(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033059
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】光起電力電池セル、電池モジュール及び製造プロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
H01L31/04 262
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183354
(22)【出願日】2021-11-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】202110998160.X
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521376620
【氏名又は名称】上海晶科緑能企業管理有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】イエン シュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー クン
(72)【発明者】
【氏名】リウ チャンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シンユー
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA04
5F151CB27
5F151FA10
5F151FA13
5F151FA14
5F151FA15
5F151FA16
5F151FA17
5F151FA21
5F151FA30
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA04
5F251CB27
5F251FA10
5F251FA13
5F251FA14
5F251FA15
5F251FA16
5F251FA17
5F251FA21
5F251FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光起電力電池セル、電池モジュール及び製造プロセスを提供する。
【解決手段】光起電力電池セル1はシリコン基板、及びシリコン基板の少なくとも1つの面に位置するパッシベーション層を含む。シリコン基板の少なくとも1つの面にはグリッド線11、12、溶接点2及び延在線が印刷され、グリッド線は交差して設けられたメイングリッド11とサブグリッド12を含み、サブグリッド12はシリコン基板に接触する。延在線の両端はそれぞれメイングリッド11と溶接点Aに接続され、且つ延在線はシリコン基板に接触する。
【効果】延在線がメイングリッドと溶接点にそれぞれ接続されるようにすることによって、電池セルの原単位の低減を図りつつ、溶接点とメイングリッドとの接続の信頼性を保証することができるとともに、グリッド線と溶接点との接続部位が溶接合金によって侵食される場合に、依然として効果的な電流収集能力を保証することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力電池セルであって、
シリコン基板と、前記シリコン基板の少なくとも1つの面に位置するパッシベーション層とを含み、
前記シリコン基板の少なくとも1つの面には、グリッド線、溶接点及び延在線が印刷され、前記グリッド線は、交差して設けられたメイングリッド及びサブグリッドを含み、前記サブグリッドは、前記シリコン基板と接触し、
前記延在線の両端は、それぞれ前記メイングリッドと前記溶接点に接続され、且つ前記延在線は、前記シリコン基板に接触する、ことを特徴とする光起電力電池セル。
【請求項2】
前記メイングリッドと前記溶接点は、いずれも前記シリコン基板と接触しない、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項3】
前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線の寸法は、前記溶接点の寸法の3倍以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項4】
前記延在線の一部領域は、前記メイングリッドと重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記メイングリッドとの重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さく、及び/又は
前記延在線の一部領域は、前記溶接点と重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記溶接点との重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項5】
前記延在線の幅は、前記メイングリッドの幅の1~2倍である、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項6】
前記延在線の形状は、矩形状、台形状及び楕円形状のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項7】
前記延在線の高さは、溶接点から前記メイングリッドの位置する方向に向かって徐々に小さくなる、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項8】
光起電力電池モジュールであって、
正面から背面まで順に、ガラス、第1接着フィルム材料、光起電力電池ストリング、第2接着フィルム材料及びバックプレートを含み、前記光起電力電池ストリングは、複数の光起電力電池から構成され、前記光起電力電池は、請求項1~7のいずれか一項に記載の光起電力電池セルである、ことを特徴とする光起電力電池モジュール。
【請求項9】
前記光起電力電池セル同士は、溶接ワイヤによって接続され、前記溶接ワイヤの直径は、0.2~0.3mmである、ことを特徴とする請求項8に記載の光起電力電池モジュール。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光起電力電池セルを製造するための製造プロセスであって、
少なくとも1つの面にパッシベーション層を有する光起電力基板を提供するステップと、
前記光起電力基板に非ファイヤースルーペーストを用いて溶接点とメイングリッドをそれぞれ印刷するステップと、
前記光起電力基板にファイヤースルーペーストを用いて延在線とサブグリッドをそれぞれ印刷し、前記延在線を前記溶接点と前記メイングリッドにそれぞれ接続するステップと、を含むことを特徴とする製造プロセス。
【請求項11】
前記延在線に用いられるファイヤースルーペーストと、前記サブグリッドに用いられるファイヤースルーペーストとは、異なる、ことを特徴とする請求項10に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光起電力電池の技術分野に関し、特に光起電力電池セル、電池モジュール及び製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力電池のコストの低減に伴い、メタライズ原単位の低減は、必然的な傾向にある。ここで、マルチメイングリッドの技術では、より多くの数のメイングリッドを使用することができ、また、溶接点の面積を減少させることができ、これは、原単位を低減することができるが、小さい溶接点ではメイングリッドとの接続の信頼性を保証しにくくなり、電流の収集能力を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、上記した従来の技術において溶接点の面積の減少が原単位の低減及び溶接点とメイングリッドとの接続の信頼性の保証を同時に両立することができないという問題を解決するために、光起電力電池セル、電池モジュール及び製造プロセスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の第1態様は、光起電力電池セルを提供し、前記光起電力電池セルは、シリコン基板と、前記シリコン基板の少なくとも1つの面に位置するパッシベーション層とを含み、前記シリコン基板の少なくとも1つの面にはグリッド線、溶接点及び延在線が印刷され、前記グリッド線は、交差して設けられたメイングリッド及びサブグリッドを含み、前記サブグリッドは、前記シリコン基板と接触し、前記延在線の両端は、それぞれ前記メイングリッドと前記溶接点に接続され、且つ前記延在線は、前記シリコン基板に接触する。
【0005】
一つの可能な実施形態において、前記メイングリッドと前記溶接点は、いずれも前記シリコン基板と接触しない。
【0006】
一つの可能な実施形態において、前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線の寸法は、前記溶接点の寸法の3倍以下である。
【0007】
一つの可能な実施形態において、前記延在線の一部領域は、前記メイングリッドと重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記メイングリッドとの重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さく、及び/又は、
前記延在線の一部領域は、前記溶接点と重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記溶接点との重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さい。
【0008】
一つの可能な実施形態において、前記延在線の幅は、前記メイングリッドの幅の1~2倍である。
【0009】
一つの可能な実現形態において、前記延在線の形状は、矩形状、台形状及び楕円形状のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0010】
一つの可能な実現形態において、前記延在線の高さは、溶接点から前記メイングリッドの位置する方向に向かって徐々に小さくなる。
【0011】
本願の第2態様は、光起電力電池モジュールを提供し、前記光起電力電池モジュールは、正面から背面まで順に、ガラス、第1接着フィルム材料、光起電力電池ストリング、第2接着フィルム材料及びバックプレートを含み、前記光起電力電池ストリングは、複数の光起電力電池から構成され、前記光起電力電池は、本願の第1態様に係る光起電力電池セルである。
【0012】
一つの可能な実施形態において、前記光起電力電池セル同士は、溶接ワイヤによって接続され、前記溶接ワイヤの直径は、0.2~0.3mmである。
【0013】
本願の第3態様は、さらに、本願の第1態様に係る光起電力電池セルを製造するための製造プロセスであって、
少なくとも1つの面にパッシベーション層を有する光起電力基板を提供するステップと、
前記光起電力基板に非ファイヤースルーペーストを用いて溶接点とメイングリッドをそれぞれ印刷するステップと、
前記光起電力基板にファイヤースルーペーストを用いて延在線とサブグリッドをそれぞれ印刷し、前記延在線を前記溶接点と前記メイングリッドにそれぞれ接続するステップと、を含むことを特徴とする製造プロセスを提供している。
【0014】
一つの可能な実施形態において、前記延在線に用いられるファイヤースルーペーストは、前記サブグリッドに用いられるファイヤースルーペーストとは、異なる。
【発明の効果】
【0015】
本願による技術案は、以下の有益な効果を奏することができる。
即ち、本願による光起電力電池セル、電池モジュール及び製造プロセスは、延在線がメイングリッドと溶接点にそれぞれ接続されるようにすることによって、電池セルの原単位の低減を図りつつ、溶接点とメイングリッドとの接続の信頼性を保証することができるとともに、グリッド線と溶接点との接続部位が溶接合金によって侵食される場合に、依然として効果的な電流収集能力を保証することができる。
【0016】
以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、単に例示的なものであり、本願を限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここでの図面は、明細書に組み込まれて明細書の一部を構成し、本願に適した実施形態を示し、明細書とともに本願の原理を説明するために用いられる。
【
図1】本願の実施形態による光起電力電池セルの構造概略図である。
【
図3】溶接点、延在線及びメイングリッドが接続された状態図(1)である。
【
図4】溶接点、延在線及びメイングリッドが接続された状態図(2)である。
【
図5】溶接点、延在線及びメイングリッドが接続された状態図(3)である。
【
図6】溶接点、延在線及びメイングリッドが接続された状態図(4)である。
【
図7】本願の実施形態による光起電力電池セルの断面概略図である。
【
図8】本願の実施形態による光起電力電池モジュールの構造概略図である。
【
図9】本願の実施形態による製造プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下に図面及び実施形態を参照して、本願をさらに詳細に説明する。ここで説明された具体的な実施形態は、単に本願を解釈するために用いられ、本願を限定するものではないと理解されるべきである。
【0019】
本願の説明において、他に明確な規定及び限定がない限り、用語「第1」、「第2」は説明の目的のみに用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示すると理解できない。他に規定又は説明がない限り、用語「複数」は二つ又は二つ以上を指す。用語「接続」、「固定」等はいずれも広義に理解すべきであり、例えば、「接続」は固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、又は一体的に接続されてもよく、又は電気的に接続されてもよく、直接的に接続されてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されてもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0020】
本明細書の説明において、理解すべきこととして、本願の実施形態に記載された「上」、「下」等の方位語は図面に示された角度で説明され、本願の実施形態を限定するものと理解すべきではない。また、コンテキストにおいて、理解すべきことは、一つの素子が他の素子「上」又は「下」に接続されることを言及する場合、それは他の素子「上」又は「下」に直接接続されるだけでなく、中間素子を介して他の素子「上」又は「下」に間接的に接続されてもよい。
【0021】
光起電力電池のコストの低減に伴い、メタライズ原単位を低減する点では、依然として大きな余地を有し、これは光起電力電池のコストを低減する必然的な傾向でもある。従来のマルチメイングリッドの技術は比較的に成熟し、マルチメイングリッドの技術は、より多くの数のメイングリッドを使用することができ、溶接点の面積を減少させることができ、これによって、原単位を低減することができる。ただし、溶接点の面積の減少は、原単位を低減することができるが、小さい溶接点では、それとメイングリッドとの接続の信頼性を保証しにくくなり、また、電流の収集能力を低下させるため、原単位の低減と、溶接点とメイングリッドとの接続の信頼性及び電流収集能力の保証を同時に両立させることができない。
【0022】
そこで、
図1~
図7に示すように、本願の実施形態は、シリコン基板と、シリコン基板の少なくとも一つの面に位置するパッシベーション層とを含む光起電力電池セル1を提供する。該光起電力電池セル1は、TOPcon電池であってよく、
図7に示すように、すなわち電池セルの正面から背面まで順に、正面グリッド線101、正面パッシベーション層102、エミッタ電極103、N型シリコン基板104、トンネル酸化層105、ドープドポリシリコン層106、背面パッシベーション層107及び背面グリッド線108を含む。
【0023】
具体的には、該光起電力電池セル1のシリコン基板の少なくとも1つの面には、グリッド線、溶接点2及び延在線3が印刷され、該光起電力電池セル1がTOPcon電池である場合、シリコン基板の正面及び背面には、いずれもグリッド線、溶接点2及び延在線3が印刷されている。該光起電力電池セル1がPERC電池である場合、PERC電池の正面には、グリッド線、溶接点2及び延長線3が印刷されている。
【0024】
該グリッド線は、交差して設けられたメイングリッド11及びサブグリッド12を含み、サブグリッド12は、シリコン基板に接触する。延在線3の両端は、それぞれメイングリッドと溶接点2に接続され、かつ延在線3は、シリコン基板に接触する。
【0025】
ここで、該延在線3は、メイングリッド11と溶接点2との接続を図ることができ、直接的にシリコン基板と接触することができ、具体的には、スクリーン印刷プロセスによってファイヤースルーペーストを印刷して、ペーストにパッシベーション層を貫通させてシリコン基板と接触させることができ、或いは、レーザ穴加工の方式を採用することによって、ペーストを印刷する前に延在線の位置する領域のパッシベーション層が既に延在線を収容する開口を有するようにすることもでき、或いは、レーザ転写の方式を採用することによって、シリコン基板と接触する延在線を直接的に取得することもできる。これらの様々な方法は、いずれもそれと溶接点2及びメイングリッド11との接続の信頼性を保証することができ、溶接点2の電流収集能力を保証することができる。
【0026】
また、なお、金属グリッド線を用いて導電を行う電池では、コストを低減するために、金属グリッド線の厚さがますます低下し、金属グリッド線の厚さの低下に伴い、溶接後の溶接ワイヤとグリッド線との接触部分、特に溶接ワイヤとメイングリッドとの接触部分に、銀錫又は他の合金物質が存在するため、メイングリッドが溶接合金層によって侵食されてしまうことがある。ここで、溶接時に溶接点で受けた温度が最も高く、溶接点の近傍の溶接合金が最も多くなることをもたらし、メイングリッドの溶接点との接続位置での厚さを減少させ、メイングリッドにグリッド切れを最も発生しやすくなり、電流収集に影響を与え、EL不良を引き起こす。また、従来のメイングリッドと溶接点は一体的に設計され、かつ溶接点の横方向の長さが長く、メイングリッドと溶接点はパッシベーション層の上方に位置し、シリコン基板と接触せず、細グリッドのみがシリコン基板と接触し、これは、メイングリッドと溶接点の接続位置にグリッド切れが発生しやすくなる。
【0027】
そのため、本願の実施形態による光起電力電池セル1は、延在線3がそれぞれグリッド線と溶接点2に接続されることができるため、延在線3によって溶接点2とグリッド線との接続を強化し、かつ延在線3はシリコン基板に直接接触し、グリッド線が溶接合金によって侵食されて厚さが減少しても、延在線3とシリコン基板との接触部分が切断されることはなく、つまり、延在線3が常にグリッド線及び溶接点2と接続することを維持することができ、効果的な電流の収集能力を保証することができる。
【0028】
これによって、従来の技術に対して、本願の実施形態による光起電力電池セル1は、電池セルの原単位の低減を図りつつ、溶接点2とメイングリッド11との接続の信頼性を保証することができるとともに、グリッド線の溶接点2との接続部位が溶接合金によって侵食された場合にも、依然として効果的な電流収集能力を保証することができる。
【0029】
ここで、
図2に示すように、メイングリッド11と溶接点2は、いずれもシリコン基板と接触せず、溶接点2は、サブグリッド12から離れた位置に位置することができる。理解されるように、メイングリッド11が溶接合金によって侵食されやすくかつグリッド切れが発生しやすい部位は、メイングリッド11と溶接点2との接続位置に位置し、本実施形態において、溶接点2が延在線3を介してメイングリッド11に接続され、延在線3がスクリーン印刷プロセスによってシリコン基板に印刷されるため、切断が発生しにくく、グリッド線と溶接点2との接続を強化することができ、グリッド切れが発生する問題を回避することができる。また、サブグリッド12は、
図3に示すように、溶接点2の両側に位置してもよい。
【0030】
具体的には、メイングリッド11の延長線の方向において、延在線3の寸法は、溶接点2の寸法の3倍以下である。なお、溶接点と溶接ワイヤは、溶接機のプローブ列の押し下げ動作によって溶接を実現し、プローブ近傍の領域に溶接合金を形成し、延在線3の寸法を溶接点2の寸法の3倍以下にすることによって、プローブ近傍の領域の溶接合金の面積が大きすぎることを回避することができ、メイングリッドのグリッド切れのリスクを低減することができる。
【0031】
一つの具体的な実現形態として、
図5及び
図6に示すように、延在線3の一部領域は、メイングリッド11と重ね合わせられ、且つメイングリッド11の延長線の方向において、延在線3とメイングリッド11との重ね合わせ領域aの寸法は、0.1mmよりも小さい。なお、メイングリッド11の延長線の方向において、延在線3とメイングリッド11との重ね合わせ領域aの寸法が大きくなりすぎると、延在線3とメイングリッド11との重ね合わせ領域の高さが大きくなり、メイングリッド11と溶接ワイヤとの間の相対位置の位置合わせに影響を与えてしまい、溶接ワイヤがメイングリッド11の一方側にずれると、メイングリッド11のずれ部位に近接するサブグリッド12の高さが低下することを引き起こしやすくなる。一つの具体的な実現形態として、延在線3の一部領域は溶接点2と重ね合わせられ、且つメイングリッド11の延長線の方向において、延在線3と溶接点2との重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さい。なお、メイングリッド11の延長線の方向において、延在線3と溶接点2との重ね合わせ領域aの寸法が大きくなりすぎるか、又は延在線3が溶接点2を貫通すると、延在線3と溶接点2との重ね合わせ領域の高さが大きくなり、メイングリッド11と溶接ワイヤとの間の相対位置の位置合わせに影響を与えてしまう。溶接ワイヤがメイングリッド11の一方側にずれると、メイングリッド11のずれ部位に近接するサブグリッド12の高さが低下することを引き起こしやすくなる。一つの具体的な実現形態として、延在線3の幅は、メイングリッド11の幅の1~2倍である。延在線3がメイングリッド11に対してより大きい幅を有するようにすることによって、電流収集能力を向上させるとともに、延在線3とメイングリッド11及び溶接点2との接続の信頼性を向上させることができる。
【0032】
ここで、延在線3の形状は、台形状、工字形状、人字形状、矩形状又は楕円形状であり、溶接点2の幅がメイングリッド11の幅よりも大きいため、延在線3の幅が大きい一端が溶接点2に接続されることによって、溶接点2との接続強度を向上させることができる。当然のことながら、延在線3は、他の形状であってもよい。本実施形態において台形状であることが好ましく、
図4に示すように、台形状の延在線3の幅が大きい一端は、溶接点2に接続され、幅が小さい一端は、メイングリッド11に接続される。
【0033】
一つの具体的な実現形態として、延在線3の高さは、溶接点2からメイングリッド11の位置する方向に向かって徐々に小さくなる。延在線3の高さを溶接点2からメイングリッド11の位置する方向に向かって徐々に小さくさせることによって、延在線3と溶接点2との接続の信頼性を向上させることができ、また、電流の収集能力を向上させることもでき、すなわち延在線3が溶接点2の高さが大きい位置に近いほどその電流収集能力が強くなり、そして、グリッド切れの発生を回避することもできる。
【0034】
具体的には、延在線3の両端の高さは、中間領域の高さよりも大きくされてもよく、それによって延在線3と溶接点2及びメイングリッド11との接続の信頼性を同時に向上させることができる。
【0035】
なお、該光起電力電池セル1は、N型又はP型光起電力電池セル1であってよく、シリコン基板は、N型シリコン基板又はP型シリコン基板である。本実施形態において、該光起電力電池セル1は、N型光起電力電池セル1であることが好ましく、シリコン基板は、N型シリコン基板である。
【0036】
一つの具体的な実現形態として、メイングリッドの高さは、8μm以下であり、それによって原単位を低減することができる。
【0037】
一つの具体的な実現形態として、該光起電力電池セル1がN型光起電力電池セルである場合、N型光起電力電池セルの正面のグリッド線の幅は、30μmよりも小さく、N型光起電力電池セルの背面のグリッド線の幅は、37μmよりも小さくなる。N型光起電力電池セルの背面が相対的に滑らかであるため、N型光起電力電池セルの背面のグリッド線の幅が正面のグリッド線の幅よりも大きくされることによって、N型光起電力電池セルの背面のグリッド線の接続をより確実にすることができる。
【0038】
一つの具体的な実現形態として、N型光起電力電池セルでは、溶接点2の高さは、5μm以上かつ7μm以下である。この高さ範囲内において、電流の収集能力を保証することができるとともに、原単位を低減することができる。
【0039】
一つの具体的な実現形態として、N型光起電力電池セルでは、前記溶接点2の厚さは、前記グリッド線の厚さよりも小さくなる。
【0040】
一つの具体的な実現形態として、N型光起電力電池セルの正面の少なくとも一部の溶接点の投影位置は、N型光起電力電池セルの背面の少なくとも一部の溶接点の投影位置と重ね合わせない。それによって、積層荷重を均等に分散する効果を果たし、製造プロセスの破片を低減することができる。
【0041】
一つの具体的な実現形態として、溶接点2は、透かし彫り領域を含み、かつN型光起電力電池セルに平行な方向において、透かし彫り領域の面積は、溶接点2の総面積の30%を超えないようにされる。それによって、電流収集能力を保証することができるとともに、原単位を低減することができる。
【0042】
一つの具体的な実現形態として、低原単位を図るために、N型光起電力電池セルに平行な方向において、溶接点2の非透かし彫り領域の面積は、0.3mm2以下である。
【0043】
一つの具体的な実現形態として、溶接点2のメイングリッド11に垂直な方向における長さは、溶接点2のメイングリッド11に平行な方向における長さよりも大きくなる。
【0044】
一つの具体的な実現形態として、メイングリッド11の数は、9本以上かつ18本以下である。それによって、光起電力電池セル1に強い電流収集能力を持たせることができる。
【0045】
図8に示すように、本願の実施形態は、さらに光起電力電池モジュールを提供し、該光起電力電池モジュールは、正面から背面まで順に、ガラス4、第1接着フィルム材料5、光起電力電池ストリング6、第2接着フィルム材料7、バックプレート8を含み、ここで、光起電力電池ストリングは、複数の光起電力電池から構成され、該光起電力電池は、本願のいずれかの実施形態による光起電力電池セル1である。ここで、該光起電力電池モジュールは、N型光起電力電池モジュールである。
【0046】
ここで、光起電力電池セル1同士は、溶接ワイヤによって接続され、溶接ワイヤの直径は、0.2~0.3mmである。本願の実施形態によるN型光起電力電池セル1は、溶接点2の寸法のさらなる減少を図ることができるため、溶接点2に接続された溶接ワイヤの幅のさらなる減少を図ることができ、より多くの数のメイングリッド11を配置して、電流の収集能力を向上させることが容易になる。
【0047】
図9に示すように、本願の実施形態は、本願のいずれかの実施形態による光起電力電池セルを製造するための製造プロセスをさらに提供し、該プロセスは以下のステップを含む。
【0048】
ステップS1であって、少なくとも1つの面にパッシベーション層を有する光起電力基板を提供する。
【0049】
ステップS2であって、光起電力基板に非ファイヤースルーペーストを用いて溶接点とメイングリッドをそれぞれ印刷する。
【0050】
ここで、非ファイヤースルーペーストは、銀ペースト、銀アルミニウムペースト等であってもよい。溶接点に用いられるペーストと、メイングリッドに用いられるペーストとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的な印刷操作において、まず溶接点を印刷し、次にメイングリッドを印刷してもよく、溶接点とメイングリッドを一回の印刷で成形してもよい。
【0051】
ステップS3であって、光起電力基板にファイヤースルーペーストを用いて延在線とサブグリッドをそれぞれ印刷し、延在線を溶接点とメイングリッドにそれぞれ接続する。
【0052】
ここで、ファイヤースルーペーストは、銀粉、アルミニウム粉、ガラス粉及び有機物で形成された複合ペーストであってもよい。延在線のペーストは、サブグリッドのペーストとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的な印刷操作において、まず延在線を印刷し、次にサブグリッドを印刷してもよく、延在線とサブグリッドを一回の印刷で成形してもよい。
【0053】
延在線にファイヤースルーペーストを用いることによって、延在線をシリコン基板に直接接触させることができ、グリッド線における溶接合金の侵食によるグリッド切れの発生を効果的に回避するとともに、電流に対する収集能力を向上させることができる。
【0054】
具体的には、ファイヤースルーペーストは、含有量が88%~92%の固体、含有量が2~6%の有機物、含有量が2~6%のガラス粉を含み、固体は、含有量が90~92%の銀粉、含有量が2~6%のアルミニウム粉、含有量が2-6%の微量金属又は希土類元素を含む。
【0055】
以上は、本願の好ましい実施形態に過ぎず、本願を限定するものではなく、当業者にとって、本願は様々な修正及び変更を行うことができる。本願の主旨を逸脱しない範囲で行われた如何なる修正、同等置換、改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0056】
1……光起電力電池セル
11……メイングリッド
12……サブグリッド
101……正面グリッド線
102……パッシベーション層
103……エミッタ電極
104……シリコン基板
105……トンネル酸化層
106……ドープドポリシリコン層
107……背面パッシベーション層
108……背面グリッド線
2……溶接点
3……延在線
a……重ね合わせ領域
4……ガラス
5……第1接着フィルム材料
6……光起電力電池ストリング
7……第2接着フィルム材料
8……バックプレート
【手続補正書】
【提出日】2022-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力電池セルであって、
シリコン基板と、前記シリコン基板の少なくとも1つの面に位置するパッシベーション層とを含み、
前記シリコン基板の少なくとも1つの面には、グリッド線、溶接点及び延在線が印刷され、前記グリッド線は、交差して設けられたメイングリッド及びサブグリッドを含み、前記サブグリッドは、前記シリコン基板と接触し、
前記メイングリッド及び前記溶接点は、前記パッシベーション層上に設けられ、
前記延在線の両端は、それぞれ前記メイングリッドと前記溶接点に接続され、且つ前記
延在線は、前記シリコン基板に接触し、
前記延在線の幅は、前記メイングリッドの幅の1~2倍である、ことを特徴とする光起電力電池セル。
【請求項2】
前記メイングリッドと前記溶接点は、いずれも前記シリコン基板と接触しない、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項3】
前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線の寸法は、前記溶接点の寸法の3倍以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項4】
前記延在線の一部領域は、前記メイングリッドと重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記メイングリッドとの重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さく、及び/又は
前記延在線の一部領域は、前記溶接点と重ね合わせられ、且つ前記メイングリッドの延長線の方向において、前記延在線と前記溶接点との重ね合わせ領域の寸法は、0.1mmよりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項5】
前記延在線の形状は、矩形状、台形状及び楕円形状のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項6】
前記延在線の高さは、溶接点から前記メイングリッドの位置する方向に向かって徐々に小さくなる、ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力電池セル。
【請求項7】
光起電力電池モジュールであって、
正面から背面まで順に、ガラス、第1接着フィルム材料、光起電力電池ストリング、第2接着フィルム材料及びバックプレートを含み、前記光起電力電池ストリングは、複数の光起電力電池から構成され、前記光起電力電池は、請求項1~6のいずれか一項に記載の光起電力電池セルである、ことを特徴とする光起電力電池モジュール。
【請求項8】
前記光起電力電池セル同士は、溶接ワイヤによって接続され、前記溶接ワイヤの直径は、0.2~0.3mmである、ことを特徴とする請求項7に記載の光起電力電池モジュール。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光起電力電池セルを製造するための製造プロセスであって、
少なくとも1つの面にパッシベーション層を有する光起電力基板を提供するステップと、
前記光起電力基板に非ファイヤースルーペーストを用いて溶接点とメイングリッドをそれぞれ印刷するステップと、
前記光起電力基板にファイヤースルーペーストを用いて延在線とサブグリッドをそれぞれ印刷し、前記延在線を前記溶接点と前記メイングリッドにそれぞれ接続するステップと、
を含むことを特徴とする製造プロセス。
【請求項10】
前記延在線に用いられるファイヤースルーペーストと、前記サブグリッドに用いられるファイヤースルーペーストとは、異なる、ことを特徴とする請求項9に記載の製造プロセス。