(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033089
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】キャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230302BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20230302BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 517
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
H01G4/30 201G
H01G2/10 J
H01G4/224 100
H01G4/30 513
H01G4/30 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064146
(22)【出願日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114057
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュン イエオル
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ウン ヒェ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH03
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG26
5E082FG42
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082HH43
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】耐湿信頼性を向上させることができ、内部電極層と外部電極との間の通電が可能なキャパシタ部品を提供する。
【解決手段】
本発明の一側面に係るキャパシタ部品は、誘電体層及び内部電極層を含む本体と、上記本体に配置された保護層と、上記保護層の少なくとも一部に配置された外部電極と、を含み、上記保護層は、酸化物セラミック、及び上記内部電極層の金属と同一金属を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極層を含む本体と、
前記本体に配置された保護層と、
前記保護層の少なくとも一部に配置された外部電極と、を含み、
前記保護層は、酸化物セラミック、及び前記内部電極層の金属と同一金属を含む、キャパシタ部品。
【請求項2】
前記酸化物セラミックは、
酸素イオンの平均分極率が2Å3以上である、請求項1に記載のキャパシタ部品。
【請求項3】
前記酸化物セラミックは、バンドギャップエネルギーが3.0ev以上4.0ev以下である、請求項2に記載のキャパシタ部品。
【請求項4】
前記酸化物セラミックは、
二酸化チタン(Titanium Oxide、TiO2)、酸化スズ(Tin dioxide、SnO2)、及び酸化亜鉛(Zinc oxide、ZnO)の少なくとも一つを含む、請求項1に記載のキャパシタ部品。
【請求項5】
前記内部電極層はニッケル(Ni)を含む、請求項4に記載のキャパシタ部品。
【請求項6】
前記保護層に含有された前記内部電極層の金属と同一金属の含有量は、
前記保護層のうち前記外部電極と近い領域よりも前記保護層のうち前記本体と近い領域でより高い、請求項5に記載のキャパシタ部品。
【請求項7】
前記保護層は、前記本体の表面全体をカバーする、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項8】
前記外部電極と前記内部電極層は、前記保護層によって物理的に互いに離隔し、電気的に互いに連結された、請求項7に記載のキャパシタ部品。
【請求項9】
前記本体は、前記内部電極層が露出して互いに向かい合う第1及び第2面と、前記第1及び第2面を連結する第3面を有し、
前記本体の第1及び第2面に配置された前記保護層の平均厚さは30nm未満である、請求項7に記載のキャパシタ部品。
【請求項10】
前記本体の第3面に配置された前記保護層の平均厚さは、前記本体の第1及び第2面に配置された前記保護層の平均厚さよりも厚い、請求項9に記載のキャパシタ部品。
【請求項11】
前記保護層は、
ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、及びアルミニウム(Al)の少なくとも一つの酸化物をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項12】
前記保護層は、前記外部電極の金属と同一金属をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャパシタ部品。
【請求項13】
前記外部電極は銅(Cu)を含む、請求項12に記載のキャパシタ部品。
【請求項14】
前記保護層に含有された前記外部電極の金属と同一金属の含有量は、
前記保護層のうち前記本体と近い領域よりも前記保護層のうち前記外部電極と近い領域でより高い、請求項13に記載のキャパシタ部品。
【請求項15】
誘電体グリーンシートを形成する段階と、
第1導電性ペーストを前記誘電体グリーンシートに塗布する段階と、
前記第1導電性ペーストが塗布された前記誘電体グリーンシートを複数積層してグリーンチップを形成する段階と、
前記グリーンチップを焼結して誘電体層及び内部電極層を含む本体を形成する段階と、
気相蒸着によって前記本体をカバーする保護層を形成する段階と、
前記保護層の少なくとも一部に外部電極を形成する段階と、を含み、
前記外部電極を形成する段階後の前記保護層は、
酸素イオンの平均分極率が2Å3以上であり、バンドギャップエネルギーが3.0ev以上4.0ev以下である酸化物セラミック、及び
前記内部電極層の金属と同一金属を含む、キャパシタ部品の製造方法。
【請求項16】
前記外部電極を形成する段階において、
前記外部電極は、第2導電性ペーストを前記保護層に塗布した後に焼結して形成される、請求項15に記載のキャパシタ部品の製造方法。
【請求項17】
前記外部電極を形成する段階において、
前記内部電極層の金属は前記保護層に拡散される、請求項15または16に記載のキャパシタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化及び軽量化が進行されるにつれて、超小型電子部品に対する開発が急速に進んでいる。また、自動車、通信装備などの安定性が重要な製品においても電子部品適用領域の増加とともに、高信頼性を有する電子部品に対する要求も大きく増加している。電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi Layered Ceramic Capacitor)は、小型でありながらも高容量が可能であるという利点を有しているため、様々な電子製品に対する部品として用いられている。
【0003】
しかし、MLCCの小型化及び高容量化に伴い、MLCCの内部電極層間の間隔が減少化し、MLCCの誘電体層が薄くなる。したがって、MLCCは、外部環境変化に対する劣化が発生しやすくなり、高信頼性を保障し難いことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本公開特許第2021-027094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一例に係る目的の一つは、耐湿信頼性を向上させることができるキャパシタ部品を提供することである。
【0006】
本発明の一例に係る目的のもう一つは、耐湿信頼性を向上させながらも、内部電極層と外部電極との間の通電が可能なキャパシタ部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、誘電体層及び内部電極層を含む本体と、上記本体に配置された保護層と、上記保護層の少なくとも一部に配置された外部電極と、を含み、上記保護層は、酸化物セラミック及び上記内部電極層の金属と同一金属を含むキャパシタ部品が提供される。
【0008】
本発明の他の側面によると、誘電体グリーンシートを形成する段階と、導電性ペーストを上記誘電体グリーンシートに塗布する段階と、上記導電性ペーストが塗布された上記誘電体グリーンシートを複数積層してグリーンチップを形成する段階と、上記グリーンチップを焼結して誘電体層及び内部電極層を含む本体を形成する段階と、気相蒸着(vapor deposition)によって上記本体をカバーする保護層を形成する段階と、上記保護層の少なくとも一部に外部電極を形成する段階と、を含み、上記外部電極を形成する段階を経た後、上記保護層は、酸素イオンの平均分極率(average polarizability of oxide ion、αO2-)が2Å3以上であり、バンドギャップエネルギー(Band Gap Energy)が3.0ev以上4.0ev以下である酸化物セラミックと、上記内部電極層の金属元素と、を含むキャパシタ部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面に係るキャパシタ部品は、耐湿信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明の他の側面に係るキャパシタ部品は、耐湿信頼性を向上させながらも内部電極層と外部電極との間の通電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャパシタ部品の斜視図を概略的に示した図面である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面である。
【
図3】実験例4の
図2のAに対するSEMイメージを示した図面である。
【
図5a】実験例1の加速寿命評価及び耐湿信頼性評価の結果を示した図面である。
【
図5b】実験例2の加速寿命評価及び耐湿信頼性評価の結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願に用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。そして、明細書全体において、「上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準にした上側に位置することを意味するものではない。
【0013】
また、結合とは、各構成要素間の接触関係において、各構成要素間に物理的に直接接触される場合のみを意味するのではなく、他の構成が各構成要素間に介在して、その他の構成に構成要素がそれぞれ接触されている場合まで包括する概念として用いられる。
【0014】
図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示したものであるため、本発明は、必ずしも図示されたものに限定されない。
【0015】
図面において、第1方向はZ方向または厚さ方向、第2方向はX方向または長さ方向、第3方向はY方向または幅方向に定義されることができる。
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るキャパシタ部品及びキャパシタ部品の製造方法について添付図面を参照して詳細に説明し、添付図面を参照して説明することにおいて、同一または対応する構成要素は、同一の図面番号を付与し、これに対する重複説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るキャパシタ部品の斜視図を概略的に示した図面であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面であり、
図3は、実験例4の
図2のAに対するSEMイメージを示した図面であり、
図4は、実験例1~4の容量を示した図面であり、
図5a及び
図5bは、実験例1及び実験例2の加速寿命評価及び耐湿信頼性評価の結果を示した図面である。
【0018】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係るキャパシタ部品1000は、本体100、保護層200及び外部電極310、320を含み、めっき層410、420をさらに含むことができる。本体100は、誘電体層110及び内部電極層121、122を含む。
【0019】
本体100は、本実施形態に係るキャパシタ部品1000の外観をなす。本体100の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体100は、六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼結過程で本体100に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体100は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0020】
本体100は、
図1及び
図2を基準に、長さ方向Xに互いに向かい合う第1面101及び第2面102、厚さ方向Zに互いに向かい合う第3面103及び第4面104、幅方向Yに向かい合う第5面105及び第6面106を含む。以下では、本体100の両端面(一端面及び他端面)は、本体の第1面101及び第2面102を意味し、本体100の両側面(一側面及び他側面)は、本体の第5面105及び第6面106を意味することができる。また、本体100の一面及び他面は、それぞれ本体100の第3面103及び第4面104を意味することができる。本体100の一面103は、本実施形態に係るキャパシタ部品1000をプリント回路基板などの実装基板に実装する際に、実装面として用いられることができる。
【0021】
本体100は、誘電体層110、及び誘電体層110を間に挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極層121、122を含む。誘電体層110、第1内部電極層121及び第2内部電極層122のそれぞれは、複数の層で形成される。以下では、第1及び第2内部電極層121、122間の区別が必要である場合を除き、内部電極層121、122と通称する。したがって、内部電極層121、122と通称される部分に対する説明は、第1及び第2内部電極層121、122に共通して適用されることができる。
【0022】
本体100を形成する複数の誘電体層110は、焼結された状態であって、隣接する誘電体層110間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0023】
誘電体層110を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であることができる。誘電体層110を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0024】
本体100の上部及び下部、すなわち、厚さ方向(Z方向)の両端部には、カバー層130が配置されることができる。カバー層130は、外部衝撃に対してキャパシタ部品の信頼性を維持する役割を果たすことができる。カバー層110は、誘電体層110を形成するための資材、または誘電体層110を形成するための資材とは異なる資材を用いて形成されることができる。例えば、後者の場合、誘電体層110を形成するための資材及びカバー層110を形成するための資材は、資材内のセラミック粒子の組成、大きさ、含有量、及び分散程度の少なくとも一つが互いに相違するか、または資材内の副成分の組成、大きさ、含有量、及び分散程度の少なくとも一つが異なることがある。
【0025】
内部電極層121、122は、誘電体層110と交互に配置され、全体的に板状の形態と類似した形態を有することができる。内部電極層121、122は、第1及び第2内部電極層121、122を含むことができる。
【0026】
内部電極層121、122は、それぞれ本体100の長さ方向Xの両端面である第1面101及び第2面102に交互に露出して、第1及び第2外部電極310、320と連結される。すなわち、第1内部電極層121は、本体100の第1面101に露出して第1外部電極310と連結され、本体100の第2面102に露出せず、第2外部電極320と連結されない。第2内部電極層122は、本体100の第2面102に露出して第2外部電極320と連結され、本体100の第1面101に露出せず、第1外部電極310と連結されない。したがって、第1内部電極層121は、本体100の第2面102から一定距離離隔し、第2内部電極層122は、本体100の第1面101から一定距離離隔する。このとき、内部電極層121、122は、中間に配置された誘電体層110によって互いに電気的に分離されることができる。
【0027】
内部電極層121、122は、例えば、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のうち一つ以上の導電体を含むことができる。一例として、内部電極層121、122は、ニッケル(Ni)を含む導電性粉末、バインダー及びソルベントなどを含む導電性ペーストを誘電体グリーンシートに積層した後、これを焼結して形成されることができるため、内部電極層121、122は、ニッケル(Ni)を含むことができる。
【0028】
内部電極層121、122のそれぞれの厚さは、10nm以上500nm以下であることができる。内部電極層121、122の厚さが10nm未満である場合には、内部電極層121、122の連結性が低下して静電容量が減少されることができる。内部電極層121、122の厚さが500nm超過である場合には、同一サイズの部品を基準に、誘電体層110の厚さが薄く形成されて内部電極層121、122間の電気的絶縁を図ることが困難である。
【0029】
内部電極層121、122の厚さは、キャパシタ部品を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)をスキャンした光学イメージまたはSEMイメージを用いて測定されることができる。一例として、内部電極層121、122の厚さは、上記イメージに示された内部電極層121、122のいずれか一つを選択し、選択された一つの内部電極層のZ方向に沿ったディメンション(dimension)をX方向に沿って複数回測定し、これを算術平均したものを意味することができる。このようなX方向に沿った複数回測定は、X方向に沿って等間隔に行われることができるが、これに制限されるものではない。また、内部電極層121、122の厚さは、上記イメージに示された複数の内部電極層121、122のそれぞれについて上述した方法で各内部電極層121、122の厚さを算出し、これを内部電極層121、122の総数で割ったものを意味することができる。
【0030】
内部電極層121、122内には、空隙(void)及びセラミック粒子が配置されることができる。セラミック粒子は、内部電極層を形成するための導電性ペーストにさらに添加されたチタン酸バリウムなどのセラミック粉末によって形成されたものであることができる。セラミック粒子は、誘電体層110の誘電体と同様に、チタン酸バリウム系物質であることができるが、これに制限されるものではない。空隙は、導電性ペーストに含まれたニッケル(Ni)粉末及び/またはセラミック粒子が焼結過程での拡散及び再結晶によって形成されるか、または導電性ペーストに含まれた溶媒などの有機物質が焼結過程で削除されることにより形成されることができる。
【0031】
保護層200は本体100に配置される。保護層200は、本体100の第1~第6面101、102、103、104、105、106に配置され、本体100の表面全体をカバーすることができ、本体100と後述する外部電極310、320との間に配置される。
【0032】
保護層200は、酸化物セラミックを含む。保護層200の酸化物セラミックは、酸素イオンの平均分極率(average polarizability of oxide ion、αO2-)が2Å3以上であり、バンドギャップエネルギー(Band Gap Energy)が3.0ev以上4.0ev以下であることができる。酸化物セラミックの酸素イオンの平均分極率(average polarizability of oxide ion、αO2-)が2Å3以上である場合、水分浸透が抑制されて部品全体の耐湿信頼性を向上させることができる。酸化物セラミックのバンドギャップエネルギー(Band Gap Energy)が3.0ev以上4.0ev以下である場合、可視光線に対して透明であるため、本体の外観を目視で確認することができる。
【0033】
酸素イオンの平均分極率とは、酸化物セラミック内で酸素イオンの平均分極率を意味するものであり、V.Dimitrov and T.Komatsu、「Classification of Simple Oxides:A Polarizability Approach」、Journal of Solid State Chemistry 163、100-112(2002)に開示されたように、屈折率(refractive index)から計算された酸化物セラミック内で酸素イオンの分極率(Polarizability of oxide ion calculated from Refractive Index、(αO2-(n0)))と、エネルギーギャップ(energy gap)から計算された酸化物セラミック内で酸素イオンの分極率(Polarizability of oxide ion calculated from Energy Gap、(αO2-(Eg)))の算術平均を意味することができる。ここで、屈折率(refractive index)から計算された酸化物セラミック内で酸素イオンの分極率(αO2-(n0))は、下記の数1によって計算することができ、エネルギーギャップ(energy gap)から計算された酸化物セラミック内で酸素イオンの分極率(αO2-(Eg))は、下記の数2によって計算することができる。
【0034】
【0035】
【0036】
(数1及び2のそれぞれにおいて、Vm:molar volume、n0:refractive index、αi:cation polarizability、Eg:energy gap、P:酸化物セラミックにおいてカチオンのモル数(酸化物セラミックを最も単純な整数比で示した場合を意味する)、q:酸化物セラミックにおいて酸素のモル数(酸化物セラミックを最も単純な整数比で示した場合を意味する)を表す。)
【0037】
二酸化チタン(Titanium Oxide、TiO2)、酸化スズ(Tin dioxide、SnO2)、及び酸化亜鉛(Zinc oxide、ZnO)は、上述した酸素イオンの平均分極率の条件と、バンドギャップエネルギー(Band Gap Energy)条件をすべて満たす。したがって、本実施形態の保護層200の酸化物セラミックは、二酸化チタン(Titanium Oxide、TiO2)、酸化スズ(Tin dioxide、SnO2)、及び酸化亜鉛(Zinc oxide、ZnO)の少なくとも一つを含むことができる。
【0038】
保護層200の酸化物セラミックは、誘電体グリーンシートに内部電極層形成用導電性ペーストを塗布し、導電性ペーストが塗布された誘電体グリーンシートを複数枚積層してグリーンチップを形成し、グリーンチップを焼結して本体100を形成し、本体100の第1~第6面101、102、103、104、105、106に気相蒸着を行うことで形成されることができる。本実施形態の場合、酸化物セラミックは、酸化物セラミックのスパッタリングターゲット(target)と、RF-sputter装備を用いて本体100の表面に形成されることができるが、本発明の範囲がこれに制限されるものではない。
【0039】
保護層200は、内部電極層121、122の金属と同一金属を含むことができる。一例として、内部電極層121、122がニッケル(Ni)粉末を含む導電性ペーストを焼結してなる場合、保護層200には、内部電極層121、122の金属元素であるニッケル(Ni)を含むことができる。
【0040】
内部電極層121、122の金属元素は、保護層200の形成後に外部電極310、320を焼結形成することにおいて、上記焼結工程における熱処理により、保護層200に拡散されることができる。その結果、保護層200内に含有された内部電極層121、122の金属元素は保護層200の酸化物セラミックの格子内に置換または侵入したものであることができる。また、保護層200に含有された内部電極層121、122の金属元素の含有量は、保護層200のうち外部電極310、410と近い領域よりも保護層200のうち本体100と近い領域でさらに高いことができる。ここで、保護層200が内部電極層121、122の金属元素を含有するか否か、及び保護層200内に含有された内部電極層の金属元素の含有量は、SEM-EDS(Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive Spectroscopy)測定によって観察することができる。さらに、上記測定は、領域別に複数回測定を行った後、これを算術平均したものである。
【0041】
保護層200は、本体100の表面全体をカバーすることができる。すなわち、保護層200は、本体100の第1~第6面101、102、103、104、105、106を全てカバーすることができる。
【0042】
本体100の第1及び第2面101、102のそれぞれに配置された保護層200の厚さT1は、本体100の第3面103に配置された保護層200の厚さT2よりも厚くてもよい。本体100の第1及び第2面101、102は、内部電極層121、122と外部電極310、320との間の電気的連結が必要であるため、本体100の第1及び第2面101、102に配置された保護層200の厚さT1は30nm未満であることができる。本体100の第1及び第2面101、102に配置された保護層200の厚さT1は30nm以上である場合には、
図4に示したように、内部電極層と外部電極との間の連結性が劣り、容量を実現することが困難である。本体100の第3面103に配置された保護層200の厚さT2は制限されない例であって、30nm以上であることができる。本体100の第3面103は、内部電極層121、122と外部電極310、320との間の電気的連結を図る必要がないため、耐湿信頼性を向上させるための十分な厚さを確保することができる。
【0043】
ここで、保護層200の厚さT1、T2は平均厚さを意味することができる。さらに、保護層200の厚さT1、T2は、キャパシタ部分を幅方向Yの中央部で切断したXZ断面(cross-section)をスキャンした光学イメージまたはSEMイメージを用いて測定されることができる。一例として、本体100の第2面102に配置された保護層200の厚さT1は、上記イメージに図示された保護層200をZ方向に3等分したとき、Z方向の中央に配置された領域を選択し、該当中央領域において、保護層200のX方向に沿ったディメンション(dimension)をZ方向に複数回測定し、これを算術平均したものを意味することができる。このようなZ方向に沿った複数回測定は、Z方向に沿って等間隔で行われることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
保護層200は、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、及びアルミニウム(Al)の少なくとも一つの酸化物をさらに含むことができる。すなわち、保護層200は、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マンガン(MnO)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)の少なくとも一つを含むことができる。二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マンガン(MnO)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)は、ガラス形成子として機能し、保護層200の耐湿信頼性をより向上させることができる。すなわち、上記物質は、保護層200内のボイド(void)、ピンホール(Pin hole)及びクラック(crack)などの欠陥(defect)を埋めて耐湿信頼性を向上させることができる。
【0045】
外部電極310、320は保護層200の少なくとも一部に配置され、内部電極層121、122と連結される。すなわち、外部電極310、320は、保護層200によって内部電極層121、122と物理的に接触しないが、保護層200によって内部電極層121、122と電気的に連結される。外部電極310、320は、
図1及び
図2に示したように、本体100の第1及び第2面101、102上にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極層121、122とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極310、320を含むことができる。
【0046】
第1及び第2外部電極310、320は、本体100の第1及び第2面101、102上にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極層121、122と連結された第1及び第2連結部と、第1及び第2連結部において、本体100の第3面103上に延長した第1及び第2延長部をそれぞれ含むことができる。第1及び第2延長部は、本体100の第3面103上で互いに離隔するように配置される。一方、第1及び第2延長部は、本体100の第3面103のみならず、本体100の第4~第6面104、105、106のそれぞれの上に延長することができるが、本発明の範囲はこれに制限されるものではない。すなわち、
図1に示したように、本発明の外部電極310、320のそれぞれは、本体100の5つの面に形成されるnormalタイプであることができるが、これに制限されるものではなく、本体100の2つの面に形成されるLタイプ、本体100の3つの面に形成されるCタイプなどであることができる。
【0047】
外部電極310、320は、保護層200が形成された本体100に導電性金属及びガラスを含む焼結型導電性ペーストを塗布し、これを焼結して形成されることができる。ここで、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)の少なくとも一つを含むことができる。外部電極310、320の金属元素は、上述した焼結工程によって保護層200に拡散されることができる。このようなメカニズムにより、保護層200に含有された外部電極310、320の金属元素の含有量は、保護層200のうち本体100と近い領域よりも保護層200のうち外部電極310、320と近い領域でより高いことができる。ここで、保護層200が外部電極310、320の金属元素を含有するか否か、及び保護層200内に含有された外部電極310、320の金属元素の含有量は、SEM‐EDS(Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive Spectroscopy)測定によって観測することができる。さらに、上記測定は、領域別に複数回測定を行った後、これを算術平均したものであることができる。
【0048】
めっき層410、420は、外部電極310、320のそれぞれにめっき法で形成されることができる。一例として、めっき層410、420のそれぞれは、外部電極310、320上にめっきによって形成されたニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層の少なくとも一つを含むことができる。一方、図示してはいないが、外部電極310、320とめっき層410、420との間には、導電性金属及び硬化タイプの樹脂を含む、硬化タイプの導電性ペーストを塗布し、これを硬化することで形成された導電性樹脂層が配置されることができる。導電性樹脂層の導電性金属は、銅(Cu)及び銀(Ag)の少なくとも一つを含むことができる。
【0049】
<実験例>
誘電体グリーンシートと内部電極層形成用導電性ペーストを用いてグリーン本体を作製し、これを焼結して本体を製造した。同一Lotで製造された本体を用いるが、本体の表面に直接焼結タイプの導電性ペーストを塗布及び焼結して、外部電極を形成したものを実験例1とした。TiO2ターゲット及び常温RFスパッタ方式を用いて、本体の表面にTiO2を含む保護層を形成した後、保護層に焼結タイプの導電性ペーストを塗布及び焼結して外部電極を形成したものを実験例2~4とした。実験例2は、10分間スパッタリングを行って保護層の平均厚さが10nmであり、実験例3は、20分間スパッタリングを行って保護層の平均厚さが20nmであり、実験例4は、30分間スパッタリングを行って保護層の平均厚さが30nmである。
【0050】
実験例1~4において、外部電極は、40μmの厚さでペーストを塗布した後、焼結温度735℃及び焼結時間120分間焼結して形成された。一方、実験例1の場合、外部電極形成後に硬化タイプの導電性ペーストを塗布及び硬化して樹脂電極層をさらに形成した。
【0051】
実験例1~4は、上述した保護層形成のためのスパッタリング条件のみを異ならせて、残りの条件、例えば、i)誘電体グリーンシートの組成、ii)内部電極層形成用導電性ペーストに含まれたセラミック粉末の組成及び含有量、iii)グリーン本体のsize(L×W×T)、iv)昇温条件及び焼結雰囲気などの焼結条件、v)誘電体層の総層数、vi)内部電極層の総層数、vii)内部電極層の平均厚さ、viii)誘電体層の平均厚さ、ix)外部電極の組成及び形成条件などを同様にした。例えば、実験例1~4のいずれも、各内部電極層の平均厚さは200nm、各誘電体層の平均厚さは800nm、内部電極層の総数は460、グリーン本体のsizeはL=1200μm、W=700μm、T=600μmと互いに同一である。
【0052】
信頼性評価は複合信頼性評価方式を適用し、各実験例当たり40個の試験片について、Step別に表1のように進行した。
【0053】
【0054】
図3を参照すると、30分間スパッタリングの際に本体に形成された保護層の平均厚さが30nmであることが確認され(
図3の上部)、外部電極の形成後の場合、内部電極層が陥没した既存状態を維持することが分かる(
図3の下部)。これは、平均厚さ30nmのTiO
2が形成された実験例4の場合、内部電極層のニッケル(Ni)の拡散が抑制されるようになり、Ni及びCu外部電極の連結性が劣ることが分かる。
【0055】
図4は、実験例1~4のそれぞれの容量結果を示す。一方、
図4のX軸では、実験例1をRef、実験例2~4のそれぞれをTiO
2の厚さで示している。
図3で確認したように、平均厚さ30nmのTiO
2が形成された実験例4の場合、内部電極層と外部電極との間の電気的連結性が劣って接触性の問題が大きい。但し、平均厚さ30nm未満のTiO
2が形成された実験例2及び3においては、容量実現が確認された。これは、平均厚さ30nm未満のTiO
2が形成された実験例2及び3においては、内部電極層のニッケル(Ni)がTiO
2によって拡散して入り、Cuと連結されることができ、トンネリング現象によって比較的薄い厚さのTiO
2層を電流が流れることができるためであると判断される。
【0056】
図5a及び
図5bは、実験例1及び実験例2のそれぞれの複合信頼性評価の結果である。Halt領域では両方ともfailが発生しないが、実験例1の場合、耐湿雰囲気(図面の8585領域)に入りながら初期に5つのラインがfailとなり、2時間後にさらに1つがfailとなった(
図5a)。これに対し、平均厚さ10nmのTiO
2が形成された実験例2の場合、耐湿雰囲気に入りながら初期にfailは発生せず、30分後に1つ、1時間後にさらに1つfailが発生した(
図5b)。これは、実験例1と異なり、実験例2の場合、保護層が湿気浸透を抑制するため、初期failにおいて差異が発生するためであると判断される。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、または削除などにより本発明を多様に修正及び変更させることができるものであり、これも本発明の権利範囲内に属するといえる。
【符号の説明】
【0058】
100 本体
110 誘電体層
121、122 内部電極層
130 カバー層
200 保護層
310、320 外部電極
410、420 めっき層
1000 キャパシタ部品