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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033113
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】鋳造設備制御システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 46/00 20060101AFI20230302BHJP
   B22D 47/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102011
(22)【出願日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2021139181
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391020492
【氏名又は名称】藤和電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】西田 理
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】星野 正則
(57)【要約】
【課題】造型計画と溶解計画との整合性をとるための技術を提供する。
【解決手段】鋳造設備制御システムは、搬送位置と各搬送位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶するデータベースと、鋳型搬送装置による枠送りに応じてデータベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報を更新する更新部と、注湯機に搬送された取鍋内の溶湯の重量を計測する計測部と、計測された溶湯の重量と、データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、取鍋の注湯可能枠数を算出する算出部と、注湯可能枠数に基づいて、注湯機へ次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型を認識し、認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量を合計して注湯機へ次に搬送される溶湯の予測重量を決定する決定部と、予測重量を溶解炉における製作指示データとして出力する出力部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋳型を造型する造型機と、前記造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する鋳型搬送装置と、溶解材料を溶解する溶解炉と、取鍋を搬送する取鍋搬送装置と、前記鋳型搬送装置によって搬送された前記複数の鋳型に前記取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する注湯機とを備える鋳造設備を制御する鋳造設備制御システムであって、
鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置と、各搬送位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶するデータベースと、
前記鋳型搬送装置による枠送りに応じて前記データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた前記鋳型情報を更新する更新部と、
前記取鍋搬送装置によって前記注湯機に搬送された前記取鍋内の溶湯の重量を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された溶湯の重量と、前記データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた前記鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、前記注湯機に搬送された前記取鍋の注湯可能枠数を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された注湯可能枠数に基づいて、前記注湯機へ次に搬送される溶湯が注湯される前記複数の鋳型を認識し、前記認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量を合計して前記注湯機へ次に搬送される溶湯の予測重量を決定する決定部と、
前記決定部により決定された予測重量を前記溶解炉における製作指示データとして出力する出力部と、
を備える、鋳造設備制御システム。
【請求項2】
前記鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画温度をさらに含み、
前記決定部は、前記認識された各鋳型の溶湯の計画温度に基づいて前記注湯機へ次に搬送される溶湯の温度を決定し、
前記出力部は、前記決定部により決定された温度を前記製作指示データとして出力する、請求項1に記載の鋳造設備制御システム。
【請求項3】
前記鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画材質情報をさらに含み、
前記決定部は、前記認識された各鋳型の溶湯の計画材質情報に基づいて前記注湯機へ次に搬送される溶湯の材質情報を決定し、
前記出力部は、前記決定部により決定された材質情報を前記製作指示データとして出力する、請求項1又は2に記載の鋳造設備制御システム。
【請求項4】
前記注湯機の実績データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された実績データと取鍋の識別情報とを関連付けて記憶する注湯実績データベースと、
を備える請求項1又は2に記載の鋳造設備制御システム。
【請求項5】
前記実績データは、受湯重量、受湯温度、受湯後経過時間、注湯温度、フェーディング開始時間、材質情報、及びテストピース識別情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の鋳造設備制御システム。
【請求項6】
注湯対象の鋳型に対応する前記鋳型情報と前記実績データとを照合して、注湯の実行可否を判定する判定部を備える、請求項4に記載の鋳造設備制御システム。
【請求項7】
複数の鋳型を造型する造型機と、前記造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する鋳型搬送装置と、溶解材料を溶解する溶解炉と、取鍋を搬送する取鍋搬送装置と、前記鋳型搬送装置によって搬送された前記複数の鋳型に前記取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する注湯機とを備える鋳造設備を制御する鋳造設備制御システムであって、
前記取鍋搬送装置によって前記注湯機に搬送された前記取鍋内の溶湯の重量を計測する計測部と、
前記注湯機へ次に搬送される溶湯の重量を決定する決定部と、
を備え、
前記注湯機へ次に搬送される溶湯の重量は、前記計測部によって計測された前記取鍋内の溶湯の重量と各搬送位置に関連付けられた溶湯の計画重量とに基づいて算出される注湯可能枠数に応じて決定される前記複数の鋳型に対応する溶湯の計画重量それぞれを合計した重量と等しい、
鋳造設備制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳造設備制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋳造設備を開示する。この鋳造設備では、取鍋が溶解炉で溶湯を受湯し、注湯機へと搬送される。また、複数の鋳型が造型機によって造型され、1鋳型分ずつ注湯機へと搬送される。注湯機では、取鍋内の溶湯が複数の鋳型に注湯される。注湯機は、取鍋内の溶湯の溶湯状態データと関連付けられた取鍋連番を受け取り、注湯位置にある鋳型の鋳型連番を受け取り、鋳型連番に対応する注湯計画データに対応する注湯計画で注湯を行うように制御される。注湯した取鍋の取鍋連番は、鋳型連番に関連付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6472899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のような鋳造設備においては、地球温暖化対策として、カーボン・ニュートラルを達成する必要がある。このため、CO削減を産業全体にわたって実現しなければならない。製造業は省エネの視点からの低炭素化対策を具体化することが必要である。鋳造の注湯工程においては、溶解場で注湯取鍋に受湯し、その注湯取鍋を溶湯搬送装置などで注湯場に搬送して注湯機により注湯する。しかし、溶解場で注湯取鍋に受湯する際、注湯機が必要とする受湯重量あるいは製品材質との整合性がとれていないため、注湯場で溶湯を溶解場に湯返しあるいは廃湯せざるを得ないことがある。さらに、特許文献1記載のような鋳造設備においては、複数の装置が関与して鋳型を造型する。計画通りの成分に調整され、計画通りの粘性を有する湯を、安定した勢いで鋳型に注ぐ鋳造設備が実現されるためには、各装置の連携を強化する必要がある。本開示は、造型計画と溶解計画との整合性をとるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る鋳造設備制御システムは、鋳造設備を制御する。鋳造設備は、造型機、鋳型搬送装置、溶解炉、取鍋搬送装置、及び注湯機を備える。造型機は、複数の鋳型を造型する。鋳型搬送装置は、造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する。溶解炉は、溶解材料を溶解する。取鍋搬送装置は、取鍋を搬送する。注湯機は、鋳型搬送装置によって搬送された複数の鋳型に取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する。鋳造設備制御システムは、データベース、更新部、計測部、算出部、決定部、及び出力部を備える。データベースは、鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置と、各搬送位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶する。更新部は、鋳型搬送装置による枠送りに応じてデータベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報を更新する。計測部は、取鍋搬送装置によって注湯機に搬送された取鍋内の溶湯の重量を計測する。算出部は、計測部によって計測された溶湯の重量と、データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、注湯機に搬送された取鍋の注湯可能枠数を算出する。決定部は、算出部によって算出された注湯可能枠数に基づいて、注湯機へ次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型を認識し、認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量を合計して注湯機へ次に搬送される溶湯の予測重量を決定する。出力部は、決定部により決定された予測重量を溶解炉における製作指示データとして出力する。
【0006】
この鋳造設備制御システムでは、注湯機に搬送された取鍋内の溶湯の重量が計測され、計測された溶湯の重量とデータベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、注湯機に搬送された取鍋の注湯可能枠数が算出される。そして、算出された注湯可能枠数に基づいて、注湯機へ次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型が認識される。認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量が合計され、注湯機へ次に搬送される溶湯の予測重量が決定される。決定部により決定された予測重量は溶解炉における製作指示データとして出力される。このように、この鋳造設備制御システムは、溶湯の計画重量に基づいて次の溶湯の予測重量を決定し、溶解炉における製作指示データに反映できる。よって、この鋳造設備制御システムは、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。さらに、この鋳造設備制御システムは、造型計画と溶解計画との整合性をとることによって、最適受湯量を決定できる。この鋳造設備制御システムは、注湯取鍋への最適受湯量を溶解場に指示することにより受湯重量を必要以上に過不足にせずに済み、廃湯・湯返しがなくなり、省エネを図ることができる。よって、この鋳造設備制御システムは、CO排出量の削減が見込め、カーボン・ニュートラルに貢献できる。
【0007】
一実施形態においては、鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画温度をさらに含み、決定部は、認識された各鋳型の溶湯の計画温度に基づいて注湯機へ次に搬送される溶湯の温度を決定し、出力部は、決定部により決定された温度を製作指示データとして出力してもよい。この場合、鋳造設備制御システムは、次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型に対応した計画温度に基づいて次に搬送される溶湯の温度を決定し、溶解炉における製作指示データに反映できる。よって、この鋳造設備制御システムは、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。
【0008】
一実施形態においては、鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画材質情報をさらに含み、決定部は、認識された各鋳型の溶湯の計画材質情報に基づいて注湯機へ次に搬送される溶湯の材質情報を決定し、出力部は、決定部により決定された材質情報を製作指示データとして出力してもよい。この場合、鋳造設備制御システムは、次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型に対応した計画材質情報に基づいて次に搬送される溶湯の材質情報を決定し、溶解炉における製作指示データに反映できる。よって、この鋳造設備制御システムは、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。
【0009】
一実施形態においては、鋳造設備制御システムは、注湯機の実績データを取得する取得部と、取得部により取得された実績データと取鍋の識別情報とを関連付けて記憶する注湯実績データベースとを備えてもよい。この場合、鋳造設備制御システムは、取鍋ごとに実績データを記録できるため、例えば、注湯機に搬送された溶湯が計画通りであるか否かを検証できる。
【0010】
一実施形態においては、実績データは、受湯重量、受湯温度、受湯後経過時間、注湯温度、フェーディング開始時間、材質情報、及びテストピース識別情報のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0011】
一実施形態においては、鋳造設備制御システムは、注湯対象の鋳型に対応する鋳型情報と実績データとを照合して、注湯の実行可否を判定する判定部を備えてもよい。この場合、受湯重量、受湯温度、受湯後経過時間、材質情報など注湯前に把握された情報に基づいて注湯の実行が判定される。よって、計画と異なる注湯を回避できる。
【0012】
本開示の他の側面に係る鋳造設備制御システムは、鋳造設備を制御する。鋳造設備は、造型機、鋳型搬送装置、溶解炉、取鍋搬送装置、及び注湯機を備える。造型機は、複数の鋳型を造型する。鋳型搬送装置は、造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する。溶解炉は、溶解材料を溶解する。取鍋搬送装置は、取鍋を搬送する。注湯機は、鋳型搬送装置によって搬送された複数の鋳型に取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する。鋳造設備制御システムは、計測部及び決定部を備える。計測部は、取鍋搬送装置によって注湯機に搬送された取鍋内の溶湯の重量を計測する。決定部は、注湯機へ次に搬送される溶湯の重量を決定する。ここで、注湯機へ次に搬送される溶湯の重量は、計測部によって計測された取鍋内の溶湯の重量と各搬送位置に関連付けられた溶湯の計画重量とに基づいて算出される注湯可能枠数に応じて決定される複数の鋳型に対応する溶湯の計画重量それぞれを合計した重量と等しい。本開示の他の側面に係る鋳造設備制御システムは、本開示の一側面に係る鋳造設備制御システムと同一の効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の種々の側面及び実施形態によれば、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、例示的な実施形態に係る鋳造設備の一部を示す平面図である。
図2図2は、図1の鋳造設備の制御システムのブロック図である。
図3図3は、造型計画データベースの一例である。
図4図4は、(A)が造型模型番号データベースの一例であり、(B)が取鍋連番データベースの一例である。
図5図5は、鋳型の動きに連動して更新される鋳型位置データベースを説明する図である。
図6図6は、鋳型の動きに連動して更新される注湯位置データベースを鋳型の動きに合わせて説明する図である。
図7図7は、鋳造設備における製作指示と作動・品質確認の概要を説明する図である。
図8図8は、製作指示処理を示すフローチャートである。
図9図9は、作動・品質確認処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示の例示的実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0016】
[鋳造設備の概要]
図1は、例示的な実施形態に係る鋳造設備の一部を示す平面図である。図1に示される鋳造設備1は、溶解炉で得られた元湯の一部を取鍋へ出湯し、溶湯を貯留する取鍋を注湯機へ搬送し、搬送された取鍋の溶湯を、注湯機を用いて鋳型に注湯する。
【0017】
図1に示されるように、鋳造設備1は、一例として、溶解炉2と、一次接種装置3と、処理取鍋LD1を受湯台車軌条R1上に沿って搬送する受湯台車4(取鍋搬送装置の一例)と、二次接種装置5と、注湯取鍋LD2を搬送台車軌条R2上に沿って搬送する搬送台車6(取鍋搬送装置の一例)と、取鍋交換装置9と、注湯機10とを備える。
【0018】
溶解炉2は、溶解材料を熱で溶融して元湯を得る装置である。溶解炉2の数は1台であってもよいし、複数台であってもよい。図1の例では、2台の溶解炉2が並設される。溶解材料の一例は、銑鉄、戻し材、鋼くず、合金材などである。溶解炉2は、例えば、電気炉やキュポラであり、溶解材料を溶融できる炉であれば特に限定されない。溶解炉2には、対応する溶解材料投入装置が並設されており、溶解材料投入装置によって溶解材料が炉内に投入される。溶解炉2及び溶解材料投入装置は、後述する溶解ブロック制御装置60(図2)によって動作が制御される。溶解炉2は、温度センサが設けられており、元湯の温度を取得できる。溶解炉2の溶湯は、成分検査のためにサンプル採取され、試験室において炭素分析装置、カントバック元素分析装置、CEメータなどにより検査され得る。溶解炉2は、後述する受湯取鍋へ複数回出湯できる程度の量の元湯を一度に得ることができる。
【0019】
一次接種装置3は、処理取鍋LD1に受湯された元湯の成分を調整する装置である。一次接種装置3は、例えばホッパ、計量装置、投入シュートなどを備え、元湯に添加する材料を処理取鍋LD1内へ投入する。一次接種装置3は、受湯台車4の受湯台車軌条R1に並設される。添加材料は、鋳鉄の強度や靱性、あるいは耐食性、耐熱性、耐摩耗性などを高めるために溶湯に添加される。添加材料は、一例としてMg、Ce、Ca、Ni、Cr、Cu、Mo、V、Tiなどである。添加材料は、黒鉛球状化剤を含んでもよい。一次接種装置3は、カルシウムシリコン、フェロシリコン、黒鉛などの接種剤を添加してもよい。一次接種装置3は、後述する合金投入制御装置52(図2)によって動作が制御される。なお、一次接種装置3は、ワイヤ接種により添加材料を投入してもよい。
【0020】
受湯台車4は、処理取鍋LD1を載置し、受湯台車軌条R1に沿って処理取鍋LD1を搬送する。受湯台車4は、上述した一次接種装置3による接種位置だけでなく、溶解炉2からの受湯位置でも停止できる。受湯台車4は、空け替え機能を有してもよい。空け替えとは、溶湯を他の取鍋に移し替えることである。受湯台車4は、空替位置で停止し、貯留する溶湯を注湯取鍋LD2へ空け替えることができる。
【0021】
受湯台車4は、取鍋傾動機構、重量計測機構、及び、非接触温度計を備えてもよい。取鍋傾動機構は、受湯台車軌条R1に沿って延びる回転軸を中心として処理取鍋LD1を回転傾斜させる。これにより、空替位置において注湯取鍋LD2へ溶湯を空け替えることができる。重量計測機構は、元湯の受湯量を計測するセンサを含む機構である。重量計測機構は、例えばロードセルなどを含む。非接触温度計は、非接触で元湯の温度を計測するセンサである。受湯台車4は、車輪にエンコーダを備えることにより、車輪の回転、すなわち、走行を計測してもよい。これにより、処理取鍋LD1の位置が検出される。受湯台車4は、光電センサなどの他の位置検出センサを備えてもよい。受湯台車4は、後述する受湯台車制御装置53(図2)によって動作が制御される。
【0022】
二次接種装置5は、注湯取鍋LD2に貯留された溶湯の成分を調整する装置である。二次接種装置5は、例えばホッパ、計量装置、投入シュートなどを備え、溶湯に添加する材料を処理取鍋LD1内へ投入する。処理取鍋LD1から注湯取鍋LD2へ溶湯を空け替えるときに添加材料を投入することにより、短時間で均一に添加材料を投入できる。さらに、受湯台車4で溶湯の重量を計測できるので、溶湯と材料との割合(接種材比率)が正確になるように、添加材料を投入することもできる。二次接種装置5は、後述する合金投入制御装置52(図2)によって動作が制御される。なお、二次接種装置5は受湯台車4に設置されてもよい。また、二次接種装置5は、ワイヤ接種により添加材料を投入してもよい。
【0023】
搬送台車6は、注湯取鍋LD2を載置し、搬送台車軌条R2に沿って注湯取鍋LD2を搬送する。搬送台車6は、上述した空替位置の他に、注湯機10に注湯取鍋LD2を搬送する取鍋交換位置でも停止することができる。搬送台車6は、注湯取鍋LD2の向きを変更可能な機能を有してもよい。搬送台車6は、車輪にエンコーダを備えることにより、車輪の回転、すなわち、走行を計測してもよい。これにより、注湯取鍋LD2の位置が検出される。搬送台車6は、光電センサなどの他の位置検出センサを備えてもよい。搬送台車6は、後述する搬送台車制御装置54(図2)によって動作が制御される。
【0024】
取鍋交換装置9は、注湯機10の前段(取鍋交換位置)に設けられ、溶湯の入った注湯取鍋LD2(実取鍋)と、注湯して空になった注湯取鍋LD2(空取鍋)とを交換する装置である。取鍋交換装置9は、搬送台車6上の実取鍋を受け取るローラコンベア7と、空取鍋を待機させるローラコンベア8とを有する。注湯機10がスライドすることにより、実取鍋と空取鍋との交換が実現する。例えば、注湯機10がローラコンベア8の手前へスライドすることにより、空取鍋が注湯機10からローラコンベア8へ受け渡される。実取鍋は、搬送台車6からローラコンベア7へ搬送される。注湯機10がローラコンベア7の手前へスライドすることにより、ローラコンベア7から実取鍋が注湯機10へ受け渡たされる。
【0025】
注湯機10は、注湯取鍋LD2が貯留する溶湯を鋳型に注湯する装置である。注湯機10は、注湯ゾーン14の側方に設けられる。注湯ゾーン14では、鋳型搬送装置が、後述する造型機M(図5)によって造型された複数の鋳型を列状に並べて1鋳型分ずつ搬送する。注湯機10は、注湯ゾーン14において、搬送されている鋳型に対して注湯取鍋LD2内の溶湯を注湯する。
【0026】
注湯ゾーン14には、鋳型用の軌条が敷設されており、軌条の両端には、鋳型搬送装置である一組の鋳型送り装置11(プッシャ及びクッション)が配置される。鋳型送り装置11を構成するプッシャは、鋳型を押し出す機能を有し、鋳型送り装置11を構成するクッションは、押し出された鋳型を受ける機能を有する。プッシャ及びクッションにより鋳型を隙間なく送り出すことができる。プッシャ及びクッションを有する鋳型送り装置11は、一鋳型分ずつ鋳型を送り出す。図1においては、軌条の前端の鋳型送り装置(クッション)のみが図示されており、軌条の後端に配置された鋳型送り装置(プッシャ)の図示は省略されている。鋳型送り装置11は、伸縮可能なロッドを備えた装置であり、一例としてサーボシリンダである。一組の鋳型送り装置11は、軌条上の鋳型列を挟み込み、所定の速度曲線で同期して動作する。具体的には、軌条の後端に配置された鋳型送り装置(プッシャ)は、ロッドを伸長させることにより、軌条上に並べられた後端の鋳型を1枠分だけ押して、並べられた鋳型を1枠分ずつ間欠的に搬送する。軌条の前端に配置された鋳型送り装置(クッション)は、プッシャにより後端の鋳型が押されるのに合わせてロッドを縮めるように動作する。このように構成すると、搬送中にも一列の鋳型を両端から抑えることができる。このため、搬送中にも鋳型が安定するとともに制振制御も可能になる。
【0027】
注湯ゾーン14において鋳型が軌条の前端に至ると、トラバーサ13で隣の冷却ゾーン15へと移送される。冷却ゾーンでは、注湯後の鋳型を冷却しながら、鋳型ばらし装置(不図示)へと鋳型を搬送する。冷却ゾーン15には、鋳型用の軌条が敷設されており、軌条の両端には、注湯ゾーン14と同様に、一組の鋳型送り装置12(プッシャ及びクッション)が配置される。図1においては、軌条の後端の鋳型送り装置(プッシャ)のみが図示され、軌条の前端に配置された鋳型送り装置(クッション)の図示は省略されている。鋳型送り装置12の動作は、鋳型送り装置11の動作と同一である。鋳型送り装置12によって、冷却ゾーン15の鋳型は、注湯ゾーン14の鋳型の搬送方向とは逆方向へ搬送される。注湯された後の鋳型は軌条上において時間を掛けて冷却され、溶湯は鋳型ばらし装置に至る前に固化して鋳物となる。鋳型送り装置11,12は、ロッドの伸び縮みを検知するセンサであって鋳型が搬送されることを検知する鋳型位置センサを有してもよい。鋳型位置センサの一例は、リミットスイッチや近接スイッチである。鋳型の搬送は、後述する造型ライン制御装置30(図2)によって制御される。注湯機10と鋳型の搬送とを同期させる必要がある場合には、注湯ゾーン14の軌条にエンコーダや測長センサなどを配置する。注湯機10は、センサを用いて取得された鋳型の搬送速度及び位置に基づいて、鋳型の搬送と同期するように制御される。
【0028】
注湯機10は、注湯ゾーン14の軌条と平行に敷設された注湯軌条R3上を走行する注湯台車と、注湯台車上に設置される昇降機構と、昇降機構に支持され、搭載した注湯取鍋LD2を傾動させる傾動機構とを備える。昇降機構は、注湯台車が走行する方向と直交する方向に移動する前後移動機構上に設置される。注湯機10は、注湯取鍋LD2の溶湯重量を計測するロードセル、注湯する溶湯の温度を計測する非接触温度計などを有する。注湯機10は、後述する注湯ブロック制御装置40(図2)によって動作が制御される。
【0029】
注湯機10は、注湯取鍋LD2からテストピース用に溶湯を受け取るテストピース採取ユニットを有してもよい。テストピース採取ユニットでは、材質検査のために注湯取鍋LD2毎の溶湯からテストピースを採取する。
【0030】
造型機Mは、複数の鋳型を造型する装置である。造型機Mは、鋳型砂をスクイズして上下枠を造型する。造型機Mは、上下鋳型を造型することができる装置であれば、特に限定されない。造型機Mは、後述する造型ブロック制御装置20(図2)によって動作が制御される。
【0031】
鋳造設備1は、上述した軌条又は軌条近傍において、取鍋が搬送されたことを検出する位置検出センサ(不図示)を有する。位置検出センサは、ローラコンベアの下に設置された近接スイッチまたはレーザセンサであってもよい。あるいは、位置検出センサは、受湯台車4や搬送台車6に設置されたエンコーダ、光電センサであってもよい。
【0032】
以上のように構成される鋳造設備1では、以下のような基本動作が行われる。図1に示されるように、受湯台車4は、処理取鍋LD1を積載し、一次接種装置3の下に位置しており、合金材(一次接種材)を処理取鍋LD1に投入している状態である。合金材の投入時において取鍋連番が発行される。合金投入が完了すると、受湯台車4は、指定の溶解炉2に移動し、元湯を受湯する。受湯が完了すると、溶湯は処理取鍋LD1から空の注湯取鍋LD2に空け替えられる。注湯取鍋LD2は、搬送台車6によって、取鍋交換装置9のローラコンベア7へ移動する。そして、実取鍋が注湯機10に乗せ換えられる。鋳型は、造型機Mで造型され、一枠ずつ移動するように搬送され、注湯位置に到達する。注湯機10は注湯位置に移動して注湯開始する。搬送台車6はローラコンベア8から空取鍋を受け取り、空替位置に移動し、処理取鍋から溶湯を受け取る。この一連の動きが繰り返される。
【0033】
[鋳造設備の制御システム]
図2は、図1の鋳造設備の制御システムのブロック図である。図2に示されるように、制御システム100(鋳造設備制御システムの一例)は、造型ブロック制御装置20と、造型ライン制御装置30と、注湯ブロック制御装置40と、溶湯搬送ブロック制御装置50と、溶解ブロック制御装置60とを備える。図中の装置は、PLCまたはコンピュータ、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)などの主記憶装置(記憶媒体の一例)、タッチパネルやキーボードなどの入力デバイス、ディスプレイなどの出力デバイス、ハードディスクなどの補助記憶装置(記憶媒体の一例)などを含む通常のコンピュータシステムとして構成される。
【0034】
造型ブロック制御装置20は、造型計画データベース21に基づいて造型機M(図5)を動作させる。造型計画データベース21は、鋳型情報を含む。鋳型情報は、鋳型に関連付けられる情報であって、鋳型を識別するための連番、当該鋳型にて用いられる模型の情報や、鋳込重量などを含む。図3は、造型計画データベースの一例である。図3においては、造型機Mが枠付造型機であり、タクト(一枠の処理時間)が25sec、注湯取鍋LD2の容量が1000Kgである場合を例示する。図3に示されるように、造型計画データベース21は、計画鋳型連番と、計画鋳型連番に関連付けられた基本シフト情報とを含む。計画鋳型連番は、鋳型を識別するための情報である。基本シフト情報は、後述する鋳型位置データベース31において、鋳型の動きと連動してシフトされる情報である。基本シフト情報は、造型模型番号及び計画鋳込重量(計画重量)を含む。造型模型番号は、鋳型に用いる模型を識別するための情報である。造型模型番号は、注湯ブロック制御装置40において、注湯に関する情報を読み出すために使用される。計画鋳込重量は、鋳型に注湯される溶湯量である。図3の例では、計画鋳型連番「1」には、造型模型番号「1235」及び計画鋳込重量「75Kg」が関連付けられている。また、計画鋳型連番「15」には、造型模型番号「1234」及び計画鋳込重量「50Kg」が関連付けられている。造型ブロック制御装置20は、注湯ブロック制御装置40と通信可能に接続される。
【0035】
造型ライン制御装置30は、鋳型送り装置11,12を制御するとともに鋳型位置データベース31(データベースの一例)を更新する。鋳型位置データベース31は、鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置と、各搬送位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶する。鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置とは、絶対位置(アドレス)のことであり、鋳型が移動したとしても同一の位置を示す。このような搬送位置は、例えば搬送ラインの後端位置、造型機Mの配置位置などを基準として割り振られる。つまり、鋳型位置データベース31は、搬送位置と、鋳型連番、及び、造型模型番号とが関連付けて記憶される。造型ライン制御装置30(更新部の一例)は、鋳型送り装置11,12による枠送りに応じて、鋳型位置データベース31に記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報を更新する。更新動作の詳細は後述する。
【0036】
溶解ブロック制御装置60は、溶解工程の情報を一括管理する。溶解ブロック制御装置60は、溶解炉2、溶解材料計量装置、溶解材料投入装置、温度センサ、炭素分析装置、カントバック元素分析装置、CEメータなどに接続される。溶解ブロック制御装置60は、当日の初回溶解時においては当日の生産計画に基づいて溶解材料を決定し、決定された溶解材料を溶解材料投入装置に投入させる。溶解ブロック制御装置60は、決定された溶解材料を表示装置610に表示させて、溶解場の作業員に溶解材料を指示してもよい。溶解ブロック制御装置60は、溶湯搬送ブロック制御装置50に接続されており、装置は互いに情報のやり取りを行う。溶解ブロック制御装置60は、溶解材料計量装置、溶解材料投入装置、温度センサ、炭素分析装置、カントバック元素分析装置、CEメータなどから情報を取得して、溶解炉ごとに元湯に関する溶解情報を記憶する。
【0037】
溶湯搬送ブロック制御装置50は、溶湯搬送制御装置51、合金投入制御装置52、受湯台車制御装置53、搬送台車制御装置54、及び取鍋連番データベース55を備える。
【0038】
合金投入制御装置52は、元湯を受湯する処理取鍋LD1に対して取鍋連番を付与する。例えば、合金投入制御装置52は、処理取鍋LD1が一次接種装置3に位置したタイミングで処理取鍋LD1に対して取鍋連番を発行する。取鍋連番とは、取鍋に対して付与され、カウントアップされる数字である。一例として、取鍋連番は、鋳造設備1の開始時(例えば、一日の操業開始時)をゼロとする。取鍋連番は、一例として、一次接種のための合金材が処理取鍋LD1に投入され、受湯台車4が受湯位置へと向かうタイミングでカウントアップされる。
【0039】
合金投入制御装置52は、一次接種装置3による合金投入情報を受湯台車4の処理取鍋LD1の取鍋連番と関連付けて、取鍋連番データベース55に記憶する。合金投入情報は、一例として、湯種、合金投入時刻、合金種類と重量、取鍋の使用回数・時間、一次接種材の廃棄量などを含む。
【0040】
溶湯搬送制御装置51は、取鍋の位置に応じて取鍋連番をシフトさせる。例えば、溶湯搬送制御装置51は、一次接種装置3から受湯台車4が発進したタイミングで、一次接種装置3にて付与された取鍋連番を受湯台車4の処理取鍋LD1に引き継がせる。溶湯搬送制御装置51は、搬送台車6の注湯取鍋LD2に、処理取鍋LD1の溶湯が処理取鍋LD1から注湯取鍋LD2へ空け替えられたことに応じて(つまり、空け替えが完了したタイミングで)、空替位置に位置する受湯台車4の処理取鍋LD1の取鍋連番を引き継がせる。溶湯搬送制御装置51は、取鍋交換装置9のローラコンベア7において、搬送台車6から実取鍋が搬入されたタイミングで、当該実取鍋の取鍋連番として、搬送台車6の実取鍋の取鍋連番を引き継がせる。溶湯搬送制御装置51は、取鍋交換装置9のローラコンベア7から注湯機10へ実取鍋を移動させたタイミングで、後述する注湯ブロック制御装置40へローラコンベア7の実取鍋の取鍋連番を出力する。上述した受湯台車4及び搬送台車6の動作は、受湯台車制御装置53及び搬送台車制御装置54によって実現される。このように、溶湯搬送制御装置51は、受湯台車制御装置53及び搬送台車制御装置54による取鍋の動きに合わせて取鍋連番をシフトさせる。
【0041】
溶湯搬送制御装置51は、一次接種装置3に位置する取鍋、受湯台車4上の取鍋、空替位置に位置する取鍋、搬送台車6上の取鍋、取鍋交換装置9のローラコンベア7上の取鍋について、それぞれの取鍋連番を溶湯搬送制御装置51の記憶装置に記憶する。
【0042】
合金投入制御装置52は、二次接種情報を、搬送台車6上の注湯取鍋LD2の取鍋連番と関連付けて、取鍋連番データベース55に記憶してもよい。二次接種情報は、一例として、接種時刻、取鍋番号、接種種類と接種量、Mg反応完了時間、二次接種材の廃棄量などを含む。ここで、取鍋連番と取鍋番号とが関連付けされる。
【0043】
受湯台車制御装置53は、受湯情報を溶湯搬送制御装置51へ転送する。受湯情報は、一例として、湯種、出湯時刻、受湯重量、受湯温度、炉番号、受湯回数、溶解回数、受湯後の経過温度などを含む。受湯回数は、取鍋への溶湯補給回数である。溶湯補給回数は、溶解炉においては出湯回数で表現され、受湯台車においては受湯回数で表現される。溶湯搬送制御装置51は、受湯台車4の取鍋の取鍋連番と受湯情報とを関連付けて取鍋連番データベース55に記憶する。ここで、取鍋連番と炉番号及び出湯回数とが関連付けされる。溶湯搬送制御装置51は、溶解炉2から処理取鍋LD1へ元湯が出湯されたことに応じて、取鍋連番と炉番号及び出湯回数とを関連付けて取鍋連番データベース55に記憶する。なお、溶湯搬送制御装置51は、溶解ブロック制御装置60から材質番号(材質情報の一例)を取得し、取鍋連番と関連付けて取鍋連番データベース55に記憶する。材質番号は、材質ごとに予め割り振られた文字又は数字である。
【0044】
図4の(B)は、取鍋連番データベースの一例である。図4の(B)に示されるように、取鍋連番データベース55は、取鍋連番に関連付けて、材質番号、合金投入情報、受湯情報、二次接種情報、フェーディング開始時間およびテストピース連番(テストピース識別情報の一例)を含む。フェーディング開始時間は受湯後の合金材との反応に伴う重量変化に基づいて計測される。テストピース連番は、溶解炉2におけるテストピースを使用した材質検査結果に割り振られた連番である。
【0045】
溶湯搬送制御装置51及び合金投入制御装置52には、表示装置510,520がそれぞれ接続されており、各種情報を表示することができる。これらの情報は、作業員に報知される。
【0046】
注湯ブロック制御装置40は、注湯機10の動作を制御する。注湯ブロック制御装置40は、注湯機主制御装置41及び注湯台車制御装置44を含む。注湯機主制御装置41は、注湯機10の注湯動作に関する制御を行う。注湯台車制御装置44は、注湯機10の注湯台車の動作を制御するとともに、注湯した結果を収集し、注湯情報として記憶する。注湯機主制御装置41及び注湯台車制御装置44は、互いに通信可能に接続される。
【0047】
注湯機主制御装置41は、搬送位置を注湯位置に置き換えた注湯位置データベース42(データベースの一例)を備える。注湯位置データベース42は、複数の注湯位置と、各注湯位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶する。注湯位置は、搬送位置と同様に、注湯ゾーン14における鋳型列に対して固定的に割り振られた絶対位置(アドレス)のことであり、鋳型が移動したとしても同一の位置を示す。注湯機主制御装置41(更新部の一例)は、造型ライン制御装置30から、鋳型位置データベース31の内容を取得して注湯位置データベース42を更新する。注湯機主制御装置41は、鋳型送り装置11,12による枠送りに応じて、造型ライン制御装置30から更新された情報を取得する。これにより、注湯機10は、各注湯位置に位置する鋳型の鋳型情報を把握することができる。
【0048】
注湯機主制御装置41は、造型模型番号データベース43を備える。造型模型番号データベース43は、模型ごとに注湯条件を記憶する。図4の(A)は、造型模型番号データベースの一例である。造型模型番号データベース43は、鋳型に使用される模型の識別番号である造型模型番号と、計画鋳込重量、計画材質番号、計画注湯パターン番号、計画注湯温度などとを関連付けて記憶する。計画鋳込重量は鋳型に流し込まれる溶湯の予め設定された重さである。計画材質番号は、予め設定された材質番号である。注湯パターンは、注湯重量と注湯時間との関係を示すパターンであり、注湯パターン番号は注湯パターンを識別するために割り振られた文字又は数字であり、計画注湯パターン番号は、予め設定された注湯パターン番号である。計画注湯温度は予め設定された溶湯温度である。注湯機主制御装置41は、鋳型に関連付けられた造型模型番号に基づいて造型模型番号データベース43を参照することで、当該鋳型の注湯条件を把握することができる。
【0049】
注湯台車制御装置44は、注湯条件データベース45を備える。注湯条件データベース45は、造型模型番号データベース43と同一内容を記憶する。注湯台車制御装置44は、造型模型番号データベース43に記憶された注湯条件に基づいて注湯機10の注湯台車を制御する。なお、注湯台車制御装置44が造型模型番号データベース43を参照可能である場合、注湯台車制御装置44は、注湯条件データベース45は備えなくてもよい。
【0050】
注湯台車制御装置44(取得部の一例)は、注湯情報(実績データの一例)を収集し、注湯実績データベース46に格納する。注湯台車制御装置44は、実取鍋が注湯機10に搬入されたときに、溶湯搬送ブロック制御装置50から実取鍋の取鍋連番を取得する。注湯情報は、注湯工程において得られる情報であり、一例として、取鍋連番、受湯後経過時間、鋳込重量、鋳込時間、材質番号、注湯温度、フェーディング開始時間、テストピース連番などを含む。注湯台車制御装置44は、注湯完了時、鋳型連番を基準として注湯情報を注湯実績データベース46に格納する。
【0051】
注湯台車制御装置44は、注湯取鍋LD2毎の溶湯から採取されたテストピースの材質検査結果を、テストピース連番と関連付けてテストピースデータベース47に格納する。
【0052】
[鋳型位置データベースにおける鋳型情報の更新の詳細]
図5は、鋳型の動きに連動して更新される鋳型位置データベースを説明する図である。上述のとおり、鋳型位置データベース31は、搬送位置と、鋳型連番、造型模型番号及び計画鋳込重量とが関連付けて記憶する。図5に示されるように、造型機Mから注湯ゾーンに向けて鋳型位置番号「1」「2」「3」…[13]が割り振られている。鋳型位置番号は、鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置の一例である。鋳型には、当日の先頭鋳型から順に鋳型連番が割り振れる。当日の1つ目の鋳型が造型されると、当該鋳型は、鋳型位置番号「1」に対応する位置に配置される。これに伴い、鋳型連番「1」は、造型模型番号「1235」とともに鋳型位置番号「1」と関連付けて記憶される。造型模型番号「1235」は、図3に示される造型計画データベース21から取得される。続いて、鋳型は造型機Mから注湯ゾーンに向けて一枠分移動し、2つ目の鋳型が造型される。鋳型の移動は、センサによって検知される。鋳型連番「2」の鋳型は、鋳型位置番号「1」に対応する位置に配置され、鋳型連番「1」の鋳型は、鋳型位置番号「2」に対応する位置に配置される。このため、センサによって鋳型の移動が検知されると、造型計画データベース21上において、鋳型連番「2」は、造型模型番号「1235」とともに鋳型位置番号「1」と関連付けて記憶され、鋳型連番「1」は、造型模型番号「1235」とともに鋳型位置番号「2」と関連付けて記憶される。このように、鋳型が一枠移動する度に、造型計画データベース21上において、鋳型位置番号に関連付けられる鋳型連番がシフトされる。図5に示される例では、11個目の鋳型が造型され、鋳型連番「1」の鋳型は、鋳型位置番号「11」に対応する位置に配置されており、これに伴い、鋳型位置データベース31上においてシフトが10回行われ、鋳型位置番号「11」と、鋳型連番「1」及び造型模型番号「1235」が関連付けて記憶される。このように、鋳型位置データベース31は、鋳型の移動の検知に応じて更新される。
【0053】
[注湯位置データベースにおける鋳型情報の更新の詳細]
図6は、鋳型の動きに連動して更新される注湯位置データベースを説明する図である。上述のとおり、注湯位置データベース42は、搬送位置と、鋳型連番及び造型模型番号とが関連付けて記憶する。図6に示されるように、注湯ゾーンには、注湯位置番号「P1」「P2」「P3」…[P16]が割り振られている。注湯位置番号は、鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置の一例である。なお、注湯位置番号「P1」を示す鋳型位置番号は予め設定されている。例えば、注湯位置番号「P1」を示す鋳型位置番号が「40」である場合、鋳型位置データベース31の鋳型位置番号「39」の鋳型情報をシフトする際に、造型ライン制御装置30から注湯機主制御装置41へ鋳型位置番号「39」の鋳型情報が送信され、注湯位置番号「P1」と鋳型位置番号「39」の鋳型情報とが関連付けて記憶される。このように、データの引き継ぎが行われる。注湯機主制御装置41は、注湯位置データベース42の注湯位置番号に関連付けられた造型模型番号を参照し、造型模型番号データベース43から計画鋳込重量、計画材質、計画注湯パターン番号および計画注湯温度の注湯条件を読み出して、注湯する。図6の例は、注湯位置番号「P13」に位置する鋳型に注湯が完了した状態である。注湯機主制御装置41は、注湯が完了すると、注湯位置データベース42に取鍋連番を追加する。
【0054】
[計画の整合と品質確認]
ここで、造型計画と溶解計画との整合をとるための構成、及び、品質確認の構成について説明する。一般的に、造型機は秒単位で鋳型を造型し、溶解炉は時間単位で原料を溶解し、注湯機は秒単位又は分単位で注湯を行う。このため、タイミングによっては、造型機又は注湯機は、溶解炉による溶解の完了待ちとなる場合がある。従来の設備では、造型工程と溶解工程は、製作指示が個別になされており、造型計画と溶解計画との整合を積極的にとる手段は存在しない。また、上位の制御装置から当日の生産計画に基づいて一律の製作指示が出されている例も存在するが、溶解炉による溶解の完了待ちという事態を回避するために、溶解炉において多めに溶湯を準備する対応がなされている。しかしながら、余分な溶湯を準備及び搬送するため、このような対応は造型効率が十分であるとはいえない。造型計画と溶解計画との整合をとることができれば、溶湯を必要最小限の適量だけ製作すれば足りる。また、造型計画と溶解計画との整合をとることは、結果としていい鋳物づくりができるといえる。
【0055】
いい鋳物づくりには、当初の予定通りの成分に調整され、予定通りの粘性を有する湯を、安定した勢いで注ぐ自動注湯機が必要である。予定通りの成分は、溶解から成分調整された溶湯の材質番号と鋳型の計画材質番号とが一致することで担保される。予定通りの粘性は、溶湯温度が計画温度と一致することで実現される。安定した勢いで溶湯を注ぐことは、計画された注湯パターンで流量制御することで実現され、また、注湯場で溶解デ-タを活用して注ぐ時のチェックを強化することで担保される。つまり、注湯設備内において計画を共有する構成と、実績に基づいた確認を行う構成は、いい鋳物づくりに寄与することになる。
【0056】
図7は、鋳造設備における製作指示と作動・品質確認の概要を説明する図である。図7に示される項番(1)~(5)は、鋳造設備における製作指示を説明し、項番(6),(7)が作動・品質確認を説明する。
【0057】
注湯ブロック制御装置40は、項番(1)~(5)を実行する機能を有する。注湯ブロック制御装置40は、新規取鍋が注湯機10に到着したときに製作指示データを作成する。新規取鍋とは、溶解炉2の溶解が完了した後、元湯の初回の出湯を受けた取鍋である。つまり、新規取鍋は、溶解炉2ごとに判定され、溶解サイクルごとに判定される。製作指示データは、溶解場への指示を含むデータである。つまり、製作指示データは、次回以降に搬送される溶湯や次回以降に製作される元湯に関する指示を含むデータである。製作指示データは、一例として、取鍋の溶湯重量を含む。
【0058】
新規取鍋が注湯機10に到着したとき、注湯台車制御装置44(計測部の一例)は、搬送台車6によって注湯機10に搬送された注湯取鍋LD2内の溶湯の重量を計測する。注湯台車制御装置44は、例えば注湯台車に設けられたロードセルの出力に基づいて溶湯の重量を計測する。さらに、注湯機主制御装置41は、注湯ゾーンから鋳型情報として、鋳型連番及び造型模型番号を入手する。具体的には、注湯機主制御装置41は、注湯位置データベース42を参照して鋳型連番及び造型模型番号を取得する。注湯機主制御装置41は、造型模型番号に基づいて造型模型番号データベース43を参照し、計画注湯パターン番号及び計画鋳込重量を取得する(項番(1),(2))。
【0059】
続いて、注湯台車制御装置44(算出部の一例)は、注湯機主制御装置41によって取得された計画鋳込重量(溶湯の計画重量の一例)に基づいて、注湯機10に搬送された注湯取鍋LD2の注湯可能枠数を算出する。注湯可能枠数とは、注湯を完了することができる鋳型の数である。注湯台車制御装置44は、例えば、注湯位置データベース42を参照し、次に注湯する鋳型の計画鋳込重量を順次加算し、注湯取鍋LD2の溶湯の重量以下で最大の合計計画鋳込重量となる鋳型数を注湯可能枠数とする(項番(4))。
【0060】
続いて、注湯台車制御装置44(決定部の一例)は、注湯可能枠数に基づいて、注湯機10へ次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型を認識する。例えば、注湯可能枠数が「7」である場合には、これから注湯機10の注湯位置に搬送される7つの鋳型が現在の注湯取鍋LD2によって注湯される鋳型である。注湯台車制御装置44は、これらの鋳型の後に搬送される7つの鋳型が、注湯機10へ次に搬送される溶湯が注湯される鋳型であると認識する。注湯台車制御装置44は、認識した各鋳型に対応する鋳型連番に基づいて注湯条件データベース45を参照し、計画注湯パターン番号、計画鋳込重量及び計画注湯温度を取得する(項番(3))。そして、注湯台車制御装置44は、認識した各鋳型に対応する計画鋳込重量を合計し、その合計を次の取鍋に対する計画出湯重量(予測重量の一例)とする(項番(4))。このように、注湯機10へ次に搬送される溶湯の重量は、計測された取鍋内の溶湯の重量と各搬送位置に関連付けられた溶湯の計画重量とに基づいて算出される注湯可能枠数に応じて決定される、前記複数の鋳型に対応する溶湯の計画重量それぞれを合計した重量と等しくなる。
【0061】
注湯台車制御装置44(出力部の一例)は、決定された計画出湯重量を溶解炉2における製作指示データとして出力する(項番(5))。注湯台車制御装置44は、さらに次の取鍋(次々取鍋)に対する計画出湯重量を算出してもよい。注湯台車制御装置44は、同様に、次の取鍋に対応する鋳型の後に搬送される注湯可能枠数分の各鋳型に対応する計画鋳込重量を合計し、その合計を次々取鍋に対する計画出湯重量とする。
【0062】
注湯台車制御装置44は、製作指示データに、溶湯の計画温度を含ませてもよい。溶湯の計画温度は、次の取鍋によって注湯されると認識された各鋳型の溶湯の計画温度に基づいて決定される。注湯台車制御装置44は、製作指示データに、溶湯の計画材質番号(計画材質情報の一例)を含ませてもよい。溶湯の計画材質番号は、次の取鍋によって注湯されると認識された各鋳型の溶湯の計画材質番号に基づいて決定される。
【0063】
注湯台車制御装置44から出力される製作指示データは、溶湯搬送ブロック制御装置50へと出力される。製作指示データは、溶湯搬送制御装置51及び合金投入制御装置52の表示装置510,520それぞれに表示されてもよい。製作指示データは、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へと出力される。これにより、溶解作業、溶湯搬送作業、および合金投入作業のための作業員に対して、次の取鍋に関する計画出湯重量、計画材質番号及び計画温度が報知される。作業員は、計画出湯重量に基づいて溶解炉2の出湯重量を調整し、計画温度に基づいて溶解炉2の出湯温度の調整を行う。そして、作業員は、計画材質番号に基づいて一次接種装置3における合金を調整し、計画材質番号に基づいて受湯台車4が受湯する溶解炉を決定する。
【0064】
次に、鋳造設備1の作動・品質確認について説明する。上述したとおり、注湯実績データベース46には、取鍋連番に関連付けて、材質番号、合金投入情報、受湯情報、二次接種情報、フェーディング開始時間およびテストピース連番が含まれる(項番(6))。注湯実績データベース46に格納された情報は、溶湯搬送工程の作動・品質確認に使用される。例えば、注湯台車制御装置44は、合金選択結果の確認、炉選択結果の確認、出湯温度の確認、出湯重量の確認、及びテストピースデータベース47からテストピース連番による材質検査結果の照合などを行う(項番(7))。注湯台車制御装置44は、溶湯搬送ブロック制御装置50及び溶解ブロック制御装置60へ照会結果を出力する。作業員は、照会結果に基づいて合金選択の実績を確認し、必要な場合には溶解炉2の出湯温度や一次接種装置3における合金を調整する。さらに、注湯台車制御装置44は、取鍋連番データベース55に格納されたテストピース連番に基づいて溶解炉2における材質検査結果を取得する。材質検査結果は、例えば炭素分析装置、カントバック元素分析装置、CEメータなどによって得られたサルファ値などである。注湯台車制御装置44は、溶湯搬送ブロック制御装置50へ材質検査結果を出力する。作業員は、材質検査結果を確認し、必要な場合には一次接種装置3における合金を調整する。
【0065】
注湯台車制御装置44は、注湯機10に到着した取鍋の取鍋連番を取得し、取鍋連番に関連付けられた材質番号(実績データの一例)を注湯機主制御装置41へ出力してもよい。注湯機主制御装置41(判定部の一例)は、注湯対象の鋳型に対応する計画材質番号を取得し、計画材質番号を取鍋連番に関連付けられた材質番号と照合して、注湯の実行可否を判定する。注湯機主制御装置41は、材質番号が一致する場合には注湯を継続する。注湯機主制御装置41は、材質番号が不一致の場合には、注湯を中断する。この場合、注湯取鍋LD2の溶湯は、別な場所へ搬送され、冷却後に再利用される。
【0066】
(製作指示処理)
上述した製作指示処理を時系列で説明する。図8は、製作指示処理を示すフローチャートである。図8に示されるフローチャートは、注湯ブロック制御装置40によって実行され、例えば、0.05秒間隔などの定周期起動で実行される。
【0067】
図8に示されるように、最初に、注湯ブロック制御装置40の注湯台車制御装置44は、ステップS10として、注湯機10に注湯取鍋LD2が到着したときに、その到着が新規取鍋の1回目の到着であるか否かを判定する。新規取鍋の1回目の到着であると判定された場合(ステップS10:YES)、注湯台車制御装置44は、ステップS12として、注湯取鍋LD2の取鍋内重量を計測する。取鍋内重量は、注湯実績データベース46に収納される。
【0068】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS16として、現時点の注湯位置からの計画鋳込重量と取鍋内重量から注湯可能枠数を算出する。注湯機主制御装置41は、注湯位置データベース42から造型連番及び造型模型番号を読み出す。注湯台車制御装置44は、造型模型番号データベース43から計画鋳込重量、計画材質および計画注湯パターン番号を取得する。注湯台車制御装置44は、注湯取鍋LD2の溶湯の重量以下で最大の合計計画鋳込重量となる鋳型数を注湯可能枠数とする。
【0069】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS18として、注湯可能枠数分の溶湯の重量を計算し、計算した重量を次取鍋の出湯重量とする。同様に、注湯台車制御装置44は、ステップS20として、次々取鍋の出湯重量を計算する。
【0070】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS22として、計算した次取鍋及び次々取鍋の出湯重量を、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へ出力する。同様に、注湯台車制御装置44は、ステップS24として、次取鍋及び次々取鍋の計画温度を造型模型番号データベース43から取得し、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へ計画温度を出力する。
【0071】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS26として、次取鍋及び次々取鍋の計画材質番号を読み込む。そして、注湯台車制御装置44は、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へ計画温度を指示する(ステップS34)。溶解ブロック制御装置60は、表示装置610に計画温度を表示する。作業員は、ステップS36として、計画温度を確認し、必要があれば、溶解炉2の溶解温度を微調整する。
【0072】
注湯台車制御装置44は、ステップS34と並行して、溶湯搬送ブロック制御装置50へ計画材質番号を出力し、受湯台車4へ元湯を選択することを指示する(ステップS38)。溶湯搬送ブロック制御装置50は、ステップS40として、計画材質番号に基づいて受湯台車4が受湯する溶解炉2を選択する。
【0073】
注湯台車制御装置44は、ステップS34と並行して、溶湯搬送ブロック制御装置50へ計画材質番号を出力し、合金投入制御装置52へ計画材質番号に基づいて合金材を選択することを指示する(ステップS28)。溶湯搬送ブロック制御装置50は、ステップS30として、受湯台車4が受湯する溶解炉2と計画材質番号とを付き合わせて差異があるか否か判定する。差異があると判定された場合、溶湯搬送ブロック制御装置50は、ステップS32として、合金材の選択を修正する。
【0074】
新規取鍋の1回目の到着でないと判定された場合(ステップS10:NO)、又は、全てのステップが終了した場合に、図8に示されるフローチャートは終了する。図8に示されるフローチャートが実行されることで、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。
【0075】
(作動・品質確認処理)
上述した作動・品質確認処理を時系列で説明する。図9は、作動・品質確認処理を示すフローチャートである。図9に示されるフローチャートは、注湯ブロック制御装置40によって実行され、例えば、0.05秒間隔などの定周期起動で実行される。
【0076】
図9に示されるように、最初に、注湯ブロック制御装置40の注湯台車制御装置44は、ステップS50として、現取鍋の注湯機10の注湯終了時であるか否かを判定する。この判定は、現取鍋の注湯機10の注湯終了時である最初の1回に指示するためである。現取鍋の注湯機10の注湯終了時であると判定された場合(ステップS50:YES)、注湯台車制御装置44は、ステップS52として、注湯実績データを収集する。注湯台車制御装置44は、注湯位置番号における取鍋連番、受湯重量、受湯後経過時間、鋳込重量、鋳込時間、材質番号、注湯温度、フェーディング開始時間などの注湯実績データを収集し、注湯取鍋LD2の取鍋内重量を計測し、収集したデータと計測した重量とを注湯実績データベース46に格納する。
【0077】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS54として、注湯実績データを溶湯搬送ブロック制御装置50へ出力し、一次接種装置3の表示装置520に注湯温度及びフェーディング開始時間を表示させる。作業員は、表示装置520の表示に基づいて合金選択結果、及び、受湯台車4に指示する炉選択結果を確認する。なお、許容されるフェーディング開始時間をオーバーした場合には、当該溶湯は、別な場所へ搬送されて冷却後に再利用されるか、排湯される。
【0078】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS56として、注湯実績データを、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へ出力し、溶解炉2前の表示装置610に注湯温度を表示させる。作業員は、表示装置610の表示に基づいて出湯温度を確認する。
【0079】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS58として、注湯実績データを、溶湯搬送ブロック制御装置50を介して溶解ブロック制御装置60へ出力し、溶解炉2前の表示装置610に受湯重量を表示させる。作業員は、表示装置610の表示に基づいて出湯重量を確認する。
【0080】
続いて、注湯台車制御装置44は、ステップS60として、溶解場の材質検査結果(例えばサルファ値など)を、溶湯搬送ブロック制御装置50へ出力し、一次接種装置3の表示装置520に材質検査結果を表示させる。作業員は、表示装置520の表示に基づいて合金材重量を微調整する。
【0081】
現取鍋の注湯機10の注湯終了時でないと判定された場合(ステップS50:NO)、又は、全てのステップが終了した場合に、図9に示されるフローチャートは終了する。図9に示されるフローチャートが実行されることで、注湯結果を溶解計画へ反映させることができる。
【0082】
(実施形態のまとめ)
鋳造設備1の制御システム100では、注湯機10に搬送された取鍋内の溶湯の重量が計測され、計測された溶湯の重量とデータベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、注湯機10に搬送された取鍋の注湯可能枠数が算出される。そして、算出された注湯可能枠数に基づいて、注湯機10へ次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型が認識される。認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量が合計され、注湯機10へ次に搬送される溶湯の予測重量が決定される。決定された予測重量は溶解炉2における製作指示データとして出力される。このように、制御システム100は、溶湯の計画重量に基づいて次の溶湯の予測重量を決定し、予測重量を溶解炉2における製作指示データに反映できる。これにより、造型計画に沿った適正重量の溶湯が搬送される。よって、制御システム100は、造型計画と溶解計画との整合性をとることができる。
【0083】
制御システム100は、次に搬送される溶湯が注湯される複数の鋳型に対応した計画温度及び計画材質情報に基づいて次に搬送される溶湯の温度及び材質情報を決定し、決定した温度と材質情報とを溶解炉2における製作指示データに反映できる。
【0084】
制御システム100は、取鍋ごとに実績データを記録できるため、例えば、注湯機10に搬送された溶湯が計画通りであるか否かを検証できる。
【0085】
制御システム100では、受湯重量、受湯温度、受湯後経過時間、材質情報など注湯前に把握された情報に基づいて注湯の実行が判定される。よって、制御システム100は、計画と異なる注湯を回避できる。
【0086】
制御システム100は、鋳型が注湯位置に到着したとき、および、新規取鍋が到着したときに、溶湯計画基準の製作指示と相違のない確認・修正ができる。制御システム100は、後工程に製作指示ができる。また、制御システム100は、注湯完了時に注湯実績データを後工程にフィードバックができるので鋳物の品質が安定する。
【0087】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、使用する取鍋の台数が少ない場合には取鍋連番を用いなくてもよい。
【0088】
本開示は、以下の条項を含む。
[条項1]
複数の鋳型を造型する造型機と、前記造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する鋳型搬送装置と、溶解材料を溶解する溶解炉と、取鍋を搬送する取鍋搬送装置と、前記鋳型搬送装置によって搬送された前記複数の鋳型に前記取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する注湯機とを備える鋳造設備を制御する鋳造設備制御システムであって、
鋳型列に対して固定的に割り振られた複数の搬送位置と、各搬送位置に位置した鋳型に対応する鋳型情報とを関連付けて記憶するデータベースと、
前記鋳型搬送装置による枠送りに応じて前記データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた前記鋳型情報を更新する更新部と、
前記取鍋搬送装置によって前記注湯機に搬送された前記取鍋内の溶湯の重量を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された溶湯の重量と、前記データベースに記憶された各搬送位置に関連付けられた前記鋳型情報に含まれる溶湯の計画重量とに基づいて、前記注湯機に搬送された前記取鍋の注湯可能枠数を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された注湯可能枠数に基づいて、前記注湯機へ次に搬送される溶湯が注湯される前記複数の鋳型を認識し、前記認識された各鋳型に対応する溶湯の計画重量を合計して前記注湯機へ次に搬送される溶湯の予測重量を決定する決定部と、
前記決定部により決定された予測重量を前記溶解炉における製作指示データとして出力する出力部と、
を備える、鋳造設備制御システム。
[条項2]
前記鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画温度をさらに含み、
前記決定部は、前記認識された各鋳型の溶湯の計画温度に基づいて前記注湯機へ次に搬送される溶湯の温度を決定し、
前記出力部は、前記決定部により決定された温度を前記製作指示データとして出力する、条項1に記載の鋳造設備制御システム。
[条項3]
前記鋳型情報は、対応する鋳型に注湯される溶湯の計画材質情報をさらに含み、
前記決定部は、前記認識された各鋳型の溶湯の計画材質情報に基づいて前記注湯機へ次に搬送される溶湯の材質情報を決定し、
前記出力部は、前記決定部により決定された材質情報を前記製作指示データとして出力する、条項1又は2に記載の鋳造設備制御システム。
[条項4]
前記注湯機の実績データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された実績データと取鍋の識別情報とを関連付けて記憶する注湯実績データベースと、
を備える条項1~3の何れか一項に記載の鋳造設備制御システム。
[条項5]
前記実績データは、受湯重量、受湯温度、受湯後経過時間、注湯温度、フェーディング開始時間、材質情報、及びテストピース識別情報のうちの少なくとも1つを含む、条項4に記載の鋳造設備制御システム。
[条項6]
注湯対象の鋳型に対応する前記鋳型情報と前記実績データとを照合して、注湯の実行可否を判定する判定部を備える、条項4又は5に記載の鋳造設備制御システム。
[条項7]
複数の鋳型を造型する造型機と、前記造型機によって造型された複数の鋳型を列状に並べて搬送する鋳型搬送装置と、溶解材料を溶解する溶解炉と、取鍋を搬送する取鍋搬送装置と、前記鋳型搬送装置によって搬送された前記複数の鋳型に前記取鍋搬送装置によって搬送された取鍋内の溶湯を注湯する注湯機とを備える鋳造設備を制御する鋳造設備制御システムであって、
前記取鍋搬送装置によって前記注湯機に搬送された前記取鍋内の溶湯の重量を計測する計測部と、
前記注湯機へ次に搬送される溶湯の重量を決定する決定部と、
を備え、
前記注湯機へ次に搬送される溶湯の重量は、前記計測部によって計測された前記取鍋内の溶湯の重量と各搬送位置に関連付けられた溶湯の計画重量とに基づいて算出される注湯可能枠数に応じて決定される前記複数の鋳型に対応する溶湯の計画重量それぞれを合計した重量と等しい、
鋳造設備制御システム。
【符号の説明】
【0089】
1…鋳造設備、2…溶解炉、3…一次接種装置、4…受湯台車(取鍋搬送装置の一例)、5…二次接種装置、6…搬送台車(取鍋搬送装置の一例)、9…取鍋交換装置、10…注湯機、30…造型ライン制御装置(更新部の一例)、31…鋳型位置データベース(データベースの一例)、41…注湯機主制御装置(更新部、判定部の一例)、42…注湯位置データベース(データベースの一例)、44…注湯台車制御装置(計測部、算出部、決定部、取得部、出力部の一例)、46…注湯実績データベース、M…造型機、100…制御システム(鋳造設備制御システムの一例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9