K2O=3.5(%)-20.5(%)-20.5(%)、ジェイカムアグリ株式会社製)とを、質量比30:70の割合で混合し、配合肥料を得た。
【0144】
製造した配合肥料を採取し、被膜の状態の観察を行った。観察の結果、サンプルすべてで被膜の欠損は見られなかった。したがって、配合肥料の製造に必要充分な被膜強度が確保されていることが分かった。
【0145】
本発明の配合肥料を後述する植物の栽培に用いることで、被覆粒状肥料のみを植物の栽培に用いる場合と比較して、施肥する肥料全量に含まれる合成樹脂量を削減することができた。
【0146】
<栽培試験>
(実施例7、比較例1)
実施例7および比較例1の被覆粒状肥料を含む配合肥料を製造し、製造した配合肥料を用いて水稲(品種「ヒノヒカリ」)の栽培試験を行った。
【0147】
実施例7の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料の化成肥料(「硫加燐安300」N-P25-K2O=3.5(%)-20.5(%)-20.5(%)、ジェイカムアグリ株式会社製)とを、質量比30:70の割合で混合し、実施例の配合肥料を得た。
【0148】
比較例1の被覆粒状肥料と非被覆粒状肥料の化成肥料(「硫加燐安300」N-P25-K2O=3.5(%)-20.5(%)-20.5(%)、ジェイカムアグリ株式会社製)とを、質量比30:70の割合で混合し、比較例の配合肥料を得た。
【0149】
慣行法に準じて水稲苗を育成し、静岡県富士市鮫島の水田に移植した。実施例および比較例の配合肥料は移植と同時に同量側条施肥するほかは、慣行法に準じて栽培を行った。追肥は行っていない。
【0150】
栽培した結果、実施例の配合肥料で栽培した試験区の水稲の収量は、比較例の配合肥料を用いた試験区と比べて良好であった。
比較例の配合肥料では、移植後の水稲の葉色が実施例より良好であったが、無効分げつが多く、有効茎歩合が少なかった。このことから、実施例の配合肥料で栽培した試験区の水稲は肥効が効果的だったものと考えられた。
【符号の説明】
【0151】
1.流動層
2.スプレーノズル
3.粒子
4.熱風
5.噴霧液
6.集塵機
7.凝縮器
8.ブロワー
9.溶解槽
10.ポンプ
11.タンク
12.ヒーター
13.抜き出し口
図1