(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033136
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】水溶性ポリマーを含む粉末微粒子及び溶融乳化によるその生成
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20230302BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230302BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230302BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230302BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230302BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230302BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230302BHJP
【FI】
B01J13/00 B
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/04
A61K9/14
A61K47/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117251
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】17/411,286
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ナピック
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ロートン
【テーマコード(参考)】
4C076
4G065
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA95
4C076DD21
4C076DD29
4C076DD29Q
4C076EE06A
4C076EE23A
4C076EE24A
4C076GG01
4G065AA01
4G065AA02
4G065AB38Y
4G065BB01
4G065CA11
4G065DA02
4G065EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水溶性ポリマーを含む粉末微粒子を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含む複数の微粒子を含む組成物であって、前記水溶性ポリマーは、前記微粒子の少なくとも外面を画定し、前記複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、前記外面上に配置されている、組成物を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含む複数の微粒子を含む組成物であって、前記水溶性ポリマーは、前記微粒子の少なくとも外面を画定し、前記複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、前記外面上に配置されている、組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はそれらの任意の組み合わせを含むか、又はそれらから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記シリカナノ粒子が、約2nm~約150nmの範囲のD50を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記複数のナノ粒子が、疎水性官能化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複数の微粒子の少なくとも大部分が、実質的に球形の形状であり、D50が、約1μm~約150μmの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記複数の微粒子が、約0.9~約1の真円度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記複数の微粒子が、約0.05重量%~約5重量%のナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリビニルアルコールと疎水性官能化されている複数のシリカナノ粒子とを含む複数の微粒子を含む組成物であって、前記ポリビニルアルコールは、前記微粒子の少なくとも外面を画定し、前記複数のシリカナノ粒子の少なくとも大部分は、前記外面上に配置されており、
前記微粒子は、実質的に球形であり、約1μm~約150μmの範囲の平均サイズ(D50)を有し、約3以下の幾何標準偏差(GSD)を有する、組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマー及びナノ粒子を、前記水溶性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で、キャリア流体と組み合わせることであって、
前記水溶性ポリマー及び前記キャリア流体は、前記加熱温度で実質的に混ざらない、組み合わせることと、
前記ナノ粒子の存在下で、前記加熱温度で前記キャリア流体中の液化液滴として前記水溶性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、
液化液滴が形成された後、前記キャリア流体を、少なくとも固化状態の微粒子が形成される温度まで冷却することであって、前記微粒子は、前記水溶性ポリマー及び複数の前記ナノ粒子を含み、前記水溶性ポリマーは、前記微粒子の少なくとも外面を画定し、前記複数の前記ナノ粒子の少なくとも大部分は、前記外面上に配置されている、冷却することと、
前記微粒子を前記キャリア流体から分離することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はそれらの任意の組み合わせを含むか、又はそれらから本質的になる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記シリカナノ粒子が、約2nm~約150nmの範囲のD50を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のナノ粒子が、疎水性官能化されている、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の微粒子の少なくとも大部分が、実質的に球形の形状であり、D50が、約1μm~約150μmの範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の微粒子が、約0.05重量%~約5重量%のナノ粒子を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水溶性ポリマーを含む粉末微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
天然及び合成ポリマーを含む水溶性ポリマーは、水中で溶解、分散、又は膨潤する物質であり、ゲル化、増粘、又は乳化/安定化によって水性系の物理的特性を改変し得る。水溶性ポリマーは、例えば、食品、医薬品(薬物送達ビヒクルとしてを含む)、生物医学薬剤、塗料、織物、紙、建設材料、接着剤、コーティング、及び水質処理などの製品及び用途における添加剤として、広範囲の工業用途を有する。例えば、ポリビニルアルコールは、その迅速な溶解及びその中で様々な物質を分散又は可溶化する能力に起因して、薬物送達のために頻繁に使用されるポリマーである。
【0003】
水溶性ポリマーを微粒子形態で利用することが時には望ましい。しかしながら、その親水性及び高表面積により、水溶性ポリマー微粒子を取り扱うことは困難であり得る。例えば、水溶性ポリマー微粒子は、凝集し得、かつ/又は吸湿性であり得る。更に、製品中又は用途において展開されると、水溶性ポリマー微粒子は、所望されるよりも急速に溶解し得る。これらの問題は、様々な製品及び用途における水溶性ポリマー微粒子の使用を複雑にし得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、概して、水溶性ポリマーを含む粉末微粒子、より具体的には、水溶性ポリマーと、微粒子溶解速度の調整を可能にする表面添加剤とを含む粉末微粒子に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含む複数の微粒子を含む粉末組成物であって、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置されている、粉末粒子組成物を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、ポリビニルアルコールを含む粉末微粒子組成物を提供する。粉末微粒子組成物は、ポリビニルアルコールと、疎水性官能化されている複数のシリカナノ粒子とを含む、複数の微粒子を含み、ポリビニルアルコールは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のシリカナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置されており、微粒子は、実質的に球形であり、約1μm~約150μmの範囲の平均サイズ(D50)を有し、約3以下の幾何標準偏差(geometric standard deviation、GSD)を有する。
【0007】
更に他の実施形態では、粉末微粒子組成物を作製するための方法は、水溶性ポリマー及びナノ粒子を、水溶性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で、キャリア流体と組み合わせることであって、水溶性ポリマー及びキャリア流体が、加熱温度で実質的に混ざらない、組み合わせることと、ナノ粒子の存在下で、加熱温度でキャリア流体中の液化液滴として水溶性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、キャリア流体を、少なくとも固化状態の微粒子が形成される温度まで冷却することであって、微粒子は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含み、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置されている、冷却することと、微粒子をキャリア流体から分離することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題は、形態及び機能において、当業者が想到し、かつ本開示の利益を有するような、相当な改変、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【
図1】本開示による粉末微粒子を生成するための非限定的な例の方法のフロー図である。
【
図2】実施例1で得られた粉末微粒子の粒子サイズの例示的なヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、水溶性ポリマーを含む粉末微粒子、より具体的には、水溶性ポリマーと、微粒子溶解速度の調整を可能にする表面添加剤とを含む粉末微粒子に関する。
【0010】
有利には、本開示は、特に粉末微粒子形態の従来の水溶性ポリマーよりもはるかに容易に取り扱われる水溶性ポリマーを含む粉末微粒子を提供する。粉末微粒子は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含む複数の微粒子を含み、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置される。ナノ粒子の表面コーティングは、取り扱いの問題を軽減し、かつそのような粉末微粒子の溶解速度を遅延させ得る。更に、ナノ粒子の粉末微粒子上の装填量を調整することによって、溶解速度は、ある範囲の値にわたって適合され得る。
【0011】
水溶性ポリマーの適合された溶解特性を容易にするナノ粒子は、本明細書で更に詳細に説明されるように、溶融乳化を通して粉末微粒子の表面上に容易に組み込まれ得る。ナノ粒子の粉末微粒子上の装填量は、溶融乳化中に容易に調整され得、ナノ粒子の装填量は、得られる粉末微粒子のサイズ分布に更に影響を及ぼし得る。したがって、溶融乳化は、ある範囲の粒子サイズ及び溶解速度にわたって水溶性ポリマーの粉末微粒子をもたらし得る。特定の例では、溶融乳化媒体中の疎水性シリカなどの疎水性表面添加剤の適合された組み込みによって、水溶性粒子の水中の溶解速度の制御が容易になり得、酸性環境下での粉末微粒子の安定性が改善され得る。粉末粒子の表面の被覆率が高いほど、水溶性ポリマーの溶解速度が低下し、粉末微粒子の安定性が増加し得る。
【0012】
更に有利には、溶融乳化によって形成された粉末微粒子は、優れた形状規則性(実質的に球形)及び狭い粒子サイズ分布を有し得る。更に、本開示の粉末微粒子は、容易にふるい分けされ、良好な粉末流動特徴を示し得る。その形状規則性のため、本明細書に開示される粉末微粒子は、医薬及び生物医学産業などの厳密な粒子サイズ制御が望ましい様々な用途での使用に有利であり得る。
【0013】
これらの特性を有する本開示の粉末微粒子は、改変された溶融乳化プロセスによって生成され得る。従来の溶融乳化プロセスとは異なり、冷却時に溶融乳化媒体から粉末微粒子が固化するとき、粉末微粒子上にナノ粒子の均一なコーティングが生じるように、十分な量のナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子が、水溶性ポリマーとともに溶融乳化媒体(キャリア流体)に組み入れられ得る。シリカナノ粒子、特に疎水性官能化されたシリカナノ粒子は、本明細書の開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子の中の1つである。ナノ粒子は、粉末微粒子上にコーティングを形成して、粉末流動特性を改善し、かつ/又は所望の方式で粒子サイズ分布を変更するように、溶融乳化中に乳化安定剤として機能し得る。有利には、ナノ粒子コーティングは、固体として良好な粉末流特徴をもたらし、狭い粒子サイズ分布を提供し、かつ制御された溶解性能をもたらし得る。
【0014】
本開示の更なる利点は、ナノ粒子を別のブレンドプロセスで粉末微粒子と乾式ブレンドする必要がないため、2つの別個の微粒子処理工程、すなわち、1)微粒子形成、及び2)乾式ブレンドによる微粒子変性、を画定する必要がないことである。対照的に、従来の溶融乳化プロセスは、シリカを流動助剤として生成後の微粒子とブレンドし得る。別々のブレンド操作が非効率なプロセスであるだけでなく、流動助剤の粉末微粒子への均一性の乏しい被覆及び非堅牢な付着が生じ得る。本開示に従って溶融乳化媒体中にナノ粒子を含めることは、これらの問題に対処し、微粒子サイズ及び溶解速度の制御などの関連する利点を提供し得る。乾式ブレンドプロセスは、微粒子の表面上での堅牢なナノ粒子コーティングの組み込みをもたらさないため、溶解中の性能差、凝集、及びサイズ多分散性などの、異なる微粒子特徴が生じ得る。
【0015】
本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の段落によって改変される場合を除き、明白かつ通常の意味を有する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「ナノ粒子」という用語は、約1nm~約500nmの範囲の粒子サイズを有する微粒子材料を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、「酸化物」という用語は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的では、ケイ素は、金属であるとみなされる。
【0018】
本明細書で使用するとき、「酸化物ナノ粒子」という用語は、約1nm~約500nmの範囲の粒子サイズを有し、かつ金属酸化物又は非金属酸化物を含む、微粒子材料を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、乳化安定剤と表面との間の「会合した」、「会合」という用語、及びその文法的な変形は、表面への乳化安定剤の化学結合及び/又は物理的付着を指す。理論に制限されるものではないが、ポリマーと乳化安定剤との間の本明細書に記載の会合は、主に、水素結合及び/又は他の機構による物理的付着であると考えられる。しかしながら、化学結合がある程度発生している可能性がある。
【0020】
本明細書で使用するとき、ナノ粒子、及びポリマー粒子の表面に対する「埋め込まれた」という用語は、ナノ粒子がポリマー粒子の表面上に単純に堆積された場合に生じるよりも大きい程度でポリマーがナノ粒子と接触しているように、ナノ粒子が少なくとも部分的に表面内に延在することを指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、「D10」という用語は、試料の10%(別途指定のない限り体積基準)が、当該直径値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。本明細書で使用するとき、「D50」という用語は、試料の50%(別途指定のない限り体積基準)が、当該直径値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。D50はまた、「平均粒子サイズ」と称され得る。本明細書で使用するとき、「D90」という用語は、試料の90%(別途指定のない限り体積基準)が、当該直径値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、「直径スパン」、「サイズスパン」、及び「スパン」という用語は、粒子サイズ分布の広さを指し、関係(D90-D10)/D50(この場合も、別途指定のない限り、各D値は体積に基づく)によって計算され得る。
【0023】
本明細書で使用するとき、「剪断力」という用語は、流体中で機械的撹拌を誘導する撹拌又は同様のプロセスを指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「アスペクト比」という用語は、長さを幅で除したものを指し、長さは、幅よりも大きい。
【0025】
図1は、本開示による粉末微粒子を生成するための非限定的な例の方法100のフロー図である。示されるように、水溶性ポリマー102、キャリア流体104、及び乳化安定剤106を組み合わせて108、混合物110が生成される。水溶性ポリマー102、キャリア流体104、及び乳化安定剤106は、個々に、又は任意の順序の成分のブレンドで組み合わせられ108、組み合わせられる108プロセス中に混合及び/又は加熱を含み得る。いくつかの例では、キャリア流体104は、水溶性ポリマー102及び乳化安定剤106をそれと組み合わせる前に、水溶性ポリマー102の融点又は軟化温度を超えて加熱され得る。乳化安定剤106は、複数の酸化物ナノ粒子などの複数のナノ粒子を含み得る。乳化安定剤106中には、1つ以上の種類のナノ粒子が、任意の組み合わせ及び比率で存在し得る。
【0026】
水溶性ポリマー102の融点又は軟化温度を超えて加熱することは、溶融乳化物中の成分のいずれかの分解温度又は沸点を下回る任意の温度においてであり得る。非限定的な例では、水溶性ポリマー102の融点又は軟化温度を約1℃~約50℃、又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃超える温度で加熱することが行われ得る。本明細書の開示では、融点は、10℃/分の昇温速度及び冷却速度でASTM E794-06(2018)によって判定され得る。ポリマーの軟化温度又は軟化点は、別途指定のない限り、ASTM D6090-17によって判定され得る。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムの試料を使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することによって測定することができる。本開示における融点又は軟化温度は、約50℃~約400℃の範囲であり得る。
【0027】
水溶性ポリマー102は、約-50℃~約400℃、又は約-50℃~約0℃、又は約-25℃~約50℃、又は約0℃~約150℃、又は約100℃~約250℃、又は約150℃~約300℃、又は約200℃~約400℃のガラス転移温度(10℃/分の昇温速度及び冷却速度によるASTM E1356-08(2014))を有し得る。例えば、水溶性ポリマー102は、約75℃~約85℃のガラス転移温度(10℃/分の昇温速度及び冷却速度によるASTM E1356-08(2014))を有し得る。
【0028】
次いで、混合物110は、水溶性ポリマー102の液化液滴を、水溶性ポリマー102の融点又は軟化温度を超える温度で生成するのに十分な剪断力を適用することによって処理され112、それにより、溶融乳化物114が形成される。理論に制限されるものではないが、すべての他の要因が同じであれば、剪断力を増加させることによって、キャリア流体104中の液化液滴のサイズが減少し得ると考えられる。ある点では、剪断力の増加及びひいては液滴サイズの減少には利益の減少が存在し得、並びに/又は、それから生成される微粒子の質を低下させる液滴内容物への崩壊が、より高い剪断力速度において生じ得ることを理解されたい。界面活性剤の任意選択的な添加は、他の液化液滴との合体を減らすことによって、液化液滴の安定化を助け、それによって、固化状態の微粒子が形成されると、狭い粒子サイズ分布の維持を助け得る。
【0029】
溶融乳化物114を生成するために使用される混合装置の例としては、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機など)、撹拌反応器、ブレンダ、インラインホモジナイザシステムを有する反応器など、及びそれから派生した装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
非限定的な例では、液化液滴は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。粒子サイズ測定は、光学画像の分析によって、又は粒子サイズ測定のための光散乱技術を使用するMalvern MASTERSIZER 3000 AERO S計器の内蔵ソフトウェアを使用することによって行われ得る。
【0031】
光散乱技術については、Malvern Analytical Ltd.から入手した商品名Quality Audit Standards QAS4002(商標)で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照試料を使用し得る。試料は、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して空気中に分散された乾燥粉末として分析され得る。粒子サイズは、サイズの関数としての体積密度のプロットから計器ソフトウェアを使用して導出され得る。
【0032】
次いで、溶融乳化物114を冷却して116、液化液滴を、本明細書では「粉末微粒子」とも称される固化状態の粒子に固化する。冷却速度は、約100℃/秒~約10℃/時間又は約10℃/秒~約10℃/時間の範囲であり得、これらの間の任意の冷却速度を含む。剪断力は、冷却中に中断され得るか、又は冷却中に同じ速度若しくは異なる速度で維持され得る。次いで、冷却された混合物118を処理して120、粉末微粒子122を他の成分124(例えば、キャリア流体104、過剰な乳化安定剤106など)から単離し得る。この段階で洗浄、濾過、及び/又は同様のものを行って、粉末微粒子122を更に精製し得る。粉末微粒子122は、水溶性ポリマー102と、粉末微粒子122の外面をコーティングする乳化安定剤106の少なくとも一部分とを含む。ナノ粒子及び任意選択的に界面活性剤は、粉末微粒子122の外面と会合(外面上に配置)され得る。乳化安定剤106、又はその一部分は、粉末微粒子122上に均一なコーティングとして堆積され得る。温度(冷却速度を含む)、水溶性ポリマー102の種類、並びに乳化安定剤106の種類及びサイズなどの非限定的な要因に依存し得るいくつかの事例では、乳化安定剤106のナノ粒子は、粉末微粒子122に会合する過程で、粉末微粒子122の外面内に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。埋め込みが起こらない場合であっても、乳化安定剤106内のナノ粒子は、粉末微粒子122と堅牢に会合したままで、その更なる使用を容易にし得る。対照的に、既に形成された粉末微粒子(例えば、低温粉砕又は沈殿プロセスによって形成される)をシリカナノ粒子のような流動助剤と乾燥ブレンドすることによっては、流動助剤の堅牢で均一なコーティングは粉末微粒子上にもたらされない。
【0033】
上記では、水溶性ポリマー102及びキャリア流体104は、これらの成分が、様々な処理温度(例えば、室温から、液化液滴が形成されて2つ以上の相として維持される温度まで)において混ざらない又は実質的に混ざらない(<5重量%の可溶性)、特に<1重量%の可溶性であるように選択される。
【0034】
粉末微粒子122を他の成分124から分離した後、粉末微粒子122の更なる処理126が行われ得る。非限定的な例では、更なる処理126は、例えば、粉末微粒子122をふるい分けすること、及び/又は粉末微粒子122を他の物質とブレンドして、処理された粉末微粒子128を形成することを含み得る。処理された粉末微粒子128は、所望の用途で使用するために配合され得る。
【0035】
したがって、本開示の溶融乳化プロセスは、水溶性ポリマー及びナノ粒子を、水溶性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で、キャリア流体と組み合わせることであって、水溶性ポリマー及びキャリア流体は、加熱温度で実質的に混ざらない、組み合わせることと、ナノ粒子の存在下で、加熱温度でキャリア流体中の液化液滴として水溶性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、キャリア流体を、少なくとも固化状態の微粒子が形成される温度まで冷却することであって、微粒子は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含み、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置されている、冷却することと、微粒子をキャリア流体から分離することと、を含み得る。そのようなプロセスでは、水溶性ポリマー及びキャリア流体は、加熱温度で実質的に混ざらない。特定の例では、微粒子は、約1μm~約150μmの範囲、例えば、約1.8以下のサイズスパン、例えば、約0.5~約1.8の範囲のサイズスパンの、D50を有し得る。更に、微粒子は、約3以下の幾何標準偏差(GSD)、例えば、約1~約2.5、又は約1.2~約2.2、又は約1.2~約2.2、又は約1.2~約2.2のGSDを有し得る。
【0036】
微粒子は、約0.1g/cm3~約1.0g/cm3、又は約0.2g/cm3~約0.8g/cm3、又は約0.4g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.8g/cm3のかさ密度を有し得る。
【0037】
液化液滴を形成するのに十分な剪断力は、本開示の特定の例において、キャリア流体を撹拌することによって適用され得る。非限定的な例では、撹拌速度は、約50回転/分(rotations per minute、RPM)~約1500RPM、又は約250RPM~約1000RPM、又は約225RPM~約500RPMの範囲であり得、例えば、100RPMであり得る。水溶性ポリマーを溶融している間の撹拌速度は、液化液滴が形成された後に使用される撹拌速度と同じであるか又は異なり得る。液化液滴は、約30秒~約18時間以上、又は約1分~約180分、又は約1分~約60分、又は約5分~約6分、又は約5分~約30分、又は約10分~約30分、又は約30分~約60分の撹拌時間にわたって撹拌され得る。
【0038】
本明細書の開示での使用に好適な水溶性ポリマー(コポリマーを含む)は、特に限定されるとは考えられない。好適な水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide)、PLGA)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。本明細書の開示での使用に好適なポリビニルアルコールの例としては、例えば、POVAL(商標)3-88、POVAL(商標)5-88、POVAL(商標)9-88、及びPOVAL(商標)7-92が挙げられ得る。水溶性ポリマーのいくつかの例は、医薬及び生物医学産業での使用に好適であり得る。他の用途により好適な他の水溶性ポリマーを、必要に応じて選択してもよい。
【0039】
キャリア流体中の水溶性ポリマーの装填量(濃度)は、広範囲にわたって変動し得る。キャリア流体中の装填量は、液化液滴の固化後に得られる微粒子の特性の決定に少なくともいくらかの役割を果たし得る。非限定的な例では、キャリア流体中の水溶性ポリマーの装填量は、キャリア流体の重量に対して、約1重量%~約99重量%の範囲であり得る。より特定の例では、水溶性ポリマーの装填量は、約5重量%~約75重量%、又は約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%、又は約50重量%~約60重量%の範囲であり得る。水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー及びキャリア流体の組み合わせ量に対して、約5重量%~約60重量%、又は約5重量%~約25重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約20重量%~約45重量%、又は約25重量%~約50重量%、又は約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る(固体装填量)。
【0040】
様々なナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子が、本開示の粉末微粒子の形成での使用に好適であり得る。中でも、本明細書の開示での使用に好適であり得る酸化物ナノ粒子としては、例えば、シリカナノ粒子、チタニアナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、酸化スズナノ粒子、酸化ホウ素ナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化タリウムナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノホウケイ酸塩などの混合酸化物もまた、「酸化物」という用語によって包含される。酸化物ナノ粒子は、親水性又は疎水性であり得、これは、ナノ粒子に固有であり得るか、又はナノ粒子の表面処理に起因し得る。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリルなどのような、疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子は、親水性表面ヒドロキシル基を反応させることによって形成され得る。疎水性官能化された酸化物ナノ粒子は、粉末微粒子中の水溶性ポリマーの溶解速度を低下させる目的で、本開示の方法及び組成物において望ましい場合がある。非官能化酸化物ナノ粒子もまた同様に、使用に好適であり得る。
【0041】
シリカナノ粒子、特にその上に疎水性官能化を有するヒュームドシリカナノ粒子は、様々な官能化シリカが利用可能であり、疎水性官能化の種類及び粒子サイズが可変であるため、本明細書の開示での使用に特に好適であり得る。シラザン及びシランは、本開示で使用され得る容易な疎水性官能化である。したがって、本明細書の開示で使用される複数の酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子、特に疎水性官能化されているシリカナノ粒子を含み得るか、又はそれから本質的になり得る。他の種類の酸化物ナノ粒子若しくは非酸化物ナノ粒子が、シリカナノ粒子単独で使用するときには達成されない特性を、微粒子又はそれから形成された物体に伝達し得るときには、シリカナノ粒子は、別の種類の酸化物ナノ粒子又は非酸化物ナノ粒子と組み合わせて使用してもよい。
【0042】
カーボンブラックは、本明細書に開示される組成物及び方法において乳化安定剤として存在し得る別の種類のナノ粒子である。様々な等級のカーボンブラックが当業者によく知られており、そのうちのいずれかが本明細書において使用され得る。
【0043】
ポリマーナノ粒子は、本明細書の開示において乳化安定剤として存在し得る別の種類のナノ粒子である。好適なポリマーナノ粒子は、本明細書の開示による溶融乳化によって処理されたときに溶融しないように、熱硬化性である及び/又は架橋されている1つ以上のポリマーを含み得る。架橋フッ素化ポリマーは、この点に関して好適であり得る。高い融点又は分解点を有する高分子量熱可塑性ポリマーも同様に、好適なポリマーナノ粒子乳化安定剤を含み得る。
【0044】
本明細書の開示による粉末微粒子を形成するとき、シリカナノ粒子の装填量(濃度)及び粒子サイズは、広範囲にわたって変動し得る。シリカナノ粒子又は他のナノ粒子の装填量及び粒子サイズは、液化液滴の固化後に得られる微粒子の特性の決定に少なくともいくらかの役割を果たし得る。
【0045】
非限定的な例では、キャリア流体中のシリカナノ粒子の装填量は、水溶性ポリマーの重量に対して、約0.01重量%~約20重量%、又は約0.05重量%~約15重量%、又は約0.05重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%の範囲であり得る。より特定の例では、シリカナノ粒子の装填量は、約0.01重量%~約5重量%、又は約0.05重量%~約2重量%、又は約0.1重量%~約1.5重量%、又は約0.2重量%~約1.0重量%、又は約0.25重量%~約1重量%、又は約0.25重量%~約0.5重量%、又は約0.05重量%~約1重量%の範囲であり得る。他の種類のナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子は、同様の装填量範囲で使用され得る。粉末微粒子内のナノ粒子の装填量も、これらの範囲内にあり得る。
【0046】
非限定的な例では、シリカナノ粒子の粒子サイズは、約1nm~約150nm、又は約1nm~約100nmの範囲であり得る。いくつかの事例では、シリカナノ粒子の粒子サイズは、最大500nmであり得る。より特定の例では、シリカナノ粒子の粒子サイズは、約2nm~約150nm、約5nm~約75nm、又は約5nm~約50nm、又は約5nm~約10nm、又は約10nm~約20nm、又は約20nm~約30nm、又は約30nm~約40nm、又は約40nm~約50nm、又は約50nm~約60nmの範囲であり得る。他の種類のナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子は、同様のサイズ範囲で使用され得る。
【0047】
ナノ粒子、特にシリカナノ粒子及び他の酸化物ナノ粒子は、約10m2/g~約500m2/g、又は約10m2/g~約150m2/g、又は約25m2/g~約100m2/g、又は約100m2/g~約250m2/g、又は約250m2/g~約500m2/gのBET表面積を有し得る。
【0048】
本明細書の開示での使用に好適な特定のシリカナノ粒子は、疎水性官能化され得る。そのような疎水性官能化は、シリカナノ粒子の水との相溶性を非官能化シリカナノ粒子よりもより低くし得る。加えて、疎水性官能化は、高度に疎水性であり得るキャリア流体中のシリカナノ粒子の分散を改善し得る。疎水性官能化は、シリカナノ粒子の表面に非共有結合又は共有結合され得る。共有結合は、例えば、シリカナノ粒子の表面上の表面ヒドロキシル基の官能化によって行われ得る。非限定的な例では、シリカナノ粒子は、ヘキサメチルジシラザンで処理されて、疎水性変性の共有官能化をもたらし得る。市販の疎水性官能化されたシリカナノ粒子としては、例えば、AEROSIL(登録商標)RX-50(Evonik、平均粒子サイズ=40nm)及びAEROSIL(登録商標)R-812S(Evonik、平均粒子サイズ=7nm)が挙げられる。
【0049】
しかしながら、非官能化シリカナノ粒子もまた、本明細書の開示において乳化安定剤として好適に使用され得ることを理解されたい。
【0050】
本明細書の開示に従って粉末微粒子を形成する際、シリカナノ粒子などのナノ粒子の少なくとも一部分は、粉末微粒子の外面上にコーティングとして配置され得る。コーティングは、微粒子の目視観察によって評価されるように、外面上に実質的に均一に配置され得る。コーティングに関して本明細書で使用するとき、「実質的に均一」という用語は、ナノ粒子によって被覆された表面位置、特に外面の全体においての均一なコーティング厚さを指す。粉末微粒子上のナノ粒子を含むコーティング被覆率は、微粒子の表面積の約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%の範囲であり得る。被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像分析によって判定され得る。水溶性ポリマーは、本明細書に開示される粉末微粒子のうちの約90重量%~約99.5重量%を含み得る。
【0051】
本開示の微粒子は、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.05重量%~約4.5重量%、又は約0.1重量%~約4重量%、又は約0.15重量%~約3.5重量%のシリカナノ粒子を含み得る。乳化安定剤としての使用に好適な他の種類のナノ粒子は、同様の装填量で微粒子上に存在し得る。
【0052】
本明細書の開示での使用に好適なキャリア流体には、水溶性ポリマーがキャリア流体と実質的に混ざらないものが含まれ、キャリア流体は、水溶性ポリマーの融点又は軟化温度を超える沸点を有し、キャリア流体は、水溶性ポリマーがその中で溶融又は軟化されると、実質的に球形の液化液滴を形成するのに十分な粘度を有する。好適なキャリア流体としては、例えば、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ペルフッ素化シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルキル末端ポリエチレングリコール(例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(tetraethylene glycol dimethyl ether、TDG)のようなC1~C4末端アルキル基)、パラフィン、流動ワセリン、ミンクオイル、タートルオイル、大豆油、ペルヒドロスクアレン、スイートアーモンドオイル、カロフィルムオイル、パームオイル、パールリームオイル、グレープシードオイル、ゴマ油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、アンズ油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油、穀物胚芽油、ラノリン酸のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪族エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸で変性されたポリシロキサン、脂肪族アルコールで変性されたポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで変性されたポリシロキサンなど、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0053】
好適なキャリア流体は、約0.6g/cm3~約1.5g/cm3の密度を有し得、水溶性ポリマーは、約0.7g/cm3~約1.7g/cm3の密度を有し得、水溶性ポリマーは、キャリア流体の密度と同様、それよりも低い、又はそれよりも高い密度を有する。
【0054】
特に好適なシリコーン油は、ポリシロキサンである。本明細書の開示での使用に好適な例示的なシリコーン油としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサンなど、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0055】
非限定的な例では、キャリア流体及び水溶性ポリマーは、約200℃以上の温度で加熱され得る。好適な加熱温度は、水溶性ポリマーの融点又は軟化温度、及びキャリア流体の沸点に基づいて選択され得る。液化されたポリマー液滴の形成後の冷却速度は、所望により変動し得る。いくつかの事例では、冷却は、加熱が中断された後、自然な(制御されていない)速度で起こる周囲環境への熱放散とともに起こり得る。他の場合では、制御された速度で冷却して(例えば、加熱温度を徐々に低下させること、及び/又はジャケット付き温度制御を使用することによって、冷却速度を増加又は減少させることが採用され得る。
【0056】
PDMSを含む、ポリシロキサンなどのキャリア流体は、25℃で約1,000cSt~約150,000cSt、又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cStの粘度を有し得る。キャリア流体の粘度は、商業的供給元から入手され得るか、又は、所望により、当業者に既知の技術によって測定され得る。
【0057】
キャリア流体から粉末微粒子を分離することは、様々な既知の分離技術のいずれかによって行われ得る。重力沈殿及び濾過、デカンテーション、遠心分離などのいずれかを使用して、粉末微粒子をキャリア流体から分離し得る。粉末微粒子は、分離プロセスの過程においてキャリア流体が可溶性であり、かつ粉末微粒子が不溶性である溶媒で洗浄され得る。加えて、キャリア流体が可溶性であり、かつ粉末微粒子が不溶性である溶媒は、キャリア流体から粉末微粒子を最初に分離する前に、キャリア流体及び粉末微粒子と混合されてもよい。
【0058】
粉末微粒子を洗浄するか、又はキャリア流体と混合するのに好適な溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及び/又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、n-ヘキサン、及び/又はn-オクタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及び/又はシクロオクタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及び/又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及び/又は四塩化炭素)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はn-プロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及び/又はアセトン);エステル(例えば、酢酸エチルなど)、水など、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0059】
粉末微粒子を洗浄した後、加熱、真空乾燥、空気乾燥、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかが実行され得る。
【0060】
有利には、本明細書に記載のシステム及び方法のキャリア流体及び洗浄溶媒は、所望により、再生可能かつ再利用可能である。
【0061】
粉末微粒子を溶媒で洗浄しても、いくつかの事例では、限られた量のキャリア流体が残り得る。非限定的な例では、本開示の粉末微粒子のいずれかは、複数の粉末微粒子に会合したままである最大約5重量%の非ゼロの量のキャリア流体を含み得る。キャリア流体は、粉末微粒子の外面と会合され得、かつ/又は粉末微粒子内の空隙若しくは空洞内に捕捉され得る。存在する空隙の量は、微粒子によって保持されるキャリア流体の量だけでなく、溶解速度に影響を及ぼし得る。それらが生じる場合、最大約35体積%の空隙、又は最大約20体積%の空隙、又は最大約10体積%の空隙、又は最大約5体積%の空隙が、粉末微粒子中に存在し得、空隙は、充填されているか、又は充填されていない。
【0062】
本明細書の開示に従って得られる粉末微粒子の少なくとも大部分は、実質的に球形の形状であり得る。より典型的には、本開示による溶融乳化によって生成される粉末微粒子の約90%以上、又は約95%以上、又は約99%以上は、実質的に球形の形状であり得る。非限定的な例では、本開示の粉末微粒子は、約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~約1.0を含む、約0.9以上の真球度(真円度)を有し得る。真球度(真円度)は、Sysmex FPIA-2100 Flow Particle Image Analyzerを使用して測定され得る。真円度を判定するには、微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内での微粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を計算する(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能な、Sysmex FPIA 3000粒子形状及び粒子サイズ分析器を使用する)。微粒子の真円度は、CEA/Pであり、CEAは、実際の微粒子の面積(A)と等価な面積を有する円の円周である。
【0063】
本開示の粉末微粒子は、約25°~約45°、又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45の安息角を有し得る。安息角は、ASTM D6393-14「Standard Test Method for Bulk Solids」Characterized by Carr Indices」を使用して、Hosokawa Micron Powder Characteristics Tester PT-Rを使用して判定され得る。
【0064】
加えて、本明細書の開示に従って形成された粉末微粒子は、水溶性ポリマーによって画定される外面に少なくとも部分的に埋め込まれている複数のシリカナノ粒子又は他のナノ粒子を有し得る。シリカナノ粒子又は他のナノ粒子が外面に少なくとも部分的に埋め込まれている場合、ナノ粒子構造の一部分は、外面のクレーター内又は窪み内に位置し得、それによって、ナノ粒子を表面から取り除くことがより困難になり得る。実質的な埋め込みが生じない場合であっても、疎水性官能化されたシリカナノ粒子などの適切に官能化されたナノ粒子は、外面上のナノ粒子の保持を促進するために非共有結合的に(例えば、ファンデルワールスタイプの相互作用で)会合し得ることを理解されたい。
【0065】
上記の開示によるキャリア流体から単離された粉末微粒子を更に処理して、意図される用途に好適な粉末微粒子を作製し得る。いくつかの例では、粉末微粒子を、粉末微粒子の平均粒子サイズよりも大きい有効なスクリーニングサイズを有するふるい又は同様の構造に通過させ得る。例えば、粉末微粒子を処理するための例示的なスクリーニングサイズは、約150μmであり得る。ふるい分けに言及する場合、細孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)により説明される。より大きい又はより小さい他のスクリーニングサイズは、様々な用途で使用することになっている微粒子に、より好適であり得る。ふるい分けは、溶融乳化プロセス中に形成され得るより大きな微粒子を除去し得る、及び/又は不十分な流動特徴を有し得る塊状の微粒子を除去し得る。一般に、約10μm~約250μmの範囲の実効スクリーニングサイズを有するふるいが使用され得る。
【0066】
加えて、ふるい又は同様の構造を通過する粉末微粒子は、流動助剤、充填剤、又は意図される用途のための粉末微粒子の特性を適合させることを意図する他の物質などの1つ以上の追加の成分と混合され得る。追加の成分と粉末微粒子との混合は、乾式ブレンド技術によって行われ得る。流動助剤(例えば、カーボンブラック、グラファイト、シリカなど)及び同様の物質の好適な例は、当業者によく知られている。
【0067】
上記を考慮して、本開示は、ナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子を含むコーティングを担持する粉末微粒子を含む組成物を更に提供する。組成物は、水溶性ポリマーと、複数のナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子とを含む複数の微粒子を含み得、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子は、外面上に配置される。特定の実施例では、微粒子は、約1μm~約150μmの範囲のD50を有し得、約3以下、又は約0.5~約3、又は約0.75~約2.75、又は約1~約2.5、又は約1.25~約2.25、又は約1.5~約2の幾何標準偏差(GSD)を有する。
【0068】
本明細書で考察されるように、粉末微粒子の外面上のナノ粒子は、金属ナノ粒子又は非金属ナノ粒子、特にシリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子であり得る。単独で又は他の種類のナノ粒子と組み合わせてのいずれかで、疎水性官能化を担持するシリカナノ粒子は、粉末微粒子の外面と会合した状態になる乳化安定剤として特に望ましい場合がある。
【0069】
本明細書の開示に従って生成され得る粉末微粒子のサイズは、特に限定されると考えられないが、三次元印刷又は微粒子が使用される他の種類の用途などの様々な用途での使用を容易にするために、125μm以下のサイズ、又は100μm以下のサイズの、約150μm以下のサイズであり得る。特に好適な粉末微粒子は、上に言及されるように、約1μmのサイズ~約150μmのサイズの範囲のD50を有し得る。粒子サイズ測定は、Malvern MASTERSIZER 3000 AERO S計器を使用して行われ得る。ナノ粒子のサイズ、種類、及び装填量、剪断力速度、加熱温度、冷却速度、キャリア流体及びその粘度、並びに使用される特定の水溶性ポリマーなどの様々な要因もまた、非限定的な例として、本開示に従って得られる粉末微粒子のサイズ及び/又は粒子サイズ分布に影響を与え得る。これらの要因のうちの1つ以上はまた、粉末微粒子の真球度、及び/又はキャリア流体が非ゼロの量で粉末微粒子内に保持されるか否かを決定し得る。
【0070】
更に追加の非限定的な実施形態では、本明細書に開示される組成物は、所望の用途における粉末微粒子の使用を容易にし得る流動助剤又は追加の成分を更に含み得る。各々の好適な例は、当業者によく知られている。
【0071】
本明細書に開示される粉末微粒子のいずれも、例えば、ポリマー溶解速度を遅延させることによって(例えば、錠剤配合物の溶解度調整剤として)薬物の放出速度を調整することなどを通して、医薬及び生物医学用途に好適な組成物中に配合され得る。本開示の粉末微粒子の他の用途としては、水溶性薬物/治療剤マトリックス、水分散性殺虫剤顆粒、3D印刷用の溶解制御粉末(例えば、粉末床融合用の)、及び塗料配合物の溶解制御微小粒子などが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
A.粉末微粒子組成物。粉末微粒子組成物は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含む複数の微粒子を含み、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置される。
B.ポリビニルアルコールを含む粉末微粒子組成物。粉末微粒子組成物は、ポリビニルアルコールと、疎水性官能化されている複数のシリカナノ粒子とを含む、複数の微粒子を含み、ポリビニルアルコールは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のシリカナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置され、微粒子は、実質的に球形であり、約1μm~約150μmの範囲の平均サイズ(D50)を有し、約3以下の幾何標準偏差(GSD)を有する。
C.粉末微粒子組成物を作製するための方法。この方法は、水溶性ポリマー及びナノ粒子を、水溶性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で、キャリア流体と組み合わせることであって、水溶性ポリマー及びキャリア流体は、加熱温度で実質的に混ざらない、組み合わせることと、ナノ粒子の存在下で、加熱温度でキャリア流体中の液化液滴として水溶性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、キャリア流体を、少なくとも固化状態の微粒子が形成される温度まで冷却することであって、微粒子は、水溶性ポリマー及び複数のナノ粒子を含み、水溶性ポリマーは、微粒子の少なくとも外面を画定し、複数のナノ粒子の少なくとも大部分は、外面上に配置されている、冷却することと、微粒子をキャリア流体から分離することと、を含む。
【0073】
実施形態A、B、及びCは、以下の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで含み得る。
要素1:水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
要素2:水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)を含む。
要素3:複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はそれらの任意の組み合わせを含むか、又はそれらから本質的になる。
要素4:複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む。
要素5:シリカナノ粒子が、約2nm~約150nmの範囲のD50を有する。
要素6:複数のナノ粒子が、疎水性官能化されている。
要素7:複数の微粒子の少なくとも大部分が、実質的に球形の形状であり、D50が、約1μm~約150μmの範囲である。
要素8:複数の微粒子が、約0.9~約1の真円度を有する。
要素9:複数の微粒子が、約0.05重量%~約5重量%のナノ粒子を含む。
【0074】
非限定的な例として、A、B、及びCに適用可能な例示的な組み合わせとしては、1又は2、及び3;1又は2、及び4;1又は2、4及び5;1又は2、及び6;1又は2、及び7;1又は2、及び8;1又は2、4及び9;1又は2、4及び6;1又は2、7及び8;3又は4、及び5;3又は4、及び6;3又は4、及び7;3又は4、及び8;3又は4、及び9;4及び5、並びに6;4及び5、並びに7;4及び5、並びに8;4及び5、並びに9;6及び7;6及び8;6及び9;;7及び8;7及び9;並びに8及び9が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
本開示の実施形態のより良好な理解を容易にするために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例を付与する。以下の実施例は、決して、本開示の範囲を制限するか、又は定義するように読解されるべきではない。
【実施例0076】
以下の実施例では、平均粒子サイズ(D50)、D10、及びD90の測定を、Malvern MASTERSIZER 3000粒子サイズ分析器を使用して行った。
【0077】
水溶性ポリマーを、高剪断ロータを備えたHAAKE(商標)RHEOMIXバッチミキサー内で溶融混合することによって調合した。
【0078】
POVAL(商標)5-88(Kurarayから入手可能な、部分的に加水分解され(約88%加水分解)、220℃の融点の半結晶性ポリビニルアルコール(PVA)ポリマー)を使用して、以下の本開示において粉末微粒子を形成した。AEROSIL(登録商標)RX-50(Evonikから入手可能な、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDS)で処理した疎水性特殊ヒュームドシリカ)を、乳化安定剤として使用した。
【0079】
(1)いずれのAEROSIL(登録商標)RX-50処理も含まないPVAを含むバージン粒子(比較実施例1)、(2)0.5%w/wのAEROSIL(登録商標)RX-50を含むPVAを含む粒子(実施例1)、及び(3)1.0%w/wのAEROSIL(登録商標)RX-50を含むPVAを含む微粒子(実施例2)の3種類の粉末微粒子を調製した。
【0080】
比較実施例1.PVA粉末微粒子.本実施例では、バージンPOVAL(商標)5-88を使用した。60,000cStの動粘度を有する約35.0gのPDMSをHAAKE(商標)RHEOMIXバッチミキサーに添加し、240℃で5分間100RPMで混合した。15gのPVAを2~3分かけて押出機にゆっくりと投与した。PVAを完全に添加した後、ミキサーを密閉し、10分間混合して、分散された微小粒子を形成した。次いで、得られたスラリーをドライアイス上に放出し、ヘプタンで洗浄した。粉末微粒子は、極めて粒状であり、150μmのふるいを通してふるい分けすることができなかった。
【0081】
実施例1.0.5%w/wのAEROSIL(登録商標)RX-50でコーティングされたPVA粉末微粒子.PVAを添加する前に0.07gのAEROSIL(登録商標)RX-50シリカナノ粒子をPDMSと混合したことを除いて比較実施例1と同じ方式で、シリカコーティングされた粉末微粒子を調製した。得られた粉末微粒子は、ふるい分け可能であり、狭い粒子サイズ分布を示した。
図2は、実施例1で得られた粉末微粒子の粒子サイズの例示的なヒストグラムを示す。
【0082】
実施例2.1.0%w/wのAEROSIL(登録商標)RX-50でコーティングされたPVA粉末微粒子.実施例1を、より高装填量のAEROSIL(登録商標)RX-50(0.15g)で繰り返した。
【0083】
溶解特性.3つの前述の粉末微粒子試料の溶解特性を、0.125gの粉末微粒子を水と組み合わせ、溶解速度を経時的に観察することによって判定した。5分で、コーティングされていない粉末微粒子(比較実施例1)は部分的に溶解したが、コーティングされた粉末微粒子(実施例1及び2)については溶解しなかったことが明らかであった。3時間で、3つの試料すべてが完全に溶解したが、コーティングされていない粉末微粒子は、コーティングされた微粒子よりも曇った溶液をもたらした。
【0084】
本明細書に記載のすべての文書は、そのような実施が許可されるすべての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことができる。したがって、本開示はそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載の組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の成分、又は組成物を含まなくてもよい。いずれの方法も、本明細書に列挙又は開示されていない任意の工程を欠き得る。同様に、「備える、含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると考えられる。方法、組成物、要素、又は要素の群が「備える、含む(comprising)」という移行句に先行されている場合はいつでも、本発明者らがまた、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」という移行句を伴う同じ組成物又は要素の群も企図すること、及びその逆もまた同様であることは理解される。
【0085】
別途指示のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての事例において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0086】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値のすべての範囲は、より広範な値の範囲内に包含されるすべての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、特許請求の範囲で使用するとき、「a」又は「an」という不定冠詞は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は1つ超を意味するように定義される。
【0087】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装形態のすべての特徴が本出願に説明又は図示されているわけではない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0088】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の特定の実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである、異なるが同等の様式で本開示が改変及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された特定の例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は改変され得、すべてのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択的な要素の不在下で実施され得る。