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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033073
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012250
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021139265
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刀根 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】桃枝 理彰
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
(57)【要約】
【課題】便器本体に取り付けられたパネル部材の落下を抑制しつつ、パネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、便器本体と、機能部と、パネル部材と、保持部とを備える。機能部は、便器本体の後方に設けられる。パネル部材は、機能部の側面を覆う。保持部は、便器本体とパネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する。パネル部材は、便器本体に取り付けられた状態において便器本体側に湾曲するように形成される。保持部は、パネル部材に設けられるパネル側磁性体の吸着面と、便器本体に設けられる本体側磁性体の吸着面とが平面となるように形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
前記便器本体の後方に設けられた機能部と、
前記機能部の側面を覆うパネル部材と、
前記便器本体と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する保持部と
を備え、
前記パネル部材は、
前記便器本体に取り付けられた状態において前記便器本体側に湾曲するように形成され、
前記保持部は、
前記パネル部材に設けられるパネル側磁性体の吸着面と、前記便器本体に設けられる本体側磁性体の吸着面とが平面となるように形成されること
を特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記保持部は、複数あり、
複数の前記保持部はそれぞれ、
前記パネル側磁性体と前記本体側磁性体とを備え、前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが平面となるように形成されること
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記保持部は、
前記パネル部材から前記便器本体側に向けて突出するように形成される突出部
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記保持部は、
前記パネル部材が前記便器本体に取り付けられた状態において、上方に位置する上側保持部と、前記上側保持部より下方に位置する下側保持部と
を含み、
前記下側保持部の前記突出部における上面の幅方向の長さと下面の幅方向の長さとの差は、
前記上側保持部の前記突出部における上面の幅方向の長さと下面の幅方向の長さとの差より大きくなるように設定されること
を特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記保持部は、
前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが互いに平行となるように形成されること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記保持部は、
前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが前後方向における垂直面に沿うように形成されること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記保持部は、
前記便器本体の側面と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する第1保持部と、
前記機能部の側面と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する第2保持部と
を含み、
前記第2保持部は、
前記パネル部材に設けられるパネル側磁性体の吸着面と、前記機能部に設けられる機能部側磁性体の吸着面とが平面となるように形成され、
前記機能部は、
前記機能部側磁性体が設けられる面が前後方向における垂直面に沿うように形成されること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル部材によって機能部を覆う水洗大便器において、パネル部材を便器本体に取り付けて保持するために磁力を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-165173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した水洗大便器においては、例えば意匠性や使い勝手の向上を図るため、パネル部材の側面が湾曲するように形成されることがある。しかしながら、従来技術にあっては、パネル部材が湾曲するように形成されると、パネル部材に設けられる磁性体の吸着面も湾曲するため、便器本体に設けられる磁性体の吸着面と適切に接触せずにパネル部材に対する保持力が低下し、パネル部材が落下してしまうおそれがあった。また、上記のように磁性体の吸着面が湾曲すると、パネル部材を、便器本体に保持させた状態でスライドしにくくなり、パネル部材の位置決めが難しくなる。
【0005】
実施形態の一態様は、便器本体に取り付けられたパネル部材の落下を抑制しつつ、パネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、便器本体と、前記便器本体の後方に設けられた機能部と、前記機能部の側面を覆うパネル部材と、前記便器本体と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する保持部とを備え、前記パネル部材は、前記便器本体に取り付けられた状態において前記便器本体側に湾曲するように形成され、前記保持部は、前記パネル部材に設けられるパネル側磁性体の吸着面と、前記便器本体に設けられる本体側磁性体の吸着面とが平面となるように形成されることを特徴とする。
【0007】
これにより、便器本体に取り付けられたパネル部材の落下を抑制しつつ、パネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0008】
すなわち、保持部においては、パネル側磁性体(例えば磁石)の吸着面と本体側磁性体(例えば板金)の吸着面とが上記のように構成されることで、パネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが面接触し、接触面積を確実に確保することができる。そのため、パネル部材が湾曲するように形成される場合であっても、保持部においては、パネル部材に対する保持力が低下しにくい。従って、例えば清掃の際にパネル部材の拭き掃除などが行われ、パネル部材に対してパネル部材を移動させるような負荷(力)が作用した場合等であっても、パネル部材の落下を抑制することができる。
【0009】
また、保持部においては、パネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが平面で面接触するため、パネル部材を吸着面と平行な方向(例えば前後方向や上下方向)へ容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材を便器本体等に保持させた状態で、パネル部材を便器本体等に対して前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材を適正位置へ容易に調整することができる、言い換えると、パネル部材の位置決めを容易にすることができる。
【0010】
また、前記保持部は、複数あり、複数の前記保持部はそれぞれ、前記パネル側磁性体と前記本体側磁性体とを備え、前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが平面となるように形成されることを特徴とする。
【0011】
これにより、保持部が複数ある場合であっても、それぞれのパネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが面接触するため、パネル部材の落下をより抑制することができ、またパネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0012】
また、前記保持部は、前記パネル部材から前記便器本体側に向けて突出するように形成される突出部を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、保持部は、突出部を備えるため、例えばパネル部材が湾曲するように形成される場合であっても、突出部の先端面を平面状に形成するなどの簡易な構成で、吸着面が平面となるようにパネル側磁性体を取り付けることが可能になる。
【0014】
また、前記保持部は、前記パネル部材が前記便器本体に取り付けられた状態において、上方に位置する上側保持部と、前記上側保持部より下方に位置する下側保持部とを含み、前記下側保持部の前記突出部における上面の幅方向の長さと下面の幅方向の長さとの差は、前記上側保持部の前記突出部における上面の幅方向の長さと下面の幅方向の長さとの差より大きくなるように設定されることを特徴とする。
【0015】
このように、突出部が上記のように構成されることで、例えばパネル部材の下方の曲率が上方の曲率より大きくなるように湾曲する形状であっても、パネル部材を便器本体へ精度よく組み付けることが可能となる。
【0016】
また、前記保持部は、前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが互いに平行となるように形成されることを特徴とする。
【0017】
これにより、例えばパネル部材が湾曲するように形成される場合であっても、パネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが互いに平行となるように形成されることで、パネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが確実に面接触するため、パネル部材の落下をより一層抑制することができ、またパネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0018】
また、前記保持部は、前記パネル側磁性体の吸着面と前記本体側磁性体の吸着面とが前後方向における垂直面に沿うように形成されることを特徴とする。
【0019】
これにより、保持部においては、パネル側磁性体の吸着面と本体側磁性体の吸着面とが垂直方向に沿って面接触するため、パネル部材を吸着面と平行な方向(例えば前後方向や上下方向)へより一層容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材を便器本体等に保持させた状態で、パネル部材を前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材を適正位置へより一層容易に調整することができる。
【0020】
また、前記保持部は、前記便器本体の側面と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する第1保持部と、前記機能部の側面と前記パネル部材の側面とを磁力によって吸着保持する第2保持部とを含み、前記第2保持部は、前記パネル部材に設けられるパネル側磁性体の吸着面と、前記機能部に設けられる機能部側磁性体の吸着面とが平面となるように形成され、前記機能部は、前記機能部側磁性体が設けられる面が前後方向における垂直面に沿うように形成されることを特徴とする。
【0021】
これにより、機能部に取り付けられたパネル部材の落下を抑制しつつ、パネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0022】
すなわち、第2保持部においては、パネル側磁性体(例えば磁石)の吸着面と機能部側磁性体(例えば板金)の吸着面とが上記のように構成されることで、パネル側磁性体の吸着面と機能部側磁性体の吸着面とが面接触し、接触面積を確実に確保することができる。そのため、パネル部材が湾曲するように形成される場合であっても、第2保持部においては、パネル部材に対する保持力が低下しにくい。従って、例えば清掃の際にパネル部材の拭き掃除などが行われ、パネル部材に対してパネル部材を移動させるような負荷(力)が作用した場合等であっても、パネル部材の落下を抑制することができる。
【0023】
また、第2保持部においては、パネル側磁性体の吸着面と機能部側磁性体の吸着面とが平面で面接触するため、パネル部材を吸着面と平行な方向(例えば前後方向や上下方向)へ容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材を機能部等に保持させた状態で、パネル部材を機能部等に対して前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材を適正位置へ容易に調整することができる、言い換えると、パネル部材の位置決めを容易にすることができる。
【0024】
また、機能部において機能部側磁性体が設けられる面が前後方向における垂直面に沿うように形成されることから、機能部側磁性体は垂直面に沿うように機能部に取り付けられる。これにより、第2保持部においては、パネル側磁性体の吸着面と機能部側磁性体の吸着面とが垂直方向に沿って面接触するため、パネル部材を吸着面と平行な方向(例えば前後方向や上下方向)へより一層容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材を機能部等に保持させた状態で、パネル部材を前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材を適正位置へより一層容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
実施形態の一態様によれば、便器本体に取り付けられたパネル部材の落下を抑制しつつ、パネル部材をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1の実施形態に係る水洗大便器の側面図である。
図2図2は、水洗大便器のパネル部材の一部などを省略した側面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るパネル部材を内側から見たときの側面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線端面図である。
図5図5は、第1保持部付近の拡大端面図である。
図6図6は、変形例に係る第1保持部を示す図である。
図7図7は、図1のVII-VII線端面図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る機能部の成型を説明する図である。
図9図9は、比較例に係る機能部の成型を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
(第1の実施形態)
まず、図1および図2を参照して第1の実施形態に係る水洗大便器1の全体構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る水洗大便器1の側面図である。図2は、水洗大便器1のパネル部材9の一部などを省略した側面図である。
【0029】
また、図1および図2には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。かかる直交座標系では、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方と規定している。このため、以下の説明において、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0030】
また、本実施形態に係る水洗大便器1は、床面100に設置される、いわゆる床置き式の水洗大便器である。なお、水洗大便器1は、図示しない壁面に取り付けられる、いわゆる壁掛け式の水洗大便器であってもよい。
【0031】
図1および図2に示すように、水洗大便器1は、便器本体3と、機能部5と、衛生洗浄装置7と、パネル部材9とを備える。便器本体3は、例えば陶器製である。なお、便器本体3は、陶器製に限定されず、例えば、樹脂製のものでもよいし、陶器と樹脂とを組み合わせたものでもよい。
【0032】
便器本体3は、図示しないボウル部と、排水トラップ管路10(図2参照)とを備える。ボウル部は、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。ボウル部の上縁には、リム部が形成され、かかるリム部のリム吐水口(いずれも不図示)から洗浄水が吐水されてボウル部を洗浄する。ボウル部を洗浄した洗浄水は、排水トラップ管路10を通って排出される。
【0033】
機能部5は、図2に示すように、便器本体3の後方に設けられる。機能部5は、例えば便器本体3のボウル部や衛生洗浄装置7に給水を行う機能などを有する。例えば、機能部5は、貯水タンクおよび加圧ポンプ(いずれも不図示)などを含み、貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧ポンプによって加圧して、大流量でジェット吐水口(図示せず)からボウル部へ吐出させる。
【0034】
衛生洗浄装置7は、便器本体3の上方に設けられ、便座部8a、便座部8aを覆う蓋部8b、および、図示しないノズル装置などを備える。衛生洗浄装置7は、かかるノズル装置から洗浄水を使用者の身体へ噴出して局部を洗浄することができる。なお、上記では、衛生洗浄装置7は、衛生洗浄機能を有するようにしたが、これに限られず、例えば便座部8aに座った使用者のおしりなどに温風を吹き付けて乾燥させる乾燥機能や、便座部8aの着座面を適温に温める便座暖房機能などを有していてもよい。
【0035】
パネル部材9は、便器本体3の後方であって、機能部5(図2参照)の側面を覆うように設けられる。このパネル部材9により、機能部5への外的障害や汚水侵入を防ぐことが可能になる。なお、パネル部材9は、例えば樹脂製であるが、これに限定されるものではない。
【0036】
また、パネル部材9は、磁力を用いて便器本体3に取り付けられて保持される。なお、本実施形態に係るパネル部材9は、便器本体3に取り付けられる際、および、便器本体3に対して位置決めされる際(位置調整される際)、パネル部材9を便器本体3や機能部5に対して、例えば図1に矢印D1で示す前後方向、および矢印D2で示す上下方向などにスライド可能となるように構成されるが、これについては後述する。
【0037】
次に、パネル部材9と便器本体3との取り付けに関する構成について詳しく説明する。
【0038】
水洗大便器1は、第1保持部21と、第2保持部23とを備える。第1、第2保持部21,23は、便器本体3とパネル部材9の側面とを磁力によって吸着保持する。詳しくは、第1保持部21は、便器本体3の側面とパネル部材9の側面とを磁力によって吸着保持する。また、第2保持部23は、便器本体3の後方に設けられた機能部5の側面とパネル部材9の側面とを磁力によって吸着保持する。
【0039】
先ず、第1保持部21について説明すると、第1保持部21は、便器本体3とパネル部材9との境界部A(図2参照)に設けられる。境界部Aとは、便器本体3にパネル部材9を適正に設置した際、便器本体3とパネル部材9が重なり合う部位である。
【0040】
図1に示すように、第1保持部21は、上側保持部21aと、下側保持部21bとを含む。上側保持部21aは、パネル部材9が便器本体3に取り付けられた状態において、上方に位置し、下側保持部21bは、上側保持部21aより下方に位置するように設けられる。
【0041】
なお、以下では、上側保持部21aと下側保持部21bとを特に区別せずに説明する場合には、「第1保持部21」と記載する場合がある。また、第1保持部21は、保持部の一例である。
【0042】
ここで、第1保持部21について図3も参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係るパネル部材9を内側から見たときの側面図である。
【0043】
図1図3に示すように、第1保持部21は、パネル側磁性体25と、本体側磁性体27とを備える。パネル側磁性体25は、パネル部材9に設けられる磁性体であり、例えば磁石である。以下では、パネル側磁性体25を「磁石25」と記載する場合がある。本体側磁性体27は、便器本体3に設けられる磁性体であり、例えば金属製の板材、すなわち板金である。以下では、本体側磁性体27を「板金27」と記載する場合がある。
【0044】
なお、上記では、パネル側磁性体25が磁石、本体側磁性体27が板金である例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばパネル側磁性体25が板金、本体側磁性体27が磁石であってもよい。また、板金27に代えて磁石を用いてもよい。
【0045】
また、以下では、上側保持部21aの磁石25を「上側磁石25a」、下側保持部21bの磁石25を「下側磁石25b」と記載する場合がある。また、上側保持部21aの板金27を「上側板金27a」、下側保持部21bの板金27を「下側板金27b」と記載する場合がある。
【0046】
上側磁石25aおよび下側磁石25bは、パネル部材9の内側面の前方端側、つまり便器本体3とパネル部材9の境目付近に設けられる。例えば、上側磁石25aは、パネル部材9の上端と中央との区間に設けられ、下側磁石25bは、パネル部材9の下端と中央との区間に設けられる。
【0047】
板金27は、図1および図2に示すように、便器本体3において磁石25と対応する位置に設けられる。すなわち、上側板金27aは上側磁石25aと対応する位置に、下側板金27bは下側磁石25bと対応する位置に設けられる。なお、上記した磁石25および板金27の詳細な構成については、図4以降を用いて後述する。
【0048】
第1保持部21は、上記した磁石25と板金27とが磁力によって吸着することで、パネル部材9を便器本体3に保持することができる。
【0049】
次いで、第2保持部23について説明する。図1に示すように、第2保持部23は、便器本体3にパネル部材9を適正に設置した際、パネル部材9の上部領域に設けられる。第2保持部23は、図1および図2に示すように、磁性体である磁石29と、磁性体である金属製の板材、すなわち板金31とを備える。
【0050】
磁石29は、パネル部材9の内側面の上方端側、かつパネル部材9の後方に設けられる。磁石29は、厚さの薄い直方体であり、例えばパネル部材9に接着される。なお、磁石29は、短辺が上下方向に、長辺が前後方向に沿うような形状に形成されるが、磁石29の形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状に設定可能である。
【0051】
板金31は、図1および図2に示すように、便器本体3(正確には便器本体3の後方にある機能部5)において磁石29と対応する位置に設けられる。板金31は、厚さの薄い直方体であり、例えば機能部5に接着される。なお、板金31は、短辺が前後方向に、長辺が上下方向に沿うような形状に形成されるが、板金31の形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状に設定可能である。
【0052】
第2保持部23は、上記した磁石29と板金31とが磁力によって吸着することで、パネル部材9を便器本体3に保持することができる。
【0053】
なお、上記した第2保持部23においては、磁石29がパネル部材9に、板金31が便器本体3に設けられる例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば板金がパネル部材9に、磁石が便器本体3に設けられる構成であってもよい。また、板金31に代えて磁石を用いてもよい。
【0054】
なお、上記した第1、第2保持部21,23が設けられる位置や数などは、あくまでも例示であって限定されるものではなく、第1、第2保持部21,23の位置や数は、任意に設定可能である。すなわち、上記では、第1保持部21は、複数(2個)ある例を示したが、1個であっても、3個以上であってもよい。また、第2保持部23は、1個である例を示したが、2個以上であってもよい。
【0055】
上記のように構成された水洗大便器1におけるパネル部材9の便器本体3への取り付けについて説明すると、例えばパネル部材9はまず、便器本体3の側方(正確には機能部5の側方)に位置される。続いて、かかるパネル部材9が便器本体3側へ左右方向(X軸方向)に沿って移動させられ、そして第1、第2保持部21,23の磁力によってパネル部材9が便器本体3に取り付けられる。
【0056】
ところで、水洗大便器1においては、例えば意匠性や使い勝手の向上を図るため、パネル部材9の側面が湾曲するように形成されることがある。このように、パネル部材9が湾曲して形成される場合、従来技術にあっては、パネル部材9に設けられる磁石25等の磁性体の吸着面も湾曲するため、便器本体3に設けられる板金27等の磁性体の吸着面と適切に接触せずにパネル部材9に対する保持力が低下する。そのため、例えば清掃の際にパネル部材9の拭き掃除などが行われ、パネル部材9に対してパネル部材9を移動させるような負荷(力)が作用すると、かかる負荷が、低下した保持力を超え、パネル部材9が便器本体3から落下し易くなる。
【0057】
また、例えば磁石25等の磁性体の吸着面が湾曲すると、パネル部材9を、便器本体3に保持させた状態でスライドしにくくなり、パネル部材9の位置決めが難しくなる。
【0058】
そこで、本実施形態に係る水洗大便器1においては、便器本体3に取り付けられたパネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができるような構成とした。
【0059】
以下、かかる構成について図4および図5を参照して詳説する。図4は、図1のIV-IV線端面図であり、具体的には、第1保持部21付近の拡大端面図である。なお、図4以降は、理解の便宜のため、パネル部材9の湾曲形状など一部の構成を誇張して示している。図5は、図4と同様な、第1保持部21付近の拡大端面図である。なお、図5は、パネル部材9が、第1保持部21等によって便器本体3に取り付けられる前の状態を示している。
【0060】
図4および図5に示すように、本実施形態に係るパネル部材9は、前方から見た前面視(あるいは後方から見た後面視)において湾曲するように形成される。例えば、パネル部材9は、便器本体3に取り付けられた状態において、便器本体3側に湾曲するように形成される。言い換えると、パネル部材9は、内側面9aおよび外側面9bが外方(図4,5の例ではX軸負方向)に向けて突出するような湾曲形状とされる。
【0061】
また、パネル部材9は、下方(Z軸負方向)にいくにつれて曲率が大きくなるように形成される。すなわち、パネル部材9において、下側保持部21bが設けられる部位の曲率は、上側保持部21aが設けられる部位の曲率より大きくなるように設定される。
【0062】
便器本体3は、パネル部材9に即した形状となるように形成される。例えば、便器本体3は、パネル部材9が取り付けられる外側面3aが、パネル部材9の内側面9aに沿って湾曲するように形成される。
【0063】
次いで、第1保持部21に含まれる上側保持部21aおよび下側保持部21bについて説明する。上側保持部21aは、前述した上側磁石25aと、上側板金27aと、上側突出部40aと、上側凹部50aとを備える。下側保持部21bは、前述した下側磁石25bと、下側板金27bと、下側突出部40bと、下側凹部50bとを備える。
【0064】
上側磁石25aおよび下側磁石25bは、厚さの薄い直方体である。上側磁石25aおよび下側磁石25bは、図1,3などに示すように、短辺が前後方向に、長辺が上下方向に沿うような形状に形成されるが、上側磁石25aおよび下側磁石25bの形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状に設定可能である。なお、上記では、上側磁石25aと下側磁石25bとが同じ形状である例を示したが、これに限られず、互いに異なる形状であってもよい。
【0065】
上側板金27aおよび上側板金27aは、厚さの薄い直方体である。上側板金27aおよび上側板金27aは、図1,2などに示すように、短辺が前後方向に、長辺が上下方向に沿うような形状に形成されるが、上側板金27aおよび上側板金27aの形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状に設定可能である。なお、上記では、上側板金27aと上側板金27aとが同じ形状である例を示したが、これに限られず、互いに異なる形状であってもよい。
【0066】
上側突出部40aおよび下側突出部40bは、パネル部材9から便器本体3側に向けて突出するように形成される。例えば、上側突出部40aおよび下側突出部40bはそれぞれ、パネル部材9の内側面9aから便器本体3側に向けて(図4,5の例ではX軸正方向)に向けて突出するように形成される。
【0067】
図5に示すように、上側突出部40aは、先端面40a1が平面状(言い換えると平坦状)に形成され、かかる先端面40a1に上側磁石25aが取り付けられる(接着される)。下側突出部40bは、先端面40b1が平面状に形成され、かかる先端面40a1に上側磁石25aが取り付けられる(接着される)。
【0068】
上側凹部50aおよび下側凹部50bは、便器本体3に形成される凹みである。例えば、上側凹部50aは、上側突出部40aおよび上側磁石25aに対応する位置に形成され、便器本体3の外側面3aからX軸正方向に凹むように形成される。下側凹部50bは、下側突出部40bおよび下側磁石25bに対応する位置に形成され、便器本体3の外側面3aからX軸正方向に凹むように形成される。
【0069】
図5に示すように、上側凹部50aは、上側突出部40aの先端面40a1と対向する面50a1が平面状(言い換えると平坦状)に形成され、かかる面50a1に上側板金27aが取り付けられる(接着される)。下側凹部50bは、下側突出部40bの先端面40b1と対向する面50b1が平面状に形成され、かかる面50b1に下側板金27bが取り付けられる(接着される)。
【0070】
そして、第1保持部21は、磁石25の吸着面26と、板金27の吸着面28とが平面(言い換えると平坦状)となるように形成される。
【0071】
これにより、本実施形態にあっては、便器本体3に取り付けられたパネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0072】
すなわち、第1保持部21においては、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが上記のように構成されることで、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが面接触し、接触面積を確実に確保することができる。そのため、パネル部材9が湾曲するように形成される場合であっても、第1保持部21においては、パネル部材9に対する保持力が低下しにくい。従って、本実施形態にあっては、例えば清掃の際にパネル部材9の拭き掃除などが行われ、パネル部材9に対してパネル部材9を移動させるような負荷(力)が作用した場合等であっても、パネル部材9の落下を抑制することができる。
【0073】
また、第1保持部21においては、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが平面で面接触するため、パネル部材9を吸着面26,28と平行な方向(ここでは前後方向や上下方向)へ容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材9を便器本体3等に保持させた状態で、パネル部材9を便器本体3等に対して前後方向(図1の矢印D1参照)や上下方向(矢印D2参照)にスライドさせて、パネル部材9を適正位置へ容易に調整することができる、言い換えると、パネル部材9の位置決めを容易にすることができる。
【0074】
第1保持部21についてさらに具体的に説明すると、第1保持部21に含まれる上側保持部21aおよび下側保持部21bは、それぞれ磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが平面となるように形成される。詳しくは、上側保持部21aにおいては、上側磁石25aの吸着面26aと上側板金27aの吸着面28aとが平面となるように形成される。同様に、下側保持部21bにおいては、下側磁石25bの吸着面26bと下側板金27bの吸着面28bとが平面となるように形成される。
【0075】
このように、第1保持部21が複数ある場合であっても(詳しくは上側保持部21aおよび下側保持部21bを含む場合であっても)、それぞれの磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが面接触するため、パネル部材9の落下をより抑制することができ、またパネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0076】
また、第1保持部21は、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが互いに平行となるように形成される。言い換えると、第1保持部21は、パネル部材9が便器本体3に取り付けられた状態において、磁石25の吸着面26と、吸着面26と対向する板金27の吸着面28とが互いに平行となるように形成される。
【0077】
詳しくは、上側保持部21aにおいては、上側磁石25aの吸着面26aと上側板金27aの吸着面28aとが互いに平行となるように形成される。同様に、下側保持部21bにおいては、下側磁石25bの吸着面26bと下側板金27bの吸着面28bとが互いに平行となるように形成される。
【0078】
これにより、例えばパネル部材9が湾曲するように形成される場合であっても、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが互いに平行となるように形成されることで、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが確実に面接触するため、パネル部材9の落下をより一層抑制することができ、またパネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0079】
また、第1保持部21は、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが前後方向における垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成される。言い換えると、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とは、水洗大便器1が設置される床面100(図1参照)に対して垂直となるように形成される。
【0080】
詳しくは、上側保持部21aにおいては、上側磁石25aの吸着面26aと上側板金27aの吸着面28aとが前後方向における垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成される。同様に、下側保持部21bにおいては、下側磁石25bの吸着面26bと下側板金27bの吸着面28bと前後方向における垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成される。
【0081】
これにより、第1保持部21においては、磁石25の吸着面26と板金27の吸着面28とが垂直方向に沿って面接触するため、パネル部材9を吸着面26,28と平行な方向(ここでは前後方向や上下方向)へより一層容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材9を便器本体3等に保持させた状態で、パネル部材9を前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材9を適正位置へより一層容易に調整することができる。
【0082】
また、第1保持部21は、上記した上側突出部40aや下側突出部40bを備えるため、例えばパネル部材9が湾曲するように形成される場合であっても、上側突出部40aの先端面40a1や下側突出部40bの先端面40b1を平面状に形成するなどの簡易な構成で、吸着面26が平面となるように磁石25を取り付けることが可能になる。
【0083】
ここで上側突出部40aと下側突出部40bの形状について説明する。上側突出部40aおよび下側突出部40bの形状は、上側突出部40aおよび下側突出部40bが形成されるパネル部材9の湾曲形状に応じて設定される。
【0084】
具体的には、図5に示すように、第1保持部21においては、下側保持部21bの下側突出部40bにおける上面41bの幅方向(左右方向)の長さLb1と下面42bの幅方向の長さLb2との差Mbは、上側保持部21aの上側突出部40aにおける上面41aの幅方向の長さLa1と下面42bの幅方向の長さLa2との差Maより大きくなるように設定される(Mb>Ma)。
【0085】
このように、下側突出部40bおよび上側突出部40aが上記のように構成されることで、例えばパネル部材9の下方の曲率が上方の曲率より大きくなるように湾曲する形状であっても、パネル部材9を便器本体3へ精度よく組み付けることが可能となる。
【0086】
また、Mb-Maで示される差が比較的大きく設定されることで、パネル部材9の施工性をより向上させることができる。すなわち、Mb-Maで示される差が大きく設定されると、例えばパネル部材9を幅方向から便器本体3に組み付ける際や、パネル部材9を下方からスライドさせて便器本体3に組み付ける際、下側保持部21bにおいては、上側保持部21aに比べてパネル部材9が完全に便器本体3に取り付けられて上下方向に対して移動制限がかかるまでにマージンができる。これにより、例えば施工者は、上側保持部21aのみに注意を払ってパネル部材9を組み付ければよいことから、パネル部材9の施工性をより向上させることができる。
【0087】
なお、上記した板金27(上側板金27aや下側板金27b)においては、例えば表面をランダムに削った板金を用いるようにしてもよい。これにより、板金27の表面粗さが大きくなって摩擦力が向上し、パネル部材9の落下を効果的に抑制することができる。
【0088】
なお、上記では、上側磁石25aと下側磁石25bとは、同じ大きさおよび同じ磁力を有する磁石を用いるが、これに限定されるものではない。すなわち、上側磁石25aと下側磁石25bとで、大きさや磁力を異ならせるようにしてもよい。一例としては、下側磁石25bが上側磁石25aに比べて大きい磁石や磁力の強い磁石を用いるようにしてもよい。これにより、例えば曲率が比較的大きく便器本体3から外れやすいパネル部材9の下方側における下側保持部21bの磁力を増大させることができ、パネル部材9の落下をより効果的に抑制することができる。
【0089】
上述してきたように、第1の実施形態に係る水洗大便器1は、便器本体3と、機能部5と、パネル部材9と、第1保持部21(保持部の一例)とを備える。機能部5は、便器本体3の後方に設けられる。パネル部材9は、機能部5の側面を覆う。第1保持部21は、便器本体3とパネル部材9の側面とを磁力によって吸着保持する。パネル部材9は、便器本体3に取り付けられた状態において便器本体3側に湾曲するように形成される。第1保持部21は、パネル部材9に設けられるパネル側磁性体25の吸着面26と、便器本体3に設けられる本体側磁性体27の吸着面28とが平面となるように形成される。これにより、便器本体3に取り付けられたパネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0090】
(変形例)
次いで、変形例について図6を参照して説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0091】
図6は、変形例に係る第1保持部21を示す図である。なお、図6は、図5と同様な、第1保持部21付近の拡大端面図である。
【0092】
図6に示すように、変形例に係るパネル部材9は、側面が直線状に形成される。言い換えると、パネル部材9は、内側面9aおよび外側面9bが直線状に形成される。また、便器本体3は、パネル部材9が取り付けられる外側面3aが、直線状に形成される。
【0093】
ここで、パネル部材9は、側面(内側面9aおよび外側面9b)が便器本体3の外側面3aとは非平行となるようにして、パネル部材9に取り付けられる。図6の例では、パネル部材9は、側面が前後方向の垂直面に対して傾斜し、便器本体3は、外側面3aが前後方向の垂直面に沿うように設けられる。
【0094】
このような形状のパネル部材9および便器本体3であっても、第1保持部21は、磁石25の吸着面26と、板金27の吸着面28とが平面(言い換えると平坦状)となるように形成される。
【0095】
これにより、変形例においても、実施形態と同様に、便器本体3に取り付けられたパネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態にあっては、第2保持部23や機能部5の構成を、パネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができるような構成とした。
【0097】
以下、かかる構成について図7などを参照して詳説する。図7は、図1のVII-VII線端面図であり、具体的には、第2保持部23付近の拡大端面図である。なお、図7等では、図示の簡略化のため、機能部5に斜線を付して模式的に示している。
【0098】
第2保持部23は、上記した磁石29と、板金31と、パネル側突出部60と、機能部側突出部70とを備える。なお、磁石29はパネル側磁性体の一例であり、板金31は機能部側磁性体の一例である。
【0099】
磁石29は、上記したように厚さの薄い直方体であり、例えばパネル部材9(正確にはパネル部材9のパネル側突出部60)に接着される。板金31は、上記したように厚さの薄い直方体であり、例えば機能部5(正確には機能部側突出部70)に接着される。
【0100】
パネル側突出部60は、パネル部材9から機能部5側に向けて突出するように形成される。例えば、パネル側突出部60は、パネル部材9の内側面9aから機能部5側に向けて(図7の例ではX軸正方向)に向けて突出するように形成される。また、パネル側突出部60は、先端面60aが平面状(言い換えると平坦状)に形成され、かかる先端面60aに磁石29が取り付けられる(接着される)。
【0101】
機能部側突出部70は、機能部5からパネル部材9側に向けて突出するように形成される。例えば、機能部側突出部70は、機能部5の側面5aからパネル部材9側に向けて(図7の例ではX軸負方向)に向けて突出するように形成される。また、機能部側突出部70は、先端面70aが平面状(言い換えると平坦状)に形成され、かかる先端面70aに板金31が取り付けられる(接着される)。
【0102】
このように、第2の実施形態にあっては、機能部5において板金31が設けられる面、すなわち機能部側突出部70の先端面70aが平面状とされるとともに、前後方向における垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成される。言い換えると、機能部5において板金31が取り付けられる面(先端面70a)は、水洗大便器1が設置される床面100(図1参照)に対して垂直となるように形成される。
【0103】
ここで、機能部5において板金31が設けられる面、すなわち機能部側突出部70の先端面70aの成型について、図8および図9を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係る機能部5の成型を説明する図であり、図9は、比較例に係る機能部5の成型を説明する図である。なお、機能部5は、一部あるいは全部が金型を用いて成型される。詳しくは、機能部5は、金型に溶融した樹脂材が流入されて成型される。
【0104】
まず、図9の比較例について説明する。図9に示すように、比較例にあっては、上側金型180aと、下側金型180bとを用いて機能部5が成型される。詳しくは、上側金型180aと、下側金型180bとが組み付けられ、上側、下側金型180a,180bによって形成される空間に溶融した樹脂材が流入されることで、機能部5が成型される。そして、上側、下側金型180a,180bは、成型された機能部5から上下方向(Z軸方向。矢印B参照)に抜かれる。しかしながら、比較例のように構成すると、成型後の機能部5の側面5aは、上側、下側金型180a,180bの抜き勾配によって、上下方向(Z軸方向)に対して傾斜してしまう。このため、比較例に係る機能部5の側面5aにおいては、板金31が設けられる面が垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成されず、結果として板金31も垂直面に沿うように設けることができないおそれがあった。
【0105】
そこで、第2の実施形態にあっては、図8に示すように、機能部5において板金31が設けられる面、すなわち機能部側突出部70の先端面70aが垂直面(Y-Z平面)に沿うように形成されるような金型を用いるようにした。
【0106】
具体的には、第2の実施形態においては、上側金型80aと、下側金型80bと、側面側金型80cとを用いて機能部5が成型される。上側金型80aは、成型する機能部5に対して上側に、下側金型80bは成型する機能部5に対して下側に、側面側金型80cは、成型する機能部5に対して側面5a側に位置されて組み付けられる。また、組み付けられた上側金型80a、下側金型80bおよび側面側金型80cにおいては、機能部側突出部70の形状に対応する凹部80c1が形成される。言い換えると、凹部80c1は、成型後における機能部側突出部70の先端面70aが垂直面に沿うように形成される形状とされる。
【0107】
成型手順の一例としては、まず上側、下側、側面側金型80a,80b,80cが組み付けられ、上側、下側、側面側金型80a,80b,80cによって形成される空間に溶融した樹脂材が流入されることで、機能部5が成型される。次いで、側面側金型80cが、成型された機能部5から左右方向(X軸方向。矢印A1参照)に抜かれる。次いで、上側、下側金型80a,80bが、成型された機能部5から上下方向(Z軸方向。矢印A2参照)に抜かれる。これにより、各金型80a,80b,80cの抜き勾配を確保しつつ、機能部5の側面5aにおいては、板金31が設けられる面(機能部側突出部70の先端面70a)が垂直面(Y-Z平面)に沿うように成型することができる。
【0108】
図7の説明を続けると、上記のようにして成型された機能部5において、機能部側突出部70の先端面70aには、板金31が取り付けられる。そして、第2保持部23は、磁石29の吸着面30と、板金31の吸着面32とが平面(言い換えると平坦状)となるように形成される。
【0109】
これにより、第2の実施形態にあっては、機能部5に取り付けられたパネル部材9の落下を抑制しつつ、パネル部材9をスライドさせて位置決めを容易にすることができる。
【0110】
すなわち、第2保持部23においては、磁石29の吸着面30と板金31の吸着面32とが上記のように構成されることで、磁石29の吸着面30と板金31の吸着面32とが面接触し、接触面積を確実に確保することができる。そのため、パネル部材9が湾曲するように形成される場合であっても、第2保持部23においては、パネル部材9に対する保持力が低下しにくい。従って、第2の実施形態にあっては、例えば清掃の際にパネル部材9の拭き掃除などが行われ、パネル部材9に対してパネル部材9を移動させるような負荷(力)が作用した場合等であっても、パネル部材9の落下を抑制することができる。
【0111】
また、第2保持部23においては、磁石29の吸着面30と板金31の吸着面32とが平面で面接触するため、パネル部材9を吸着面30,32と平行な方向(ここでは前後方向や上下方向)へ容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材9を機能部5等に保持させた状態で、パネル部材9を機能部5等に対して前後方向(図1の矢印D1参照)や上下方向(矢印D2参照)にスライドさせて、パネル部材9を適正位置へ容易に調整することができる、言い換えると、パネル部材9の位置決めを容易にすることができる。
【0112】
また、機能部5において板金31が設けられる面(先端面70a)が前後方向における垂直面に沿うように形成されることから、板金31は垂直面に沿うように機能部5に取り付けられる。これにより、第2保持部23においては、磁石29の吸着面30と板金31の吸着面32とが垂直方向に沿って面接触するため、パネル部材9を吸着面30,32と平行な方向(ここでは前後方向や上下方向)へより一層容易にスライドさせることができる。従って、例えば施工者は、パネル部材9を機能部5等に保持させた状態で、パネル部材9を前後方向や上下方向にスライドさせて、パネル部材9を適正位置へより一層容易に調整することができる。
【0113】
なお、上記した第1、第2実施形態、変形例については、適宜に組み合わせることができる。
【0114】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 水洗大便器
3 便器本体
5 機能部
9 パネル部材
21 第1保持部
25 磁石
27 板金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9