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特開2023-33220スマートカードへの安全なデジタル登録
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033220
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】スマートカードへの安全なデジタル登録
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/32 20130101AFI20230302BHJP
【FI】
G06F21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133961
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】FR2108946
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】519260337
【氏名又は名称】アイデミア フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】オーバン,ヤン-ロイク
(72)【発明者】
【氏名】デプラン,ジャン-フランソワ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィンガプリントセンサを含むスマートカードへの安全なデジタル登録を可能にする方法、コンピュータプログラム及びスマートカードを提供する。
【解決手段】スマートカードCD1は、フィンガプリントセンサ8を含む。フィンガプリントセンサは、時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1を取得する。オブジェクトプリントのシーケンスを、少なくとも2つの異なるプリントタイプTY1、TY2によるオブジェクトプリントの参照シーケンスSQ0を定める参照データDREF1と比較する。そして、オブジェクトプリントのシーケンスが参照データと一致する場合、認証段階が成功したと判定する。デジタル登録段階の間、スマートカードは、登録フィンガプリントPT2からデジタル登録データDREF2を生成し、それらのデジタル登録データを記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンガプリントセンサ(8)を含むスマートカード(CD1)によって実装される処理方法であって、
a1)前記フィンガプリントセンサ(8)によって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリント(PT1)のシーケンス(SQ1)を取得すること(S4)、
a2)オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)を前記スマートカード(CD1)内に事前記録された参照データ(DREF1)と比較すること(S6)であって、前記参照データ(DREF1)は少なくとも2つの異なるプリントタイプ(TY1、TY2)によるオブジェクトプリントの参照シーケンス(SQ0)を定める、比較すること(S6)、及び
a3)オブジェクトプリントの前記シーケンス(SQ1)が前記参照データ(DREF1)と一致する場合は認証段階が成功したと判定すること(S8)
を含むa)認証段階(S2)と、
b1)登録フィンガプリントと呼ばれる少なくとも1つのフィンガプリント(PT2)からデジタル登録データ(DREF2)を生成すること(S14)、及び
b2)前記デジタル登録データからのその後のデジタル認証を可能にするために前記デジタル登録データ(DREF2)を記録すること(S16)
を含むb)デジタル登録段階(S10)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記認証段階の前に
-前記スマートカード(CD1)のメモリ内に前記参照データ(DREF1)を記録すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取得段階(S4)中にたどられるべき前記参照シーケンス(SQ0)は時間と共に逐次的に取得される少なくとも2つのプリント群(GP)を含み、各プリント群(GP)は前記フィンガプリントセンサ(8)によって同時に取得される少なくとも1つのオブジェクトプリント(PT1)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記登録段階b)中に、
b0)オブジェクトプリントの前記シーケンスを前記取得することa1)(S4)とは独立に少なくとも1つのフィンガプリント(PT2)を登録フィンガプリントとして前記フィンガプリントセンサによって取得すること
を含む、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
b1)において前記デジタル登録データがそこから生成される少なくとも1つの前記登録フィンガプリントが、オブジェクトプリントの前記シーケンス(SQ1)の中からa1)(S4)で取得されるフィンガプリント(PT2)である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記記録することb2)が前記判定することa3)の前に実行され、前記デジタル登録段階(S10)が、
b3)前記認証段階が失敗したというa3)における前記判定に応答して前記デジタル登録データ(DREF2)を消去すること
を前記記録することb2)の後に更に含む、請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記登録段階b)(S10)は前記認証段階(S2)が成功したというa3)における前記判定(S8)に応答してトリガされる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記参照シーケンス(SQ0)に従い、第1のプリントタイプ(TY1)のオブジェクトプリントが別のプリントタイプ(TY2)の2つのオブジェクトプリントの間に時間の点で入れられる、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
a1)において前記フィンガプリントセンサによって検出される各オブジェクトが指(FG)又はツール(TL1)である、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記認証段階(S2)が
-a1)において取得したオブジェクトプリントの前記シーケンス(SQ1)の各オブジェクトプリント(PT1)を解析して(S30)前記オブジェクトプリントが特徴点を含むかどうかを判定すること、
-前記オブジェクトプリントが特徴点を含むかどうかに応じて、オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)の各オブジェクトプリント(PT1)を第1のプリントタイプに対応するツールプリント(TL1)として又は少なくとも1つの他のプリントタイプに対応するフィンガプリント(FG)として識別すること(S32)
を含み、
前記比較a2)(S6)の間、前記第1の及び前記少なくとも1つの他のプリントタイプのプリントを含むオブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)が、前記第1の及び前記少なくとも1つの他のプリントタイプのプリントを含む前記参照シーケンス(SQ0)と比較される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記認証段階が
-オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)を表す一連(SR1)の値を決定すること(S34)であって、フィンガプリントとして識別される各オブジェクトプリントは第1の値の発生によって前記一連(SR1)の値の中で示され、ツールプリントとして識別される各オブジェクトプリントは前記第1の値と異なる第2の値の発生によって前記一連の値の中で示される、決定すること(S34)
を含み、
前記比較a2)の間、オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)を表す前記一連(SR1)の値が、前記第1の値及び前記第2の値を含む値のシーケンスを参照シーケンス(SQ0)として定める前記参照データ(DREF1)と比較される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オブジェクトプリント(PT1)の前記取得済みシーケンス(SQ1)がフィンガプリントを含み、前記認証段階が
-a1)(S4)において取得したオブジェクトプリントの前記シーケンス(SQ1)の各フィンガプリント(PT1)を解析して(S40)オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)の前記フィンガプリント内の特徴点を識別すること、
-前記識別済みの特徴点から取得されるオブジェクトプリント(PT1)の前記シーケンス(SQ1)の前記フィンガプリントを比較し(S42)、それにより少なくとも2つの異なる指に対応する少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(TY1、TY2)を識別すること
を含み、
前記比較a2)の間、前記少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(TY1、TY2)を含むオブジェクトプリント(SQ1)の前記取得済みシーケンスが、少なくとも2つの異なる指に対応するフィンガプリントを含む前記参照シーケンス(SQ0)と比較される、請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記認証段階(S2)が
-前記少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(TY1、TY2)の各々についてオブジェクトプリントの前記取得済みシーケンスの個々のフィンガプリントを、前記フィンガプリントがオブジェクトプリントの前記取得済みシーケンス(SQ1)の中で初めて検出済みの指に対応する場合、プリントテンプレート(PT1a_1、PT1a_2)として識別すること(S44)
を含み、
各プリントテンプレート(PT1a_1、PT1a_2)はオブジェクトプリントの前記シーケンス(SQ1)の他のフィンガプリントと比較され(S46)、それにより前記少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(TY1、TY2)のうちの1つとして前記他の各フィンガプリントが識別される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータによって実行されるとき請求項1乃至13の何れか一項に記載の処理方法のステップを実行するための命令を含む、コンピュータプログラム(PG1)。
【請求項15】
-フィンガプリントセンサ(8)と、
-認証モジュール(MD2)であって、
・前記フィンガプリントセンサ(8)によって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリント(PT1)のシーケンス(SQ1)を取得すること、
・オブジェクトプリントの前記取得済みシーケンスをスマートカード内に事前記録された参照データ(DREF1)と比較することであって、前記参照データは少なくとも2つの異なるプリントタイプ(TY1、TY2)の参照シーケンス(SQ0)を定める、比較すること、及び
・オブジェクトプリント(PT1)の前記シーケンス(SQ1)が前記参照データ(DREF1)と一致する場合は認証段階が成功したと判定すること
を行うように構成される、認証モジュール(MD2)と、
-登録モジュールであって、
・登録フィンガプリントと呼ばれる少なくとも1つのフィンガプリント(PT2)からデジタル登録データ(DREF2)を生成すること、及び
・前記デジタル登録データからのその後のデジタル認証を可能にするためにデジタル登録データ(DREF2)を記録すること
を行うように構成される、登録モジュールと
を含む、スマートカード(CD1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィンガプリントによる認証に関し、より詳細にはユーザのその後のデジタル認証を可能にするためにスマートカードへのデジタル登録を安全にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカードに関して多くの改善策が近年開発されている。その1つは、ユーザを認証するために、とりわけスマートカードによって行われる取引を安全にするためにスマートカードにフィンガプリントセンサを備えることから成る。従って、そのフィンガプリントセンサによって行われるフィンガプリント照合の結果に応じてかかるスマートカードは取引を受諾又は拒否することができ、そのことはカードの不正使用のリスクを制限できるようにする。
【0003】
ユーザのデジタル認証を行えるようにするために、フィンガプリントセンサを埋め込むスマートカードは、認証段階中に取得されるフィンガプリントの有効性を照合するために使用される参照デジタルデータを概してメモリ内に記憶する。従って各ユーザ認証段階は、認証されているユーザが認可ユーザかどうかを判定するためにスマートカードがアクセスしなければならないこれらの参照デジタルデータに基づく。それを行うために、スマートカードは認証段階の前に登録段階を実行しなければならず、その間スマートカードは参照デジタルデータとしてフィンガプリントテンプレートを記録する。
【0004】
その後どのユーザがスマートカードの使用を認可されるのかを定める限りにおいて、この登録段階はセキュリティの観点から特に要注意である。スマートカードによって正当なユーザだけが成功裏に認証され得るように、参照デジタルデータがよい条件で取得され記録されることを確実にするためにこの登録段階を安全にすべきである。
【0005】
既知の方法は、カードの発行者によって認証目的で提供される専用のシークレットPINコードから登録段階中にカード保有者を認証するようにスマートカードを構成することから成る。しかし、とりわけユーザとスマートカードとの間のインタフェース手段に関してスマートカードが従来より非常に限られた資源を含む限りにおいて、そのようなシークレットコードを使用することは技術的困難を突き付ける。概して、とりわけカード内にユーザ命令を入力するための入力手段に関してスマートカードはユーザインタフェースを有しておらず、又は非常に限られたユーザインタフェース手段を少なくとも含む。
【0006】
更に、或る特定の技法によれば、スマートカードの保有者は登録段階中に自身を認証するために、カードと協働する端末によって実行される特定のアプリケーションを使用してシークレットコードを入力する。しかし、そのような端末を使用することも、その端末が安全でありかかる認証段階に適していなければならない限りにおいて技術的困難を有する。とりわけこの端末は、特にカード保有者が端末のユーザインタフェースにおいてシークレットコードを安全に入力できるようにするのに適したユーザインタフェースを含まなければならない。そのような端末を使用することは登録段階をより複雑にし、セキュリティに関するリスクを示し、そのような端末を入手できない場合に問題を引き起こす。
【0007】
従って、一般にそうであるようにスマートカードがユーザインタフェースに関して限られた手段を有する場合を含め、フィンガプリントセンサを含むスマートカードへの安全なデジタル登録を可能にする解決策が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明はフィンガプリントセンサを含むスマートカードによって実装される処理方法に関し、この方法は、
a1)フィンガプリントセンサによって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリントのシーケンスを取得すること、
a2)オブジェクトプリントの取得済みシーケンスをスマートカード内に事前記録された参照データと比較することであって、前述の参照データは少なくとも2つの異なるプリントタイプによるオブジェクトプリントの参照シーケンスを定める、比較すること、及び
a3)オブジェクトプリントのシーケンスが参照データと一致する場合は認証段階が成功したと判定すること
を含むa)認証段階と、
b1)登録フィンガプリントと呼ばれる少なくとも1つのフィンガプリントからデジタル登録データを生成すること、及び
b2)前述のデジタル登録データからのその後のデジタル認証を可能にするためにデジタル登録データを記録すること
を含むb)デジタル登録段階と
を含む。
【0009】
或る特定の実施形態によれば、この方法は、認証段階の前に
-スマートカードのメモリ内に参照データを記録すること
を含む。
【0010】
或る特定の実施形態によれば、取得段階中にたどられるべき参照シーケンスは時間と共に逐次的に取得される少なくとも2つのプリント群を含み、各プリント群はフィンガプリントセンサによって同時に取得される少なくとも1つのオブジェクトプリントを含む。
【0011】
或る特定の実施形態によれば、この方法は登録段階b)中に、
b0)オブジェクトプリントのシーケンスを取得することa1)とは独立に少なくとも1つのフィンガプリントを登録フィンガプリントとしてフィンガプリントセンサによって取得すること
を含む。
【0012】
或る特定の実施形態によれば、b1)においてデジタル登録データがそこから生成される少なくとも1つの前述の登録フィンガプリントが、オブジェクトプリントのシーケンスの中からa1)で取得されるフィンガプリントである。
【0013】
或る特定の実施形態によれば、記録することb2)が判定することa3)の前に実行され、デジタル登録段階が、
b3)認証段階が失敗したというa3)における判定に応答してデジタル登録データを消去すること
を記録することb2)の後に更に含む。
【0014】
或る特定の実施形態によれば、登録段階b)は認証段階が成功したというa3)における判定に応答してトリガされる。
【0015】
或る特定の実施形態によれば、参照シーケンスに従い、第1のプリントタイプのオブジェクトプリントが別のプリントタイプの2つのオブジェクトプリントの間に時間の点で入れられる。
【0016】
或る特定の実施形態によれば、a1)においてフィンガプリントセンサによって検出される各オブジェクトが指又はツールである。
【0017】
或る特定の実施形態によれば、認証段階が
-a1)において取得したオブジェクトプリントのシーケンスの各オブジェクトプリントを解析して前述のオブジェクトプリントが特徴点を含むかどうかを判定すること、
-前述のオブジェクトプリントが特徴点を含むかどうかに応じて、オブジェクトプリントの取得済みシーケンスの各オブジェクトプリントを第1のプリントタイプに対応するツールプリントとして又は少なくとも1つの他のプリントタイプに対応するフィンガプリントとして識別すること
を含み、
比較a2)の間、第1の及び前述の少なくとも1つの他のプリントタイプのプリントを含むオブジェクトプリントの取得済みシーケンスが、第1の及び前述の少なくとも1つの他のプリントタイプのプリントを含む参照シーケンスと比較される。
【0018】
或る特定の実施形態によれば、認証段階が
-オブジェクトプリントの取得済みシーケンスを表す一連の値を決定することであって、フィンガプリントとして識別される各オブジェクトプリントは第1の値の発生によって一連の値の中で示され、ツールプリントとして識別される各オブジェクトプリントは第1の値と異なる第2の値の発生によって一連の値の中で示される、決定すること
を含み、
比較a2)の間、オブジェクトプリントの取得済みシーケンスを表す一連の値が、第1の値及び第2の値を含む値のシーケンスを参照シーケンスとして定める参照データと比較される。
【0019】
或る特定の実施形態によれば、オブジェクトプリントの取得済みシーケンスがフィンガプリントを含み、認証段階が
-a1)において取得したオブジェクトプリントのシーケンスの各フィンガプリントを解析してオブジェクトプリントの前述の取得済みシーケンスのフィンガプリント内の特徴点を識別すること、
-識別済みの特徴点から取得されるオブジェクトプリントの前述のシーケンスのフィンガプリントを比較し、それにより少なくとも2つの異なる指に対応する少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプを識別すること
を含み、
比較a2)の間、前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプを含むオブジェクトプリントの取得済みシーケンスが、少なくとも2つの異なる指に対応するフィンガプリントを含む参照シーケンスと比較される。
【0020】
或る特定の実施形態によれば、認証段階が
-前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプの各々についてオブジェクトプリントの取得済みシーケンスの個々のフィンガプリントを、前述のフィンガプリントがオブジェクトプリントの取得済みシーケンスの中で初めて検出済みの指に対応する場合、プリントテンプレートとして識別すること
を含み、
各プリントテンプレートはオブジェクトプリントのシーケンスの他のフィンガプリントと比較され、それにより前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのうちの1つとして前述の他の各フィンガプリントが識別される。
【0021】
或る特定の実施形態によれば、認証段階が
-オブジェクトプリントのシーケンスの中の少なくとも第1のフィンガプリント及び第2のフィンガプリントを、a1)におけるオブジェクトプリントの前述の取得済みシーケンス内の前述の少なくとも第1の及び第2のフィンガプリントの個々の位置に応じて前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのプリントテンプレートとして識別すること
を含み、
前述の第1の及び第2のフィンガプリントがオブジェクトプリントのシーケンスの他のフィンガプリントと比較されるプリントテンプレートとしての役割を果たし、それにより少なくとも2つの異なる指に対応する前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのうちの1つとして前述の他の各フィンガプリントが識別される。
【0022】
或る特定の実施形態によれば、この方法は
c1)少なくとも1つの新たなフィンガプリントをフィンガプリントセンサによって取得すること、
c2)前述の少なくとも1つの新たなフィンガプリントをデジタル登録データと比較することによって認証すること
を含む、認証段階a)の後の第2の認証段階を含む。
【0023】
或る特定の実施形態では、本発明の処理方法の様々なステップがコンピュータプログラム命令によって決定される。
【0024】
その結果、本発明は情報媒体(又は記録媒体)上のコンピュータプログラムにも関し、このプログラムは例えばスマートカード等の装置内又はより広くはコンピュータ内で実装可能であり、上記で定め以下の特定の実施形態の中で記載する処理方法のステップの実装に適合される命令を含む。
【0025】
従って、本発明の方法はコンピュータプログラム命令を記憶する不揮発性メモリによって、及びそれらの命令を実行するプロセッサによって実装され得る。
【0026】
このプログラムは任意のプログラミング言語を使用することができ、ソースコード、オブジェクトコード、若しくは部分的にコンパイルされた形式等のソースコードとオブジェクトコードとの間の中間コードの形式、又は他の任意の所望の形式にあり得る。
【0027】
本発明はコンピュータによって、より具体的にはスマートカードによって(とりわけスマートカードのプロセッサによって)読み出し可能な、及び上述のコンピュータプログラムの命令を含む情報媒体(又は記録媒体)にも関する。
【0028】
情報媒体はプログラムを記憶可能な任意のエンティティ又は装置であり得る。例えば媒体は書き換え可能な不揮発性メモリ又はROM、例えばCD ROM又は超小型電子回路ROM、更には磁気記録手段、例えばフロッピディスク又はハードドライブ等の記憶手段を含み得る。
【0029】
他方で情報媒体は、電気ケーブル若しくは光ケーブル経由で、無線によって、又は他の手段によって搬送可能な電気信号又は光信号等の伝播性媒体であり得る。本発明によるプログラムは特にインターネット型のネットワークからダウンロードすることができる。
【0030】
或いは情報媒体はプログラムが組み込まれる集積回路とすることができ、回路は当該方法を実行する際に実行するように又は使用されるように適合されている。
【0031】
本発明は、本明細書で定める処理方法を実装可能な装置、とりわけスマートカードにも関する。とりわけ本発明は、
-フィンガプリントセンサと、
-認証モジュールであって、
・フィンガプリントセンサによって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリントのシーケンスを取得すること、
・オブジェクトプリントの取得済みシーケンスをスマートカード内に事前記録された参照データと比較することであって、前述の参照データは少なくとも2つの異なるプリントタイプの参照シーケンスを定める、比較すること、及び
・オブジェクトプリントのシーケンスが参照データと一致する場合は認証段階が成功したと判定すること
を行うように構成される、認証モジュールと、
-登録モジュールであって、
・登録フィンガプリントと呼ばれる少なくとも1つのフィンガプリントからデジタル登録データを生成すること、及び
・前述のデジタル登録データからのその後のデジタル認証を可能にするためにデジタル登録データを記録すること
を行うように構成される、登録モジュールと
を含む、スマートカードを提供する。
【0032】
本発明の処理方法に関して上記で述べた(並びに以下に記載する)様々な実施形態並びに関連する利点は、本発明の装置(とりわけスマートカード)にも類似して当てはまることに留意すべきである。
【0033】
処理方法の各ステップについて、本発明の装置(とりわけスマートカード)は前述のステップを実行するように構成される対応するモジュールを含み得る。
【0034】
一実施形態によれば、本発明はソフトウェア及び/又はハードウェアコンポーネントによって実装される。この観点から、本明細書では「モジュール」という用語がソフトウェアコンポーネント、ハードウェアコンポーネント、又はハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントとの組に対応し得る。
【0035】
ソフトウェアコンポーネントは、関係するモジュールに関して以下で記載するように機能又は1組の機能を実装可能な1つ又は幾つかのコンピュータプログラム、プログラムの1つ又は幾つかのサブプログラム、又はより広くはプログラム若しくはソフトウェアの任意の要素に対応する。かかるソフトウェアコンポーネントは物理エンティティ(スマートカード、端末、サーバ、ゲートウェイ、ルータ等)のデータプロセッサによって実行可能であり、この物理エンティティのハードウェア資源(メモリ、記録媒体、通信バス、電子入出力カード、ユーザインタフェース等)にアクセス可能である。
【0036】
同様にハードウェアコンポーネントは、関連するモジュールに関して本明細書に記載する内容による機能又は1組の機能を実装可能なハードウェアアセンブリの任意の要素に対応する。ハードウェアコンポーネントは、プログラム可能なハードウェアコンポーネント又はソフトウェアを実行するための統合プロセッサを有するハードウェアコンポーネントとすることができる。
【0037】
一切の制限なしに例示的実施形態を示す添付図面を参照し、本発明の他の特性及び利点が以下で示す説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態によるスマートカードを概略的に表す。
図2】本発明の少なくとも1つの実施形態による、周辺装置と協働するスマートカードを概略的に表す。
図3】本発明の或る特定の実施形態による、スマートカードによって実装されるモジュールを概略的に表す。
図4A】特定の実施形態による、ユーザを認証するためにたどられるべき参照シーケンスを概略的に表す。
図4B】特定の実施形態による、ユーザを認証するためにたどられるべき参照シーケンスを概略的に表す。
図5】本発明の一実施形態による処理方法のステップを図形式で概略的に表す。
図6】本発明の一実施形態による処理方法のステップを図形式で概略的に表す。
図7】本発明の一実施形態による処理方法のステップを図形式で概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上記で示したように、カードの任意の不正使用を回避するために、スマートカードによって実装されるデジタル登録段階を安全にするのが賢明である。そのために本発明は、例えばスマートカード等の装置を用いてとりわけユーザのデジタル登録段階の前の(又は少なくともこのデジタル登録段階の完了前の)ユーザ認証の実行を提供する。
【0040】
しかし上記で示したように、とりわけユーザがカードと対話することを可能にするあり得るユーザインタフェース手段に関してスマートカードは元来比較的限られた資源を有する。本明細書では「ユーザインタフェース」は、ユーザが例えばスマートカード等の装置と対話することを可能にする任意の手段を意味する。ユーザインタフェースは、当該装置内にユーザが命令を入力することを可能にするように構成される入力インタフェース手段(キーボード、アクチュエータ、ボタン、マイクロホン等)、及び/又は当該装置がユーザに情報を出力する(戻す、返す等)ことを可能にするように構成される出力インタフェース手段(表示画面、表示灯、ラウドスピーカ等)を特に含み得る。
【0041】
特にスマートカードは入力インタフェース手段を概して殆ど又は全く含まず、そのことは著しい技術的制約を含意し、従ってスマートカードのユーザを確実に及び安全に認証するための問題を提起する。従って本発明は、デジタル登録段階の前に(又は少なくともこのデジタル登録段階の完了前に)ユーザを認証するためにスマートカード(又はより広くは装置)が備えるフィンガプリントセンサを使用することを様々な実施形態に従って提案する。
【0042】
しかし、スマートカードのフィンガプリントセンサによって捕捉される1つ又は幾つかのフィンガプリントが有効かどうかを照合するための参照フィンガプリントをスマートカードが元来メモリ内に有さない限りにおいて、スマートカードによってユーザを認証するためにデジタルセンサを使用すること、及びそれがそのユーザのデジタル登録段階の前(又は少なくともこのデジタル登録段階の完了前)であることは技術的困難を示す。
【0043】
従って本発明は、とりわけデジタル登録段階の前に(又は少なくともこのデジタル登録段階の完了前に)フィンガプリントセンサによって時間と共に取得されるオブジェクトプリントのシーケンスを、スマートカードによってアクセス可能な参照データ(これらの参照データは例えばカード内に事前記録される)と比較することにより、これらの技術的困難を解決することを提案する。より具体的には、本発明はとりわけフィンガプリントセンサを含むスマートカードによって実装される処理方法を一部の実施形態に従って提供し、その方法は、カードのフィンガプリントセンサによって取得されるオブジェクトプリントのシーケンスからの認証段階(この認証段階はこの取得済みシーケンスを参照データと比較することを含む)、次いで認証段階が成功裏に通過したことを検出したときデジタル登録段階をトリガすることを含む。
【0044】
以下に記載するように、本発明のスマートカードのフィンガプリントセンサは、指(又は他の任意の解剖的部位)又はツールである様々なオブジェクトのフィンガプリントを取得するために使用することができる。従ってかかるセンサは、フィンガプリント及びツールプリント(指以外の任意のツールによって作り出されるプリント)を含む様々な種類のオブジェクトプリントの取得を可能にし得る。
【0045】
スマートカードは(その狙いが本質的には1つ又は幾つかの参照プリントを得ることである)デジタル登録段階の実際の実行前に正当なユーザの参照フィンガプリントを自らのメモリ内に通常有さないが、本発明のスマートカードは指紋センサによって時間と共に検出される幾つかのオブジェクトプリントのシーケンスを認識し、認証段階が成功するか失敗するかを判定するやり方でその取得済みシーケンスを参照シーケンスと比較し、それをデジタル登録段階の前に(又は少なくともこの登録段階の完了前に)行うことができる。フィンガプリントシーケンスを使用することは、たとえデジタル登録段階がまだ行われていなくても、スマートカードのフィンガプリントセンサによってユーザを認証することを可能にする。
【0046】
上述の図面に関して以下に記載する例示的実施形態から本発明の他の態様及び利点が明らかになる。
【0047】
以下に記載する実施形態では、本発明がスマートカード、例えば銀行カード又はペイメントカード、アクセスバッジ、IDカード、投票カード等によって実装される。但し本発明は、外部端末と協働することによって取引(例えば支払取引)を処理することができるスマートカード以外の装置に広く適用することができる。
【0048】
本明細書では取引の概念が広い意味で理解されること、及び例えば銀行分野では様々な銀行取引、具体的には支払取引、振替取引等を含むことにも留意すべきである。本発明は、排他的にではないが、とりわけ銀行取引を行うことが意図されるペイメントカードに適用される。本発明の枠組みの中で他の種類の取引又は操作(電子投票、機密データにアクセスするための取引、物理的若しくは論理的アクセスを得るための取引等)が考えられることが理解されよう。
【0049】
別段の定めがない限り、幾つかの図面と共通の又は類似の要素は同じ参照記号をもち、同一の又は同様の特性を有し、そのため簡潔にするためにそれらの共通要素を再び説明することは概してない。
【0050】
別段の定めがない限り、本明細書では「第1の」、「第2の」等の用語は、以下に記載する実施形態の中で実装される様々な要素(キー、装置等)を識別し区別できるようにするための任意的な規約によって使用される。
【0051】
図1は、本発明の或る特定の実施形態によるスマートカードCD1の構造を表す。この例では、スマートカードCD1がフィンガプリントセンサ8を含み、カードへのユーザURのデジタル登録の前に(又は少なくともカードへのユーザURのこのデジタル登録の完了前に)センサ8によってユーザURの認証を行うように構成される。
【0052】
スマートカードCD1は、例えば銀行カード又はペイメントカード、例えばEMV(Europay Mastercard Visa)タイプのカードとすることができるが、他のプロトコルも可能である。
【0053】
この具体例では、スマートカードCD1が周辺装置DV1と協働するように構成されるが、かかる周辺装置が介在しない他の例も可能である。
【0054】
より具体的には、この例ではスマートカードCD1がプロセッサ2、揮発性メモリ4(RAM)、不揮発性メモリ6、書き換え可能な不揮発性メモリMR1、フィンガプリントセンサ8、及びことによると通信インタフェースINT1を含む。
【0055】
例えばスマートカードがフィンガプリントセンサ8とは別の如何なるユーザインタフェースも(又は少なくとも入力面での如何なるユーザインタフェース手段も)含まないことが考えられる。但しスマートカードCD1がフィンガプリントセンサ8に加え、例えば1つ又は幾つかの表示灯、画面、1つ又は幾つかのボタン等のうちの少なくとも1つを含むユーザインタフェースを更に含む改変形態も可能である。
【0056】
この例ではスマートカードCD1に内部電力供給源がないことも想定される。この例では、(以下に記載するように)スマートカードCD1と周辺装置DV1とが結合されるとき、カードCD1が周辺装置DV1によって電気的に給電されるように構成される。
【0057】
メモリ6は書き換え可能な不揮発性メモリ又は読み出し専用メモリ(ROM)であり、このメモリは、スマートカードCD1によって読み出し可能であり、或る特定の実施形態によるコンピュータプログラムPG1が記録される或る特定の実施形態による記録媒体(又は情報媒体)を構成する。後により詳細に記載するように、このコンピュータプログラムPG1は特定の実施形態による処理方法のステップを実行するための命令を含む。
【0058】
書き換え可能な不揮発性メモリMR1(例えばフラッシュ型のもの)は、とりわけ第1の参照データDREF1及び第2の参照データDREF2を記憶することができる。以下に記載するように、第1の参照データDREF1はスマートカードCD1内に事前記録され、フィンガプリントセンサ8によって取得されるオブジェクトプリントPTのシーケンスからユーザURを認証するために、デジタル登録段階の前の(又はそれに並行する若しくは付随する)認証段階中にスマートカードCD1によって使用される。これらの第1の参照データDREF1は、例えばTY1及びTY2(図1)で示す少なくとも2種類の異なるプリントの参照シーケンスを定めることができる。第2の参照データDREF2は、上述の認証段階後の登録段階中にスマートカードCD1によって生成され得るデジタル登録データである。参照データDREF1及びDREF2の性質及び使用法は以下の具体例の中でより詳細に明らかになる。
【0059】
フィンガプリントセンサ8はフィンガプリント、より広くはオブジェクトプリントPTを取得する(捕捉する)ように構成される。それらは具体的にはデジタル登録段階の前の(又はそれに並行する若しくは付随する)認証段階中に取得されるオブジェクトプリントPT1、又は前述の認証段階の後でデジタル登録段階中に取得されるオブジェクトプリントPT2であり得る。以下に記載するように、フィンガプリントセンサ8はとりわけデジタル登録段階の前の(又はそれに並行する若しくは付随する)認証段階中にオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1を取得するために使用され得る。
【0060】
センサ8が対応するプリントを取得できるようにするために、様々なオブジェクトをセンサ8に接触させて又はセンサ8に近接して提示することができる。既に示したように、検討されるオブジェクトの性質は事例に応じて異なり得る。本質的に、フィンガプリントセンサ8は少なくとも指からもたらされるフィンガプリントを取得するように構成される。一部の例示的実施形態によれば、フィンガプリントセンサ8はフィンガプリント以外のオブジェクトプリント、具体的には指以外の(又は解剖的部位以外の)ツールからもたらされるツールプリントを取得するように更に構成され得る。フィンガプリントセンサ8は、例えばスプーン、スタイラス、又はフィンガプリントセンサ8と対話するためにユーザURによって操作され得る他の任意の適切なツール等、様々な種類の1つ又は幾つかのツールの(ツールプリントと呼ばれる)プリントを取得するように構成され得る。
【0061】
フィンガプリントセンサ8は、取得済みのオブジェクトプリントPT1がフィンガプリント又はツールプリントを構成するかどうかを、とりわけ前述のプリント内の特徴点を識別するかどうかに応じて判定するように構成され得る。或る特定の例によれば、プリント内に特徴点があることはそれがフィンガプリントであることを示し、逆に特徴点がないことはそれがツールプリントであることを示す。
【0062】
本明細書では、特徴点は指の面、例えば乳頭線の特性(終端、分岐、島等)を特徴付ける特定の要素(局所的特異点、不規則点等)である。所与の指に関して検討される特徴点の性質及び数は事例に応じて異なり得る。
【0063】
概してフィンガプリントセンサ8は、例えば少なくとも2つの異なる種類(TY1及びTY2で示す)のオブジェクトプリントを取得するように構成され得る。これらの種類TY1及びTY2のそれぞれは、例えば任意のフィンガプリント(つまり任意の指を特徴付けるフィンガプリント)、(所与の指の既定の特徴点によって特徴付けられる)所与のフィンガプリント、(指の面を特徴付ける特徴点がない)指以外の任意のツールのプリント、(既定の特性を示す)特定のツールのプリント等に対応し得る。フィンガプリントセンサ8によって検出可能であり、処理方法中に使用され得る多様なプリントタイプを示す例示的実装形態を後に記載する。
【0064】
フィンガプリントセンサ8が対応するオブジェクトからオブジェクトプリントの取得を行うやり方は、検討されるセンサによって使用される技術に応じて異なり得る。従って、使用されるセンサ8の特異性は当業者の実装の選択に応じて異なり得る。フィンガプリントセンサ8はとりわけ容量センサ、光センサ、熱センサ等、より広くはフィンガプリントを含むオブジェクトプリントを取得可能な任意のセンサとすることができる。
【0065】
フィンガプリントセンサ8が(指以外の)ツールからツールプリントを取得するように構成される場合、このツールの性質はセンサの技術に応じて異なり得る。とりわけセンサ8は、場合に応じて導電ツール又はことによると非導電ツールによってもたらされるツールプリントを取得するように構成され得る。
【0066】
後に記載するように、フィンガプリントセンサ8は一部の例では複数のオブジェクトプリントPTを同時に取得するように構成され得る。そうするために、ユーザは幾つかのオブジェクト(指及び/又はツール)をセンサ8の検出領域内に(センサ8に接触させて又はセンサ8に近接して)同時に提示することができ、それらのオブジェクトのそれぞれが複数のプリントの取得を引き起こす。
【0067】
この例では、本発明の処理方法の実装中にコンピュータプログラムPG1を実行することを含め、プロセッサ2はスマートカードCD1の様々な動作及びスマートカードCD1の動作に必要な様々な機能を実行するために揮発性メモリ4を使用する。
【0068】
スマートカードCD1は、例えば銀行取引等(支払取引等)の取引又は他の任意の種類の取引を実行するために、外部端末(不図示)と協働することによって所与の機能を実行するように構成され得る。スマートカードCD1は、とりわけEMV取引を行うように構成されるEMVスマートカードであり得る。
【0069】
図2に示す或る特定の例によれば、スマートカードCD1が結合可能な周辺装置DV1はカードCD1を挿入可能又は係合可能なケースである。但し、周辺装置DV1の他の形態も可能である。この例ではケースDV1は、2つの要素が結合されるときスマートカードCD1に給電するように適合される内部電源AL1を含む。従ってこの例では結合が接触によって行われるが、周辺装置DV1からスマートカードCD1に給電が非接触式に(例えば静電誘導によって)行われるように、非接触結合等の他の実装形態も可能である。
【0070】
任意選択的に、周辺装置DV1はスマートカードCD1による処理方法の実行中にユーザを導くためのユーザインタフェース20も含み得る。このユーザインタフェース20は相対的に限られている場合があり、例えば1つ又は幾つかの表示灯を含むことができ、周辺装置DV1がかかるユーザインタフェース20を有さない他の実装形態も可能である。
【0071】
図2に示すように、周辺装置DV1によって(電源AL1によって)給電されるスマートカードCD1は自らのフィンガプリントセンサ8によってオブジェクトプリントPTを取得するように構成される。既に示したように、そのプリントが取得されるオブジェクトの性質は事例に応じて異なり得る。この例では、センサ8は指FGに対応するフィンガプリントPT(例えばFG1及びFG2で示す少なくとも2つの異なる指に対応するプリント)、及びことによるとツールTL1(この例ではスプーン)等の1つ又は幾つかのツールに対応するオブジェクトプリントPTを捕捉できるようにする。
【0072】
但し、スマートカードCD1が内部電源を含み、スマートカードCD1が電源内蔵式であることを可能にし、そのため周辺装置DV1を使用する必要がない改変形態も可能である。
【0073】
本発明の理解に不要なため、スマートカード内に一般に存在する一部の要素が意図的に省かれていることが理解されよう。更に、スマートカードCD1は本発明の1つの非限定的な例示的実施形態を構成するに過ぎないことに留意することが重要である。当業者は特にスマートカードCD1の一部の要素が本発明の理解を促進するために本明細書に記載されているに過ぎず、それらの要素なしの改変形態が可能であることを理解する。
【0074】
図3は、プロセッサ2がコンピュータプログラムPG1を実行するときプロセッサ2によって実装されるモジュール、つまり以下のモジュール:第1の認証モジュールMD2、登録モジュールMD8、及び任意選択的に第2の認証モジュールMD14を或る特定の実施形態に従って表す。
【0075】
より詳細には、第1の認証モジュールMD2は認証段階を行うように構成される。以下で記載するように、この認証段階は登録段階の前に又は登録段階と並行してトリガされ得る。それを行うために、この例では第1の認証モジュールMD2が第1の取得モジュールMD4及び第1の処理モジュールMD6を含み得る。
【0076】
第1の取得モジュールMD4は、スマートカードCD1のフィンガプリントセンサ8によって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1を取得するように構成される。オブジェクトプリントのシーケンスの概念については後により詳細に記載する。
【0077】
第1の処理モジュールMD6は、第1の取得モジュールMD4によって取得されるオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1をスマートカードCD1内に事前記録される参照データDREF1と比較するように構成される。既に示したように、これらの参照データDREF1は、例えばTY1、TY2で示す少なくとも2つの異なるプリントタイプによる参照プリントの参照シーケンスSQ0を定めることができる。第1の処理モジュールMD6は、オブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1が参照データDREF1と一致する(又は適合する)場合に認証段階が成功したと判定するように更に構成される。
【0078】
登録モジュールMD8はデジタル登録段階を行うように更に構成され、デジタル登録段階はことによると第1の認証モジュールMD2によって行われる認証段階の後であり、又はことによると前述の認証段階と並行して(付随して)行われる。それを行うために、この例では登録モジュールMD8が第2の処理モジュールMD12及びことによると第2の取得モジュールMD10も含み得る。
【0079】
第2の処理モジュールMD12は、デジタル登録データDREF2、つまりスマートカードCD1の使用を認可されたユーザのフィンガプリントのテンプレートとしての役割を果たすデータを少なくとも1つの登録フィンガプリントPT2から生成するように構成される。
【0080】
定義上、本明細書の意味に含まれるフィンガプリントは、フィンガプリントセンサ8によって検出され又は検出されなければならない(ツールのではなく)指のプリントに対応する。
【0081】
デジタル登録データDREF2からスマートカードCD1によるその後のデジタル認証を可能にするために、第2の処理モジュールMD12は、例えばスマートカードCD1のメモリMR1内にデジタル登録データDREF2を記録するように更に構成され得る。
【0082】
以下に記載するように、デジタル登録データDREF2を生成するために第2の処理モジュールMD12によって使用される登録フィンガプリントPT2は、第1の認証モジュールMD2によって行われる認証段階とは独立に登録モジュールMD8によって取得される少なくとも1つのフィンガプリントを含み得る。それを行うために、登録モジュールMD8は上述の第2の取得モジュールMD10を更に含むことができ、第2の取得モジュールMD10は登録フィンガプリントとして少なくとも1つのフィンガプリントPT2をフィンガプリントセンサ8を使用することによって取得するように構成される。
【0083】
或る特定の例によれば、第2の認証モジュールMD14は(第1の認証モジュールMD2によって行われる認証段階の後で)フィンガプリントセンサ8によって取得される少なくとも1つのフィンガプリントをデジタル登録データDREF2と比較することによってユーザのデジタル認証を行うように更に構成され、デジタル登録データDREF2はこの例ではスマートカードCD1のメモリMR1内でスマートカードCD1によって参考にされ得る。
【0084】
上記で示したように、スマートカードCD1は、フィンガプリントセンサ8によって取得されるオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1からユーザUR(図1)のデジタル登録段階の実行前に(又はことによるとそれと並行して)そのユーザURを認証するように構成される。この認証段階が成功裏に通過するには、このシーケンスSQ1がスマートカードCD1内に事前記録される参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0と一致(マッチ)しなければならない。
【0085】
概して、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0は既定の順序に従って時間と共に作成される複数のオブジェクトフィンガプリントPT1で構成され、それぞれのプリントタイプ(つまり以下の例ではTY1又はTY2)が参照シーケンスSQ0のオブジェクトプリントのそれぞれに指定されている。換言すれば、参照データDREF1によれば、参照シーケンスSQ0の各オブジェクトプリントはそれぞれのプリントタイプのものである。この参照シーケンスSQ0は、参照シーケンスSQ0を構成する全てのオブジェクトプリントPT1が同時に取得されないが、逆にこのシーケンスが既定の順序で時間と共に順々に取得される少なくとも2つのオブジェクトプリントPT1を含むことを含意する。
【0086】
ユーザURがフィンガプリントセンサ8に対して実行して自身を認証するために必要な参照シーケンスSQ0の性質は事例に応じて異なることができ、一部の例示的実装形態を以下に記載する。とりわけオブジェクトプリントPT1の種類(特にそれらの種類の性質及び異なる種類の数)又は参照シーケンスSQ0内のオブジェクトプリントPT1の経時的な構成が所望の実装形態に応じて異なり得る。
【0087】
図4Aは、登録段階の前の(又は少なくともこの登録段階の完了前の)認証段階の間の期間PR1中にユーザURによって実行される、オブジェクトフィンガプリントPT1のシーケンスSQ1によってたどられなければならない参照シーケンスSQ0を或る特定の例に従って表し、このシーケンスSQ0は2つの異なるプリントタイプTY1及びTY2によるオブジェクトプリントPT1を含む。ここでは例えば第1のプリントタイプTY1が(任意の指に対応する)任意のフィンガプリントFGに対応する一方、第2のプリントタイプTY2が(オブジェクトの面を特徴付ける特徴点がない)任意のツールTL1に対応すると仮定する。例として、この参照シーケンスSQ0はそれぞれ経時的に次の種類によるオブジェクトプリントPT1で構成される:TY1-TY2-TY1-TY1-TY2-TY1。この例では、期間PR1中にオブジェクトプリントPT1を順々に連続して検出しなければならない。従って自身を成功裏に認証するために、ユーザURは例えば任意の指、次いで特徴点がないツール、次いで任意の指を2回連続、次いで特徴点がないツール、次いで再び任意の指を提示しなければならない。
【0088】
デジタル登録段階の前の(又は少なくともデジタル登録段階の完了前の)認証段階のステージにおいて、スマートカードCD1はカード保有者のフィンガプリントのテンプレートをメモリ内に有さないが、例えば取得される各プリント内の特徴点が検出されるかどうかに応じて、オブジェクトプリントPT1が指(第1の種類TY1)に対応するのかツール(第2の種類TY2)に対応するのかを認識することができる。
【0089】
一部の実施形態では、登録段階の前の(又はそれに並行する)認証段階中にたどられる参照シーケンスSQ0は、期間PR1にわたって逐次的に取得される少なくとも2つのプリント群GPを含み、各プリント群GPはフィンガプリントセンサ8によって同時に取得される少なくとも1つのオブジェクトプリントPT1を含む。
【0090】
図4Bは、登録段階の前の(又は少なくともこの登録段階の完了前の)認証段階の間の期間PR1中にユーザURによって実行される、オブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1によってたどられなければならない参照シーケンスSQ0を或る特定の例に従って表し、このシーケンスSQ0は2つの異なるプリントタイプTY1及びTY2によるオブジェクトプリントPT1を含む。この例では第1のプリントタイプTY1が第1の任意の指に対応するフィンガプリント(つまり第1の任意の指の第1の特徴点によって特徴付けられるフィンガプリント)に対応し、第2のプリントタイプT2が第1の指と異なる第2の任意の指に対応するフィンガプリント(つまり第2の任意の指の第2の特徴点によって特徴付けられるフィンガプリント)に対応すると仮定する。この事例では、ユーザURがフィンガプリントセンサ8によって自身を認証できるようにするためにツールTL1の使用は不要だが、参照シーケンスSQ0が(第1のプリントタイプ及び第2のプリントタイプと呼ばれる)少なくとも2つの異なるプリントタイプ並びに第3のプリントタイプによる少なくとも1つのツールプリントを含む改変形態も可能である。
【0091】
後により詳細に記載するように、図4Bに示す参照シーケンスSQ0は、ユーザURを認証するためにどの特定の指(又はどの特徴点)を検出しなければならないのかを定めないが、より全般的に幾つかの別個の指に対応するフィンガプリントタイプの所与の移り変わりを定め、参照シーケンスSQ0が定めるプリントタイプの移り変わりがたどられる限りにおいてそれらの指はことによると任意である。
【0092】
引き続き図4Bの例において、登録段階の前の(又はそれに並行する若しくは付随する)認証段階中にたどられる参照シーケンスSQ0は、期間PR1中にフィンガプリントセンサ8によって逐次的に取得されるプリント群GPを含むことができ、各プリント群GPはTY1及びTY2の中のプリントタイプによるフィンガプリント、又は同時に検出されるプリントタイプTY1及びTY2による2つのプリントを含む。或いは群GPは、フィンガプリントセンサ8によって同時に取得される3つ以上のフィンガプリントを含み得る。それを行うために、フィンガプリントセンサ8はフィンガプリントセンサ8上で(又はその検出領域内で)2つ(又はそれよりも多く)の指を隣り合わせで配置することによって2つのフィンガプリント(又はそれよりも多く)を同時に捕捉できるようにするように構成され得る。
【0093】
例として、図4Bに示す参照シーケンスSQ0は経時的に次の種類のオブジェクトプリントPT1で構成される:TY1-TY2-[TY1,TY2]-TY1-[TY1,TY2]-TY2、但し[TY1,TY2]への言及は第1の種類TY1による第1のオブジェクトプリントPT1、及び第2の種類TY2による第2のオブジェクトプリントPT1をフィンガプリントセンサ8が同時に捕捉することを示す。従って自身を成功裏に認証するために、ユーザURは例えば第1の任意の指FG1、次いで(第1の指と異なる)第2の任意の指FG2、次いで第1の指FG1及び第2の指FG2を同時に、次いで第1の指FG1、次いで再び第1の指FG1及び第2の指FG2を同時に、次いで第2の指FG2を提示しなければならない。
【0094】
既に示したように、デジタル登録段階の前の(又はそれに並行する若しくは付随する)認証段階のステージにおいて、スマートカードCD1はカード保有者のフィンガプリントのテンプレートをメモリ内に有さないが、例えばプリント内に特徴点があるかどうかに応じて、シーケンスSQ1の一部として取得される各オブジェクトプリントPT1がフィンガプリントなのかツールプリントなのかを認識するように構成することができ、又は取得した幾つかのフィンガプリントPT1が(それらのプリントを特徴付ける特徴点に応じて)同じ指に対応することを認識するように構成することができる。従ってスマートカードは、オブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1によって定められるプリントタイプの移り変わりを検出することができる。
【0095】
こうしてスマートカードCD1(図1)のユーザURは、スマートカードCD1によって自身を認証するために経時的なプリントのシーケンスSQ1に従って(1つ若しくは幾つかの指による及び/又は1つ若しくは幾つかのツールによる)オブジェクトプリントの様々な組み合わせを作ることができ、これはスマートカードCD1がこのステージでカード保有者のフィンガプリントのテンプレートを自らのメモリ内に有さずに行われる。次に、フィンガプリントセンサ8を使用することにより、スマートカードCD1がユーザURをこのユーザURのデジタル登録の前に(又は少なくともこのユーザURのフィンガ登録の完了前に)認証することを可能にする本発明の処理方法の例示的実施形態を以下に記載する。
【0096】
本発明の一実施形態を図5に関して以下に記載する。より具体的には、図1図4に関して先に記載したスマートカードCD1がプログラムPG1を実行することによって或る特定の例による本発明の処理方法を実装する。
【0097】
ユーザURを後で認証するための参照データとしての役割を果たす1つ又は幾つかのフィンガプリントテンプレートをスマートカードCD1内に記憶するために、このカードに対してデジタル登録を行うことによってユーザURがスマートカードCD1をパーソナライズしたいと仮定する。それを行うために、この例ではスマートカードCD1が周辺装置DV1に結合され、それにより周辺装置DV1がスマートカードCD1に給電するが、かかる周辺装置DV1がない他の例も可能である。
【0098】
スマートカードCD1が初期状態にあるとまず考えられ、初期状態ではカードが参照データDREF1をメモリ内に含むが、ユーザURの登録段階をまだ行っていない。換言すれば、スマートカードCD1はユーザURのフィンガプレートのテンプレートを自らのメモリ内に有さない。従ってスマートカードCD1は、ユーザURの少なくとも1つのフィンガプリントを安全に登録するために或る特定の例による処理方法を実行する。
【0099】
図5に示すように、(デジタル登録段階S10の前の又は少なくともこのデジタル登録段階S10の完了時の)認証段階S2の間、スマートカードCD1はユーザURのフィンガプリントセンサ8によって取得されるオブジェクトプリントPT1からユーザURの真正性を照合する。それを行うために、認証段階S2は以下に記載するステップS4、S6、及びS8を含む。
【0100】
取得ステップS4の間、スマートカードCD1はフィンガプリントセンサ8によって時間と共に検出されるオブジェクトからのオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1を取得する。例として、シーケンスSQ1の取得S4が期間PR1にわたって行われると考え、この期間は事例に応じて異なることができ、当業者に適したものであり得る。
【0101】
既に記載したように、シーケンスSQ1内のS4において取得されるオブジェクトプリントPT1の種類は事例に応じて異なることができ、とりわけ各プリントを生成するために使用されるオブジェクトの性質に依存し得る。ユーザURは、とりわけフィンガプリントセンサ8の検出領域内にオブジェクト(1つ若しくは幾つかの指及び/又は1つ若しくは幾つかのツール)を順々に又は2つ以上のグループ単位で連続して提示することができる。それを行うために、例としてユーザURがフィンガプリントセンサ8に接触して各オブジェクトを配置すると仮定するが、センサ8とのオブジェクトの接触を必要とせずにオブジェクトプリントが取得される改変形態も可能である。
【0102】
とりわけ図4A図4Bに関して記載したように、シーケンスSQ1は複数の異なる種類の(例えば少なくとも2つの異なる種類の)オブジェクトプリントを含み得る。更に、シーケンスSQ1は幾つかの連続した取得ステップに分類することができ、そのため1つ又は幾つかのオブジェクトプリントがそれらの取得ステップのそれぞれにおいてフィンガプリントセンサ8によって取得される。プリントを複数取得する事例では、検討される取得ステップ中に全てのプリントが同時に取得される。従って或る特定の例によれば、S4で取得されるオブジェクトプリントのシーケンスSQ1が時間と共に(連続した取得ステップ中に)逐次的に取得される少なくとも2つのプリント群を含み、各プリント群はフィンガプリントセンサ8によって同時に取得される少なくとも1つのオブジェクトプリントを含む。
【0103】
比較ステップS6の間、スマートカードCD1はS4で取得されたオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1を参照データDREF1と比較する。この例では、参照データDREF1がスマートカードCD1内に事前記録される。それを行うためにこの方法は、参照データDREF1をこの例ではつまりスマートカードCD1のメモリMR1内に記録する予備ステップ(不図示)を認証段階S2の前に(又は少なくとも比較ステップS6の前に)含み得る。
【0104】
解析ステップS8の間、スマートカードCD1は、プリントシーケンスSQ1が参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0と一致(マッチ)する場合に認証段階S2が成功裏に通過したと判定する。換言すれば、ユーザURはプリントシーケンスSQ1が参照データDREF1に適合しない場合は成功裏に認証される。他方でシーケンスSQ1が参照シーケンスSQ0とマッチしない場合、認証段階S2は失敗したと見なされる。
【0105】
例えば参照データDREF1は、TY1、TY2の少なくとも2つの異なるプリントタイプによるオブジェクトプリントの参照シーケンスSQ0を定めると考えられる。換言すれば、参照シーケンスSQ0は少なくとも2つの異なる種類TY1、TY2のオブジェクトプリントを含む一連のオブジェクトプリントを形成する。簡潔にするために、参照シーケンスSQ0がここではこれらの2つの異なる種類TY1、TY2だけを含むと仮定するが、3つ以上の異なるプリントタイプを有する他の実装形態も可能である。
【0106】
認証段階S2の間、スマートカードCD1は、カード保有者を認証するための参照データとしての役割を果たすフィンガプリントテンプレートをメモリ内にまだ有さない。上記で説明したように、参照データDREF1は既定の順序に従って時間と共に作成される複数のオブジェクトプリントPT1で形成される参照シーケンスSQ0を定め、参照シーケンスSQ0のオブジェクトプリントのそれぞれにそれぞれのプリントタイプ(つまりこの例ではTY1又はTY2)が指定されている。更に、比較ステップS6の間、スマートカードCD1はカード保有者の本当のフィンガプリントを知らないが、S4で取得したオブジェクトプリントのシーケンスSQ1が参照シーケンスSQ0内で定められるプリントタイプの移り変わり(又は変化)をたどることを照合する。
【0107】
或る特定の例によれば、比較ステップS6の間、スマートカードCD1は
-シーケンスSQ0とSQ1とが同数のオブジェクトプリントPT1を含むこと、及び
-取得したシーケンスSQ1を構成するオブジェクトプリントPT1が参照シーケンスSQ0によって定められるプリントタイプの移り変わりをたどること
を照合する。
【0108】
これらの照合が成功裏に通過する場合、スマートカードCD1はS8で認証段階S2に成功したことを検出する。
【0109】
例えば図4Aで表す事例によれば、参照シーケンスSQ0は、任意のフィンガプリント及び任意のツールプリントにそれぞれ対応する2つのプリントタイプTY1、TY2によるオブジェクトプリントを定める。この事例では、スマートカードCD1は取得されるシーケンスSQ1が6つの連続したオブジェクトプリントPT1を含むこと、及びそれらのプリントが連続して任意のフィンガプリントFG、任意のツールプリントTL1、2回連続して任意のフィンガプリントFG、任意のツールプリントTL1、及び任意のフィンガプリントFG(FG-TL1-FG-FG-TL1-FG)に対応することをS6で照合する。それを行うために、S4で取得したオブジェクトプリントPT1の種類を決定し、それらのオブジェクトプリントPT1が参照シーケンスSQ0をたどることを照合することができるように、スマートカードCD1はS4で取得したオブジェクトプリントPT1を(例えば自らのRAM4内に)一時的に記録することができる。以下に記載するように、スマートカードCD1はフィンガプリントを特徴付ける特徴点を含むかどうかを取得したオブジェクトプリントPT1ごとに照合し、特徴点を含む場合、前述のプリントがフィンガプリントを構成すると判定することができる(さもなければ前述のプリントはツールプリントである)。
【0110】
例えば図4Bで表す事例によれば、参照シーケンスSQ0は、第1の所与の指及び第1の指と異なる第2の所与の指に対応するフィンガプリントにそれぞれ対応する2つのプリントタイプTY1、TY2によるオブジェクトプリントを定める。この事例では、スマートカードCD1は取得されるシーケンスSQ1が図4Bに示す参照シーケンスSQ0による少なくとも1つのフィンガプリントの6つの連続したグループを含むことをS6で照合する。それを行うために、S4で取得されたオブジェクトプリントPT1がフィンガプリントであることを照合し、同じ指に対応する、従ってシーケンスSQ1内の同じ種類(この例ではTY1又はTY2)に属するフィンガプリントを認識するように、スマートカードCD1はS4で取得されたオブジェクトプリントPT1を(例えば自らのRAM4内に)一時的に記録することができる。以下に記載するように、スマートカードCD1はカード保有者のフィンガプリントのテンプレートをメモリ内に有さないが、取得した各オブジェクトプリントPT1内にある特徴点を解析し、それらの特徴点から同じ指に対応する、従って同じ種類に対応するフィンガプリントを決定することができる。
【0111】
とりわけスマートカードCD1は、各プリントを特徴付ける特徴点を検出することから、シーケンスSQ1内のS4で取得されるオブジェクトプリントPT1が実際にフィンガプリントであることを照合することができる。指の特徴点の特性を検出すると、スマートカードCD1はオブジェクトプリントPT1がフィンガプリントを構成すると判定する。以下に記載するように、スマートカードCD1はシーケンスSQ1のフィンガプリントPT1を更に比較して、同じ指に対応する、従って同じプリントタイプ(この例ではTY1又はTY2)に対応するプリントを識別することができる。
【0112】
引き続き図5を参照し、スマートカードCD1は以下に記載するステップS14及びS16を含むデジタル登録段階S10もトリガする。以下に記載するように、登録段階S10が取得ステップS12を更に含む改変形態も可能である。
【0113】
例として、ここでは認証段階S2が成功したというS8での判定に応答し、スマートカードCD1がデジタル登録段階S10をトリガすると考える。ユーザURが成功裏に認証され、このユーザがカード保有者だと見なされ、従ってこの登録段階S10は保有者URのデジタル登録を実行できるようにする。従って、スマートカードCD1へのユーザURのデジタル登録プロセスを安全にすることが可能である。但し後に記載するように、認証段階S2の完了前に、従って認証段階S2が成功したとスマートカードCD1がS8で判定する前に登録段階S10がトリガされる改変形態も可能である。従って登録段階S10は段階S2と並行して(付随して)実行することもできる。
【0114】
従って生成ステップS14の間、スマートカードCD1は、登録フィンガプリントと呼ばれる少なくとも1つのフィンガプリントPT2から自らが記録する(S16)デジタル登録データDREF2を生成し、それによりそれらのデジタル登録データPT2からのその後のデジタル認証を可能にする。かかるその後のデジタル認証は、S8での認証結果が成功裏に通過した場合にのみ可能になる。既に示したように、デジタル登録データDREF2は例えばカードのメモリMR1内に記録される。
【0115】
例として、以下、スマートカードCD1が複数の登録フィンガプリントPT2からデジタル登録データDREF2を生成すると仮定する。以下に記載するように、これらの登録プリントPT2はスマートカードCD1によって様々なやり方で得ることができる。デジタル登録データDREF2は、例えば登録フィンガプリントPT2(又はそれらのプリントのデータ特性)を集約することによって生成される。登録フィンガプリントPT2からデジタル登録データDREF2を得るために、様々な処理操作がスマートカードCD1によって行われ得る。
【0116】
或る特定の例によれば、S14でデジタル登録データDREF2がそこから生成される少なくとも1つのデジタル登録プリントPT2は、オブジェクトプリントのシーケンスSQ1の中からS4で取得されるフィンガプリントPT1である。換言すれば、スマートカードCD1は、デジタル登録データDREF2をS14で生成するために、認証段階S2中のS4で取得される少なくとも1つのオブジェクトプリントPT1(より具体的にはフィンガプリント)を登録フィンガプリントPT2として使用する。従って、認証段階S2中にユーザURを認証すること、及びユーザURのフィンガプリントを登録することの両方にフィンガプリントセンサ8によって取得される同じフィンガプリントを使用できる限りにおいて、優れたセキュリティレベルを保証しながらデジタル登録プロセスを加速することができる。
【0117】
或る特定の例によれば、デジタル登録データDREF2を生成するためにS14で使用される各登録フィンガプリントPT2は、認証段階S2中にS4で取得されるオブジェクトプリントのシーケンスSQ1のフィンガプリントPT1である。この事例では、デジタル登録データDREF2の生成S14(及びより広くはデジタル登録段階S10)は、認証段階S2が成功したかどうかをS8で判定する前に(つまり認証段階S2の完了前に)スマートカードCD1によってトリガされ得る。従って、登録段階S10は認証段階S2と並行して(付随して)実行され得る。有利には、認証段階S2の実行はユーザURにとってトランスペアレントとすることができ、するとユーザURは自らがフィンガプリントセンサ8に提示するフィンガプリントが、カードへの自身のデジタル登録を認証すること及び実行することの両方に役立つことを必ずしも認識しない。
【0118】
上記で示したように、登録段階S10中に使用される登録フィンガプリントPT2はこの方法の様々なステージで得ることができる。或る特定の例によれば、S14でデジタル登録データDREF2がそこから生成される登録フィンガプリントPT2の少なくとも1つは、シーケンスSQ1の取得S4とは独立に登録段階S10中の取得ステップS12の間に取得されるフィンガプリントPT2である。従って登録段階S10の間、スマートカードCD1はオブジェクトプリントPT1のシーケンスSQ1の取得S4とは独立に少なくとも1つのフィンガプリントを登録フィンガプリントPT2としてフィンガプリントセンサ8によって取得することができる(S12)。このようにして、取得S12中に得られる登録フィンガプリントPT2は登録段階S10中のユーザURのデジタル登録に使用されるが、このユーザURを認証段階S2中に認証する役割は果たさない。
【0119】
或る特定の例によれば、スマートカードCD1はデジタル登録データDREF2をS14で生成するために、認証段階S2中のS4で取得される少なくとも1つのフィンガプリントPT1を登録フィンガプリントPT2として使用し、S4で取得されるシーケンスSQ1とは独立に少なくとも1つの追加の登録フィンガプリントPT2を取得するために取得ステップS12を更に実行する。例えばユーザURを登録するために、所与の数のフィンガプリントからユーザURをS2で認証し、それらのフィンガプリント(又はその少なくとも一部)に加えて登録段階S10中に取得される追加のフィンガプリントを使用することができる。
【0120】
或る特定の例によれば、S14でデジタル登録データDREF2がそこから生成される全ての登録フィンガプリントPT2は、シーケンスSQ1の取得S4とは独立に登録段階S10中の取得ステップS12の間に取得されるフィンガプリントPT2である。登録段階S10は認証段階S2と並行して又はその後で実行することができる。とりわけ登録段階S10は、既に示したように認証段階S2が成功裏に通過したというS8での判定に応答して開始することができる。
【0121】
登録段階S10が完了し、認証段階S2が成功裏に通過したとS8(図5)で判定される場合、スマートカードCD1はユーザURの真正性を照合するためにその後の認証段階中にプリントテンプレートとして使用可能なデジタル登録データDREF2をメモリ内に有する。従って図5に示すように、この方法は例えば認証段階S2の後で第2の認証段階S18を続けることができる。この認証段階S18の間、スマートカードCD1は少なくとも1つの新たなフィンガプリントPT3(事例に応じて単一又は複数)をフィンガプリントセンサ8によって取得し(S20)、次いで前述の少なくとも1つの新たなフィンガプリントPT3を登録段階S10中のS16で記録されるデジタル登録データDREF2と比較することで認証(S22)を行う。とりわけスマートカードCD1は、前述の少なくとも1つの新たなフィンガプリントPT3をデジタル登録データDREF2と比較することにより、前述の少なくとも1つの新たなフィンガプリントPT3が有効かどうかをS22で判定することができる。前述の少なくとも1つの新たなフィンガプリントPT3は、デジタル登録データDREF2と一致する(又は適合する)場合は有効だと判定される。複数の新たなフィンガプリントPT3がS20で取得される場合、それらの全ての新たなフィンガプリントPT3(又はそのうちの少なくとも所定数)がデジタル登録データDREF2に適合する場合は例えば認証S22が成功裏に通過したと見なすことができ、さもなければ認証は失敗したと見なされる。
【0122】
上記で示したように、認証段階S2が成功裏に通過したというS8での判定に応答して登録段階S10が開始されないが、認証段階S2と並行して実行されるように判定S8の上流で開始される改変形態がとりわけ可能である。従ってこの事例では、スマートカードCD1は認証段階S2が完了する前、つまり認証段階S2の結果をS8で判定する前にさえステップS12及びS14を任意選択的に実行してデジタル登録データDREF2(全て又は一部)を記録することができる。更に、登録段階S10の間、スマートカードCD1は認証段階S2が失敗したというS8での判定に応答して消去ステップ(不図示)を実行することができる。この消去ステップの間、スマートカードCD1はS16で前に記録したデジタル登録データDREF2を自らのメモリから消去(削除)し、そのことはユーザURを成功裏に認証できない場合にデジタル登録プロセスを安全にすることを可能にする。
【0123】
更に或る特定の例によれば、第1のプリントタイプTY1の少なくとも1つのオブジェクトプリントPT1が別のプリントタイプTY2の少なくとも2つのオブジェクトプリントPT1の間に時間と共に入れられるように、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0は複数のオブジェクトプリントPT1を含む。従って参照シーケンスSQ0は幾つかのプリントタイプ(少なくとも2つの異なるプリントタイプ)間の移り変わりを定め、そのことはユーザURの認証、従ってデジタル登録プロセスを安全にすることを可能にする。実際、デジタル登録段階の間、ユーザURが同じ第1の指を数回提示し、次いで第1の指を再び取得する(取得を幾つかの指の間の「行ったり来たり」の操作にすることを意味する)必要なしに別の第2の指を数回提示することは、より人間工学的であり直感的に思われ得る。このことは、デジタル登録の目的が理論上はユーザを認証することではなく、その後プリントテンプレートとしての役割を果たすようにユーザのフィンガプリントを取得することであることによって説明される。しかし、幾つかの異なるフィンガプリントタイプ間の取得の「行ったり来たり」の操作を必要とする複合参照シーケンス(complex reference sequence)SQ0を使用することによって認証段階S2中のフィンガプリントPT1の取得を複雑化することが本発明によって可能であり、それらのフィンガプリントは更に登録段階S10中にデジタル登録データDREF2を生成するのに少なくとも部分的に役立ち得る。従ってデジタル登録は、カードによって取得しなければならないフィンガプリントの数を制限しながら安全である。
【0124】
次に、図5において上記で記載した実施形態の実装の他の改変形態を図6及び図7に関して以下に記載する。
【0125】
或る特定の例によれば、スマートカードCD1(図1図3)が図5に示す処理方法を実行し、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0は図4A内に示されているものである。以下に記載するように、認証段階S2の間、スマートカードCD1はステップS30及びS32、並びにことによるとステップS34も更に実行する。
【0126】
より具体的には、解析ステップS30の間、スマートカードCD1はS4で取得されるシーケンスSQ1を構成する各オブジェクトプリントPT1を解析して前述のオブジェクトプリントPT1がフィンガプリントの特徴点を含むかどうかを判定する。とりわけスマートカードCD1は、取得される各オブジェクトプリントPT1内にフィンガプリント(指の面)を特徴付ける特徴点があるかどうかを判定する。知られているやり方で、如何なるフィンガプリントも本質的に特徴点、つまり乳頭線の特定の配置によって形成される特性点を含む。これらの特徴点は、乳頭線によって形成される特異点又は不規則点(終端、分岐、島等)を特徴付ける。
【0127】
識別(又は分類)ステップS32の間、スマートカードCD1はシーケンスSQ1の各オブジェクトプリントPT1を、前述のオブジェクトプリントPT1が特徴点を含むかどうかに応じて第1のプリントタイプに対応するツールプリントとして、又は少なくとも1つの他のプリントタイプに対応するフィンガプリントとして識別する。例として、ここではスマートカードCD1は、S4で取得されたシーケンスSQ1の各オブジェクトプリントPT1を、前述のオブジェクトプリントPT1が特徴点を含むかどうかに応じて第1のプリントタイプTY1に対応するフィンガプリントとして、又は第2のプリントタイプTY2に対応するツールプリントとしてS32で分類すると仮定する。但し、ツールプリントに対応するプリントタイプに加え、様々な指のフィンガプリントに対応する幾つかの異なるプリントタイプ(例えばTY1a、TY1b等を示す)が参照シーケンスSQ0内で定められ得る改変形態も可能であることを指摘しておく。
【0128】
従って識別ステップS32の間、スマートカードCD1は解析ステップS30の結果からシーケンスSQ1の各オブジェクトプリントPT1のプリントタイプを識別する。オブジェクトプリントPT1が指の面を表す特徴点を含む場合、スマートカードCD1は前述のプリントがPT1aで示す(種類TY1の)フィンガプリントだと判定する。かかる特徴点がない場合、スマートカードCD1は検討されるオブジェクトプリントPT1が(指ではなく)ツールを表すPT1bで示す(種類TY2の)ツールプリントだと判定する。
【0129】
従って認証段階S2(図5)内で行われる比較S6の間、スマートカードCD1は、第1のプリントタイプ及び前述の少なくとも1つの他のプリントタイプのフィンガプリント(つまりこの例では種類TY1及びTY2によるプリント)を含むシーケンスSQ1を、第1のプリントタイプ及び前述の少なくとも1つの他のプリントタイプのプリント(つまりこの例では種類TY1及びTY2のプリント)を含む参照シーケンスSQ0と比較する。
【0130】
或る改変形態によれば、スマートカードCD1は認証段階S2中に決定ステップS34(図6)を更に実行し、決定ステップS34の間カードはS4で取得されたオブジェクトプリントのシーケンスSQ1を表す一連SR1の値(分類コードとも呼ばれる)を識別S32の結果から決定する。この一連SR1の値は、少なくとも第1の値V1及び第1の値V1と異なる第2の値V2を含み、そのためフィンガプリントPT1aとしてS32で識別された各オブジェクトプリントPT1は一連SR1の値の中の第1の値V1の発生によって示され、ツールプリントPT1bとしてS32で識別された各オブジェクトプリントPT1は一連SR1の値の中の第2の値V2の発生によって示される。換言すれば、一連SR1は、オブジェクトプリントPT1ごとに前述のプリントに関して識別される種類を表す値を含み、それらの値はオブジェクトプリントPT1がS4で取得された順序に従って順序付けられる。
【0131】
例としてV1=1及びV2=0を選択するが、他の実装形態も可能である。従って各オブジェクトプリントPT1の種類を1ビット上に符号化することが可能であり、一連SR1の値はオブジェクトプリントPT1がS4で取得された順序に従って各オブジェクトプリントPT1の種類をそれぞれ表す連続的ビットを含む。一連SR1を符号化するために使用される値並びに値の数は事例に応じて、具体的には参照シーケンスSQ0内で与えられるオブジェクトプリントの異なる種類の数に応じて適合させることができる。
【0132】
スマートカードCD1は、分類S32を行い、一連SR1を生成する(S34)ために、例えば取得S4中に取得されるオブジェクトプリントPT1を一時的に記録することができる。分類S32及びことによると決定S34もオブジェクトプリントPT1がS4で取得されるとき動的に行うことができ、又は場合によっては取得S4が完了したら行うことができる。
【0133】
この改変形態によれば、次いでスマートカードCD1はS34で取得された一連SR1の値から比較S6(図5)を行う。より具体的には、スマートカードCD1は一連SR1の値を参照データDREF1と比較する(S6)。それを行うために、参照データは第1の値V1及び第2の値V2を含む一連の値を参照シーケンスSQ0として定めることができる。参照データDREF1は、例えばV1又はV2に等しい一連の参照値を形成することができ、この一連は例えば一連SR1のものと同じ形式を有することが可能である。
【0134】
或る特定の例によれば、スマートカードCD1(図1図3)が図5に示す処理方法を実行することが考えられ、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0は図4B内に示されているものである。ここで検討する例では、認証段階S2の間、スマートカードCD1は図7に示す解析ステップS40及び比較ステップS42を実行する。
【0135】
より具体的には、解析ステップS40の間、スマートカードCD1はシーケンスSQ1のフィンガプリント内の特徴点(又はフィンガプリント特性)を識別するために、S4(図5)で取得されたオブジェクトプリントのシーケンスSQ1の各オブジェクトプリントPT1を解析する。例として、全てのオブジェクトプリントPT1が取得S4中にフィンガプリントセンサ8によって検出される対応する指によってもたらされるフィンガプリントPT1aだと仮定する。所与のオブジェクトプリントPT1内でフィンガプリントの特徴点の特性をS40において識別できない場合、スマートカードCD1はそれがフィンガプリントではない又は本方法を続行できるのに十分な品質を有さないとそこから推論する。この事例では、スマートカードCD1が検討されるプリントの又はシーケンスSQ1の全てのプリントの新たな取得を任意選択的に要求することができ、又は本方法を終了することさえできる。但し、S4で取得されるシーケンスSQ1内に含まれるオブジェクトプリントPT1のうち、その複数がフィンガプリントPT1aでありその少なくとも1つがツールプリントPT1bである改変形態も可能である。この特定の事例では、スマートカードCD1がフィンガプリントPT1aを構成するオブジェクトプリントPT1をS40(図7)で検出し、そうして識別されるフィンガプリントPT1aに続いて起こる比較ステップS42を実行することによってそれらのフィンガプリントを処理する。シーケンスSQ1内で識別されるツールプリントPT1bも、対応するプリントタイプに属するものとして上記のように処理することができる。
【0136】
解析S40の間、スマートカードCD1はフィンガプリントPT1aに対して任意の適切な処理を実行して、指の乳頭線によって形成される特性点を識別することができる。スマートカードCD1は、例えばユーザURの指を表す特徴点のモデルをフィンガプリントPT1aごとに決定することができる。
【0137】
或る特定の例によれば、スマートカードCD1は解析S40を実行できるようにするために、取得S4中に取得されるオブジェクトプリントPT1を(例えば自らのRAMメモリ4内に)一時的に記録する。
【0138】
比較ステップS42の間、少なくとも2つの異なる指に対応する少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(TY1及びTY2で示す)を識別するために、スマートカードCD1はS40で識別された特徴点からシーケンスSQ1のフィンガプリントPT1aを比較する。従ってスマートカードCD1は、実際に検討されるユーザURのフィンガプリントであることを照合できはしないが、異なる指に対応する異なるフィンガプリントタイプPT1aをシーケンスSQ1内で区別することができる。従ってこの比較ステップS42は、シーケンスSQ1のフィンガプリントそれぞれの個々のプリントタイプを決定することを可能にする。この例ではシーケンスSQ1が2つの異なるプリントタイプTY1及びTY2によるフィンガプリントPT1aを含むと仮定するが、より多数の異なるプリントタイプを有する(更にことによると別のプリントタイプに適合するツールプリントPT1bを混合する)他の実装形態も可能である。
【0139】
既に説明したように、スマートカードCD1はカードのユーザURのフィンガプリントの参照テンプレートを有さず、それはそのユーザURのデジタル登録段階がまだ行われていないからである(既に示したように、登録段階S10は認証段階S2の結果がS8で得られる前に任意選択的に開始できるが、この結果が得られていない限りデジタル登録は行われない)。従ってスマートカードCD1は、シーケンスSQ1のフィンガプリントPT1aの特徴点を比較してどのフィンガプリントが同じ指に、従って同じプリントタイプに対応するのかを明らかにする。それを行うために、スマートカードCD1は例えばフィンガプリントPT1aのそれぞれがどの種類(つまりこの例ではTY1又はTY2)のものかを明らかにするために、シーケンスSQ1のフィンガプリントPT1aの類似度をフィンガプリントPT1aの特徴点から評価するためのアルゴリズムを適用する。
【0140】
従って以下の比較ステップS6(図5)の間、2つの異なるプリントタイプTY1、TY2(又は少なくともこれらの2つの種類TY1、TY2)を含むプリントシーケンスSQ1が、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0と比較される。この例では参照シーケンスSQ0が(任意であり得る)2つの異なる指に対応する2つの異なるプリントタイプTY1、TY2によるプリントを含むと考えるが、参照シーケンスSQ0がより多数の異なるプリントタイプを含む(更にことによると別のプリントタイプに適合するツールプリントを混合する)他の実装形態も可能である。
【0141】
或る特定の例によれば、スマートカードCD1は比較ステップS42の間にステップS44及びS46(図7)を実行する。識別ステップS44の間、スマートカードCD1はシーケンスSQ1の個々のフィンガプリントPT1aを、前述のフィンガプリントがシーケンスSQ1内で初めて検出される指に対応する場合(又はそのことを検出するとき)前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプ(つまりこの例では2つのプリントタイプTY1及びTY2)のうちのそれぞれについてプリントテンプレートとして識別する。「初めて検出される指」とは、検討される指に対応するフィンガプリントPT1がシーケンスSQ1内で初めて登場することを意味する。従って例として、ここではスマートカードCD1が、時間と共にシーケンスSQ1内で初めて検出される第1の指(及び別々に第1の指と異なる第2の指)に対応する第1のフィンガプリントPT1a_1(及び別々に第2のフィンガプリントPT1a_2)をシーケンスSQ1内でS44において検出すると考える。次いでスマートカードCD1は、(第1の指に対応する)第1の種類TY1及び(第2の指に対応する)第2の種類TY2のそれぞれによるプリントテンプレートとして第1のフィンガプリントPT1a_1及び第2のフィンガプリントPT1a_2を識別する。
【0142】
従って比較ステップS46(図7)の間、スマートカードCD1はS42で識別される各プリントテンプレート(つまりこの例ではフィンガプリントPT1a_1及びPT1a_2)をS4(図5)で取得されるシーケンスSQ1の他のフィンガプリントPT1aと比較し、それにより前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのうちの1つとして前述の他の各フィンガプリントを識別する。従って本発明は異なる指に対応する異なるフィンガプリントタイプをシーケンスSQ1内で確実に及び効率的に区別することを可能にし、これはカードがこのステージでユーザのフィンガプリントのテンプレート、つまり参照デジタルデータとしてのフィンガプリントテンプレートをメモリ内に有さずに行われる。
【0143】
任意選択的に、2つのステップS44及びS46は比較ステップS42中に同時に(並行して)実行することができる。それを行うために、スマートカードCD1はS4(図5)で取得されたシーケンスSQ1内で時系列順に生じる各フィンガプリントPT1aを連続して解析し、識別ステップS44中に必要に応じて既に識別されている1つ又は幾つかのプリントテンプレートと前述のプリントを比較して、前述のプリントがシーケンスSQ1内で初めて検出される新たな指に対応する新たなフィンガプリントタイプのテンプレートを構成するか、シーケンスSQ1内の前に識別されたプリントテンプレートに適合するフィンガプリントを構成するかを判定することができる。換言すれば、スマートカードCD1は、例えば取得期間PR1中に時間と共に取得され、既存の如何なるフィンガプリントテンプレートにも対応しない各フィンガプリントPT1aを新たなプリントタイプを表すプリントテンプレートとして認識する。この処理は、シーケンスSQ1内でS4においてフィンガプリントが取得された順序に従って取得されるフィンガプリントPT1aごとに行われる。従って、シーケンスSQ1を形成する各フィンガプリントPT1aの種類を決定することができる。
【0144】
或る改変形態によれば、スマートカードCD1は、少なくとも2つの異なる指に対応する少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのプリントテンプレートとしてプリントシーケンスSQ1の中で少なくとも第1のフィンガプリントPT1a_1及び第2のフィンガプリントPT1a_2をS44(図7)で識別し、これはS4で取得されたプリントシーケンスSQ1内の少なくとも第1のフィンガプリントPT1a_1及び第2のフィンガプリントPT1a_2の個々の位置による。従って比較ステップS46の間、スマートカードCD1はプリントテンプレートとしての役割を果たすそれらの第1のフィンガプリントPT1a_1及び第2のフィンガプリントPT1a_2をプリントシーケンスSQ1の他のフィンガプリントPT1aと比較し、それにより少なくとも2つの異なる指に対応する前述の少なくとも2つの異なるフィンガプリントタイプのうちの1つとして前述の他の各フィンガプリントPT1aを識別することができる。
【0145】
従って例として、スマートカードCD1はシーケンスSQ1内で時間と共に、つまり期間PR1(図4B)の予備段階PR2中に取得される最初の2つのフィンガプリントPT1aをプリントタイプTY1及びTY2をそれぞれ表すフィンガプリントテンプレートとして識別する(S44)ことができる。シーケンスSQ1を開始する2つの最初のフィンガプリントは、TY1及びTY2からその種類を決定するためにシーケンスSQ1の他の各フィンガプリントPT1aが比較される(S46)テンプレートの役割を任意に果たす。スマートカードCD1は、例えばそれらの2つの最初のフィンガプリントに対するシーケンスSQ1の他の各フィンガプリントの類似度を評価し(S46)、他の各フィンガプリントの種類はそれらの2つの最初のフィンガプリントのうちの最も近いプリントのものである。
【0146】
従って、一般にそうであるようにスマートカードがユーザインタフェースに関して限られた手段を含む場合を含め、本発明は概してフィンガプリントセンサを含むスマートカードへの安全なデジタル登録を行うことを可能にする。とりわけユーザのデジタル登録段階の実行前でさえ(又はそれと並行してさえ)、従ってスマートカードが当該ユーザのフィンガプリントのテンプレートをメモリ内に有する必要なしに、そのユーザを認証するためにスマートカードのフィンガプリントセンサを使用することができる。ユーザは1つ若しくは幾つかの指及び/又は1つ若しくは幾つかのツールを使用することにより、オブジェクトプリントの特定のシーケンスを簡単及び人間工学的に作ることができる。スマートカードによってそのように取得されるシーケンスがカード内に事前記録される参照シーケンスとマッチする場合、認証が成功裏に通過する。従って高度なユーザインタフェースを含むスマートフォン等のサードパーティ端末とスマートカードを協働させる必要がなく、そのことはデジタル登録プロセスとつながりがあるセキュリティリスクを制限できるようにする。
【0147】
本発明は、ユーザが自らのデジタル登録を行う前にさえ、ユーザを認証するためにスマートカードのフィンガプリントセンサを活用できるようにする。とりわけ本発明は、指又は他の任意の解剖的部位以外のツールを含む様々なオブジェクトを使用することによってユーザを認証できるようにする。ユーザはスプーン又は別の日用品を使用して、又は(例えばカードの発行者によって提供される)専用ツールを使用することによってさえスマートカードによって自身を安全に認証することができる。
【0148】
本発明はとりわけスマートカードの使用、具体的にはカードによって処理される取引を安全にすることを可能にする。従ってデジタル登録が成功裏に行われると、スマートカードは取引の処理中にユーザを認証することができる。そのフィンガプリントセンサによって行われるフィンガプリント照合の結果に応じて、本発明によるスマートカードは例えば取引を受諾又は拒否することができ、そのことはカードの不正使用のリスクを制限できるようにする。
【0149】
更に、図5に関して既に示したように、スマートカードCD1は取得ステップS12中に取得される1つ又は幾つかの登録フィンガプリントPT2からデジタル登録データDREF2をS14で生成することができる。更に、優れたセキュリティレベルを保証しながらデジタル登録プロセスを加速するために、スマートカードCD1は認証段階中にS4で前に取得された少なくとも1つのオブジェクトプリントPT1を、S10で取得された登録フィンガプリントPT2の置換として、又はその補足として、又はそれに加えて使用することができ、前述の少なくとも1つのプリントPT1はフィンガプリントに対応する。換言すれば、スマートカードCD1はデジタル登録データDREF2がそこから生成される登録フィンガプリントPT2を置換し又は補足するために、認証段階S2中に取得される1つ又は幾つかのフィンガプリントPT1を使用することもできる。認証段階S2中にユーザURを認証すること、更にはデジタル登録段階S10中にこの同じユーザURを登録することの両方に同じフィンガプリントを使用できる限りにおいて登録プロセスは改善される(加速され安全にされる)。
【0150】
或る特定の例示的実施形態によれば、参照データDREF1によって定められる参照シーケンスSQ0は少なくとも2つの異なるプリントタイプによるツールプリントを含む。この事例ではスマートカードCD1は、前述のツールプリントが少なくとも2つの異なるツールに対応する少なくとも2つの異なるプリントタイプのうちのどのプリントタイプなのかを識別するために、S4で取得されたシーケンスSQ1内に含まれるツールプリントTL1を認証段階S2(図5)中に検出し解析することができる。それを行うために、スマートカードCD1は例えば少なくとも2つの異なるツールタイプを区別するためにツールプリントに固有の特性を解析することができる。とりわけスマートカードCD1は、検討される各ツールに対応するプリントタイプごとに個々のプリントテンプレートを識別するために、及び各プリントテンプレートに対する他の各ツールプリントの類似度を評価することによってシーケンスSQ1の他の各ツールプリントが関係する種類を識別するために、例えばシーケンスSQ1内で検出されるツールプリントを(フィンガプリントと同様に)比較することができる。
【0151】
先に記載したようにスマートカードCD1に登録したいユーザURは、カードの発行者により(例えば銀行により)又はこの目的で設けられる他の任意のサードパーティにより、認証段階S2中にたどられるべき参照シーケンスSQ0を知らされ得ることに留意すべきである。この参照シーケンスSQ0の伝達は任意の適切なやり方で、例えばカードが受け取られる以外の当業者に知られている任意の通信媒体によって、例えば郵便によって又はユーザURの通信端末に送信されるSMSによって行われ得る。
【0152】
当業者によって理解されるように、上記の実施形態及び改変形態は本発明の非限定的な例示的実装形態を構成するに過ぎない。とりわけ当業者は、添付の特許請求の範囲に従って非常に特定的なニーズを満たすために上記の実施形態及び改変形態の任意の適合又は組み合わせを検討することができる。
【符号の説明】
【0153】
2 プロセッサ
4 揮発性メモリ
6 不揮発性メモリ
8 フィンガプリントセンサ
20 ユーザインタフェース
AL1 内部電源
CD1 スマートカード
DREF1 第1の参照データ
DREF2 第2の参照データ
DV1 周辺装置
FG 指
FG1 第1の指
FG2 第2の指
INT1 通信インタフェース
MD2 第1の認証モジュール
MD4 第1の取得モジュール
MD6 第1の処理モジュール
MD8 登録モジュール
MD10 第2の取得モジュール
MD12 第2の処理モジュール
MD14 第2の認証モジュール
MR1 書き換え可能な不揮発性メモリ
PG1 コンピュータプログラム
PR1 期間
PT オブジェクトプリント
PT1 オブジェクトプリント
PT1a フィンガプリント
PT1a_1 第1のフィンガプリント
PT1a_2 第2のフィンガプリント
PT1b ツールプリント
PT2 オブジェクトプリント
PT3 新たなフィンガプリント
S2 認証段階
S4 取得ステップ
S6 比較ステップ
S8 解析ステップ
S10 登録段階
S12 取得ステップ
S14 生成ステップ
S16 記録
S18 第2の認証段階
S20 取得
S22 認証
S30 解析ステップ
S32 識別ステップ
S34 決定ステップ
S40 解析ステップ
S42 比較ステップ
S44 識別ステップ
S46 比較ステップ
SR1 一連
SQ0 参照シーケンス
SQ1 シーケンス
TL1 ツール
TY1 第1のプリントタイプ
TY2 第2のプリントタイプ
UR ユーザ
V1 第1の値
V2 第2の値
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【外国語明細書】