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特開2023-33161多孔質樹脂粒子、該粒子の製造方法ならびに該粒子を含有するパーソナルケア製品、断熱材および遮音材
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  • 特開-多孔質樹脂粒子、該粒子の製造方法ならびに該粒子を含有するパーソナルケア製品、断熱材および遮音材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033161
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】多孔質樹脂粒子、該粒子の製造方法ならびに該粒子を含有するパーソナルケア製品、断熱材および遮音材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20230302BHJP
   C08F 2/32 20060101ALI20230302BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230302BHJP
   G10K 11/165 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08J9/28
C08F2/32
C08F20/10
A61K8/81
A61Q1/00
A61Q19/00
G10K11/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127257
(22)【出願日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021138454
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 喬是
【テーマコード(参考)】
4C083
4F074
4J011
4J100
5D061
【Fターム(参考)】
4C083AD071
4C083AD091
4C083BB24
4C083CC01
4C083DD16
4C083FF01
4F074AA48A
4F074AH04
4F074CB47
4F074CC29
4F074DA03
4F074DA24
4F074DA59
4J011AA05
4J011JA06
4J011JB08
4J011JB26
4J011LA07
4J100AL03P
4J100AL62Q
4J100CA04
4J100CA23
4J100EA13
4J100FA02
4J100FA21
4J100JA61
4J100JA67
5D061AA06
5D061AA25
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】樹脂粒子は構成するモノマー、形状によって耐候性、光拡散性をはじめとする様々な性質を発現、制御できることから、化粧品の添加剤や塗料の艶消し材、照明カバーや液晶パネル用の光拡散材など幅広い用途に用いられている。近年、化粧品に添加する際求められる吸油能力を向上させるため、樹脂粒子を多孔質化したものが報告されているが、より高度な要望に対しては吸油量が十分とは言えず、さらなる吸油能力の向上が求められている。本発明の目的は、油分や水分などの液状物の吸収・分離などにおいて、優れた吸収量を発現できる多孔質樹脂粒子および該粒子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】累積細孔容積が1.5~5.0ml/gであり、平均細孔直径が0.1~2.0μmである多孔質樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
累積細孔容積が1.5~5.0ml/gであり、平均細孔直径が0.1~2.0μmである多孔質樹脂粒子。
【請求項2】
メディアン径が3.0~150μmであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質樹脂粒子。
【請求項3】
下記工程(a)~(d)を有する、多孔質樹脂粒子の製造方法。
(a)ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアクリル酸ナトリウムのいずれかを含む内水相成分と、疎水性モノマー、重合開始剤、及びエチルセルロースを含む油相成分からなる、W/O(内水相/油相)型エマルションを得る工程。
(b)上記(a)で得られたW/O型エマルションと懸濁重合用分散安定剤を含む外水相成分からなる、W/O/W(内水相/油相/外水相)型エマルションを得る工程。
(c)上記(b)で得られたW/O/W型エマルションにおいて、モノマーを重合してポリマー水分散液を得る工程。
(d)上記(c)で得られたポリマー水分散液から外水相およびポリマー内部の水を除去する工程。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とするパーソナルケア製品。
【請求項5】
請求項1または2のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とする断熱材。
【請求項6】
請求項1または2のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とする遮音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質樹脂粒子、該粒子の製造方法および該粒子を含有するパーソナルケア製品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子は構成するモノマー、形状によって耐候性、光拡散性をはじめとする様々な性質を発現、制御できることから、化粧品の添加剤や塗料の艶消し材、照明カバーや液晶パネル用の光拡散材など幅広い用途に用いられている。なかでも、化粧品の皮脂吸着性や有効成分保持能力を向上させるため、化粧品に添加する樹脂粒子の吸油性を増大させる試みが報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1では平均粒子径が1~50μmの内部に1個または2個以上の空孔を有する球状重合体が報告されている。また、特許文献2では、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を、少なくとも、非重合性のシリコーン化合物が存在している状態で懸濁重合してなり、且つ、表面が粗面化している樹脂粒子が報告されている。
【0004】
さらに、特許文献3ではメタクリル酸メチルとポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノメタクリレートの共重合体からなり、吸油量が135ml/100gである化粧料用多孔質樹脂粒子が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-184004号公報
【特許文献2】WO16/006540号公報
【特許文献3】特開2017-88501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~3で報告されている多孔質樹脂粒子は、より高度な要望に対しては吸油量が十分とは言えない。これは、従来の多孔質樹脂粒子においては、粒子内部の空間体積が小さく、吸油量が制限されることが原因であると考えられる。本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、油分や水分などの液状物の吸収・分離などにおいて、優れた吸収量を発現できる多孔質樹脂粒子および該粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、累積細孔容積が1.5~5.0ml/gであり、平均細孔直径が0.1~2.0μmである多孔質樹脂粒子が上記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
[1]累積細孔容積が1.5~5.0ml/gであり、平均細孔直径が0.1~2.0μmである多孔質樹脂粒子。
[2]メディアン径が3.0~150μmであることを特徴とする、[1]に記載の多孔質樹脂粒子。
[3]下記工程(a)~(d)を有する、多孔質樹脂粒子の製造方法。
(a)ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアクリル酸ナトリウムのいずれかを含む内水相成分と、疎水性モノマー、重合開始剤、及びエチルセルロースを含む油相成分からなる、W/O(内水相/油相)型エマルションを得る工程。
(b)上記(a)で得られたW/O型エマルションと懸濁重合用分散安定剤を含む外水相成分からなる、W/O/W(内水相/油相/外水相)型エマルションを得る工程。
(c)上記(b)で得られたW/O/W型エマルションにおいて、モノマーを重合してポリマー水分散液を得る工程。
(d)上記(c)で得られたポリマー水分散液から外水相およびポリマー内部の水を除去する工程。
[4][1]または[2]のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とするパーソナルケア製品。
[5][1]または[2]のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とする断熱材。
[6][1]または[2]のいずれかに記載の多孔質樹脂粒子を含有することを特徴とする遮音材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多孔質樹脂粒子は、細孔容積が大きいため、液状物に対して優れた吸収性能を有するものである。かかる性能を有する本発明の多孔質樹脂粒子は、例えば、化粧品(ファンデーション、日焼け止めなど)や皮脂取り用品(皮脂吸着パウダー、脂取り紙、脂取りハンカチなど)のような過剰な皮脂の吸収を求められるパーソナルケア製品の添加剤などとして好適に利用することができる。また、本発明の多孔質樹脂粒子は粒子内に比較的大きな空洞を有していることから、断熱材や遮音材の構成成分としても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られた本発明の多孔質樹脂粒子の外観を示すSEM写真である。
図2】実施例1で得られた本発明の多孔質樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の多孔質樹脂粒子は、樹脂を材料とする粒子であって、その表面から内部に通じる連通孔を有するものである。材料となる樹脂については特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどを採用することができる。
【0012】
また、本発明の多孔質樹脂粒子の累積細孔容積は、下限としては1.5ml/gであり、2.0ml/gであることが好ましく、2.5ml/gであることがより好ましい。また上限としては、5.0ml/gであり、4.0ml/gであることが好ましく、3.5ml/gであることがより好ましい。累積細孔容積が小さすぎる場合、粒子内部に液状物等が浸透できる領域が少なくなり、吸収量が低下してしまう。累積細孔容積が大きすぎる場合、強度が下がって崩壊しやすくなるため実用に不適なものとなってしまう。
【0013】
さらに、本発明の多孔質樹脂粒子の平均細孔直径は、下限としては0.1μmであり、0.2μmであることが好ましく、0.3μmであることがより好ましい。また上限としては、2.0μmであり、1.5μmであることが好ましく、1.0μmであることが好ましい。平均細孔直径が小さすぎる場合、上記のような範囲の累積細孔容積を確保しようとすると空孔内壁の厚さを薄くすることになるため、脆い粒子となり、形状を維持できないことがある。一方、平均細孔直径が大きすぎる場合、粒子形状が球状を保てず異形となってしまい、肌触りが悪くなる場合がある。
【0014】
本発明の多孔質樹脂粒子のメディアン径は、下限としては3.0μmであることが好ましく、5.0μmであることがより好ましい。また上限としては、150μmであることが好ましく、100μmであることがより好ましく、50μmであることがさらに好ましく、30μmであることが最も好ましい。かかる数値範囲内であれば、化粧品等に添加した際の皮脂分の十分な吸収量と良好な質感や光拡散性を両立しやすくなる。一方、150μmを超えると懸濁重合で調製することが困難となる。ここでメディアン径とは、ある粉体について得られた体積基準の粒径分布における積算値50%となる粒径を指す。
【0015】
上述してきた本発明の多孔質樹脂粒子は、後述する方法で測定される吸油量として、125ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上、より好ましくは180ml/100gを発現することができる。ただし、吸収した液状物が再放出されないようにする観点から、上限は400ml/100gが好ましく、300ml/100gがより好ましい。
【0016】
また、かかる本発明の多孔質樹脂粒子の累積細孔比表面積については、特に制限はないが、上述した各特性を満たす結果として、概ね10m/g~100m/gとなる。
【0017】
以上に述べてきた本発明の多孔質樹脂粒子は、以下の(a)~(d)の工程を含む方法で製造することが好ましい。
(a)ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアクリル酸ナトリウムのいずれかを含む内水相成分と疎水性モノマー及び重合開始剤、エチルセルロースを含む油相成分からなる、W/O(内水相/油相)型エマルションを得る工程。
(b)上記(a)で得られたW/O型エマルションと懸濁重合用分散安定剤を含む外水相成分からなる、W/O/W(内水相/油相/外水相)型エマルションを得る工程。
(c)上記(b)で得られたW/O/W型エマルションにおいて、モノマーを重合してポリマー水分散液を得る工程。
(d)上記(c)で得られたポリマー水分散液から外相およびポリマー内部の水を除去する工程。
【0018】
上記(a)工程における内水相は、水にポリエチレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアクリル酸ナトリウムのいずれかを溶解することで得られる。これらの添加剤は、油相に内水相を分散させるための水溶性分散剤としての役割があり、その添加量は、下限としてはモノマー重量に対して1.5重量%が好ましく、2.0重量%がより好ましい。また上限としては5.0重量%が好ましい。
【0019】
上記(a)工程における油相は、疎水性モノマーに重合開始剤及びエチルセルロースを溶解することで得られる。疎水性モノマーとしては重合により粒子を形成できる限り特に制限はなく、例としてスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ラウリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールブロバントリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、使用される用途に必要な特性を満足するよう適宜選択し、場合によっては組み合わせて使用すればよい。
【0020】
また(a)工程における重合開始剤としては上記の疎水性モノマーに溶解し、ラジカル重合を開始できるものであれば特に制限はないが、例えばメチルエチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物類や2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などを挙げることができる。油相への添加量は、下限としてはモノマー重量に対して0.1重量%が好ましく、上限としては2.0重量%が好ましい。
【0021】
(a)工程におけるエチルセルロースは内水相の分散を安定化する役割を持つ。またその添加量は、下限としてはモノマー重量に対して0.1重量%が好ましく、上限としては2.0重量%が好ましい。
【0022】
(a)工程におけるW/O(内水相/油相)型エマルションは、上記油相に内水相を添加し、懸濁することで得られる。ここで、油相重量に対する内水相の添加量は、下限として20重量%が好ましく、上限としては75重量%が好ましい。
【0023】
(a)工程における懸濁方法は公知の手法、装置を用いればよい。例としては、ホモミキサー、バイオミキサー等の機械的分散機や、超音波ホモジナイザー等を用いて分散させる方法等が挙げられる。
【0024】
次に、(b)工程における外水相は、水に懸濁重合用分散安定剤を添加、溶解することで得られる。該分散安定剤は公知のものを選択すればよく、例としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等の無機分散剤を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散剤としては、水溶性高分子系分散剤を使用することが好ましい。分散剤の使用量は、下限としてはモノマー重量に対して0.5重量%が好ましく、上限としては5.0重量%が好ましい。
【0025】
(b)工程におけるW/O/W(内水相/油相/外水相)型エマルションは、外水相に(a)工程で調製したW/O型エマルションを添加し、懸濁することで得られる。ここで、W/O型エマルションの添加量は、得られるW/O/W型エマルションの全重量に対するモノマー重量割合が10~40重量%の範囲となるようにするのが好ましい。
【0026】
(b)工程における懸濁方法は、上述した(a)工程と同様の方法を採用することができる。
【0027】
次に、(c)工程におけるポリマー水分散液は、(b)工程で調製したW/O/W型エマルション中のモノマーを重合することで得られる。ここで、重合条件は特に限定されず、用いるモノマーや添加剤の種類に応じて、重合温度、重合時間等の諸条件を設定すればよい。例えば、重合開始剤の10時間半減期温度に応じて重合温度、重合時間を決定することができる。
【0028】
次に、(d)工程における水を除去する方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよい。例としては、吸引ろ過、水洗浄、加熱乾燥を経て水を除去する方法が挙げられる。
【0029】
以上に説明してきた本発明の多孔質樹脂粒子は優れた吸油性を有しており、ファンデーション、日焼け止めなどの化粧品添加剤として好適に用いることができる。また、本発明の多孔質樹脂粒子は粒子内に比較的大きな空洞を有していることから、断熱材や遮音材の構成成分としても好適に利用することができる。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の評価に用いた測定方法は、以下の通りである。
【0031】
(1)メディアン径
乾燥したサンプルを界面活性剤に馴染ませた後、水に分散させて分散液を調製する。該分散液に対し島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置であるSALD-200Vを使用してサンプル粒子の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径を求めた。
【0032】
(2)累積細孔容積、平均細孔直径、累積細孔比表面積
サンプルを120℃で4時間恒温乾燥したのち、水銀圧入法により細孔直径約0.0036μm~200μmの細孔分布を測定した。なお、細孔径はwashburnの式から算出し、測定条件及び測定装置は下記のようにした。
測定条件
・水銀の表面張力:480dynes/cm
・水銀とサンプルとの接触角:140degrees
測定装置
・オートポアV9620(マイクロメリティックス社製)
【0033】
(3)吸油量
JIS K5101-13-2:2004に準拠して測定した。
【0034】
実施例1
(a)工程:W/O(内水相/油相)型エマルションの調製
メタクリル酸メチルとエチレングリコールジメタクリレートが重量比にして90:10で混合されてなるモノマー混合物に、ジラウロイルペルオキシドとエチルセルロースをモノマー混合物の重量に対してそれぞれ0.4重量%、1.0重量%添加し、溶解させ、油相を得た。かかる油相と、水にポリエチレンイミンが前記モノマー混合物の重量に対して3.0重量%添加されてなる内水相を混合したのち、ホモミキサーで攪拌することで、油相内に内水相の液滴が分散したW/O(水相/油相)型エマルションを得た。
【0035】
(b)工程:W/O/W(内水相/油相/外水相)型エマルションの調製
上記(a)工程で得られたW/O型エマルションと、上記モノマー混合物の重量に対して2.0重量%のポリビニルアルコールが水に添加されてなる外水相を、得られるW/O/W型エマルションの全重量に対するモノマー混合物の重量割合が20重量%となるように混合したのち、ホモミキサーで攪拌し、W/O/W型エマルションを得た。
【0036】
(c)及び(d)工程:多孔質樹脂粒子の調製
上記(b)工程で得られたW/O/W型エマルションを70℃まで昇温し、そのまま4時間反応させた。得られたスラリーを減圧濾過した後、濾別した固形物を水洗、乾燥し、実施例1の多孔質樹脂粒子を得た。得られた粒子の外観を撮影したSEM写真を図1に、粒子断面を撮影したSEM写真を図2に示す。図2から、空孔断面の奥側にさらなる空孔があり、空孔同士が連通していることがわかる。なお、図1の表面や空孔内部に見える微小粒子はコンタミネーションである。また、図2は、粒子を樹脂で固めたものを切断して撮影したものである。
【0037】
実施例2
実施例1において、(a)工程におけるポリエチレンイミンの添加量を2.3重量%とするほかは同様に行うことで、実施例2の多孔質樹脂粒子を得た。
【0038】
実施例3
実施例1において、(a)工程におけるポリエチレンイミンの添加量を1.5重量%とするほかは同様に行うことで、実施例3の多孔質樹脂粒子を得た。
【0039】
比較例1
実施例1の(a)工程において、エチルセルロースを添加せずにW/O型エマルションの調製を試みたが、油相と内水相が分離してしまい、目的の多孔質樹脂粒子は得られなかった。
【0040】
比較例2
実施例1の(a)工程において、ポリエチレンイミンを添加せずにW/O型エマルションの調製を試みたが、油相と内水相が分離してしまい、目的の多孔質樹脂粒子は得られなかった。
【0041】
比較例3
市販のアクリル系多孔質樹脂粒子(累積細孔容積:1.31ml/g、メディアン径:8μm)を比較例3として用いた。
【0042】
実施例1、2、3及び比較例3の多孔質樹脂粒子について、前述の方法で測定を行った結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、実施例1、2、3の多孔質樹脂粒子は比較例3に比べ吸油量が高く、特に実施例1は優れた吸油能力を有していることがわかる。
図1
図2