(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033194
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、ポリアミドイミドフィルム、これらの製造方法、およびこれらの用途
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230302BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132897
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0112858
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113041
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソ ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョ ヒュン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF34Y
4F071AF35Y
4F071AG05
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J043QB23
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA26
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA212
4J043UB401
4J043XA16
4J043ZB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無色透明な光学的特性が低下せず、かつ、光学ムラのない優れた視認性を有し、耐熱性に優れるとともに、柔軟であるため曲げ特性に優れるポリアミドイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン、フルオレン構造を有する二無水物、及びテレフタル酸ジクロライドおよびまたはイソフタル酸ジクロライドを含む組成物から製造されるポリアミドイミドフィルムを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドフィルムであって、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含み、および
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが30μm~100μmであり、ASTM E111に準じたモジュラスが4.0GPa以上であり、550nmの波長における厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が600nm以下である、ポリアミドイミドフィルム。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
【請求項2】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が4.0以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリアミドイミドフィルムは、破断伸びが10%以上である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが40μm~80μmであり、550nmの波長における厚さ方向位相差の絶対値が200nm~500nmである、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項5】
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として5モル%~50モル%で含まれ、前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比が95:5~50:50である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項6】
ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、
アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を含む混合溶媒と、を含み、
下記式1を満たすポリアミドイミドフィルム形成用組成物であって、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
[化学式1]
【化5】
[化学式2]
【化6】
[化学式3]
【化7】
[化学式4]
【化8】
[式1]
5,000≦V
PAI≦15,000
前記式1中、
V
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【請求項7】
前記アミド系溶媒は、ジメチルプロピオンアミドを含む、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項8】
前記炭化水素系溶媒は、環状炭化水素系溶媒である、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項9】
前記環状炭化水素系溶媒は、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項10】
前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の固形分は、
前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して10重量%~40重量%で含まれる、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項11】
前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、
前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含む、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項12】
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として5モル%~40モル%で含まれ、前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比が95:5~50:50である、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項13】
アミド系溶媒下で、下記化学式1で表される化合物を含むジアミン、下記化学式2で表される化合物を含む二無水物、および下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含む二酸二塩化物を反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップ(ステップi)と、
下記式1を満たすように炭化水素系溶媒を投入して粘度を調節するステップ(ステップii)と、
を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[化学式1]
【化9】
[化学式2]
【化10】
[化学式3]
【化11】
[化学式4]
【化12】
[式1]
5,000≦V
PAI≦15,000
前記式1中、
V
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【請求項14】
前記ステップiiは、
前記ステップiのアミド系溶媒の重量に対して25重量%~100重量%の炭化水素系溶媒を投入して撹拌するステップと、
前記式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を追加投入するステップと、を含む、請求項13に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項15】
前記ジアミン100モル%を基準とする際に、前記二酸二塩化物のモル%は5モル%~50モル%であり、前記二無水物と前記二酸二塩化物のモル比が95:5~50:50である、請求項13に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項6~12のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を基板に塗布した後に熱処理するステップを含む、ポリアミドイミドフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記熱処理するステップにおいて、熱処理は、300℃~350℃の温度で10分~60分間行う、請求項16に記載のポリアミドイミドフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記熱処理するステップの前に、50℃~150℃で乾燥するステップをさらに含む、請求項16に記載のポリアミドイミドフィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルムと、
前記ポリアミドイミドフィルム上に位置するコーティング層と、
を含む、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項20】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、ポリアミドイミドフィルム、これらの製造方法、およびこれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の軽量化、スリム化、およびフレキシブル化が重要視されている。既存のディスプレイ装置に広く用いられてきたガラス基板は、重く、割れやすく、柔軟ではなく、連続工程が難しいという短所を有しているため、ガラス基板の代わりに、軽く、柔軟で、連続工程が可能な長所を有する高分子基板をフレキシブルディスプレイ装置に適用するための研究が活発に行われている。中でも、合成しやすく、耐熱性および耐薬品性などに優れた高分子であるポリアミドイミド(Polyamideimide、PAI)が主に用いられている。
【0003】
次世代ディスプレイ装置の基板素材は、優れた光学的物性だけでなく、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用するための柔軟性および機械的物性の向上が伴わなければならない。さらに、フレキシブルデバイスは高温工程を伴うが、特にLTPS(low temperature polysilicon)工程を用いるOLED(organic light emitting diode)デバイスの場合、工程温度が350℃以上500℃に近接するため、優れた耐熱性が求められる。
【0004】
一方、通常のポリアミドイミドの色は褐色または黄色を帯びるが、これは、ポリアミドイミドの分子内(intra molecular)および分子間(inter molecular)相互作用による電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)が主な原因である。これは、ポリアミドイミドフィルムの光透過率を低下させ、複屈折を高めてディスプレイ装置の視感性に影響を及ぼす。
【0005】
これを解決するためには、多様な構造の単量体を組み合わせるか変更してCTC効果を減少させることで、無色透明なポリアミドイミドを製造することができる。しかし、光学的物性と耐熱性は、互いにトレードオフ(trade-off)関係にあり、このような試みは、ポリアミドイミドの光学的物性が良くなっても、機能性が低下したり耐熱性が劣化したりする極めて一般的な結果を得ざるを得なかった。そこで、ポリアミドイミドの耐熱性および機械的物性が大幅に低下しない範囲で色の透明度および光学的特性を向上させる研究が続いているが、これらを全て満たすには限界がある。
【0006】
したがって、無色透明な性能が低下せず、かつ、向上した光学的物性の実現とともに優れた耐熱性を全て満たし、強化ガラスを代替可能なディスプレイ基板素材の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2020-0083797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差を有することで、広い視野角での反射防止効果があり、ムラ現象を顕著に減少させることができるポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0009】
他の一実施形態は、無色透明な光学的物性が低下せず、かつ、光学ムラがなく、視認性などに優れ、耐熱性および機械的物性に優れたポリアミドイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0010】
また他の一実施形態は、優れた光学的特性および優れた耐熱性を同時に実現することができるポリアミドイミドフィルム形成用組成物を提供する。
さらに他の一実施形態は、優れた光学的特性および優れた耐熱性を同時に実現することができるポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0011】
さらに他の一実施形態は、前記ポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
さらに他の一実施形態は、前記ポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態は、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドフィルムであって、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含み、および
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが30μm~100μmであり、ASTM E111に準じたモジュラスが4.0GPa以上であり、550nmの波長における厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が600nm以下である、ポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
また、他の一実施形態は、下記化学式1で表される化合物を含むジアミンおよび溶媒を混合し、ジアミン溶液を製造するステップと、
前記ジアミン溶液に、下記化学式2で表される化合物を含む二無水物、および下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含む二酸二塩化物を反応させ、ポリアミドイミド前駆体を製造するステップと、
前記ポリアミドイミド前駆体を基板に塗布した後に熱処理するステップと、を含む、前記ポリアミドイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
また他の一実施形態は、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、
アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を含む混合溶媒と、を含み、
下記式1を満たすポリアミドイミドフィルム形成用組成物であって、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
[式1]
5,000≦VPAI≦15,000
【0028】
前記式1中、
VPAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【0029】
さらに他の一実施形態は、アミド系溶媒下で、前記化学式1で表される化合物を含むジアミン、前記化学式2で表される化合物を含む二無水物、および前記化学式3で表される化合物および前記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含む二酸二塩化物を反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップ(ステップi)と、
前記式1を満たすように炭化水素系溶媒を投入して粘度を調節するステップ(ステップii)と、を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0030】
さらに他の一実施形態は、前記ポリアミドイミドフィルムと、前記ポリアミドイミドフィルム上に位置するコーティング層と、を含むディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
また、さらに他の一実施形態は、前記ポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0031】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、視認性に劣化を引き起こすムラ現象、特に位相差によるレインボー現象を顕著に改善することができる。また、強化ガラスと類似レベルの機械的強度を有する厚さ範囲においても無色透明な光学的物性を実現することができる。さらに、広い可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差(Rth)を有することで、反射外観を画期的に改善させることができる。それとともに、上記で言及した高強度特性はいうまでもなく、曲げ特性に優れるため屈曲による割れやクラックを防止することができる。したがって、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置などの光学用途として有用に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本明細書に開示された技術分野に属する技術分野における通常の知識を有する者が本開示の一実施形態を容易に実施することができるように詳細に説明する。ただし、一実施形態は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。また、下記の説明は、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものでもない。
【0033】
また、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、他の定義がなければ、本明細書に開示された技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有してもよい。
【0034】
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0035】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0036】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、同種重合体および共重合体を含んでもよい。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0037】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリアミドイミド」は、アミドモイエティおよびイミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0038】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリアミドイミドフィルムは、ポリアミドイミドを含むフィルムであってもよく、具体的に、ジアミン化合物溶液に二無水物化合物と二酸二塩化物を溶液重合してポリアミック酸を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化することで製造される高耐熱性フィルムであってもよい。
【0039】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ムラ現象」は、特定の角度で引き起こされ得る光による歪み現象を全て包括する意味として解釈されてもよい。例えば、ポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置において、画面が黒く見えるブラックアウト現象、ホットスポット現象、または虹色のムラを有するレインボー現象などの光による歪みが挙げられる。
【0040】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0041】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを説明する。
従来、ディスプレイ装置用カバーウィンドウとして用いられていた高価の強化ガラスを代替するための素材としてポリイミドフィルムが注目されているが、ポリイミドフィルムは、光により歪みが発生しやすいという問題がある。しかし、ディスプレイ装置の最外側に形成されるカバーウィンドウは、光により発生する現象が直接的に目に見えるため、光により歪みが発生しないようにすることが非常に重要である。そこで、光の歪みによる問題を根本的に解決できるポリイミドフィルムが必要である。
【0042】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドフィルムであり、具体的に、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、および前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含んでもよい。この際、前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが30μm~100μmであり、ASTM E111に準じたモジュラスが4.0GPa以上であり、550nmの波長における厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が600nm以下であってもよい。
【0043】
これにより、前記ポリアミドイミドフィルムは、30μm以上の厚さにおいても、優れた透明性を有し、光の歪みを低下させることができる。また、多様な角度から眺めた際に、虹色のムラが形成されるレインボームラを顕著に改善するなど、従来のポリアミドイミドフィルムに比べて優れた光学的物性を有するため、強化ガラスの代わりにディスプレイ装置用カバーウィンドウとして用いることができる。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
前記厚さ方向位相差値は、フィルムを加熱する前の常温(normal temperature)で測定してもよく、前記常温は、人為的に温度調節をしていない状態の温度であってもよい。例えば、前記常温は20℃~40℃、20℃~30℃、または23℃~26℃であってもよい。
【0049】
前記ポリアミドイミドフィルムは、前記化学式1および化学式2、そして化学式3および化学式4のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位を含むことで、リジッドな構造からなるポリアミドイミド重合体を含むポリアミドイミドフィルムに比べて光の歪み現象がさらに改善されることができる。例えば、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記二無水物から誘導された構造単位は、リジッドな構造単位を含まなくてもよい。例えば、2つの無水物基が1つの環に縮合した二無水物に由来した構造単位を含まなくてもよい。前記環は、単環または縮合環であってもよく、芳香族環、脂肪族環、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記二無水物から誘導された構造単位は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導された構造単位、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0050】
これにより、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、30μm以上の厚さにおいても、透明、かつ、低い厚さ方向位相差を実現することができ、視認性をさらに向上させることができるため、前記ポリアミドイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、ユーザの目の疲労をさらに減らすことができる。また、30μm以上の厚さにおいても、上述したように優れた光学的特性だけでなく、モジュラスなどの機械的強度をさらに向上させることができるため、動的曲げ(dynamic bending)特性がさらに向上し、繰り返し折り畳んで広げる動作を繰り返すフォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用するのに好適である。
【0051】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が4.0以下であってもよい。または、前記黄色度は、例えば、3.8以下、3.5以下、3.0以下、1.0以上4.0以下、1.0以上3.5以下、1.5以上3.5以下、2.0以上3.5以下、2.5以上3.5以下、2.8以上3.4以下、または2.5以上3.3以下であってもよいが、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0052】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、破断伸びが10%以上であってもよい。または、前記破断伸びは、例えば、11%以上、13%以上、15%以上、10%以上20%以下、10%以上17%以下、または11%以上17%であってもよいが、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0053】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、厚さが30μm~80μm、40μm~80μm、40μm~60μm、または50μm~80μmであってもよく、550nmの波長における厚さ方向位相差の絶対値は200nm~600nm、200nm~500nm、250nm~600nm、250nm~550nm、300nm~600nm、または300nm~500nmであってもよい。ただし、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。前記厚さ方向位相差値は、フィルムを加熱する前の常温(normal temperature)で測定してもよく、前記常温は、人為的に温度調節をしていない状態の温度であってもよい。例えば、前記常温は20℃~40℃、20℃~30℃、または23℃~26℃であってもよい。
【0054】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM E111に準じたモジュラスが4.0GPa以上、または4.0GPa以上5.0GPa以下、4.0GPa以上4.5GPa以下、または4.1GPa以上4.7GPa以下であってもよい。一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記モジュラスと破断伸びを同時に満たすことができ、これにより、ディスプレイ装置用カバーウィンドウに適用するのに十分な機械的物性および耐久性を提供することができる。
【0055】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、上述した範囲の厚さ方向位相差、黄色度、モジュラス、および/または破断伸びを満たすことで、光によるイメージの歪みを防止し、さらに向上した視認性を付与することができる。また、フィルムの中央部および辺部に全体的にさらに均一な機械的物性(モジュラスなど)および光学的物性(厚さ方向位相差など)を示すことができ、フィルムのロス(loss)をさらに減少させることができる。また、前記ポリアミドイミドフィルムは、柔軟で、曲げ(bending)特性に優れるため、所定の変形が繰り返し起こっても、フィルムの変形および/または損傷が発生せず、本来の形態にさらに容易に戻ることができる。また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、さらに優れた視認性を有することができ、折り畳み跡および微細クラックの発生を防止することができるため、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置にさらに優れた耐久性および長期寿命性を付与することができる。
【0056】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムに含まれる前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位の含量を100モル%とする際に、5モル%~50モル%で含まれてもよい。または、例えば、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、5モル%~40モル%、または20モル%~40モル%で含まれてもよい。ここで、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位であってもよく、前記ジアミンから誘導された構造単位は、具体的に、化学式1で表される化合物から誘導された構造単位であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムは、二酸二塩化物から誘導された構造単位をジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として前記範囲だけ含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0057】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムに含まれる前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比は95:5~50:50であってもよい。または、例えば、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよい。ここで、前記二無水物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式2で表される化合物から誘導された構造単位であってもよく、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムは、二無水物から誘導された構造単位と二酸二塩化物から誘導された構造単位を前記モル比で含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0058】
また、前記ジアミンは、必要に応じて、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどから選択される1つまたは2つ以上と混合して用いてもよく、これに制限されない。
【0059】
また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリット酸モノエステル無水物)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、NTDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0060】
また、前記二酸二塩化物は、必要に応じて、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NEC(1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0061】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、上記で例示されたジアミン、二無水物、二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂から製造されてもよく、この際、前記ポリアミドイミド樹脂は、10,000g/mol~80,000g/mol、10,000g/mol~70,000g/mol、または10,000g/mol~60,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよいが、これに限定されない。
【0062】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法を説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、i)下記化学式1で表される化合物を含むジアミンおよび溶媒を混合し、ジアミン溶液を製造するステップと、ii)前記ジアミン溶液に、下記化学式2で表される化合物を含む二無水物、および下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含む二酸二塩化物を反応させ、ポリアミドイミド前駆体を製造するステップと、iii)前記ポリアミドイミド前駆体を基板に塗布した後に熱処理するステップと、を含む方法により製造されてもよい。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記二酸二塩化物は、前記ジアミン100モル%を基準とする際に、5モル%~50モル%で用いてもよい。または、例えば、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、5モル%~40モル%、または20モル%~40モル%で用いてもよい。ここで、前記二酸二塩化物は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物であってもよく、前記ジアミンは、具体的に、化学式1で表される化合物であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムの製造方法において、二酸二塩化物を前記範囲だけ含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0068】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記二無水物と前記二酸二塩化物のモル比は95:5~50:50であってもよい。または、例えば、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよい。ここで、前記二無水物は、具体的に、化学式2で表される化合物であってもよく、前記二酸二塩化物は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムの製造方法において、二無水物と二酸二塩化物を前記モル比で含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0069】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、溶液状態の前記ポリアミドイミド前駆体は、総重量を基準として5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、または10重量%~20重量%の固形分を有してもよく、残量は、有機溶媒であってもよい。前記ポリアミドイミド前駆体は、固形分含量が前記範囲である場合にも、低い粘度を有するため、工程上の利点を提供することができる。通常、厚さ方向位相差の絶対値とモジュラスのような機械的物性は、互いにトレードオフ(trade-off)関係にあるため、これらの物性を同時に改善させることが難しかったが、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、これらの物性を同時に改善させることができる。
【0070】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記i)ステップは、有機溶媒、極性溶媒、具体的には、アミド系溶媒下で行われてもよい。前記アミド系溶媒は、アミドモイエティを含む化合物を意味し得る。前記アミド系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよく、例えば、脂肪族であってもよい。また、例えば、前記アミド系溶媒は、環式化合物または鎖式化合物であってもよく、具体的には、2~15の炭素数を有してもよく、例えば、3~10の炭素数を有してもよい。前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミドモイエティを含んでもよく、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに縮合して環を形成するか、または前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基が分子内の他の置換基と縮合して環を形成してもよく、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基がアミドモイエティのカルボニル炭素に連結されたアルキル基と縮合して環を形成してもよい。ここで、前記環は4~7員環であってもよく、例えば5~7員環であってもよく、例えば5員または6員環であってもよい。前記アルキル基は、例えばC1-10アルキル基、例えばC1-8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであってもよい。より具体的に、前記アミド系溶媒は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド重合に一般的に用いられるものであれば制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含んでもよい。
【0071】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記iii)ステップは熱硬化ステップである。具体的に、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記熱処理するステップの熱処理は、300℃~350℃、または280℃~350℃の温度で10分~60分間行ってもよい。相対的に低い温度で硬化する場合には、フィルムが熱履歴を少なく受けるため、相対的に黄色度が低くなる傾向があり得るが、ガラス転移温度(Tg)以下で硬化する場合には、分子構造のオリエンテーション(orientation)問題により厚さ方向位相差が高くなる問題が発生し得る。一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、300℃~350℃または280℃~350℃の温度で熱処理することで、高分子鎖をさらに等方性(isotropic)を有するように配列させ、厚さ方向位相差を低減させることができる。また、前記熱処理は、例えば、10分~50分、10分~40分、10分~30分、または10分~20分間行われてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。また、前記熱硬化は、例えば、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよい。
【0072】
また、前記熱処理ステップ以前に、必要に応じて、乾燥ステップをさらに行ってもよい。前記乾燥ステップは、50℃~150℃、50℃~130℃、60℃~100℃、または約80℃の温度で行われてもよいが、必ずしも前記範囲に制限されるものではない。
【0073】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布した後、常温に放置する放置ステップをさらに含んでもよい。前記放置ステップにより、フィルム表面の光学的物性をさらに安定的に維持させることができる。特定の理論に拘るものではないが、従来のポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、硬化前にこのような放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部に水分が拡散し、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドと衝突してフィルム表面から白濁が発生し、凝集現象が発生してコーティング不均一性が発生し得る。これに対し、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、空気中に長時間放置しても、白濁現象および凝集現象がなく、向上した光学的物性を有するフィルムを確保可能であるという長所を実現することができる。前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われてもよい。ここで、前記常温は40℃以下であってもよく、例えば30℃以下であってもよく、例えば25℃以下であってもよく、より具体的には15℃~25℃であってもよく、20℃~25℃であることが特に好ましい。また、前記高湿とは、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上の相対湿度であってもよい。前記放置するステップは、1分から3時間、例えば10分から2時間、例えば20分から1時間行われてもよい。
【0074】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸溶液に難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などから選択される1つまたは2つ以上の添加剤を混合してポリアミドイミドフィルムを製造してもよい。
【0075】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミドイミドフィルムを形成するための前記塗布は、当該分野で通常用いられるものであれば制限なく用いられてもよい。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)、およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順次適用可能であることはいうまでもない。
【0076】
前記基板は、当該分野で通常用いられるものであれば制限なく用いられてもよく、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロハン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを用いてもよい。
【0077】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを形成するための組成物(以下、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物と称する)は、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、
アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を含む混合溶媒と、を含み、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物であってもよい。
【0078】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、ポリアミック酸と混合溶媒の相互作用(interaction)を阻害させ、硬化時に分子間のパッキング密度を顕著に減少させることができるため、無色透明な性能が低下せず、かつ、優れた光学的物性および優れた耐熱性を同時に実現可能なポリアミドイミドフィルムを提供することができる。また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を用いることで、高含量の固形分を含んでも組成物の粘度を顕著に低くすることができるため、高固形分および低粘度で薄膜コーティング工程に適用が可能であり、目的とする物性を効果的に実現することができる。
【0079】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、下記式1を満たしてもよい。特定の理論に拘るものではないが、このような条件を満たすポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、フィルムの形成時に薄膜工程への適用が有利であり、硬化時にポリアミドイミドフィルムのパッキング密度を阻害し、無定形(amorphous)にして光学的物性が向上するものであってもよい。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
[式1]
5,000≦VPAI≦15,000
【0085】
前記式1中、
VPAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【0086】
一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度(VPAI)は5,000cp~13,000cp、6,000cp~13,000cp、15,000cp以下、13,000cp以下、11,000cp以下、または10,000cp以下であってもよい。これにより、高含量の固形分を含むポリアミドイミドフィルム形成用組成物を薄膜工程にさらに容易に適用することができ、無色透明な性能、光学的物性、および耐熱性にさらに優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。この際、前記固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドであってもよい。
【0087】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを形成するための組成物は、溶媒条件を変更することで、具体的に、ポリアミック酸(以下、ポリアミドイミド前駆体とも称する)および/またはポリアミドイミドの重合溶媒として用いることができず、ポリアミドイミドとの親和性がほぼない無極性溶媒を適用することで、光学的物性および耐熱性を同時に改善させることができる。具体的に、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドと、極性溶媒と、無極性溶媒と、を含んでもよい。前記極性溶媒は、親水性溶媒であってもよく、例えば、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドとの親和性があってもよく、例えば、アミド系溶媒であってもよい。また、前記無極性溶媒は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドとの親和性がほぼなくてもよく、例えば、炭化水素系溶媒であってもよい。
【0088】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を用いることで、重合体と重合体との間の分子間相互作用(intermolecular interaction)および/または重合体と溶媒との間の相互作用を効果的に阻害させることができ、硬化時に分子間のパッキング密度が顕著に低下して光学的物性および機械的物性が同時に向上することができる。さらに、前記混合溶媒を用いることで、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、高い固形分含量を有し、かつ、組成物の粘度を低くすることができる。そこで、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、固形分を高い含量で含み、かつ、低い粘度を有することで、溶液工程により薄膜をさらに容易に形成することができ、機械的物性および耐熱性を低下させず、かつ、黄色度に優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0089】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物において、前記アミド系溶媒は、アミドモイエティを含む化合物を意味する。前記アミド系溶媒は、環式化合物または鎖式化合物であってもよく、具体的には、鎖式化合物であってもよい。前記鎖式化合物は、具体的には、2~15の炭素数を有してもよく、より具体的には、3~10の炭素数を有してもよい。前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミドモイエティを含んでもよく、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに縮合して環を形成するか、または前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基が分子内の他の置換基と縮合して環を形成してもよく、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基がアミドモイエティのカルボニル炭素に連結されたアルキル基と縮合して環を形成してもよい。ここで、前記環は4~7員環であってもよく、例えば5~7員環であってもよく、例えば5員または6員環であってもよい。前記アルキル基は、例えばC1-10アルキル基、例えばC1-8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであってもよい。より具体的に、前記アミド系溶媒は、ポリアミック酸重合に一般的に用いられるものであれば制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含んでもよい。
【0090】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物において、前記炭化水素系溶媒は、前述したように無極性溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒は、炭素と水素とからなる化合物であってもよい。例えば、前記炭化水素系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよく、例えば、環式化合物または鎖式化合物であってもよいが、具体的には、環式化合物であってもよい。ここで、前記炭化水素溶媒が環式化合物である場合、単環または多環式環を含んでもよく、前記多環式環は、縮合環または非縮合環であってもよいが、具体的には、単環であってもよい。前記炭化水素系溶媒は、3~15の炭素数を有してもよく、例えば、6~15の炭素数を有してもよく、例えば、6~12の炭素数を有してもよい。前記炭化水素系溶媒は、置換もしくは非置換のC3-15シクロアルカン、置換もしくは非置換のC6-15芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであってもよい。ここで、前記シクロアルカンは、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、前記芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記炭化水素系溶媒は、少なくとも1つのC1-5アルキル基で置換もしくは非置換のシクロアルカン、少なくとも1つのC1-5アルキル基で置換もしくは非置換の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであってもよく、ここで、前記シクロアルカンおよび芳香族化合物は、それぞれ前述したとおりである。前記C1-5アルキル基は、例えばC1-3アルキル基、例えばC1-2アルキル基であってもよく、より具体的にはメチル基であってもよいが、これに限定されない。また、前記炭化水素系溶媒は、必要に応じて、酸素をさらに含んでもよい。例えば、前記炭化水素系溶媒が酸素を含む場合、ケトン基やヒドロキシ基を含んでもよく、例えば、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されない。
【0091】
より具体的に、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、ジメチルプロピオンアミドを含むアミド系溶媒と、トルエン、ベンゼン、およびシクロヘキサンなどから選択される炭化水素系溶媒と、を含む混合溶媒を含んでもよい。
一実施形態において、前記炭化水素系溶媒は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド重合後に追加されてもよい。
【0092】
これにより、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、単にポリアミック酸の重合ステップにおいて混合溶液を添加することとは異なる分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミック酸を重合するステップにおいて、前記炭化水素系溶媒を混合する場合、重合を妨害する要因として作用し、高分子量のポリアミック酸を得ることができないことがある。これに対し、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物においては、十分な高分子量のポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを得た後に、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割をすることができ、その後の硬化時に目的とする光学的物性を得ることができる。ここで、前記アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を順次用いることで、ポリアミドイミド前駆体であるポリアミック酸と溶媒の相互作用をさらに適切な範囲に調節することができる。ここで、前記調節は、阻害を意味し得る。
【0093】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含んでもよく、具体的に、7.5:2.5~5:5の重量比、または7.5:2.5~5.5:4.5の重量比で含んでもよい。アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を前記重量比で含むことで、さらに優れた光学的物性を実現するとともに、優れたジアミンと二無水物の反応性を維持することができ、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の硬化時に分子間のパッキング密度を適切に阻害し、無定形(amorphous)にすることができる。これにより、耐熱性および機械的物性を低下させず、かつ、黄色度がさらに改善されたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0094】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物に含まれる前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位の含量を100モル%とする際に、5モル%~50モル%で含まれてもよい。または、例えば、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、5モル%~40モル%、または20モル%~40モル%で含まれてもよい。ここで、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位であってもよく、前記ジアミンから誘導された構造単位は、具体的に、化学式1で表される化合物から誘導された構造単位であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、二酸二塩化物から誘導された構造単位をジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として前記範囲だけ含むことで、それを用いて、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有し、高いモジュラスなどの優れた機械的物性を有するポリアミドイミドフィルムを製造することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0095】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物に含まれる前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比は95:5~50:50であってもよい。または、例えば、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよい。ここで、前記二無水物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式2で表される化合物から誘導された構造単位であってもよく、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、二無水物から誘導された構造単位と二酸二塩化物から誘導された構造単位を前記モル比で含むことで、それを用いて、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有し、高いモジュラスなどの優れた機械的物性を有するポリアミドイミドフィルムを製造することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0096】
また、前記ジアミンは、必要に応じて、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどから選択される1つまたは2つ以上と混合して用いてもよく、これに制限されない。
【0097】
また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリット酸モノエステル無水物)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、NTDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0098】
また、前記二酸二塩化物は、必要に応じて、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NEC(1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0099】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、上記で例示されたジアミン、二無水物、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを含む。前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、10,000g/mol以上、具体的には20,000g/mol以上であってもよく、より具体的には25,000g/mol~80,000g/molであってもよい。上述した範囲の重量平均分子量を有することで、光学的物性および機械的強度にさらに優れ、カールの発生がさらに少ないフィルムを提供することができる。
【0100】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の固形分含量は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量を基準として40重量%以下、10重量%~40重量%、35重量%以下、30重量%以下、10重量%~25重量%、または15重量%~25重量%の範囲を満たしてもよい。ここで、固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドであってもよい。
【0101】
通常、ポリアミドイミドの場合、固形分の濃度が高くなるほど、粘度も高くなる傾向があり、例えば、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドが通常のアミド系溶媒単独に溶解される場合、溶液の粘度は、約15,000cp以上と高い。ここで、前記溶液の粘度は、溶液の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときの粘度を意味する。薄膜を溶液工程、例えば、コーティング工程により製造する際に、粘度が高いため高分子の流れが良くないと、気泡の除去が難しく、コーティング時にムラが発生し得る。これに対し、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を用いることで、17重量%以上の高含量の固形分を含んでも、組成物の粘度を顕著に低くすることができる。これにより、溶液工程、例えば、コーティング工程時に発生する不良を効果的に防止することができるため、さらに向上した光学的物性を実現することができる。それのみならず、コーティング工程時に発生する不良なしに高い固形分含量を有するため、商業的にも有利である。
【0102】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法を説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒下で、下記化学式1で表される化合物を含むジアミン、下記化学式2で表される化合物を含む二無水物、および下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含む二酸二塩化物を反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップ(ステップi)と、
下記式1を満たすように炭化水素系溶媒を投入して粘度を調節するステップ(ステップii)と、を含む方法により製造されてもよい。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
[式1]
5,000≦VPAI≦15,000
【0108】
前記式1中、
VPAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が17重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【0109】
一実施形態に係る前記ステップiは、ジアミン、二無水物、二酸二塩化物を混合してポリアミック酸を重合するステップであり、アミド系溶媒下でジアミンを溶解するステップ、二酸二塩化物を添加して溶解するステップ、二無水物を添加して溶解するステップ、および前記反応溶液を5時間~7時間撹拌して反応させるステップを含んでもよい。
【0110】
一実施形態に係る前記ステップiiは、上述した炭化水素溶媒を追加投入して撹拌させた後、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を追加投入するステップであってもよく、これにより、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度範囲が前記式1を満たしてもよい。具体的に、常温(25℃)で、前記ステップiのアミド系溶媒の重量に対して25重量%~100重量%、または25重量%~50重量%の炭化水素系溶媒を追加投入して15時間~20時間撹拌する撹拌ステップと、撹拌が完了した後、前記式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を添加するステップと、を含む。特定の理論に拘るものではないが、このような条件を満たすポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、硬化時にポリアミドイミドフィルムのパッキング密度を阻害し、無定形(amorphous)にすることができる。これにより、機械的物性および耐熱性を低下させず、かつ、黄色度がさらに改善されたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0111】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、単にポリアミック酸の重合ステップにおいて混合溶液を添加することとは異なる分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミック酸を重合するステップにおいて、前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を妨害する要因として作用し、高分子量のポリアミック酸を得ることができないことがある。これに対し、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物においては、十分な高分子量のポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを得た後に、炭化水素系溶媒が混合されることで、高分子量のポリアミック酸を得ることができる。また、前記炭化水素系溶媒が重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割をすることができ、その後の硬化時に目的とする光学的物性を得ることができる。
【0112】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、前記二酸二塩化物は、前記ジアミン100モル%を基準とする際に、5モル%~50モル%で用いてもよい。または、例えば、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、5モル%~40モル%、または20モル%~40モル%で用いてもよい。ここで、前記二酸二塩化物は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物であってもよく、前記ジアミンは、具体的に、化学式1で表される化合物であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、二酸二塩化物を前記範囲だけ含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有するポリアミドイミドフィルムを製造するための組成物を製造することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0113】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、前記二無水物と前記二酸二塩化物のモル比は95:5~50:50であってもよい。または、例えば、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよい。ここで、前記二無水物は、具体的に、化学式2で表される化合物であってもよく、前記二酸二塩化物は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つの化合物であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、二無水物と二酸二塩化物を前記モル比で含むことで、さらに透明、かつ、低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラスなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0114】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を硬化して得たものであってもよい。
【0115】
前記ポリアミドイミドフィルムは、前記化学式1および化学式2、そして化学式3および化学式4のうちいずれか1つの化合物から誘導された構造単位を含むことで、リジッドな構造からなるポリアミドイミド重合体を含むポリアミドイミドフィルムに比べて光の歪み現象がさらに改善されることができる。例えば、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記二無水物から誘導された構造単位は、リジッドな構造単位を含まなくてもよい。例えば、2つの無水物基が1つの環に縮合した二無水物に由来した構造単位を含まなくてもよい。前記環は、単環または縮合環であってもよく、芳香族環、脂肪族環、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記二無水物から誘導された構造単位は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導された構造単位、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0116】
これにより、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、30μm以上の厚さにおいても、透明、かつ、低い厚さ方向位相差を実現することができ、視認性をさらに向上させることができるため、前記ポリアミドイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、ユーザの目の疲労をさらに減らすことができる。また、30μm以上の厚さにおいても、上述したように優れた光学的特性だけでなく、モジュラスなどの機械的強度をさらに向上させることができるため、動的曲げ(dynamic bending)特性がさらに向上し、繰り返し折り畳んで広げる動作を繰り返すフォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用するのに好適である。
【0117】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの用途を説明する。
一実施形態による一態様は、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含む多層構造体であってもよい。例えば、前記ポリアミドイミドフィルムと、前記ポリアミドイミドフィルム上に位置するコーティング層と、を含むディスプレイ装置用カバーウィンドウであってもよい。また、前記多層構造体は、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムと互いに異なる組成の単量体を含むポリアミドイミドフィルムと、2層以上のコーティング層と、を含んでもよい。
【0118】
この際、前記コーティング層の非限定的な例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。この際、前記コーティング層の厚さは1μm~500μm、2μm~450μm、または2μm~200μmであってもよいが、これに限定されない。
【0119】
また、一実施形態に係る前記多層構造体は、基板上に形成された一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムおよび半導体層を含んでもよい。前記半導体層の非限定的な一例としては、低温ポリシリコン(LTPS)、低温多結晶酸化物(LTPO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、およびインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などが挙げられ、例えば、LTPSおよび/またはLTPOを含んでもよい。LTPS(low temperature polysilicon)および/またはLTPO(low temperature polycrystalline oxide)を用いるディスプレイ装置の場合、工程温度が350℃以上500℃以下に近接したりもする。このような高温工程においては、耐熱性に優れたポリアミドイミドであるとしても、加水分解による熱分解が起こりやすい。したがって、LTPSおよび/またはLTPO用フレキシブルデバイスを製造するためには、高温工程においても加水分解による熱分解が起こらない優れた耐熱性を有する素材が求められる。一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、優れた光学的特性および耐熱性を同時に有することで、LTPSおよび/またはLTPO用ディスプレイ装置に活用することができる。
【0120】
他の一態様は、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置であってもよい。
前述したように、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、優れた光学的物性および機械的物性を有し、具体的には、多様な角度からも十分な位相差を示すことができるため、広い視野角の確保が求められる多様な産業分野にその応用が可能である。
【0121】
一例として、ディスプレイ装置は、優れた光学的物性が求められる分野であれば特に制限されず、それに合うディスプレイパネルを選択して提供することができる。具体的には、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能であり、その非限定的な一例としては、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置などが挙げられるが、これに制限されない。
【0122】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、特に虹色のムラが発生するレインボー現象が顕著に改善され、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなるにつれ、側面から画面を見る場合が多くなるが、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリアミドイミドフィルムをディスプレイ装置に適用する場合、側面から見ても視認性に優れるため、大型ディスプレイ装置に有用に適用することができる。
【0123】
以下、実施例および実験例を下記に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は、一実施形態を例示するものにすぎないため、一実施形態がこれに限定されるものではない。
【0124】
下記において、物性は次のように測定した。
<測定方法>
1.粘度(VPAI)
粘度は、Plate rheometer(Brookfield社、LVDV-III Ultra)により、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物(固形分の濃度:17重量%)0.5μLを容器に入れ、スピンドルを下げ、rpmを調節してトルクが80%となる時点で2分間待機した後、トルクの変化がないときの粘度値を測定した。この際、前記粘度は、52Zスピンドルを用いて、25℃の温度条件で測定した。単位はcpである。
【0125】
2.黄色度(Yellow Index、YI)
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0126】
3.位相差(Rth)
AxoScan(OPMF、Axometrics Inc.)を用いて測定した。550nmの波長に対して厚さ方向位相差(Rth)を測定し、550nmの波長における厚さ方向位相差を絶対値で示した。単位はnmである。
【0127】
4.モジュラスおよび破断伸び
ASTM E111に準じて、厚さ50μm、長さ50mm、および幅10mmの試験片を25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて測定した。モジュラスの単位はGpaであり、破断伸びの単位は%である。
【0128】
<実施例1>ポリアミドイミドフィルムの製造
窒素雰囲気下で、反応器にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-benzidine、TFMB)を入れ、十分に撹拌させた後、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride、TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥した後、再び窒素雰囲気下で、反応器にDMPAとともに入れて溶解させた後、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)を入れ、12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体TFMB:BPAF:TPCのモル比が100:90:10となるようにし、固形分含量が15重量%となるように調節し、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。
【0129】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物をメイヤーバーで塗布し、窒素雰囲気下で、80℃で15分間乾燥させた後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0130】
<実施例2および実施例3>ポリアミドイミドフィルムの製造
TFMB、BPAF、およびTPCのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの実施例2および実施例3のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0131】
<実施例4および実施例5>ポリアミドイミドフィルムの製造
実施例1において、TPCの代わりに塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride、IPC)を用い、TFMB、BPAF、およびIPCのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの実施例4および実施例5のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0132】
<実施例6>ポリアミドイミドフィルムの製造
実施例1において、熱処理温度を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの実施例6のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0133】
<参照例1および参照例2>ポリアミドイミドフィルムの製造
TFMB、BPAF、およびTPCのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの参照例1および参照例2のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0134】
<参照例3および参照例4>ポリアミドイミドフィルムの製造
TFMB、BPAF、およびTPCのモル比を下記表1のように変更し、熱処理温度を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの参照例3および参照例4のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0135】
<比較例1>ポリアミドイミドフィルムの製造
実施例1において、BPAFの代わりに2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2’-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)を用い、TFMB、6FDA、およびTPCのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの比較例1のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0136】
<比較例2>ポリアミドイミドフィルムの製造
実施例1において、TPCの代わりに2,5-フランジカルボニルジクロライド(2,5-Furandicarbonyl dichloride、FDCACl)を用い、TFMB、BPAF、およびFDCAClのモル比を下記表1のように用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの比較例2のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0137】
【0138】
<実施例7>
ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素雰囲気下で、反応器にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-benzidine、TFMB)を入れ、十分に撹拌させた後、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride、TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥した後、再び窒素雰囲気下で、反応器にDMPAとともに入れて溶解させた後、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)を入れ、12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体TFMB:BPAF:TPCのモル比が100:90:10となるようにした。
【0139】
6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)を投入し、18時間撹拌した。その後、組成物の総重量を基準として固形分含量が17重量%となり、組成物中のトルエン含有量がDMPA:トルエン=70重量%:30重量%となるようにDMPAとトルエンの混合溶媒を添加し、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。
【0140】
ポリアミドイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物をメイヤーバーで塗布し、窒素雰囲気下で、80℃で15分間乾燥させた後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、実施例7による厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0141】
<実施例8および実施例9>
TFMB、BPAF、およびTPCのモル比を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で実施例8および実施例9のポリアミドイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの実施例8および実施例9のポリアミドイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0142】
<実施例10および実施例11>
実施例7において、TPCの代わりに塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride、IPC)を用い、TFMB、BPAF、およびIPCのモル比およびトルエンの含量を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で実施例10および実施例11のポリアミドイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの実施例10および実施例11のポリアミドイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0143】
<実施例12>
トルエンの含量を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で実施例12のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、熱処理温度を下記表2のように変更したことで除いては、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの実施例12のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0144】
<参照例5~参照例7>
TFMB、BPAF、およびTPCのモル比およびトルエンの含量を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で参照例5~参照例7のポリアミドイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの参照例5~参照例7のポリアミドイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0145】
【0146】
<実験例>光学的物性および機械的物性の評価
前記実施例、参照例、および比較例によるポリアミドイミドフィルムの粘度、黄色度(YI)、厚さ方向位相差(Rth)、モジュラス、および破断伸びを前記測定方法により測定し、下記表3および表4に示した。
【0147】
【0148】
【0149】
前記表3および表4から確認できるように、実施例によるポリアミドイミドフィルムは、可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差を有することで、反射外観を画期的に改善させることができ、高強度特性とともに高い破断伸びを有することで、ディスプレイ装置に適用するのに好適であり、例えば、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置などのカバーウィンドウに適用するのに有用である。
【0150】
これに対し、二無水物としてBPAFを含まない代わりに6FDAを含む比較例1は、比較的に低い黄色度を示したが、厚さ方向位相差が620nmであって、実施例のフィルムに比べて顕著に高く、モジュラス値が低かった。また、二酸二塩化物としてTPCまたはIPCの代わりにFDCAClを含む比較例2は、黄色度が8.8と非常に高いだけでなく、破断伸びも低いため優れた機械的物性を確保することができなかった。
【0151】
さらに、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を用いてポリアミドイミドフィルムを製造する場合にも、低い厚さ方向位相差および高いモジュラスを実現することができ、特に単一溶媒を用いてフィルムを製造した場合に比べて黄色度がさらに低く実現されることを確認することができた。
【0152】
以上、限定された実施例により一実施形態を説明したが、これは一実施形態のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、一実施形態は上記の実施例に限定されない。本明細書に開示された技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0153】
したがって、本開示の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本開示の思想の範囲に属するといえる。