(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033214
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物、それにより得られるハードコーティング層、およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 183/06 20060101AFI20230302BHJP
C08G 59/30 20060101ALI20230302BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20230302BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20230302BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230302BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230302BHJP
【FI】
C09D183/06
C08G59/30
C08G59/32
C08G59/68
C09D7/63
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133852
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0112352
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】コ コン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】コ ビュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ア ラン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100JK12A
4F100JK12C
4F100JK17
4F100YY00A
4F100YY00C
4J036AJ09
4J036AK17
4J036CD16
4J036FA05
4J036FA06
4J036GA04
4J036GA23
4J036HA02
4J036HA12
4J036JA01
4J036JA08
4J036KA01
4J036KA03
4J038DL051
4J038GA07
4J038JA69
4J038JC01
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA11
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高硬度および優れた柔軟性を同時に満たすハードコーティング層を形成することができるフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物、それにより得られるハードコーティング層、およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムを提供する。
【解決手段】下記(式1)で表される単位を含むエポキシポリシロキサン樹脂を含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物である。(式1)
(RaSiO3/2)p(RbSiO3/2)q(Rc
2SiO)r(Rd
3SiO1/2)s
式中、Raは、脂環式エポキシ基、または脂環式エポキシ基が置換されたアルキル基であり、Rbは、グリシジル基等から選択されるいずれか1つの基等であり、RcおよびRdは、それぞれ独立して、脂環式エポキシ基等から選択されるいずれか1つの基等であり、0.9≦p+q<1、0<r≦0.1、0≦s≦0.05である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される単位を含むエポキシポリシロキサン樹脂を含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物であって、
[化学式1]
(RaSiO3/2)p(RbSiO3/2)q(Rc
2SiO)r(Rd
3SiO1/2)s
前記化学式1中、Raは、脂環式エポキシ基、または脂環式エポキシ基が置換されたアルキル基であり、Rbは、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、RcおよびRdは、それぞれ独立して、脂環式エポキシ基、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、
前記置換されたアルキル基は、アミノ基、ハロゲン、メルカプト基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、ヒドロキシ基、ウレタン基、およびオキセタン基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせである官能基を有してもよく、
0.9≦p+q<1、
0<r≦0.1、
0≦s≦0.05である、フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項2】
前記化学式1は、pが0.5以上1未満であり、qが0超過0.49以下である、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項3】
0.95≦p+q<1、
0<r≦0.05を満たす、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項4】
前記エポキシポリシロキサン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2,000~40,000g/molである、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項5】
前記ハードコーティング組成物は、脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物をさらに含む、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化合物は、エポキシ当量が150g/eq以下である、請求項5に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項7】
前記エポキシ化合物が下記化学式2または化学式3で表される化合物であるフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物であって、
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
【化2】
前記化学式2および3中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは、直接結合;カルボニル基;カーボネート基;エーテル基;チオエーテル基;エステル基;アリーレン基;アミド基;炭素数1~18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、アルキリデン基、またはアルコキシレン基;炭素数3~6のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基;またはこれらの中から選択される2つ以上が互いに連結された基;である、請求項5に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項8】
前記エポキシ化合物は、エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して1~60重量部で含まれる、請求項5に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項9】
前記ハードコーティング組成物が光開始剤および下記化学式6で表される化合物を含む熱開始剤をさらに含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物であって、
[化学式6]
【化3】
前記化学式6中、R
3は、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、R
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~4であり、R
5は、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、R
6は、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF
6、PF
6、AsF
6、BF
4、CF
3SO
3、N(CF
3SO
2)
2、またはN(C
6F
5)
4である、請求項5に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項10】
前記ハードコーティング組成物は、無機ナノ粒子および表面処理された無機ナノ粒子の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物である無機粒子をさらに含む、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項11】
前記無機粒子は、平均粒径が100nm以下である、請求項10に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項12】
前記無機粒子は、シリカおよびアルミナの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物である、請求項10に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項13】
前記無機粒子は、エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.01~10重量部で含まれる、請求項10に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物。
【請求項14】
鉛筆硬度が4H以上であり、押し込み硬さが60hv以上であり、弾性回復率が80%以上であり、IEC 62715-6-1に基づく耐屈曲性試験に従い、フォールディング半径3.5R以下において、60cycles/minの速度で20万回繰り返しフォールディングする際にクラックが発生しない、フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層。
【請求項15】
前記ハードコーティング層は、請求項1に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物から形成されるものである、請求項14に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層。
【請求項16】
前記ハードコーティング層は、前記フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物が光硬化および熱硬化したものである、請求項15に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層。
【請求項17】
基材と、
前記基材の一面または両面に形成された、請求項14に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層と、
を含む、フレキシブルウィンドウカバーフィルム。
【請求項18】
請求項17に記載のフレキシブルウィンドウカバーフィルムを含む、フレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物、それにより得られるハードコーティング層、およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(liquid crystal display)または有機発光表示装置(organic light emitting diode display)などの平板表示装置を用いた薄型表示装置が大きな注目を浴びている。特に、これらの薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット(tablet)PCだけでなく、各種ウェアラブル機器(wearable device)に至るまで、携帯性を特徴とする各種スマート機器(smart device)に広く用いられている。
【0003】
このような携帯可能なタッチスクリーンパネルベースの表示装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するためにディスプレイパネル上にディスプレイ保護用ウィンドウカバーを備えており、大半の場合、ディスプレイ用強化ガラスをウィンドウカバーとして用いている。
【0004】
しかしながら、強化ガラスは、重さが重いため携帯機器の軽量化に適していない短所を有しているだけでなく、外部衝撃に脆弱であるため容易に割れない性質(unbreakable)を実現し難く、一定レベル以上曲がらないため曲げたり(bendable)折り畳んだりできる(foldable)機能を有するフレキシブル(flexible)ディスプレイ素材として適していない。
【0005】
近年、柔軟性および耐衝撃性を確保するとともに、強化ガラスに相応する強度または耐スクラッチ性を有する光学用プラスチックカバーに対する検討が多様に行われている。しかし、高分子プラスチック基材の場合、ディスプレイ保護用ウィンドウカバーとして用いられる強化ガラスに比べて、硬度および耐スクラッチ性の面で足りない物性を示すだけでなく、耐衝撃性も充分ではない。このため、これらのプラスチック基材に複合樹脂組成物をコーティングすることで耐久性を補完しようとする多様な試みが行われている。
【0006】
特に、近年、前記高分子プラスチック基材の耐久性を補完するために、その上部に高分子量のシロキサン樹脂を適用した高硬度(high hardness)のハードコーティング層が形成されたウィンドウカバーフィルムが多数公知となっているが、この場合、フィルムの柔軟性が大幅に低下するため、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適していないという問題がある。
【0007】
そこで、鉛筆硬度、押し込み硬さ、および弾性回復率などの表面特性が向上することができ、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの物性に優れた特性を維持できるとともに、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適するように優れた柔軟性が実現される、新しいハードコーティング層およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムの開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、高硬度および優れた柔軟性を同時に満たすハードコーティング層を形成することができるフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物を提供しようとする。
【0009】
他の一実施形態は、前記フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物から形成され、鉛筆硬度、押し込み硬さ、弾性回復率、および耐屈曲性などの物性に同時に優れたフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層を提供しようとする。
【0010】
また他の一実施形態は、前記ハードコーティング層を含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムを提供しようとする。
さらに他の一実施形態は、前記フレキシブルウィンドウカバーフィルムを用いたフレキシブルディスプレイパネルを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、一実施形態は、下記化学式1で表される単位を含むエポキシポリシロキサン樹脂を含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物であって、
[化学式1]
(RaSiO3/2)p(RbSiO3/2)q(Rc
2SiO)r(Rd
3SiO1/2)s
前記化学式1中、Raは、脂環式エポキシ基、または脂環式エポキシ基が置換されたアルキル基であり、Rbは、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、RcおよびRdは、それぞれ独立して、脂環式エポキシ基、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、
前記置換されたアルキル基は、アミノ基、ハロゲン、メルカプト基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、ヒドロキシ基、ウレタン基、およびオキセタン基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせである官能基を有してもよく、
0.9≦p+q<1、
0<r≦0.1、
0≦s≦0.05である、フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物を提供することができる。
【0012】
一実施形態において、前記化学式1は、pが0.5以上1未満であり、qが0超過0.49以下であってもよい。
一実施形態において、前記化学式1で表される単位を含むエポキシポリシロキサン樹脂は、0.95≦p+q<1、0<r≦0.05を満たしてもよい。
一実施形態において、前記エポキシポリシロキサン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2,000~40,000g/molであってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物をさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記エポキシ化合物は、エポキシ当量が150g/eq以下であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記エポキシ化合物は、下記化学式2または化学式3で表される化合物であってもよい。
【0015】
【0016】
【0017】
この際、前記化学式2および3中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Xは、直接結合;カルボニル基;カーボネート基;エーテル基;チオエーテル基;エステル基;アリーレン基;アミド基;炭素数1~18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、アルキリデン基、またはアルコキシレン基;炭素数3~6のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基;またはこれらの中から選択される2つ以上が互いに連結された基;であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記エポキシ化合物は、エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して1~60重量部で含まれてもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、光開始剤および下記化学式6で表される化合物を含む熱開始剤をさらに含んでもよい。
【0019】
【0020】
前記化学式6中、R3は、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~4であり、R5は、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、R6は、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF6、PF6、AsF6、BF4、CF3SO3、N(CF3SO2)2、またはN(C6F5)4であってもよい。
【0021】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、無機ナノ粒子および表面処理された無機ナノ粒子の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物である無機粒子をさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記無機粒子は、平均粒径が100nm以下であってもよい。
【0022】
一実施形態において、前記無機粒子は、シリカおよびアルミナの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物であってもよい。
一実施形態において、前記無機粒子は、エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.01~10重量部で含まれてもよい。
【0023】
他の一実施形態は、鉛筆硬度が4H以上であり、押し込み硬さが60hv以上であり、弾性回復率が80%以上であり、IEC 62715-6-1に基づく耐屈曲性試験に従い、フォールディング半径3.5R以下において、60cycles/minの速度で20万回繰り返しフォールディングする際にクラックが発生しない、フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層を提供することができる。
【0024】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物から形成されるものであってもよい。
【0025】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、前記フレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物が光硬化および熱硬化したものであってもよい。
【0026】
また他の一実施形態は、基材と、前記基材の一面または両面に形成された上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層と、を含む、フレキシブルウィンドウカバーフィルムを提供することができる。
【0027】
さらに他の一実施形態は、上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルムを含む、フレキシブルディスプレイパネルを提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
一実施形態に係るフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物から形成されるハードコーティング層は、高硬度の優れた表面特性を有するとともに、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適するように優れた柔軟性を維持することができる。
【0029】
また、一実施形態に係るハードコーティング層は、顕著に向上した鉛筆硬度、押し込み硬さ、弾性回復率、および耐屈曲性などの優れた物性を同時に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、一実施形態に係るフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物、それにより得られるハードコーティング層、およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムについて詳しく説明する。
【0031】
この際、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、当該技術分野に属する当業者の1人により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本実施形態の説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本実施形態を制限しようとするものではない。また、明細書において、特に記載していない添加物の単位は重量%であってもよい。
【0032】
また、明細書および添付された請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本実施形態を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0033】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0034】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0035】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、同種重合体および共重合体を含んでもよい。前記オリゴマーは、繰り返し単位が2~20以下の場合を意味し得、前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、用語「フレキシブル(flexible)」は、曲がったり、撓んだり、折り畳まれたりすることを意味し得る。
【0037】
外部衝撃からフレキシブルディスプレイパネルを保護するために、硬度、耐摩耗性、および耐スクラッチ性などの表面特性に優れたハードコーティング層が含まれたウィンドウカバーフィルムが求められている。
【0038】
表面特性を向上させるために、従来のハードコーティング層として高分子量のシロキサン樹脂を適用した技術が開発されたが、柔軟性が大幅に低下するため、フレキシブルディスプレイパネルを保護するための用途としては適していないという問題を有していた。
【0039】
高分子量のシロキサン樹脂を用いて、硬度、耐摩耗性、および耐スクラッチ性などの優れた表面特性が維持されながらも、それとトレード-オフ(trade-off)関係にある柔軟性にも優れ、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適した新しいハードコーティング層、およびこのような特性を付与できるハードコーティング組成物の開発が求められている。
【0040】
一実施形態に係るフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物(以下、「ハードコーティング組成物」(Hard coating composition)と称する。)は、下記化学式1で表される単位を含むエポキシポリシロキサン樹脂を含むフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物であって、
[化学式1]
(RaSiO3/2)p(RbSiO3/2)q(Rc
2SiO)r(Rd
3SiO1/2)s
前記化学式1中、Raは、脂環式エポキシ基、または脂環式エポキシ基が置換されたアルキル基であり、Rbは、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、RcおよびRdは、それぞれ独立して、脂環式エポキシ基、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つの基、または前記基(Functional Group)の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたアルキル基であり、
前記置換されたアルキル基は、アミノ基、ハロゲン、メルカプト基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、ヒドロキシ基、ウレタン基、およびオキセタン基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせをさらに含んでもよく、
0.9≦p+q<1、
0<r≦0.1、
0≦s≦0.05を満たしてもよい。
【0041】
一実施形態に係るハードコーティング組成物から形成されるハードコーティング層は、高分子量のエポキシポリシロキサン樹脂を含んで硬化したものであり、優れた硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの向上した表面特性を実現できるだけでなく、それとともに、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適するように優れた柔軟性を有することができる。
【0042】
より具体的に、一実施形態において、前記化学式1のRaは、脂環式エポキシ基、または脂環式エポキシ基が置換されたC1~C20のアルキル基であってもよく、さらに具体的には、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基などであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
また、Rbは、グリシジル基、またはグリシジル基が置換されたC1~C20のアルキル基であってもよく、より具体的には、グリシジルオキシプロピル基などであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
また、RcおよびRdは、それぞれ独立して、脂環式エポキシ基、グリシジル基、C1~C20のアルキル基、C2~C20のアルケニル基、C2~C20のアルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびC6~C20のアリール基の中から選択されるいずれか1つの基(Functional Group)、または前記基(Functional Group)の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基が置換されたC1~C20のアルキル基であってもよく、前記置換されたアルキル基は、アミノ基、ハロゲン、メルカプト基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、ヒドロキシ基、ウレタン基、およびオキセタン基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせである官能基を有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。具体的に、RcおよびRdは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、またはグリシジルオキシプロピル基などであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
具体的に、一実施形態において、前記化学式1のpおよびqの和は0.95≦p+q<1を満たしてもよく、rは0<r≦0.05を満たしてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲を満たす場合、硬度がさらに向上し、耐屈曲性にもさらに優れ、柔軟性がさらに向上したハードコーティング層を実現することができる。
【0046】
一実施形態において、前記化学式1のpが0.5以上1未満であり、qが0超過0.49以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。具体的には、pが0.5~0.98であり、qが0.01~0.49であってもよく、より具体的には、pが0.8~0.98であり、qが0.01~0.19であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
前記化学式1のpおよびqが前記範囲を満たす場合、脂環式エポキシ基の含量がさらに高くなるにつれ、ハードコーティング組成物の加工性がさらに向上し、硬化反応時の酸素感受性をさらに低くすることができる。また、それにより形成されるハードコーティング層は、より緻密な架橋により、さらに高い鉛筆硬度、押し込み硬さ、および弾性回復率などの優れた表面特性を実現し、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などが大幅に向上できるだけでなく、耐屈曲性がさらに向上し、柔軟性にさらに優れることができる。
【0048】
一実施形態において、前記エポキシポリシロキサン樹脂は、脂環式エポキシ基を有するトリアルコキシシラン化合物;グリシジル基を有するトリアルコキシシラン化合物;脂環式エポキシ基、グリシジル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、およびアリール基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の基を有するジアルコキシシラン化合物を含むシロキサン化合物を水と触媒の存在下で加水分解反応および縮合反応して製造されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
この際、前記触媒は、例えば、塩酸、酢酸、フッ化水素、硝酸、硫酸、クロロスルホン酸、ヨウ素酸、ピロリン酸などの酸触媒;アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、イミダゾールなどの塩基触媒;イオン交換樹脂が挙げられ、また、これらの組み合わせからなる群から選択されて用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0050】
上記の加水分解反応および縮合反応は、常温で12時間~7日程度撹拌により行われてもよく、より具体的に、前記反応を促進するためには、常温で2時間~72時間撹拌により行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0051】
一実施形態において、前記エポキシポリシロキサン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2,000~40,000g/mol、具体的には6,000~40,000g/mol、より具体的には10,000~40,000g/molであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。エポキシポリシロキサン樹脂の分子量が前記範囲を満たす場合、それを含むハードコーティング組成物から形成されるハードコーティング層は、高硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの表面特性がさらに向上することができる
【0052】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物をさらに含んでもよい。
具体的な一実施形態において、前記エポキシ化合物は、エポキシ当量が150g/eq以下、具体的には135g/eq以下であってもよい。例えば、前記エポキシ化合物は、エポキシ当量が70~150g/eq、具体的には70~135g/eqであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
前記エポキシ当量範囲を満たすエポキシ化合物が上述したエポキシポリシロキサン樹脂と配合される場合、エポキシ化合物の脂環式エポキシ基とポリシロキサン樹脂との間の反応速度がさらに向上することができ、硬化率がさらに増加し、押し込み硬さをさらに向上させることができ、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などをさらに向上させるとともに、耐屈曲性などがさらに向上し、柔軟性にさらに優れたハードコーティング層を実現することができる。
【0054】
具体的に、一実施形態において、前記エポキシ化合物は、2以上の脂環式エポキシ基を有してもよく、より具体的に、前記エポキシ化合物は、下記化学式2または化学式3で表される化合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0055】
【0056】
【0057】
この際、前記化学式2および化学式3中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であってもよく、Xは、直接結合;カルボニル基;カーボネート基;エーテル基;チオエーテル基;エステル基;アリーレン基;アミド基;炭素数1~18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、アルキリデン基、またはアルコキシレン基;炭素数3~6のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基;またはこれらの中から選択される2つ以上が互いに連結された基であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0058】
この際、「直接結合」とは、他の官能基なしに直接連結された構造を意味し得る。例えば、前記化学式2においては、2つのシクロヘキサンが直接連結されたものを意味し得、これは下記化学式4のように表すことができる。また、前記化学式3においては、シクロヘキサンおよびシクロペンタンが直接連結されたものを意味し得、これは下記化学式5のように表すことができる。
【0059】
【0060】
【0061】
また、前記「これらの中から選択される2つ以上が互いに連結された基」とは、前述した置換基が2個以上互いに連結されたものを意味し得る。その一例としては、エーテル基とアルキレン基が互いに連結されたエーテル基により連結されたアルキレン基などが挙げられる。
【0062】
一実施形態において、前記エポキシ化合物の含量は、前記エポキシシロキサン樹脂100重量部に対して1~60重量部、より具体的には1~40重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。上記の範囲にて、ハードコーティング組成物の塗布性および硬化率がさらに向上することができ、それにより形成されるハードコーティング層の硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの表面特性と柔軟性がさらに向上することができる。
【0063】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、熱開始剤および光開始剤をさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記熱開始剤および光開始剤は、下記化学式6のものが例に挙げられる。
【0064】
【0065】
前記化学式6中、R3は、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~4であり、R5は、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、R6は、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF6、PF6、AsF6、BF4、CF3SO3、N(CF3SO2)2、またはN(C6F5)4であってもよい。
【0066】
前記アルコキシカルボニル基は、アルコキシ部分の炭素数が1~4であるものであり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、およびプロポキシカルボニル基などであってもよい。
前記アルキルカルボニル基は、アルキル部分の炭素数が1~4であるものであり、例えば、アセチル基およびプロピオニル基などであってもよい。
【0067】
前記アリールカルボニル基は、アリール部分の炭素数が6~14であるものであり、例えば、ベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基、および2-ナフチルカルボニル基などであってもよい。
前記アラルキル基は、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-ナフチルメチル基、および2-ナフチルメチル基などであってもよい。
【0068】
前記化学式6の化合物を熱開始剤として用いることで、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においても迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理をする場合に発生する損傷および変形を防止することができる。また、前記熱開始剤は、ハードコーティング組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシポリシロキサン樹脂の架橋反応をさらに促進することができる。
【0069】
一実施形態において、前記熱開始剤は、前記エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.05~20重量部、より具体的には0.1~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。熱開始剤の含量が前記範囲内である場合、熱硬化反応がさらに有効な速度で行われることができ、ハードコーティング層組成物の他の成分の含量が減少してハードコーティング層の機械的物性(例えば、硬度、柔軟性など)が低下するのをさらに防止することができるが、含量範囲が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0070】
一実施形態において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシポリシロキサン樹脂およびエポキシ系モノマーを含むハードコーティング組成物の硬化反応を開始することができる。
【0071】
前記光カチオン開始剤としては、例えば、オニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、ジアリールヨードニウム(diaryliodonium)塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを用いてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
一実施形態において、前記光開始剤は、前記エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、より具体的には0.5~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。光開始剤の含量が前記範囲内である場合、さらに優れたハードコーティング組成物の硬化効率を維持し、硬化後の残存成分による物性の低下をさらに防止することができる。
【0073】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、無機ナノ粒子および表面処理された無機ナノ粒子の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物である無機粒子をさらに含んでもよい。前記無機粒子は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0074】
一実施形態において、前記無機粒子は、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、またはこの中の2つ以上を含む合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などから選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物であってもよく、より具体的には、ハードコーティング組成物の他の成分との相溶性の面で、シリカおよびアルミナの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0075】
一実施形態において、前記表面処理された無機ナノ粒子は、エポキシポリシロキサン樹脂との円滑な混合のためにシリコーン(silicone)化合物により表面の少なくとも一部が表面処理されたものであってもよい。
【0076】
一実施形態において、前記無機粒子は、球状、板状、無定形などの形状を有し、平均粒径が100nm以下、具体的には1~100nm、より具体的には1~50nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0077】
一実施形態において、前記無機粒子の含量は、前記エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して0.01~10重量部で含まれてもよく、具体的には0.1~5重量部、より具体的には0.5~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
前記平均粒径および前記含量範囲を満たす無機粒子が含まれたハードコーティング組成物から形成されるハードコーティング層は、フィルムの表面粗さ乃至透明性に影響を及ぼさず、硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの表面特性がさらに向上することができる。
【0079】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0080】
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ(methyl cellosolve)、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
前記溶媒の含量は、前記エポキシポリシロキサン樹脂100重量部に対して10~200重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲を満たす場合、ハードコーティング組成物からハードコーティング層の形成時に作業性にさらに優れることができ、ハードコーティング層の厚さ調節が容易であり、溶媒乾燥時間を減少させて迅速な工程速度を確保することができるが、含量範囲が必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0082】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などを改善させることができる。
【0083】
前記滑剤の種類は、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0084】
この他にも、前記ハードコーティング組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0085】
以下、他の一実施形態に係る、上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物から形成されるフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層(以下、「ハードコーティング層」(Hard coating layer)と称する。)について説明する。
【0086】
一実施形態において、前記ハードコーティング層の厚さは1~100μm、より具体的には1~50μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。厚さが前記範囲内である場合、ハードコーティング層は、さらに向上した硬度を実現しながらも、さらに優れた柔軟性を示すことができるが、 必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0087】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物が光硬化および熱硬化したものであってもよい。上述した熱開始剤を用いた熱硬化と光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化程度、硬度、および柔軟性などをさらに向上させることができる。
【0088】
例えば、前記ハードコーティング組成物を基材などに塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。または、前述したものとは逆順に硬化させてもよい。
【0089】
すなわち、前記光硬化により前記ハードコーティング組成物が半硬化または部分硬化することができ、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化することができる。
【0090】
例えば、前記ハードコーティング組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0091】
また、一般的に、硬化時間の増加(例えば、露光時間の増加)により、既に適切な程度に硬化した部分に過度なエネルギーが提供されることで過硬化が起こり得る。前記過硬化が行われる場合、ハードコーティング層が柔軟性を失うか、または機械的欠陥が発生し得る。これに対し、前記光硬化と前記熱硬化を併用する場合、前記ハードコーティング組成物を短時間に実質的に完全に硬化させることができる。そこで、ハードコーティング層の優れた柔軟性を実現しながらも、硬度、耐摩耗性、および耐スクラッチ性などの表面特性をさらに向上させることができる。
【0092】
前記ハードコーティング組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が必ずしもこれに限定されるものではなく、前記熱硬化が先に行われた後に前記光硬化が行われてもよい。
【0093】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、鉛筆硬度が4H以上であり、押し込み硬さが60hv以上であり、弾性回復率が80%以上である物性を全て満たすことができるだけでなく、それとともに、IEC 62715-6-1に基づく耐屈曲性試験に従い、フォールディング半径(Folding Radius)3.5R以下において、60cycles/minの速度で20万回繰り返しフォールディングする際にクラックが発生しないため、耐屈曲性も顕著に向上し、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適した高硬度特性および優れた柔軟性を同時に満たすことができる。
【0094】
より具体的に、一実施形態において、前記ハードコーティング層は、JISK5400に準じた鉛筆硬度が4H以上、具体的には4H~9H、より具体的には5H~9Hであってもよい。
【0095】
また、一実施形態において、前記ハードコーティング層は、押し込み硬さが60hv以上、具体的には70hv以上であってもよく、例えば60~100hv、具体的には70~100hvであってもよい。
【0096】
また、一実施形態において、前記ハードコーティング層は、弾性回復率が80%以上、または85%以上、例えば80~99%、または85~99%であってもよい。
【0097】
鉛筆硬度、押し込み硬さ、および弾性回復率が前記範囲を全て満たす場合、前記ハードコーティング層は、さらに優れた硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの向上した表面特性を有することができ、外部衝撃による表面損傷をさらに顕著に防止することができる。
【0098】
また、一実施形態において、前記ハードコーティング層は、前記鉛筆硬度、押し込み硬さ、および弾性回復率が前記範囲を全て満たすとともに、IEC 62715-6-1に基づく耐屈曲性試験に従い、フォールディング半径(Folding Radius)3.5R以下、より具体的には2.5R以下において、60cycles/minの速度で20万回繰り返しフォールディングする際にクラックが発生しないところ、耐屈曲性にも非常に優れ、優れた硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの表面特性を実現しながらも、それとトレードオフ(Trade-off)関係にある柔軟性にも非常に優れ、フレキシブルディスプレイパネル保護用フィルムとして活用するのにさらに好適である。
【0099】
したがって、一実施形態に係るフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング層は、高分子量のシロキサン樹脂を用いて形成されることで、鉛筆硬度、表面硬度、および弾性回復率などの物性に優れ、硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および押圧に対する抵抗性などの表面特性、および耐久性、耐衝撃性などが顕著に向上するとともに、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適するように顕著に向上した耐屈曲性および柔軟性を実現することができる。
【0100】
また他の一実施形態は、基材と、前記基材の一面または両面に上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物を塗布して形成されたハードコーティング層と、を含む、フレキシブルウィンドウカバーフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
【0101】
一実施形態において、前記基材は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れたものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンアクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアラミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂などから製造されてもよく、これらの樹脂は単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、具体的には、フィルムの優れた透明性、機械的強度、および等方性などを考慮すると、前記基材は、ポリイミド系樹脂(ポリアミドイミド系樹脂を含んでもよい。)であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
一実施形態において、前記基材の厚さは10~250μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、前記基材上に形成され、例えば、前記基材の一面に直接接して形成されてもよく、基材の両面上に全て直接接して形成されてもよい。
【0103】
以下、上述した一実施形態に係るフレキシブルウィンドウカバーフィルムの製造方法について説明する。
一実施形態において、前記フレキシブルウィンドウカバーフィルムの製造方法は、基材上に前記エポキシポリシロキサン樹脂を含むハードコーティング組成物を塗布するステップと、前記塗布されたハードコーティング組成物を硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0104】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物の塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、およびスピンコーティングなどから選択されるいずれか1つの方法またはこれらを組み合わせた方法により行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0105】
一実施形態において、前記ハードコーティング層を形成するステップは、前記ハードコーティング組成物を光硬化した後に熱硬化してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
一実施形態において、前記熱硬化は、100~200℃の温度で5~20分間行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
また、一実施形態において、前記光硬化以前に前記ハードコーティング組成物を塗布した後、加熱して前処理するステップをさらに含んでもよい。この際、前記前処理は、前記熱硬化よりも低い温度で行われてもよい。
【0107】
さらに他の一実施形態は、上述したフレキシブルウィンドウカバーフィルムを含む、フレキシブルディスプレイパネルを提供することができる。より具体的に、前記フレキシブルディスプレイパネルは、画像表示装置として、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0108】
以下、実施例および比較例に基づいて本実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本実施形態をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本実施形態が下記の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0109】
[物性の測定方法]
(1)エポキシポリシロキサン樹脂の重量平均分子量
下記の実施例および比較例で得られたエポキシポリシロキサン樹脂の重量平均分子量は、GPC(Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Reflective Index detector)を用い、GPC ColumnはWaters社のShodex KF-801、802.5、803、805の4個を直列に連結し、溶剤はTHFであり、1mL/minの速度で測定した。
【0110】
(2)鉛筆硬度
下記の実施例および比較例で製造されたフィルムに対し、JISK5400に準じて、750gの荷重を用いて50mm/secの速度で20mmの線を引き、それを5回以上繰り返し、スクラッチが1回以下発生した場合を基準に鉛筆硬度を測定した。
【0111】
(3)押し込み硬さ
ハードコーティング層に対し、ナノインデンター(Fisher社、Model名:HM2000)を用いて、荷重30mNの一定の力で15秒間加圧し、5秒間クリープし、20秒間Relaxationして押し込み硬さを測定した。5回測定して平均値を得た。
【0112】
(4)弾性回復率
押し込み硬さの測定時、最初Depthおよび最大Depthに対するRelaxation後のDepthを測定し、下記計算式1から弾性回復率を計算した。
【0113】
[計算式1]
弾性回復率(%)=(最大Depth-Relaxation後のDepth)/(最大Depth-最初Depth)
【0114】
(5)耐屈曲性
下記の実施例および比較例で製造されたハードコーティング層に対し、IEC 62715-6-1に基づき、Folding試験器(YUASA社)に粘着剤を用いて固定した。Folding Radiusを所望の値にセッティングした後、60cycles/minの速度で20万回繰り返しOut-Folding(コーティング面外側)試験を行った。試験終了後、試験片の折り畳み部分の微細クラックの個数を顕微鏡を用いて観察した。
【0115】
(6)耐摩耗性
下記の実施例および比較例で製造されたハードコーティング層の上に、過フッ素化基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KY-1905)をフッ素系溶媒(3M社、Novec 7500)に固形分含量が0.1重量%となるように希釈した防汚層形成用組成物をメイヤーバー#14を用いて塗布し、80℃で5分間乾燥した後、150℃で10分間熱硬化させ、防汚層(厚さ32nm)が形成されたハードコーティングフィルムを7cm×12cmに裁断し、耐摩耗測定器(Kipae E&T社、scratch tester)ジグに固定し、TIPに直径6mmの消ゴム(Rubber stick、Minoan社)を取り付けおよび固定した。移動距離25mm、移動速度40rpm、および荷重0.5kgに設定し、消ゴムを前記ハードコーティングフィルムの防汚層の表面に往復1500回摩擦させた後、摩耗した面の水接触角を測定し、95°以上であるときに合格と判定した。
【0116】
(7)耐スクラッチ性
下記の実施例および比較例で製造されたハードコーティング層の上に、過フッ素化基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KY-1905)をフッ素系溶媒(3M社、Novec 7500)に固形分含量が0.1重量%となるように希釈した防汚層形成用組成物をメイヤーバー#14を用いて塗布し、80℃で5分乾燥した後、150℃で10分間熱硬化させ、防汚層(厚さ32nm)が形成されたハードコーティングフィルムを7cm×12cmに裁断し、耐摩耗測定器(Kipae E&T社、scratch tester)ジグに固定し、2cm×2cmのTestジグにスチールウール(Nippon Steelwool社、Bon Star #0000)を固定した。移動距離40mm、移動速度40rpm、および荷重1kgに設定し、消ゴムを前記フィルムの表面に往復2500回摩擦させた後、表面を肉眼で観察してスクラッチがあるか否かを判定した。
【0117】
[実施例1]
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、および水を22.18g:1.18g:1.10g:2.70g(0.09mol:0.005mol:0.005mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに投入した。前記反応溶液に0.1mLのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびイソプロピルアルコール100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレンで抽出し、抽出物を硫酸マグネシウムで水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシポリシロキサン樹脂を得た。前記エポキシポリシロキサン樹脂は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定した結果、重量平均分子量が10000g/molであった。
【0118】
上記のように得られたエポキシポリシロキサン樹脂30g、(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10g、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング組成物を製造した。
【0119】
前記ハードコーティング組成物を80μm厚さのcPIフィルム(colorless PolyImide Film)上にメイヤーバー法で塗布し、60℃の温度で4分間乾燥した。高圧メタルランプを用いて1J/cm2でUVを照射した後、120℃の温度で10分間硬化させ、厚さ5μmのハードコーティング層を形成した。
【0120】
[実施例2]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシラン、および水を22.18g:1.18g:0.55g:0.51g:2.70g(0.09mol:0.005mol:0.0025mol:0.0025mol:0.15mol)の割合で混合して製造した重量平均分子量10000g/molの樹脂に代替したことを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0121】
[実施例3]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシラン、および水を9.86g:11.82g:1.10g:1.01g:2.70g(0.04mol:0.05mol:0.005mol:0.005mol:0.15mol)の割合で混合して製造した重量平均分子量8000g/molの樹脂に代替したことを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0122】
[比較例1]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して製造した重量平均分子量10000g/molの樹脂に代替したことを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0123】
[比較例2]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、および水を23.41g:1.10g:2.70g(0.095mol:0.005mol:0.15mol)の割合で製造し、得られたエポキシポリシロキサン樹脂の重量平均分子量が10000g/molであることを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0124】
[比較例3]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシラン、および水を22.17g:1.18g:1.01g:2.70g(0.09mol:0.005mol:0.005mol:0.15mol)の割合で製造し、得られたエポキシポリシロキサン樹脂の重量平均分子量が10000g/molであることを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0125】
[比較例4]
前記実施例1において、エポキシポリシロキサン樹脂を2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、および水を19.71g:1.18g:3.30g:2.70g(0.08mol:0.005mol:0.015mol:0.15mol)の割合で製造し、得られたエポキシポリシロキサン樹脂の重量平均分子量が10000g/molであることを除いては、実施例1と同様にハードコーティング層を形成した。
【0126】
前記実施例1~3および比較例1~4で製造されたハードコーティング層の物性を測定し、下記表1に示した。
【0127】
【0128】
前記表1を参照すると、実施例1~3のハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂の製造時、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、およびメトキシ(ジメチル)-n-オクチルシランが0.9≦p+q<1、0<r≦0.1、および0≦s≦0.05を満たす割合で含まれる。これにより、実施例1~3のハードコーティング層は、鉛筆硬度が4H以上であり、押し込み硬さが60hv以上であり、弾性回復率が80%以上であるところ、非常に高硬度の表面特性を有し、それを含むハードコーティングフィルムの耐摩耗性および耐スクラッチ性の評価結果も全て優れるため、顕著に向上した表面特性および耐久性を有することを確認することができる。
【0129】
また、それとともに、実施例1~3のハードコーティング層は、Folding Radiusを所望の値にセッティングした後、60cycles/minの速度で20万回繰り返した際に、いずれもFolding Radiusが2.5Rまでクラックが発生しないため、非常に優れた耐屈曲性を有するところ、柔軟性にも非常に優れることを確認することができる。
【0130】
すなわち、実施例1~3のハードコーティング層は、硬度が高く、表面特性および耐久性に優れるとともに、耐屈曲性に優れ、特にOut Folding時にクラックが容易に発生しない優れた柔軟性およびOut Folding特性を共に実現できることを確認した。
【0131】
これに対し、比較例1のハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂の製造時、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランだけを含み、qおよびr値が0であることにより、実施例1~3と比べて劣化した押し込み硬さを示し、特にFolding Radiusが4Rにおいてクラックが多数発生し、耐屈曲性が大幅に低下することを確認することができる。
【0132】
また、比較例2のハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂の製造時、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランだけを含み、q値が0であることにより、実施例1~3と比べて劣化した押し込み硬さおよび弾性回復率を示し、Folding Radiusが3.5Rにおいてクラックが多数発生し、耐屈曲性が大幅に低下することを確認することができる。
【0133】
また、比較例3のハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂の製造時、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランを含まず、r値が0であることにより、実施例1~3と比べて劣化した押し込み硬さおよび弾性回復率を示し、Folding Radiusが3Rにおいてクラックが多数発生し、耐屈曲性が大幅に低下することを確認することができる。
【0134】
また、比較例4のハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂の製造時、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランが0.9≦p+q<1および0<r≦0.1を満たさない割合で含まれることにより、実施例1~3のハードコーティング層よりは顕著に低下した鉛筆硬度、押し込み硬さ、および弾性回復率を示すことを確認することができる。
【0135】
したがって、一実施形態によるハードコーティング組成物から形成されるハードコーティング層は、エポキシポリシロキサン樹脂に含まれる構成成分の含量比率を非常に厳格に調節し、鉛筆硬度が4H以上であり、押し込み硬さが60hv以上であり、弾性回復率が80%以上であり、IEC 62715-6-1に基づく耐屈曲性試験に従い、フォールディング半径3.5R以下において、60cycles/minの速度で20万回繰り返しフォールディングする際にクラックが発生しないところ、高硬度、優れた耐摩耗性、および耐スクラッチ性の表面特性を有するとともに、フレキシブルディスプレイパネルに活用するのに適したレベルの非常に優れた柔軟性およびOut Folding特性を実現することができる。
【0136】
以上、本実施形態においては特定の事項と限定された実施例によりフレキシブルウィンドウカバーフィルム用ハードコーティング組成物、それにより得られるハードコーティング層、およびそれを含むフレキシブルウィンドウカバーフィルムを説明したが、これは本実施形態のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本実施形態は上記の実施例に限定されない。本実施形態が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。