(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033217
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】排気ヒータ
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230302BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/24 L
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133903
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10 2021 122 085.8
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヘーベルレ
(72)【発明者】
【氏名】アーヌルフ シュピート
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091BA07
3G091CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支持体ユニットと加熱導体ユニットとの安定的なまとまった結合が温度に関係なく保証されている排気ヒータを提供する。
【解決手段】内燃機関の排気装置用の排気ヒータであって、支持体ユニット24と、支持体ユニットに支持された、少なくとも1つの通電式の加熱導体14,16を備えた加熱導体ユニット18であって、少なくとも1つの加熱導体は、支持体ユニットに対して少なくとも1つの支持体ユニット-サポートユニット38,40により電気的に絶縁されて支持されており、または/かつ少なくとも1つの加熱導体14は、別の加熱導体16に対して、少なくとも1つの加熱導体サポートユニット42により電気的に絶縁されて支持されている、加熱導体ユニットと、加熱導体ユニットと支持体ユニット24とを固く結合する結合ユニット31と、排気ヒータコンポーネントのそれぞれ異なる熱膨張を補償する長さ補償ユニット44とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気装置用の排気ヒータであって、
-支持体ユニット(24)と、
-該支持体ユニット(24)に支持された、少なくとも1つの通電式の加熱導体(14,16)を備えた加熱導体ユニット(18)であって、少なくとも1つの前記加熱導体(14,16)は、前記支持体ユニット(24)に対して少なくとも1つの支持体ユニット-サポートユニット(38,40)により電気的に絶縁されて支持されており、または/かつ少なくとも1つの前記加熱導体(14)は、別の前記加熱導体(16)に対して、少なくとも1つの加熱導体サポートユニット(42)により電気的に絶縁されて支持されている、加熱導体ユニット(18)と、
-該加熱導体ユニット(18)と前記支持体ユニット(24)とを固く結合する結合ユニット(31)と、
-排気ヒータコンポーネントのそれぞれ異なる熱膨張を補償する長さ補償ユニット(44)と
を有する、排気ヒータ。
【請求項2】
前記結合ユニット(31)は、好適にはピン状の少なくとも1つの結合部材(32)を有しており、前記長さ補償ユニット(44)は、少なくとも1つの前記結合部材(32)と前記支持体ユニット(24)または/および前記加熱導体ユニット(18)との間の結合力伝達経路内に、少なくとも1つの長さ補償部材(46)を有している、請求項1記載の排気ヒータ。
【請求項3】
前記支持体ユニット(24)は、排気ヒータ長手方向軸線(L)の方向に連続していて前記加熱導体ユニット(18)をそれぞれの間に収容する2つの支持体部材(20,22)を有しており、前記長さ補償ユニット(44)は、少なくとも1つの、好適には全ての前記結合部材(32)に対応して、前記支持体部材(20,22)の少なくとも一方と前記加熱導体ユニット(18)との間の支持経路内または/および前記加熱導体ユニット(18)の2つの前記加熱導体(14,16)の間の支持経路内または/および少なくとも一方の前記支持体部材(20,22)と少なくとも1つの前記結合部材(32)との間の支持経路内に、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)を有している、請求項2記載の排気ヒータ。
【請求項4】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、一方の前記支持体部材(20,22)と前記支持体ユニット-サポートユニット(38,40)との間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、2つの前記加熱導体(14,16)の間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、一方の前記支持体部材(20,22)と、該支持体部材(20,22)に支持される前記結合部材(32)の結合部材支持領域との間に配置されている、請求項3記載の排気ヒータ。
【請求項5】
少なくとも1つの、好適には全ての前記結合部材(32)は、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)を貫通しておりかつ少なくとも1つの前記支持体ユニット-サポートユニット(38,40)または/および少なくとも1つの前記加熱導体サポートユニット(42)を貫通している、請求項2から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項6】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、少なくとも1つの前記結合部材(32)の材料よりも大きな熱膨張係数を有する材料により形成されている、請求項2から5までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項7】
少なくとも1つの前記結合部材(32)は、ニッケル-クロム合金材料により形成されており、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)は、鋼材料、好適には1.4980鋼により形成されている、請求項6記載の排気ヒータ。
【請求項8】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、弾性変形可能な予荷重部材を含む、請求項2から7までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項9】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、皿ばねまたは波形ばねとして形成されている、請求項8記載の排気ヒータ。
【請求項10】
前記支持体ユニット(24)は、金属材料により形成されており、または/かつ前記加熱導体ユニット(18)は、金属材料により形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の排気ヒータ(10)を少なくとも1つ有している、内燃機関用の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ヒータであって、自動車の排気装置において、排気装置内を流れる、内燃機関から放出された排気に熱を伝達することができ、これにより、特に内燃機関の運転の始動段階において、排気ヒータに対して下流側に配置された、例えば触媒または粒子フィルタ等のシステム領域を、より迅速に運転温度にせしめる、排気ヒータに関する。
【0002】
後から公開された独国特許出願公開第102021109568号明細書から公知の排気ヒータでは、支持体ユニットの、金属薄板材料から形成された、実質的に板状の2つの支持体部材の間に、加熱導体ユニットの、平材からの切出しにより準備された、実質的に板状もしくは面状に形成された2つの加熱導体が、排気ヒータ長手方向に相応する排気主流れ方向に連続して配置されている。ピン状に形成された複数の結合部材を含む結合ユニットにより、支持体部材と、その間に配置された加熱導体との積層構造体がまとめて結合されている。支持体部材に対する加熱導体の電気的な絶縁もしくは加熱導体相互の電気的な絶縁を達成するために、これらの間にはそれぞれ、電気的に絶縁性の材料、例えばセラミック材料から成る複数のサポートユニットが配置されている。支持体部材と、加熱導体と、その間に配置されたサポートユニットとから成る積層構造体は、結合ユニットの結合部材によりまとめて結合されている。
【0003】
本発明の課題は、支持体ユニットと加熱導体ユニットとの安定的なまとまった結合が温度に関係なく保証されている排気ヒータを提供することにある。
【0004】
この課題は本発明に基づき、内燃機関の排気装置用の排気ヒータであって、
-支持体ユニットと、
-支持体ユニットに支持された、少なくとも1つの通電式の加熱導体を備えた加熱導体ユニットであって、少なくとも1つの加熱導体は、支持体ユニットに対して少なくとも1つの支持体ユニット-サポートユニットにより電気的に絶縁されて支持されており、または/かつ少なくとも1つの加熱導体は、別の加熱導体に対して、少なくとも1つの加熱導体サポートユニットにより電気的に絶縁されて支持されている、加熱導体ユニットと、
-加熱導体ユニットと支持体ユニットとを固く結合する結合ユニットと、
-排気ヒータコンポーネントのそれぞれ異なる熱膨張を補償する長さ補償ユニットと
を有する、排気ヒータにより解決される。
【0005】
このような排気ヒータの様々なコンポーネント、つまり特に支持体ユニットと、加熱導体ユニットと、これらを互いに対して支持するサポートユニットと、固い結合を提供する結合ユニットとは、一般にそれぞれ異なる材料から形成されているため、このような排気ヒータを通流する排気により加熱されると、熱により誘発された、それぞれ異なる膨張を生ぜしめる。比較的低い温度では、結合ユニットにより互いに緊締されて保持された支持体ユニット、加熱導体ユニットおよびサポートユニットの各コンポーネントは、安定的な複合体を提供する。例えば結合ユニットが、排気ヒータを通流する排気により加熱される際に、結合ユニットによりまとめて結合された排気ヒータのコンポーネントよりも大幅に膨張すると、緊締が失われ、この場合は互いに対して少なくとも僅かに可動の排気ヒータのコンポーネントの、損傷または/およびノイズにつながる相対運動が生じる恐れがある。本発明による構成ではこのことを、長さ補償ユニットが、排気ヒータの様々なコンポーネントのこのようにそれぞれ異なる熱膨張を補償し、これにより、排気ヒータの各コンポーネントの温度に関係なく、排気ヒータの各コンポーネントが、結合ユニットにより安定的にまとめて結合されている、ということにより回避する。
【0006】
簡単に実現されるべき構成のために、結合ユニットは、好適にはピン状の少なくとも1つの結合部材を有していてよく、長さ補償ユニットは、少なくとも1つの結合部材と支持体ユニットまたは/および加熱導体ユニットとの間の結合力伝達経路内に、少なくとも1つの長さ補償部材を有していてよい。
【0007】
支持体ユニットは、排気ヒータ長手方向軸線の方向に連続していて加熱導体ユニットをそれぞれの間に収容する2つの支持体部材を有していてよい。このような積層構造体において長さ補償作用を確実に提供することができるようにするために、長さ補償ユニットは、少なくとも1つの、好適には全ての結合部材に対応して、支持体部材の少なくとも一方と加熱導体ユニットとの間の支持経路内または/および加熱導体ユニットの2つの加熱導体の間の支持経路内または/および少なくとも一方の支持体部材と少なくとも1つの結合部材との間の支持経路内に、少なくとも1つの長さ補償部材を有している、ということを提案する。
【0008】
このためには例えば、少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材は、一方の支持体部材と支持体ユニット-サポートユニットとの間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材は、2つの加熱導体の間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材は、一方の支持体部材と、この支持体部材に支持される結合部材の支持領域との間に配置されている、ということが想定されていてよい。
【0009】
排気ヒータにおける長さ補償ユニットの所定の位置決めを保証するために、少なくとも1つの、好適には全ての結合部材は、少なくとも1つの長さ補償部材を貫通しておりかつ少なくとも1つの支持体ユニット-サポートユニットまたは/および少なくとも1つの加熱導体サポートユニットを貫通している、ということを提案する。これにより、少なくとも1つの結合部材に対応して、この結合部材によりまとめて結合された、1つまたは複数のサポートユニットと、1つまたは複数の長さ補償部材とから成る積層体が提供される。
【0010】
長さ補償機能を提供するために、少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材は、少なくとも1つの結合部材の材料よりも大きな熱膨張係数を有する材料により形成されていてよい。これにより、このような長さ補償部材が加熱されると、1つもしくは複数の結合部材よりも大幅に膨張するため、結合部材により生ぜしめられる、排気ヒータの様々なコンポーネントの緊締が、加熱時にも維持され続ける、ということが保証されている。
【0011】
例えば、少なくとも1つの結合部材がニッケル-クロム合金材料により形成されている場合、少なくとも1つの長さ補償部材は、鋼材料、好適には1.4980鋼により形成されていてよい。
【0012】
1つの別の構成では、長さ補償機能は、少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材が、弾性変形可能な予荷重部材を含むことにより達成され得る。
【0013】
例えば少なくとも1つの、好適には全ての長さ補償部材は、皿ばねまたは波形ばねとして形成されていてよい。
【0014】
機械的に安定しておりかつ排気に対して耐性を有する構成のために、支持体ユニットは、金属材料により形成されていてよい。また加熱導体ユニットも、金属材料、特に電圧印加時にその電気抵抗に基づき加熱される金属材料により形成されていてよい。
【0015】
本発明はさらに、本発明により形成された少なくとも1つの排気ヒータを有する、内燃機関用の排気装置に関する。
【0016】
以下に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】結合部材に対応して配置された支持体ユニット-サポートユニットと、長さ補償ユニットの長さ補償部材とを備えた排気ヒータを縦断して示す原理図である。
【
図4】1つの択一的な実施形態を示す、
図3に対応する図である。
【
図5】1つの択一的な実施形態を示す、
図3に対応する別の図である。
【0018】
図1および
図2には、例えば自動車に設けられる内燃機関の排気装置12用の排気ヒータ10が示されている。排気装置12内では、排気が排気主流れ方向Hに排気ヒータ10を通流可能であり、排気ヒータ10は、排気ヒータ長手方向軸線Lの方向に連続して配置された、ひいては実質的に排気主流れ方向Hに流れる排気が連続して周りを流動可能な、全体的に符号18で表された加熱導体ユニットの2つの加熱導体14,16を有している。加熱導体14,16は、実質的に板状にもしくは平材から形成されており、平材素材、特に金属素材からの切出しにより、蛇行状構造で延びる複数の部分が提供された構造を備えて形成され得る。
【0019】
2つの加熱導体14,16の、排気ヒータ長手方向軸線Lの方向において互いに反対の側には、全体的に符号24で表された支持体ユニットの、実質的に板状に形成された支持体部材20,22が設けられている。板状の支持体部材20,22の外周領域には、実質的に円筒状の支持体ケーシング26が固定されている。
【0020】
2つの加熱導体14,16は、互いに直列または並列に接続されていてよい。電圧源との電気的な接続のために、支持体ケーシング26を貫通する2つの接続ユニット28,30が設けられており、接続ユニット28,30は、支持体ケーシング26により取り囲まれた内部空間内で、加熱導体14,16に導電接続されている。
【0021】
安定的な複合体を得るために、2つの支持体部材20,22と、その間に配置された、互いにすぐ隣に位置する加熱導体14,16とは、ピン状に形成された複数の結合部材32を含む結合ユニット31により、互いに固く結合されている。結合部材32は、例えば軸部34とヘッド36とを備えたスタッドとして形成されていてよい。軸部34には、例えばナット部材37がねじ嵌められていてよく、これによりヘッド36とナット部材37との間に、支持体部材20,22と加熱導体14,16とから成る積層構造体を挟み込むことができる。
【0022】
支持体ユニット24の、一般に金属材料から形成される支持体部材20,22に対して、加熱導体14,16の電気的な絶縁を達成するためには、加熱導体部材14と支持体部材20との間に、例えば各結合部材32に対応して、電気的に絶縁性の材料、例えばセラミック材料により形成され、実質的に板状に形成され、かつ対応する結合部材32が、内部に設けられた開口の領域を貫通する支持体ユニット-サポートユニット38が設けられている。同様に、例えば各結合部材32に対応して、加熱導体16と支持体部材22との間に配置された支持体ユニット-サポートユニット40が設けられている。支持体ユニット-サポートユニット38,40は、例えば構成が互いに実質的に同じであってよい。
【0023】
隣り合って位置する2つの加熱導体14,16を互いに対して電気的に絶縁して支持するためには、例えば各結合部材32に対応して、加熱導体サポートユニット42が設けられている。各加熱導体サポートユニット42も、1つまたは複数のディスクでもって実質的に板状に形成されており、セラミック材料により形成されている。結合部材32が加熱導体14,16を貫通している場所では、加熱導体14,16に形成された開口内に、スリーブ状の絶縁部材43が挿入され得、これにより、加熱導体14,16に設けられた開口内での結合部材32の所定の位置決めを達成することができる。
【0024】
図3には、結合部材32に関連して排気ヒータ10の構成が示されており、排気ヒータ10では、全体的に符号44で表された長さ補償ユニットが提供されることにより、排気ヒータ10の様々なコンポーネントのそれぞれ異なる熱膨張が補償される。この場合に考慮すべきは、2つの支持体部材20,22と、加熱導体14,16と、その間に配置された支持体ユニット-サポートユニット38,40もしくは加熱導体サポートユニット42とから成る積層構造体において、これらの様々なコンポーネントは互いに異なる構成材料を有している点、特に結合部材32もしくは各結合部材32とは異なる構成材料を有している点である。このような異なる構成材料は、一般に異なる熱膨張係数を有しており、このことは結果的に、排気ヒータ10を通流する排気の加熱時に熱により誘発されるそれぞれ異なる膨張が、低温状態で結合部材32により形成される緊締の損失を招く場合がある。この場合、それぞれが結合部材32の支持領域を提供するヘッド36とナット部材37との間に保持された排気ヒータ10のコンポーネントは、これらのコンポーネントが互いに排気ヒータ長手方向軸線Lの方向に移動遊びを有している状態に陥る恐れがある。
【0025】
このようなそれぞれ異なる熱膨張は、長さ補償ユニット44により補償され、これにより、加熱された排気ヒータ10においても、結合部材32によりまとめて結合された排気ヒータ10のコンポーネントは、緊締された状態で互いに安定的に保持されている。このことを達成するために、長さ補償ユニット44は、例えば各結合部材32に対応してディスク状もしくはリングディスク状に形成された長さ補償部材46を有している。この長さ補償部材46には、それぞれ異なるサポートユニット38,40,42と同様に、対応する結合部材32もしくはその軸部34が貫通していてよく、これにより、排気ヒータ長手方向軸線Lに対して横方向においても安定的にまとめて結合された、サポートユニット38,40,42と長さ補償部材46とから成る積層体が形成されている。
【0026】
図示の実施例では、図示の結合部材32に対応する長さ補償部材46は、結合部材32のヘッド36により押圧されひいてはヘッド36に支持される支持体部材22と、支持体部材22に隣り合う支持体ユニット-サポートユニット40との間に配置されている。長さ補償部材46は、結合部材32の形成材料よりも大きな熱膨張係数を有する材料により形成されている。結合部材32が、加熱される際に排気ヒータ長手方向軸線Lの方向に膨張すると、長さ補償部材46もこの方向に、ただし結合部材32よりも大幅に膨張する。この場合、結合部材32は、排気ヒータ長手方向軸線Lの方向に、長さ補償部材46よりもはるかに大きな延在長さを有している、ということも考慮されている。熱により誘発された、結合部材32の相対的な長さ変化は、排気ヒータ長手方向Lにおける結合部材32の比較的大きな延在長さに基づき、比較的大きな絶対的な長さ変化をもたらすため、長さ補償部材46は、その加熱時の相対的な長さ変化が、長さ補償部材46の延在長さが排気ヒータ長手方向Lにおいてより短いにもかかわらず、長さ補償部材46の絶対的な長さ変化が少なくとも結合部材32の絶対的な長さ変化を補償する程度の大きさである材料により形成されている。この場合、2つの支持体部材20,22の間に配置された、排気ヒータ10の別のコンポーネント、つまりそれぞれ異なるサポートユニット38,40,42ならびに加熱導体14,16および支持体部材20,22自体も、それらの加熱に基づき、排気ヒータ長手方向軸線Lの方向に、その延在長さが少なくとも僅かに増大し、したがって、これにより既に、結合部材32の長さ変化の一部が補償される、ということも考慮されている。これらのコンポーネントの長さ変化により補償されない、結合部材32の絶対的な長さ変化の部分のみを、長さ補償部材46の長さ変化により補償する必要がある。
【0027】
例えば
図3に示した構成において、2つの支持体部材20,22が鋼板材料により形成されており、加熱導体14,16は、電圧が印加されるとその電気抵抗に基づき加熱可能な金属材料により形成されており、それぞれ異なるサポートユニット38,40,42はセラミック材料により形成されており、結合部材32は金属材料、例えばニッケル-クロム合金材料等により形成されている場合、長さ補償部材46は、鋼材料、例えば1.4980鋼により形成されていてよく、これにより、目標とする、結合部材32の長さ変化の補償を達成することができる。
【0028】
このような長さ補償部材46を、好適には排気ヒータ10の結合部材32のそれぞれに対応する長さ補償ユニット44が有している、ということに留意されたい。さらに、このような長さ補償部材46は、別の位置に配置されていてもよい、ということにも留意されたい。例えば、長さ補償部材46は、支持体部材20と支持体ユニット-サポートユニット38との間に配置されていてもよいか、または支持体ユニット-サポートユニット38,40のうちの一方と、そのすぐ隣の各加熱導体14もしくは16との間に配置されていてもよい。また、長さ補償部材46は、2つの加熱導体14,16の間で、例えば加熱導体サポートユニット42と、加熱導体14,16のうちの一方との間に位置決めされていてもよいか、または加熱導体サポートユニット42の2つのディスク状の構成部材の間に位置決めされていてもよい。
【0029】
特に結合部材32の、熱により誘発される長さ変化を補償せねばならない程度に応じて、積層された複合体において、例えば上述した位置に、複数の長さ補償部材46を設けることも可能である。
【0030】
図4には、1つの択一的な実施形態が示されている。この実施形態は、上述した構成と実質的に、ピン状に形成された結合部材32が、2つの支持体部材20,22の軸線方向端部領域に、それぞれ溶接部48,50により材料結合式にひいては固く結合されている、という点において相違している。この構成では、支持体部材20,22と、加熱導体14,16と、サポートユニット38,40,42とから成る積層体が、まとめて結合される際に互いに緊締されて保持され得、この状態で結合部材32の両方の軸線方向端部領域が、溶接部48,50により支持体部材20,22に固く結合され得る。この場合も、少なくとも1つの長さ補償部材46を有する長さ補償ユニット44が、好適には全ての結合部材32に対応して設けられている。
【0031】
図5には、1つの別の択一的な実施形態が示されている。この構成では、例えばスタッドとして形成された結合部材32に対応して設けられた長さ補償部材46が、弾性変形可能な予荷重部材として、特に皿ばねとして形成されている。長さ補償部材46は、その軸線方向の予荷重に基づき、熱により結合部材32の長さ変化が誘発された場合でも、排気ヒータ10の互いに積層されたコンポーネント、つまり2つの支持体部材20,22と、加熱導体14,16と、その間に配置されたサポートユニット38,40,42相互に予荷重を加えた状態で、これらを保持する。特に金属材料により形成された皿ばねまたは波形ばねとして構成されていると、このような長さ補償部材46は、長さ補償部材46により生ぜしめられる予荷重力が、排気ヒータ10の温度が変化する温度範囲内で確実に維持され続けることを保証する。
【0032】
最後に述べておくと、上述した長さ補償ユニットの構成は、様々な態様において可変であり得る。既に述べたように、1つまたは複数の結合部材に対応して、複数の長さ補償部材が、それぞれ異なる軸線方向位置に配置されていてもよい。択一的または追加的に、長さ補償部材は、一方または両方の支持体部材20,22の、加熱導体とは反対の外側に配置されてもよく、その結果、長さ補償部材は、各支持体部材20,22と、結合部材の支持領域、つまり例えばヘッド36またはナット部材37との間に配置されている。また、このような構成でも、長さ補償部材46は、予荷重力を生ぜしめる弾性変形可能な予荷重部材として、つまり例えば皿ばねまたは波形ばねとして形成されていてよいか、またはそのより大きな熱膨張係数に基づき、結合部材32の比較的大きな絶対的な長さ変化を補償する材料により形成されていてよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気装置用の排気ヒータであって、
-支持体ユニット(24)と、
-該支持体ユニット(24)に支持された、少なくとも1つの通電式の加熱導体(14,16)を備えた加熱導体ユニット(18)であって、少なくとも1つの前記加熱導体(14,16)は、前記支持体ユニット(24)に対して少なくとも1つの支持体ユニット-サポートユニット(38,40)により電気的に絶縁されて支持されており、または/かつ少なくとも1つの前記加熱導体(14)は、別の前記加熱導体(16)に対して、少なくとも1つの加熱導体サポートユニット(42)により電気的に絶縁されて支持されている、加熱導体ユニット(18)と、
-該加熱導体ユニット(18)と前記支持体ユニット(24)とを固く結合する結合ユニット(31)と、
-排気ヒータコンポーネントのそれぞれ異なる熱膨張を補償する長さ補償ユニット(44)と
を有する、排気ヒータ。
【請求項2】
前記結合ユニット(31)は、好適にはピン状の少なくとも1つの結合部材(32)を有しており、前記長さ補償ユニット(44)は、少なくとも1つの前記結合部材(32)と前記支持体ユニット(24)または/および前記加熱導体ユニット(18)との間の結合力伝達経路内に、少なくとも1つの長さ補償部材(46)を有している、請求項1記載の排気ヒータ。
【請求項3】
前記支持体ユニット(24)は、排気ヒータ長手方向軸線(L)の方向に連続していて前記加熱導体ユニット(18)をそれぞれの間に収容する2つの支持体部材(20,22)を有しており、前記長さ補償ユニット(44)は、少なくとも1つの、好適には全ての前記結合部材(32)に対応して、前記支持体部材(20,22)の少なくとも一方と前記加熱導体ユニット(18)との間の支持経路内または/および前記加熱導体ユニット(18)の2つの前記加熱導体(14,16)の間の支持経路内または/および少なくとも一方の前記支持体部材(20,22)と少なくとも1つの前記結合部材(32)との間の支持経路内に、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)を有している、請求項2記載の排気ヒータ。
【請求項4】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、一方の前記支持体部材(20,22)と前記支持体ユニット-サポートユニット(38,40)との間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、2つの前記加熱導体(14,16)の間に配置されている、または/かつ少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、一方の前記支持体部材(20,22)と、該支持体部材(20,22)に支持される前記結合部材(32)の結合部材支持領域との間に配置されている、請求項3記載の排気ヒータ。
【請求項5】
少なくとも1つの、好適には全ての前記結合部材(32)は、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)を貫通しておりかつ少なくとも1つの前記支持体ユニット-サポートユニット(38,40)または/および少なくとも1つの前記加熱導体サポートユニット(42)を貫通している、請求項2から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項6】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、少なくとも1つの前記結合部材(32)の材料よりも大きな熱膨張係数を有する材料により形成されている、請求項2から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項7】
少なくとも1つの前記結合部材(32)は、ニッケル-クロム合金材料により形成されており、少なくとも1つの前記長さ補償部材(46)は、鋼材料、好適には1.4980鋼により形成されている、請求項6記載の排気ヒータ。
【請求項8】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、弾性変形可能な予荷重部材を含む、請求項2から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項9】
少なくとも1つの、好適には全ての前記長さ補償部材(46)は、皿ばねまたは波形ばねとして形成されている、請求項8記載の排気ヒータ。
【請求項10】
前記支持体ユニット(24)は、金属材料により形成されており、または/かつ前記加熱導体ユニット(18)は、金属材料により形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ。
【請求項11】
請求項1から4までのいずれか1項記載の排気ヒータ(10)を少なくとも1つ有している、内燃機関用の排気装置。
【外国語明細書】