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特開2023-33147セルベースモビリティ生産システムの運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033147
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】セルベースモビリティ生産システムの運用方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230302BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B62D65/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122794
(22)【出願日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113871
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イェ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ソク ゼ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョン ドン
【テーマコード(参考)】
3C100
3D114
【Fターム(参考)】
3C100AA03
3C100AA12
3C100AA22
3C100BB02
3C100BB03
3C100BB04
3C100BB05
3C100EE02
3D114AA07
(57)【要約】
【課題】スマートファクトリーの稼動率及び生産性を向上させるセルベースモビリティ生産システムの運用方法を提供する。
【解決手段】本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、編成された作業に基づいて車体の投入順序を決める段階と、決められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、
モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、
編成された作業に基づいて車体の投入順序を決める段階と、
決められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、を含むことを特徴とするセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項2】
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序によって投入される車体の総生産時間が最小生産時間を満たすように、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項3】
前記作業を再編成する段階以後には、決められた投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階をさらに含み、作業遅延発生時、前記作業を再編成する段階から再遂行することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項4】
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序によって投入される車体別にそれぞれのセルごとに必要な作業を配置した予想再編成を複数個生成し、複数の予想再編成の中で決められた投入順序によって投入される車体の総生産時間が最小生産時間を満たす予想再編成を最適編成として選定することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項5】
前記車体の投入順序を決める段階では、車体の投入順序を異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で総作業時間が最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項6】
前記車体の投入順序を決める段階では、車体の投入順序を異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で投入される車体の間のブロックタイムが最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項7】
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序及び前後車体間の作業量のばらつきに基づいて、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項8】
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序、及びセル別に可能な作業と不可能な作業とに基づいて、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することを特徴とする請求項1に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項9】
直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、
モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、
編成された作業に基づいて車体の投入順序を決める段階と、
決められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、
決められた投入順序及び再編成された作業に基づいてそれぞれのセルごとに必要な部品の物流移動を計画する段階と、を含むことを特徴とするセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項10】
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、物流移動における衝突またはデッドロックを含む物流移動イシューが発生したか否かを検知する段階をさらに含み、物流移動イシュー発生の時には前記物流移動を計画する段階から再遂行することを特徴とする請求項9に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項11】
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階をさらに含み、作業遅延発生時、前記作業を再編成する段階から再遂行することを特徴とする請求項9に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【請求項12】
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、モビリティの目標生産量に達しているか否かを検知する段階をさらに含み、達成不可判定時には前記作業を再編成する段階から再遂行することを特徴とする請求項9に記載のセルベースモビリティ生産システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルベースモビリティ生産システムの運用方法に関し、より詳しくは、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するスマートファクトリーシステムを運用するにおいて、車種別に各工程を行う相異なる作業時間のため車種が変わる地点ごとに発生する作業遅延を防止するように、定められた投入順序を考慮して、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することで、スマートファクトリーの稼動率及び生産性の向上を図るセルベースモビリティ生産システムの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、コンベヤーを中心に一貫した小品種の大量生産方式を維持して来ていた。従来の場合、一貫したシーケンスによって車両が投入され、完成車が出るまで車種別に指定された一つの作業編成によって、各工程で等しい作業で生産が行われる。
【0003】
このように車種別の単一作業編成によって生産する場合、多くの車種を同時に生産(混流生産)する時、車種別の作業時間の差に起因する作業遅延が発生するようになる。
【0004】
したがって、このような伝統的な車両生産方式から外れて多品種の車両を、迅速かつ効率的に生産することができる製造方式の革新が求められている。
【0005】
このような製造方法としては、セルベースのスマートファクトリーが挙げられる。セルベースのスマートファクトリーは、それぞれのセルで固有の作業を行い、このようなセルが多様に工場内で配置されて、投入される車体をいかなるセルを経由させるか、そのスケジュールを容易に変更し得る。
【0006】
しかしながら、このようなセルベースの工程も全体的な生産計画をよく樹立しないと、車種変更によるボトルネック現象を最小化し、生産効率性を高めることができない。よって、このためにあらかじめ迅速かつ正確にシミュレーションして生産計画を樹立することができる方法が必要である。
【0007】
上記の背景技術で説明した事項は、本発明の背景に対する理解を増進するためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2004-0092568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するスマートファクトリーシステムを運用するにおいて、車種別に各工程を行う相異なる作業時間のため車種が変わる地点ごとに発生する作業遅延を防止するように、定められた投入順序を考慮して、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することで、スマートファクトリーの稼動率及び生産性の向上を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、編成された作業に基づいて車体の投入順序を決める段階と、決められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、を含むことを特徴とする。
【0011】
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序によって投入される車体の総生産時間が最小生産時間を満たすように、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成し得る。
前記作業を再編成する段階以後には、決められた投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階をさらに含み、作業遅延発生時、前記作業を再編成する段階から再遂行し得る。
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序によって投入される車体別にそれぞれのセルごとに必要な作業を配置した予想再編成を複数個生成し、複数の予想再編成の中で決められた投入順序によって投入される車体の総生産時間が最小生産時間を満たす予想再編成を最適編成として選定し得る。
前記車体の投入順序を決める段階では、車体の投入順序を異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で総作業時間が最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定し得る。
前記車体の投入順序を決める段階では、車体の投入順序を異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で投入される車体の間のブロックタイムが最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定し得る。
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序及び前後車体間の作業量のばらつきに基づいて、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成し得る。
前記作業を再編成する段階では、決められた投入順序、及びセル別に可能な作業と不可能な作業とに基づいて、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成し得る。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、編成された作業に基づいて車体の投入順序を決める段階と、決められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、決められた投入順序及び再編成された作業に基づいてそれぞれのセルごとに必要な部品の物流移動を計画する段階と、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、物流移動における衝突またはデッドロックを含む物流移動イシューが発生したか否かを検知する段階をさらに含み、物流移動イシュー発生時には前記物流移動を計画する段階から再遂行し得る。
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階をさらに含み、作業遅延発生時、前記作業を再編成する段階から再遂行し得る。
前記物流移動を計画する段階以後には、投入順序によって車体を投入する場合、モビリティの目標生産量に達しているか否かを検知する段階をさらに含み、達成不可判定時には前記作業を再編成する段階から再遂行し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセルベースモビリティ生産システムの運用方法によれば、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するスマートファクトリーシステムを運用するにおいて、車種別に各工程を行う相異なる作業時間に起因して、車種が変わる地点ごとに発生する作業遅延を防止するように、定められた投入順序に基づいて、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成することで、スマートファクトリーの稼動率及び生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来例及び本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムにおける車体の投入順序を決める段階を示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法のフローチャートである。
図4】セルベースのモビリティ生産システムの構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの手動セルを示す図である。
図6】本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの自動セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示されている本発明の実施形態について、特定の構造的乃至機能的説明は、ただ本発明による実施形態を説明するための目的で例示されたものであって、本発明による実施形態は多様な形態で具現されることができ、本明細書に説明された実施形態に限定されない。以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
【0017】
本明細書で、シーケンス(SEQ、Sequence)とは、車両が投入される順序であり、以下「Seq」と表記する。また、本発明の運用方法は、コントローラー(プロセッサ)で行われるが、これに限定されない。
【0018】
図1は、従来例及び本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムを示す図であり、図2は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムで車体の投入順序を決める段階を示す図であり、図3は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法のフローチャートであり、図4は、セルベースのモビリティ生産システムの構成を示す図であり、図5は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの手動セルを示す図であり、図6は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの自動セルを示す図である。
【0019】
図4は、セルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムを示す図であって、既存のコンベヤー方式ではない、セルベースのスマートファクトリー生産システムの構成を示している。本発明が適用されるセルベースモビリティ生産システムの場合、図4に示すように、複数のセルで構成される。ここで、セル(Cell)は、作業者またはロボットが独立して作業する空間であって、特定工程を行う空間をいう。それぞれのセルは直列に配置されてもよく、並列に配置されてもよい。これによって、セルベースモビリティ生産システムは、モビリティ生産の柔軟性と効率性をいずれも追い求めることができる。
【0020】
図4に示すそれぞれのセルで行われる作業の例は次のとおりである 。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、TE1~TE5の場合、直列に連結され、トリムを組立てるラインで構成される。そして、PM~AMの場合は、シャーシラインであって、直列に連結される。
【0023】
一方、表1および図4に示すように、T/Fコンバーチブルの場合は、トリム工程と最終工程をいずれも行うものであって、1~6のセルで構成されて並列に連結される。
【0024】
そして、FE1~FE6は、最終ラインとして直列に連結されたセルであって、仕上げ取付作業を行う。このように本発明が適用されるセルベースモビリティ生産システムは、基本的な組立ての順序とセルの配置を備えている。
【0025】
図5は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの手動セルを示す図である。図5に示すように、手動セルは、無人搬送車(AGV、Automated Guided Vehicle)または自律走行搬送ロボット(AMR、Automated Mobile Robot)のような物流装備によって搬送された車体に対して作業者が直接工程を行う手動空間である。
【0026】
図5に示す手動セルは、インターフェースとタッチディスプレイが具備されており、作業工程及び当該作業、生産情報に関する情報を入出力するキオスクと、AGVまたはAMRで搬送される移動ボディーと、生産に必要な部品を供給する物流空間とで構成される。
【0027】
図6は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの自動セルを示す図である。図6に示すように、自動セルは、AGVまたはAMRで搬送された車体に対してロボットが工程を行う自動空間である。
【0028】
図1は、従来例及び本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムを示す図であり、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムをプロセッサで運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階と、編成された作業を考慮して(すなわち、編成された作業に基づいて)車体の投入順序を決める段階と、決められた投入順序を考慮して(すなわち、決められた投入順序に基づいて)、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階と、を含む。
【0029】
図1の上段に示すように、従来例のセルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムは、生産ラインで単一車種を生産する際に、最適の効率が得られるように構成される。よって、従来例が適用された生産システムは、A車種のみの生産において最適の効率を出すため、同一車種であるA車種だけが投入され続ける場合は、目標生産車を最小作業時間内に生産することができる。
【0030】
ただし、図1の上段に示すように、従来の生産システムの運用方法を、A車種ではないB車種の生産へと変更する場合は、最適の効率が得られない。その原因は、混流生産(A、B車種をはじめとした複数の車種)のための車両別の作業編成になっていないからである。
【0031】
具体的に、図1の上段及び下段に示すように、セル間の移動順序は、A、B車種ともセル1-セル2-セル3を経るものと想定する。A、B車種は、シーケンス(Seq)に従って投入され、本実施形態では2つの車種(A車種、B車種)だけを例として挙げたが、3つ以上の車種をシーケンスに従って順次に投入されてもよい。
【0032】
そして、図1の上段に示すように、Seq1(A車種投入)のセル1での作業完了後にSeq2(B車種投入)のセル1での作業が開始され、Seq1(A車種投入)のセル2での作業完了後にSeq2(B車種投入)のセル2での作業が開始され、これは他のセルでも同様である(本実施形態ではB車種の作業時間がA車種よりも短いと仮定する)。
【0033】
ところが、Seq2のB車種のセル1、セル2、セル3で行われる工程の総作業時間と、Seq1のA車種のセル1、セル2、セル3で行われる工程の総作業時間は、車種によって各セルで行う作業工程の差によって基本的に異なっている(本実施形態ではB車種の作業時間がA車種よりも短いと仮定する)。
【0034】
それゆえ、A車種に最適化された従来の単一作業編成基盤生産システムの運用方法を、そのまま混流生産システムに適用すると、Seq1のA車種がセル1での作業完了後にセル2での作業をするようになる場合、次いで投入されるSeq2のB車種は、A車種よりも作業時間が短いからセル1での作業完了後に直ちにセル2に投入することができず、待機することになるアイドルタイム(Idle time)が発生して累積される。
【0035】
すなわち、異なる車種間の作業時間の差が考慮されないわけである。このような現象は、車種が変更されて異なる車種が投入される時点ごとに累積する。これによって、モビリティ生産システムの生産効率が低下し、モビリティの日間目標生産量に到逹することができない恐れがある。その結果、従来の生産システムを混流生産システムにそのまま適用すると、全体的な車両生産計画に悪影響を及ぼす。
【0036】
一方、図1の下段に示すように、異なる車種間の作業時間の差を考慮して投入順序に応じた各車両別にセルで行われる作業の再編成によって、経なければならないセル間のアイドルタイムを最小化できる。
【0037】
例えば、総作業時間及びセル1の作業時間が比較的小さいSeq2(B車種)であることに鑑み、Seq1(A車種)のセル1の作業時間は増やし、セル2の作業時間は減らすように再編成され得る。すなわち、Seq1(A車種)の総作業時間は等しいが、それぞれのセルで行う作業工程を再編成することで、それぞれのセルで行う作業時間を調整する。これによって、Seq2(B車種)のセル1の作業完了時間と、セル2の作業開始時間との間のアイドルタイムが減る。
【0038】
順次に、総作業時間が比較的長いSeq3(A車種)のセル1及びSeq1(A車種)のセル3を考慮して、Seq2(B車種)のセル2の作業時間を増やすとともにセル3の作業時間は減らすように再編成する。これによって、Seq3(A車種)のセル1の作業完了時間と、セル2の作業開始時間との間のアイドルタイムが減る。最終的に、本発明の生産システムは、混流生産に適用される場合、モビリティの総生産時間が最小化される。
【0039】
このように、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、多車種混流生産ラインで発生し得る根本的な作業遅延問題を解決するために、車両投入順序に基づいて各車の作業を再編成する。これによって、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、より自由度の高い柔軟な生産計画を樹立して、生産性の向上を図る。
【0040】
図1の下段は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法が適用される生産システムを示す図であって、作業を再編成する段階では、決められた投入順序によって投入される車体の総生産時間が最小生産時間を満たすように、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する。
【0041】
具体的に、Seq1(A車種)のセル2での作業終了時間とSeq2(B車種)のセル2での作業開始時間との差が最小化されるように作業を再編成する。このために、Seq1(A車種)のセル2での作業時間は減らすとともにセル1及びセル3での作業時間を増やすように各セルでの作業を再編成する。
【0042】
同様に、Seq2(B車種)のセル2での作業終了時間とSeq3(A車種)のセル2での作業開始時間との差が最小化されるように作業を再編成する。このために、Seq2(B車種)のセル2での作業時間は増やすとともにセル1及びセル3での作業時間は減らすように各セルでの作業を再編成する。
【0043】
このような方式を通じて、投入される車体の総作業時間が最小作業時間を満たすように、投入される車体別に車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する。
【0044】
下記の表2は、TE1の工程で行われる作業の中で、他のセルへの移動編成が可能な作業と当該移動編成が可能な他のセルを示した例である。
【0045】
【表2】
【0046】
一方、自動化工程の一部の部品に対して手動工程への編成変更をすることも可能である。また、このような過程を通じて編成が変更された場合、作業情報/物流情報が自動で変更されるように連携されてもよい。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムにおける車体の投入順序を決める段階を示す図である。図2に示すように、車両生産に必要なデータが入力され、APS(Advanced Planning & Scheduling)を通じて週間車両生産計画及び車両投入順序であるシークエンス(Seq;Sequence)を含めた日間生産計画を樹立して週間・日間の車両目標生産物量及びこれに要する資材所要計画を確定する。このとき、車両順序を決めるために、上記の数理最適化アルゴリズムが活用される。ここで、数理最適化アルゴリズムの目的関数は、すべての車体作業完了時間及び車体別のブロックタイム(blocked time)であってもよい。ここで、制約条件は、車体別移動時間、作業時間、注文及び納期、在庫及び生産制約、セル同時作業禁止を含む。ここで、決定変数は、車体別の投入順序及び投入時点を含む。
【0048】
上記の表1に示すように、セルはそれぞれのセルごとに行う多様な作業の種類が定義される。特に、並列に連結されたセル間の移動は、多様な移動経路別に生産時間の差が発生する。また、搬送されるセルごとに行われる当該セルでの作業時間も、如何なるセルを経て来たのかによって相異なっている。よって、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法による車体の総生産時間を最小化するように、車両別作業編成による最適の移動経路を設定する。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法のフローチャートである。本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムを(プロセッサで)運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階(S102)、編成された作業を考慮して(すなわち、編成された作業に基づいて)車体の投入順序を決める段階(S102)、及び決められた投入順序を考慮して(すなわち、決められた投入順序に基づいて)、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階(S104)を含む。
【0050】
また、図3に示すように、本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法において、車体の投入順序を決める段階(S102)では、車体の投入順序を互いに異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で総作業時間が最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定する。そして、車体の投入順序を決める段階(S102)では、車体の投入順序を異にする複数の予想生産計画を設定し、予想生産計画の中で投入される車体間のブロックタイムが最も短い予想生産計画を最適生産計画として選定する。すなわち、数理最適化モデルにおける制約条件の下で、各目的関数(総作業時間、車体間のブロックタイム)が最小化される車体の投入順序を設定する。
【0051】
そして、作業を再編成する段階(S104)では、決められた投入順序及び作業別の前後関係を考慮して(すなわち、これらに基づいて)、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する。さらに、作業を再編成する段階(S104)では、決められた投入順序と、セル別に可能な作業及び不可能な作業とを考慮して(すなわち、これらに基づいて)、投入される車体のそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する。すなわち、数理最適化モデルにおける制約条件(作業別の前後関係、セル別に不可能な作業)を異なるように考慮(設定)して、目的関数が最小化される決定変数を見つける方向に作業を再編成し得る。
【0052】
また、図3に示すように、本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法において、作業を再編成する段階(S104)以後には、投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階(図示せず)をさらに含み、作業遅延発生時、作業を再編成する段階から再遂行する。すなわち、デジタルツインを介して作業遅延発生をシミュレーションし、これを事前に予防した計画を再樹立する。
【0053】
なお、図3に示すフローチャートで、本発明の他のセルベースモビリティ生産システムの運用方法は、直列または並列に連結された複数のセルを介して種々のモビリティを生産するシステムを(プロセッサで)運用する方法であって、モビリティ別にマッチングされた車体が経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を編成する段階(S102)、編成された作業を考慮して(すなわち、編成された作業に基づいて)車体の投入順序を決める段階(S102)、決められた投入順序を考慮して(すなわち、決められた投入順序に基づいて)、投入される車体別に経なければならないそれぞれのセルごとに必要な作業を再編成する段階(S104)、及び決められた投入順序及び再編成された作業を考慮して(すなわち、決められた投入順序及び再編成された作業に基づいて)それぞれのセルごとに必要な物流移動を計画する段階(S202)を含む。つまり、本発明の他の実施形態は、部品を供給して移動させる物流計画を一緒に樹立して作業配置を最適化する。
【0054】
ここで、作業を編成する段階(S102)は、モビリティの目標生産量を考慮して(すなわち、基づいて)作業を編成する。また、投入順序を決める段階(S102)において、投入順序によって投入される車体の総生産時間を考慮して(すなわち、基づいて)投入順序を決める。
【0055】
なお、図3に示すフローチャートで、本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法であって、物流移動を計画する段階(S202)以後は、投入順序によって車体を投入する場合、物流移動上衝突やデッドロックを含む物流移動イシューが発生したか否かを検知する段階(S302)をさらに含み、物流移動イシュー発生時には物流移動を計画する段階(S202)から再遂行する。すなわち、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法において、物流移動イシューによる問題発生シミュレーションの結果を反映して物流計画を再計画する。
【0056】
図3に示すフローチャートで、本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法であって、物流移動を計画する段階(S202)以後は、投入順序によって車体を投入する場合、特定セルでの作業遅延を検知する段階(図示せず)をさらに含み、作業遅延発生時、作業を再編成する段階から再遂行する。すなわち、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法において、作業遅延イシューによるシミュレーション結果を反映して作業を再編成する。
【0057】
図3に示す本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法のフローチャートで、本発明によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法であって、物流移動を計画する段階(S202)以後は、投入順序によって車体を投入する場合、モビリティの目標生産量を達成したか否かを検知する段階(S402)をさらに含み、達成不可判定時、作業を再編成する段階(S104)から再遂行する。すなわち、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムの運用方法において、計画物量達成不可イシューによるシミュレーション結果を反映して作業を再編成する。
【0058】
下記の表3、表4は、一例として作成した各工程及び生産車種に応じた一日目標生産台数を含む生産情報、車種別遂行可能工程、及び移動可能工程を示している。そして、下記表5は、表3及び表4の制約条件の下で単一車種生産を基盤として作業編成を数理最適化する従来例(As-Is)と対比して決められた投入順序のもとで、混流生産を基盤とした本発明の各シミュレーションによる総計生産時間及び車種別のリードタイムの減少率を示した表である。
【0059】
このように、本発明の一実施形態によるセルベースモビリティ生産システムは、作業編成及び物流移動による誤謬を、デジタルツインを介してシミュレーションして除去しながらも、総生産時間の減少を達成し得る。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
上述したように、本発明の特定の実施形態について図示及び説明を行ったが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で、本発明が多様に変更実施できることは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6