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特開2023-33149慣性要素を止める手段を備える計時器用共振機構
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  • 特開-慣性要素を止める手段を備える計時器用共振機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033149
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】慣性要素を止める手段を備える計時器用共振機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G04B17/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123203
(22)【出願日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】21193559.8
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ルショー
(57)【要約】
【課題】 計時器用ムーブメントの発振機構における慣性要素が発振することを防ぐための慣性要素を止める手段を提供する。
【解決手段】 構造(10)とアンカーユニット(30)を備える計時器用共振機構(1)である。アンカーユニット(30)から、第1の方向Zに延在している回転軸(D)のまわりの第1の回転方向RZの自由度の方向に発振するように構成している少なくとも1つの慣性要素(2)が懸架される。慣性要素(2)は、慣性要素(2)を発振させるように構成している戻し手段によって与えられる戻し力を受けるように構成している。共振機構(1)は、慣性要素(2)の発振を防ぐために要求に応じてアクチュエートすることができる、慣性要素(2)を止める止め手段(50)を備える。止め手段(50)は、慣性要素(2)を、回転位置と、慣性要素(2)が発振することができない止め位置との間で動かすように構成している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(10)とアンカーユニット(30)を備える計時器用共振機構(1)であって、
前記アンカーユニット(30)から、第1の方向Zに延在している回転軸(D)のまわりの第1の回転方向RZの自由度の方向に発振するように構成している少なくとも1つの慣性要素(2)が懸架され、
前記慣性要素(2)は、前記慣性要素(2)を発振させるように構成している戻し手段によって与えられる戻し力を受けるように構成しており、
前記共振機構(1)は、前記慣性要素(2)の発振を防ぐために要求に応じてアクチュエートすることができる、前記慣性要素(2)を止める止め手段(50)を備え、
前記止め手段(50)は、前記慣性要素(2)を、回転位置と、前記慣性要素(2)が発振することができない止め位置との間で動かすように構成している
ことを特徴とする共振機構(1)。
【請求項2】
前記止め手段(50)は、前記止め位置において前記慣性要素(2)が接触する止め当接体(6)を備え、
前記慣性要素(2)は、前記回転位置においては前記止め当接体(6)と接触しなくなる
ことを特徴とする請求項1に記載の共振機構(1)。
【請求項3】
前記慣性要素(2)は、前記止め当接体(6)に対して並進運動する
ことを特徴とする請求項2に記載の共振機構(1)。
【請求項4】
前記止め手段(50)は、前記慣性要素(2)を前記止め当接体(6)に押すように構成している
ことを特徴とする請求項2に記載の共振機構(1)。
【請求項5】
前記慣性要素(2)は、少なくとも部分的に、前記構造(10)の第1の回転用スタッド(5)のまわりにて発振するように構成しており、
前記第1の回転用スタッド(5)は、前記第1の回転用スタッド(5)を通り抜ける軸のまわりの前記慣性要素(2)の回転を可能にするように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の共振機構(1)。
【請求項6】
前記第1の回転用スタッド(5)は、前記止め当接体(6)を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の共振機構(1)。
【請求項7】
前記慣性要素(2)は、前記第1の回転用スタッド(5)に沿って摺動して前記止め当接体(6)と接触するように構成している
ことを特徴とする請求項6に記載の共振機構(1)。
【請求項8】
前記止め手段(50)は、前記慣性要素(2)を前記止め当接体(6)の方に動かすように構成しているアクチュエート手段(40)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の共振機構(1)。
【請求項9】
前記アクチュエート手段(40)は、前記慣性要素(2)を押すように構成している支持体(22)を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の共振機構(1)。
【請求項10】
前記支持体(22)は、フレキシブルである
ことを特徴とする請求項9に記載の共振機構(1)。
【請求項11】
前記アクチュエート手段は、前記慣性要素(2)を動かすように前記支持体(22)に力を与えるように構成しているレバー(23)を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の共振機構(1)。
【請求項12】
前記レバー(23)は、前記支持体を持ち上げて前記慣性要素(2)を動かすように構成している
ことを特徴とする請求項11に記載の共振機構(1)。
【請求項13】
前記アクチュエート手段は、前記レバー(23)をアクチュエートするための可動なワインド機構のロッド(24)を備える
ことを特徴とする請求項11に記載の共振機構(1)。
【請求項14】
前記戻し手段は、複数の実質的に縦方向の弾性細長材(3)を含むフレキシブルなピボット体(200)を備え、
前記弾性細長材(3)はそれぞれ、第1の端において前記アンカーユニット(30)に固定され、第2の端において前記慣性要素(2)に固定され、
前記弾性細長材(3)はそれぞれ、実質的に、前記第1の方向Zに垂直な平面XY内において変形可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の共振機構(1)。
【請求項15】
請求項1に記載の共振機構(1)を少なくとも1つ、及び/又は
請求項1に記載の共振機構(1)を備える計時器用発振機構(1)を少なくとも1つ
備えることを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性要素を止める手段を備える計時器用共振機構に関する。
【0002】
本発明は、さらに、前記共振機構を少なくとも1つ、及び/又は前記共振機構を少なくとも1つ備える計時器用発振器、を備える計時器用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0003】
計時器用ムーブメントの発振機構において、一般的には、このムーブメントの時間を設定しようとするときなどにバランスが発振することを防ぐために、バランスを止める手段が用いられる。この止め手段は、バランスと接触することによってバランスの運動をロックするように構成している。
【0004】
バランスは、一般的には、環状の形であり、止め手段は、アクチュエートされたときにバランスの周部と接触してバランスを止めるような可動当接体を備える。トゥールビヨンにおいて、バランスの回転軸に作用してその運動を止める他のタイプの止め手段がある。これは、例えば、回転軸上に配置された対応する当接体をロックすることによって行う。
【0005】
しかし、他のタイプのバランスがあり、これは、必ずしも環状ではなかったり、そのバランスがまわりを回転する回転シャフトがなかったりする。例えば、フレキシブルガイド式発振器の場合、慣性要素の本体が細長く、この細長い本体が、1つ又は好ましくは複数のフレキシブルな細長材を用いて発振するものがある。
【0006】
したがって、前記のような発振器において、既存の止め手段では不十分であり、新しい止め手段の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、任意のタイプの慣性要素と機能することだけでなく、計時器用発振器において伝統的に用いられている環状の慣性要素と機能することもできるような新しい止め手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、構造とアンカーユニットを備える計時器用共振機構に関し、前記アンカーユニットから、第1の方向Zに延在している回転軸のまわりの第1の回転方向RZの自由度の方向に発振するように構成している少なくとも1つの慣性要素が懸架され、前記慣性要素は、前記慣性要素を発振させるように構成している戻し手段によって与えられる戻し力を受けるように構成しており、前記共振機構は、前記慣性要素の発振を防ぐために要求に応じてアクチュエートすることができる、前記慣性要素を止める止め手段を備える。
【0009】
前記発振機構は、前記止め手段が、前記慣性要素を、回転位置と、前記慣性要素が発振することができない止め位置との間で動かすように構成しているという点で特徴的である。
【0010】
したがって、前記慣性要素は、発振するために回転運動ができるだけでなく、前記慣性要素がロックされ発振できない位置に慣性要素をセットすることができるように並進するように動くことができる。
【0011】
この新しいタイプの止め手段のおかげで、慣性要素の形を考慮に入れる必要がなくなる。この止め手段は、環状のバランスを備えないが細長い慣性要素を備える、例えばフレキシブルなガイドが行われる、特定の発振システムに適応することができる。また、この止め手段は、通常の環状のバランスにも用いることができる。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記止め手段は、前記止め位置において前記慣性要素が接触する止め当接体を備え、前記慣性要素は、前記回転位置においては前記止め当接体と接触しなくなる。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、前記慣性要素は、前記止め当接体に対して並進運動する。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、前記止め手段は、前記慣性要素を前記止め当接体に押すように構成している。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記慣性要素は、少なくとも部分的に、前記構造の第1の回転用スタッドのまわりにて発振するように構成しており、前記第1の回転用スタッドは、前記第1の回転用スタッドを通り抜ける軸のまわりの前記慣性要素の回転を可能にするように構成している。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の回転用スタッドは、前記止め当接体を備える。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記慣性要素は、前記第1の回転用スタッドに沿って摺動して前記止め当接体と接触するように構成している。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記止め手段は、前記慣性要素を前記止め当接体の方に動かすように構成しているアクチュエート手段を備える。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート手段は、前記慣性要素を押すように構成している支持体を備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート手段は、前記慣性要素を動かすように前記支持体に力を与えるように構成しているレバーを備える。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記支持体は、フレキシブルである。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記レバーは、前記支持体を持ち上げて前記慣性要素を動かすように構成している。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート手段は、前記レバーをアクチュエートするための可動なワインド機構のロッドを備える。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記戻し手段は、複数の実質的に縦方向の弾性細長材を含むフレキシブルなピボット体を備え、前記弾性細長材はそれぞれ、第1の端において前記アンカーユニットに固定され、第2の端において前記慣性要素に固定され、前記弾性細長材はそれぞれ、実質的に、前記第1の方向Zに垂直な平面XY内において変形可能である。
【0025】
本発明は、さらに、前記共振機構を少なくとも1つ、及び/又は前記共振機構を少なくとも1つ備える計時器用発振器、を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0026】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】慣性要素を止めるための止め手段と、止め手段をアクチュエートするためのアクチュエート手段を備えるフレキシブルな細長材共振機構についての概略斜視図である。
図2図1の共振機構についての側方から見た概略図である。
図3図1及び2の共振機構についての上から見た概略図であり、構造と止め手段が描かれている。
図4】フレキシブルなピボット体によってアンカーユニットから懸架された慣性錘の一部についての概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、例えば、ETA Manufacture Horlogere Suisseによるスイス特許出願CH00518/18や欧州特許出願EP18168765.8に記載されている共振器の変異形態であるような計時器用共振機構に関連する。これらの特許出願については、参照によって本明細書に組み込む。また、当業者であれば、これらの特許出願の内容と本発明に特有の特徴とを組み合わせることができる。
【0029】
図1及び2において、この計時器用共振機構1は、構造10とアンカーユニット30を備え、このアンカーユニット30から、第1の方向Zに沿って延在している回転軸Dのまわりの第1の回転方向RZの自由度の方向に発振するように構成している少なくとも1つの慣性要素2が懸架される。
【0030】
慣性要素2は、戻し手段によって与えられる戻し力を受ける。この実施形態において、この戻し手段は、複数の実質的に縦方向の弾性細長材3を含むフレキシブルなピボット体200である。前記弾性細長材3はそれぞれ、第1の端においてアンカーユニット30に固定され、第2の端において慣性要素2に固定される。図面において、共振機構1は、2つの交差した弾性細長材3を備え、この弾性細長材3にはそれぞれ、その細長材3の両側の各面上に複数のリブ13がある。弾性細長材3は、実質的に第1の方向Zに垂直な平面XY内において変形可能である。
【0031】
戻し手段のおかげで、慣性要素2は、平面XY内において発振することができる。前記第1の方向Zは、平面XYに垂直である。
【0032】
慣性要素2には、弾性細長材3が固定されるアタッチメント20がある。慣性要素2には、さらに、アタッチメント20と組み付けられたバランス15がある。バランス15は、実質的に対称的な骨の形であるように延在している。
【0033】
慣性要素2は、少なくとも部分的に、構造10の第1の回転用スタッド5のまわりを発振するように構成しており、この回転用スタッド5は、そのまわりの慣性要素2の回転を可能にするように構成している。このために、バランス15には、第1の回転用スタッド5を挿入するための中央穴16がある。中央穴16は、それを中心にバランス15が回転することができるようにするために、第1の回転用スタッド5よりも広い直径を有する。
【0034】
慣性要素2は、さらに、アタッチメント20の下に組み付けられたパレットアセンブリー25を備え、このパレットアセンブリー25は、バランス20と中央穴16を中心としている。パレットアセンブリー25には、円弧状の2つのアーム17、18があり、これらのアーム17、18の端は、エスケープ車(図示せず)と連係するように構成している。エスケープは、機械的なタイプ又は磁気的なタイプであることができる。
【0035】
構造10の第2の回転用スタッド19は、慣性要素2の回転軸に沿ってパレットアセンブリー25内に挿入される。パレットアセンブリー25には、第2の回転用スタッド19が挿入される第2の穴21があり、この第2の穴21は、パレットアセンブリー25とこの第2の穴21の間の接触を避けるために、第2の回転用スタッド19よりも幅が広い。第2の回転用スタッド19は、第1の回転用スタッド5の軸において配置される。したがって、慣性要素2は、第1の回転用スタッド5と第2の回転用スタッド19を包囲し、これらの一方はバランス15内に、他方はパレットアセンブリー25内に挿入され、これによって、2つの回転用スタッド5、19を通り抜ける回転軸に沿った慣性要素2の発振を可能にする。発振平面内の慣性要素2の発振振幅は、例えば、20~40°の範囲内の間隔内にある。発振周波数は、例えば、10Hzよりも大きい。
【0036】
第2の回転用スタッド19には、衝撃が発生した場合に、方向Zに沿った垂直方向の当接を行う機能があり、これによって、弾性細長材3又は並進プラットフォーム31、32の細長材が破損することを防ぐ。第2の回転用スタッド19には、その基部にて伸び出ているないし広がった箇所があり、これによって、慣性要素2を保持する。したがって、この機構が激しく振られたときに、方向Zに沿った慣性要素2の運動が第2の回転用スタッド19によって制限される。
【0037】
本発明によると、機構は、慣性要素2を止める止め手段50を備え、これを要求に応じてアクチュエートして、慣性要素2の発振を防ぐことができる。止め手段50は、慣性要素2を、慣性要素2が自由に発振することができる回転位置と、拘束されているために慣性要素2が発振することができない止め位置との間で動かすように構成している。
【0038】
このために、共振機構1は、発振を防ぐために慣性要素2が止め位置において接触する止め当接体6を備える。第1の回転用スタッド5は、止め当接体6を備え、これは、例えば、その周部における付加的な厚みによって、又はその基部における回転用スタッド5の広がりによって形成される。
【0039】
したがって、慣性要素2は、その発振を止めようとしているときに、回転用スタッド5に沿って摺動して当接体6と接触するように構成している。方向Zに沿って並進運動を行うことができる可動要素2を動かせるには、可動要素2は、パレットアセンブリー25の下に力を誘導することによって押される。2つの弾性細長材3のフレキシブル性のおかげで、細長材3の摩耗又は損傷のリスクなしに、方向Zに沿った慣性要素2の運動が可能になる。このような慣性要素2の運動は、弾性細長材3の大きいたわみを避けるために、非常に短い距離にて行われる。可動要素2は、その上に方向Zに沿って位置する当接体6と接触する。したがって、止め手段50は、この止め当接体6に対して可動要素2を押すように構成している。
【0040】
このために、止め手段50は、止め当接体6に対して慣性要素2を押すように構成しているアクチュエート手段40を備える。アクチュエート手段40は、慣性要素2と係合することができるように構成している支持体22を備え、この支持体22は、慣性要素2を動かすための手段として機能する。支持体22は、離れてアクチュエートされることができるように長くなっている。
【0041】
また、支持体22には、その一端に、第2の回転用スタッド19を包囲しているフォーク36があり、これによって、第2の回転用スタッド19に沿って摺動することができるようになる。回転位置において、支持体22とフォーク36は慣性要素2と接触していない。
【0042】
慣性要素2を動かすために、支持体22は、第2の回転用スタッド19に沿って動くことができ、これによって、慣性要素2と接触することができ、慣性要素2を止め当接体6に押すことができる。したがって、止め位置において、支持体22とフォーク36は慣性要素2と接触している。
【0043】
図面において、支持体22は、例えば、シート、好ましくは金属性のシート、であり、これには、その端において、パレットアセンブリー25の下に配置される第2の回転用スタッド19を把持するためのフォーク36がある。
【0044】
好ましくは、支持体22は、正確に力を与えることができるようにフレキシブルである。シートに力が与えられるとシートは曲がるが、力の一部を慣性要素2の下に伝達して、その慣性要素2を持ち上げる。
【0045】
アクチュエート手段40は、慣性要素2の回転軸に沿って慣性要素2に垂直に推力を発生させる。好ましくは、支持体22は、慣性要素2と平行に配置される。
【0046】
アクチュエート手段40には、支持体22に支えられて慣性要素2を動かすように構成しているレバー23がある。レバー23には、細長い本体があり、アクチュエート手段40がアクチュエートされたときに、その本体の一部が支持体22の下にて押して、支持体22を上方に押す。
【0047】
アクチュエート手段40は、さらに、レバー23をアクチュエートするためのワインド機構のロッド24を備える。このロッド24は、円筒状であり、このロッド24がアクチュエートされたときにその縦方向の軸に沿って動くことができる。
【0048】
ここで、レバー23は、曲がったアームの形であり、レバー23の中央に第1の曲がり26があり、自由端28の手前に第2の曲がり27がある。自由端28は、支持体22と接触している。自由端28は、端の方になるにしたがって先細になる断面が三角形の形である。自由端28は、支持体22の下に配置される。したがって、自由端28を支持体22の下に入るように動かすことによって、支持体22は、自由端28の厚い部分によって持ち上げられる。
【0049】
レバー23には、ロッド24と接触する第2の端29があり、この第2の端29は、ロッド24のまわりに延在している2つのガイド用リブ31、32の間に保持される。したがって、ロッド24がアクチュエートされたときに、ロッド24をその軸に沿って引いたり押したりすることによって、第2の端29が引かれたり押されたりする。
【0050】
レバー23には、ピボット体33があり、このピボット体33のまわりをレバー23が回転することができる。ピボット体33は、レバー23を通り抜けるねじによって形成されている。したがって、ロッド24が引かれたときに、第2の端29は、ロッド24の運動に追従して、レバー23がピボット体33のまわりを回転する。したがって、自由端28は、支持体22の下にて摺動して入り込んで、支持体22を持ち上げる。そして、慣性要素2は、それ自体が持ち上げられ、止め当接体6と接触して、この止め当接体6が慣性要素2の発振運動をロックする。
【0051】
図4において、アンカーユニット30は、フレキシブルなサスペンション300によって構造10から懸架され、このフレキシブルなサスペンション300は、以下の5つのサスペンションのフレキシブル性の自由度の方向に沿ったアンカーユニット30の運動を可能にするように構成している。
- 第1の方向Zに沿った並進運動の第1の自由度
- 第1の方向Zに直交する第2の方向Xに沿った並進運動の第2の自由度
- 第2の方向Xと第1の方向Zに直交する第3の方向Yに沿った並進運動の第3の自由度
- 第2の方向Xに沿って延在している軸のまわりの第2の回転方向RXの自由度
- 第3の方向Yに沿って延在している軸のまわりの第3の回転方向RYの自由度
【0052】
フレキシブルなサスペンション300は、アンカーユニット30と第1の中間錘303の間に、フレキシブルなガイドが行われる横断方向の並進運動用プラットフォーム32を含む。第1の中間錘303は、直接、又は第1の方向Zに沿ったフレキシブルなプレート310を用いて、構造10に固定される。プラットフォーム32は、第2の方向Xに沿って延在しており回転軸Dと交差する横断方向の軸D2に対して対称であるまっすぐな横断方向の細長材320を含む。
【0053】
フレキシブルなサスペンション300は、さらに、アンカーユニット30と第2の中間錘305の間に、フレキシブルなガイドが行われる縦方向の並進運動用プラットフォーム31を含み、これは、第3の方向Yに沿って延在しており回転軸Dと交差する縦方向の軸D1に対して対称であるまっすぐな縦方向の細長材310を含む。そして、第2の中間錘305と第1の中間錘303の間において、フレキシブルなガイドが行われる横断方向の並進運動用プラットフォーム32が、第2の方向Xに沿って延在しており回転軸Dと交差する横断方向の軸D2に対して対称であるまっすぐな横断方向の細長材320を含む。
【0054】
縦方向の軸D1は、横断方向の軸D2と交差し、特に、縦方向の軸D1、横断方向の軸D2及び回転軸Dは、一点に集まる。
【0055】
縦方向の並進運動用プラットフォーム31と横断方向の並進運動用プラットフォーム32はそれぞれ、少なくとも2つの細長材を含み、その各細長材は、細長材又はロッドが第3の方向Yに沿って延在しているときの第2の方向Xに沿った厚み、又は第2の方向Xに沿って延在しているときの第3の方向Yに沿った厚み、第1の方向Zに沿った高さ、及び細長材又はロッドが延在する方向に沿った長さ、によって特徴づけられる。この長さは、高さの少なくとも5倍であり、この高さは、少なくとも厚みと同じ大きさであり、特に、厚みの少なくとも5倍であり、さらには、厚みの少なくとも7倍である。
【0056】
横断方向の並進運動用プラットフォーム32は、互いに平行であり同じ長さである少なくとも2つの横断方向のフレキシブルな細長材を含む。図面に示している実施形態において、これらの並進運動用プラットフォームは、4つのフレキシブルな細長材を備える。
【0057】
本発明は、さらに、前記のような計時器用共振機構1を備える計時器用発振機構、及びエスケープ機構(図示せず)に関する。これらは互いに連係するように構成している。
【0058】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のような発振機構及び/又は少なくとも1つの共振機構1を備える計時器用ムーブメント10に関する。
【0059】
当然、本発明は、図示している例に限定されるものではなく、当業者に明白な様々な変異形態や改変に適している。説明した実施形態において、慣性要素2が持ち上げられるが、他の実施形態も可能である。例えば、慣性要素が回転位置において保持され止め位置において下方に摺動するような形態が可能である。戻し手段に関して、フレキシブルな細長材を用いるピボット体の代わりに、バランスばねを用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 共振機構
2 慣性要素
3 弾性細長材
5 第1の回転用スタッド
6 止め当接体
10 構造
22 支持体
23 レバー
24 ロッド
28 自由端
29 第2の端
30 アンカーユニット
40 アクチュエート手段
50 止め手段
200 フレキシブルなピボット体
300 フレキシブルなサスペンション
302 第1の中間錘
305 第2の中間錘
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】