(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033075
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20230302BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20230302BHJP
C08J 11/18 20060101ALI20230302BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20230302BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08J11/24
C08J11/16
C08J11/18
C08G63/91
C08G63/78
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032618
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】110131554
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】▲荘▼ 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ▲維▼昇
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 章鑑
(72)【発明者】
【氏名】曾 郁迪
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AC20
4F401BA13
4F401CA27
4F401CA67
4F401CA68
4F401EA17
4F401EA18
4F401EA20
4F401FA07Y
4F401FA07Z
4J029AA03
4J029AB05
4J029AB07
4J029AC01
4J029AD10
4J029BA03
4J029CB06A
4J029KA03
4J029KG01
4J029KG02
4J029KG03
4J029KJ08
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い解重合効率及び高いBHET回収率を有し、且つ触媒が回収しやすい、という利点を有する、イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法を提供する。
【解決手段】イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、再生すべきポリエステル織物を提供することと、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含む解重合物を形成することを含み、なかでも、前記化学解重合液中、解重合触媒の存在下で、前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけると共に、前記解重合触媒はイオン液体触媒である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生すべきポリエステル織物を提供する準備工程と、
固体のイオン液体触媒である解重合触媒の存在下、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含む解重合物を形成する解重合工程と、
遠心分離法及び/又はろ過法で前記イオン液体触媒を分離して、前記イオン液体触媒を回収する分離工程と、
を含むことを特徴とする、イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項2】
前記解重合工程において、前記化学解重合液はエチレングリコール(EG)であると共に、前記化学解重合液を180℃~260℃の解重合温度に加熱することによって、前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかける、請求項1に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項3】
前記解重合工程において、前記イオン液体触媒は、基材と、前記基材にグラフトしたイオン液体(ionic liquid)とを含む、請求項1に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項4】
前記イオン液体触媒において、前記基材にグラフトした前記イオン液体のグラフトの数は、基材1グラムあたり前記イオン液体104個~1018個である、請求項3に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項5】
前記イオン液体触媒における前記基材は、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルトを含み、前記基材の平均粒子径は、2μm~800μmである、請求項3に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項6】
前記イオン液体触媒における前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMI2ZnCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMI2FeCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMI2CoCl4)、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF4)から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項7】
前記イオン液体触媒は、前記イオン液体と前記基材との間の架橋剤としてシランカップリング剤を用い、まず前記シランカップリング剤を酸加水分解した上で、前記基材にグラフトし、次に、アルカリ性条件下で前記イオン液体をシランカップリング剤にグラフトすることによって架橋することにより製造された、固体のイオン液体触媒である、請求項3に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項8】
前記分離工程において、前記イオン液体触媒は、高い比重を有するため沈殿作用により前記解重合物から分離され、
前記イオン液体触媒の触媒回収率は、95%以上である、請求項1に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項9】
前記分離工程を行った後に、前記解重合物から精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る精製工程と、
前記精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程と
を更に含み、
前記再生ポリエステル粒子は、60以上のL値、-2~2のa値、及び-6~6のb値を有すると共に、90%以上の回収率を有する、請求項1に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項10】
前記精製工程は、吸着ステップを含み、
前記吸着ステップは、
前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させて、水相液体を形成することと、
活性炭材料及び/又はイオン交換樹脂を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂に、前記再生すべきポリエステル織物中に存在していた不純物を吸着させることと
を含む、請求項9に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項11】
前記水相液体を70℃~150℃の液体温度に加熱することによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水に対する溶解度を向上させると共に、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂に前記不純物を吸着させる、請求項10に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【請求項12】
前記精製工程は、前記吸着ステップを行った後に、前記水相液体を70℃~150℃の前記液体温度から、5℃~25℃の結晶温度に冷却することによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水相液体から結晶として析出させて、前記精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る、結晶化ステップを更に含む、請求項11に記載のイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル織物を回収する方法に関し、特に、イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、ポリエステル織物(PET fabric)の化学的再生法では、主に化学解重合液(例えば、エチレングリコール)を用いてポリエステル織物を化学解重合することで、解重合物を形成する。また、当該解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate,BHET)を含む。しかし、前記化学的再生法の過程において、複雑な精製工程を行う必要がある。即ち、ポリエステル織物に元々存在した染料などの不純物を除去した後に、BHETを再重合して、高品質の再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する。
【0003】
上述したポリエステル織物の化学解重合において、従来の化学解重合は主に、アルコール分解技術である。通常、触媒として有機金属を用い、例えば、酢酸亜鉛、有機チタン金属、又は有機アンチモン金属が挙げられる。しかしながら、有機金属触媒で解重合反応を促進させてBHETを形成する製造プロセスでは、副反応が多く、且つ触媒を回収できないという欠点を有する。このため、このような解重合法で形成されたBHETを用いて製造された再生ポリエステル粒子(r-PET)は同様に、品質が不良であると共に、回収のコストが高いという欠点を有する。若しくは、ナノグレードの触媒を用いる場合、良好な解重合特性を有するものの、固液分離法(例えば、沈殿分離、ろ過)で触媒を回収することができないため、大量生産が困難となる。
【0004】
米国特許公告第9,255,194号には、触媒として低沸点を持ち且つ蒸留で回収されることができる有機物を用いるポリエステル織物の解重合法が開示されている。従来の有機金属触媒に比べて、当該解重合法では、触媒を回収することができるという利点を有する。しかしながら、前記解重合法で形成されたBHETの純度が低いため、バージンポリエステル粒子に比べて、前記解重合法で形成された再生ポリエステル粒子(r-PET)の品質が不良であると共に、前記方法での回収のコストが高いという欠点を有する。
【0005】
中国特許公告第100,344,604号には、ポリエステル織物を化学解重合するポリエステル織物の解重合法が開示される。しかし、前記解重合法では、有機金属触媒で解重合反応を促進させて形成されたBHETは副反応物が多く且つ触媒を回収できないという欠点を有する。従って、前記解重合法で形成されたBHETを用いて得た再生ポリエステル粒子(r-PET)は同様に、品質が不良であると共に、回収のコストが高いという欠点を有する。
【0006】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であると考えて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法である本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公告第9,255,194号公報
【特許文献2】中国特許公告第100,344,604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の欠点が改良されたポリエステル織物を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために本発明が採用する一つの技術的手段は、イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法である。前記イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、再生すべきポリエステル織物を提供する準備工程と、イオン液体触媒である解重合触媒の存在下で、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を主に含む解重合物を形成する解重合工程と、遠心分離法及び/又はろ過法で前記イオン液体触媒を分離して、前記イオン液体触媒を回収する分離工程とを含む。
【0010】
好ましくは、前記解重合工程において、前記化学解重合液はエチレングリコール(EG)であると共に、前記化学解重合液を180℃~260℃の解重合温度に加熱することで、前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかける。
【0011】
好ましくは、前記解重合工程において、前記イオン液体触媒は、基材と、前記基材にグラフトしたイオン液体(ionic liquid)とを含む。グラフトする際に、架橋剤としてシランカップリング剤(例えば、クロロプロピルトリメトキシシラン)を用いる必要がある。架橋の方法は、まずシランカップリング剤を酸加水分解した上で、基材(例えば、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルト材料)にグラフトし、次に、アルカリ性条件下でイオン液体をシランカップリング剤にグラフトする方法であり、固体のイオン液体触媒が製造される。
【0012】
好ましくは、前記イオン液体触媒において、前記イオン液体が前記基材にグラフトするグラフトの数は、基材1グラムあたり104個~1018個の前記イオン液体である。
【0013】
好ましくは、前記イオン液体触媒の前記基材は、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルトを含み、前記基材の平均粒子径は、2μm~800μmである。前記平均粒子径を有することによって、大量生産用の遠心分離機及びろ過装置で分離することができる。大量生産方法は、沈殿分離及びフィルターバッグ分離を含む。
【0014】
好ましくは、前記イオン液体触媒における前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMI2ZnCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMI2FeCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMI2CoCl4)、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF4)から選択される少なくとも1つである。
【0015】
好ましくは、前記分離工程において、前記イオン液体触媒は、高い比重を有するため、沈殿作用及びろ過装置で前記解重合物から分離され、なかでも、前記液体触媒の触媒回収率は、95%以上である。
【0016】
好ましくは、前記イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、前記分離工程を行った後に、前記解重合物から精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る精製工程と、前記精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程とを更に含む。
【0017】
好ましくは、前記精製工程は、吸着ステップを含む。前記吸着ステップは、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させて、水相液体を形成することと、活性炭材料及び/又はイオン交換樹脂を水相液体に添加して、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂に前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着させることとを含む。
【0018】
好ましくは、前記水相液体を70~150℃の液体温度に加熱することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水に対する溶解度を向上させると共に、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂に、前記液体温度で前記不純物を吸着させる。
【0019】
好ましくは、前記精製工程は、前記吸着ステップを行った後に、前記水相液体を70~150℃の前記液体温度から、5~25℃の結晶温度に冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを、水相液体から結晶として析出させて、精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶化ステップを更に含む。
【0020】
好ましくは、前記造粒工程で形成された再生ポリエステル粒子(r-PET)は、60以上のL値、-2~2のa値、及び-6~6のb値を有すると共に、90%以上の回収率を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有利な効果として、本発明に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、「再生すべきポリエステル織物を提供することと、イオン液体触媒である解重合触媒の存在下で、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含む解重合物を形成することと、遠心分離法及び/又はろ過法で前記イオン液体触媒を分離して、前記イオン液体触媒を回収する分離工程とを含む」という技術的特徴によって、再生ポリエステル粒子(r-PET)の回収品質を向上させる。
【0022】
なお、本発明に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、解重合効率が高く、大量生産しやすく、コストが低いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明及び添付図面を参照されたい。しかし、添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0025】
以下、所定の具体的な実施態様を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0026】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0027】
[イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法]
従来の技術において、ポリエステル織物の解重合方法では、触媒として主に有機金属又は他の有機物を用いる。前記方法により解重合して形成された解重合物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を主に含む。次に、活性炭材料又はイオン交換樹脂で前記解重合物から染料などの不純物を吸着するか、若しくは、蒸留法でBHETを蒸留する。
【0028】
しかしながら、上述したような、触媒で解重合反応を進行させてBHETを形成する製造プロセスは、副反応が多いこと及び触媒を回収できないこととの欠点を有する。従いまして、上述した方法で形成されたBHETを用いて再生ポリエステル粒子(r-PET)を製造する際には、品質が悪く且つ回収のコストが高いことなどの欠点がある。
【0029】
上記の技術的課題を解決するために、
図1に示すように、本発明に係る実施形態において、イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法を提供する。前記イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、再生ポリエステル粒子(r-PET)の回収品質を向上すると共に、回収のコストが低い、という利点を有する。前記イオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、工程S110、工程S120、工程S130、工程S140及び工程S150を含む。説明すべきことは、本実施形態に記載された各工程の順及び実際的な操作方法は、必要に応じて調整することができ、本発明は本実施形態に制限されるものではない。
【0030】
工程S110は、準備工程(preparation operation)を行うことを含む。前記準備工程は、再生すべきポリエステル織物(recycled polyester fabric)を提供する。なかでも、前記再生すべきポリエステル織物に不純物(impurities)を含んでいると共に、前記不純物は、例えば染料(dye)及び/又は撥水剤(water repellent)を含むが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0031】
例えば、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、染料で染色されて色が付けられている。なお、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、撥水剤の処理によって撥水性を備えている。なかでも、前記染料は例えば、天然染料及び合成染料の少なくとも1つであってもよく、若しくは、前記染料は例えば、物理的染料及び化学的染料の少なくとも1つであってもよい。前記撥水剤は例えば、ケイ素(Si)を含む撥水剤、フッ素(F)を含む撥水剤、フッ素とケイ素を含む撥水剤、又は水性ポリウレタン(PU)撥水剤であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、前記再生すべきポリエステル織物は、染色によって、0超え30未満のL値を有する。即ち、前記再生すべきポリエステル織物は、比較的に深い色を有するが、本発明はこれに制限されるものではない。説明すべきことは、前記L値は、Lab色空間(Lab color space)における明度(若しくは色の白色度)を示すパラメータである。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、前記再生すべきポリエステル織物は、未染色ポリエステル織物であってもよい。即ち、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、染料を含んでいなく、ポリエステル織物の本来の色を呈していてもよい。
【0034】
前記工程120は、解重合工程(de-polymerization operation)を行うことを含む。前記解重合工程は、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、解重合物を形成することを含む。なかでも、前記解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis-2-hydroxylethyl terephthalate,BHET)を含む。なお、前記解重合物は、オリゴマー(oligomer)、前記化学解重合液及び前記不純物を更に含む。
【0035】
より具体的に説明すると、前記化学解重合液は例えば、エチレングリコール(ethylene glycol,EG)であってもよい。また、前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかける方法として、例えば、エチレングリコールの解重合法(若しくは、エチレングリコールのアルコーリシスとも称す)が挙げられる。このように、前記再生すべきポリエステル織物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を主に含む解重合物に解重合され得る。なお、前記解重合物は、ポリエステル織物の解重合で形成されたオリゴマー(oligomer)、前記解重合に用いる化学解重合液(例えば、エチレングリコール)及び再生すべきポリエステル織物に元々存在する不純物を更に含む。
【0036】
特筆すべきことは、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)は、テレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)の付加体である。なお、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、ポリエステル(PET)を合成するための原料(中間体)として用いられる。また、他のモノマーと共に、ポリエステル共重合体を形成することができる。
【0037】
更に説明すると、本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液は、解重合触媒(de-polymerization catalyst)の存在下で、再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかける。前記解重合触媒は、化学解重合液でポリエステル織物に化学解重合を行う活性化エネルギーを低減させるという役割を果たす。換言すると、前記解重合触媒は、化学解重合液のポリエステル織物に対する化学解重合の反応速度を向上させることができる。
【0038】
更に説明すると、使用済みの前記解重合触媒の回収をより容易にするために、本実施形態の解重合触媒は、イオン液体触媒である。前記イオン液体触媒の基材は、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルト材料を含む。前記基材の粒子径は、2μm~800μmである。なお、前記イオン液体触媒では、ミクロンオーダーの粒子サイズで化学解重合液に分散して、前記再生すべきポリエステル織物の解重合反応を促進させる効果を果たす。
【0039】
本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液を、解重合温度に加熱することで、前記再生すべきポリエステル織物の化学解重合が起こる。なかでも、前記解重合温度は、180℃~260℃であることが好ましく、210℃~240℃であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。前記解重合温度において、前記化学解重合液中の再生すべきポリエステル織物の化学解重合の効率は効果的に向上すると共に、前記イオン液体触媒は、触媒の作用をより顕著に発揮する。
【0040】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体触媒は例えば、基材と、前記基材にグラフトするイオン液体(ionic liquid)とを含む。イオン液体触媒の製造は、炭素、ケイ素、鉄、ニッケル、及び/又はコバルトを含む基材の表面に酸化を行うことで、OH官能基を形成させて、シラン(Silane)のOH官能基とグラフトした後に、イオン液体とシランとを更にグラフトする。なかでも、前記基材により、固液分離法を用いて、使用済みのイオン液体触媒を回収することができる。なお、前記解重合工程において、前記イオン液体は、化学解重合液中の再生エステル織物の化学解重合の反応速度を促進させる。説明すべきことは、前記基材は、炭素及び/又はケイ素などの非磁性材料、及び/又は、鉄、ニッケル及び/又はコバルトなどの磁性材料を含む。
【0041】
本発明の一つの実施形態において、前記基材は、ミクロンオーダーの粒子サイズを有する粒子状材料である。なかでも、前記基材の平均粒子径は、2μm~800μmであることが好ましく、5μm~200μmであることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体触媒におけるイオン液体が前記基材にグラフトするグラフトの数(number of grafts)は、基材1グラムあたり104個~1018個であることが好ましく、105個~1015個であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0043】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体触媒と、化学解重合液中のPETの重量との比は、好ましくは、1:100~1:1000である。即ち、前記解重合工程において、前記化学解重合液中のPETの重量は、イオン液体触媒の重量の100倍~1000倍であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0044】
本発明の一つの実施液体において、前記イオン液体触媒における前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,BMI-PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorozincate,BMI2ZnCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachloroferrate,BMI2FeCl4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロコバルト(1-butyl-3-methylimidazolium tetrachlorocobaltate,BMI2CoCl4)、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate,BMI-BF4)からなる群から選択される少なくとも1つから選択されるが、本発明はこれに制限されるものではない。再生すべきポリエステル織物に対する化学解重合の効果がより優れる点から、前記イオン液体を使用することが好ましい。
【0045】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン液体触媒における基材は、鉄微粒子(iron microparticle)、ニッケル微粒子(nickel microparticle)、カーボン微粒子(carbon microparticle)、ケイ素微粒子(silicon microparticle)、及びコバルト微粒子(cobalt microparticle)からなる群から選択される少なくとも1つから選択される。
【0046】
工程S130は、分離工程を行うことを含む。前記分離工程では、遠心分離法及び/又はろ過法で前記イオン液体触媒を分離して、前記イオン液体触媒を回収する。また、前記分離工程において、前記イオン液体触媒は、高い比重を有するため、沈殿作用及びろ過分離で前記解重合物から分離される。なかでも、前記液体触媒の触媒回収率は、95%以上である。
【0047】
若しくは、前記工程S130は、遠心沈降・ろ過工程を含む。前記遠心沈降・ろ過工程では、サイクロン分離機(cyclone separator)で解重合液と触媒とを分離して、ろ過装置で解重合液から触媒を分離することで、前記イオン液体触媒を回収する。
【0048】
より具体的に説明すると、前記遠心沈降・ろ過工程において、前記イオン液体触媒の比重の差によって、前記解重合物からほとんどの触媒を分離することができ、この時、触媒回収率(catalyst recovery rate)は、70%以上であることが好ましい。次に、ろ過装置で解重合液から残留触媒を分離し、この際、前記イオン液体触媒の触媒回収率(catalyst recovery rate)は、95%以上であることが好ましく、96%以上であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、前記解重合物及びイオン液体触媒は、自然重力、遠心重力などの沈殿方法によって分離し、ろ液を圧力ろ過、遠心ろ過するなどの方法によって分離することで、前記イオン液体触媒を回収することができるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0050】
上述した構成により、本発明に係る実施形態における、イオン液体触媒を用いる解重合反応を促進させて、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を形成するという製造プロセスは、少ない副反応、高い転化率、高い選択率及び触媒回収率という利点を有する。従って、本発明の実施形態において、形成された再生ポリエステル粒子(r-PET)は、より高い回収品質及び低い回収コストを有する。
【0051】
前記工程S140は、前記解重合物から精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(purified BHET)を得る精製工程(purification operation)を行うことを含む。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、前記精製工程は、吸着ステップ(adsorption procedure)と結晶化ステップ(crystallization procedure)とをこの順に含む。
【0053】
更に説明すると、前記吸着ステップは、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させて、水相液体を形成することと、活性炭材料及び/又はイオン交換樹脂を水相液体に添加して、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂に再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物(例えば、染料)を吸着させることと、を含む。
【0054】
なかでも、前記水相液体を70℃~150℃の液体温度に加熱することによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水に対する溶解度が向上すると共に、前記活性炭材料及び/又は前記イオン交換樹脂は、前記液体温度で前記不純物を吸着するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0055】
更に説明すると、前記結晶化ステップでは、前記水相液体を70℃~150℃の前記液体温度から、5℃~25℃の結晶温度に冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが、水相液体から結晶として析出されて、前記精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが得られる。
【0056】
工程S150は、精製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを再重合して、再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する造粒工程(granulation operation)を行うことを含む。なかでも、前記再生ポリエステル粒子は、例えば、一軸造粒機または二軸造粒機を用いて再重合されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを造粒することで形成される。
【0057】
本発明の一つの実施形態において、前記造粒工程で形成された再生ポリエステル粒子(r-PET)は、60以上のL値、-2~2のa値、-6~6のb値を有すると共に、前記再生ポリエステル粒子の回収率は、90%以上である。
【0058】
[実験データ及び測定結果]
本発明に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、良好な回収効果及び回収率を有することを証明するために、以下の実施例1~5及び比較例1~5で説明する。
【実施例0059】
実施例1:
解重合触媒として、活性炭(平均粒度61.3μm、粒子径の範囲5μm~284μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(BMI-PF6)で合成された固体イオン液体触媒(以下、SDX1とも呼ばれる)を用いた。
【0060】
10Lの三つ口フラスコに、1kgのPET織物、6kgのエチレングリコール及び20gのイオン液体触媒(SDX1)を入れた後に、190℃に加熱し、撹拌で3時間反応することで、PET織物を解重合した。その後、反応液を120℃に冷却して、300rpmで1分間遠心分離を行った後に、上部の反応液を取り出して触媒と分離した後に、1μmのろ布で上部の反応液をろ過することで、反応液から触媒を分離する。このような2段階分離で得た触媒を回収して再利用すると、触媒回収率は、96.7%であった。
【0061】
絶対圧力3torrの環境で、反応液を120℃から170℃に加熱することで、過剰のEGなどの物質を蒸留し、反応液のEG残留量を5%未満にした。
【0062】
反応液を90℃に冷却した後に7kgの水を添加して、90℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、90℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に、ろ過で活性炭を除去した。
【0063】
90℃のBHETを含有する水溶液を、冷却水を用いて6℃/分(min)の冷却速度で50℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。その後、水溶液に対して第二段階の冷却結晶化を行い、即ち、50℃のBHETを含有する水溶液を、冷水を用いて0.2℃/minの冷却速度で5℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。
【0064】
第1段階及び第2段階で得たBHETを混合・乾燥を行った後に、270℃、0.5torrで、BHETをr-PETになるように再重合した。r-PETの品質について、L=61%、a=0.8、b=3.5であり、回収率が93.0%であった。触媒回収率は、96.7%であった。
【0065】
実施例2:
実施例1において、解重合触媒としてケイ素(平均粒子径55.4μm、粒子径の範囲6μm~275μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートで合成された固体イオン液体触媒(以下、SDX2とも呼ばれる)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0066】
r-PETの品質について、L=62%、a=0.9、b=4.6であり、回収率が95.4%であった。触媒回収率は、98.4%であった。
【0067】
実施例3:
実施例1において、解重合触媒として金属ニッケル(平均粒子径64.3μm、粒子径の範囲4μm~223μm)、クロロプロピルトリメトキシシラン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートで合成された固体イオン液体触媒(以下、SDX3とも呼ばれる)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0068】
r-PETの品質について、L=63%、a=0.6、b=4.8であり、回収率が96.4%であった。触媒回収率は、99.2%であった。
【0069】
実施例4:
実施例1において、解重合触媒として実施例1から回収された触媒(19.34g)及び追加で添加したSDX1触媒(0.66g)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0070】
r-PETの品質について、L=63%、a=0.5、b=4.9であり、回収率が96.1%であった。触媒回収率は、96.5%であった。
【0071】
実施例5:
実施例4において、解重合触媒として実施例4から回収された触媒(19.30g)及びSDX1触媒(0.70g)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0072】
r-PETの品質について、L=62%、a=0.3、b=4.7であり、回収率が96.3%であった。触媒回収率は、96.7%であった。
【0073】
比較例1:
10Lの三つ口フラスコに、1kgのPET織物、6kgのエチレングリコール及び20gの酢酸亜鉛触媒を入れた後に、190℃に加熱し、撹拌下で6時間反応し、次に再加熱して反応液を沸騰状態(195℃~210℃)を維持させることで、過剰のEGを蒸留させて、反応液のEG残留量を5%未満にした。
【0074】
反応液を90℃に冷却した後に7kgの水を添加して、90℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、90℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着させた後に、ろ過で活性炭を除去した。
【0075】
90℃のBHETを含有する水溶液を、冷却水を用いて6℃/minの冷却速度で50℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。その後、水溶液に対して第二段階の冷却結晶を行った。
【0076】
第二段階の冷却結晶において、50℃のBHETを含有する水溶液を、冷水を用いて0.2℃/minの冷却速度で5℃に冷却することによって、BHET結晶を析出させた後に、ろ過で固体BHETを除去した。
【0077】
第1段階及び第2段階で得たBHETを混合・乾燥を行った後に、270℃、0.5torrで、BHETをr-PETになるように再重合した。
【0078】
r-PETの品質について、L=55%、a=1.6、b=5.1であり、回収率が81.3%であった。触媒回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収しにくくなる。
【0079】
比較例2:
比較例1において、解重合触媒として、酢酸亜鉛の代わりに酢酸ナトリウムを用いた以外は、比較例1と同様にした。r-PETの品質について、L=57%、a=1.4、b=6.2であり、回収率が77.9%であった。触媒回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収しにくくなる。
【0080】
比較例3:
比較例1において、撹拌下で6時間反応する代わりに、撹拌下で4時間反応することに変更した以外は、比較例1と同様にした。r-PETの品質について、L=56%、a=1.9、b=7.1であり、回収率が58.3%であった。触媒回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収しにくくなると共に、イオン液体触媒のコストが高い。
【0081】
比較例4:
比較例1において、解重合触媒として、酢酸亜鉛の代わりに1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(BMI-PF6)を用いた以外は、比較例1と同様にした。r-PETの品質について、L=61%、a=1.4、b=6.2であり、回収率が87.8%であった。触媒回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収しにくくなる。
【0082】
比較例5:
比較例1において、解重合触媒として、酢酸亜鉛の代わりに1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四塩化亜鉛(BMI2ZnCl4)を用いた以外は、比較例1と同様にした。r-PETの品質について、L=60%、a=1.1、b=6.7であり、回収率が89.7%であった。触媒回収率は、0%であった。また、触媒が水に溶解されるため、回収しにくくなると共に、イオン液体触媒のコストが高い。
【0083】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、「再生すべきポリエステル織物を提供することと、イオン液体触媒である解重合触媒の存在下で、化学解重合液中で前記再生すべきポリエステル織物を化学解重合にかけることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含む解重合物を形成することと、遠心分離法及び/又はろ過法で前記イオン液体触媒を分離して、前記イオン液体触媒を回収する分離工程を含む」という技術特徴によって、再生ポリエステル粒子(r-PET)の回収品質を向上させる。なお、本発明に係るイオン液体触媒でポリエステル織物を回収する方法は、コストが低いという利点を有する。
【0084】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。