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特開2023-32989電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032989
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230302BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230302BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230302BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139402
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 竜也
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA05
5G066AD04
5G066HA11
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA04
5G503DA05
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】分散電源が自立運転時に発電する電力の活用度を高める電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法が提供される。
【解決手段】電力制御システムは、第1分散電源(10)が出力する電力を制御する第1電力制御装置(12)と、第2分散電源(20)が出力する電力を制御する第2電力制御装置(22)と、を備え、第1電力制御装置は、自立運転出力の機能を有し、第2電力制御装置は、第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能を有し、第1電力制御装置は、自立運転時に、単独運転防止機能が動作しないように第2電力制御装置に対して上限の出力電力を設定し、かつ、第1分散電源に、負荷で消費される電力から第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、第1分散電源に、第2分散電源が出力する電力から負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムであって、
前記第1分散電源が出力する電力を制御する第1電力制御装置と、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置と、を備え、
前記第1電力制御装置は、自立運転出力の機能を有し、
前記第2電力制御装置は、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能を有し、
前記第1電力制御装置は、自立運転時に、
前記単独運転防止機能が動作しないように前記第2電力制御装置に対して上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる、電力制御システム。
【請求項2】
前記第1電力制御装置は、前記第2電力制御装置に対し、遠隔出力制御形式の指令を送ることによって前記上限の出力電力を設定する、請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記第1電力制御装置は、前記負荷と接続される送電ラインにおける電圧を一定にする電圧一定制御を実行する、請求項1又は2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記第1分散電源は非再生可能エネルギー電源であり、
前記第2分散電源は再生可能エネルギー電源である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記第1分散電源は蓄電池である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記第2分散電源は太陽電池である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記第1電力制御装置は、
自立運転時であって前記第1分散電源から電力の出力が必要な状態の場合に、前記第1分散電源に、前記負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を放電させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記第1電力制御装置は、
自立運転時であって前記第1分散電源に電力の供給が必要な状態の場合に、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力で充電させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項9】
前記第1電力制御装置は、
過負荷保護機能及び過電圧保護機能が動作しない出力電圧範囲で前記負荷と接続される送電ラインにおける電圧を制御する、請求項1から8に記載の電力制御システム。
【請求項10】
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムにおいて、前記第1分散電源が出力する電力を制御する電力制御装置であって、
前記電力制御装置は、自立運転出力の機能を有し、
前記電力制御装置は、自立運転時に、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置が有する、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能が動作しないように、前記第2分散電源が出力する電力に上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる、電力制御装置。
【請求項11】
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムにおいて、前記第1分散電源が出力する電力を制御する電力制御方法であって、
自立運転時に、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置が有する、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能が動作しないように、前記第2分散電源が出力する電力に上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる、電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電などの分散電源に関して、停電などによってパワーコンディショナが運転中に系統からの電力供給が無くなった場合に、パワーコンディショナが電力を供給可能な状態で継続されることを単独運転状態という。単独運転になると、作業員などの安全性の観点から、パワーコンディショナ(インバータ)からの電力供給を停止する必要がある。例えば特許文献1には、電力系統に接続されたインバータの単独運転を検知する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-318928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単独運転を防止する対策が施された分散電源を採用しつつ、分散電源が自立運転時に発電する電力の活用度を高めることができれば、極めて有利である。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、分散電源が自立運転時に発電する電力の活用度を高める電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電力制御システムは、
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムであって、
前記第1分散電源が出力する電力を制御する第1電力制御装置と、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置と、を備え、
前記第1電力制御装置は、自立運転出力の機能を有し、
前記第2電力制御装置は、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能を有し、
前記第1電力制御装置は、自立運転時に、
前記単独運転防止機能が動作しないように前記第2電力制御装置に対して上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係る電力制御装置は、
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムにおいて、前記第1分散電源が出力する電力を制御する電力制御装置であって、
前記電力制御装置は、自立運転出力の機能を有し、
前記電力制御装置は、自立運転時に、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置が有する、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能が動作しないように、前記第2分散電源が出力する電力に上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる。
【0008】
本開示の一実施形態に係る電力制御方法は、
系統から解列された自立運転時に第1分散電源及び第2分散電源が出力する電力を負荷に供給可能な電力制御システムにおいて、前記第1分散電源が出力する電力を制御する電力制御方法であって、
自立運転時に、
前記第2分散電源が出力する電力を制御する第2電力制御装置が有する、前記第2分散電源の単独運転を防止する単独運転防止機能が動作しないように、前記第2分散電源が出力する電力に上限の出力電力を設定し、かつ、
前記第1分散電源に、負荷で消費される電力から前記第2分散電源が出力する電力を差し引いた電力以上の電力を出力させる、又は、前記第1分散電源に、前記第2分散電源が出力する電力から前記負荷で消費される電力を差し引いた電力を消費させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、分散電源が自立運転時に発電する電力の活用度を高める電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、公知の電力制御システムの概略構成及び動作の例を示す図である。
図2図2は、公知の電力制御システムの概略構成及び動作の例を示す図である。
図3図3は、公知の電力制御システムの概略構成及び動作の例を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る電力制御システムの概略構成及び動作の例を示す図である。
図5図5は、電力制御装置の概略構成の例を示すブロック図である。
図6図6は、一実施形態に係る電力制御装置の動作の例を示すフローチャートである。
図7図7は、別の実施形態に係る電力制御システムの概略構成及び動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る電力制御システム、電力制御装置及び電力制御方法が説明される。本実施形態に係る電力制御システムを説明するために、まず、公知の電力制御システムの動作が説明される。
【0012】
図1及び図2は、公知の電力制御システムの概略構成例を示すブロック図である。図1は、公知の電力制御システムの連系運転時の動作の例を示す。また、図2は、図1と同じ公知の電力制御システムの自立運転時の動作の例を示す。
【0013】
図1に示す電力制御システムは、第1分散電源100と、第2分散電源20と、分電盤40とを含んで構成される。第1分散電源100は、第1電源11と、第1電力制御装置120とを備える。また、第2分散電源20は、第2電源21と、第2電力制御装置22とを備える。
【0014】
第1分散電源100は、非再生可能エネルギー電源とすることができ、例えば電源として蓄電池(図1においてBTと記す)を用いるものとしてよい。以下、第1分散電源100は、例えば第1電源11のような蓄電池を電源とする蓄電装置であるとして説明する。また、第2分散電源20は、再生可能エネルギー電源とすることができ、例えば電源として太陽電池(図1においてPVと記す)を用いるものとしてよい。以下、第2分散電源20は、例えば第2電源21のような太陽電池を電源とする太陽光発電装置であるとして説明する。
【0015】
図1に示すように、第1電源11からの電力は、第1電力制御装置120に出力される。第1電力制御装置120は、公知のパワーコンディショナで構成することができる。第1電力制御装置120は、第1電源11である蓄電池から出力(放電)された直流電力の電圧を昇圧又は降圧して、交流電力に変換する。第1電力制御装置120において交流に変換された電力は、連系リレー32又は自立運転リレー34を経て、分電盤40に出力される。分電盤40は、系統50及び負荷60に接続されている。
【0016】
連系リレー32及び自立運転リレー34は、任意のスイッチなどで構成することができる。連系リレー32及び自立運転リレー34は、基本的に一方を開にして他方を閉にするように制御される。すなわち、系統連系時に、連系リレー32が閉にされ、自立運転リレー34が開にされる(図1参照)。また、自立運転時に、連系リレー32が開にされ、自立運転リレー34が閉にされる(図2参照)。このような制御は、第1電力制御装置120が行ってよいし、他の制御部又は制御装置などが行ってよい。
【0017】
分電盤40は、負荷60、第1分散電源100及び第2分散電源20から系統50を切り離す主ブレーカー31を備える。第1分散電源100の自立運転は、主ブレーカー31によって系統50が解列されているときに行われる。本例において、分電盤40は、さらに第1分散電源100からの指示(制御信号)に従って連系運転と自立運転とを切り替える切替リレー42を備えている。これにより、分電盤40は、第1分散電源100の自立運転の出力を負荷60に供給できる。本例において、主ブレーカー31及び切替リレー42の制御は、第1電力制御装置120によって行われるものとする。
【0018】
図1に示すように、連系リレー32と切替リレー42とを接続するラインは、送電ラインPL1と称される。送電ラインPL1は、さらに系統50に接続される。また、自立運転リレー34と切替リレー42とを接続するラインは、送電ラインPL2と称される。さらに、切替リレー42と負荷60とを接続するラインは、送電ラインPL3と称される。切替リレー42は、連系運転時に、送電ラインPL1と送電ラインPL3とを接続する(図1参照)。また、切替リレー42は、系統50から解列された自立運転時に、送電ラインPL2と送電ラインPL3とを接続する(図2参照)。ここで、切替リレー42の制御は、第1電力制御装置120によって行われてよいし、他の制御部又は制御装置などによって行われてよい。
【0019】
系統50は、一般的な商用電力系統(グリッド)とすることができる。
【0020】
負荷60は、電力制御システムから電力が供給される、ユーザが使用する家電製品などの各種の機器とすることができる。図1においては、負荷60は1つの構成として示してあるが、1つの構成には限定されず、任意の個数の各種機器とすることができる。また、負荷60は、屋内配線のコンセントを経由して接続された各種機器としてよい。
【0021】
また、第1電力制御装置120は、双方向インバータとしてよい。この場合、第1電力制御装置120は、例えば系統50からの交流電力を直流に変換して、直流電力の電圧を昇圧又は降圧して、第1電源11である蓄電池に供給(充電)することもできる。
【0022】
第2電源21からの電力は、第2電力制御装置22に出力される。第2電力制御装置22も、公知のパワーコンディショナで構成することができる。第2電力制御装置22は、第2電源21から出力された直流電力の電圧を昇圧又は降圧して、交流電力に変換する。第2電力制御装置22において交流に変換された電力は、連系リレー33を経て、分電盤40に出力される。第2電力制御装置22からの交流電力が送電ラインPL1を経て分電盤40に出力されるように、第2分散電源20は送電ラインPL1と接続される。ここで、連系リレー33の制御は、第1電力制御装置120によって行われてよいし、他の制御部又は制御装置などによって行われてよい。
【0023】
上記のように、図1に示す電力制御システムは連系運転時の状態を示している。主ブレーカー31、連系リレー32及び連系リレー33が閉にされ、自立運転リレー34が開にされ、切替リレー42が送電ラインPL1と送電ラインPL3とを接続する。このような動作状態において、第1分散電源100の出力及び第2分散電源20の出力の少なくとも一方は、負荷60に供給され得る。また、負荷60は、系統50から電力を供給され得る。さらに、第1分散電源100は、系統50及び第2分散電源20の少なくとも一方から供給される電力を充電することもできる。また、第2分散電源20が発電した電力は、系統50に売電することもできる。このように、図1に示す電力制御システムによれば、複数の分散電源の電力を制御することができる。
【0024】
図1に示した電力制御システムは、例えば停電などが検知されると、図2に示すような動作状態になる。上記のように、図2に示す電力制御システムは自立運転時の状態を示している。主ブレーカー31、連系リレー32及び連系リレー33が開にされ、自立運転リレー34が閉にされ、切替リレー42が送電ラインPL2と送電ラインPL3とを接続する。
【0025】
より詳細には、図1に示す電力制御システムにおいて停電などが検知されると、第1電力制御装置120は、主ブレーカー31、連系リレー32及び連系リレー33を開にする。そして、切替リレー42によって送電ラインPL2と送電ラインPL3とが接続され、自立運転リレー34が閉にされる(図2参照)と、第1分散電源100は、自立運転の出力を開始して、負荷60に電力を供給する。図1に示す電力制御システムにおいて、停電が検知されてから、切替リレー42が作動するまでの動作は、10秒程度とすることができる。このような動作状態において、停電時であっても、第1分散電源100の蓄電池に充電された電力を、自立運転出力によって負荷60に供給することができる。
【0026】
また、図2に示すように、連系リレー33及び主ブレーカー31が開であるため、停電時に第2分散電源20が発電した電力が、系統50に逆潮流することはない。さらに、第2電力制御装置22は、単独運転を防止する単独運転防止機能を有し、独自に系統50の停電を検知することができる。そのため、仮に主ブレーカー31によって系統50が解列されなくても、第2分散電源20の単独運転が回避されて、停電時に第2分散電源20によって発電された電力が、系統50に逆潮流することはない。
【0027】
しかしながら、図2に示す電力制御システムにおいて、第2分散電源20は、連系リレー33が開であり負荷60に接続されていない。したがって、図2に示す動作状態において、たとえ第2電源21が発電できる状態であったとしても、第2分散電源20が出力する電力を、負荷60に供給することはできない。
【0028】
図3は、別の公知の電力制御システムの概略構成例を示すブロック図であって、自立運転時の動作の例を示す。図1及び図2と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。図3に示される別の公知の電力制御システムは、いわゆるマルチDCリンクタイプの蓄電システムであって、第1分散電源100が第1電源11及び第2電源21を制御する第1電力制御装置120を備える。換言すると、図3の第1電力制御装置120は、図1及び図2の第2電力制御装置22の機能を兼ねる。
【0029】
図3に示される電力制御システムでは、自立運転時であって第2分散電源20が発電できる状態である場合に、第2分散電源20が出力する電力を、負荷60に供給することができる。しかし、当初から第2電源21を第1分散電源100で制御するものとしている。図3に示される電力制御システムでは、図1及び図2のようにそれぞれが単体で機能する第1分散電源100と第2分散電源20とを組み合わせた電力制御システムとして構成することができない。
【0030】
そこで、本開示の一実施形態に係る電力制御システムでは、それぞれが単体で機能する分散電源を組み合わせて構成できるようにする。
【0031】
以下、本実施形態に係る電力制御システムが説明される。図4は、本実施形態に係る電力制御システム1の概略構成例を示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係る電力制御システム1は、図1に示した第1電力制御装置120に代えて、第1電力制御装置12を備える。第1電力制御装置12はパワーコンディショナである。電力制御システム1は、第1分散電源10と、第2分散電源20とを含んで構成される。第1分散電源10は、第1電源11と、第1電力制御装置12とを備える。また、第2分散電源20は、第2電源21と、第2電力制御装置22とを備える。ここで、第1電力制御装置12は、第1電源11が出力する電力を制御する。また、第2電力制御装置22は、第2電源21が出力する電力を制御する。
【0033】
また、本実施形態に係る電力制御システム1において、分電盤40の切替リレー42はなく、送電ラインPL1及び送電ラインPL2が送電ラインPL3に接続されている。
【0034】
また、本実施形態に係る電力制御システム1において、第1電力制御装置12は、第2電力制御装置22に対し、遠隔出力制御形式の指令(ダミー指令)を送ることによって上限の出力電力を設定することができる。ダミー指令の詳細については後述する。
【0035】
さらに、図4に示すように、送電ラインPL1を流れる電流を検出する電流検出部CTが設けられてよい。電流検出部CTは、例えば変流器などの電流センサであるが、電流を検出することができる要素であれば任意のものを採用することができる。第2電力制御装置22は、電流検出部CTの検出信号に基づいて、基準電圧波形を検知する。電流検出部CTは、基準電圧波形を検知できれば第2分散電源20に内蔵されていてよい。第2電力制御装置22は、自立運転時において、基準電圧波形を検知すると、開の状態であった連系リレー33を閉にする。連系リレー33が閉になると、第2電力制御装置22からの交流電力(図4の電力A)が送電ラインPL1を経て分電盤40に出力されて、負荷60に供給される。
【0036】
ここで、図4は、電力制御システム1の自立運転時の動作を示しており、連系リレー33が閉になった状態を示す。以下において、送電ラインPL1に出力される第2電力制御装置22からの交流電力は電力Aと称される。また、送電ラインPL2に出力される第1電力制御装置12からの交流電力は電力Bと称される。また、送電ラインPL2で第1電力制御装置12に入力される交流電力は電力B´と称される。また、送電ラインPL3で負荷60に供給される交流電力は電力Cと称される。
【0037】
電力制御システム1の他の構成要素については、図1を参照して説明した構成要素と同様であるため、重複説明を回避する観点から説明を省略する。また、第1電力制御装置12による主ブレーカー31の開閉の制御は、図1を参照した上記の説明と同様であるため、以下において省略する。
【0038】
次に、本実施形態に係る電力制御システム1が備える第1電力制御装置12及び第2電力制御装置22について、さらに説明する。図5は、第1電力制御装置12及び第2電力制御装置22の概略構成の例を示すブロック図である。
【0039】
図5に示すように、第1電力制御装置12は、第1DC/DCコンバータ13、第1インバータ14、第1制御部15、第1記憶部16及び第1通信部17を備える。また、第2電力制御装置22は、第2DC/DCコンバータ23、第2インバータ24、第2制御部25、第2記憶部26及び第2通信部27を備える。
【0040】
第1DC/DCコンバータ13は、第1電源11からの直流電力の電圧を昇圧又は降圧する。第1DC/DCコンバータ13によって電圧を昇圧又は降圧された直流電力は、第1インバータ14に出力される。第1DC/DCコンバータ13は、公知のものを用いて構成することができる。
【0041】
第1インバータ14は、第1DC/DCコンバータ13からの直流電力を交流電力に変換する。第1インバータ14によって変換された交流電力は、連系運転時に、連系リレー32及び送電ラインPL1を経て、分電盤40を経由して負荷60に供給される。また、第1インバータ14によって変換された交流電力は、自立運転時に、自立運転リレー34及び送電ラインPL2を経て、分電盤40を経由して負荷60に供給される。
【0042】
第1電源11が蓄電池である場合、第2分散電源20から供給される電力を充電することができる。この場合、第1インバータ14は、第2分散電源20からの交流電力を直流電力に変換する。そして、第1DC/DCコンバータ13は、第1インバータ14からの直流電力の電圧を昇圧又は降圧して、蓄電池である第1電源11に供給する。第1電源11は、このようにして供給された電力を充電することができる。第1電源11が蓄電池である場合、同様に、系統50から供給される電力を充電することができる。
【0043】
第1制御部15は、第1電力制御装置12の各機能部及び全体を制御及び管理する。第1制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)などを含めて構成することができる。第1制御部15は、連系リレー32及び自立運転リレー34の切り替えを制御する。第1制御部15は、連系運転時に、連系リレー32を閉にして、自立運転リレー34を開にする。第1制御部15は、停電などによって連系運転から自立運転に切り替わる場合に、連系リレー32を開にして、自立運転リレー34を閉にする。第1制御部15の動作については、さらに後述する。
【0044】
第1電力制御装置12は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、第1制御部15として、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)などで実現されてよいし、通信可能に接続された複数の集積回路などで実現されてよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実現されることが可能である。
【0045】
一実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続又は処理を実行するために構成される、1以上の回路又はユニットを含む。例えば、プロセッサは、1以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ又はこれらの組み合わせを含んで構成されてよい。
【0046】
第1記憶部16は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されてよい。第1記憶部16は、各種情報及び第1制御部15で実行されるプログラム等を記憶する。第1記憶部16は、第1制御部15のワークメモリとして機能してよい。また、第1記憶部16は、第1制御部15に含まれてよい。
【0047】
第1通信部17は、通信装置70と通信する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。第1通信部17は、例えば有線又は無線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。本実施形態において、通信装置70はネットワークハブであって、第1通信部17と通信装置70とが有線LANで接続される。別の例として、第1通信部17は、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。
【0048】
第2DC/DCコンバータ23は、第2電源21からの直流電力の電圧を昇圧又は降圧する。第2DC/DCコンバータ23によって電圧を昇圧又は降圧された直流電力は、第2インバータ24に出力される。第2DC/DCコンバータ23は、公知のものを用いて構成することができる。
【0049】
第2インバータ24は、第2DC/DCコンバータ23からの直流電力を交流電力に変換する。第2インバータ24によって変換された交流電力は、連系リレー33及び送電ラインPL1を経て、分電盤40を経由して負荷60に供給される。
【0050】
第2制御部25は、第2電力制御装置22の各機能部及び全体を制御及び管理する。第2電力制御装置22は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、第2制御部25として、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。第2制御部25の構成は、第1制御部15と同じであってよいし、異なっていてよい。
【0051】
第2制御部25は、上記のように、電流検出部CTの検出信号に基づいて基準電圧波形を検知すると連系リレー33を閉にする。
【0052】
第2記憶部26は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されてよい。第2記憶部26は、各種情報及び第2制御部25で実行されるプログラム等を記憶する。各種情報は遠隔出力制御の実行スケジュール及び更新スケジュールを含む。第2記憶部26は、第2制御部25のワークメモリとして機能してよい。また、第2記憶部26は、第2制御部25に含まれてよい。
【0053】
第2通信部27は、通信装置70と通信する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。第2通信部27は、例えば有線又は無線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。本実施形態において、通信装置70はネットワークハブであって、第2通信部27と通信装置70とが有線LANで接続される。別の例として、第2通信部27は、4G、5Gなどの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。第2通信部27の構成は、第1通信部17と同じであってよいし、異なっていてよい。
【0054】
ここで、第2電力制御装置22は単独運転防止機能を有する。そのため、第1電力制御装置12の第1制御部15が例えば停電などを検知し、連系運転から自立運転に切り替えるために連系リレー32を開にして自立運転リレー34を閉にした場合に、第2電力制御装置22は系統50からの基準電圧波形を検知するまで連系リレー33を開のままにする。本実施形態において、第1電力制御装置12は、連系運転から自立運転に切り替えた場合に、基準電圧波形を生成する。第2電力制御装置22が、第1電力制御装置12によって生成された基準電圧波形を系統50からのものと認識するために(系統50から送られる基準電圧波形と同等と判定するように)、生成された基準電圧波形の電力が十分に大きい必要がある。より具体的に述べると、第2電力制御装置22は、第2電力制御装置22自身が生成して出力しようとする電圧波形と、検知した基準電圧波形との間に位相差がある場合に、系統50からの基準電圧波形を検知したと判定する。基準電圧波形の電力の大きさが、第2電力制御装置22自身が生成する電圧波形の電力の大きさ以上である場合に、位相差が保たれる。そのため、第1電力制御装置12の第1制御部15は、第2電力制御装置22の単独運転防止機能が動作しないように第2電力制御装置22に対して上限の出力電力を設定する。そして、第1制御部15は、第2電力制御装置22の出力電力の大きさ以上で基準電圧波形を生成して出力する。
【0055】
本実施形態において、第1電力制御装置12の第1制御部15は、第2電力制御装置22に対し、遠隔出力制御形式のダミー指令を送ることによって上限の出力電力を設定する。ここで、逆潮流(売電)の契約を電力会社と交わしている分散電源のシステムでは、電力会社の電力サーバ72から遠隔出力制御の指令を受信する機能を有することが義務付けられている。第2通信部27は、連系運転時に、インターネットなどのネットワーク71及び通信装置70を介して、電力サーバ72からの遠隔出力制御の指令を受信し、指定されたスケジュールにおいて第2電力制御装置22の出力の大きさを制御する。第1電力制御装置12は、第2電力制御装置22の遠隔出力制御の指令の受信機能を利用して、自立運転時に、上限の出力電力を設定する遠隔出力制御形式のダミー指令を送信する。
【0056】
第2電力制御装置22は、電流検出部CTの検出信号に基づいて第1電力制御装置12によって生成された基準電圧波形を検知し、この基準電圧波形を系統50と同等のものと認識すると、連系リレー33を閉にする。図4及び図5は、この場合の電力制御システム1の状態(連系リレー33が閉に、連系リレー32が開に、自立運転リレー34が閉にされた状態)を示す。このとき、第2分散電源20は負荷60に接続されており、第2電力制御装置22からの電力Aが負荷60に供給可能である。
【0057】
図4及び図5に示す電力制御システム1の状態において、第1電力制御装置12は、第1分散電源10に、負荷60で消費される電力(電力C)から第2分散電源20が出力する電力(電力A)を差し引いた電力以上の電力(電力B)を出力させる、又は、第1分散電源10に、第2分散電源20が出力する電力(電力A)から負荷60で消費される電力(電力C)を差し引いた電力(電力B´)を消費させる。以下、この第1電力制御装置12の制御について、第1電源11が蓄電池、第2電源21が太陽電池であるとして、具体的に説明する。
【0058】
第1電力制御装置12は、自立運転時であって蓄電池(第1電源11)が放電する場合に、蓄電池に、負荷60で消費される電力Cから太陽電池(第2電源21)が出力する電力Aを差し引いた電力以上の電力Bを放電させる。例えば、負荷60で消費される電力Cが3.9kWであって、第2電力制御装置22に対して上限の出力電力が1.9kWに設定されている。このとき、電力Aが1.9kWを超えることがないため、第1電力制御装置12は、電力Bを2.0kW以上で出力させる。自立運転時において、負荷60への給電を、太陽電池からの電力を加えた合成電力で行うことによって、蓄電池の電力消費量を減らして長期間の電力供給を可能にするとともに、太陽電池の発電電力を有効に活用することができる。ここで、第1電力制御装置12は、第2電力制御装置22の出力電力の上限を、負荷60で消費される電力Cの半分以下に設定する。また、以下において、自立運転時で蓄電池が放電する場合における上記の電力の関係式(電力B≧電力C-電力A)を「電力A、電力B及び電力Cの関係式」と称することがある。
【0059】
第1電力制御装置12は、自立運転時であって蓄電池(第1電源11)が充電する場合に、蓄電池に、太陽電池(第2電源21)が出力する電力Aから負荷60で消費される電力Cを差し引いた電力B´で充電させる。例えば、負荷60で消費される電力Cが1.0kWであって、第2電力制御装置22に対して上限の出力電力が1.9kWに設定されており、電力Aが1.9kWである。このとき、第1電力制御装置12は、蓄電池に、0.9kWの電力B´で充電させる。自立運転時において、太陽電池からの電力で負荷60へ給電しながら、余剰電力があれば蓄電池に充電することによって、最大限の電力活用が可能になる。ここで、第1電力制御装置12は、第2電力制御装置22の出力電力の上限を、蓄電池の充電が可能な電力以下に設定する。つまり、負荷60で消費される電力Cが0であっても、蓄電池の充電が可能な電力の大きさまでであれば太陽電池が出力する電力Aの全てが有効に充電に用いられるように設定する。また、以下において、自立運転時で蓄電池が充電する場合における上記の電力の関係式(電力B´=電力A-電力C)を「電力A、電力B´及び電力Cの関係式」と称することがある。
【0060】
本実施形態において、第1電力制御装置12は、電力A、電力B及び電力Cの関係式又は電力A、電力B´及び電力Cの関係式が満たされるように、電圧一定制御を実行する。電圧一定制御は、送電ラインPL3上の点CP(図4参照)における電圧を一定にする制御である。点CPにおける電圧は、第1インバータ14の出力側電圧に対応する。例えば負荷60で消費される電力と釣り合うように電力Cが供給される場合に、点CPにおける電圧は200Vであるとする。太陽電池が出力する電力Aが増加して、点CPにおける電圧が200Vを超える場合に、第1電力制御装置12は、負荷60で消費される電力を超える余剰電力を電力B´として蓄電池に充電させる。また、太陽電池が出力する電力Aが低下して、点CPにおける電圧が200V以下の場合に、第1電力制御装置12は、負荷60で消費される電力に対して不足する電力分を補填する電力Bを蓄電池に放電させる。第1電力制御装置12は、電圧一定制御を実行することによって、複雑な演算を実行するようなことなく、蓄電池の放電と充電を自動的に切り替えることが可能になる。
【0061】
また、本実施形態に係る電力制御システム1は、それぞれが単体で機能する標準的な第1分散電源10と第2分散電源20とを組み合わせて構成され、図3のような特別な構成(マルチDCリンクタイプ)を必要としない。したがって、既存の単体で機能する分散電源のシステムを容易に本実施形態に係る電力制御システム1に変更することが可能である。
【0062】
ここで、上記のように、第1電力制御装置12は、自立運転時に、第2電力制御装置22に対して遠隔出力制御形式のダミー指令を送ることによって上限の出力電力を設定する。適切に第2電力制御装置22の出力電力の上限を設定するために、第1電力制御装置12は、遠隔出力制御形式のダミー指令を送る前に、予め第2電力制御装置22の定格容量の情報を取得してよい。定格容量の情報は、例えば第1記憶部16に記憶されてよい。このとき、第1電力制御装置12は、設定する第2電力制御装置22の出力電力の上限が定格容量を超えることを防止できるとともに、このような超過によって生じる一時的な電圧低下の不安定状態を防止できる。
【0063】
また、第1電力制御装置12は、負荷60の変動に応じて、新たなダミー指令によって第2電力制御装置22の出力電力の上限を変更してよい。ここで、送電ラインPL3を流れる電流を検出するセンサが設けられて(図7の第1電流検出部CT1参照)、第1電力制御装置12はセンサの検出信号に基づいて負荷60の変動を検知してよい。このとき、第1電力制御装置12は、負荷60で消費される電力が低下するような場合に、ダミー指令によって第2電力制御装置22の出力電力の上限も下げることができる。このような負荷60の変動への対応により、電力Aの方が電力Bよりも大きくなって(第2電力制御装置22の出力電力の上限が電力Cの半分以下でなくなって)、第2電力制御装置22の単独運転防止機能が動作してしまうことを回避できる。
【0064】
また、上記のように、電力制御システム1は、自立運転時において、負荷60への給電を、太陽電池からの電力を加えた合成電力で行うことによって、蓄電池の電力消費量を減らして長期間の電力供給を可能にする。蓄電池の使用可能量及び使用可能時間は、例えばHEMS(Home Energy Management System)の表示装置に示されてよい。
【0065】
また、第1電力制御装置12のダミー指令の送信に用いられる通信装置70は、ネットワークハブに限定されない。別の例として、通信装置70は、ルータ、HEMS又は分散電源のリモコンなどであってよい。つまり、通信装置70は、電力会社の電力サーバ72からの遠隔出力制御の指令の受信に用いられる各種の通信機能を有する装置であってよい。
【0066】
例えば通信装置70がHEMS又は分散電源のリモコンである場合に、ダミー指令の送信は次の手順で実行されてよい。まず、第1電力制御装置12の自立運転が開始されることによって、HEMS又は分散電源のリモコンが起動する。第1電力制御装置12の第1制御部15は、HEMS又は分散電源のリモコンに対して、ダミー指令を生成して送信するように指示する。HEMS又は分散電源のリモコンからのダミー指令を受けた第2電力制御装置22は、ダミー指令に従って出力電力の上限が設定される。通信装置70がHEMS又は分散電源のリモコンである場合に、自立運転時のダミー指令は、連系運転時の通常の遠隔出力制御の指令と同じ装置で生成することができる。
【0067】
また、連系運転時に、電力サーバ72からの遠隔出力制御の指令の内容(例えば更新スケジュールを含む)は、日時と関連付けられた電子カレンダーとして管理されることがある。電子カレンダーは例えば第2記憶部26に記憶される。また、電子カレンダーは、電力サーバ72又はHEMSなどによっても管理されている。第2制御部25は、例えば第2記憶部26から電子カレンダーを読み出して、電子カレンダーに従って第2電源21を制御し、第2電力制御装置22の出力電力を調整してよい。ここで、自立運転時のダミー指令によって、第2記憶部26に記憶された電子カレンダーの内容が変更され得る。このとき、第1電力制御装置12の第1制御部15は、例えば停電が解消されて自立運転から連系運転に戻った場合に、電力サーバ72又はHEMSなどに対して、電子カレンダーを第2電力制御装置22に送信するように要求してよい。また、通信装置70がHEMSである場合に、自立運転から連系運転に戻ると、第1電力制御装置12から要求されなくても、HEMSが第2電力制御装置22に電子カレンダーを送信してよい。
【0068】
また、連系運転時に、第2電力制御装置22だけでなく、第1電力制御装置12が遠隔出力制御の指令の内容を取得してよい。このとき、遠隔出力制御の指令の内容は、第1記憶部16に記憶されてよい。第1電力制御装置12の第1制御部15は、自立運転から連系運転に戻る場合に、ダミー指令によって第1記憶部16に記憶された遠隔出力制御の指令の内容を第2電力制御装置22に送信してよい。自立運転時のダミー指令によって第2記憶部26に記憶された電子カレンダーの内容が変更されたとしても、第1制御部15が、さらにダミー指令によって電力サーバ72からの遠隔出力制御の指令の内容を上書きすることによって、電子カレンダーの内容を復元することができる。ここで、第1制御部15によって送信される遠隔出力制御の指令の内容は、例えば復電以降のスケジュールにおける内容であってよいし、例えば年間スケジュールの全ての内容であってよい。
【0069】
ここで、第1電力制御装置12は、第2記憶部26に記憶された電子カレンダーの内容が誤って変更されないように、第2記憶部26の電子カレンダーを更新させないインターロックをかけてよい。そして、第1電力制御装置12は、電力サーバ72から遠隔出力制御の指令がある場合及びダミー指令を出力する場合に限って、インターロックを解除してよい。
【0070】
図6は、本実施形態に係る電力制御システム1が備える第1電力制御装置12と第2電力制御装置22の自立運転時における動作(電力制御方法)を説明するフローチャートである。
【0071】
第1電力制御装置12は、停電などを検知すると連系運転から自立運転に切り替える(ステップS1のYes)。第1電力制御装置12は、連系運転から自立運転に切り替わる場合に、連系リレー32を開にして、自立運転リレー34を閉にする。第1電力制御装置12は、停電などを検知せず連系運転を継続する場合に(ステップS1のNo)、以下のステップS2~ステップS6の処理を行わない。
【0072】
第1電力制御装置12は基準電圧波形を出力する(ステップS2)。また、第1電力制御装置12は、単独運転防止機能が動作しないように、ダミー指令を送ることによって第2電力制御装置22に対して上限の出力電力を設定する(ステップS3)。第2電力制御装置22は、電流検出部CTの検出信号に基づいて、基準電圧波形を検知する。第2電力制御装置22は、基準電圧波形を検知すると、開の状態であった連系リレー33を閉にする(図4参照)。
【0073】
第1電力制御装置12は、蓄電池が、放電動作が必要な状態であるか、充電動作が必要な状態であるかを判定する。本実施形態において、第1電力制御装置12は電圧一定制御を実行し、点CPにおける電圧が基準値(一例として200V)以下の場合に、蓄電池が放電動作が必要な状態であると判定する。また、第1電力制御装置12は、点CPにおける電圧が基準値を超える場合に、蓄電池が、放電動作が必要な状態でない(充電動作が必要な状態である)と判定する。
【0074】
第1電力制御装置12は、蓄電池が、放電動作が必要な状態と判断する場合に(ステップS4のYes)、蓄電池に、負荷60で消費される電力Cから第2電力制御装置22が出力する電力Aを差し引いた電力以上の電力Bを放電させる制御を行う(ステップS5)。
【0075】
第1電力制御装置12は、蓄電池が、充電動作が必要な状態と判断する場合に(ステップS4のNo)、蓄電池に、第2電力制御装置22が出力する電力Aから負荷60で消費される電力Cを差し引いた電力B´で充電させる制御を行う(ステップS6)。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る電力制御システム1、電力制御装置(第1電力制御装置12)及び電力制御方法によれば、太陽光発電装置のような分散電源の単独運転防止機能を作動させずに、その分散電源の出力を、蓄電装置の自立運転の出力に合わせて、負荷60に供給し続けることができる。したがって、分散電源が自立運転時に発電する電力の活用度を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態に係る第1電力制御装置12は、第2電力制御装置22に対し、遠隔出力制御形式のダミー指令を送ることによって上限の出力電力を設定することができる。遠隔出力制御の指令を受信する機能は既存のシステムが備えるものであるため、既存のシステムを制御プログラムの更新などで容易に本実施形態に係る電力制御システム1に変更することが可能である。
【0078】
また、本実施形態に係る第1電力制御装置12は、負荷60と接続される送電ラインPL3における電圧を一定にする電圧一定制御を実行することによって、複雑な演算を実行するようなことなく、蓄電池の放電と充電を自動的に切り替えることが可能である。
【0079】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上記した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。
【0080】
上記の実施形態において、第1電力制御装置12は送電ラインPL3上の点CPにおける電圧を一定にする制御(電圧一定制御)を行った。ここで、図7に示すように電力制御システム1が第1電流検出部CT1及び第2電流検出部CT2を備え、第1電力制御装置12は第1電流検出部CT1及び第2電流検出部CT2からの検出値に基づいて電力B又は電力B´を調整する制御を行ってよい。
【0081】
第1電流検出部CT1は、送電ラインPL3を経て負荷60に流れる電流を検出する。第2電流検出部CT2は、第2電力制御装置22から送電ラインPL1に流れる電流を検出する。第2電流検出部CT2は、上記の実施形態において基準電圧波形の検知に用いられる電流検出部CTの機能も兼ねる。第1電力制御装置12の第1制御部15は、第1電流検出部CT1の検出値(電流値)と電圧値(例えば第1インバータ14の出力側電圧値)とを乗算して電力Cを算出する。また、第1電力制御装置12の第1制御部15は、第2電流検出部CT2の検出値(電流値)と電圧値(例えば第1インバータ14の出力側電圧値)とを乗算して電力Aを算出する。そして、第1制御部15は、上記に説明した電力A、電力B及び電力Cの関係式又は電力A、電力B´及び電力Cの関係式が満たされるように、電力B又は電力B´を調整する制御を行ってよい。
【0082】
上記の実施形態において、第1分散電源10は蓄電装置であるものとして説明した。また、上記の実施形態において、第2分散電源20は太陽光発電装置であるものとして説明した。ここで、第1分散電源10は蓄電装置に限定されない。また、第2分散電源20は太陽光発電装置に限定されない。第1分散電源10は、例えば燃料電池装置とヒートポンプ給湯装置で構成される分散電源システムなどのような、給電と受電が可能な各種の非再生可能エネルギー電源とすることができる。また、第2分散電源20は、各種の再生可能エネルギー電源とすることができる。例えば、第2分散電源20は、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell(SOFC))又は固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC))のような燃料電池装置であってよい。また、例えば、第1分散電源10が蓄電装置である場合に、第2分散電源20が他の蓄電装置であってよい。
【0083】
上記の実施形態において、電力制御システム1は1つの第1電力制御装置12と、1つの第2電力制御装置22とを含んで構成される。ここで、電力制御システム1は、複数の第1電力制御装置12を含んで構成されてよい。このとき、上記の電力Bは、複数の第1電力制御装置12の合計の交流電力である。また、電力制御システム1は、複数の第2電力制御装置22を含んで構成されてよい。このとき、上記の電力Aは、複数の第2電力制御装置22の合計の交流電力である。また、複数の第2電力制御装置22が接続される複数の第2電源21の一部が燃料電池である場合も同様である。ここで、自立運転時に燃料電池を起動させて電力を得るために、例えば疑似電流回路を用いる手法などの公知の手法を採用することができる。
【0084】
上記の実施形態において、電力制御システム1は、それぞれが単体で機能する標準的な第1分散電源10と第2分散電源20とを組み合わせて構成されることを説明した。ここで、電力制御システム1は、構成を変更することなく、過負荷保護機能及び過電圧保護機能を有する蓄電装置を第1分散電源10として用いることができる。ここで、過負荷保護機能及び過電圧保護機能は、負荷60と接続される送電ラインPL3における電圧が電圧不足又は過電圧の場合に、第1電力制御装置12が電力の出力を停止する機能である。上記のように、本実施形態に係る電力制御システム1において、第1電力制御装置12は電圧一定制御を行う。第1電力制御装置12は、送電ラインPL3における電圧が、電圧不足(例えば180V以下)又は過電圧(例えば220V以上)の状態になることを回避し、基準となる一定の電圧(例えば200V)を保つように制御する。そのため、第1分散電源10として過負荷保護機能及び過電圧保護機能を有する蓄電装置を採用した場合であっても、電力制御システム1は、過負荷保護機能及び過電圧保護機能が動作することを回避して、蓄電池及び太陽電池の発電電力を有効に活用することができる。電力制御システム1は、第1電力制御装置12が電圧一定制御を行わない場合であっても、過負荷保護機能及び過電圧保護機能が動作しない出力電圧範囲で負荷60と接続される送電ラインPL3における電圧を制御することが好ましい。
【0085】
また、本実施形態に係る電力制御システム1において、第2電力制御装置22に対して上限の出力電力が設定されるが、出力電力の上限設定は以下のようなタイミングで終了してよい。出力電力の上限設定は、自立運転でなくなった場合に終了してよい。また、出力電力の上限設定は、負荷60で消費される電力が第2電源21の発電電力より大きい場合において、第1電源11が供給可能な電力を失った(例えば蓄電池である第1電源11が空になった)タイミングで終了してよい。また、出力電力の上限設定は、第2電源21の発電電力が負荷60で消費される電力より大きい場合において、第1電源11が電力を消費できなくなった(例えば蓄電池である第1電源11が満充電となった)タイミングで終了してよい。
【符号の説明】
【0086】
1 電力制御システム
10 第1分散電源
11 第1電源
12 第1電力制御装置
13 第1DC/DCコンバータ
14 第1インバータ
15 第1制御部
16 第1記憶部
17 第1通信部
20 第2分散電源
21 第2電源
22 第2電力制御装置
23 第2DC/DCコンバータ
24 第2インバータ
25 第2制御部
26 第2記憶部
27 第2通信部
31 主ブレーカー
32 連系リレー
33 連系リレー
34 自立運転リレー
40 分電盤
42 切替リレー
50 系統
60 負荷
70 通信装置
71 ネットワーク
72 電力サーバ
100 第1分散電源
120 第1電力制御装置
CT 電流検出部
CT1 第1電流検出部
CT2 第2電流検出部
PL1 送電ライン
PL2 送電ライン
PL3 送電ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7