(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033098
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】所定の角度位置に配向された背部を有する時計ケース、前記ケースを含む時計、およびそのようなケースを組み立てるための方法
(51)【国際特許分類】
G04B 37/11 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G04B37/11 P
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079969
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】21193001.1
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・チュミ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シェレル
(57)【要約】
【課題】背部(130)を受け入れる第2の開口部の反対側にある、ガラス(120)を受け入れる第1の開口部を有する中間部(110)を備える時計ケース(100)を提供すること。
【解決手段】時計ケース(100)は、背部(130)が、ねじ締めによって中間部(110)と協働するねじ付きリング(140)によって、中間部(110)の環状軸受面(112)を圧迫するように保持され、背部(130)は、単一の角度位置で中間部(110)に対して回転できないように背部(130)を固定するように中間部(110)に設けられた第2のインデックス要素(114)と協働するように構成された第1のインデックス要素(133)を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背部(130)を受け入れる第2の開口部の反対側にある、ガラス(120)を受け入れる第1の開口部を有する中間部(110)を備えた時計ケース(100)であって、前記時計ケース(100)は、前記背部(130)が、ねじ締めによって前記中間部(110)と協働するねじ付きリング(140)によって、前記中間部(110)の環状軸受面(112)を圧迫するように保持され、前記背部(130)は、単一の所定の角度位置で前記中間部に対して回転できないように前記背部(130)を固定するように前記中間部(110)に設けられた単一の第2のインデックス要素(114)と協働するように構成された単一の第1のインデックス要素(133)を備えることを特徴とする、時計ケース(100)。
【請求項2】
前記第1および第2のインデックス要素は、タブ/ノッチ対(114、133)によって形成される、請求項1に記載の時計ケース(100)。
【請求項3】
前記中間部(110)は、前記リング(140)に設けられた雄ねじ(141)がねじ締めにより協働する雌ねじ(111)を有する、請求項1に記載の時計ケース(100)。
【請求項4】
前記背部(130)は、前記背部(130)の周辺周りに放射状に延在し、前記中間部(110)の前記環状軸受面(112)に支持されるように配置された周辺リップ(131)を有する、請求項3に記載の時計ケース(100)。
【請求項5】
前記リング(140)は、前記雄ねじ(141)と、それを介して前記背部(130)の前記周辺リップ(131)を圧迫する端面(142)とを含む環状部分を有する、請求項4に記載の時計ケース(100)。
【請求項6】
前記周辺リップ(131)は、前記背部(130)の上端を形成する管状壁(132)から延在し、前記管状壁(132)は、前記中間部(110)のボア(113)に係合する、請求項4に記載の時計ケース(100)。
【請求項7】
前記ノッチ(133)は、前記管状壁(132)上に配置され、且つ前記管状壁(132)の自由端から軸方向に延在し、前記ノッチ(133)は、前記タブ(114)と協働するように構成されており、前記タブ(114)は前記ボア(113)上に配置されている、請求項2および6に記載の時計ケース(100)。
【請求項8】
前記中間部(110)と前記背部(130)との間にパッキン(150)が配置され、前記パッキンは、前記管状壁(132)と前記周辺リップ(131)との間の接合部によって形成された肩部と、前記環状軸受面(112)と前記ボア(113)との間の接合部に形成された前記中間部(110)の環状くぼみと、の間に挟まれる、請求項6に記載の時計ケース(100)。
【請求項9】
前記リング(140)は、前記環状部分に接続された放射状部分であって、前記背部(130)の環状軸受面(134)に面して配置された放射状内面(144)を有する、放射状部分、を有する、請求項5に記載の時計ケース(100)。
【請求項10】
前記リング(140)の前記放射状部分は、形状が相補的である前記背部(130)の下部円筒形表面(136)に面して配置される下部円筒形表面(145)を有する、請求項9に記載の時計ケース(100)。
【請求項11】
請求項1に記載の時計ケース(100)の内部容積内に収容された時計のムーブメントを備え、前記内部容積が、前記中間部(110)、前記ガラス(120)、および前記背部(130)の間に画定されることを特徴とする、時計(10)。
【請求項12】
請求項1に記載の時計ケース(100)を組み立てるための方法であって、前記背部(130)が、前記第1のインデックス要素(133)が前記第2のインデックス要素(114)と協働するように前記中間部(110)の前記第2の開口部に係合し、次いで、前記リング(140)が、前記中間部(110)を圧迫して前記背部(130)を固定するように前記中間部(110)とねじ締めされる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計分野、特に時計ケースの構成要素に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、所定の角度位置に配向された背部を有する時計ケース、前記ケースを含む時計、およびそのようなケースを組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
時計ケースは、その両側にガラスと背部とが配置された中間部を有する。
【0004】
背部は、一般的にねじ締めで中間部に取り付けられており、この目的のために中間部に作られた雌ねじと協働することを目的とした雄ねじを有する。
【0005】
この種の取り付けでは、互いに取り付けたときに、中間部に対して、特に垂直の12時から6時の軸に対して、背部の向きを制御することができない。
【0006】
そのような欠点は、特に、背部に装飾的な要素や銘がある場合に美的外観や知覚品質を損なうものである。
【0007】
従来技術で開発された解決策は、一般に、実施するのに複雑で費用がかかる。
【0008】
特に、前記背部が前記中間部に固定されたときにその角度位置が既知で常に同じになるように中間部の雌ねじと背部の雄ねじとが互いに関連付けられるような、中間部の雌ねじと背面の雄ねじとの特定の機械加工が知られており、実行されている。しかし、実際には、この解決策は、製造プロセスにとっても、アフターサービスに関しても、例えば紛失または損傷した背部を交換する必要がある場合に、困難をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、単一の所定の相対角度位置で背部を中間部に取り付けることを可能にする解決策を提供することによって、前述の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、背部を受け入れる第2の開口部の反対側にある、ガラスを受け入れる第1の開口部を有する中間部を備えた時計ケースであって、背部が、ねじ締めによって中間部と協働するねじ付きリングによって、中間部の環状軸受面を圧迫するように保持され、背部は、単一の所定の角度位置で中間部に対して回転できないように背部を固定するように中間部に設けられた単一の第2のインデックス要素と協働するように構成された単一の第1のインデックス要素を備える、時計ケース、に関する。
【0011】
これらの特徴のおかげで、背部が単一の所定の位置で回転ロックされている限り、背部を中間部に取り付けた後、背部の角度位置を中間部に対して調整する必要がない。
【0012】
本発明はまた、リングが中間部にねじ締めされているとき、背部が所定の位置に向けられるので、背部の、特にリングの締め付けトルクを制御することを可能にする。
【0013】
背部の向きは、第1および第2のインデックス要素間の協働のおかげで非常に正確に得られ、前記インデックス要素は、背部が中間部に対して単一の角度位置に固定されることを可能にする限り、フールプルーフ要素として機能する。言い換えれば、本発明の特徴のおかげで、背部は、中間部に対して単一の角度位置にのみ配置され得る。
【0014】
この特定の特徴は、時計ケースの簡単な製造と組み立ても保証し、このケースを含む時計の製造コストを削減するのに役立つ。
【0015】
本発明の特徴から、第1および第2のインデックス要素が背部の回転可動性を妨げ、リングが背部の並進可動性を妨げることが理解される。
【0016】
特定の実施形態によれば、本発明は、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができ、これらは、単独で、または技術的に可能な任意の組み合わせに従って考慮されなければならない。
【0017】
特定の実施形態によれば、第1および第2のインデックス要素は、タブ/ノッチ対によって形成される。
【0018】
特定の実施形態によれば、中間部は、リングに設けられた雄ねじがねじ締めによって協働する雌ねじを有する。
【0019】
特定の実施形態によれば、背部は、前記背部の周辺周りに放射状に延在し、中間部の環状軸受面に支持されるように配置された周辺リップを有する。
【0020】
特定の実施形態によれば、リングは、雄ねじと、それを介して背部の周辺リップを圧迫する端面とを含む環状部分を有する。
【0021】
特定の実施形態によれば、周辺リップは、背部の上端を形成する管状壁から延在し、管状壁は、中間部のボアに係合する。
【0022】
特定の実施形態によれば、ノッチは、管状壁上に配置され、且つ前記管状壁の自由端から軸方向に延在し、前記ノッチは、タブと協働するように構成されており、前記タブはボア上に配置されている。
【0023】
特定の実施形態によれば、中間部と背部との間にパッキンが配置され、パッキンは、管状壁と周辺リップとの間の接合部によって形成された肩部と、環状軸受面とボアとの間の接合部に形成された中間部の環状くぼみと、の間に挟まれる。
【0024】
特定の実施形態によれば、リングは、環状部分に接続された放射状部分であって、背部の環状軸受面に面して配置された放射状内面を有する、放射状部分、を有する。
【0025】
特定の実施形態によれば、リングの放射状部分は、形状が相補的である背部の下部円筒形表面に面して配置される下部円筒形表面を有する。
【0026】
別の目的によれば、本発明は、上記の時計ケースの内部容積の内部に収容された時計のムーブメントを備え、前記内部容積が、中間部、ガラス、および背部の間に画定される、時計に関する。
【0027】
さらに別の目的によれば、本発明は、上記の時計ケースを組み立てるための方法であって、背部が、第1のインデックス要素が第2のインデックス要素と協働するように中間部の第2の開口部に係合し、次いで、リングが、前記中間部を圧迫して前記背部軸受を固定するように中間部にねじ締めされる。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、大まかなガイドとして与えられ、決して限定的なガイドとして与えられていない以下の詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の好ましい例示的な実施形態によるケースを含む時計の断面図である。
【
図2】背部に設けられた単一の第1のインデックス要素を見ることができる
図1のケースの分解された高角度の斜視図である。
【
図3】中間部に設けられた単一の第2のインデックス要素を見ることができる
図1のケースの分解された低角度の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明による時計ケース100を有する時計10の断面図である。
【0031】
ケース100は、背部130を受け入れる第2の開口部の反対側にある、ガラス120を受け入れる第1の開口部を有する中間部110を有し、ガラス120、背部130、および中間部110が、当業者に知られている方法で時計のムーブメントがその内部に配置される容積を画定する。
【0032】
ケース100で使用される時計のムーブメントおよび他の計時器構成要素は当業者に知られており、本発明の一部ではないので、これらは以下に説明されない。
【0033】
ケース100は、背部130を中間部110に対して所定の位置に保持しながら中間部110に取り付けられるように適合されたリング140を有する。
【0034】
リングは、
図1乃至
図3に示すように、そこを通して背部を見ることができる中央の貫通穴を有する。
【0035】
図2および
図3に示されるように、背部130、リング140および中間部110は軸対称の形状を有し、その回転軸は同軸であることに留意されたい。
【0036】
リング140は、第2の開口部で中間部110内に作製された雌ねじ111とねじ締めによって協働することを意図した雄ねじ141を有する。
【0037】
さらに具体的には、本発明の好ましい例示的な実施形態では、リング140は、その端部のうち「上端」と呼ばれる1つの端部に、上部円筒形表面143と外面とを接続する端面142によって画定される軸方向環状部分を有し、環状部分の外面に雄ねじ141が作製されている。
【0038】
本テキストにおける「上」および「下」という用語は、
図1乃至
図3に示されるように、ケース100の空間における向きを指し、ガラス120は、背部130の上に配置されている。
【0039】
さらに、背部130は、前記背部130の上端を形成する管状壁132から、背部130の周辺周りに放射状に延在する周辺リップ131を有し、前記周辺リップ131は、中間部110の環状軸受面112に支持されるように配置される。さらに、管状壁132は、背部が前記中間部110に取り付けられる場合、中間部110のボア113に係合する。
【0040】
あるいは、背部130は、同一平面において背部130の周辺の一部の周りに放射状にそれぞれが延在する複数の周辺リップ(図には示されていない)を有していてもよい。
【0041】
図1の断面図に示されるように、リング140は、前記リング140が中間部110とねじ締めされたときに、環状部分の端面142を介して背部130の周辺リップ131を圧迫するように構成されている。
【0042】
有利なことには、背部130は、リング140が背部130を前記中間部110に取り付けるときに前記背部130を中間部110に対して単一の可能な角度位置に固定するように、中間部110に設けられた単一の第2のインデックス要素と協働するように構成された単一の第1のインデックス要素を備えている。
【0043】
より具体的には、第1および第2のインデックス要素は、タブ/ノッチ対によって形成される。
【0044】
図2および
図3に示される例示的な実施形態では、背部130は、管状壁132上に配置されたノッチ133を備え、前記ノッチは、前記管状壁132の自由端から軸方向に延在する。
【0045】
ノッチ133は、中間部110の内側に延在するタブ114と協働することを意図している。より具体的には、タブ114は、背部130の管状壁132がボア113に挿入されたときにノッチ133の内側に係合できるように、ボア113上に配置され、機械的クリアランス許容範囲内でノッチ133の形状と相補的な形状を有する。
【0046】
図に示されていない本発明の他の例示的な実施形態では、図に示される好ましい例示的な実施形態と同様の方法で、ノッチ133を中間部110に配置することができ、タブ114を背部130に配置することができることに留意されたい。
【0047】
リング140は、リング140が中間部110の雌ねじ111とねじ締めされたときに、背部130の環状軸受面134に面して配置されるように意図された内側放射状表面144を有する放射状部分を有する。
図1に示すように、放射状部分は環状部分に接続される。
【0048】
有利なことには、取り付けリング140は、周辺リップ131を圧迫することに加えて、任意選択で、背部130の周辺環状軸受面134を圧迫することができる。
【0049】
この環状軸受面134は、背部130が中間部110に取り付けられたときに、リング140の環状部分の上部円筒形表面143に面して配置されるように意図された上部円筒形表面135によって周辺リップ131に接続される。
【0050】
さらに、パッキン150は、中間部110と背部130との間に配置され、管状壁132と周辺リップ131との間の接合部によって形成される肩部と、環状軸受面112とボア113との間の接合部に形成される中間部110の環状くぼみと、の間に挟まれる。この特徴により、一方では、パッキン150が背部130および中間部110によって加えられる軸方向および半径方向の圧縮力を受けるので、ケース100の密封を保証することができ、他方では、背部130上のパッキンの配置を容易にすることができる。
【0051】
リング140の放射状部分は、形状が相補的である背部130の下部円筒形表面136に面して配置される下部円筒形表面145を有する。
【0052】
背部130が中間部110に取り付けられる場合、背部130は、タブ114がノッチ133と協働するように、最初に中間部110の第2の開口部に係合され、背部130の管状壁132は、周辺リップ131が環状軸受面112を圧迫するように配置されるまで、中間部110のボア113に係合される。
【0053】
したがって、背部130および中間部110は、上部円筒形表面135、周辺リップ131、および中間部110の雌ねじ111との間に画定されたハウジングを形成し、リング140は、その中で係合することが意図されている。
【0054】
したがって、リング140は、周辺リップ131が環状軸受面112に対して締め付けられ、背部130、リング140、および中間部110を一緒に堅く取り付けるのに十分な、すなわち埋め込み式の機械的接続により取り付けるのに十分な、所定の締め付けトルクに達するまで、中間部110の雌ねじ111と協働するようにされる。
【0055】
有利なことには、背部130と中間部110との間に形成されたハウジングへのリング140の挿入を容易にするために、リング140が、環状部分の上部円筒形表面143と端面142との間の接合部にネック成形または面取りを有していてもよく、さらに背部130が、環状軸受面134と上部円筒形表面135との間の接合部にネック成形または面取りを有していてもよい。
【0056】
さらに、リング140の放射状部分の円筒形表面と前記放射状部分の内側放射状表面144との間の接合部に面取りまたはネック成形を設けることができる。
【0057】
好ましくは、リング140は、時計ケース100の内部容積と反対側の外面に、ユーザが用いる工具と協働することを意図した放射状ノッチ146を有する。放射状ノッチ146のおかげで、リング140および背部130を中間部110に取り付けるために、または逆に、それらを前記中間部110から取り外すために、工具を用いてリング140をねじ締めする、または緩めることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 時計
100 時計ケース
110 中間部
111 雌ねじ
112 環状軸受面
113 ボア
114 タブ
120 ガラス
130 背部
131 周辺リップ
132 管状壁
133 ノッチ
134 環状軸受面
135 上部円筒形表面
136 下部円筒形表面
140 リング
141 雄ねじ
142 端面
143 上部円筒形表面
144 内側放射状表面
145 下部円筒形表面
146 放射状ノッチ
150 パッキン
【外国語明細書】