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特開2023-33019プレキャスト部材の接合構造及び接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033019
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】プレキャスト部材の接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/04 20060101AFI20230302BHJP
   E02B 5/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E03F3/04 A
E02B5/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139458
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000186898
【氏名又は名称】昭和コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005186
【氏名又は名称】日本スプライススリーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】坂井 悟
(72)【発明者】
【氏名】緒方 努
(72)【発明者】
【氏名】和泉 辰明
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA08
(57)【要約】
【課題】プレキャスト部材に形成するグラウト流通穴の数を半減させ、その形成の手間を低減するとともに、プレキャスト部材の表面のグラウト流通穴による見栄えの悪化を改善する。
【解決手段】第1プレキャスト部材10又は第2プレキャスト部材20に、外部から目地空間2へ通じるグラウト注入路25が設けられ、複数のスリーブ4は、一端面が目地空間2に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口5が形成されたものであり、第1プレキャスト部材10に、各スリーブ4のグラウト流通口5から外部へ開口するグラウト流通穴15が、各スリーブ4について1つずつ形成され、グラウト注入路25、目地空間2、スリーブ4の内部、グラウト流通口5及びグラウト流通穴15に、グラウト3が連続して充填されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物を構築するプレキャスト体(1)は、分割された第1プレキャスト部材(10)と第2プレキャスト部材(20)とを含み、
第1プレキャスト部材(10)と第2プレキャスト部材(20)とが、
第1プレキャスト部材(10)の端面(12)と第2プレキャスト部材(20)の端面(22)との間の目地空間(2)に充填されたグラウト(3)と、
第1プレキャスト部材(10)内の第1鉄筋(11)の端部と第2プレキャスト部材(20)の端面(22)から突出した第2鉄筋(21)の端部とが第1プレキャスト部材(10)に埋設されたスリーブ(4)の内部で該内部に充填されたグラウト(3)を介して固定されてなる複数のグラウト充填継手と、により接合されたプレキャスト部材の接合構造において、
第1プレキャスト部材(10)又は第2プレキャスト部材(20)に、外部から目地空間(2)へ通じるグラウト注入路(25)が設けられ、
各スリーブ(4)は、一端面が目地空間(2)に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口(5)が形成されたものであり、
第1プレキャスト部材(10)に、各スリーブ(4)のグラウト流通口(5)から外部へ開口するグラウト流通穴(15)が、各スリーブ(4)について1つずつ形成され、
グラウト注入路(25)、目地空間(2)、スリーブ(4)の内部、グラウト流通口(5)及びグラウト流通穴(15)に、グラウト(3)が連続して充填されていることを特徴とするプレキャスト部材の接合構造。
【請求項2】
前記グラウト注入路がホース(25)で形成され、該ホース(25)の注入側端部が第1プレキャスト部材(10)又は第2プレキャスト部材(20)から外部へ200mm以上突出している請求項1記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項3】
土木構造物を構築するプレキャスト体(1)は、分割された第1プレキャスト部材(10)と第2プレキャスト部材(20)とを含み、
第1プレキャスト部材(10)と第2プレキャスト部材(20)とを、
第1プレキャスト部材(10)の端面(12)と第2プレキャスト部材(20)の端面(22)との間の目地空間(2)に充填したグラウト(3)と、
第1プレキャスト部材(10)内の第1鉄筋(11)の端部と第2プレキャスト部材(20)の端面(22)から突出した第2鉄筋(21)の端部とを第1プレキャスト部材(10)に埋設したスリーブ(4)の内部で該内部に充填したグラウト(3)を介して固定してなる複数のグラウト充填継手と、により接合するプレキャスト部材の接合方法において、
第1プレキャスト部材(10)又は第2プレキャスト部材(20)に、外部から目地空間(2)へ通じるグラウト注入路(25)を設け、
各スリーブ(4)は、一端面が目地空間(2)に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口(5)が形成されたものであり、
第1プレキャスト部材(10)に、各スリーブ(4)のグラウト流通口(5)から外部へ開口するグラウト流通穴(15)を、各スリーブ(4)について1つずつ形成し、
グラウト注入路(25)から、目地空間(2)、スリーブ(4)の内部、グラウト流通口(5)及びグラウト流通穴(15)に、グラウト(3)を連続して充填することを特徴とするプレキャスト部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材の接合構造に関するものである。なお、プレキャストコンクリートを単にプレキャストという。
【背景技術】
【0002】
第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とが、第1プレキャスト部材の内部の第1鉄筋の端部と第2プレキャスト部材から突出した第2鉄筋の端部とを第1プレキャスト部材に埋設したスリーブの内部で該内部に充填したグラウトを介して固定したグラウト充填継手と、第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材との間に形成された目地空間に充填されたグラウトとにより、接合された接合構造が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1では、図10に示すように、第1プレキャスト部材50の下端面51に部材辺を一周する縁取凸部52をプレキャスト時に残すことにより、その内側の凹陥部と第2プレキャスト部材60との間に目地空間53を形成する。そして、スリーブ55下側の注入口56から注入したグラウト54は、スリーブ55内部を充填して、スリーブ55上側の排出口57からあふれ出すとともに、スリーブ55下端からも出て目地空間53を充填する。
【0004】
特許文献2では、第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材との間にスペーサーを介在させることにより目地空間を形成し、その外周にグラウト止めを施す。そして、第1プレキャスト部材の側面から下端面にかけて穿設したグラウト注入孔から注入したグラウトは、目地空間を充填してから、スリーブ下端開口からスリーブの内部を充填して、スリーブの上側及び下側の流出口からあふれ出す。
【0005】
特許文献3では、第2プレキャスト部材に植設した受け部材(ボルト)により第1プレキャスト部材との間に目地空間を形成する。そして、スリーブ下端開口に蓋をした状態で、スリーブ下側の注入口から注入したグラウトは、スリーブ内部を充填して、スリーブ上側の排出口からあふれ出す。また、第1プレキャスト部材の側面から下端面に至る目地注入孔から注入したグラウトは、目地空間を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-230877号公報
【特許文献2】特開2003-301526号公報
【特許文献3】特開2012-77547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10(a)に示すように、グラウト充填継手に使用されるスリーブ55は、その筒壁の一端付近と他端付近とに2つのグラウト流通口(注入口56と排出口57)が形成されている。
【0008】
これに対応して、第1プレキャスト部材50には2つのグラウト流通口からそれぞれ外部へ開口する2つのグラウト流通穴58,59がプレキャスト時に形成され、それにスリーブ数を乗じた形成数となるため、形成に手間がかかっていた。また、図10(c)に示すように、第1プレキャスト部材50の表面にグラウト流通穴58,59が2列状に多数現れるため、見栄えが悪くなっていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、プレキャスト部材に形成するグラウト流通穴の数を半減させ、その形成の手間を低減するとともに、プレキャスト部材の表面のグラウト流通穴による見栄えの悪化を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]土木構造物を構築するプレキャスト体は、分割された第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とを含み、
第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とが、
第1プレキャスト部材の端面と第2プレキャスト部材の端面との間の目地空間に充填されたグラウトと、
第1プレキャスト部材内の第1鉄筋の端部と第2プレキャスト部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とが第1プレキャスト部材に埋設されたスリーブの内部で該内部に充填されたグラウトを介して固定されてなる複数のグラウト充填継手と、により接合されたプレキャスト部材の接合構造において、
第1プレキャスト部材又は第2プレキャスト部材に、外部から目地空間へ通じるグラウト注入路が設けられ、
各スリーブは、一端面が目地空間に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口が形成されたものであり、
第1プレキャスト部材に、各スリーブのグラウト流通口から外部へ開口するグラウト流通穴が、各スリーブについて1つずつ形成され、
グラウト注入路、目地空間、スリーブの内部、グラウト流通口及びグラウト流通穴に、グラウトが連続して充填されていることを特徴とするプレキャスト部材の接合構造。
【0011】
[2]前記[1]において、前記グラウト注入路が高分子材料製のホースで形成され、該ホースの注入側端部が第1プレキャスト部材又は第2プレキャスト部材から外部へ200mm以上(より好ましくは300mm以上、最も好ましくは400mm以上)突出していることが好ましい。高分子材料製のホースは、後述するように、グラウト注入後に折り曲げることで逆流防止を行うことができるからである。また、200mm以上突出していると、モルタルポンプを接続しやすく、前記折り曲げをしやすいからである。高分子材料としては、樹脂、ゴム、エラストマー等を例示できる。
【0012】
[3]土木構造物を構築するプレキャスト体は、分割された第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とを含み、
第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とを、
第1プレキャスト部材の端面と第2プレキャスト部材の端面との間の目地空間に充填したグラウトと、
第1プレキャスト部材内の第1鉄筋の端部と第2プレキャスト部材の端面から突出した第2鉄筋の端部とを第1プレキャスト部材に埋設したスリーブの内部で該内部に充填したグラウトを介して固定して複数のグラウト充填継手と、により接合するプレキャスト部材の接合方法において、
第1プレキャスト部材又は第2プレキャスト部材に、外部から目地空間へ通じるグラウト注入路を設け、
各スリーブは、一端面が目地空間に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口が形成されたものであり、
第1プレキャスト部材に、各スリーブのグラウト流通口から外部へ開口するグラウト流通穴を、各スリーブについて1つずつ形成し、
グラウト注入路から、目地空間、スリーブの内部、グラウト流通口及びグラウト流通穴に、グラウトを連続して充填することを特徴とするプレキャスト部材の接合方法。
【0013】
[作用]
第1プレキャスト部材に、各スリーブのグラウト流通口から外部へ開口するグラウト流通穴を、各スリーブについて1つずつ形成するので、第1プレキャスト部材に形成するグラウト流通穴の数を従来と比較して半減させ、その形成の手間を低減することができる。また、プレキャスト部材の表面にグラウト流通穴が1列状に現れるだけなので、従来と比較して見栄えの悪化を改善することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレキャスト部材に形成するグラウト流通穴の数を半減させ、その形成の手間を低減するとともに、プレキャスト部材の表面のグラウト流通穴による見栄えの悪化を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は実施例における第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材の分解斜視図である。
図2図2は両プレキャスト部材の要部分解斜視図である。
図3図3は両プレキャスト部材を合わせたときの要部斜視図である。なお、スリーブ等は一部のみを示す(図4図5図8において同じ)。
図4図4は両プレキャスト部材の目地空間の開口部を目地マスキングテープで塞いだときの要部斜視図である。
図5図5は両プレキャスト部材の目地空間の開口部に目地型枠を当てて固定したときの要部斜視図である。
図6図6は両プレキャスト部材の目地空間及びスリーブにグラウトを充填したときの横断方向を見せる断面図である。
図7図7は両プレキャスト部材の目地空間及びスリーブにグラウトを充填したときの長さ方向を見せる断面図である。
図8図8は両プレキャスト部材のグラウト充填後の要部斜視図である。
図9図9は両プレキャスト部材で構築されたボックスカルバートの斜視図である。
図10図10は従来例(特許文献1)を示し、(a)は断面図、(b)は第1プレキャスト部材の下面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.土木構造物
土木構造物としては、特に限定されないが、ボックスカルバート、シェッド、水路、擁壁等を例示できる。
【0017】
2.プレキャスト体
第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材としては、プレキャスト体を上下に分割したものや左右(前記横断方向)に分割したもの等を例示できるが、上下に分割したものについて本発明は特に好適に適用できる。
【0018】
2.スリーブ
各スリーブの筒壁に前記グラウト流通口以外の口が形成されている場合、その口が第1プレキャスト部材以外のキャップにより閉鎖されていることが好ましい。
【0019】
3.グラウト
グラウトとしては、特に限定されないが、コンクリートとの付着性や取扱性の良さから、モルタルが好ましく、特に無収縮モルタルが好ましい。
【実施例0020】
次に、本発明をボックスカルバートを構築するプレキャスト体1のプレキャスト部材の接合構造に具体化した実施例について、図1図9を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0021】
図9に示すように、プレキャスト体1は、その複数がボックスカルバートの長さ方向に連なってボックスカルバートを構築するものである。各プレキャスト体1は、底版部と頂版部と2つの端部から、所定長さの四角環状に構成されている。
図1に示すように、プレキャスト体1は、2つの側壁部の中間部で上下に二分割されてなる上側の第1プレキャスト部材10と下側の第2プレキャスト部材20とで構成されている。
【0022】
図6及び図7に示すように、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20とは、
(1)第1プレキャスト部材10の四角形状の端面と第2プレキャスト部材20の四角形状の端面との間の目地空間2に充填されたグラウト3と、
(2)第1プレキャスト部材10内の第1鉄筋11の端部と第2プレキャスト部材20の端面22から突出した第2鉄筋21の端部とが第1プレキャスト部材10の下部に埋設されたスリーブ4の内部で該内部に充填されたグラウト3を介して固定されてなる複数のグラウト充填継手と、
により接合されている。
【0023】
グラウト3には、市販の無収縮モルタル、例えば日本スプライススリーブ社製の商品名「SSモルタル」が用いられている。
スリーブ4には、市販のスリーブ、例えば同社製の商品名「NMBスプライススリーブ」が用いられている。
【0024】
図2図6及び図7等に示すように、第1プレキャスト部材10の端面12は、該端面12の周縁部のうちの長さ方向に対峙する対辺部に、第2プレキャスト部材20の端面22に当接する一対の縁取凸部13がプレキャストで形成され、該周縁部のうちの横断方向に対峙する対辺部の長さの全部(この対辺部の両端にかかる前記縁取凸部13の両端部は参入しないものとする。)に、第2プレキャスト部材20の端面22に当接する縁取凸部が無い。
同様に、第2プレキャスト部材20の端面22は、該端面22の周縁部のうちの長さ方向に対峙する対辺部に一対の縁取凸部23がプレキャストで形成され、該周縁部のうちの横断方向に対峙する対辺部の長さの全部に縁取凸部が無い。
【0025】
第1プレキャスト部材10の端面12と、第2プレキャスト部材20の端面22は、いずれも長さ方向の長さが1000mm、横断方向の長さ(幅)が500mmである。各縁取凸部13,23の凸端面の、長さ方向の長さ(幅)は25mm(前記端面の長さ方向の長さの2.5%)、横断方向の長さは500mm(前記端面の長さ方向の長さと同じ)、高さは10mmである。
【0026】
第1プレキャスト部材10の一対の縁取凸部13と、第2プレキャスト部材20の一対の縁取凸部23とは当接し、第1プレキャスト部材10の端面12と、第2プレキャスト部材20の端面22との間に目地空間2が形成される。よって、目地空間2の高さは20mmである。目地空間2は、長さ方向にはこれらの縁取凸部13,23の立ち上がり面により閉鎖され、横断方向には開放される。
【0027】
端面12,22の各周縁部のうち、長さ方向に対峙する対辺部は、複数のプレキャスト体1が長さ方向に連なったときに隣接してそれらの間に目地型枠32を当てることが困難であるため、縁取凸部13,23をプレキャストで形成することが合理的である。一方、横断方向に対峙する対辺部は、外部から目地型枠32を当てることができるため、縁取凸部を無くすことができる。こうして、縁取部を合理的に減少させて、プレキャスト部材10,20間のグラウト接合面積が極力減少しないようにすることができる。
【0028】
なお、第1プレキャスト部材10の縁取凸部13と第2プレキャスト部材20の縁取凸部23との間に、エポキシ系接着剤等のコーキング材を塗布して、グラウト漏れ防止及び止水を図ることが好ましい。
【0029】
各縁取凸部13,23の中央部には、内側へはみ出る調芯用凸部14,24が縁取凸部13,23と連続してプレキャストで形成されている。調芯用凸部14,24の凸端面の、長さ方向の長さは85mm、横断方向の長さは70mm、高さは10mmである。調芯用凸部14,24の一部には調芯凹部が形成され、調芯凹部には調芯ピン30が嵌合されている。
【0030】
図2図6及び図9等に示すように、第2プレキャスト部材20に、外部から目地空間2へ通じるグラウト注入路(ホース25)が設けられ、
各スリーブ4は、一端面が目地空間2に開口し、他端付近の筒壁にグラウト流通口5が形成されたものであり、
第1プレキャスト部材10に、各スリーブ4のグラウト流通口5から外部へ開口するグラウト流通穴15が、各スリーブ4について1つずつ形成され、
ホース25、目地空間2、スリーブ4の内部、グラウト流通口5及びグラウト流通穴15に、グラウト3が連続して充填されている。
【0031】
第1プレキャスト部材10に、各スリーブ4のグラウト流通口5から外部へ開口するグラウト流通穴15を、各スリーブ4について1つずつ形成するので、第1プレキャスト部材10に形成するグラウト流通穴の数を従来と比較して半減させ、その形成の手間を低減することができる。また、図9に示すように、第1プレキャスト部材10の表面にグラウト流通穴15が1列状に現れるだけなので、従来と比較して見栄えの悪化を改善することができる。
【0032】
グラウト注入路は高分子材料製のホース25で形成され、該ホース25の注入側端部が第2プレキャスト部材20から外部へ500mm突出している。ホース25には、例えば内径19mm程度の樹脂ホースが用いられている。ホース25は、第2プレキャスト部材20のプレキャスト時に第2プレキャスト部材20に埋設されており、出口側端は目地空間2へ開口しており、注入側端部は第2プレキャスト部材20の側面から突出している。その突出長は、後述する注入時のホース25接続と注入完了後の折り曲げ処理の作業性とを考慮し、500mmとされている。なお、図示例では2つのグラウト注入路(本例ではホース25)が設けられているが、その数はプレキャスト部材の寸法に応じて変更できる。
【0033】
便宜上図2及び図8のみに示すように、第2プレキャスト部材20には外部から目地空間2へ通じる予備ホース26が設けられている。予備ホース26も第2プレキャスト部材20から外部へ突出しており、その突出端は、グラウト注入中、目地空間2の高さ以上に持ち上げておく。
【0034】
用いたスリーブ4は、前記グラウト流通口5のほか、一端付近の筒壁に別のグラウト流通口6が形成されたものであるため、第1プレキャスト部材10への埋設前に、グラウト流通口6をキャップ7により閉鎖しておく。
【0035】
以上のように構成された実施例のプレキャスト部材の接合構造は、プレキャスト部材10,20を施工現場に運搬し、施工現場で次のように接合して組み立てられる。
【0036】
(1)まず、図1及び図2から図3への変化で示すように、第1プレキャスト部材10を第2プレキャスト部材20を載せて設置する。この設置前に、縁取凸部23にコーキング材を塗布する。また、調芯凹部に調芯ピン30を嵌合させて設置することにより、正確に位置決めすることができる。
そして、縁取凸部13と縁取凸部23とが前記コーキング材を介して当接し、第1プレキャスト部材10の端面12と、第2プレキャスト部材20の端面22との間に目地空間2が形成される。目地空間2は、長さ方向にはこれらの縁取凸部13,23の立ち上がり面により閉鎖され、横断方向には開放される。
なお、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20とからなるプレキャスト体1は、その複数がボックスカルバートの長さ方向に連なって接合されるが、その接合構造及びシール構造については、従来構造を適用できるため、説明を省略する。
【0037】
(2)次に、図4に示すように、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20との境部に、目地空間2の横断方向の開放を塞ぐように、目地マスキングテープ31を貼り付ける。目地マスキングテープ31は、次の目地型枠32だけでは起こる可能性があるグラウト漏れを止めるためのものである。
【0038】
(3)次に、図5に示すように、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20との境部に、目地空間2の横断方向の開放を(目地マスキングテープ31の上からさらに)塞ぐように、目地型枠32を当てる。さらに、目地型枠32に固定金具33を当て、固定金具33をボルト34により第1プレキャスト部材10の埋め込みナット17及び第2プレキャスト部材20の埋め込みナット27に締め付けることにより、目地型枠32を前記境部に押し当てる。目地型枠32には、例えば木板を用いることができる。
【0039】
(4)次に、図6及び図7に示すように、ホース25にグラウトポンプ(図示略)を接続し、グラウト3を注入する。グラウト3は、ホース25、目地空間2、スリーブ4の内部、グラウト流通口5及びグラウト流通穴15を、その順に流動し、連続して充填する。なお、グラウト注入前に、グラウト流通穴15に栓16をしておく。
予備ホース26の突出端からグラウト3が吐出し、全グラウト流通穴15までの充填が完了したことを栓16により確認した上で、グラウト注入を完了する。また、ホース25を折り曲げることで逆流防止を行ってから、注入完了することが好ましい。
【0040】
(5)グラウト3の硬化及び養生が完了した後、目地型枠32を取り外し、目地マスキングテープ31を剥がし、図8及び図9に示すように、第2プレキャスト部材20の表面から突出したホース25及び予備ホース26の各突出部分を切断して除去すれば、ボックスカルバートが完成する。
【0041】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(ア)グラウト注入路(ホース25)を、第1プレキャスト部材10に設けること。
(イ)縁取凸部13を、第1プレキャスト部材10の端面12又は第2プレキャスト部材20の端面22のいずれか一方のみにプレキャストで形成すること。
【符号の説明】
【0042】
1 プレキャスト体
2 目地空間
3 グラウト
4 スリーブ
5 グラウト流通口
6 別のグラウト流通口
7 キャップ
10 第1プレキャスト部材
11 第1鉄筋
12 端面
13 縁取凸部
15 グラウト流通穴
16 栓
20 第2プレキャスト部材
21 第2鉄筋
22 端面
23 縁取凸部
25 ホース
26 予備ホース
31 目地マスキングテープ
32 目地型枠
33 固定金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10