(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033048
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ソフトカプセルの製造方法及びソフトカプセル
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20230302BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230302BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230302BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230302BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230302BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/02
A61P3/02
A23L5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163682
(22)【出願日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021137830
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503315676
【氏名又は名称】中日本カプセル 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山中 利恭
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康博
(72)【発明者】
【氏名】井辰 かおる
(72)【発明者】
【氏名】川口 勝大
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LE20
4B035LG02
4B035LG15
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP31
4C076AA56
4C076AA58
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC40
4C076DD25H
4C076DD38
4C076EE42H
4C076FF27
4C076FF37
(57)【要約】
【課題】安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータリーダイ式成形装置により、ゼラチン、及び、水を含有する皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルを成形するソフトカプセルの製造方法であり、前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、炭酸カルシウムの含有率が75質量%以上である炭酸カルシウム含有原料を添加することにより、前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、前記炭酸カルシウム含有原料が添加されていないことを除き同一の製造方法で製造されたソフトカプセルに比べて、ソフトカプセル皮膜の光透過率を低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーダイ式成形装置により、ゼラチン、及び、水を含有する皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルを成形するソフトカプセルの製造方法であり、
前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、炭酸カルシウムの含有率が75質量%以上である炭酸カルシウム含有原料を添加することにより、
前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、前記炭酸カルシウム含有原料が添加されていないことを除き同一の製造方法で製造されたソフトカプセルに比べて、前記ソフトカプセル皮膜の光透過率を低下させる
ことを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記皮膜原液に、ゼラチン100重量部に対して10重量部~40重量部の炭酸カルシウムを含有させる
ことを特徴とする請求項1に記載のソフトカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記皮膜原液に、ゼラチン100重量部に対して12重量部~30重量部の炭酸カルシウムを含有させる
ことを特徴とする請求項1に記載のソフトカプセルの製造方法。
【請求項4】
ロータリーダイ式成形装置で成形されたことにより形成された継ぎ目を有するソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルであり、
前記ソフトカプセル皮膜は、ゼラチン、及び、ゼラチン100重量部に対して10重量部~40重量部の炭酸カルシウムを含有しており、
炭酸カルシウムを含有しないことを除き同一構成であるソフトカプセルに比べて、ソフトカプセル皮膜の光透過率が小さい
ことを特徴とするソフトカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性を有するソフトカプセル皮膜を備えるソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルには、光に不安定な成分が内容物として充填されることがある。そのような場合、従前より、ソフトカプセル皮膜に遮光性を付与することを目的として、二酸化チタンが添加されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、二酸化チタンについては、DNAに損傷を与える遺伝毒性を有し発がん性のリスクがあるとの報告があり、安全性に関して懸念されている。そのため、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルが要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるソフトカプセルの製造方法は、
「ロータリーダイ式成形装置により、ゼラチン、及び、水を含有する皮膜原液から形成されたソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルを成形するソフトカプセルの製造方法であり、
前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、炭酸カルシウムの含有率が75質量%以上である炭酸カルシウム含有原料を添加することにより、
前記皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、前記炭酸カルシウム含有原料が添加されていないことを除き同一の製造方法で製造されたソフトカプセルに比べて、前記ソフトカプセル皮膜の光透過率を低下させる」ものである。
【0007】
「内容物」は、光に不安定な成分を含む内容物が適しており、医薬成分、健康食品成分、栄養補助成分などの目的物質を、油脂または油状物質に溶解又は懸濁させたもの、或いは、上記の目的物質自体が油状やペースト状であるものとすることができる。
【0008】
本発明は、ゼラチンを皮膜基剤として水に溶解させた皮膜原液に、炭酸カルシウム、または、炭酸カルシウム含有原料を添加するものである。炭酸カルシウムは、白く、水溶液に非常に難溶な粉末である。そのため、本来、ゼラチン製のソフトカプセル皮膜は透明であるところ、ソフトカプセル皮膜に炭酸カルシウムを分散させて白く不透明化することにより、ソフトカプセル皮膜に遮光性を付与し、ソフトカプセル皮膜に充填される内容物に、光に不安定な成分を含有させることができる。
【0009】
そして、炭酸カルシウムに代替して炭酸カルシウム含有原料を使用する場合、炭酸カルシウムの含有率が75質量%以上の炭酸カルシウム含有原料を使用する。これにより、詳細は後述するように、炭酸カルシウム100%ではない炭酸カルシウム含有原料であっても、炭酸カルシウムの有する白さと難溶性を損なうことなく、ソフトカプセル皮膜に遮光性を付与することができる。
【0010】
炭酸カルシウムは、骨強化剤などの栄養補助剤や、菓子などの食感を改善するために、従前より広く使用されている。需要者にとって、古くからの馴染みが深い食品添加物であるため、安全性に関する懸念なくソフトカプセル皮膜に添加することができる。また、炭酸カルシウムは、使用量に制限が設けられていない食品添加物であるため、使い勝手がよい利点を有している。
【0011】
本発明にかかるソフトカプセルの製造方法は、上記構成に加え、
「前記皮膜原液に、ゼラチン100重量部に対して10重量部~40重量部の炭酸カルシウムを含有させる」ものとすることができる。
【0012】
炭酸カルシウム含有原料ではなく炭酸カルシウムを使用し、その含有量をゼラチン100重量部に対して10重量部~40重量部とすることにより、詳細は後述するように、流延性、流延後の皮膜物性、白さや透けにくさに優れたソフトカプセル皮膜、を備えるソフトカプセルを製造することができる。
【0013】
特に、ロータリーダイ式成形装置を使用してソフトカプセルを成形する場合、皮膜原液に不溶成分が含まれていると、ヒートシールが阻害されるおそれがある。炭酸カルシウムはゼラチン水溶液に非常に難溶であるため、これを皮膜原液に含有させることによってヒートシール性が損なわれるおそれがあるところ、炭酸カルシウムの割合を上記範囲とすることにより、問題なくヒートシールを行ってソフトカプセルを製造することができる。
【0014】
本発明にかかるソフトカプセルの製造方法は、上記構成に加え、
「前記皮膜原液に、ゼラチン100重量部に対して12重量部~30重量部の炭酸カルシウムを含有させる」ものとすることができる。
【0015】
炭酸カルシウムの含有量をゼラチン100重量部に対して12重量部~30重量部とすることにより、詳細は後述するように、流延性、流延後の皮膜物性、白さや透けにくさに非常に優れたソフトカプセル皮膜、を備えるソフトカプセルを製造することができる。
【0016】
次に、本発明にかかるソフトカプセルは、
「ロータリーダイ式成形装置で成形されたことにより形成された継ぎ目を有するソフトカプセル皮膜に、内容物が充填されたソフトカプセルであり、
前記ソフトカプセル皮膜は、ゼラチン、及び、ゼラチン100重量部に対して10重量部~40重量部の炭酸カルシウムを含有しており、
炭酸カルシウムを含有しないことを除き同一構成であるソフトカプセルに比べて、ソフトカプセル皮膜の光透過率が小さい」ものである。
【0017】
これは、上記の製造方法のうち、皮膜原液に炭酸カルシウムを含有させる製造方法によって製造されるソフトカプセルの構成であり、上記の作用効果が発揮される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、安全性の高い成分によって遮光性を発揮するソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ソフトカプセル皮膜における炭酸カルシウムの含有量に対して光透過率をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態であるソフトカプセルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルについて説明する。
【0021】
本実施形態の製造方法は、ロータリーダイ式成形装置を使用してソフトカプセルを製造するものであり、ソフトカプセル皮膜の原液である皮膜原液を調製する皮膜原液調製工程と、ソフトカプセル皮膜の成形と同時にソフトカプセル皮膜内に内容物を充填し封入する成形・充填工程と、成形・充填工程後のソフトカプセルを乾燥させる乾燥工程と、を具備している。
【0022】
皮膜原液調製工程では、皮膜基剤であるゼラチンを加熱しながら水に溶解し、可塑剤としてのグリセリンと、炭酸カルシウム100%の粉末または粉末状の炭酸カルシウム含有原料とを、混合し脱泡して流延に適する粘度の皮膜原液を調製する。
【0023】
ロータリーダイ式成形装置は、一般的に、皮膜原液をフィルム状に成形するキャスティングドラムと、外表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配されたくさび状のセグメントと、セグメント内に内容物を圧入すると共にセグメントの先端から内容物を押し出すポンプとを主に具備している。
【0024】
そして、成形・充填工程では、まず、皮膜原液がキャスティングドラム表面に流延され、ゲル化することによりフィルム化される。次に、形成されたフィルムの二枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送入される。そして、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、二枚のフィルムがヒートシールされて上方に開放したカプセルが形成されると、この中にセグメントから押し出された内容物が充填される。これと同時に、二枚のフィルムが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に内容物が充填されたソフトカプセルが形成される。
【0025】
乾燥工程では、ソフトカプセル皮膜が所定の水分含有率となるまで、調湿乾燥機内で乾燥させる。
【0026】
ゼラチン、グリセリン、及び、水を含有し炭酸カルシウムを含有しない皮膜原液から、成形・充填工程、乾燥工程を経て得られる従来のソフトカプセル皮膜は、透明な外観を呈している。これに対し、本実施形態のソフトカプセルでは、白色を呈しゼラチン水溶液に溶解しにくい炭酸カルシウムが分散していることにより、ソフトカプセル皮膜が白く不透明化している。これにより、ソフトカプセル皮膜を光が透過しにくいため、光に不安定な成分を内容物に含有させることができる。
【0027】
次に、炭酸カルシウムによってソフトカプセル皮膜に遮光性を付与するために、適した条件を検討した結果を説明する。炭酸カルシウムをソフトカプセル皮膜に含有させない従来のゼラチン製ソフトカプセルの場合、ゼラチン100重量部に対し、グリセリン40重量部、水80重量部の割合で、良好なソフトカプセルを操作性良く製造することができる。そこで、この組成を基準として、ゼラチンに対する炭酸カルシウムの割合を異ならせた試料について、流延性、流延後の皮膜物性、乾燥工程後のソフトカプセル皮膜の白さ及び透けにくさについて、次の方法で評価した。
【0028】
<流延性>
皮膜原液の粘度を測定し、非常に流延し易い粘度であった場合を、流延性が非常に良好であるとして「〇」で評価し、ハンドリング性に若干劣るが流延が可能な場合を、流延性が良好であるとして「△」で評価し、粘度が高く流延に適していない場合を「×」で評価した。ここで、粘度は、B型粘度計を使用し(No.4ローター,回転速度6rpm)、温度60℃で測定した。
【0029】
<流延後の皮膜物性>
平滑な面上に皮膜原液を流延することによりシート状に成形されたソフトカプセル皮膜について、キャスティング面からのはがれやすさやべたつきの有無、手で引っ張ったときの伸びや切れの有無、ヒートシールが可能な可塑性の有無、を確認した。べたつきなくキャスティング面からはがすことができ、シートが切れることなく適度な伸びを有していると共に、ヒートシールが可能であった場合を、可塑性、柔軟性、弾力性、機械的強度を含む皮膜物性が非常に良好であるとして「○」で評価し、何れかの物性にやや不十分な点があるもののロータリーダイ式成形装置による成形が可能な場合を、皮膜物性が良好であるとして「△」で評価し、ロータリーダイ式成形装置による成形に適していない場合を、皮膜物性が不良であるとして「×」で評価した。
【0030】
<白さ、透け感>
乾燥工程を経たソフトカプセル皮膜を肉眼で確認し、炭酸カルシウムが均一に分散していることにより、白色を呈し透け感がない場合を、非常に優れているとして「○」で評価し、白色を呈しているがやや透け感がある場合を、優れているとして「△」で評価し、本来のゼラチン製ソフトカプセルの黄色っぽい色に近く透け感がある場合を、不良であるとして「×」で評価した。
【0031】
まず、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、グリセリン40重量部と一定にし、炭酸カルシウムの割合を異ならせた試料S1-1~S1-8について、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
炭酸カルシウムとしては、試料S1-1~S1-7では、商品名「コロカルソ-EX」(白石カルシウム株式会社製)を使用した。この炭酸カルシウムは、平均粒子径が5μm~10μmの狭い範囲に調整された炭酸カルシウム100%の粉末である。また、試料S1-8では、炭酸カルシウムとして商品名「カルエッセン-P」(白石カルシウム株式会社製)を使用した。この炭酸カルシウムは、一次粒子の平均粒子径が約0.04μmという非常に微細な径に調整されていると共に、凝集粒子(二次粒子)が容易にほぐれるように調整されている炭酸カルシウム100%の粉末である。
【0033】
【0034】
「流延性」、「流延後皮膜物性」、及び「白さ、透け感」の三つの評価について、全ての評価が「○」であった試料を、炭酸カルシウムによってソフトカプセル皮膜に遮光性を付与する作用に非常に優れているとして総合評価を「◎」とし、三つの評価のうち二つが「○」で一つが「△」であった試料を、炭酸カルシウムによってソフトカプセル皮膜に遮光性を付与する作用に優れているとして総合評価を「○」とし、それ以外の試料の総合評価を「×」とする。このような評価基準は、以降の他の試料についても同様とする。
【0035】
表1に総合評価を合わせて示すように、ゼラチン100重量部に対し炭酸カルシウムを10重量部~40重量部含有させた試料S1-2~S1-6、及び試料S1-8は、総合評価が「◎」または「○」であった。また、ゼラチン100重量部に対し炭酸カルシウムを12重量部~30重量部含有させた試料S1-3~S1-5は、総合評価が「◎」であった。一方、試料S1-1は、他の試料に比べて流延性にやや劣ると共に、流延後の皮膜物性が不良であった。これは、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合が多過ぎるためと考えられた。
【0036】
なお、試料S1-5と試料S1-8は、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合が12重量部と同一であるのに対し、試料S1-5は「白さ、透け感」の評価が「○」である一方、試料S1-8は試料S1-5に比べて透け感が大きく、「白さ、透け感」の評価が「△」であった。これは、試料S1-8に使用した炭酸カルシウムの平均粒子径が0.04μmと非常に微細であり、可視光の波長に比べて1桁小さいためと考えられた。
【0037】
実際に、炭酸カルシウムの添加によってソフトカプセル皮膜に遮光性が付与されているかどうかを確認するために、試料S1-1~S1-7と同一のシリーズで、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合(重量部)を異ならせた試料のソフトカプセル皮膜について、紫外可視赤外分光光度計を使用し、光透過率を測定した。また、比較のために、ゼラチン100重量部に対する水及びグリセリンの割合(重量部)が同一で、炭酸カルシウムを含有させないことのみで異なる試料についても、同様に光透過率を測定した。測定波長は、320nm、350nm、360nm、370nm、400nmの五種類とした。例として、320nm、360nm、及び、400nmの光に対する光透過率を、
図1に示す。
【0038】
図1に示すように、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合(重量部)が増加するに伴い、何れの波長でもソフトカプセル皮膜の光透過率が減少しており、炭酸カルシウムの添加によって、ソフトカプセル皮膜に遮光性が付与されていることが確認された。
【0039】
上記の試料S1-2~S1-7、及び試料S1-8で使用した炭酸カルシウムは、二種類とも炭酸カルシウム100%の粉末であった。次に、炭酸カルシウムの含有率が100%ではない炭酸カルシウム含有原料(粉末)を使用し、ゼラチン100重量部に対して、水80重量部、グリセリン40重量部、炭酸カルシウム含有原料12重量部と一定にし、炭酸カルシウム含有原料における炭酸カルシウムの含有率を異ならせた試料S2-1~S2-5、及び、試料S3-1~S3-3について、上記と同様の評価を行った。各試料に使用した炭酸カルシウム含有原料の商品名、出所、成分表示、及び、炭酸カルシウム含有率を表2に示し、評価結果を表3に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
表3には、炭酸カルシウム含有原料における炭酸カルシウム含有量を、ゼラチン100重量部に対する割合(重量部)で示している。表3から明らかなように、何れの試料も総合評価が「◎」または「○」である。ここで、試料S2-1~S2-5、及び試料S3-1、S3-2については、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合(重量部)は、表1を用いて説明した総合評価が「◎」または「○」の試料におけるゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合の範囲(10重量部~40重量部)に含まれる。一方、試料料S3-3については、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合は9.0重量部であり、表1を用いて説明した望ましい範囲(10重量部~40重量部)から外れている。
【0043】
ソフトカプセル皮膜を白く不透明にするために着眼すべきは、ソフトカプセル皮膜に炭酸カルシウムをどれだけ含有させるかではなく、炭酸カルシウム以外の材料を含んでいたとしても、白色系で、且つ、ゼラチン水溶液に溶解しにくい粉末をどれだけ含有させるかであると考えられた。つまり、表3に示した数値のうち、ソフトカプセル皮膜を白く不透明にするために重要であるのは、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウムの割合(重量部)ではなく、ゼラチン100重量部に対する炭酸カルシウム含有原料の割合(重量部)である。そして、炭酸カルシウム含有原料における炭酸カルシウム含有率(重量%)が最も小さい試料S3-3の数値を参照すると、炭酸カルシウム100%の粉末に代替して炭酸カルシウム含有原料を使用する場合、炭酸カルシウム含有率が少なくとも75質量%以上であれば、炭酸カルシウムの白さや難溶性を損なうことなく、炭酸カルシウム含有原料によってソフトカプセル皮膜に遮光性を付与することができると考えられた。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
例えば、本実施形態の製造方法で製造されるソフトカプセルは、光に不安定な成分を内容物とする場合に適しているが、それ以外の成分を内容物に含有させることができる。