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特開2023-331082液型ポリウレタン系塗料組成物およびその製造方法、硬化塗膜、ならびに硬化塗膜付き基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033108
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】2液型ポリウレタン系塗料組成物およびその製造方法、硬化塗膜、ならびに硬化塗膜付き基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20230302BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20230302BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230302BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D7/47
C09D7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093324
(22)【出願日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021138389
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】米 保紀
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋之
(72)【発明者】
【氏名】亀田 佳憲
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG111
4J038DG272
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA09
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA05
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)に優れた硬化塗膜を形成できる2液型ポリウレタン系塗料組成物の提供。
【解決手段】本発明の2液型ポリウレタン系塗料組成物は、(A)抗ウイルス剤または抗菌剤、(B)ポリエステルポリオール、(C)レベリング剤、および(D)疎水性シリカを含む、第1成分と、(E)ポリイソシアネートを含む、第2成分とを含有する2液型ポリウレタン系塗料組成物であって、前記第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50が5.0μm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗ウイルス剤または抗菌剤、(B)ポリエステルポリオール、(C)レベリング剤、および(D)疎水性シリカを含む、第1成分と、
(E)ポリイソシアネートを含む、第2成分と
を含有する2液型ポリウレタン系塗料組成物であって、
前記第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50が5.0μm以下である、2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項2】
第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D90が10.0μm以下である、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項3】
(A)抗ウイルス剤の含有量が、前記2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項4】
(D)疎水性シリカの含有量が、前記2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項5】
(E)ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートまたはそのイソシアヌレート体である、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項6】
触媒をさらに含む、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項7】
分散剤をさらに含む、請求項1に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成される硬化塗膜。
【請求項9】
基材の少なくとも片面が、請求項1~7のいずれか一項に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成された硬化塗膜を有する硬化塗膜付き基材。
【請求項10】
硬化塗膜面のヘイズ値が70%以上である、請求項9に記載の硬化塗膜付き基材。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の塗料組成物における前記第1成分と前記第2成分とを少なくとも混合する工程を有する、2液型ポリウレタン系塗料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型ポリウレタン系塗料組成物およびその製造方法に関する。また、本発明は、2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成された硬化塗膜およびその硬化塗膜を有する硬化塗膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
例年、インフルエンザの流行にともない、駅、空港、病院、学校等の多くの人が行き交う施設等においてインフルエンザへの対応策が必要となっている。また、近年新型コロナウイルスの感染拡大を受け、抗ウイルス剤や抗ウイルス製品についての要望がさらに高まっている。
【0003】
特に、不特定多数の人が触れる箇所においては、接触感染を防ぐ目的で抗ウイルス効果や抗菌効果を付与するための加工が要望されている。しかし、プラスチックや鉄等の金属の素材(例えば、ドアノブや、手すり、各種スイッチ等)は手で触れると堅さや冷たさがあるため、ソフト感やサラサラ感を付与するための加工を要望されることが多い。例えば、特許文献1では、ソフト感、しっとり感及びサラサラ感の性質が両立した良好な触感を有する塗膜を形成するために、アクリルポリオールを含有する樹脂溶液及びポリイソシアネートを含有する硬化剤溶液からなり、特定の配合量でウレタン樹脂ビーズおよび有機系艶消し剤を含有した2液硬化型ウレタン塗料組成物が提案されている。また、特許文献2では、耐薬品性とソフトな手触りを両立させた塗膜を形成するために、特定のポリオール、ポリイソシアネート、および艶消し剤を含むポリウレタン樹脂組成物が提案されている。しかし、依然として、ソフト感やサラサラ感を付与しながら、抗ウイルス効果や抗菌効果を付与することは十分に実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-139273号公報
【特許文献2】国際公開第2016/125893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)に優れたに優れた硬化塗膜を形成できる2液型ポリウレタン系塗料組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、第1成分(主剤成分)と第2成分(硬化剤成分)を含む2液型ポリウレタン系塗料組成物において、(A)抗ウイルス剤または抗菌剤、(B)ポリエステルポリオール、(C)レベリング剤、および(D)疎水性シリカを含む第1成分の体積基準の粒度分布D50を特定の範囲内に調節することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)抗ウイルス剤または抗菌剤、(B)ポリエステルポリオール、(C)レベリング剤、および(D)疎水性シリカを含む、第1成分と、
(E)ポリイソシアネートを含む、第2成分と
を含有する2液型ポリウレタン系塗料組成物であって、
前記第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50が5.0μm以下である、2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[2] 第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D90が10.0μm以下である、[1]に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[3] (A)抗ウイルス剤の含有量が、前記2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上20質量%以下である、[1]または[2]に記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[4] (D)疎水性シリカの含有量が、前記2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上20質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[5] (E)ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートまたはそのイソシアヌレート体である、[1]~[4]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[6] 触媒をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[7] 分散剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成される硬化塗膜。
[9] 基材の少なくとも片面が、[1]~[7]のいずれかに記載の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成された硬化塗膜を有する硬化塗膜付き基材。
[10] 硬化塗膜面のヘイズ値が70%以上である、[9]に記載の硬化塗膜付き基材。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の塗料組成物における前記第1成分と前記第2成分とを少なくとも混合する工程を有する、2液型ポリウレタン系塗料組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)に優れた硬化塗膜を形成できる2液型ポリウレタン系塗料組成物およびその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)に優れた硬化塗膜付き基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「固形分」とは、2液型ポリウレタン系塗料組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化塗膜を構成する成分を示す。
【0010】
<2液型ポリウレタン系塗料組成物>
本発明による2液型ポリウレタン系塗料組成物は、第1成分(主剤成分)と第2成分(硬化剤成分)を含む2液型ポリウレタン系塗料組成物を含むものである。
【0011】
(第1成分)
第1成分は、少なくとも、(A)抗ウイルス剤または抗菌剤、(B)ポリエステルポリオール、(C)レベリング剤、および(D)疎水性シリカを含み、触媒、分散剤、溶剤、およびその他の成分をさらに含んでもよい。
【0012】
第1成分中の粒子成分(抗ウイルス剤・抗菌剤、シリカ等)の含有量は、第1成分の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは14質量%以上30質量%以下である。前記粒子成分の含有量が上記数値範囲内であれば、第1成分中における粒子成分の分散性を向上させ、硬化塗膜の抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0013】
第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50とは、第1成分中の粒子(抗ウイルス剤・抗菌剤、シリカ等)の小粒径側からの累積分布が50%となる粒径の値を表し、体積基準の粒度分布D90とは、第1成分中の粒子(A成分やD成分)の小粒径側からの累積分布が90%となる粒径の値を表すものであり、レーザー回折散乱法により測定することができる。第1成分は、体積基準の粒度分布D50が5.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。また、第1成分は、体積基準の粒度分布D90が好ましくは10.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以上10.0μm以下であり、さらに好ましくは6.0μm以上10.0μm以下である。第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50およびD90の値を上記範囲内に調節することによって、第1成分中における抗ウイルス剤または抗菌剤の分散性を向上させ、硬化塗膜の抗ウイルス性・抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。なお、D50およびD90の値は、第1成分中のレベリング剤や分散剤の種類や含有量を調節することで、所望の範囲内に調節することができる。
【0014】
(A)抗ウイルス剤または抗菌剤
抗ウイルス剤としては、例えば、有機系抗ウイルス剤および無機系抗ウイルス剤が挙げられる。有機系抗ウイルス剤としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール及びベンゾイミダゾールなどのアゾール、トリアジン、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、サリチル酸及びそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ヘキサクロロフェン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、チアントール、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、モノニトログアヤコールナトリウム、ウイキョウエキス、サンショウエキス、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及びウンデシレン酸誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ビス型ピリジニウム塩、ビス型キノリニウム塩、ビス型チアゾリウム塩、フェニルエーテル誘導体等が挙げられる。これらの有機系抗ウイルス剤は、1種単独、2種以上の組み合わせ、または無機系材料に有機系抗ウイルス剤を担持して使用してもよい。
【0015】
また、無機系抗ウイルス剤としては、金属化合物および金属イオンを担持させた無機イオン交換体等を用いることができる。金属化合物としては、金属酸化物、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化鉛などを使用することができる。無機リン酸化合物としては、リン酸亜鉛や、リン酸ジルコニウム、リン酸ハフニウム、リン酸チタニウム等のチタン族元素のリン酸化合物、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト(リン酸塩鉱物)等が挙げられる。無機ケイ酸化合物としては、ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)等が挙げられる。金属イオンとしては、銀イオン、銅イオン等が挙げられ、銀イオンが好ましい。無機イオン交換体としては、リン酸ジルコニウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの無機系抗ウイルス剤は、1種単独、または2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0016】
抗ウイルス剤の市販品としては、例えば、「ウイルテイカーIV」(積水マテリアルソリューションズ株式会社製)、「ノバロンIV-1000」(東亞合成株式会社製)が挙げられる。
【0017】
抗ウイルス剤の含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。また、抗ウイルス剤の含有量は、第1成分の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上18質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上16質量%以下である。抗ウイルス剤の含有量が上記数値範囲内であれば、第1成分中における抗ウイルス剤の分散性を向上させ、硬化塗膜の抗ウイルス性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0018】
なお、上記の抗ウイルス剤(有機系抗ウイルス剤および無機系抗ウイルス剤)として例示した化合物は、抗菌剤としても使用できる。
【0019】
また、抗菌剤としては、例えば、有機系抗菌剤および無機系抗菌剤が挙げられる。有機系抗菌剤としては、イミダゾール系、チアゾール系、イソチアゾリン系、ピリジン系の化合物が挙げられる。また、無機系抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅等が挙げられる。また、金属化合物としては、モリブデン酸塩化合物、炭酸塩化合物が挙げられる。モリブデン酸塩化合物としては、モリブデン酸銀、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸マグネシウム等が挙げられる。炭酸塩化合物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの抗菌剤は、1種単独、2種以上の組み合わせ、または無機系材料に有機系抗菌剤を担持して使用してもよい。
【0020】
抗菌剤の市販品としては、例えば、「Zeomic AJ10N」(株式会社シナネンゼオミック社製)、「バイオカットSV」(日本曹達株式会社製)が挙げられる。
【0021】
抗菌剤の含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。抗菌剤の含有量が上記数値範囲内であれば、第1成分中における抗菌剤の分散性を向上させ、硬化塗膜の抗菌性、塗膜外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0022】
(B)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ポリオールまたはジカルボン酸をエステル化してエステル交換反応させたりする等、公知の方法にて得られるもの等を使用できる。ポリエステルポリオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ポリエステルポリオールの合成に用いられるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジブロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオールや、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等の3官能以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのポリオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ポリエステルポリオールの合成に用いられるジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ジマレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
ポリエステルポリオールは、重量平均分子量(Mw)が好ましくは500~100,000であり、より好ましくは1,000~50,000である。また、ポリエステルポリオールは、水酸基価が好ましくは30~240mgKOH/gであり、より好ましくは50~180mg/KOHである。
【0026】
ポリエステルポリオールの含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上60質量%以下である。ポリエステルポリオールの含有量が上記数値範囲内であれば、硬化塗膜の外観および手触り感(ソフト感)向上させることができる。
【0027】
(C)レベリング剤
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等が挙げられる。これらの中でも特に、シリコーン系レベリング剤が好ましい。これらのレベリング剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
シリコーン系レベリング剤としては、ストレートシリコーンおよび変性シリコーンのいずれも用いることができる。ストレートシリコーンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、およびポリメチルハイドロジエンシロキサン等が挙げられる。変性シリコーンは、シリコーンの一部に各種有機基の置換基を導入したものである。変性部位は、例えば、ポリエステル部位、ポリエーテル部位、アクリル樹脂部位、及びカルビノール部位からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。本明細書において、アクリル樹脂には、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体が含まれる。変性部位は、シリコーン鎖の片末端型、両末端型、側鎖型、および側鎖両末端型のいずれであってもよい。変性シリコーンとしては、例えば、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル-ポリエステル変成シリコーン、シリコーン変性アクリル樹脂、カルビノール変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
ポリエステル変性シリコーンの市販品としては、BYK-310、313、315(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、BYK-300、302、306、307、330、331、333、342、378(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
変性シリコーンは水酸基を含有していることが好ましい。水酸基は、変性部位であるポリエステル部位、ポリエーテル部位、アクリル樹脂部位、およびカルビノール部位等に有していることが好ましい。水酸基含有変性シリコーンとしては、例えば、水酸基含有ポリエステル変性シリコーン、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン、水酸基含有ポリエーテル-ポリエステル変成シリコーン、水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂、カルビノール変性シリコーン等が挙げられる。
【0031】
水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂の市販品としては、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、サイマックUS-270(東亞合成株式会社製)、ZX-028-G(株式会社T&K TOKA製)等が挙げられる。水酸基含有ポリエステル変性シリコーンの市販品としては、BYK-370(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。水酸基含有ポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、BYK-377(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
フッ素系レベリング剤としては、例えば、パーフルオロアルケニルカルボン酸塩、パーフルオロアルケニルスルホン酸塩、パーフルオロアルケニルリン酸エステル、パーフルオロアルケニルベタイン等のパーフルオロアルケニル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤;パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン等のパーフルオロアルキル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0033】
アクリルポリマー系レベリング剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性(メタ)アクリル化合物を用いることができる。
【化1】
一般式(1)中、R~Rは同一または異なっていてもよく、R~Rの少なくとも一つは前記一般式(2)で表されるポリエーテル基を示し、かつ少なくとも一つは(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイル基を有するC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。
【化2】
一般式(2)中、RはC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、R10は水素原子、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、C2~C20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基またはC2~C20の直鎖もしくは分岐のアルキニル基を示す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。kは1以上の整数を示す。その他のR~Rは、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。複数存在するR~Rは、それぞれ同一または異なっていてもよい。
m、nは同一でも異なっていてもよく、0以上の整数、好ましくは1~20の整数、さらに好ましくは1~10の整数を示す。
【0034】
レベリング剤の含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以上1質量%以下である。レベリング剤の含有量が上記数値範囲内であれば、硬化塗膜の外観、および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0035】
((D)疎水性シリカ)
疎水性シリカとしては、例えば、有機シランやシリコーンオイル等の疎水化剤によって表面処理がなされたシリカ粒子を用いることができる。疎水化剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α-クロロエチルトリクロロシラン、β-クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、加水分解性基含有シロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機シランジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル(アルキルは、例えば炭素数1~3)、γ-メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル等のシリコーンオイル等が挙げられる。
【0036】
疎水性シリカとしては、市範品を用いることもできる。例えば、エボニック株式会社製のACEMATT3400、ACEMATT3600等が挙げられる。
【0037】
疎水性シリカの二次粒子の体積基準の粒度分布D50は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上9μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上8μm以下である。なお、体積基準の粒度分布D50の定義および測定方法については、上述の説明の通りである。疎水性シリカの二次粒子の体積基準の粒度分布D50が上記範囲内であれば、第1成分中における疎水性シリカ粒子の分散性を向上させ、硬化塗膜の外観および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0038】
疎水性シリカの含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。また、疎水性シリカの含有量は、第1成分の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上18質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。疎水性シリカの含有量が上記数値範囲内であれば、第1成分中における疎水性シリカ粒子の分散性を向上させ、硬化塗膜の外観および手触り感(ソフト感、サラサラ感)を向上させることができる。
【0039】
(第2成分)
第2成分は、少なくとも、(E)ポリイソシアネートを含み、溶剤およびその他の成分をさらに含んでもよい。
【0040】
(E)ポリイソシアネート
2つのイソシアネート基を含有するポリイソシアネート(ジイソシアネート)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)等の脂肪族ジイソシアネート等;メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環式ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリック・ポリメリックMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。3つ以上のイソシアネート基を含有するポリイソシアネートとしては、これらのジイソシアネートの脂肪族多価アルコールのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。アダクト体に用いる脂肪族多価アルコールとしては、炭素数が2~5であることが好ましく、例えば、トリメチロールプロパンやグリセリンが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートまたはそのイソシアヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはそのイソシアヌレート体がより好ましい。これらのポリイソシアネートは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
ポリイソシアネートの含有量は、ポリエーテルポリオールの水酸基1個に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.2個以上5.0個以下であることが好ましく、0.5個以上3.0個以下であることがより好ましく、0.7個以上2.0個以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートの配合量が上記範囲内であると、反応性が良好となる。
【0042】
(触媒)
触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、スズ系触媒(ブチルスズカルボキシレート、トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)、鉛系触媒(オクチル酸鉛等)、ビスマス系触媒、亜鉛系触媒、アルミニウム系触媒等、アミン系触媒(トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等)等が挙げられる。反応性の観点から、スズ系触媒が好ましい。これらの触媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
触媒の含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。触媒の含有量が上記数値範囲内であれば、反応促進効果およびポットライフのバランスが良く、作業性が向上する。
【0044】
(分散剤)
第1成分中における粒子成分および2液型ポリウレタン系塗料組成物の分散性を向上させる等の点から、分散剤を配合してもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸、リン酸、アミン等の顔料吸着基を有し、脂肪酸、ポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等の相溶性鎖を有するコポリマーや共重合体等の各種分散剤等が挙げられる。
【0045】
分散剤の含有量は、2液型ポリウレタン系塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上3質量%以下である。また、分散剤の含有量は、第1成分の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0046】
(溶剤)
第1成分および第2成分に用いる溶剤としては特に限定されず、各成分および塗料組成物の固形分濃度を調整するために、必要に応じて、従来公知の有機溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0047】
(その他の成分)
本発明の2液型ポリウレタン系塗料組成物には、上記成分の他に、更に必要に応じて、顔料、重合禁止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、沈降防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、防カビ剤、および可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0048】
(2液型ポリウレタン系塗料組成物の製造方法)
本発明の2液型ポリウレタン系塗料組成物の製造方法は、上記第1成分と上記第2成分とを少なくとも混合する工程を有するものである。当該工程の前には、上記第1成分と上記第2成分をそれぞれ調製する工程を有してもよい。各工程においては、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて調製や混合を行うことができる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0049】
[硬化塗膜付き基材]
本発明の硬化塗膜付き基材は、少なくとも片面が、上記の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成された硬化塗膜を有するものである。硬化塗膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化塗膜の態様は特に制限されず、たとえば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0050】
(基材)
基材としては特に制限されず、前記塗膜を形成したい被塗物であればよく、例えば、プラスチック、木材(木質基材)、紙、金属、ガラス、セラミックス、コンクリート、レンガ、陶器等が挙げられる。
【0051】
プラスチックとしては、例えば、各種プラスチック基材(例:トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルサルホン、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリルニトリル等から形成されるフィルムや成形体)が挙げられる。
【0052】
基材の厚さは特に制限されないが、基材がフィルム状または板状の場合、好ましくは10μm以上10mm以下であり、より好ましくは50μm以上5mm以下である。
【0053】
本発明の2液型ポリウレタン系塗料組成物は、具体的には、住宅、公共施設(病院などの医療施設、老健施設、幼稚園などの幼児施設、学校などの教育施設、公園、役所、駅、空港等を含む)、公共交通機関、オフィスビル、百貨店、娯楽施設、医薬品、食品などの各種製造施設、飲食施設、畜産施設等において使用される様々な製品、設備等に用いることができる。具体的には、例えば、スマートフォン、パソコン、タブレット端末等の画像表示装置を備える機器およびそれら画像表示装置の保護フィルムやタッチペン、保護ケース、掃除機や冷蔵庫等の家電等の電気製品、自動車のハンドルやダッシュボード、インストルメントパネル、ドアノブや各種スイッチ類などの自動車内装部品、床材(塩ビシートフロア等を含む)、造作材、壁材、天井材等の内装材;アルミサッシ、網戸、ベランダなどの柵;アウトドア用品(テント生地、金属部材、プラスチック部材等を含む);各種タイル;ドアノブ、ドアハンドル、レバー、水道栓、手すり、つり革、エレベータのボタン、照明ボタンなどの各種ボタン、便器、トイレットペーパーホルダーなどのトイレ部材、浴槽、浴室面等の浴室部材、キッチン・洗面所部材、ベンチ、イス、遊具等の手が触れる部材が挙げられる。
【0054】
(硬化塗膜)
硬化塗膜は、上記の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成される。硬化塗膜の膜厚は特に限定されないが、長期的な抗ウイルス性・抗菌性等の性能の維持の観点から、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上70μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。本発明における膜厚とは、硬化塗膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化塗膜の厚さを指す。このような膜厚の塗膜を形成する際は、1回の塗布で、所望の厚みの塗膜を形成してもよいし、複数回の塗布で、所望の厚みの塗膜を形成してもよい。
【0055】
上記の2液型ポリウレタン系塗料組成物から形成された硬化塗膜は、厚さ10~15μmの場合、JIS K 7136に準拠して測定したヘイズが、好ましくは70%以上であり、また、好ましくは95%以下である。硬化塗膜のヘイズが上記範囲内であれば、塗膜の均一性や、塗膜中の抗ウイルス剤・抗菌剤の分散性に優れる。
【0056】
<硬化塗膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化塗膜付き基材は、基材の少なくとも片面に、上記の2液型ポリウレタン系塗料組成物を塗布する工程(塗布工程)と、該塗布後の基材を加熱して、該組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0057】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の2液型ポリウレタン系塗料組成物を塗布する工程である。塗布には、スプレーコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法などが挙げられる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からスプレーコート法やグラビアコーターやダイコーターを用いた塗布方法が好ましい。なお、塗布膜厚は、硬化乾燥後に上記の硬化塗膜の厚さを達成できるものであればよい。
【0058】
(硬化工程)
硬化工程は、塗布後の基材を加熱して、2液型ポリウレタン系塗料組成物を硬化させて、硬化塗膜を形成する工程である。加熱条件は、塗膜の硬化が十分に進行する温度・時間であれば特に限定されないが、好ましくは40~150℃、より好ましくは50~130℃で、好ましくは1分~10時間、より好ましくは3分~5時間程度である。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
<2液型ポリウレタン系塗料組成物の調製>
まず、2液型ポリウレタン系塗料組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・抗ウイルス剤1(フェニルエーテル系、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:5.0μm、積水マテリアルソリューションズ株式会社製、商品名:ウイルテイカーIV)
・抗ウイルス剤2(アニオン系、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:3.0μm、積水マテリアルソリューションズ株式会社製、ウイルテイカーVM)
・抗ウイルス剤3(4級アンモニウム塩と臭素化合物、大和化学工業株式会社製、商品名:アモルデンJM)
・抗ウイルス剤4(銀系、東亞合成株式会社製、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:1.0μm、商品名:ノバロンIV-1000)
・抗菌剤1(銀系とゼオライトの化合物、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:2.8μm、株式会社シナネンゼオミック社製、商品名:Zeomic AJ10N)
・抗菌剤2(銀系、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:3.3μm、日本曹達株式会社製、商品名:バイオカットSV)
・ポリエステルポリオール1(水酸基価78~88mgKOH/g、DIC株式会社製、商品名:バーノックD7-885-NT)
・ポリエステルポリオール2(水酸基価115~145mgKOH/g、DIC株式会社製、商品名:バーノックD6-439)
・シリコーン系レベリング剤(ポリジメチルシロキサン変性アクリル樹脂、ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK-SILCLEAN3700)
・シリカ粒子1(疎水性処理(ポリジメチルシロキサン処理)、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:7.5μm、エボニック・ジャパン株式会社製、商品名:ACEMATT3400)
・シリカ粒子2(疎水性処理(ポリジメチルシロキサン処理)、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:5.0μm、エボニック・ジャパン株式会社製、商品名:ACEMATT3600)
・シリカ粒子3(未処理、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:3.5~4.3μm、富士シリシア株式会社製、商品名:サイリシア350)
・シリカ粒子4(未処理、二次粒子の体積基準の粒度分布D50:5.6~7.6μm、富士シリシア株式会社製、商品名:サイリシア370)
・ポリイソシアネート(NCO12%、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、旭化成ケミカルズ株式会社、商品名:デュラネート TSE-100)
・触媒:(ブチルスズカルボキシレート、昭和ワニス株式会社、商品名:グレックTL)
・分散剤:(無水マレイン酸共重合物、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、共栄社化学株式会社、商品名:フローレンG700)
・溶剤:酢酸ブチル
【0061】
[実施例1~7、比較例1~6]
<2液型ポリウレタン系塗料組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、(A)~(D)成分、触媒、分散剤、および溶剤を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、第1成分(主剤成分)を調製した。また、表2に記載の配合に従って、(E)成分および溶剤を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、第2成分(硬化剤成分)を調製した。続いて、表3に記載の配合に従って、第1成分および第2成分を混合・攪拌して、2液型ポリウレタン系塗料組成物を調製した。
【0062】
<評価>
(第1成分中の粒子の分散性)
上記で得られた各第1成分中の粒子(A成分やD成分)の分散性について、目視により、下記の評価基準で評価を行った。評価結果を表1に示した。
[評価基準]
○:第1成分中に粒子が一様に分散しており、粒子の分散性が良好であった。
×:第1成分中に粒子が凝集しているか、または、一様に分散しておらず、粒子の分散性が不良であった。
【0063】
(第1成分の粒度分布の測定)
上記で調製した各第1成分中の粒子の体積基準の粒度分布D50およびD90をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製、型番MT-3300II)用いて、測定方法:湿式法(透過)、屈折率:1.81、分散媒:酢酸ブチル、超音波:なしの条件で測定した。測定結果を表1に示した。
【0064】
<硬化塗膜付き基材の製造>
上記で調製した2液型ポリウレタン系塗料組成物をPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:コスモシャインA4300、厚さ100μm)に硬化塗膜が約12μmとなるように1回塗布した。その後、80℃で1時間加熱することで塗膜を硬化させ、硬化塗膜を形成し、硬化塗膜付き基材を製造した。
【0065】
(ヘイズの測定)
上記で製造した硬化塗膜付き基材の硬化塗膜面について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、型番:NDH4000)を用いて、JIS K 7136に準拠してヘイズ(HZ)を測定した。測定結果を表3に示した。ヘイズ値が70%以上であれば合格とした。一方、ヘイズ値が70%未満であれば不合格とした。
【0066】
(硬化塗膜の外観の評価)
上記で製造した硬化塗膜付き基材について、塗膜の表面を目視にて観察し、下記の評価基準で評価した。評価結果を表3に示した。
[評価基準]
○:塗膜表面が均一であり、凝集した粒子が無かった。
×:塗膜表面が不均一であり、凝集した粒子が散見された。
【0067】
(硬化塗膜のソフト感の評価)
上記で製造した硬化塗膜付き基材について、塗膜の表面を手で触った時の感触により、下記の評価基準でソフト感を評価した。評価結果を表3に示した。
[評価基準]
○:ソフト感が良好であった。
△:ソフト感が多少あった。
×:ソフト感が無かった。
【0068】
(硬化塗膜のサラサラ感の評価)
上記で製造した硬化塗膜付き基材について、塗膜の表面を手で触った時の感触により、下記の評価基準でサラサラ感を評価した。評価結果を表3に示した。
[評価基準]
○:サラサラ感が良好であった。
△:サラサラ感が多少あったが、引っかかりがあった。
×:サラサラ感が無かった。
【0069】
(硬化塗膜の抗ウイルス性の評価)
上記で製造した硬化付き基材の硬化塗膜面について、ISO21702に準拠して、下記の条件で抗ウイルス活性値を測定した。また、下記の評価基準により抗ウイルス性を評価した。抗ウイルス活性値が2.0以上のものを合格とした。測定値および評価結果を表3に示した。
[抗ウイルス試験の条件]
抗ウイルス試験には、A型インフルエンザウイルス(H3N2型)、ATCC―VR1679を用いた。
具体的には、まず、硬化塗膜付き基材および硬化塗膜無し基材(対照試料)を5cm角で切り出してサンプルを作製した。続いて、前記サンプルをシャーレ内に置き、その表面に試験ウイルス液(濃度:1~5×10PFU/mL)を0.4mL滴下し、密着フィルムとしてポリエチレンフィルム(4cm角)をかぶせ、試験ウイルス液がフィルム全体に行きわたるように軽く押さえつけた。その後、25℃で24時間静置した。24時間後、SCDLP培地を用いてウイルス液を洗い出し回収した。洗い出した液をMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)に感染させ、プラーク測定法によってウイルス感染価を測定し、抗ウイルス活性値を求めた。
[評価基準]
○:抗ウイルス活性値が2.0以上であった。
×:抗ウイルス活性値が2.0未満であった。
【0070】
(硬化塗膜の抗菌性の評価)
上記で製造した硬化塗膜付き基材の硬化塗膜面について、JIS Z 2801に準拠して、下記の条件で抗菌活性値を測定した。また、下記の評価基準により抗菌性を評価した。抗菌活性値が2.0以上のものを合格とした。測定値および評価結果を表3に示した。
[抗菌試験の条件]
抗菌試験には、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus NBRC12732)、大腸菌 (Escherichia coli NBRC3972)を用いた。
具体的には、まず、硬化塗膜付き基材および硬化塗膜無し基材(対照試料)を5cm角で切り出してサンプルを作製した。続いて、前記サンプルをシャーレ内に置き、その表面に試験菌液1(黄色ブドウ球菌 濃度:3.4×10個/mL)、試験菌液2(大腸菌 濃度4.9×10個/mL)を、それぞれ0.4mL滴下し、密着フィルムとしてポリエチレンフィルム(4cm角)をかぶせ、試験菌液1、2がフィルム全体に行きわたるように軽く押さえつけた。その後、25℃で24時間静置した。24時間後、回収した生菌数を寒天平板培養法によって抗菌活性値を求めた。
[評価基準]
○:抗菌活性値が2.0以上であった。
×:抗菌活性値が2.0未満であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】