(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033057
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/12 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
H02K21/12 G
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181726
(22)【出願日】2021-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021138077
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 高良
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621BB02
5H621GB08
5H621HH01
(57)【要約】
【課題】発電効率のよい発電機を提供する。
【解決手段】発電機(1)は、筒形に周回するように巻かれた空芯コイル(2)と、空芯コイル(2)の周回部分を貫通して延びる回転自在な回転軸(3)と、空芯コイル(2)の空芯部内に配置され、回転軸(3)に固定され、回転軸と一体となって回転する主回転磁石(4)と、空芯コイル(2)の空芯部内に配置され、回転する主回転磁石(4)の磁力の影響を受けて回転する副回転磁石(5)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形に周回するように巻かれた空芯コイルと、
前記空芯コイルの周回部分を貫通して延びる回転自在な回転軸と、
前記空芯コイルの空芯部内に配置され、前記回転軸に固定され、前記回転軸と一体となって回転する主回転磁石と、
前記空芯コイルの空芯部内に配置され、回転する前記主回転磁石の磁力の影響を受けて回転する副回転磁石とを備える、発電機。
【請求項2】
前記主回転磁石は、極性の異なる第1極性部および第2極性部を有し、
前記副回転磁石は、前記主回転磁石の一方の極性部に対面する位置に設けられた第1副磁石と、前記主回転磁石の他方の極性部に対面する位置に設けられた第2副磁石とを有する、請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記空芯コイルは、第1ボビンに巻かれた第1空芯コイルと、第2ボビンに巻かれた第2空芯コイルとを含み、
前記第1ボビンと前記第2ボビンとは、前記回転軸を間に挟んだ状態で端面同士が当接しており、
前記第1副磁石は、前記第1空芯コイルの空芯部内に配置され、
前記第2副磁石は、前記第2空芯コイルの空芯部内に配置される、請求項2に記載の発電機。
【請求項4】
前記主回転磁石と、前記副回転磁石とは、磁力の吸引力によって吸着している、請求項1~3のいずれかに記載の発電機。
【請求項5】
前記主回転磁石および前記副回転磁石の少なくともいずれか一方の表面には、被覆膜が形成されている、請求項1~4のいずれかに記載の発電機。
【請求項6】
前記主回転磁石の回転中心軸線および前記副回転磁石の回転中心軸線の両者に直交する仮想面は、前記空芯コイルの中心軸線に対して傾斜しており、
前記空芯コイルの端面には、前記仮想面に近接または交差する位置にヨーク板が設けられている、請求項1~5のいずれかに記載の発電機。
【請求項7】
前記主回転磁石は、円筒形磁石であり、
前記副回転磁石は、球形または円筒形磁石であり、
前記副回転磁石の直径は、前記空芯コイルの空芯部を形成する内壁と前記主回転磁石との間の間隔よりも大きい、請求項1~6のいずれかに記載の発電機。
【請求項8】
前記副回転磁石は、前記空芯コイルの空芯部を形成する内壁に設けられた支持軸によって回転自在に保持され、
前記主回転磁石と前記副回転磁石との間には隙間が設けられている、請求項1~3のいずれかに記載の発電機。
【請求項9】
前記回転軸を回転操作する回転操作機構をさらに備え、
前記回転操作機構は、
前記空芯コイルの外で前記回転軸とともに回転する回転爪と、
前記回転爪に係合し得るように変位可能に設けられた操作部とを備える、請求項1~8のいずれかに記載の発電機。
【請求項10】
前記回転爪は、回転中心回りの180°の位置に第1爪および第2爪を有し、
前記操作部は、1回目の操作で前記第1爪に係合し、2回目の操作で前記第2爪に係合する、請求項9に記載の発電機。
【請求項11】
前記回転操作機構は、前記操作部を非係合位置にもたらすように付勢する付勢部材をさらに備える、請求項9または10に記載の発電機。
【請求項12】
前記回転爪と前記操作部とは、ワンウェイクラッチの構造を有する、請求項9~11のいずれかに記載の発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
操作部の操作によって発生した運動エネルギーを電磁誘導方式によって電気エネルギーに変換して発電する発電装置が知られている。このような発電装置は、たとえば、トイレ室、浴室、キッチン等の水廻り設備において、電子機器を遠隔操作するリモコン装置に組み込まれている。
【0003】
発電機を用いた技術として、例えば、特許第6647672号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1は、筒形に周回するように巻かれた空芯コイルと、空芯コイルの周回部分を貫通して延び、回転自在な回転軸と、空芯コイルの空芯部に配置され、回転軸に固定されたマグネットとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発電機は、2つの空芯コイル内部に1つずつ配置されたマグネットが、回転軸の回転に伴い回転することで発電する。発電機は、マグネットが空芯部内でスムーズに回転するため引っ掛かりがなく、軽い押し力によって発電できるものの、押しボタンを押下した際の手応えが得られにくい。
【0006】
本発明の目的は、軽い押し力で発電しつつ、操作時にクリック感を得ることのできる発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る発電機は、筒形に周回するように巻かれた空芯コイルと、空芯コイルの周回部分を貫通して延びる回転自在な回転軸と、空芯コイルの空芯部内に配置され、回転軸に固定され、回転軸と一体となって回転する主回転磁石と、空芯コイルの空芯部内に配置され、回転する主回転磁石の磁力の影響を受けて回転する副回転磁石とを備える。
【0008】
好ましくは、主回転磁石は、極性の異なる第1極性部および第2極性部を有し、副回転磁石は、主回転磁石の一方の極性部に対面する位置に設けられた第1副磁石と、主回転磁石の他方の極性部に対面する位置に設けられた第2副磁石とを有する。
【0009】
好ましくは、空芯コイルは、第1ボビンに巻かれた第1空芯コイルと、第2ボビンに巻かれた第2空芯コイルとを含み、第1ボビンと第2ボビンとは、回転軸を間に挟んだ状態で端面同士が当接している。この際、第1副磁石は、第1空芯コイルの空芯部内に配置され、第2副磁石は、第2空芯コイルの空芯部内に配置されることが好ましい。
【0010】
好ましくは、主回転磁石と、副回転磁石とは、磁力の吸引力によって吸着している。
【0011】
好ましくは、主回転磁石および副回転磁石の少なくともいずれか一方の表面には、被覆膜が形成されている。
【0012】
好ましくは、主回転磁石の回転中心軸線および副回転磁石の回転中心軸線の両者に直交する仮想面は、空芯コイルの中心軸線に対して傾斜しており、空芯コイルの端面には、仮想面に近接または交差する位置にヨーク板が設けられている。
【0013】
好ましくは、主回転磁石は、円筒形磁石であり、副回転磁石は、球形または円筒形磁石である。この際、副回転磁石の直径は、空芯コイルの空芯部を形成する内壁と主回転磁石との間の間隔よりも大きいことが好ましい。
【0014】
好ましくは、副回転磁石は、空芯コイルの空芯部を形成する内壁に設けられた支持軸によって回転自在に保持され、主回転磁石と副回転磁石との間には隙間が設けられている。
【0015】
好ましくは、回転軸を回転操作する回転操作機構をさらに備える。回転操作機構は、空芯コイルの外で回転軸とともに回転する回転爪と、回転爪に係合し得るように変位可能に設けられた操作部とを備える。
【0016】
好ましくは、回転爪は、回転中心回りの180°の位置に第1爪および第2爪を有し、操作部は、1回目の操作で第1爪に係合し、2回目の操作で第2爪に係合する。
【0017】
好ましくは、回転操作機構は、操作部を非係合位置にもたらすように付勢する付勢部材をさらに備える。
【0018】
好ましくは、回転爪と操作部とは、ワンウェイクラッチの構造を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発電機によれば、回転軸を中心に回転する主回転磁石と、主回転磁石からの磁力を受けて磁性の向きの反転を繰り返す副回転磁石とを利用することで、シンプルな構造でありながら発電効率を向上することができる。
【0020】
また、本発明の発電機は、主回転磁石と、副回転磁石との磁力の吸引・反発動作を利用することで、操作部を軽く操作するだけで十分なクリック感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1における発電機の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における発電機の断面図であり、
図1における線II-IIで切断した図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における発電機の断面図であり、
図1における線III-IIIで切断した図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における発電機について、回転操作機構の動作と、それに対応する主回転磁石および副回転磁石の動作とを表す図であり、(a)は回転操作機構の押しボタンの操作前状態を示し、(b)は押しボタンの操作途中状態を示し、(c)は押しボタンの操作後状態を示す。
【
図5】本発明の実施の形態2における発電機の断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態3における発電機の断面図である。
【
図7】本発明に係る空芯コイルのボビンおよび回転軸の取付状態を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態4における発電機の空芯コイル内部のみを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
<実施の形態1>
図1~4を参照して、本発明の一実施形態の発電機1について説明する。なお、
図1において、矢印A1で示す方向を上下方向といい、矢印A2で示す方向を左右方向といい、矢印A3で示す方向を前後方向という。
【0024】
(構成について)
発電機1は、筒形に周回するように巻かれた空芯コイル2と、空芯コイル2の周回部分を貫通して延びる回転自在な回転軸3と、空芯コイル2の空芯部内に配置され、回転軸3に固定され、回転軸3と一体となって回転する主回転磁石4と、空芯コイル2の空芯部内に配置され、回転する主回転磁石4の磁力の影響を受けて回転する副回転磁石5とを備える。
【0025】
図1,2を参照して、本実施の形態の空芯コイル2は、上下方向に隣接して配置された第1空芯コイル21と、第2空芯コイル22とを含む。第1空芯コイル21および第2空芯コイル22は、略同一の構成であり、第1空芯コイル21は、第1ボビン23に第1コイル25が巻かれた構成を備え、第2空芯コイル22は、第2ボビン24に第2コイル26が巻かれた構成を備える。第1および第2ボビン23,24は両端フランジ付の円筒形であり、第1ボビン23の下部フランジと第2ボビン24の上部フランジとは、回転軸3を間に挟んでその面同士が当接するように設けられている。
【0026】
空芯コイル2は、ハウジング11に固定されている。ハウジング11は、空芯コイル2と、後述する回転操作機構7の少なくとも一部分とを収容できればよく、その形状については限定されない。ハウジング11は、非磁性体で形成されている。非磁性体とは、強磁性体ではない物質で、常磁性体、反磁性体および反強磁性体を含む。非磁性体として、例えば、アルミニウムなどの金属、プラスチックなどの合成樹脂などが挙げられる。本実施の形態では、ハウジング11は、合成樹脂で形成されることが好ましい。
【0027】
図1、3、7を参照して、回転軸3は、第1ボビン23の下部フランジと第2ボビン24の上部フランジとに挟まれて延びている。回転軸3を受け入れるために、第1ボビン23の下部フランジには下方開放の半円形溝部が設けられ、第2ボビン24の上部フランジには上方開放の半円形溝部が設けられている。回転軸3は、上下に対向する2つの半円形溝部によって形成された貫通穴内を回転自在に挿通している。
【0028】
回転軸3は、空芯コイル2の周回部分を貫通して延びている。ここで「コイルの周回部分」とは、第1および第2ボビン23,24に巻かれている第1および第2空芯コイル21,22の周回軌道が位置する筒形形状部分である。たとえば第1空芯コイル21および第2空芯コイル22が離れて位置する場合であっても、第1空芯コイル21と第2空芯コイル22との間に位置する領域は「コイルの周回部分」に含まれる。
【0029】
コイルを巻くボビンの形状は円筒形に限られず、四角形等の角形であってもよい。また、空芯コイルの数は、2個に限られず、1個または3個以上であってもよい。本実施の形態における発電機1は、1つの空芯コイルで形成される場合は勿論のこと、2つ以上の空芯コイルを重ねて形成されたものであっても「1つの空芯コイル」と同等のものであると見做している。
【0030】
図2,3を参照して、回転軸3の空芯部27に位置する部分には、主回転磁石4が固定されている。主回転磁石4は、たとえば接着、圧嵌などの手法で回転軸3に固定されており、回転軸3と共に回転する。主回転磁石4として使用する磁石は、永久磁石である。主回転磁石4は、その外周面および内周面が着磁されている。主回転磁石4の材料は特に限定されないが、高い磁力を示す観点から、Nd‐Fe‐B焼結磁石(ネオジム磁石)を用いることが好ましい。
【0031】
本実施の形態の主回転磁石4は、回転軸3を中心とする円筒形状であり、その外周面に極性の異なる第1極性部41および第2極性部42を有する。なお、「外周面」とは、主回転磁石4の外周に沿うように延びる円周面である。本実施の形態の主回転磁石4は、平面断面視リング形状の円筒磁石であるが、その形状または個数については限定されない。たとえば、2つ以上の永久磁石を回転軸3に固定して、その外周面が第1極性部41および第2極性部42となるよう構成してもよい。なお、第1極性部41および第2極性部42は、主回転磁石4の外周面において、180°を境に区別されていることが好ましい。
【0032】
空芯コイル2の空芯部27内には、副回転磁石5が配置される。副回転磁石5は、主回転磁石4の一方の極性部に対面する位置に設けられた第1副磁石51と、主回転磁石4の他方の極性部に対面する位置に設けられた第2副磁石52とを有する。副回転磁石5として使用する磁石は永久磁石であり、主回転磁石4と、副回転磁石5とは、磁力の吸引力によって吸着する。本実施の形態における副回転磁石5は固定されていないため、磁力の影響は受けるものの、空芯部27を比較的自由に動くことができる。
【0033】
本実施の形態の副回転磁石5は、球形である。この際、副回転磁石5の直径は、空芯コイル2の空芯部27を形成する内壁28と主回転磁石4との間の間隔よりも大きいことが好ましい。これにより、第1副磁石51は第1空芯コイル21の空芯部内に配置され、第2副磁石52は第2空芯コイル22の空芯部内に配置されるため、副回転磁石5同士が互いに吸着してしまうことを防止できる。
【0034】
図4を参照して、主回転磁石4の回転中心軸線および副回転磁石5の回転中心軸線の両者に直交する仮想面は、空芯コイル2の中心軸線に対して傾斜しており、空芯コイル2の上下方向両端面には、仮想面に近接または交差する位置にヨーク板6が設けられている。なお、ヨークとは、マグネットが持つ吸着力を増幅する軟鉄であり、鉄を含んでいればよい。
【0035】
第1ヨーク板61は、第1ボビン23の上部フランジ上面に設けられ、主回転磁石4が時計回りに回転する場合は右側に設けられる。同様に、第2ヨーク板62は、第2ボビン24の下部フランジ下面に設けられ、主回転磁石4が時計回りに回転する場合は左側に設けられる。これにより、副回転磁石5が主回転磁石4と吸着した状態を維持することができ、空芯部27内における副回転磁石5のがたつきを抑制できる。
【0036】
ヨーク板6は、磁性の切り替え易さの観点から軟磁性材料であればよく、たとえば鉄材、SUS(ステンレス)材、SKH(ハイスピード鋼)材、フェライト材などの材料で形成される。これにより、ヨーク板6に近接する副回転磁石5の磁性と対応する磁性体に切り替わることができ、副回転磁石5の空芯部27内におけるがたつきを抑制できる。
【0037】
図1を参照して、本実施の形態の発電機1は、回転軸3を回転操作する回転操作機構7をさらに備える。回転操作機構7は、空芯コイル2の外で回転軸3とともに回転する回転爪71と、回転爪71に係合し得るように変位可能に設けられた操作部72とを備える。
【0038】
本実施の形態の回転爪71は、空芯コイル2から露出した回転軸3の一方端部に固定されている。回転爪71は、回転中心回りの180°の位置に第1爪74および第2爪75を有し、操作部72は、1回目の操作で第1爪74に係合し、2回目の操作で第2爪75に係合する突起部76を有する。また、第1爪74および第2爪75の位置は、同じ回転軸3上に設けられた主回転磁石4の第1極性部41および第2極性部42の境界位置と略等しいことが好ましい。これにより、最も効率よく空芯部27内の極性を切換えることができ、空芯コイル2における発電効率を向上することができる。
【0039】
回転操作機構7は、操作部72を非係合位置にもたらすように付勢する付勢部材73をさらに備える。付勢部材73は、たとえば押しばねなどの弾性部材である。
【0040】
(動作について)
本実施の形態の回転操作機構7は、回転爪71と操作部72とで形成された、ワンウェイクラッチの構造を有する。
図4を参照して、回転爪71および操作部72の動作について説明する。
【0041】
図4(a)は、操作部72を押下していない、非係合状態を示す図である。左図を参照して、第1および第2副磁石51,52は、主回転磁石4の磁力の影響を最も受ける位置である第1および第2極性部41,42の略中央位置に配置されている。右図を参照して、第1爪74および突起部76は、1回目の操作が可能な状態に配置されている。
【0042】
図4(b)は、操作部72を押下した際の係合状態を示す図である。左図を参照して、主回転磁石4は時計回りに略90°回転した状態となる。第1および第2副磁石51,52は空芯コイルの内壁28と主回転磁石4との間の隙間を通過できない。そのため、主回転磁石4との吸引力に引っ張られ、第1副磁石51は空芯部内の紙面右側に、第2副磁石52は空芯部内の紙面左側に配置される。なお、
図4(b)に示す副回転磁石5の極性は、反転途中の状態を例示的に示すものである。右図を参照して、操作部72を押下したことで、付勢部材73は付勢力を有している状態であり、これ以上押下すると第1爪74と突起部76とが非係合状態となる。
【0043】
図4(b)の状態からさらに操作部72を押下すると、主回転磁石4は90°以上回転することになるため、次の極性部のうち、磁力が最も強い部分が副回転磁石5を吸引できる状態となる。
図4(b)の場合を例に挙げて説明すると、第2極性部42が第1副磁石51を吸引できる状態となる。これにより、たとえば第1副磁石51は、主回転磁石4のS極と第1副磁石51のN極との吸引力を利用して勢いよく反転する。同時に、第2副磁石52は、主回転磁石4のN極と第2副磁石52のS極との吸引力を利用して勢いよく反転する。また、第1爪74と突起部76との係合は外れ、主回転磁石4の回転に伴って、第2爪75が紙面右側に位置するよう移動する。これにより、1回目の操作は終了する。操作部72を開放すると、操作部72は付勢部材73の付勢力によって非係合状態に戻ることができる。なお、操作部72には、突起部76がたわむことができる空洞部が設けられている。これにより、操作部72は、回転爪71に動作的な影響を与えずに非係合状態に戻ることができる。
【0044】
図4(c)は、1回目の操作後の非係合状態を示す図である。左図を参照して、第1および第2副磁石51,52は、1回目の操作前とは反対の主回転磁石4の極性部、すなわち第1副磁石51は第2極性部42と、第2副磁石52は第1極性部41と吸着している。右図を参照して、第2爪75および突起部76は、2回目の操作が可能な状態に配置されている。
【0045】
なお、本実施の形態では、回転操作機構7が、回転爪71および操作部72で形成された場合について説明したが、このような機構に限定されない。すなわち、回転操作機構7は、たとえば回転軸3に取り付けられたピニオンギアと、ピニオンギアに噛合うように配置され、スライド移動するラックギアとで形成されることとしてもよい。
【0046】
空芯コイル2の一端は、整流部(図示せず)に接続されており、整流部(図示せず)によって整流された電流が外部部材(図示せず)に伝達される。これにより、空芯コイル2で発生した電流によって外部部材を起動させることができる。なお、空芯コイル2に発生した交流電流を、整流することなく外部部材に伝達してもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、回転軸3と、主回転磁石4と、副回転磁石5とを「回転体」と見做した場合、ハウジング11と、空芯コイル2と、ヨーク板6とを「固定体」と見做すことができる。つまり、空芯コイル2自体を回転、揺動、あるいは振動させなくても、回転する主回転磁石4および副回転磁石5の磁力によって軽やかに電流を発生させることができる。換言すれば、本実施の形態の発電機1は、動きに対する発電効率がよいという特徴を備える発電機である。
【0048】
本実施の形態の発電機1は、たとえば回転体が180°回転するだけで無線リモコンの動作に十分な電力を発電することができるように設計した場合、操作部72と無線リモコンの入力部とを接続し、主回転磁石4の外周を2極着磁とすれば、回転体が180°回転する間に、副回転磁石5における磁性の向きが1回反転することになる。つまり、無線リモコンの入力部を1回押下するだけで、副回転磁石5の磁性が反転することによる程よいクリック感を得ることができる。「クリック感」とは、スイッチを押下した際に感じる音または手応えである。すなわち、本実施の形態の発電機1は、たとえば無線リモコンなどの小型機材の発電機として好適に用いることができる。
【0049】
また、本実施の形態の発電機1は、操作部72をゆっくり押下しても、素早く押下しても、回転体の回転スピードは変わらないため、同じ発電量を得ることができる。これにより、1回の操作で同じ発電量を得ることができ、安定した操作性を得ることができる。
【0050】
<実施の形態2>
図5を参照して、本発明の実施の形態2の発電機1Aについて説明する。
図5は、本実施の形態における発電機1Aの断面図である。本実施の形態2の発電機1Aは、基本的には実施の形態1の発電機1と同様の構成を備えているが、第1副磁石51Aおよび第2副磁石52Aの形状について異なる。
【0051】
図5に示すように、本実施の形態における発電機1Aは、第1副磁石51Aおよび第2副磁石52Aが円筒形磁石である。副回転磁石5Aは、主回転磁石4の磁力の影響を受けて回転可能な寸法であればよい。
【0052】
本実施の形態の発電機1Aは、副回転磁石5Aが円筒形磁石である。これにより、副回転磁石5Aを球状磁石とする場合よりも回転方向が定まるため、安定した発電効率を得ることができる。
【0053】
〈実施の形態3〉
図6を参照して、本発明の実施の形態3の発電機1Bについて説明する。
図6は、本実施の形態における発電機1Bの断面図である。本実施の形態3の発電機1Bは、基本的には実施の形態2の発電機1Aと同様の構成を備えているが、第1副磁石51Bおよび第2副磁石52Bの構成が相違する点およびヨーク板の構成を備えていない点について異なる。
【0054】
副回転磁石5Bは、空芯コイル2の空芯部27を形成する内壁28に設けられた支持軸53,54によって回転自在に保持されている。すなわち、第1副磁石51Bは、第1空芯コイル21の空芯部内において第1支持軸53によって保持され、第2副磁石52Bは、第2空芯コイル22の空芯部内において第2支持軸54によって保持されている。第1支持軸53と、第2支持軸54と、回転軸3とは、互いの回転軸線が平行となるように設けられている。これにより、主回転磁石4の回転に応じて、副回転磁石5Bがスムーズに回転できる。
【0055】
主回転磁石4と副回転磁石5Bとの間には、隙間が設けられている。これにより、主回転磁石4および副回転磁石5Bの回転に伴う摩耗を防止でき、摺動面にごみが挟まってしまう等の不具合を防止できる。
【0056】
また、本実施の形態の発電機1Bによれば、副回転磁石5Bの位置は固定されている。そのため、発電効率を向上する観点から、主回転磁石4の第1および第2極性部41,42に対面する各々の空芯部内に、複数の副回転磁石5Bを設けてもよい。
【0057】
〈実施の形態4〉
図8を参照して、本発明の実施の形態4の発電機1Cについて説明する。
図8は、本実施の形態における発電機1Cの空芯コイル2内部のみを示す断面図である。実施の形態4の発電機1Cは、基本的には実施の形態1の発電機1と同様の構成を備えているが、
図8に示すように、主回転磁石4の周囲に被覆膜8を形成する点が異なる。
【0058】
被覆膜8は、たとえばチューブ形状であり、内面側に円筒形状の主回転磁石4を収容する。換言すれば、主回転磁石4と副回転磁石5との間には被覆膜8が介在しており、両者の外面が直接接することがない。これにより、主回転磁石4と副回転磁石5とが直接接することによる摩耗を防止することができ、発電機1Cの耐久性を向上することができる。また、主回転磁石4または副回転磁石5の表面にたとえばめっき処理などが施されている場合であっても、それが剥がれ落ちてしまうことを防止することができる。なお、被覆膜8を形成しても磁気特性に影響は生じない。すなわち本実施の形態における発電機1Cは、発電機1,1A、1Bと同様の発電量を得ることができるし、クリック感も十分に得ることができるのは勿論である。
【0059】
被覆膜8は、主回転磁石4または副回転磁石5の一方を覆う膜形態であればよく、たとえばフッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂など、種々の材料で形成することができる。形成容易の観点から、好ましくは樹脂製のチューブであり、100℃以上の熱を加えることで収縮することのできる熱収縮チューブである。これにより、熱を加えるだけで、被覆膜8を主回転磁石4に容易に密着させることができる。
【0060】
なお、被覆膜8は、少なくとも主回転磁石4または副回転磁石5のいずれか一方の表面を覆っていればよい。つまり、被覆膜8は、球形または円筒形状の副回転磁石5の表面を被覆することもできる。この場合、副回転磁石5が空芯コイル2の内壁28に直接接することも防止できるため、発電機1Cの耐久性をさらに向上することができる。
【0061】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A,1B,1C 発電機、2,2A,2B 空芯コイル、3 回転軸、4 主回転磁石、5,5A,5B 副回転磁石、6 ヨーク板、7 回転操作機構、8 被覆膜、21 第1空芯コイル、22 第2空芯コイル、51,51A,51B 第1副磁石、52,52A,52B 第2副磁石、71 回転爪、72操作部。