IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイナジー テック インコーポレイテッドの特許一覧

特開2023-33222有機半導体化合物及びそれを用いた有機光電素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033222
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】有機半導体化合物及びそれを用いた有機光電素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20230302BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C07D519/00
C08G61/12
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133978
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/237,722
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514238696
【氏名又は名称】レイナジー テック インコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ユ-タン シァオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ-ロン リ
(72)【発明者】
【氏名】チャ-ファ ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】チュア-イ リァオ
【テーマコード(参考)】
4C072
4J032
【Fターム(参考)】
4C072MM10
4C072UU05
4C072UU10
4J032BA04
4J032BA05
4J032BA12
4J032BA20
4J032BB03
4J032BC01
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】先行技術に基づく有機半導体化合物の欠点を克服することができる新規な有機半導体化合物、特にn型有機半導体化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、有機半導体化合物およびそれを用いた有機光電素子に関する。有機半導体化合物の革新的な化学構造は、改善された赤外光範囲応答値を可能にし、その広範な吸収波長範囲および改善された外部量子効率によって、それをOPD、OFET、またはOPVなどの有機光電子素子における使用に適したものにする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の有機半導体化合物であって、
【化1】

式中、Aは、以下の基
【化2】

から選択される基であり、
xは、0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択され、
~Aは、それぞれ、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、
a、b、及びcは、0から5の間の整数である、有機半導体化合物。
【請求項2】
が、以下の基
【化3】


からなる群から選択され、
式中、U、U、及びUは、それぞれO、S、又はSeであり、
yは、0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される、請求項1に記載の有機半導体化合物。
【請求項3】
が、以下の基
【化4】

からなる群から選択される、請求項2に記載の有機半導体化合物。
【請求項4】
が、以下の基
【化5】

からなる群から選択され、
式中、WおよびWはそれぞれO、S又はSeであり、
zは0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される、請求項1に記載の有機半導体化合物。
【請求項5】
が、以下の基
【化6】

からなる群から選択される、請求項4に記載の有機半導体化合物。
【請求項6】
が、以下の基
【化7】


からなる群から選択され、
~Rは、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される、請求項1に記載の有機半導体化合物。
【請求項7】
基板と、
第1の電極および第2の電極を含む、前記基板上に配置された電極モジュールと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された活性層と、を備え、
前記活性層の材料が請求項1に記載の有機半導体化合物を少なくとも1つ含み、
前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも一方は、透明または半透明である、有機光電子素子。
【請求項8】
前記第1の電極、前記活性層、及び前記第2の電極が、前記基板上に、下から上へとこの順に堆積されている、請求項7に記載の有機光電子素子。
【請求項9】
前記第2の電極、前記活性層、及び前記第1の電極が、前記基板上に、下から上へとこの順に堆積されている、請求項7に記載の有機光電子素子。
【請求項10】
前記活性層が少なくとも1種のn型有機半導体化合物および少なくとも1種のp型有機半導体化合物を含み、前記n型有機半導体化合物が請求項1に記載の有機半導体化合物の1つである、請求項7に記載の有機光電子素子。
【請求項11】
前記p型有機半導体化合物が、以下の基
【化8】




からなる群から選択される、請求項10に記載の有機光電子素子。
【請求項12】
前記第1の電極と前記活性層との間に配置された第1のキャリア輸送層、および
前記第2の電極と前記活性層との間に配置された第2のキャリア輸送層をさらに含む、請求項7に記載の有機光電子素子。
【請求項13】
前記第2の電極と前記活性層との間に配置された第1のキャリア輸送層、および
前記第1の電極と前記活性層との間に配置された第2のキャリア輸送層をさらに含む、請求項7に記載の有機光電子素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及び該化合物を含有する光電子素子に関する。この化合物は特に良好な物理的及び化学的特性を有し、環境に優しい有機溶媒で処理して、環境への影響をより低くする有機半導体化合物の生産のための利便性を向上させることができ、また、赤外線範囲において優れた応答値を有する有機光電子素子を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、より汎用性があり、より低コストの電子素子を製造することに対する需要が高まっており、したがって、有機半導体化合物(OSC)に対する需要が高まっている。この現象は、従来の半導体材料に比べて、有機半導体化合物の方が、光吸収範囲が広く、光吸収係数が大きく、構造が調整可能であることが主な理由である。光吸収範囲、エネルギー準位、および溶解度に関して、それらはすべて、対象の要求に応じて調整することができる。また、有機材料は有機素子の製造の観点から、低コスト、柔軟性、低毒性、および量産適性という利点を有し、様々な分野において有機光電子材料の競争力を高めることができる。そのような化合物は、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機光検出器(OPD)、有機光起電力(OPV)、センサ、記憶素子、および論理回路の様々な素子もしくはアセンブリを含み、広範囲に適用することができる。その中で、有機半導体材料は、上述の用途の素子もしくはアセンブリにおいて通常、厚さ約50nm~1μmの薄い層の形態で存在する。
【0003】
有機光検出器(OPD)は、近年、有機フォトエレクトロニクスの新たな分野となっている。このような装置は環境中の様々な光源を検出することができ、医療、健康管理、インテリジェント駆動、無人航空機、デジタルホームなどの応用分野で使用される。したがって、異なる応用分野に対して異なる材料要件が存在する。さらに、有機材料の使用は、良好な可撓性を有するデバイスを可能にする。材料科学の発展の恩恵を受けて、OPDは、薄層にすることができるだけでなく、特定の波長帯域の光を吸収することもできる。異なる光源によれば、市販されている製品は、異なる帯域の光を吸収する必要がある。したがって、有機材料を用いることにより、必要な波長帯域を効果的に吸収して干渉を低減することができる吸収範囲を調整することができ、有機材料の高い消光係数によっても検出効率を効果的に向上させることができる。近年、OPDの発展は、紫外線および可視光から近赤外線(NIR)に及んでいる。
【0004】
性能に関して、有機光検出器における活性層の材料はデバイスの性能に直接寄与するため、活性層は、重要な役割を果たす。活性層の材料は、ドナーおよびアクセプターからなる。一方では、共通ドナー材料が有機ポリマー、オリゴマー、または限定された分子単位を含む。今日では、D-Aタイプ共役ポリマーがドナーの中で主流となっている。ポリマー中の電子リッチユニットと電子欠損ユニットとの間の相互作用を通して、形成されるプッシュプル電子効果を使用して、ポリマーのエネルギー準位およびエネルギーギャップを制御することができる。一方、マッチングアクセプター材料は、通常、約400~600nmの光吸収範囲を有する、高い導電性を有するフラーレン誘導体である。さらに、グラフェン、金属酸化物、または量子ドット(QD)も含まれる。しかしながら、フラーレン誘導体の構造は調節することが困難であり、吸収波長帯およびエネルギー準位の範囲が限定されるため、ドナーおよびアクセプター材料の全体的な整合が制限される。市場の発展に伴い、近赤外線の範囲内の材料に対する需要は徐々に増加している。共役ポリマードナーの光吸収範囲は近赤外範囲に調整することができるが、フラーレンアクセプターの限界により、十分に一致しない場合がある。最終的に、従来のフラーレン受容体に代わる非フラーレン受容体化合物の開発は、活性層材料のブレークスルーにおいて特に重要になる。
【0005】
しかしながら、非フラーレンアクセプター化合物の開発は、化合物の形態を制御することが容易ではなく、したがって低い電力変換効率をもたらすため、初期段階では非常に困難であった。しかしながら、2015年以降、非フラーレンアクセプターに関する多くの研究はそれらの電気的性能を著しく改善し、したがって、非フラーレンアクセプターを競争的な選択肢にしている。この変化は主に、合成法の進歩および材料設計戦略の改善などによるものである。フラーレン受容体に適合させるために以前に開発された広範囲のドナー材料も、非フラーレン受容体化合物の開発に間接的に寄与している。
【0006】
現在、非フラーレンアクセプター化合物材料の開発は主に、2つの電子欠損ユニットを有する1つの電子リッチな中心単位からなるA-D-Aモードの分子構造にあり、ここで、Dは通常、ベンゼン環およびチオフェンからなる分子であり、Aは、通常、インダノン-シアノ(IC)誘導体である。分子構造の別のモードは1つの電子欠損ユニットの中心を有するA´-D-A-D-A´モードであり、ここでは、性能を高めるために、硫黄原子などの分子がしばしば使用される。
【0007】
インテリジェント駆動および無人航空機の分野では、信号が強すぎる可視光を避けるために、吸収帯としてNIRを採用する傾向がある。さらに、より良好な浸透および長距離検出の特性を有するためには、適用波長は1,000nmを超える必要がある。さらに、環境保護規制の要件および様々な国における良好な処理操作性に応じて、湿式プロセス操作に役立つように、材料プロセス中に環境に優しい溶媒を可能な限り使用しなければならない。現在、関連する可能性を有する有機半導体材料はドナー-アクセプターまたは小分子構造のいずれかを有するポリマーであり、<1000nmの吸光度範囲でのみ良好に機能するが、>1000nmの材料の全体的な成分性能は不良であり、さらに、溶液プロセスで使用される溶媒は主にハロゲンを含有する有機溶媒であり、環境に大きな影響を及ぼす。したがって、赤外領域で優れた光応答性能を有し、溶液プロセス中にハロゲンを含まない有機溶媒を使用する有機半導体化合物を開発する必要性が差し迫っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前段における現在の材料の欠点に関する問題を考慮すると、本発明の目的は先行技術に基づく有機半導体化合物の欠点を克服することができる新規な有機半導体化合物、特にn型有機半導体化合物を提供することであり、一方、1,000nmを超える光応答および良好なデバイス性能、ならびに製造プロセス中に実証された容易な合成、例えば良好な加工性および環境に優しい溶媒への良好な溶解性を含む、1つまたは複数の有利な特性を提供し、したがって、大規模製造、すなわち、溶液処理方法による大量生産を容易にする。
【0009】
本発明の別の目的は、本発明の有機半導体化合物を含む新規な有機光電子素子であって、その光応答性が1000nmを超え、優れた外部量子効率を有する有機光電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は下記式で表される有機半導体化合物を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Aは、以下の基
【0013】
【化2】
【0014】
から選択される基であり、
xは、0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択され、
~Aは、それぞれ、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、
a、b、及びcは、0から5の間の整数である。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明はさらに、基板と、第1の電極および第2の電極を含む、基板上に配置された電極モジュールと、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された活性層と、を備え、前記活性層が本発明に記載の有機半導体化合物を少なくとも1つ含み、前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも一方が、透明または半透明である、有機光電子素子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図1B】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図1C】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図1D】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図1E】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図1F】本発明の有機光電子素子の構造の概略図である。
図2A】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図2B】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図2C】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図3A】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図3B】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図4A】本発明の有機光電子素子についての実験結果のグラフである。
図4B】本発明の有機光電子素子についての実験結果のグラフである。
図5A】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図5B】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図6A】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図6B】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図7A】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
図7B】本発明の有機光電子素子の実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の有機半導体化合物は、合成が容易であるという特性を有するだけでなく、製造工程中に一般的な溶媒に対して良好な加工性及び溶解性をも示すため、溶液工程中の大規模な製造が容易である。
【0018】
本発明による有機半導体化合物の調製は、本発明を包含する技術分野における通常の知識を有する者に公知の方法および文献の記載に基づいて達成することができ、これを実験実施例においてさらに説明する。
【0019】
本発明により提供される有機半導体化合物は、下記式で表される:
【0020】
【化3】
【0021】
式中、Aは、以下の基
【0022】
【化4】
【0023】
から選択される基であり、
xは、0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択され、
~Aは、それぞれ、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、
a、b、及びcは、0から5の間の整数である。
【0024】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、これは単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは1、2、3、4または5個の縮合環または非縮合環、および場合により1つ以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0025】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの複素芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、ここで、1個以上の環状C原子はヘテロ原子であり、好ましくはN、O、S、Si、およびSe置換基から選択され、これは単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは1、2、3、4、または5個の縮合環または非縮合環、および場合により1個以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0026】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルキルまたはアルコキシ(すなわち、CH基の1つが-O-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2、3、4、5、6、7、8、12または16個の炭素原子を有し、したがって、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシルもしくはヘキサデシル;またはエトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシもしくはヘキサデシルオキシ;またはメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシルもしくはペンタデシル;またはノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、トリデシルオキシもしくはテトラデシルオキシである。
【0027】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルケニル(すなわち、アルキル基中の1個以上のCH基が-CH=CH-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2~10個のC原子を有し、したがって、好ましくは、ビニル;プロペン-1-、2-イル;ブテン-1-、2-または3-イル;ペンテン-1-、2-、3-もしくは4-イル;ヘキセン-1-、2-、3-、4-もしくは5-イル;ヘプテン-1-、2-、3-、4-、5-もしくは6-イル;オクテン-1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-イル;ノネン-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-イル;またはデセン-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-もしくは9-イルである。
【0028】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rは好ましくはチオアルキル(すなわち、CH基の1つが-S-で置換されている)であり得る。特に好ましい直鎖は、チオメチル(-SCH)、1-チオエチル(-SCHCH)、1-チオプロピル(=-SCHCHCH)、1-(チオブチル)、1-(チオペンチル)、1-(チオヘキシル)、1-(チオヘプチル)、1-(チオオクチル)、1-(チオノニル)、1-(チオデシル)、1-(チオウンデシル)または1-(チオドデシル)を含み、好ましくはsp混成ビニル炭素原子に近接するCH基が置換されている。
【0029】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rのハロゲンは、F、Cl、BrまたはIを含むことができる。
【0030】
好ましい実施例において、前記有機半導体化合物のAは、以下の基
【0031】
【化5】
【0032】
【0033】
からなる群から選択され、
式中、U、U、及びUは、O、S、及びSeから選択され、
yは、0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される。
【0034】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、これは単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは1、2、3、4もしくは5個の縮合環または非縮合環、および場合により1つ以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0035】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの複素芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、ここで、1個以上の環状C原子はヘテロ原子であり、好ましくはN、O、S、Siおよび置換基から選択され、これらは単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは1、2、3、4もしくは5個の縮合環または非縮合環、および場合により1個以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0036】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルキルまたはアルコキシ(すなわち、CH基の1つが-O-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2、3、4、5、6、7、8、12または16個の炭素原子を有し、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシルもしくはヘキサデシル;またはエトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシもしくはヘキサデシルオキシ;またはメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシルもしくはペンタデシル;またはノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、トリデシルオキシもしくはテトラデシルオキシである。
【0037】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルケニル(すなわち、アルキル基中の1個以上のCH基が-CH=CH-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2~10個のC原子を有し、したがって、好ましくは、ビニル;プロペン-1-、2-イル;ブテン-1-、2-もしくは3-イル;ペンテン-1-、2-、3-もしくは4-イル;ヘキセン-1-、2-、3-、4-もしくは5-イル;ヘプテン-1-、2-、3-、4-、5-もしくは6-イル;オクテン-1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-イル;ノネン-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-イル;またはデセン-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-もしくは9-イル。
【0038】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rは好ましくはチオアルキル(すなわち、CH基の1つが-S-で置換されている)であり得る。特に好ましい直鎖は、チオメチル(-SCH)、1-チオエチル(-SCHCH)、1-チオプロピル(=-SCHCHCH)、1-(チオブチル)、1-(チオペンチル)、1-(チオヘキシル)、1-(チオヘプチル)、1-(チオオクチル)、1-(チオノニル)、1-(チオデシル)、1-(チオウンデシル)または1-(チオドデシル)を含み、好ましくはsp混成ビニル炭素原子に近接するCH基が置換されている。
【0039】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rのハロゲンは、F、Cl、BrまたはIを含むことができる。
【0040】
より好ましくは、Aが以下の基
【0041】
【化6】
【0042】
からなる群から選択される。
【0043】
本発明の好ましい実施例において、前記有機半導体化合物のAは、以下の基
【0044】
【化7】
【0045】
からなる群から選択され、
式中、WおよびWはそれぞれO、S、及びSeから選択され、
zは0から5の間の整数であり、
Arは、単環式又は多環式である芳香族環又は複素環式芳香族環基であり、無置換であるか又はハロゲン原子で置換されており、
は、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される。
【0046】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、これは単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは1、2、3、4もしくは5個の縮合環または非縮合環、および場合により1つ以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0047】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Arの複素芳香族環は好ましくは4~30個の環状C原子を有し、ここで、1個以上の環状C原子は好ましくはN、O、S、SiおよびSe置換基から選択される複素原子であり、単環式または多環式であり、縮合環、好ましくは、1、2、3、4もしくは5個の縮合環または非縮合環、および場合により1個以上のハロゲン置換基を含むこともできる。
【0048】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルキルまたはアルコキシ(すなわち、CH基の1つが-O-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2、3、4、5、6、7、8、12または16個の炭素原子を有し、したがって、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシルもしくはヘキサデシル;またはエトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシもしくはヘキサデシルオキシ;またはメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシルもしくはペンタデシル;またはノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、トリデシルオキシもしくはテトラデシルオキシである。
【0049】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rはアルケニル(すなわち、アルキル基中の1個以上のCH基が-CH=CH-で置換されている)、直鎖または分枝鎖であり得る。特に好ましい直鎖は、2~10個のC原子を有し、好ましくは、ビニル;プロペン-1-、2-イル;ブテン-1-、2-もしくは3-イル;ペンテン-1-、2-、3-もしくは4-イル;ヘキセン-1-、2-、3-、4-もしくは5-イル;ヘプテン-1-、2-、3-、4-、5-もしくは6-イル;オクテン-1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-イル;ノネン-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-イル;またはデセン-1-、2-、3-、4-、5-6-、7-、8-もしくは9-イルである。
【0050】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、Rは好ましくはチオアルキル(すなわち、CH基の1つが-S-で置換されている)であり得る。特に好ましい直鎖は、チオメチル(-SCH)、1-チオエチル(-SCHCH)、1-チオプロピル(=-SCHCHCH)、1-(チオブチル)、1-(チオペンチル)、1-(チオヘキシル)、1-(チオヘプチル)、1-(チオオクチル)、1-(チオノニル)、1-(チオデシル)、1-(チオウンデシル)または1-(チオドデシル)を含み、好ましくはsp2混成ビニル炭素原子に近接するCH基が置換されている。
【0051】
本発明の有機半導体化合物の化学式において、本発明のRは、F、Cl、Br、またはIを含む。
【0052】
より好ましくは、Aが、以下の基
【0053】
【化8】
【0054】
からなる群から選択される。
【0055】
好ましい実施例において、前記有機半導体化合物のAは、以下の基
【0056】
【化9】
【0057】
【0058】
からなる群から選択され、
~Rは、水素原子、ハロゲン、シアノ基、C1~C30直鎖アルキル、C3~C30分岐アルキル、C1~C30シリル基、C2~C30エステル基、C1~C30アルコキシ、C1~C30チオアルキル、C1~C30ハロアルキル、C2~C30アルケン、C2~C30アルキン、C2~C30シアノ置換アルキル、C1~C30ニトロ置換アルキル、C1~C30ヒドロキシ置換アルキル、C3~C30ケト置換アルキルの基からなる群から選択される。
【0059】
<本発明の有機半導体化合物の調製の実施例および詳細な説明>
(化合物4の調製)
【0060】
【化10】
【0061】
250mLの三つ口フラスコを用意し、機械的に攪拌する。反応フラスコの気体出口をNaOH(aq)に入れ、氷浴中でHSO(24.6mL)、発煙HSO(53mL)、及び発煙HNO(29.2mL)を順に加える。次いで、M1(20g、82.7mmol)を少しずつゆっくり加えた。材料を添加した後、温度をゆっくりと室温に戻し、反応を3時間撹拌させる。反応後、反応混合物を角氷に注ぎ、よく撹拌する。角氷が溶けた後、固体を濾過によって回収し、水ですすぐ。MeOHで固体を再結晶化して、淡黄色固体M2(24g、収率87%)を得た。同定の観点では、M2分子は水素原子を含まないので、プロトンNMR実験を行う必要はなく、実験の次の工程に直接進んだ。
【0062】
【化11】
【0063】
M2(24g、7.23mmol)および濃縮HCl(240mL)を500mLビーカーに加え、磁石で撹拌した。0℃で、Sn(60g、50.6mmol)をゆっくり加え、3時間撹拌する。反応後、粗生成物の温度を-20℃未満に下げ、生成物を沈殿させる。クリーム色の固体を濾過によって回収し、固体を水ですすぎ、M3(14g、収率60%)を得た。純度のさらなる特定を行う必要はなく、実験の次の工程に直接進んだ。
【0064】
【化12】
【0065】
M3(1.6g、8.55mmol)、M21(7.0g、9.41mmol)、KCO(2.4g、17.10mmol)、およびEtOH(80mL)を250mLの反応フラスコに加え、磁石で撹拌した。反応温度を40℃に設定し、18時間撹拌した。反応後、溶媒を除去し、残留物をヘプタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=3/1)で精製し、黄緑色の油状物質M4(3.7g、収率53%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ7.95(s、2H)、7.01(s、2H)、2.78(d、J=7.0Hz、4H)、1.76(s、2H)、1.33-1.27(m、48H)、0.89-0.85(m、12H)。
【0066】
【化13】
【0067】
M4(3.7g、4.52mmol)、THF(74mL)、およびDMF(37mL)を、250mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加した。0℃でNBS(724mg、4.07mmol)を加え、次いでゆっくりと室温に戻し、18時間反応させる。反応後、反応混合物をヘプタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=3/1)で精製し、暗緑色の油状物質M5(1.8g、収率45%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ7.93(s、1H)、7.07(s、1H)、7.03(s、1H)、2.78-2.76(m、4H)、1.76(s、2H)、1.33-1.25(m、48H)、0.89-0.85(m、12H)。
【0068】
【化14】
【0069】
M5(1.8g、2.01mmol)およびDCE(90mL)を、250mLの三つ口反応フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物を窒素で30分間パージした。別の100mLの二つ口の反応フラスコに無水DMF(7.8mL、100.3mmol)を加え、氷浴中でPOCl(1.1mL、12.0mmol)をゆっくり加え、30分間撹拌し、ビルスマイヤー・ハック試薬を生成した。ビルスマイヤー・ハック試薬を250mLの三つ口フラスコに注入し、65℃で18時間反応させる。反応後、反応混合物を室温に冷却した。ジクロロメタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=1/1)で精製し、暗緑色の油状物質M6(1.3g、収率70%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ10.57(s、1H)、7.21(s、1H)、7.18(s、1H)、2.81-2.78(m、4H)、1.78(ms2H)、1.34-1.28(m、48H)、0.89-0.86(m、12H)。
【0070】
【化15】
【0071】
M6(100mg、0.16mmol)、M11(320mg、0.36mmol)、およびTHF(3mL)を、100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。Pddba(6mg、0.006mmol)とP(o-tol)(8mg、0.026mmol)を加え、60℃で2時間反応させる。反応後、セライトショートカラムを通して触媒を除去する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/酢酸エチル=95/5)により精製し、暗緑色固体M12(280mg、収率40%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ10.54(s、2H)、7.91(s、2H)、7.25(s、2H)、7.24(s、2H)、4.18-4.13(m、2H)、2.86-2.80(m、8H)、2.05-1.93(m、1H)、1.84-1.82(m、4H)、1.48-1.23(m、104H)、1.01-0.88(m、30H)。
【0072】
【化16】
【0073】
M12(280mg、0.141mmol)、2-(5,6-ジクロロ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イリデン)マロノニトリル(150mg、0.566mmol)、およびCHCl(8.4mL)を100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。ピリジン(0.14mL)を加え、室温で3時間反応させる。反応後、MeOH(28mL)を加え、30分間撹拌し、濾過により固体を回収する。固体をアセトンですすぎ、暗青色固体化合物4(240mg、収率69%)を得た。H NMR(500MHz、100℃、ClCDCDCl):δ9.73(s、2H)、8.80(s、2H)、7.85~7.78(m、4H)、7.62(s、2H)、7.45(s、2H)、4.16~4.08(m、2H)、3.05(d、J=5.5Hz、4H)、2.68(m、4H)、2.13(m、1H)、2.10~2.00(m、2H)、1.77(m、2H)、1.58~1.36(m、104H)、1.14~0.92(m、30H)。
【0074】
(化合物5の調製)
【0075】
【化17】
【0076】
M10(370mg、0.35mmol)、M6(650mg、0.70mmol)、およびTHF(11.1mL)を、100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。Pddba(13mg、0.014mmol)およびP(o-tol)(17mg、0.056mmol)を添加し、60℃で2時間反応させる。反応後、セライトショートカラムを通して触媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=1/1)により粗製物を精製し、暗緑色の固形物M13(500mg、収率66%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ10.58(s、1H)、10.57(s、1H)、7.77(s、1H)、7.46(s、1H)、7.31~7.30(m、1H)、7.27(s、1H)、7.24(s、1H)、7.21(s、1H)、2.82(d、J=6.5Hz、6H)、2.79(d、J=7.0Hz、2H)、2.02~1.92(m、4H)、1.80(m、4H)、1.44~1.06(m、122H)、0.90~0.77(m、36H)。
【0077】
【化18】
【0078】
M13(500mg、0.23mmol)、トリブチル(1,3-ジオキソラン-2-イルメチル)ホスホニウムブロミド(341mg、0.92mmol)、および無水THF(15mL)を、100mLの三つ口フラスコに、磁気撹拌しながら添加した。60%NaH(55mg、1.39mmol)を0℃で添加し、反応混合物をゆっくりと室温に戻し、18時間反応させた。次に希塩酸(10%、1.5mL)をゆっくり加え、室温で30分間反応させる。反応後、酢酸エチル/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥後、カラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/酢酸エチル=9/1)で精製し、赤色固形物M14(420mg、収率82%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ9.75(d、J=3.5Hz、1H)、9.74(d、J=3.0Hz、1H)、8.20(d、J=6.0Hz、1H)、8.17(d、J=5.5Hz、1H)、7.65(s、1H)、7.35(s、1H)、7.28-7.27(m、1H)、7.24(s、1H)、7.20(s、1H)、7.17(s、1H)、6.80-6.75(m、2H)、2.84-2.77(m、8H)、2.03-1.95(m、4H)、1.81(m、4H)、1.37-1.09(m、122H)、0.89-0.78(m、36H)。
【0079】
【化19】
【0080】
M14(420mg、0.190mmol)、2-(5,6-ジクロロ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イリデン)マロノニトリル(200mg、0.758mmol)、およびクロロホルム(4.2mL)を100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。ピリジン(0.21mL)を加え、室温で3時間反応させる。反応後、MeOH(28mL)中に加え、30分間撹拌する。固体を濾過により回収する。固体をアセトンですすぎ、カラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/クロロホルム=1/1)により固体を精製して、暗青色固体生成物、化合物5(300mg、収率58%)を得た。H NMR(500MHz、100℃、ClCDCDCl):δ9.09(t、J=11.3Hz、1H)、9.01(t、J=11.0Hz、1H)、8.78-8.77(m、2H)、8.55-8.53(m、2H)、8.13-8.05(m、2H)、7.96(s、1H)、7.95(s、1H)、7.90(s、1H)、7.58(s、1H)、7.51(s、1H)、7.50(s、1H)、7.37(s、1H)、7.34(s、1H)、2.94-2.90(m、8H)、2.18-2.10(m、4H)、1.94-1.90(m、4H)、1.62-1.17(m、122H)、0.98-0.87(m、36H)。
【0081】
(化合物6の調製)
【0082】
【化20】
【0083】
M3(2g、10.69mmol)、M15(7.9g、11.76mmol)、KCO(3g、21.38mmol)、およびEtOH(100mL)を250mLの反応フラスコに磁気撹拌しながら添加し、40℃で2時間反応させた。反応後、溶媒を除去し、ヘプタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=2/1)で精製し、黄緑色の油状物質M16(3.7g、収率46%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ7.89(s、2H),7.01(d、J=4.0Hz、2H)、6.65(d、J=3.5Hz、2H)、2.77(d、J=7.0Hz、4H)、1.68(s、2H)、1.31-1.27(m、48H)、0.90-0.86(m、12H)。
【0084】
【化21】
【0085】
M16(2g、2.67mmol)、THF(30mL)、およびDMF(30mL)を100mLの三つ口フラスコに加えた。0℃でNBS(475mg、2.67mmol)中に加え、反応混合物をゆっくりと室温に戻し、2時間反応させた。反応後、ヘプタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥する。カラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=3/1)により粗生成物を精製し、暗緑色油性物質M17(700mg、収率36%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ7.90(s、1H),7.10(s、1H),7.07(d、J=3.5Hz、1H)、6.67(d、J=3.5Hz、1H)、6.64(d、J=3.5Hz、1H)、2.79-2.76(m、4H)、1.68(s、1H)、1.58(s、1H)、1.31-1.19(m、48H)、0.89-0.86(m、12H)。
【0086】
【化22】
【0087】
M17(700mg、0.85mmol)およびDCE(35mL)を、100mLの三つ口反応フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物を窒素で30分間パージした。別の100mLの二つ口反応フラスコに無水DMF(3.3mL、42.3mmol)を加え、氷浴中でPOCl(0.5mL、5.07mmol)中に徐々に加え、30分間撹拌してビルスマイヤー・ハック試薬を生成した。ビルスマイヤー・ハック試薬を100mLの三つ口フラスコに注入し、65℃で1時間反応させる。反応後、混合物を室温に冷却した。ジクロロメタン/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=1/1)で精製し、暗緑色固体M18(570mg、収率79%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ10.57(s、1H)、7.24-7.21(m、2H)、6.71-6.68(m、3H)、2.81-2.79(m、4H)、1.70(s)、1.31-1.27(m、48H)、0.90-0.86(m、12H)。
【0088】
【化23】
【0089】
M10(250mg、0.24mmol)、M18(407mg、0.47mmol)、およびTHF(7.5mL)を、100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。Pddba(9mg、0.009mmol)およびP(o-tol)(12mg、0.038mmol)に加え、60℃で18時間反応させる。セライトショートカラムを通して触媒を除去する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=1/1)で精製し、暗緑色固体M19(370mg、収率72%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ10.58(s、1H)、10.57(s、1H)、7.82(s、1H)、7.44(s、1H)、7.38-7.38(m、1H)、7.34(d、J=4.0Hz、1H)、7.30(d、J=3.5Hz、1H)、7.27(s、1H)、6.74-6.69(m、4H)、2.84-2.81(m、6H)、2.80(d、J=7.0Hz、2H)、2.03-2.00(m、4H)、1.72(m、4H)、1.34-1.04(m、122H)、0.90-0.77(m、36H)。
【0090】
【化24】
【0091】
M19(370mg、0.18mmol)、トリブチル(1,3-ジオキソラン-2-イルメチル)ホスホニウムブロミド(270mg、0.73mmol)、および無水THF(11.1mL)を、100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加した。60%NaH(44mg、1.10mmol)中に0℃で添加し、反応混合物をゆっくりと室温に戻し、18時間反応させた。次に希塩酸(10%、1.11mL)を徐々に加え、室温で30分間反応させる。反応後、酢酸エチル/HOで3回抽出し、有機層を回収し、MgSOで乾燥する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘプタン/ジクロロメタン=1/2)で精製し、赤色固体M20(290mg、収率76%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl):δ9.74-9.72(m、2H)、8.22-8.18(m、2H)、7.71(s、1H)、7.34(s,2H)、7.30(d、J=4.0Hz、1H)、7.22(d、J=3.5Hz、1H)、6.79-6.70(m、6H)、2.83(d、J=6.5Hz、6H)、2.79(d、J=7.0Hz、2H)、2.03-1.97(m、4H)、1.74(m、4H)、1.35-1.06(m、122H)、0.89-0.77(m、36H)。
【0092】
【化25】
【0093】
M20(290mg、0.140mmol)、2-(5,6-ジクロロ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イリデン)マロノニトリル(147mg、0.558mmol)、およびクロロホルム(8.7mL)を、100mLの三つ口フラスコに磁気撹拌しながら添加し、反応混合物をアルゴンで30分間パージした。ピリジン(0.15mL)に加え、室温で3時間反応させる。反応後、MeOH(29mL)に加え、30分間撹拌し、固体を濾過により回収する。固体をアセトンですすぎ、暗青色固体化合物6(310mg、収率88%)を得た。H NMR(500MHz、100℃、ClCDCDCl):δ8.96-8.87(m、2H)、8.72(s、2H)、8.52(m、2H)、8.18-8.13(m、2H)、7.90-7.89(m、3H)、7.54-7.50(m、3H)、7.41-7.37(m、2H)、6.80-6.77(m、4H)、2.89-2.86(m、8H)、2.14-2.11(m、4H)、1.80(m、4H)、1.61-1.15(m、122H)、0.93-0.83(m、36H)。
【0094】
本発明に基づく有機半導体化合物の例を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
さらに、本発明の有機半導体化合物は、光学、電気光学的、電子工学的、エレクトロ発光または光起電性の素子またはデバイスにおける電荷輸送、半導電性、導電性、光導電性、または発光性の材料として使用される。そのような電子素子またはデバイスにおいて、本発明の有機半導体化合物は一般に、薄層または薄膜として適用される。
【0101】
さらに、本発明の有機半導体化合物は有機光電子素子のための電子受容体またはn型半導体として作用するのに適しており、同様に、有機光検出器(OPD)デバイスなどの分野における適用のためのn型およびp型半導体の混合物を調製するのに適している。ここで、「n型」または「n型半導体」という用語は伝導電子の密度が移動する正孔の密度を超える外因性半導体を指し、一方、「p型」または「p型半導体」という用語は、移動する正孔の密度が伝導電子の密度を超える外因性半導体を指す(J. Thewlis, Concise Dictionary of Physics, Pergamon Press, Oxford, 1973も参照されたい)。
【0102】
本発明の有機半導体化合物を加工する場合、第1の成分の調製のために、電荷輸送、半導電性、導電性、光導電性、正孔阻止、電子阻止の特性を有する1種以上の低分子化合物および/またはポリマーを導入し、有機半導体化合物に混合する必要がある。
【0103】
さらに、本発明の有機半導体化合物は、第2の成分の調製のために、1種以上の有機溶媒(好ましい溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル)およびそれらの混合物(例えば、トルエン、o-キシレン、p-キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼンまたは1,2,4-トリメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン)と混合することができる。
【0104】
なお、本発明の有機半導体化合物は、本明細書に記載のデバイスのパターン化OSC層にも使用することができる。今日のマイクロエレクトロニクス用途では、一般に、コスト(すなわち、単位面積当たりに生産されるデバイスの数)および電力消費を低減するために、小さい構造またはパターンを生産することが望ましい。有機半導体化合物を含む薄層のパターニングは例えば、リソグラフィー、電子ビームエッチング技術、またはレーザーパターニングによって実施することができる。
【0105】
本発明による有機半導体化合物の、電子デバイスまたは電気光学デバイスにおける薄層としての適用に関しては、前段落において調製された有機半導体化合物を含有する第1の成分または第2の成分を任意の適切な方法によって堆積させることができる。デバイスの溶液処理コーティングは、真空蒸着技術よりも優れている。本発明の有機半導体化合物からなる第2の成分は、いくつかの溶液処理コーティング技術の使用を可能にする。
【0106】
好ましくは、堆積技術は、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ナイフコーティング、ロール印刷、リバースロール印刷、平版印刷、ドライオフセット(文字セット)印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ブラシコーティング、スロット色素コーティング、またはパッド印刷を含むが、これらに限定されない。
【0107】
したがって、本発明は、有機半導体化合物、または有機半導体化合物からなる第1の成分もしくは第2の成分を含む有機光電子素子も提供する。
【0108】
図1Aに示すように、本発明の第1の実施の形態では、有機光電子素子10が、基板100と、基板100上に配置された第1の電極110と、第1の電極110上に配置され、本発明の少なくとも1つの有機半導体化合物を含む活性層120と、活性層120上に配置された第2の電極130とを備え、第1の電極110及び第2の電極130の少なくとも1つが透明又は半透明である。
【0109】
図1Bに示すように、本発明の第2の実施の形態では、有機光電子素子10が、基板100と、基板100上に配置された第2の電極130と、第2の電極130上に配置され、本発明の少なくとも1つの有機半導電性化合物を含む活性層120と、活性層120上に配置された第1の電極110とを備え、第1の電極110及び第2の電極130の少なくとも1つが透明又は半透明である。
【0110】
上述の基板100は、好ましくは機械的強度および熱的強度を有する透明ガラス基板または透明フレキシブル基板を提供し、透明フレキシブル基板の材料はすなわち、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチルアルデヒド、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、テトラフルオロエチレンエチレン-ペンタフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテルコポリマー、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-エチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミドなどであり得る。
【0111】
上記の第1の電極110は酸化インジウムおよび酸化スズ等の透明性を有する金属酸化物、並びに、ハロゲン(フッ素ドープ酸化スズ、FTO)又は複合金属酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等)でドープされたそれらの誘導体であることが好ましい。
【0112】
上記第2の電極130は、金属酸化物、金属(銀、アルミニウム、または金)、導電性高分子、炭素系導電体、金属化合物、または上記材料を交互に含む導電膜である。
【0113】
好ましくは、有機光電子素子10の活性層120が本発明の有機半導体化合物である少なくとも1つのn型有機半導体化合物と、少なくとも1つのp型有機半導体化合物とを含む。
【0114】
より好ましくは、有機光電子素子10のp型有機半導体化合物は、以下の化学式
【0115】
【化26】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
からなる群から選択される。
【0120】
図1Cに示すように、本発明の第3の実施の形態では、有機光電子素子10が、第1の電極110と活性層120との間に配置された第1のキャリア輸送層140と、第2の電極130と活性層120との間に配置された第2のキャリア輸送層150とをさらに備える。
【0121】
図1Dに示すように、本発明の第4の実施形態では、有機光電子素子10の構成要素の順序が本発明の第1の実施形態と同じである。有機光電子素子10は、第2の電極130と活性層120との間に配置された第1のキャリア輸送層140と、第1の電極110と活性層120との間に配置された第2のキャリア輸送層150とをさらに含む。
【0122】
図1Eに示すように、本発明の第5の実施形態では、有機光電子素子10の構成要素の順序が本発明の第2の実施形態と同じである。有機光電子素子10は、第2の電極130と活性層120との間に配置された第1のキャリア輸送層140と、第1の電極110と活性層120との間に配置された第2のキャリア輸送層150とをさらに含む。
【0123】
図1Fに示すように、本発明の第6の実施形態では、有機光電子素子10の構成要素の順序が本発明の第2の実施形態と同じである。有機光電子素子10は、第1の電極110と活性層120との間に配置された第1のキャリア輸送層140と、第2の電極130と活性層120との間に配置された第2のキャリア輸送層150とをさらに含む。
【0124】
前述の第3~第6の実装方法において、第1のキャリア輸送層は、PEDOT:PSSなどの共役ポリマー電解質;またはポリアクリレートなどのポリマー酸;またはポリトリアリールアミン(PTAA)などの共役ポリマー;またはナフィオンフィルム、ポリエチレンイミン、もしくはポリスチレンスルホネートなどの絶縁ポリマー;またはMoOx、NiOx、WOx、SnOxなどのポリマードープ金属酸化物;またはN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)(1,1’ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPB)、N,N’-ジフェニルN,N´-(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)などの有機小分子化合物;または前述の材料のうちの1つ以上の組合せから選択され得る。
【0125】
前述の第3~第6の実装方法では、第2のキャリア輸送層は、共役ポリマー電解質、例えばポリエチレンイミン;または共役ポリマー、例えばポリ[3-(6-トリメチル)アンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ(9,9-ビス(2-エチルヘキシル-フルオレン)-b-ポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、およびポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)‐alt‐2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)];または小有機化合物、例えばトリス(8-キノリニル)-アルミニウム(III)(Alq3)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;または金属酸化物、例えばZnOx、アルミニウムドープZnO(AZO)、TiOxもしくはそのナノ粒子;または塩、例えばLiF、NaF、CsCO;またはアミン、例えば第1級、第2級または第3級アミンから選択され得る。
【0126】
有機光電子素子に適用された本発明の有機半導体化合物によってもたらされる有効性の改善を説明するために、本発明の有機半導体化合物を含む有機光電子素子は、特性試験および有効性の実演のために調製される。結果を要約すると以下の通りである。
【0127】
(材料吸光度スペクトル試験)
紫外可視分光光度計を用いて、試料の吸収スペクトルを測定する。まず、試料を測定する前に、クロロホルムを加えて試料を溶解させる。固体状態で測定する場合、測定を行う前に試料を薄膜に調製しなければならない。薄膜試料の調製のため、試料の濃度を5重量%に設定する。基板としてガラスを用い、スピンコート法によりガラス上に薄膜をコーティングし、固体薄膜の吸収を測定する。各試料の吸収スペクトルを図2A図2Cに示し、測定結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
化合物4、5、および6を用いて調製された有機光電子素子の試験の結果は、3つの材料全てが良好な溶解度(o-キシレン中14mg/mL)を有することを示した。化合物4は、1339nmの吸収開始値を有する一方、化合物5および6は1510nmおよび1529nmの吸収開始値さえも有することから、本発明の有機半導体化合物は1000nmを超える優れた吸収性を有し、より長波長範囲の適用に適していることが示される。比較例1は、J. Mater. Chem. C, 2019, 7, 8820-8824によるものであり、比較例2はPolym. Chem. 2015, 6, 6836-6844によるものであり、比較例3はAppl. Phys. Lett. 2006, 89. 081106に開示されたものであり、上記の文献は、本発明の対照群について言及した情報源である。比較例1と比較例3の吸光度は、1200nmにすぎなかった。比較例2の吸光度開始値は1333nmに達するが、最大値は835nmにとどまり、その吸光度スペクトルは1000nmを超えると充分ではない。したがって、本発明の有機半導体材料の革新的な構造とは別に、吸収スペクトルの延伸を可能にして長い赤外線部をカバーすることができる高度な技術が発明される。
【0130】
(電気化学的特性試験)
電気化学的分析装置を使用して、酸化および還元電位を記録する。電解質として0.1M BuNPF(テトラ-1-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)アセトニトリル溶液を用いる。0.01M AgNO(硝酸銀)および0.1M TBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)を、アセトニトリル溶液中でAg/AgCl基準電極に添加した。白金(Pt)を対極とし、炭素ガラス電極を作用極とする。クロロホルムを用いて材料を溶解し、それらを作用電極上に滴下し、乾燥後、薄膜を形成した。測定中はスキャン速度50mV/secを採用し、同時に酸化還元曲線を記録する。CVフィギュアを作製する場合、その酸化還元電位を得ることができる。フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc)を内部基準電位とし、補正を行い、HOMOおよびLUMOの値を導出する。計算式は以下の通りである:
HOMO=-(4.71eV+(Eox-Eref))
LUMO=HOMO+E opt
各試料の試験結果を表2に示す。
【0131】
(OPD性能試験)
基板として、シート抵抗率を有する予めパターン化されたITO被覆ガラスを採用する。中性洗剤、脱イオン水、アセトン、およびイソプロパノール中で、基板を順次超音波処理する。それぞれの工程において、15分間すすぎを行う。洗浄した基板を、UV-Oクリーナーで15分間さらに処理した。AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子)のトップコーティングを、2,000rpmのスピン速度で40秒間、ITO基板上に塗布する。120℃で5分間、空気中で加熱しながら基板を乾燥させる。活性層溶液をo-キシレン(ドナー、すなわちポリマーと、アクセプター、すなわち小分子との重量比率が1:1)中で調製する。ポリマーの濃度は20mg/mlである。ポリマーを完全に溶解させるために、活性層液をホットプレート上で、100℃で少なくとも3時間攪拌する。活性層溶液をPTFEメンブレンフィルター(孔径0.45~1.2μm)で濾過し、活性層溶液を1時間加熱する。その後、溶液を室温まで冷却してからコーティングする。膜厚が100~300nmの範囲内になるように塗布速度を制御する。実施後、薄膜を100℃で5分間アニール処理し、次いで、薄膜を蒸発器に移した。3×10-6トル未満の正孔輸送層として、三酸化モリブデンの薄層(8nm)の堆積。Keithley(商標)2,400ソースメーターを使用して、光がない状態で、暗電流(ID、-8Vのバイアス電圧)を記録する。次に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ付きキセノンランプ、100mWcm-2)を使用して、空気中および室温での素子の光電流(Iph)の特性を測定する。スペクトル上の不整合部分が一致することができるように、光強度の較正のための参照セルとして、KG5フィルタを有する標準的なシリコンダイオードを使用する。外部量子効率(EQE)の測定には外部量子効率計を使用し、測定範囲は300~1,800nm(バイアス電圧0~-8V)である。光源の校正にはケイ素(300~1,100nm)およびゲルマニウム(1,100~1,800nm)を使用する。なお、応答性(R)及び検出性(D)は、以下の式により算出される
【0132】
【数1】
【0133】
ここで、λは波長、qはユニット電荷、hはプランク定数、cは光速、Jは暗電流密度である。
【0134】
本発明の比較例3は、Appl. Phys. Lett. 2006, 89, 081106の実験結果から引用される。応答性及び検出性の試験値は比較例3に直接的に記載されていないため、本願の実験値をもとに、表3の値を算出する。
【0135】
各試料の電流密度および外部量子効率を図3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、6B、7Aおよび7Bに示し、試験の結果を表3および表4に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
EQEの性能について、化合物5と化合物6は共に1000nmを超え、暗電流は-2Vのバイアスでそれぞれ1.1×10-6および2.3×10-5A/cmに達した。P3と化合物6との1050nmでの応答性は0.013A/Wであり、P3と化合物5との1350nmでの応答性は0.011A/Wであった。結果は、比較例3(<0.01A/W)と比較して有意に改善された。検出性試験のために、化合物5を含むP14は1050および1350nmの両方で1010ジョーンズを超え、化合物6を含むP3は1050および1350nmの両方で10ジョーンズを超えた。本実施形態では、-2Vのバイアスでの有機光電子素子の適用を試験しただけでなく、-8Vのバイアスでの有機光電子素子の性能をも明らかにした。化合物5を有するP14の暗電流は8.2×10-5A/cmであり、EQEは5.6%であり、応答性は0.047A/Wであり、検出性は1050nmで9.3×10ジョーンズであり、EQEは4.4%であり、応答性は0.048A/Wであり、検出性は1350nmで9.4×10ジョーンズであった。吸光度開始値>1500nmを有する材料の性能におけるブレークスルーが達成された。比較例3の応答性は<0.01A/Wであり、比較例1で明らかにされた物質のEQE応答は300~850nmの範囲に過ぎず、本実施形態はEQE応答性を、1000nmを超えるまで拡大し、応答性の改善された性能および吸収域の拡大を示した。また、有機光電子素子の調製のための溶媒としてo-キシレンを使用する場合、優れた溶解性は、その後の溶液処理操作に有利である。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【外国語明細書】