(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033137
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び金属支持構造を形成するための動作方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/50 20210101AFI20230302BHJP
B22F 10/22 20210101ALI20230302BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20230302BHJP
B22F 10/47 20210101ALI20230302BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20230302BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230302BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230302BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230302BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/22
B22F12/41
B22F10/47
B22F12/70
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118699
(22)【出願日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】17/412,399
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ.・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】チューホン、リウ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
4K018EA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元プリンタによって物体を形成するために使用される金属滴吐出装置および金属滴吐出装置を動作させる方法を提供する。
【解決手段】三次元(3D)金属物体製造装置は、硬化金属滴を溶融し、酸化層を形成するための可動指向性エネルギー源を装備する。金属支持構造を酸化層上に形成することができるか、物体特徴を酸化層上に形成することができるか、又は金属支持構造及び物体特徴の両方を金属支持構造の両側に位置する酸化層上に形成することができる。酸化層は、金属支持構造を金属支持構造によって支持された物体特徴に弱く取り付けるため、物体の製造が完了した後に支持構造を容易に除去することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属滴吐出装置であって、
容器を有する吐出装置ヘッドであって、前記容器内に、ある体積の溶融金属を保持するように構成されている収容部を有する、吐出装置ヘッドと、
前記吐出装置ヘッドから吐出された溶融金属滴を受容するように位置決めされた平面部材と、
エネルギービームを前記平面部材に向かって方向付けるように構成された指向性エネルギー源と、
前記指向性エネルギー源及び前記平面部材に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータと、
前記少なくとも1つのアクチュエータ及び前記指向性エネルギー源に動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラが、硬化金属上に第1の酸化層を形成するために、前記指向性エネルギー源を動作させて前記エネルギービームを前記硬化金属上に方向付けるように構成されている、コントローラと、を備える、金属滴吐出装置。
【請求項2】
前記指向性エネルギー源が、レーザーである、請求項1に記載の金属滴吐出装置。
【請求項3】
前記指向性エネルギー源が、原子又は亜原子粒子のビームの発生器である、請求項1に記載の金属滴吐出装置。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記吐出装置ヘッドを動作させて、前記第1の酸化層上に前記溶融金属滴の1つ以上の層を形成し、前記第1の酸化層上に金属支持構造を形成するように更に構成されている、請求項2に記載の金属滴吐出装置。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記金属支持構造の最終層を形成するために、前記吐出装置ヘッドを動作させて溶融金属滴を前記硬化金属上に吐出することと、
前記金属支持構造の前記最終層上に第2の酸化層を形成するために、前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させて前記金属支持構造の前記最終層上でレーザービームを移動させながら、前記レーザーを動作させることと、を行うように更に構成されている、請求項4に記載の金属滴吐出装置。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記第2の酸化層上に物体特徴を形成するために、前記吐出装置ヘッドを動作させて前記第2の酸化層上に前記溶融金属滴の1つ以上の層を形成すること、を行うように更に構成されている、請求項5に記載の金属滴吐出装置。
【請求項7】
空気流発生器を更に備え、
前記コントローラが、前記空気流発生器に動作可能に接続され、前記コントローラが、
前記空気流発生器を動作させて、前記レーザービームで照明される前記硬化金属の領域に向かって空気を方向付けること、を行うように更に構成されている、請求項6に記載の金属滴吐出装置。
【請求項8】
前記空気流発生器が、電気ファン又は加圧空気源である、請求項7に記載の金属滴吐出装置。
【請求項9】
空気流発生器を更に備え、
前記コントローラが、前記空気流発生器に動作可能に接続され、前記コントローラが、
前記空気流発生器を動作させて、前記原子又は亜原子粒子のビームで照明される前記硬化金属の領域に向かって空気を方向付けること、を行うように更に構成されている、請求項3に記載の金属滴吐出装置。
【請求項10】
前記空気流発生器が、電気ファン又は加圧空気源である、請求項9に記載の金属滴吐出装置。
【請求項11】
金属滴吐出装置を動作させる方法であって、
コントローラを用いて少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、平面部材上に部分的に形成された硬化金属物体の上で指向性エネルギー源を移動させることと、
前記コントローラを用いて前記指向性エネルギー源を動作させて、前記硬化金属物体の表面上に第1の酸化層を形成することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記指向性エネルギー源が、レーザーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記指向性エネルギー源が、原子又は亜原子粒子のビームの発生器である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の酸化層上に金属支持構造を形成するために、前記コントローラを用いて吐出装置ヘッドを動作させて前記第1の酸化層上に溶融金属滴の1つ以上の層を形成すること、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記コントローラを用いて前記吐出装置ヘッドを動作させて溶融金属滴を吐出し、前記金属支持構造の最終層を形成することと、
前記金属支持構造上に第2の酸化層を形成するために、前記コントローラを用いて前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、レーザービームを前記金属支持構造の前記最終層上で移動させることと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の酸化層上に物体特徴を形成するために、前記吐出装置ヘッドを動作させて前記第2の酸化層上に溶融金属滴の1つ以上の層を形成すること、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コントローラを用いて空気流発生器を動作させて、前記レーザービームで照明される前記硬化金属物体の前記表面の領域に向かって空気を方向付けること、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記空気流発生器の前記動作が、
電気ファン又は加圧空気源を動作させて、前記レーザービームで照明される前記硬化金属物体の前記表面の領域に向かって空気を方向付けること、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コントローラを用いて空気流発生器を動作させて、原子又は亜原子粒子のビームで照明される前記硬化金属物体の前記表面の領域に向かって空気を方向付けること、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記空気流発生器の前記動作が、
電気ファン又は加圧空気源を動作させて、前記原子又は亜原子粒子のビームで照明される前記硬化金属物体の前記表面の領域に向かって空気を方向付けること、を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタを対象とし、より詳細には、かかるプリンタによって物体を形成するために使用される吐出金属を用いた金属支持構造の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のうちのいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどのUV硬化性材料を吐出する吐出装置を使用するが、他の技術は、プラスティック材料を溶融して熱可塑性材料を生成し、これを押し出して熱可塑性材料の連続層を形成する。これらの技術は、様々な形状及び特徴を有する三次元物体を構築するために使用される。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
近年、3D金属物体を形成するために、1つ以上の吐出装置から溶融金属の液滴を吐出するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール、マイクロサイズのペレット、又は金属粉末などの固体金属源を有し、固体金属は、プリンタ内の容器の加熱された収容部に供給され、そこで固体金属が溶融され、溶融された金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過して電磁場を生成し、電磁場により、収容部のノズルにおける溶融金属の液滴が収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進される。プラットフォームは、コントローラがアクチュエータを動作させることによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内で移動するように構成されており、ノズルから吐出された溶融金属滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成する。コントローラは、吐出装置と、形成されている金属物体の既存の層との間に一定の距離を維持するように、別のアクチュエータを動作させて吐出装置又はプラットフォームの位置を変化させる。このタイプの金属滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
エラストマー材料を使用する3D物体印刷システムでは、追加の吐出装置を使用して異なる材料の液滴を吐出し、物体の形成中に物体から離れる方向に延在するオーバーハング及び物体特徴のための支持体を形成することによって、仮の支持構造が形成される。これらの支持構造は、物体を形成する材料とは異なる材料から作製されるため、物体と十分に接着又は結合しないように設計することができる。その結果、支持構造は、それらが物体製造中に支持する物体特徴から容易に分離されて、物体の形成が完了した後、物体から取り外すことができる。そのようなものは、金属滴吐出システムについては当てはまらない。プリンタを用いて物体を形成するために使用される溶融金属が支持構造を形成するために使用される場合、支持構造は、凝固する間に支持を必要とする物体の特徴と強く結合する。その結果、物体から支持体を取り外すために、相当な量の機械加工及び研磨が必要である。異なる金属を使用する別の金属滴吐出プリンタを調和して働かせることは、異なる金属の熱的条件が2つのプリンタの構築環境に影響を及ぼし得るため、困難である。例えば、より高い溶融温度を有する支持構造金属は、物体を形成する金属を弱化若しくは軟化させ得るか、又はより低い溶融温度を有する支持金属構造は、より高い温度で溶融された金属で作製された物体特徴が支持構造に接触するときに物体が弱化し得る。金属滴吐出プリンタが、金属物体オーバーハング及び他の延在特徴を形成することを可能にする支持構造を形成することができることが有益である。
【発明の概要】
【0005】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、3D金属物体プリンタの環境に悪影響を与えることなく、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する。本方法は、コントローラを用いて少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、平面部材上に部分的に形成された硬化金属物体上で指向性エネルギー源を移動させることと、コントローラを用いて指向性エネルギー源を動作させて、硬化金属物体の表面上に第1の酸化層を形成することと、を含む。
【0006】
新しい3D金属物体プリンタは、3D金属物体プリンタの環境に悪影響を与えることなく、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する。新しい3D金属物体プリンタは、容器を有する吐出装置ヘッドであって、容器内に、ある体積の溶融金属を保持するように構成されている収容部を有する、吐出装置ヘッドと、吐出装置ヘッドから吐出された溶融金属滴を受容するように位置決めされた平面部材と、エネルギービームを平面部材に向かって方向付けるように構成された指向性エネルギー源と、指向性エネルギー源及び平面部材に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つのアクチュエータ及び指向性エネルギー源に動作可能に接続されたコントローラであって、コントローラが、硬化金属上に第1の酸化層を形成するために、指向性エネルギー源を動作させてエネルギービームを硬化金属上に方向付けるように構成されている、コントローラと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
3D金属物体プリンタの環境に悪影響を与えることなく、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成するための方法、及び方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴を、添付図面と併せて、以下の記述において説明する。
【
図1】3D金属物体プリンタの環境に悪影響を与えることなく、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する、新しい3D金属物体プリンタを表す。
【
図2】物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する、
図1に示された、3D金属物体プリンタの使用を示す。
【
図3】3D金属物体プリンタの環境に悪影響を与えることなく、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成するプロセスのフロー図である。
【
図4】物体を形成するために使用されるのと同じ金属で作製された支持構造を形成するための構成要素を含まない先行技術の3D金属プリンタのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0009】
図4は、以前から知られている3D金属物体プリンタ100の実施形態を示しており、この3D金属物体プリンタ100は、金属物体を形成するために使用されるのと同じ溶融金属を用いても、支持構造が物体特徴に過度に密に接着することなく、支持構造を形成することができない。
図4のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴が、単一ノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出されて、構築プラットフォーム112上に製造された物体の層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用される場合、「バルク金属」という用語は、一般的に入手可能なゲージのワイヤ、マクロサイズの金属ペレット、及び金属粉末などの、凝集体形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0010】
図4を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116が、吐出装置ヘッド140内の上部ハウジング122を通って延在するワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「吐出装置ヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通して吐出装置ヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りの吐出装置ヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0011】
吐出装置ヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出装置ヘッドの移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、吐出装置ヘッドをZ軸に沿って移動させるために吐出装置ヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームを吐出装置ヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。
【0012】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、吐出装置ヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直配向で動作されるものとして
図4に表されているが、他の代替配向を採用することができる。また、
図4に示される実施形態は、X-Y平面内を移動するプラットフォームを有し、吐出装置ヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されることも、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されることもできる。
【0013】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、吐出装置ヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置決めされる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0014】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、プリンタ100の構成要素を動作させ、モデルに対応する金属物体を形成するために、既知の方法で、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、コントローラ148による実行のためのマシン対応命令を生成する。マシン対応命令の生成は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を生成することができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0015】
同様の構成要素に対して同様の参照番号を使用し、形成中に物体に過度に密に接着しない金属支持構造を形成するために使用されない構成要素のいくつかを除去して、新しい3D金属物体プリンタ100’が
図1に示されている。プリンタ100’は、コントローラ148’によって動作される指向性エネルギー源188を含み、コントローラ148’は、コントローラに接続された非一時的メモリに記憶されたプログラム命令で構成されており、コントローラ148’は、プログラム命令を実行すると、以下に記載されるように、指向性エネルギー源及びアクチュエータを動作させて指向性エネルギー源を移動させ、支持構造を支持されている物体特徴に過度に強く取り付けることなく、金属物質を形成するために使用されているのと同じ溶解金属で金属支持構造界面を形成する。本明細書で使用される場合、「指向性エネルギー源」という用語は、酸素が存在する状態で金属物体特徴を形成するために使用されている金属を再溶融するのに十分なエネルギーを有する光、原子粒子、又は亜原子粒子の集束流の発生器を意味する。
図1に示される指向性エネルギー源は、酸素が存在する状態で金属構築材料を再溶融するのに十分な任意の波長又は出力であり得るレーザーである。他の実施形態では、指向性エネルギー源は、原子粒子、電子ビーム、又は他の亜原子粒子の発生器を含む。支持構造界面を形成するために使用されるレーザーのタイプは、その強度及び波長が、吐出装置ヘッド140によって吐出された後に硬化した金属滴を溶融するのに十分であるため、溶融金属レベルセンサにおいて使用されるレーザーとは異なる。本明細書で使用される場合、「再溶融」という用語は、硬化金属を液体にするのに十分な温度まで金属を上昇させることを意味する。この温度は、液相温度として知られている。本明細書で使用される「硬化金属」という用語は、固体になる相変化を有する溶融金属を意味する。硬化金属が加熱される温度の目標範囲は、一実施形態では、液相温度と液相温度より約25℃高い温度との間である。
【0016】
プリンタ100’は、吐出装置ヘッド140から吐出された溶融金属で支持体の層を形成し、次いで、指向性エネルギー源を動作させて、不活性ガスが存在しない状態で支持構造層を再溶融することによって、金属支持構造を形成する。周囲空気中での再溶融は、支持構造層の酸化をもたらす。支持構造の追加の層は、支持構造の最終層が形成されるまで元来酸化されていない溶融金属滴で形成される。この最終層はまた、周囲空気中で再溶融されるため、中間の支持構造は、構造の基部及びその最終層の両方で物体に弱く取り付けられる。これらの弱い取り付けは、物体が完成した後に支持構造が容易に除去されることを可能にする。プリンタ100’はまた、空気流発生器192を含む。空気流発生器192は、電気ファン、加圧空気源などとすることができる。コントローラ148’は、空気流発生器192に動作可能に接続され、酸化層の形成を増進させるために、酸化層が形成されている間に空気流発生器を選択的に動作させる。
【0017】
図3は、
図1のプリンタを用いて形成された金属物体において水平オーバーハングのための複数の弱く取り付けられる支持構造を形成するための例示的なプロセスの5つの工程を表している。工程(A)では、複数の金属支持柱304が、既知の方法で吐出装置ヘッドから吐出された溶融金属滴を使用してプラットフォーム112上に形成される。工程(B)では、キャッピング構造308が、同じ様式で形成される。工程(C)では、コントローラ148’は、アクチュエータ144及びレーザー188を動作させて、キャッピング構造308上でレーザービームを移動させ、不活性ガスが存在しない状態でキャッピング構造の最上層の一部分を少なくとも溶融するのに十分な温度にキャッピング構造を加熱する。この再溶融されたキャッピング構造308は、酸化層を形成する。工程(D)において、キャッピング構造308の酸化層上に水平オーバーハング312が形成される。物体の製造が完了した後、キャッピング構造体上の酸化層がオーバーハング312のベース層とキャッピング構造308との間の結合を弱めるため、工程(E)に示されるように、ピラー304を容易に除去することができる。
【0018】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理及び生成するために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0019】
物体特徴に弱く取り付けられる金属支持構造を形成するために3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセスが、
図3に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0020】
図3は、金属支持構造であって、金属支持構造が支持するか又は金属支持構造が上に構築される物体特徴に弱く取り付けられる、金属支持構造を構築するために、レーザーと、コントローラに動作可能に接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されたコントローラ148’とを使用するプロセス300のフロー図である。プロセスは、支持構造のベース層が検出される(ブロック308)まで、物体の層を形成する(ブロック304)。コントローラは、アクチュエータ及びレーザーを動作させて、形成された最終層を再溶融させ、酸化層を形成することができる(ブロック312)。支持構造は、吐出装置ヘッドから吐出された溶融金属滴で形成される(ブロック316)。コントローラは、アクチュエータ及びレーザーを動作させて、支持構造に形成された最終層を再溶融させ、酸化層を形成することができる(ブロック320)。金属支持構造によって支持される物体特徴は、支持構造の酸化層上に形成される(ブロック324)。物体の製造が完了すると(ブロック328)、支持構造は、支持構造は、酸化層において応力を加えることによって除去される(ブロック332)。
【0021】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。