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特開2023-3325笠コンクリートブロック用の底板およびそれを使用した設置工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003325
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】笠コンクリートブロック用の底板およびそれを使用した設置工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/02 20060101AFI20221228BHJP
   E02B 3/12 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
E02D5/02
E02B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104429
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000199463
【氏名又は名称】株式会社トッコン
(74)【代理人】
【識別番号】100121762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100126767
【弁理士】
【氏名又は名称】白銀 博
(72)【発明者】
【氏名】郭 知旭
(72)【発明者】
【氏名】菅野 翔太
【テーマコード(参考)】
2D049
2D118
【Fターム(参考)】
2D049EA03
2D049FB12
2D049FC15
2D049FE06
2D049FE08
2D049FE10
2D118AA02
2D118AA23
2D118BA03
2D118CA03
2D118CA07
2D118FA06
2D118FB22
2D118GA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】矢板壁の上端に設置する笠コンクリートブロックの形状を簡素にし、笠置ブロックを廉価にして、笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を現場作業によって閉塞することができる底板を提供する。
【解決手段】笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側開口部の形状に相似な外縁形状を有する平板3-1と、平板3-1の外縁に沿って平板上に設置されると共に、平板3-1の外縁形状と相似な外縁形状を有する弾性板3-2とから成る底板3であって、平板3-1の外縁寸法は、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側開口部の寸法より小さく、弾性板3-2の外縁寸法は、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側開口部の寸法より大きい。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する際に使用する笠コンクリートブロック用の底板であって、
笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の形状に相似な外縁形状を有する平板と、
平板の外縁に沿って平板上に設置されると共に、平板の外縁形状と相似な外縁形状を有する弾性板とから成り、
当該平板の外縁寸法は、笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の寸法より小さく、
当該弾性板の外縁寸法は、笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の寸法より大きい、
ことを特徴とする笠コンクリートブロック用の底板
【請求項2】
請求項1に記載の笠コンクリートブロック用の底板において、前記弾性板の外縁側が、前記平板の反対側に反り返っていることを特徴とする笠コンクリートブロック用の底板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の笠コンクリートブロック用の底板において、前記弾性板の外縁側に1以上のスリットが設けられていることを特徴とする笠コンクリートブロック用の底板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の笠コンクリートブロック用の底板を使用し、複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する工法であって、
(1)矢板壁の前面側のみに受け板を横方向に突出して配置するステップと、
(2)前板、後板、上部開口部を有し前板と後板を連結する梁板からなる笠コンクリートブロックの前板底面を、受け板の上面に当接させ、後板底面を陸側地盤上に当接させて、笠コンクリートブロックを矢板壁の上端に載置するステップと、
(3)笠コンクリートブロックの上部開口部から請求項1乃至3のいずれかに記載の笠コンクリートブロック用の底板を挿入するステップであって、
(ア)平板を下側に、弾性板を上側にして、弾性板の外縁を笠コンクリートブロックの内壁および矢板壁の前面側側面に当接させ、弾性変形させながら下方へ押し下げ、
(イ)平板を受け板の上面に当接させる
ステップと、
(4)矢板壁と、笠コンクリートブロックの前板、梁板、および底板によって画成される空間および笠コンクリートブロックの後板、梁板、および地盤によって画成される空間にコンクリートを打設し、硬化させるステップと、
から成ることを特徴とする笠コンクリートブロックの設置工法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の笠コンクリートブロック用の底板を使用し、複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する工法であって、
(1)矢板壁の前面側及び後面側に受け板を横方向に突出して配置するステップと、
(2)前板、後板、上部開口部を有し前板と後板を連結する梁板からなる笠コンクリートブロックの前板底面および後板底面を、受け板の上面に当接させて、笠コンクリートブロックを矢板壁の上端に載置するステップと、
(3)笠コンクリートブロックの上部開口部から請求項1乃至3のいずれかに記載の笠コンクリートブロック用の底板を挿入するステップであって、
(ア)平板を下側に、弾性板を上側にして、弾性板の外縁を笠コンクリートブロックの内壁および矢板壁の前面側側面又は後面側側面に当接させ、弾性変形させながら下方へ押し下げ、
(イ)平板を受け板の上面に当接させる
ステップと、
(4)矢板壁と、笠コンクリートブロックの前板、梁板、および底板によって画成される空間および笠コンクリートブロックの後板、梁板、および底板によって画成される空間にコンクリートを打設し、硬化させるステップと、
から成ることを特徴とする笠コンクリートブロックの設置工法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、水路、河川、湖沼において護岸用として構築される矢板壁に係わり、更に詳細には、これらの護岸用として構築された矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する際に使用する笠コンクリートブロック用の底板と、その底板を使用した笠コンクリートブロックの設置工法に係る。
【背景技術】
【0002】
港湾、水路、河川、湖沼において護岸壁を構築する方法として、多数の矢板を土中に打ち込んで構築する矢板壁が多く使用されている。
断面形状としてハット型の形状を有する矢板を土中に打ち込む際、矢板のハット型の凸状の面と凹状の面が、矢板壁の横方向に交互に並ぶようにして矢板を配置するのが一般的である。
【0003】
したがって、矢板壁では、水側である矢板壁の前面側および陸側である後面側の各々において、凸状の面と凹状の面が横方向に交互に並んで、矢板壁面に平行に形成されることになる。
【0004】
このように、矢板の向きを交互に替えて土中に打ち込んだ複数の矢板を一体化して矢板壁の強度を上げると共に、矢板壁の上端の外観を良くするために、矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置して矢板壁の上端を覆うとともに、笠コンクリートの内側空間にコンクリートを打設するという工法が採用されている。
【0005】
矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する従来工法の1つとして、特許文献1が開示する工法がある。
特許文献1が開示する工法では、
(1)矢板を列状に打ち込んでなる矢板列の上端部に、一方の側壁の内側に先端辺を矢板列の側面形状に沿う形状にした底板を設けた笠置ブロックを、矢板列の上端に設置した高さ調整金具に当接して被せる。
(2)ここで、笠置ブロックの底板の端辺を底板の下面の先端に対して上側が後退する形状の斜面として形成しているため、笠置ブロックの底板を設けた側の側壁の内側面と矢板列の側面との間に、長手方向にジグザグ状に連続し、かつ断面形状を上側を広くしたくさび状の隙間が形成される。
(3)この隙間内に断面形状をくさび状にした隙間材を上側から挿入し、この隙間を隙間材にて密閉する。
(4)以上のような方法によって形成された笠置ブロックの一方の側壁と底板と矢板列の側面との間の空間にコンクリートを打ち込み、これを硬化さることによって笠置ブロックを設置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-75408号公報
【0007】
しかしながら、特許文献1が開示する笠置ブロックの設置工法では、笠置ブロックに、一方の側壁の内側に先端辺を矢板列の側面形状に沿う形状にした底板を一体的に設けると共に、笠置ブロックの底板の端辺を底板の下面の先端に対して上側が後退する形状の斜面として形成しているため、笠置ブロックの形状が極めて複雑になり、笠置ブロックが高価なものになるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1が開示する笠置ブロックの設置工法では、矢板列の上端部に笠置ブロックを設置した後、笠置ブロックの底板を設けた側の底板の先端辺と矢板列の側面との間に形成され、長手方向にジグザグ状に連続し、かつ断面形状を上側を広くしたくさび状の隙間に、ジグザグ状に連続し、断面形状をくさび状にした隙間材を挿入するようになっている。
この挿入作業は、笠置ブロックの上部開口部から人手によって行われるものであり、笠置ブロックの内部空間という狭い領域で、かつ視認性の悪い状況で挿入作業を行なわなければならず、現場作業の作業性が悪くコスト高を招く原因にもなっていた。
【0009】
更に、特許文献1が開示する笠置ブロックの設置工法では、笠置ブロックの底板は、底板の先端辺を矢板列の側面形状に沿う形状にする必要があるため、笠置ブロックの一方の側壁にしか底板を設けることができず、矢板列の前側および後側(海側および陸側)の両方に底板を設ける必要がある場合には、特許文献1が開示する笠置ブロックの設置工法を採用することができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する際に使用する笠コンクリートブロックの形状を簡素にし、笠置ブロックを廉価にすることができ、笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を簡素な現場作業によって閉塞することができる底板を提供するものである。
また、矢板壁の前面側および後面側(海側および陸側)の両側において、笠コンクリートブロックに底板を設けることができるようにすることを課題とするものである。
更に、本発明の笠コンクリートブロック用の底板を使用することにより、現場作業を簡素化した笠コンクリートブロックの設置工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の観点に係る発明では、以下のような構成の発明とした。 すなわち、
複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する際に使用する笠コンクリートブロック用の底板であって、
笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の形状に相似な外縁形状を有する平板と、
平板の外縁に沿って平板上に設置されると共に、平板の外縁形状と相似な外縁形状を有する弾性板とから成り、
平板の外縁寸法は、笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の寸法より小さく、
弾性板の外縁寸法は、笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の寸法より大きい、
構成の笠コンクリートブロック用の底板とした。
【0012】
また、第2の観点に係る発明では、以下のような構成の発明とした。 すなわち、
第1の観点に係る発明の笠コンクリートブロック用の底板において、弾性板の外縁側が、前記平板の反対側に反り返っている構成の笠コンクリートブロック用の底板とした。
【0013】
また、第3の観点に係る発明では、以下のような構成の発明とした。 すなわち、
第1又は第2の観点に係る発明の笠コンクリートブロック用の底板において、弾性板の外縁側に1以上のスリットが設けられている構成の笠コンクリートブロック用の底板とした。
【0014】
また、第4の観点に係る発明では、以下のような構成の発明とした。 すなわち、
第1乃至第3の観点のいずれかに係る発明の笠コンクリートブロック用の底板を使用し、複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する工法であって、
(1)矢板壁の前面側のみに受け板を横方向に突出して配置するステップと、
(2)前板、後板、上部開口部を有し前板と後板を連結する梁板からなる笠コンクリートブロックの前板底面を、受け板の上面に当接させ、後板底面を陸側地盤上に当接させて、笠コンクリートブロックを矢板壁の上端に載置するステップと、
(3)笠コンクリートブロックの上部開口部から第1乃至第3の観点のいずれかに係る発明の笠コンクリートブロック用の底板を挿入するステップであって、
(ア)平板を下側に、弾性板を上側にして、弾性板の外縁を笠コンクリートブロックの内壁および矢板壁の前面側側面に当接させ、弾性変形させながら下方へ押し下げ、
(イ)平板を受け板の上面に当接させる
ステップと、
(4)矢板壁と、笠コンクリートブロックの前板、梁板、および底板によって画成される空間および笠コンクリートブロックの後板、梁板、および地盤によって画成される空間にコンクリートを打設し、硬化させるステップと、
から成る構成の笠コンクリートブロックを設置する工法とした。
【0015】
また、第5の観点に係る発明では、以下のような構成の発明とした。 すなわち、
第1乃至第3の観点のいずれかに係る発明の笠コンクリートブロック用の底板を使用し、複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁の上端に笠コンクリートブロックを設置する工法であって、
(1)矢板壁の前面側及び後面側に受け板を横方向に突出して配置するステップと、
(2)前板、後板、上部開口部を有し前板と後板を連結する梁板からなる笠コンクリートブロックの前板底面および後板底面を、受け板の上面に当接させて、笠コンクリートブロックを矢板壁の上端に載置するステップと、
(3)笠コンクリートブロックの上部開口部から第1乃至第3の観点のいずれかに係る発明の笠コンクリートブロック用の底板を挿入するステップであって、
(ア)平板を下側に、弾性板を上側にして、弾性板の外縁を笠コンクリートブロックの内壁および矢板壁の前面側側面又は後面側側面に当接させ、弾性変形させながら下方へ押し下げ、
(イ)平板を受け板の上面に当接させる
ステップと、
(4)矢板壁と、笠コンクリートブロックの前板、梁板、および底板によって画成される空間および笠コンクリートブロックの後板、梁板、および底板によって画成される空間にコンクリートを打設し、硬化させるステップと、
から成ることを特徴とする笠コンクリートブロックの設置工法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を閉塞する底板を、笠コンクリートブロックとは別の部品である底板として構成するようにしたため、笠コンクリートブロックの形状を簡素化し、笠コンクリートブロックの低コスト化を図ることができた。
【0017】
また、底板を、平板と弾性板とから構成し、弾性板を変形させながら笠コンクリートブロックの上部開口部から笠コンクリートブロックの底面まで底板を挿入して笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を閉塞するようにしたため、笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を簡素な現場作業によって閉塞することが可能となった。
【0018】
また、本発明に係る笠コンクリートブロック用の底板を使用することにより、矢板壁の前面側(海側)のみ、あるいは前面側(海側)および後面側(陸側)の両側において、自由に、笠コンクリートブロックに底板を設けることができるようになった。
【0019】
更に、本発明に係る笠コンクリートブロック用の底板を使用することにより、現場作業が簡素化され、笠コンクリートブロックの現場での設置作業コストを低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、笠コンクリートブロックを載置する前の矢板壁の平面図であり、矢板壁の各面の名称を定義するための図である。
図2図2は、笠コンクリートブロックの一例であり、笠コンクリートブロックの斜視図を示したものである。
図3図3は、図2に示す笠コンクリートブロックの断面図を示したものである。
図4図4は、本発明に係る底板を構成する平板の斜視図を示したものである。
図5図5は、本発明に係る底板の第1の実施例であって、底板の平面図および部分断面図を示したものである。
図6図6は、笠コンクリートブロックと底板を矢板壁の上端に載置した際における、笠コンクリートブロックと矢板壁とで画成される笠コンクリートブロックの底面側開口部の形状と、平板の形状を対比して示した仮想上の平面図であって、両者の形状の相対的な関係および、両者の形状の大小関係を示すための図である。
図7図7は、本発明に係る底板の第2の実施例であって、底板の平面図および部分断面図を示したものである。
図8図8は、本発明に係る底板の第3の実施例であって、底板の平面図および部分断面図を示したものである。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係る底板を斜視図として示したものである。
図10図10は、底板を笠コンクリートブロックの底面まで挿入し、笠コンクリートブロックと矢板壁によって画成される笠コンクリートブロックの底部の開口部を閉塞した状態を示す斜視図であって、実際には存在する笠コンクリートブロックを取り除いて描いた仮想上の図である。
図11図11は、笠コンクリートブロックと、矢板壁と、底板とによって画成される空間に、コンクリートを流し込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。 図1は、笠コンクリートブロックを載置する前の状態の矢板壁を平面図として表したものであり、矢板壁の各面の名称を定義するための図である。
【0022】
一般に、多数の矢板を土中に打ち込んで構築する矢板壁によって港湾、水路、河川、湖沼において護岸壁を構築する場合、矢板のハット型の凸状の面と凹状の面が、矢板壁の横方向に交互に並ぶようにして矢板を配置する。
本明細書においては、図1に示す矢板壁の陸側を後面側と呼び、水側を前面側と呼ぶ。
【0023】
また、図1に示すように、後面側に突起した矢板と前面側に突起した矢板の中央に位置する面を矢板壁中心面と呼び、この矢板壁中心面に平行であって、後面側へ突起した矢板の表面をa面と呼び、その裏面をb面と呼ぶ。
【0024】
同様に、矢板壁中心面に平行であって、前面側へ突起した矢板の表面をc面と呼び、その裏面をd面と呼ぶ。 また、矢板壁中心面に垂直な方向を横方向と呼ぶ。
【0025】
次に、笠コンクリートブロック2について説明する。 笠コンクリートブロック2としては、種々のタイプのものを使用することができるが、本明細書では、一例として図2および図3に示すタイプの笠コンクリートブロック2を使用することを前提にして説明を行なう。
【0026】
本発明を説明するために使用する笠コンクリートブロック2は、プレキャストされたコンクリートブロックであり、前板2-1、後板2-2、梁板2-3から構成されている。 梁板2-3は前板2-1と後板2-2を連結する部材であり、梁板2-3の高さは前板2-1と後板2-2の高さより短く、梁板2-3の下方には笠コンクリートブロック2の長手方向に連通した空間が伸びている。
【0027】
従って、図2および3に示すように、笠コンクリートブロック2の前板2-1および後板2-2の下端面には、笠コンクリートブロック2の長手方向に連通した開口部が形成されている。
【0028】
次に、本発明に係る底板3について説明する。 図4は、本発明に係る底板3を構成する平板3-1の斜視図を示したものであり、図5は、本発明に係る底板3の第1の実施例に係る図を示したものであって、底板3の平面図および部分断面図を示したものである。 また、図6は、笠コンクリートブロック2と底板3を矢板壁1の上端に載置した際における、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側開口部の形状と、平板3-1の形状を対比して示した仮想上の平面図であって、両者の形状の相対的な関係および、両者の形状の大小関係を示すための図である。
【0029】
図5に示すように、底板3は、平板3-1と弾性板3-2とから構成されている。図6に示すように、平板3-1は、笠コンクリートブロック2を矢板壁1の上端に載置したときに、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部の形状の内側に沿った形状をしている。
【0030】
別の言い方をすれば、平板3-1は、笠コンクリートブロック2を矢板壁1の上端に載置したときに、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部の形状よりも小さく、当該開口部の形状に相似な外縁形状を有している。
【0031】
したがって、平板3-1の外縁寸法は、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側開口部の寸法より小さい。
【0032】
平板3-1は、鋼板やコンクリート板のようにある程度剛性の高い材料で製造することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書の各図に示す平板3-1は、矢板壁1の1ピッチ分の幅を有するものとして描かれているが、特に1ピッチ分の幅を有するものに限定されるものではなく、複数ピッチ分の幅を有するようにしても良い。
ここで、矢板壁1の1ピッチ分の幅とは、図1に示す矢板壁1において、矢板壁1のa面の中央から、隣接するa面の中央までの距離(あるいは、矢板壁1のc面の中央から、隣接するc面の中央までの距離)をいう。
従って、2ピッチ分の幅を有する平板3-1では、台形状の突起部が2か所ある形状となる。
【0034】
弾性板3-2は、図5に示すように、平板3-1の外縁に沿って平板3-1の外縁を取り囲むようにして平板3-1の上面に配置されている。 図5に示すように、弾性板3-2は、所定の幅をもった帯状の部材であり、その外縁形状は平板3-1の外縁形状と相似形をしている。 また、弾性板3-2の外縁寸法は、平板3-1の外縁寸法よりも大きく、弾性板3-2の外縁は、平板3-1の外縁の外側にある。
【0035】
更に、弾性板3-2は、笠コンクリートブロック2を矢板壁1の上端に載置したときに、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部の形状の外側に沿った形状をしている。
【0036】
別の言い方をすれば、弾性板3-2は、笠コンクリートブロック2を矢板壁1の上端に載置したときに、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部の形状よりも大きく、当該開口部の形状に相似な外縁形状を有している。
図5に示す弾性板3-2は、平板3-1の外縁に沿った、連続した帯状の部材として示されているが、必ずしも連続した帯状の部材である必要はなく、複数個所において端面を付き合わせた不連続な帯状の部材であっても良い。
【0037】
弾性板3-2は、ゴム板や柔軟性のあるプラスチック系材料のように可撓性のある材料によって製造することができるが、ゴム板や柔軟性のあるプラスチック系材料に限定されるものではない。
【0038】
本明細書の各図に示す弾性板3-2は、平板3-1の外縁に沿った帯状の部材として描かれているが、これに限定されるものではなく、平板3-1の上面を全面覆うような構成であっても良い。
【0039】
弾性板3-2と平板3-1は、ボルト・ナットのような機械的なファスナーを使用して結合しても良いし、接着剤を使用して結合するようにしても良い。
【0040】
以上、説明したように、平板3-1の外縁に弾性板3-2を配置することにより、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部近傍に底板3を設置する際に、弾性板3-2の外縁側が、平板の反対側に反り返って湾曲するようになるため、底板3を容易に設置することができる。
【0041】
次に、図7に基づき、本発明に係る底板の第2の実施例について説明する。 第2の実施例に係る底板3が、第1の実施例に係る底板3と異なる点は、弾性板3-2の外縁部の形状が異なる点にある。
【0042】
図5の部分断面図に示すように、第1の実施例に係る底板3の弾性板3-2は全体にわたって平坦であるが、図7の部分断面図に示すように、第2の実施例に係る底板3の弾性板3-2では、弾性板3-2の外縁側が予め、平板の反対側に反り返って湾曲した形状となっている。 このように弾性板3-2の外縁側を予め湾曲した状態に形成しておくことにより、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部近傍に底板3を設置する際に、底板3をより容易に設置することができるようになる。
【0043】
次に、図8に基づいて、本発明に係る底板の第3の実施例について説明する。 第3の実施例に係る底板3が、第1の実施例に係る底板3と異なる点は、弾性板3-2の外縁部にスリット3-2-1を設けた点にある。 図8の部分断面図に示すように、第3の実施例に係る底板3の弾性板3-2の外縁部には、1又は複数のスリット3-2-1が設けられている。
【0044】
このように弾性板3-2の外縁部に1又は複数のスリット3-2-1を設けることによって、笠コンクリートブロック2と矢板壁1とで画成される笠コンクリートブロック2の底面側の開口部近傍に底板3を設置する際に、底板3をより容易に設置することができるようになる。
【0045】
次に、図10および図11に基づいて、複数の矢板を土中に打ち込んで構成した矢板壁1の上端に笠コンクリートブロック2を設置する工法について説明する。
【0046】
まず、矢板壁1の前面側(水側)および後面側(陸側)に受け板4を横方向(矢板壁中心面に垂直な方向)に突出して配置する。 このとき、受け板4の先端部は、矢板壁のa面又はc面より横方向外側に配置される。 受け板4は、矢板壁1の上端部に引っ掛けるようにして配置しても良いし、矢板壁1の側面にボルト・ナット等により直接固定するようにしてもよい。
【0047】
いずれにしても、受け板4の上面には、後で説明するように、笠コンクリートブロック2の前板2-1および後板2-2の下端面が当接し、受け板4の上面に笠コンクリートブロック2を載置できるようになっている。
【0048】
更に、受け板4の上面には、後で説明するように、底板3の下側面が当接し、受け板4の上面に底板3を載置できるようになっている。
この受け板4は、鋼板で構成することができるが、鋼板に限定されるものではなく、繊維強化プラスチック等のその他の材料で構成することもできる。
【0049】
受け板4は、矢板壁1の前面側(水側)および後面側(陸側)のa、b、c、d面のいずれの面にも設置することができるが、例えば、後面側(陸側)では、地盤上に直接笠コンクリートブロック2の後板2-2の下端面が当接するような場合には、受け板4は、矢板壁1の前面側(水側)にのみ設置するようにしても良い。 この場合、後述する底板3は、矢板壁1の前面側(水側)にのみ設置される。
【0050】
次に、笠コンクリートブロック2の前板2-1および後板2-2の下端面を受け板4の上面に当接させて矢板壁1の上端に笠コンクリートブロック2を載置する。この時、種々の手段により、笠コンクリートブロック2と矢板壁1との高さ方向の位置関係、および水平面内方向の位置関係を調整するようにしても良い。
【0051】
ここで、後面側(陸側)では、地盤上に直接笠コンクリートブロック2の後板2-2の下端面が当接するようになっている場合には、笠コンクリートブロック2の前板2-1の下端面は受け板4の上面に当接し、笠コンクリートブロック2の後板2-2は地盤上に当接して、矢板壁1の上端に笠コンクリートブロック2が載置される。
【0052】
次に、笠コンクリートブロック2の上部開口部から笠コンクリートブロック2用の底板3を挿入する。この時、底板3の平板3-1を下側に向け、弾性板3-2を上側に向けて笠コンクリートブロック2の上部開口部から笠コンクリートブロック2の中へ挿入する。
【0053】
底板3を笠コンクリートブロック2の中に挿入する際に、弾性板3-2の外縁を笠コンクリートブロック2の内壁および矢板壁1の側面に当接させ、弾性板3-2を弾性変形させながら下方へ押し下げ、平板3を受け板4の上面に当接させる。 このように底板3を笠コンクリートブロック2の底部の開口部近傍に配置することにより、笠コンクリートブロック2の底部の開口部を、弾性板3-2でシーリングして閉塞することが可能となる。
【0054】
次に、笠コンクリートブロック2の上部開口部から、矢板壁1と、笠コンクリートブロック2の前板2-1、後板2-2、梁板2-3、および底板3(あるいは地盤)によって画成される空間にコンクリート5を打設し(図11参照)、これを硬化させることにより、矢板壁1の上端に笠コンクリートブロック2を設置する作業が完了する。
【0055】
なお、ここで説明した矢板壁1の上端に笠コンクリートブロック2を設置する作業は、第1から第3の実施例に係る底板3のいずれを使用する場合であっても同様な設置作業とすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 矢板壁
2 笠コンクリートブロック
2-1 前板
2-2 後板
2-3 梁板
3 底板
3-1 平板
3-2 弾性板
3-2-1 スリット
4 受け板
5 コンクリート


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11