(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003309
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20221228BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221228BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104408
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 相斗
(72)【発明者】
【氏名】内田 健二
(72)【発明者】
【氏名】新井 博之
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL031
4J038JC37
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA11
4J038NA14
(57)【要約】
【課題】 800°Cの高温に耐え、かつ塗布性およびシール性に優れた塗料組成物を提供する。
【解決手段】 メチルフェニル系シリコーン樹脂と窒化ホウ素とを含む耐熱性が良好な塗料組成物に関する。上記メチルフェニル系シリコーン樹脂の硬度は鉛筆硬度Hであり、また上記窒化ホウ素の平均粒径は5~10μmの範囲であり、かつメチルフェニル系シリコーン樹脂を10~30wt%、窒化ホウ素を10~32wt%含んでいる。さらに必要に応じて、酸化ホウ素を5wt%以下含有させてもよい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルフェニル系シリコーン樹脂と窒化ホウ素とを含む塗料組成物であって、
上記メチルフェニル系シリコーン樹脂の硬度は鉛筆硬度Hであり、また上記窒化ホウ素の平均粒径は5~10μmの範囲であり、かつメチルフェニル系シリコーン樹脂を10~30wt%、窒化ホウ素を10~32wt%含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
さらに酸化ホウ素を5wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料組成物に関し、より詳しくは、ガスケット等に塗布される高温での耐熱性とシール性とが要求される塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗料組成物として、シリコーン樹脂と窒化ホウ素とを含む塗料組成物が知られている(特許文献1)。
上記塗料組成物においては、シリコーン樹脂としてエポキシ変性シリコーン樹脂を用いており、エポキシ変性シリコーン樹脂を用いることにより700°C以上の高温に耐え得ることが開示されている。
他方、上記特許文献1においては、シリコーン樹脂としてメチルフェニル系シリコーン樹脂を用いると700°C以上の高温に耐えることができないと述べられている(比較例1,2,3参照)。上記メチルフェニル系シリコーン樹脂として、軟質タイプのメチルフェニル系シリコーン樹脂(比較例1)、硬質タイプのメチルフェニル系シリコーン樹脂(比較例2)および耐熱タイプのメチルフェニル系シリコーン樹脂(比較例3)が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐熱性の塗料組成物については、常により高い耐熱性と良好なシール性とを有する塗料組成物が求められている。
本発明者等が上記メチルフェニル系シリコーン樹脂についてより詳細に研究したところ、メチルフェニル系シリコーン樹脂を用いても、上記エポキシ変性シリコーン樹脂が耐えられない800°C上の高温に耐えることができる塗料組成物を得ることができることが確認された。
すなわち本発明は、従来耐えることができなかった800°C上の高温に耐えることができ、かつ塗装性の良いメチルフェニル系シリコーン樹脂を用いた塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、メチルフェニル系シリコーン樹脂と窒化ホウ素とを含む塗料組成物であって、
上記メチルフェニル系シリコーン樹脂の硬度は鉛筆硬度Hであり、また上記窒化ホウ素の平均粒径は5~10μmの範囲であり、かつメチルフェニル系シリコーン樹脂を10~30wt%、窒化ホウ素を10~32wt%含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明よれば、800°C以上の高温に対する耐熱性に優れ、かつ塗装性が良好でシール性に優れた塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施例について説明すると、本実施例の塗料組成物は、メチルフェニル系シリコーン樹脂と窒化ホウ素とを含んでいる。
メチルフェニル系シリコーン樹脂は、有機置換基がメチル基およびフェニル基で構成されたシリコーン樹脂で、一般に耐熱性に優れ、柔軟性などの機械的強度を有し、光沢のある被膜を形成する。
本実施例のメチルフェニル系シリコーン樹脂としては、特に鉛筆硬度Hの硬度を有するメチルフェニル系シリコーン樹脂が好適で、他の鉛筆硬度を有するメチルフェニル系シリコーン樹脂と比較して高い耐熱性と良好な塗装性およびシール性を有している。
鉛筆硬度は17種の硬度に分かれており、硬いほうから順に9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bとなっている。
本実施例で用いる鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂は、鉛筆硬度におけるほぼ中間の硬度を有している。
本実施例で用いる窒化ホウ素(BN)は耐熱性、潤滑性に優れており、その平均粒径は5~10μmの範囲であることが望ましい。平均粒径が10μmを超えると分散性が悪くなるので好ましくない。また平均粒径が5μm未満だと均一に分散させにくくなる。
上記メチルフェニル系シリコーン樹脂と窒化ホウ素との配合割合は、メチルフェニル系シリコーン樹脂を10~30wt%、窒化ホウ素を10~32wt%含むことが望ましい。
窒化ホウ素の添加割合が10wt%よりも少なくなると密着性が低下してシール性が悪くなり、また添加割合が32wt%を超えると分散性が悪くなる。
【0008】
上記組成に加えて、必要に応じて酸化ホウ素(B2O3)を添加することができる。酸化ホウ素は高温時にガラス状になり、バインダーとしての役割を果たす。好ましい添加量は5wt%以下であり、5wt%を超えると塗装性が悪化する。
また本実施例に係る塗料組成物を製造するために適宜有機溶剤や添加剤を加えることができることは勿論である。
有機溶剤はメチルフェニル系シリコーン樹脂を溶解させるために用いるもので、例えばn-ブタノール、2-n-ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、低沸点芳香族ナフサ、MEKなどを用いることができる。
添加剤は分散性を良好にするために用いられ、上述したMEKの他、ビニルトリメトキシシランなどを用いることができる。
【0009】
以下、具体的な実施例についてより詳細に説明する。
「本発明品1」
溶剤としてn-ブタノール、2-n-ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール(上記n-ブタノールおよび2-n-ブトキシエタノール中に含まれている溶剤)、低沸点芳香族ナフサ、MEKを溶剤として用い、これらの混合液中に添加剤としてビニルトリメトキシシランを添加して攪拌する。さらに鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂と平均粒径5μmの窒化ホウ素とを順次添加して十分に攪拌する。
このようにして本発明品1として、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を10wt%、平均粒径5μmの窒化ホウ素を10wt%およびその他溶剤などを80wt%含んだ塗料組成物を製造した。
【0010】
「本発明品2」
本発明品1と同一の製造方法にて、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を30wt%、平均粒径10μmの窒化ホウ素を10wt%およびその他溶剤などを60wt%含んだ塗料組成物を製造した。
「本発明品3」
本発明品1と同一の製造方法にて、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を10wt%、平均粒径5μmの窒化ホウ素を32wt%およびその他溶剤などを58wt%含んだ塗料組成物を製造した。
「本発明品4」
本発明品1と同一の製造方法にて、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を30wt%、平均粒径10μmの窒化ホウ素を32wt%およびその他溶剤などを38wt%含んだ塗料組成物を製造した。
【0011】
「本発明品5」
本発明品1と同一の製造方法にさらに酸化ホウ素を添加して、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を10wt%、平均粒径5μmの窒化ホウ素を32wt%、酸化ホウ素1wt%およびその他溶剤などを57wt%含んだ塗料組成物を製造した。
「本発明品6」
本発明品5と同一の製造方法にて、鉛筆硬度Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を30wt%、平均粒径10μmの窒化ホウ素を32wt%、酸化ホウ素5wt%およびその他溶剤などを33wt%含んだ塗料組成物を製造した。
【0012】
「比較例1」
比較例1として、本発明品1と同一の製造方法にて、鉛筆硬度Hの代わりに鉛筆硬度4Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を10wt%、平均粒径5μmの窒化ホウ素を10wt%およびその他溶剤などを80wt%含んだ塗料組成物を製造した。
「比較例2」
比較例2として、本発明品1と同一の製造方法にて、メチルフェニル系シリコーン樹脂の代わりにエポキシ変性シリコーン樹脂を33.3wt%、平均粒径10μmの窒化ホウ素を32wt%およびその他溶剤などを34.7wt%含んだ塗料組成物を製造した。
【0013】
上述のようにして製造した塗料組成物をそれぞれ厚さ0.25mm、サイズ50mm×70mmのSUS板の片面にスプレーによって約50μmの厚さに塗布し、120°Cで10分間乾燥させ、さらに180°Cで25分間焼き付けしてテストピースを製造した。
製造したテストピースを800°Cの電気炉に入れて15時間放置し、冷却後、JISK5600-5-6クロスカット法で密着性を評価した。
【0014】
表1に示すように、発明品1~6においては全て800°Cの高温に耐え、剥がれやひび割れは認められなかった。また漏れのない良好なシール性を得ることができた。
発明品1~6に対して、鉛筆硬度4Hのメチルフェニル系シリコーン樹脂を用いた比較例1においては、800°Cの高温に耐え得るという優れた耐熱性を示したが、塗装性が悪くて塗りむらが生じてしまい、確実なシール性を確保できないという危険性があった。
またエポキシ変性シリコーン樹脂を用いた比較例2においては、800°Cの高温に耐えることができず、上記クロスカット法において全てで剥がれが生じてしまった。
【0015】