(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033241
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】フレキシブル回路電極を有する灌注電気生理学バルーンカテーテルのための補強材及び応力緩和
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20230302BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230302BHJP
【FI】
A61B18/12
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134768
(22)【出願日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】17/459,276
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ヒメネス
(72)【発明者】
【氏名】オードリー・ブ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ロドリゲス
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK47
4C267AA06
4C267BB05
4C267BB10
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC19
4C267GG14
(57)【要約】
【課題】カテーテルバルーンを提供すること。
【解決手段】カテーテルバルーンは、近位端部及び遠位端部を有する膜を含む。複数の基材が、膜の周辺に接着されている。使用中に繰り返される応力に耐える接着力の能力は、補強材又は応力緩和を使用し、同時にまた、遠位端部に近接するバルーンの全体的な厚さを最小化することによって改善され得る。補強材は、組み立てられていない膜の一部を含み得る。あるいは、補強材は、接着剤マージン先端を含み得る。応力緩和は、基材の遠位尾部の蛇行部分であり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルバルーンであって、
近位端部及び遠位端部を含む膜と、
前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、前記膜の前記遠位端部の近位に配設されたそれぞれの遠位先端で終端するそれぞれの尾部を含む、複数の基材と、
前記複数の基材の各々と前記膜との間に配設された接着剤と、
前記それぞれの遠位先端及び前記膜の各々の上に配設された補強材と、を含む、カテーテルバルーン。
【請求項2】
前記複数の基材の各々が、遠位灌注孔を含む複数の灌注孔を含み、各それぞれの遠位先端と各それぞれの遠位灌注孔との間の距離が、約1ミリメートル~約3ミリメートルである、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項3】
前記複数の基材が各々、側縁部を含み、前記カテーテルバルーンが、前記側縁部及び前記膜の上に配設された接着剤マージンを更に含む、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項4】
前記補強材が、組み立てられていない膜の一部を含む、請求項3に記載のカテーテルバルーン。
【請求項5】
前記補強材が、接着剤マージン先端を含む、請求項3に記載のカテーテルバルーン。
【請求項6】
前記接着剤マージン先端の一部が、前記膜に接触し、前記膜に接触する前記接着剤マージン先端の前記一部が、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートルだけ前記それぞれの遠位先端から延在する、請求項5に記載のカテーテルバルーン。
【請求項7】
前記複数の基材が、10個の基材を含む、請求項3に記載のカテーテルバルーン。
【請求項8】
カテーテルであって、
内径が約13.5フレンチのルーメンを有するプローブと、
前記ルーメン内に配設されたシャフトであって、前記シャフトが、第1のシャフト部分と、前記第1のシャフト部分と伸縮関係で前記第1のシャフト部分内に部分的に配設された第2のシャフト部分と、を有する、シャフトと、
前記ルーメン内に配設されたカテーテルバルーンであって、前記カテーテルバルーンが、近位端部及び遠位端部を含む膜を有し、前記近位端部が、前記第1のシャフト部分に接続されており、前記遠位端部が、前記第2のシャフト部分に接続されている、カテーテルバルーンと、
前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、前記膜の前記遠位端部の近位に配設されたそれぞれの遠位先端で終端するそれぞれの尾部を含む、複数の基材と、
前記それぞれの遠位先端及び前記膜の各々の上に配設された補強材と、を含む、カテーテル。
【請求項9】
前記膜の内側表面から、前記それぞれの遠位先端のうちの1つを通り、前記補強材の外側表面まで測定された前記バルーンの厚さが、約0.1905ミリメートル(約0.0075インチ)である、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記ルーメン内で前記シャフトを移動させるのに必要な最大力が、約26.69N(約6lbf)未満である、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記複数の基材が各々、側縁部を含み、接着剤マージンが、前記側縁部及び前記膜の上に配設されている、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記補強材が、組み立てられていない膜の一部を含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記補強材が、接着剤マージン先端を含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記複数の基材が、10個の基材を含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項15】
カテーテルであって、
内径が約13.5フレンチのルーメンを有するプローブと、
前記ルーメン内に配設されたシャフトであって、前記シャフトが、第1のシャフト部分と、前記第1のシャフト部分と伸縮関係で前記第1のシャフト部分内に部分的に配設された第2のシャフト部分と、を有する、シャフトと、
前記ルーメン内に配設されたカテーテルバルーンであって、前記カテーテルバルーンが、近位端部及び遠位端部を含む膜を有し、前記近位端部が、前記第1のシャフト部分に接続されており、前記遠位端部が、前記第2のシャフト部分に接続されている、カテーテルバルーンと、
各々が前記膜の前記遠位端部まで延在する前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、蛇行形態の遠位尾部部分を有するそれぞれの遠位尾部を含む、複数の基材と、
前記複数の基材の各々と前記膜との間に配設された接着剤と、を含む、カテーテル。
【請求項16】
前記蛇行形態が、方形波を含む、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記蛇行形態が、曲線波を含む、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記蛇行形態が、約3~約10個の区切りを含む、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記遠位尾部部分の前記蛇行形態の幅が、前記遠位尾部の幅の約1/10~約1/2である、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記複数の基材が、10個の基材を含む、請求項19に記載のカテーテルバルーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示されている主題は、電気生理学的カテーテル、特に、バルーン表面に配設されている電極による心臓組織をアブレーションすることが可能な電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓組織のアブレーションは、心不整脈の治療に使用されている。焼灼エネルギーは、典型的には、先端部分により心臓組織に供給され、この先端部分は、アブレーションされるべき組織に沿って焼灼エネルギーを送達することができる。これらのカテーテルの一部は、三次元構造、例えばワイヤバスケット及びバルーンに配設されている又は組み入れられている、種々の電極から焼灼エネルギーを与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
アセンブリ技術で具現化された、カテーテルバルーンの堅牢性を改善するための解決策が開示されている。カテーテルバルーンは、近位端部及び遠位端部を有する膜を含む。複数の基材、例えば、10個の基材が、膜の周辺に配設される。第1の解決策では、複数の基材の各々は、膜の遠位端部の近位に配設されたそれぞれの遠位先端で終端するそれぞれの尾部を含む。複数の基材の各々は、各それぞれの遠位先端と各それぞれの遠位灌注孔との間の距離が約1ミリメートル~約3ミリメートルであるように、遠位灌注孔を含む複数の灌注孔を含み得る。接着剤が、各基材を膜に接着するために、複数の基材の各々と膜との間に配設され得る。複数の基材は各々、側縁部を含み、接着剤マージンが、側縁部及び膜の上に配設される。更に、補強材が、それぞれの遠位先端及び膜の各々の上に配設される。補強材は、組み立てられていない膜の一部を含み得る。あるいは、補強材は、接着剤マージン先端を含み得る。例えば、膜に接触する接着剤マージン先端の一部は、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートルだけそれぞれの遠位先端から延在する。
【0004】
このバルーンは、プローブ及びシャフトを含むカテーテルに組み込まれ得る。具体的には、バルーンは、プローブを通過可能なシャフトの遠位端部に取り付けられ得る。プローブは、内径が約13.5フレンチのルーメンを有し得る。シャフトは、第1のシャフト部分と、第1のシャフト部分と伸縮関係で第1のシャフト部分内に部分的に配設された第2のシャフト部分と、を含み得る。このように、カテーテルバルーンは、その膜の近位端部が第1のシャフト部分に接続され、その膜の遠位端部が第2のシャフト部分に接続されるように、ルーメン内に配設され得る。
【0005】
膜の内側表面から、それぞれの遠位先端のうちの1つを通り、補強材の外側表面まで測定されたバルーンの厚さは、約0.0075インチであり得る。そのようにして、ルーメン内でシャフトを移動させるのに必要な最大力は、約6lbf未満であることを可能にする。
【0006】
第2の解決策では、基材に応力緩和部分を提供し得る。具体的には、複数の基材の各々は、遠位尾部を含み得る。遠位尾部は、蛇行形態を有する部分を含み得る。蛇行形態は、方形波又は曲線波を含み得る。更に、蛇行形態は、約3~10個の区切りを含み得る。加えて、蛇行形態の幅は、遠位尾部の幅の約1/10~約1/2であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書は、本明細書に記載の主題を特に指摘し、かつ明確にその権利を主張する特許請求の範囲で終了するが、その主題は、添付の図面と併せて取られた特定の実施例の以下の説明からよりよく理解されると考えられ、図面において、同様の参照番号は同じ要素を特定する。
【
図2】ラッソーカテーテルと共に使用している、拡張状態のバルーンを有するカテーテルの上面図を示す。
【
図3】補強構成要素を含む補強材を含むものとしてバルーンを示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図4】バルーンの内部のカテーテルの構造を示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図5】
図3のバルーン上のフレックス回路電極アセンブリの斜視詳細図を示す。
【
図7】組み立てられていないバルーン構成要素の側面図を示す。
【
図8】接着剤マージン先端を含む補強材を含むものとしてバルーンを示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図9】バルーンの動きに関する力データのグラフを示す。
【
図10】応力緩和を含むものとしてバルーンを示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図11A】応力緩和の第1の例示的なパターンを示す。
【
図11B】応力緩和の第2の例示的なパターンを示す。
【
図12A】
図3のバルーン上に配設された基材の遠位端部の詳細図を示す。
【
図12B】
図8のバルーン上に配設された基材の遠位端部、及びそれらの間の接着の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同様の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、選択された実施形態を示しており、また本発明の範囲を限定することを意図していない。詳細な説明は、限定ではなく例として本発明の原理を示す。この説明は、当業者が本発明を製造及び使用することを明らかに可能にし、また本発明を実施するための最良の態様であると現在考えられているものを含めて、本発明のいくつかの実施形態、適応例、変形例、代替物及び使用を説明する。
【0009】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値の範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±10%の値の範囲を指してもよく、例えば「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指してもよい。更に、本明細書で使用される場合、「患者」、「宿主」、「ユーザー」、及び「被験者」という用語は、任意のヒト又は動物被験体を指し、ヒト患者における本発明の使用が好ましい実施形態を表すが、システム又は方法をヒトの使用に限定することを意図するものではない。
【0010】
概論
機能不全心臓を治す心臓組織のアブレーションは、周知の手技である。典型的には、アブレーションを成功させるために、心筋の様々な位置で心臓の電極電位を測定する必要がある。更に、アブレーション中の温度測定により、アブレーションの有効性を測定することができるデータがもたらされる。典型的には、アブレーション処置に対して、実際のアブレーション前、アブレーション中、及びアブレーション後に、電極電位及び温度が測定される。
【0011】
アブレーションカテーテルは、ルーメンを含むことができ、バルーンは、カテーテルルーメンから配置され得る。多層の可撓性のある金属構造体がバルーンの外壁又は膜に取り付けられる。構造体は、長手方向軸線を中心に周囲に配置された複数の電極群を含み、それぞれの電極群は、典型的には、長手方向に配置された複数のアブレーション電極を含む。
【0012】
それぞれの電極群はまた、その群におけるアブレーション電極から物理的かつ電気的に絶縁されている少なくとも1つの微小電極を含むことができる。それぞれの電極群はまた、少なくとも熱電対を含むことができる。一部の実施形態では、それぞれの電極群は、通常の場所に形成された微小電極及び熱電対を含む。単一のカテーテルを使用して、アブレーション、電極電位の測定、及び温度の測定を行う能力のうちの3つの機能により、心臓のアブレーション手技を簡素化することができる。
【0013】
システムの説明
図1は、一実施形態による、装置12を使用する侵襲的医療処置の概略図である。この処置は医療専門家14によって実施され、一例として、以下の説明における処置は、ヒト患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むと仮定される。ただし、本明細書に開示される実施形態は、この特定の処置に単に適用可能であるわけでなく、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的に任意の処置を含み得ることが理解される。
【0014】
アブレーションを実施するために、医療専門家14は、患者の管腔に事前に配置されたシース21にプローブ20を挿入する。シース21は、プローブ20の遠位端22が患者の心臓に入るように位置付けられている。
図2に示されている、診断/治療用カテーテル24(例えば、バルーンカテーテル)は、プローブ20のルーメン23を通って配置され、プローブ20の遠位端部から出ている。
【0015】
図1に示されているように、装置12は、装置の操作用コンソール15内にある、システムプロセッサ46により制御される。コンソール15は、プロセッサと通信するために専門家14によって使用される制御装置49を含む。処置の間、プロセッサ46は、典型的には、当該技術分野において既知である任意の方法を使用してプローブ20の遠位端部22の場所及び配向を追跡する。例えば、プロセッサ46は、磁気追跡方法を使用することができ、患者18の外部にある磁気送信機25X、25Y、及び25Zは、プローブ20の遠位端に配置されたコイル内で信号を生成する。CARTO(登録商標)システム(Biosense Webster,Inc.(Irvine,California)から入手可能)は、このような追跡方法を使用する。
【0016】
プロセッサ46用のソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光、磁気又は電子記憶媒体などの非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。遠位端部22の追跡は、画面62上で患者18の心臓の三次元表示60で表示され得る。ただし、それは、例えば、蛍光透視法又はMRIによって2次元的に表示されてもよい。
【0017】
装置12を操作するために、プロセッサ46は、装置を操作するためのプロセッサにより使用される多数のモジュールを有するメモリ50と通信する。したがって、メモリ50は、温度モジュール52、アブレーションモジュール54、及び心電計(ECG)モジュール56を含み、これらのモジュールの機能を以下で説明する。メモリ50は、典型的には、遠位端部22にかかる力を測定する力モジュール、プロセッサ46により使用される追跡方法を操作する追跡モジュール、及びプロセッサが遠位端部22に対して提供する潅注を制御することを可能にする潅注モジュールなどの他のモジュールを含む。簡略化のために、そのような他のモジュールは
図1には示されていない。モジュールは、ハードウェア要素及びソフトウェア要素を含むことができる。例えば、モジュール54は、少なくとも1つの出力部又は出力チャネル、例えば、10個の出力部又は10個の出力チャネルを有する高周波発生器を含むことができる。出力部のそれぞれは、スイッチによって個別にかつ選択的に起動又は停止されてもよい。すなわち、各スイッチは、信号発生器とそれぞれの出力部との間に配設されてもよい。したがって、10個の出力部を有する発生器は、10個のスイッチを含むことになる。これらの出力部はそれぞれ、以下に更に詳細に説明されるアブレーションカテーテル上の電極、例えばバルーン80上の10個の電極33に個別に結合されてもよい。このような電気的接続は、各出力部と各電極との間に電気経路を確立することによって達成することができる。例えば、各出力部は、1つ又は2つ以上のワイヤ又は適切な電気コネクタによって対応する電極に接続されてもよい。したがって、一部の実施形態では、電気経路は、少なくとも1本のワイヤを含むことができる。一部の実施形態では、電気経路は、電気コネクタ及び少なくとも第2ワイヤを更に含むことができる。したがって、電極33は、スイッチにより選択的に活性化及び非活性化されて、他の電極のそれぞれから個別に高周波エネルギーを受け取ることができる。
【0018】
図3は、実施形態による、その拡張構成にあるバルーンの形態で、拡張可能な構成の診断/治療用カテーテル24の概略斜視図である。診断/治療用カテーテル24は、近位シャフト部分82P、遠位シャフト部分82D及び遠位シャフト端部88を有する管状シャフト70により支持されている。
図3と同様であるが、バルーン80上の外部構造が隠されている
図4に示すように、遠位又は第2のシャフト部分82Dは、少なくとも部分的に近位又は第1のシャフト部分82P内に、それと伸縮関係で配設されている。シャフト70はまた、中空の中心管74を含み、これにより、カテーテルは、中心管を通って遠位シャフト端部88を過ぎることが可能となる。カテーテルは、例示したとおり、局所線状カテーテル又はラッソーカテーテル72であってもよい。ラッソーカテーテル72を肺静脈に挿入して、診断/治療用カテーテル24を口に対して正確に配置してから、口の切除を行うことができる。カテーテル72の遠位ラッソ部分は、典型的には、ニチノールなどの形状記憶保持材料によって形成されている。診断/治療用カテーテル24はまた、PV内又は心臓の他の場所で、線形カテーテル又は局所カテーテル99(
図3の破線で示されているように)と共に使用することができることを理解されたい。局所カテーテル99は、その遠位先端に力センサを含むことができる。好適な力感知遠位先端は、米国特許第8,357,152号及び同第10,688,278号に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。診断/治療用カテーテルと共に使用される任意のカテーテルは、例えば、圧力感知、アブレーション、診断、例えば、ナビゲーション及びペーシングを含む特徴及び機能を有し得る。
【0019】
図5を更に参照すると、診断/治療用カテーテル24のバルーン80は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、Pellethane(登録商標)又はPEBAX(登録商標)などのプラスチックから形成された生体適合性材料の膜26を含む。膜26は、外側表面26o及び内側表面26iを有する。補強構成要素100を含む補強材は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2020/0001054号として公開された、米国特許出願第16/432,392号に記載された補強構成要素100など、外側表面26o上に、膜26の遠位部分の周辺に加えて提供され得る。膜26、したがってバルーン80は、近位端部87及び遠位シャフト端部88に遠位端部89を有する。
【0020】
シャフト70及び遠位シャフト端部88は、バルーン80の長手方向軸78を画定する。バルーン80は、プローブ20のルーメン23を介して、折り畳まれた構成で配置される。バルーン80の膜26の近位端部は、第1の又は近位シャフト部分82Pに取り付けられ、バルーン80の膜26の遠位端部は、遠位シャフト端部88に近接して、第2の又は遠位シャフト部分82Dに取り付けられている。バルーン80は、遠位端部22から出た後、遠位シャフト端部88を近位に移動させてバルーン80の遠位端部89とバルーン80の近位端部87との間の距離を短縮し、こうしてバルーン80の幅を大きくすることによって、すなわち、近位シャフト部分82P内で近位に遠位シャフト部分82Dをはめ込むことによって、拡張構成に拡張され得る。灌注流体をバルーン80に通過させることは、バルーン80を更に拡張し得る。バルーン80は、灌注を停止し、次いで遠位シャフト端部88を近位端部87から離れるように移動させて、バルーン80の幅を減少させ、長さを拡張することによって、すなわち、近位シャフト部分82P内で遠位に遠位シャフト部分82Dをはめ込むことによって、その折り畳まれた構成に戻し得る。第1のシャフト部分と第2のシャフト部分との間のこの伸縮運動は、
図2に示される制御ハンドル83のノブ85によって制御され得る。具体的には、ノブ85は、遠位シャフト部分82Dを遠位に延在させるために第1の方向に回転され得、こうして遠位シャフト端部88を遠位に移動させ、一方、ノブ85は、遠位シャフト部分82Dを近位に引き戻すために反対方向に回転され得、こうして遠位シャフト端部88を近位に移動させ得る。ノブ85は、遠位シャフト端部をその最も近位の位置に、かつその最も遠位の位置に維持するために、戻り止めなどの係止特徴部を更に含み得る。そのような係止特徴部は、バルーン80がアブレーション中にその拡張構成からいくらか折り畳まれるのを防ぐのに役立ち、プローブ20のルーメン23への引き戻し中にその折り畳まれた構成からいくらか拡張するのを防ぐのに役立つ。バルーンを折り畳まれた構成と拡張構成との間で移行させることに関する更なる説明は、米国特許出願公開第2018/0161093号として公開された、米国特許出願第15/827,111号に記載されている。この出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
膜26は、多層のフレキシブル回路電極アセンブリ84として構築される電極と温度感知部材との組み合わせを支持して、これを有する。「フレックス回路電極組立体」84は、多くの異なる幾何学的構造を有してもよい。例示されている実施形態では、フレックス回路電極アセンブリ84は、複数の放射状基材又はストリップ30を有する。基材30は、バルーン80の外側膜表面26oの周辺に均一に分布されている。各基材は、より狭い遠位部分に対して徐々に先細りする、より広い近位部分を有する。
【0022】
各基材30は、広い側の近位部分に対して近位に近位尾部31P、及び狭い側の遠位部分の遠位に遠位尾部31Dを有する。以下に説明するように、遠位尾部部分31Dは、遠位シャフト端部88の近位の遠位先端31Tで終端してもよく、又は遠位シャフト端部88まで延在してその下に固定されてもよい。基材30は、エポキシなどの接着剤で膜26に接着され得る。いくらかの接着剤は、基材30の内側表面37と膜26との間に配設され得る。加えて、接着剤マージン32が、基材30の膜26からの層剥離の可能性を更に最小限に抑えるのに役立つように、側縁部30Sなどの基材30の縁の周辺に上貼りされてもよい。接着剤マージン32の一部は、膜26の頂部に直接接着し、一方、接着剤マージン32の接着剤の残りの部分は、基材30の外側表面36に直接接着する。接着剤マージン32は、ビーズ、2つ又は3つ以上の個別の線形セグメントとして、又は各側縁部30Sのほとんど又はすべてにわたって延在する単一の線形セグメントとして適用され得る。好ましくは、膜26の頂部に直接付着する接着剤マージン32の重なり部分32Oは、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートル、例えば、約0.45ミリメートルの距離D1だけ外向きに延在する側縁部30Sを形成する。そのようなものは、
図12Bに示されている。
【0023】
フレックス回路電極アセンブリ84は、
図5に示されているとおり、その基材30のうちの1つに関して記載されているが、以下の記載は、アセンブリの各基材に適用することができることが理解される。フレックス回路電極アセンブリ84は、好適な生体適合性材料、例えばポリイミドなどで構成された、可撓性かつ弾性のシート状の基材34を含む。一部の実施形態では、シート状基材34は、バルーン膜26の耐熱性と比較して、より大きな耐熱性(又はより高い融解温度)を有する。一部の実施形態では、基材34は、バルーン膜26の融点よりおよそ摂氏100度以上高い分解温度を有する熱硬化性材料から構成されている。
【0024】
基材34には、バルーン部材26の灌注用開口部27と整列する1つ又は2つ以上の灌注孔又は開口部35が形成されており、その結果、灌注用開口部27及び35を通過する流体を、小孔のアブレーション部位に流すことができる。基材34は、レーザ切断などの任意の好適な製造技術によって形状に切断されてもよく、灌注孔35が形成されてもよい。
【0025】
基材34は、バルーン膜26から離れる方向に面する第1のすなわち外側表面36、及びバルーン膜26に面する第2のすなわち内側表面37を有する。その外側表面36上で、基材34は、小孔と接触している組織に適合したコンタクト電極33を支持して、これを有する。その内側表面37上で、基材34は、配線電極38を支持及び担持する。コンタクト電極33は、アブレーション中、小孔にRFエネルギーを送達するか、又は小孔の温度感知のための熱電対接合部に接続されている。例示されている実施形態では、コンタクト電極33は、長手方向に細長部分40と、概ね等間隔に配置された、拡大近位端部42Pと遠位端部42Dとの間の細長部分40のそれぞれの横方向側から概ね垂直に延在する、複数の薄い横断線状部分、すなわちフィンガー部41を有する。細長部分40は、より大きい幅を有し、フィンガー部のそれぞれは、概ね均一なより小さい幅を有する。したがって、コンタクト電極33の構成又はトレースは、「魚の骨」に似ていることがあるが、本発明は、このような構成に限定されないことに留意すべきである。領域又は「パッチ」アブレーション電極とは対照的に、隣接するフィンガー部41間の空隙領域43により、その赤道に沿う場所において必要に応じてバルーン80を内側に折り畳むことができる、又は半径方向に拡張することができる一方、コンタクト電極33のフィンガー部41は、有利なことに、小孔とのコンタクト電極33の周囲接触面又は赤道接触面を増大させる。例示されている実施形態では、フィンガー41は異なる長さを有しており、一部は、より長く、他は、より短い。例えば、複数のフィンガーは、遠位フィンガー、近位フィンガー、及びそれらの間にあるフィンガーを含み、それらの間のフィンガーはそれぞれ、より短い隣接フィンガーを有する。例えば、各フィンガーは、各フィンガーの長さが各基材30の先細り構成に概ね従うように、その遠位又は近位の直接隣接する隣接フィンガーとは異なる長さを有する。図示されている実施形態では、細長部分40(細長部分40の各側面を過ぎて)を横切って延在する22個のフィンガーが存在し、最長のフィンガーが拡大近位端部42Pから3番目のフィンガーである。一部の実施形態では、コンタクト電極33は、金と膜26との間にシード層を有する金を含む。シード層は、チタン、タングステン、パラジウム、銀又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
1つ又は2つ以上の排除ゾーン47がコンタクト電極33内に形成されており、排除ゾーン47のそれぞれは、基材34に形成された灌注用開口部35を囲繞している。排除ゾーン47は、以下に更に詳細に説明されるとおり、コンタクト電極33内に意図的に形成された空隙であり、灌注用開口部35をそれらの位置及びそれらの機能に適応させた状態で電極アセンブリ84を構築している間にコンタクト電極33に損傷が加わるのを回避するためのものである。
【0027】
基材34中の貫通孔を通って延在する導電性形成物又は金属製形成物であり、また外側表面36上のコンタクト電極33と内側表面37上の配線電極38とを接続する電線用導管として構成された、1つ又は2つ以上の導電性ブラインドビア48も、コンタクト電極33中に形成される。「導電性の」は、本明細書において、すべての関連する事例において、「金属製の」と互換的に使用されることを理解されたい。
【0028】
例示されている実施形態では、コンタクト電極33は、長手方向に、約0.1インチ~1.0インチ、及び好ましくは約0.5インチ~0.7インチ、より好ましくは約0.57インチとなり、4つの排除ゾーン47及び9つのブラインドビア48を有する。
【0029】
基材34の内側表面37において、配線電極38は、コンタクト電極33の細長部分40と概ね同様の形状及びサイズの細長い本体として概ね構成されている。配線電極38は、「脊柱」とやや類似し、電極アセンブリ84の各基材30に対して所定の程度の長手方向の剛性をもたらすという観点では、脊柱としても機能している。配線電極38は、ブラインドビア48のそれぞれがコンタクト電極33及び配線電極38の両方と導電接触するよう位置付けられている。例示されている実施形態では、2つの電極33及び38は、他方と長手方向に整列しており、9つすべてのブラインドビア48は、電極33及び38の両方と導電接触している。一部の実施形態では、配線電極38は、銅の内側部分及び金の外側部分を有する。
【0030】
配線電極38はまた、基材34の灌注用開口部35の周囲にその排除ゾーン59を有して形成されている。配線電極38には、少なくとも1つの活性61Aであるはんだパッド部分が更に形成されており、1つ又は2つ以上の不活性(inactive)はんだパッド部分61Bが存在してもよい。はんだパッド部分61A及び61Bは、配線電極38の細長い本体の側面からの延長部である。例示されている実施形態では、活性はんだパッド部分61Aには、細長形本体に沿っておよそ中間の場所に形成されており、それぞれの不活性はんだパッド部分61Bは、拡大遠位端部42D及び拡大近位端部42Pのそれぞれに設けられている。
【0031】
例えば、はんだ溶接部63によって、活性はんだパッド部分61Aに、対線、例えば、コンスタンタンワイヤ51及び銅配線53が取り付けられている。銅配線53は、配線電極33のリードワイヤを提供し、銅ワイヤ53及びコンスタンタンワイヤ51は、接合部がはんだ溶接部63にある熱電対を提供する。対線51/53は、膜26に形成された貫通孔29を通過する。貫通孔29が存在しない他の実施形態では、対線51/53が、近位リング28Pに一層近接する管状シャフト側壁に形成された(図示しない)別の貫通孔を介して管状シャフト70に入るまで、対線51/53は、膜26と基材34との間、更に近位には膜26と近位尾部31Pとの間を通ることができることが理解される。
【0032】
基材30並びに尾部31P及び31Dを含むフレックス回路電極アセンブリ84は、基材34の外側表面36が露出され、基材34の内側表面37がバルーン膜26に固着され、配線電極38及び対線51/53が基材34とバルーン膜26との間に挟まれるように、バルーン膜26に固着される。基材34の灌注用開口部35は、バルーン膜26の灌注用開口部27と整列する。配線電極38における排除ゾーン59及びコンタクト電極33における排除ゾーン47は、互いに、及びバルーン26の灌注用開口部27及び基材34の灌注用開口部35と、それぞれ同心円状に並んでいる。
【0033】
上述の開示による、診断/治療用カテーテルの構築に関する更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0312022号として公開された米国特許出願第15/360,966号に見出すことができる。この出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
改善された堅牢性
上記の主題に関する継続中の研究及び製品開発の努力により、本出願人は、バルーン80が、折り畳まれた構成でプローブ20のルーメン23から配置されること、拡張構成まで拡張すること、折り畳まれた構成に戻ること、及びプローブ20をルーメン23内へと引き戻すことからなる複数のサイクルに耐性がなければならない、と結論付けた。サイクル数は、約5回~約20回であってもよい。したがって、バルーン80の基材30と膜26との間の接続、及び組み立てられたバルーンの全体的な完全性は、少なくとも5~20回の疲労サイクルに耐える必要がある。
【0035】
出願人は、診断/治療用カテーテル24の事前の反復のユーザーが、バルーン80をその折り畳まれた構成に戻した後、かつプローブ20のルーメン23内にそれを引き戻すのを試みる前に、ノブ85を係止しない場合があることを観察した。ノブ85が係止され、バルーン80が折り畳まれた構成にあるとき、バルーン80はピンと張っており、バルーン80の幅はルーメン23の内径よりも小さい。しかしながら、ノブ85が係止されていない場合、バルーン80は、いくらか拡張し得るように完全にピンと張っていない場合があり、バルーン80の幅を、ルーメン23の内径に近づけるか、又は上回らせるようにする。これにより、バルーン80がルーメン23内に引き戻されるときに、バルーン80がそれ自体に束になることを生じさせ得る。次に、これにより、バルーン80がルーメン23内に引っかかる可能性があり、これにより、ルーメン23内でバルーン80を移動させるのに必要な荷重が増加し、結果として遠位尾部31Dに剪断応力がかかる。これらの増加した力及び応力は、デバイス機能不全の可能性を増加させる。したがって、出願人は解決策を模索してきた。
【0036】
出願人は、特定したいくつかの解決策を有し、そのうちの2つの実施形態が本明細書に記載されている。第1の解決策の例示的な実施形態が、
図3~
図5に示されており、基材30の遠位尾部31Dは、先端31Tで終端する。先端31T及び遠位尾部31Dの一部は、膜26と補強構成要素100を含む補強材との間に挟まれている。
図12Aを参照すると、13.5フレンチ内径を有するプローブ20(例えば、Oscor,IncによるDESTINO(商標)ツイストガイドシース)を介してその折り畳まれた構成で提供されるバルーン80について、最遠位灌注孔35の中心から先端31Tまでの距離は、基材30の表面に沿って測定して、約1ミリメートル~約3ミリメートル、例えば約2ミリメートルである。
【0037】
補強構成要素100は、膜26の遠位部分に適合する。例えば、補強構成要素100は、組み立てられていない膜26の一部、すなわち、基材30などのカテーテル24の任意の他の構成要素に組み立てられていない膜26を含むことができる。すなわち、膜26の組み立てられていない例は、
図6に見られるとおり、線86のうちの1つに沿って、膜26を切断することにより、そこから分離された部分を有し得る。膜26が中心線に関して対称である実施形態では、膜26の2つの部分が取り除かれて、2つの補強構成要素100を作製し得る。膜26が中心線に対して非対称である実施形態では、その遠位部分は、遠位先端31T及び遠位尾部31Dのそれぞれの隣接部分にわたって補強構成要素100として使用され得る。
【0038】
補強構成要素100は、例えば、エポキシ、又は機械的融解若しくは熱的融解により、膜26に付着させてもよい。この構成では、補強構成要素100は、バルーン80を拡張及び折り畳むことによって引き起こされる応力を吸収し、一方でまた、膜26に対して先端31Tを維持し、それによって遠位尾部31Dの剪断応力を低減し得る。更に、アセンブリの構成要素の数及び全体的な厚さは、例えば、米国特許出願公開第2020/0001054号として公開された、米国特許出願第16/432,392号に記載されているように、カテーテル24の以前の反復と比較して、先端31Tと遠位シャフト端部88との間の領域において最小化され、その場合、遠位尾部31Dが、遠位シャフト端部88まで延在し、遠位キャップ28Dの下に押し込まれることによってそこに取り付けられていた。13.5フレンチ内径を有するプローブ20(例えば、Oscor,IncによるDESTINO(商標)ツイストガイドシース)を介してその折り畳まれた構成で提供されるバルーン80を有する診断/治療用カテーテル24の設計では、バルーン80の遠位領域における全体的な厚さは、約0.012インチである。しかしながら、現在の設計では、遠位先端31Tとキャップ28Dとの間の唯一のバルーン材料が膜26、補強構成要素100、及び接着剤である場合、内側膜表面26iから、遠位先端31Tを通って補強構成要素100の外側表面まで測定したバルーン80の領域における全厚tは、約0.0075インチである。そのようなものは、
図6に示されている。この低減された厚さは、バルーン80が、その幅がその折り畳まれた構成の幅よりも大きい場合でも、遠位尾部31Dが膜26から破断又は剥離する可能性が最小限で、ルーメン23に引き戻されることを可能にする。すなわち、プローブ20の内側表面及び先端が、それを通るバルーン80の通過を妨げ、したがって、機能不全につながる大きさの摩擦及び剪断応力を引き起こす代わりに、プローブ20の先端は、バルーンをルーメン23内に導くのを助ける。更に、遠位領域におけるバルーン80の厚さは、ルーメン23の内側表面がバルーン80を圧搾してそれを束ねさせないように、最小化されているため、摩擦力が最小限に抑えられ、デバイスの機能不全を引き起こすのに十分な剪断応力が生成されない。
【0039】
基材30の予想される層剥離を最小限に抑えるのを更に助けるために、補強フィラメント102(
図5)を基材30に取り付けることができる。補強フィラメント102は、基材30の一部に沿って、又はその全体に沿って、例えば、近位尾部31Pの近位先端から遠位先端31Tまで延在し得る。したがって、バルーン80が10個の基材30を含む場合、10個の補強フィラメント102もまた、10個の基材の各々に1つずつ設けられてもよい。補強フィラメントは、例えば接着剤など、任意の好適な方法により基材30に取り付けられてもよい。
【0040】
好ましくは、各補強フィラメント102は、糸の形態を有してもよく、組み立てられた場合に、約0.0005インチ~0.005インチの厚さを有する略矩形断面の形状をとってもよい。糸は、超高分子量ポリマー又は液晶ポリマー、例えばKuraray製のVECTRAN(商標)から製造されてもよい。糸の厚さが電極33の厚さよりも薄い限り、糸は、バルーン80の外側表面26に接触しないように、基材30の上部表面、すなわち電極33に隣接して配設されてもよい。しかし、糸の厚さが電極33の厚さよりも厚い場合、糸は、患者組織に適合する電極の能力を妨害することになる。糸は基材の底部表面上に配設されるべきであり、これにより、バルーン80の外側表面26に対して直接配設されることになる。このようなものとしては、
図5に示されている実施形態である。したがって、遠位尾部31Tで終端する補強フィラメント102の先端も、補強構成要素100と膜26との間に挟まれることになる。補強フィラメント102は、遠位尾部31Tを越えて延在しないため、遠位尾部31Tとキャップ28Dとの間の領域におけるバルーン80の全体的な厚さを増加させない。
【0041】
第1の解決策の代替的な実施形態では、補強構成要素100を除外することができる。代わりに、遠位先端31Tは、膜26に直接接着される。そのようなものは、遠位先端31Tの領域において内側表面37上に接着剤を提供し、また、接着剤マージン先端32Tとして
図8に示されている、遠位先端31Tの周りに接着剤マージン32を延在することによって達成され得る。
図12Bを参照して上述したように、膜26の頂部に直接付着する接着剤マージン32の重なり部分32Oは、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートル、例えば、約0.45ミリメートルの距離D1だけ外向きに延在する側縁部30Sを形成する。同様に、膜26の頂部に直接付着する接着剤マージン先端32Tの重なり部分32TOは、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートル、例えば、約0.45ミリメートルの距離D2だけ先端31Tから外向きに延在する。例えば、これらの重なり部分32O及び32TOが基材30から離れて延在する距離は、等しくてもよい。加えて、接着剤マージン32又は接着剤マージン先端32Tのいかなる部分も、接触電極33が組織をアブレーションする能力を妨げる可能性があるため、電極33のいずれをも覆うべきではない。しかしながら、接着剤と電極33との間のクリアランスCが最小化されるとき、基材30と膜26との間の接着の強度が最大化される。例えば、クリアランスは、約ゼロミリメートル~約0.5ミリメートルであり得る。
図12Bに示されるように、接着剤マージン32は、C=0のクリアランスに対して電極33のフィンガー41に当接するが、一方、接着剤マージン先端は、電極33の遠位端部42DからC≦5ミリメートルだけ離間されている。この実施形態では、接着剤マージン先端32Tは、補強構成要素100と同様の機能を提供する補強材とみなされ得る。
【0042】
図9は、バルーン80がプローブ20に引き戻されるときに収集された力データのグラフを示している。バルーン80は、プローブ20の完全に外側でその移動を開始し、プローブ20の完全に内側でその移動を終了する。標本1及び2は各々、プローブ20に引き戻される前に、その折り畳まれた構成に置かれているバルーン80に対応する。標本3は、例えば、上述のようにノブ85を係止しないことに従って、完全に折り畳まれていない構成に置かれているバルーン80に対応する。分かるように、標本3について測定された最大力は、約6lbfである。この最大力は、完全に折り畳まれていないバルーンがプローブ20に引き戻されるときに生じる。標本1及び2について見ることができるように、折り畳まれた構成のバルーンがプローブ20に入るのに十分なクリアランスを有するため、この同じ位置決めで力は著しく増加しない。しかしながら、出願人は、米国特許出願公開第2020/0001054号として公開された、米国特許出願第16/432,392号に示されている設計については、完全に折り畳まれていないバルーンをプローブ20に引き戻すのに必要とされる力は、しばしば25lbf超であり、標本3の4倍を超えることを報告している。したがって、現在の設計によって可能になる力の低減は、バルーン80がプローブ20への引き戻し前に完全に折り畳まれていない場合でも、現在の設計がプローブ20へのバルーン80の引き戻しをより良好に適応させることができることを証明している。
【0043】
第2の解決策の例示的な実施形態は、
図10に示されている。この実施形態では、遠位尾部31Dは、遠位リング又はキャップ28Dの下に押し込まれる遠位シャフト端部88まで延在する。遠位尾部31Dは、蛇行形態106を有する遠位尾部部分104を含む。蛇行形態106は、遠位尾部部分104がバルーン80の形状に適合し、バルーン80が折り畳まれ、拡張され、ルーメン23内に引き戻され、又はルーメン23から延在するときはいつでも、生成された剪断応力に適応する能力を高めることによって、遠位尾部31Dに応力緩和を提供する。蛇行形態106は、例えば、基材34の形成中に、基材30の製造プロセスの一部として形成され得る。例えば、蛇行形態106は、基材34が形状に切断されるときに基材34内に作成され得、上記のように、レーザ切断などの任意の好適な製造技術によって実行され得る。
【0044】
上述の補強フィラメント102はまた、基材30が蛇行形態106を含むときに基材30の特徴として含まれ得る。フィラメント102は、基材30上の近位位置から蛇行形態106の近位端部まで延在し得る。あるいは、補強フィラメント102はまた、
図11Aに見られるように、遠位尾部31Dの全体に相応する遠位シャフト端部88まで延在することができるように、蛇行形態を有するものとして提供されてもよい。
【0045】
蛇行形態106は、バルーン80が折り畳まれた構成から拡張構成に移行し、再び折り畳まれた構成に戻るときに受ける力、並びに受けるそのようなサイクルの数に基づいて最適化され得る。例えば、
図11Aに示されているように、蛇行パターンは、丸い角も有し得る方形波106aを含み得、一方で、
図11Bに示されているように、蛇行パターンは、曲線波106bを含み得る。蛇行パターンはまた、約3~約10個の区切りにわたって延在し得る。例えば、方形波パターン106aは、ほぼ4個の区切りを含むものとして示されているが、曲線波パターン106bは、5個の区切りを有するものとして示されている。加えて、
図11Aに示されるように、蛇行形態106aの幅は、wで示され、遠位尾部の幅は、Wで示されている。蛇行形態106aの幅wは、遠位尾部31Dの幅Wの約1/10~約1/2であり得る。
【0046】
バルーン80の、特にその遠位領域における堅牢性を改善するための上記の2つの解決策の様々な実施形態の選択は、バルーン80の全体的なサイズ、バルーン80が移動するルーメン23のサイズ、及びバルーン80が受ける疲労サイクルの数などの様々な要因に依存する。
【0047】
本明細書に記載の実施例又は実施形態のいずれも、上記のものに加えて又はそれらの代わりに様々な他の特徴を含むことができる。本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して単独で考慮されるべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適切な方法は、本明細書の教示に鑑みて当業者には明らかであるべきである。
【0048】
本発明に含まれる主題の例示的な実施形態について図示及び説明したが、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合は、特許請求の範囲から逸脱することなく適切な修正によって達成することができる。更に、上記の方法及びステップが特定の順序で発生する特定の事象を示す場合、特定のステップは、説明された順序で実行される必要はなく、ステップが、実施形態がそれらの意図された目的のために機能することを可能にする限り、任意の順序で実行されることが意図される。したがって、本開示の趣旨の範囲内であるか、又は特許請求の範囲に見出される本発明と同等である本発明の変形例が存在する限り、本特許はそれらの変形例も包含することが意図されている。一部のそのような修正は、当業者には明らかであるはずである。例えば、上述の実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、ステップなどは、例示的なものである。したがって特許請求の範囲は、明細書及び図面に記載される構造及び操作の特定の詳細に限定されるべきではない。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルバルーンであって、
近位端部及び遠位端部を含む膜と、
前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、前記膜の前記遠位端部の近位に配設されたそれぞれの遠位先端で終端するそれぞれの尾部を含む、複数の基材と、
前記複数の基材の各々と前記膜との間に配設された接着剤と、
前記それぞれの遠位先端及び前記膜の各々の上に配設された補強材と、を含む、カテーテルバルーン。
(2) 前記複数の基材の各々が、遠位灌注孔を含む複数の灌注孔を含み、各それぞれの遠位先端と各それぞれの遠位灌注孔との間の距離が、約1ミリメートル~約3ミリメートルである、実施態様1に記載のカテーテルバルーン。
(3) 前記複数の基材が各々、側縁部を含み、前記カテーテルバルーンが、前記側縁部及び前記膜の上に配設された接着剤マージンを更に含む、実施態様1に記載のカテーテルバルーン。
(4) 前記補強材が、組み立てられていない膜の一部を含む、実施態様3に記載のカテーテルバルーン。
(5) 前記補強材が、接着剤マージン先端を含む、実施態様3に記載のカテーテルバルーン。
【0050】
(6) 前記接着剤マージン先端の一部が、前記膜に接触し、前記膜に接触する前記接着剤マージン先端の前記一部が、約0.3ミリメートル~約0.6ミリメートルだけ前記それぞれの遠位先端から延在する、実施態様5に記載のカテーテルバルーン。
(7) 前記複数の基材が、10個の基材を含む、実施態様3に記載のカテーテルバルーン。
(8) カテーテルであって、
内径が約13.5フレンチのルーメンを有するプローブと、
前記ルーメン内に配設されたシャフトであって、前記シャフトが、第1のシャフト部分と、前記第1のシャフト部分と伸縮関係で前記第1のシャフト部分内に部分的に配設された第2のシャフト部分と、を有する、シャフトと、
前記ルーメン内に配設されたカテーテルバルーンであって、前記カテーテルバルーンが、近位端部及び遠位端部を含む膜を有し、前記近位端部が、前記第1のシャフト部分に接続されており、前記遠位端部が、前記第2のシャフト部分に接続されている、カテーテルバルーンと、
前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、前記膜の前記遠位端部の近位に配設されたそれぞれの遠位先端で終端するそれぞれの尾部を含む、複数の基材と、
前記それぞれの遠位先端及び前記膜の各々の上に配設された補強材と、を含む、カテーテル。
(9) 前記膜の内側表面から、前記それぞれの遠位先端のうちの1つを通り、前記補強材の外側表面まで測定された前記バルーンの厚さが、約0.1905ミリメートル(約0.0075インチ)である、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 前記ルーメン内で前記シャフトを移動させるのに必要な最大力が、約26.69N(約6lbf)未満である、実施態様9に記載のカテーテル。
【0051】
(11) 前記複数の基材が各々、側縁部を含み、接着剤マージンが、前記側縁部及び前記膜の上に配設されている、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記補強材が、組み立てられていない膜の一部を含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記補強材が、接着剤マージン先端を含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(14) 前記複数の基材が、10個の基材を含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(15) カテーテルであって、
内径が約13.5フレンチのルーメンを有するプローブと、
前記ルーメン内に配設されたシャフトであって、前記シャフトが、第1のシャフト部分と、前記第1のシャフト部分と伸縮関係で前記第1のシャフト部分内に部分的に配設された第2のシャフト部分と、を有する、シャフトと、
前記ルーメン内に配設されたカテーテルバルーンであって、前記カテーテルバルーンが、近位端部及び遠位端部を含む膜を有し、前記近位端部が、前記第1のシャフト部分に接続されており、前記遠位端部が、前記第2のシャフト部分に接続されている、カテーテルバルーンと、
各々が前記膜の前記遠位端部まで延在する前記膜の周辺に配設された複数の基材であって、前記複数の基材の各々が、蛇行形態の遠位尾部部分を有するそれぞれの遠位尾部を含む、複数の基材と、
前記複数の基材の各々と前記膜との間に配設された接着剤と、を含む、カテーテル。
【0052】
(16) 前記蛇行形態が、方形波を含む、実施態様15に記載のカテーテル。
(17) 前記蛇行形態が、曲線波を含む、実施態様15に記載のカテーテル。
(18) 前記蛇行形態が、約3~約10個の区切りを含む、実施態様15に記載のカテーテル。
(19) 前記遠位尾部部分の前記蛇行形態の幅が、前記遠位尾部の幅の約1/10~約1/2である、実施態様18に記載のカテーテル。
(20) 前記複数の基材が、10個の基材を含む、実施態様19に記載のカテーテルバルーン。
【外国語明細書】