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特開2023-33258デンプンの消化を促進するための、反芻動物用の飼料添加物としての、低pH活性アルファ-1,4;/1,6-グリコシドヒドロラーゼの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033258
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】デンプンの消化を促進するための、反芻動物用の飼料添加物としての、低pH活性アルファ-1,4;/1,6-グリコシドヒドロラーゼの使用
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/189 20160101AFI20230302BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
A23K20/189
A23K50/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209532
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019516116の分割
【原出願日】2017-09-15
(31)【優先権主張番号】62/398,741
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シュクン
(72)【発明者】
【氏名】クラーウ、カーステン マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンティング
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005BA07
2B150AA02
2B150AB01
2B150DF12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反芻動物のデンプン消化率を増加させ、グルコース収率を増加させ、乾物の消化および/またはガス生成を増加させる方法を提供する。
【解決手段】反芻動物用の飼料添加物としての、少なくとも1つのアルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)の使用であって、前記ヒドロラーゼは(a)ペプシン存在下のpH6におけるヒドロラーゼの活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記ヒドロラーゼは第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)このヒドロラーゼは膵臓アミラーゼと協働して、グルコース収率を増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反芻動物用飼料への飼料添加物として、少なくとも1つのアルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)を添加する工程を含む、反芻動物のデンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法であって、前記ヒドロラーゼは(a)ペプシン存在下のpH6における前記ヒドロラーゼの活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記ヒドロラーゼは第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)前記ヒドロラーゼは前記反芻動物の前記消化室に存在する消化酵素と協働して、デンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、動物の栄養および、特に、デンプンの消化を促進する、反芻動物用の飼料添加物としての、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼなどの、低pH活性アルファ-1,4/1,6グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
反芻動物は、それらの微生物/酵素消化システムにより、粗飼料をタンパク質およびエネルギーに変換する独特の能力を有する。したがって、反芻動物は、地球の生態学および食物連鎖において重要な役割を果たす。
【0003】
反芻動物と非反芻動物との主な違いは、反芻動物の胃には第一胃、第二胃、第三胃および第四胃の4つの区画があることである。最初の2つの室、すなわち第一胃と第二胃で食物は唾液と混合され、固体および液体物質の層に分離する。固体は、凝集して、食い戻しすなわち食物塊を形成する。
【0004】
その後、食い戻しを逆流させ、咀嚼して、これを唾液と完全に混合し、砕いて粒子サイズを小さくする。線維、特にセルロースおよびヘミセルロースは、これらの室内で微生物(大部分が細菌、ならびにいくつかの原生動物、真菌および酵母)によって、主に3つの主要な揮発性脂肪酸(VFA)、すなわち酢酸、プロピオン酸および酪酸に主に分解される。タンパク質および非構造性炭水化物(ペクチン、糖、デンプン)も醗酵させる。
【0005】
第一胃と第二胃は異なる名前を有するが、それらは消化物と同じ機能空間を表し、それらの間を往復することができる。これらの室は、一緒にして反芻胃と呼ばれる。分解された消化物は今や反芻胃の下部液体部分にあり、その後、水および多くの無機ミネラル成分が血流に吸収される次の室、すなわち第三胃に入る。
【0006】
この後、消化物は、真の胃、すなわち第四胃に移動する。第四胃は単胃と全く同等であり、消化物は、ここでほとんど同じように消化される。消化物は最終的に小腸に移動し、そこで栄養素の消化と吸収が起こる。反芻胃で生成した微生物も、小腸で消化される。醗酵は、反芻胃と同じように大腸でも継続する。
【0007】
反芻動物用の飼料添加物として使用する酵素は、主に線維分解酵素、例えばセルラーゼ、ベータ-グルカナーゼおよびヘミセルラーゼである(Beauchemin et al.,2004.A rationale for the development of feed enzyme products for ruminants.Can.J.Anim.Sci.84:23-36の表1)。反芻動物用のデンプンヒドロラーゼに関する報告は限られている。デンプンヒドロラーゼは、エンドアミラーゼおよびエキソアミラーゼとして分類される。
【0008】
アルファ-アミラーゼとも呼ばれるエンドアミラーゼ(E.C.3.2.1.1)は、多糖類の内部アルファ-1,4-O-グリコシド結合の加水分解を触媒するデンプン分解酵素であり、生成物中にアルファ-アノマー立体配置を保持する。ほとんどのアルファ-アミラーゼは、その活性、構造的完全性および安定性のために、カルシウムイオン(Ca2+)を必要とする。
【0009】
アルファ-アミラーゼファミリー、すなわちグリコシドヒドロラーゼのGH-Hクランは、ほぼ30の異なる酵素特異性を含む、グリコシドヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ、およびイソメラーゼの最大ファミリーである。多種多様な酵素がデンプンに作用することができる。これらの酵素は、エンドアミラーゼ、エキソアミラーゼ、枝切り酵素、およびトランスフェラーゼの4つのグループに分けることができる。
【0010】
エンドアミラーゼは、内部のアルファ-1,4結合を切断し、アルファ-アノマー生成物を与える。
【0011】
エキソアミラーゼは、外部グルコース残基のアルファ-1,4またはアルファ-1,6結合を切断し、アルファまたはベータ-アノマー生成物を与える。
【0012】
枝切り酵素は、アルファ-1,6結合を加水分解し、もっぱら長い直鎖の多糖を残す。
【0013】
トランスフェラーゼは、ドナー分子のアルファ-1,4グリコシド結合を切断し、ドナーの一部をグリコシドアクセプターに転移して新しいグリコシド結合を形成する。
【0014】
グリコシドヒドロラーゼは、それらの反応様式に基づき、いくつかのクラスと、それらの明確に定められたアミノ酸配列の類似性に基づき、いくつかのファミリーに分けられてきた。ほとんどのデンプン変換酵素はGH-13ファミリーに属する。GH-13ファミリーは、触媒モジュールの三次元構造であるクランと呼ばれる、より大きな単位に基づいてさらに分類することができる。グリコシダーゼおよびトランスグリコシダーゼについて定義された14クラン(A~N)のうち、アルファ-アミラーゼファミリー(GH-13)は、第8クランGH-Hに属する。
【0015】
動物は、デンプンの加水分解のために消化性膵臓アルファ-アミラーゼを合成し、分泌する。このアルファ-アミラーゼはpH6~7付近に最適pHを有し、小腸において活性である。
【0016】
おそらく、分泌された膵臓アミラーゼが十分でなく、かつ/または小腸の消化管における飼料の移動が非常に速く、その結果、特に家禽の場合、膵臓アミラーゼがデンプンを完全に消化するのに十分な時間を有さないという事実のために、飼料への微生物アミラーゼの添加は動物のデンプン消化をさらに増加させ得る。(Isaksen,M.F.Cowieson,A.J.Kragh,K.M.(2010).Starch-and protein-degrading enzymes:biochemistry,enzymology and characteristics relevant to animal feed use.In:Enzymes in farm animal nutrition/edited by M.R.Bedford and G.G.Partridge.Pages 85-95)。
【0017】
このように、エンドアミラーゼは、飼料工業で広く使用されている飼料酵素の1つであった。最も一般的に使用されている飼料用アミラーゼは、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、B.アミロリクエファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、およびアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)に由来する。
【0018】
これらの飼料用アミラーゼは、pH4~pH8のpH範囲で最適な活性を有する。それらのほとんどは、ペプシンに対してかなりの耐性を有する。しかし、これらの飼料用酵素は生デンプン結合ドメイン(SBD)を有さず、ゼラチン化していない生デンプンを加水分解する能力が限られている可能性がある。
【0019】
Planchot et al.(Extensive degradation of native starch granules by alpha-amylase from Aspergillus fumigatus,Journal of Cereal Science,Volume 21,Issue 2,1995,Pages 163-171)は、バチルス属(Bacillus)の菌種由来のアルファ-アミラーゼが、膵臓アミラーゼと比較して粒状デンプンの分解効率が低いことを報告した。EFSA(Scientific Opinion on the safety and efficacy of Ronozyme RumiStar(alpha-amylase)as a feed additive for dairy cows.Additives and Products or Substances used in Animal Feed(FEEDAP).EFSA Journal 2012;10(7):2777)は、乳牛に対するバチルス・リケノフォルミス(B.licheniformis)由来のアルファ-アミラーゼの使用について報告した。この効果は時に明らかであり、時にこの効果はそれほどではなかった。Dettori-Campus et al.(Hydrolysis of starch granules by the amylase from Bacillus stearothermophilus NCA 26.Process Biochemistry,Volume 27,Issue 1,January 1992,Pages 17-21)は、およそ16のバチルス株由来のアミラーゼを研究し、それらの生デンプンではなく、可溶性デンプンへの嗜好は、B.アミロリチクス(B.amylolyticus)株において、可溶性デンプンに対する生デンプン活性の比が最も高く、0.25であることを示した。
【0020】
Tricarico et al.(Dietary supplementation of ruminant diets with an Aspergillus oryzae alpha-amylase.Animal Feed Science and Technology.Volume 145,Issues 1-4,14 August 2008,Pages 136-150)は、反芻動物の食餌の、食餌補給におけるアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のアルファ-アミラーゼの使用を報告し、このアミラーゼの補給は、第一胃でのデンプンの消化を必ずしも増加させずに、第一胃のデンプンの消化を改変することによって、動物の生産性を改善し得ることを示唆している。アミラーゼの添加がデンプン消化を増加させることは、当然のこととして予想されるので、そのような効果が、酵素不純物に由来することは十分あり得る(Beauchemin,Holtshausen,(2010).Developments in enzyme usage in ruminants.In:Developments in enzyme usage in ruminants.In:Enzymes in farm animal nutrition/edited by M.R.Bedford and G.G.Partridge.Pages 206-230)。
【0021】
Monteiro de Souza et al.,(Application of microbial alpha-amylase in industry-a review.Brazilian Journal of Microbiology(2010)41:850-861)は、工業的に重要なアルファ-アミラーゼを調べたところ、そのほとんど全てがpH5以上で最適なpHを示したが、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)由来のものだけは、3.0で最適なpHと安定性を示した。生デンプンまたは粒状デンプンを分解する能力があることから、コーンスターチのバイオエタノールへの液化と醗酵を同時に行うために、グルコアミラーゼと共に使用されてきたのは、アミラーゼA・カワチ(A.kawachii)である(Dunn-Coleman et al.,2008,米国特許第7354752B2号明細書)。
【0022】
飼料中のデンプン消化率は非常に変動しやすく、デンプンおよび飼料マトリックスの両方の物理的構造を含む多くの因子に依存する。
【0023】
2005年2月17日に公開された米国特許出願公開第2005/0037053号明細書は、アミラーゼ活性を有し、家禽およびブタなどの単胃動物用のデンプンを含む飼料中の難消化性デンプンを分解することができる酵素の使用を開示している。
【0024】
2008年1月17日に公開された国際公開第2008/06881号パンフレットは、乳量、食餌の見かけの消化率、飼料原料乾物の消失、体重増加および/または飼料変換率を改善するために、ウシ亜科反芻動物の飼料中で細菌アミラーゼを使用することを開示している。
【0025】
2015年9月3日に公開された国際公開第2015/128366号パンフレットは、トウモロコシおよび/またはトウモロコシサイレージの消化率を改善するため、特に乳量、体重増加および/または飼料変換率を改善するために、ウシ亜科反芻動物の飼料中で、1つ以上のプロテアーゼと組み合わせて細菌アミラーゼを使用することを開示している。
【0026】
したがって、反芻動物のデンプン消化率を増加させ、グルコース収率を増加させ、乾物の消化および/またはガス生成を増加させる要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
一実施形態では、反芻動物用の飼料への飼料添加物として、少なくとも1つのアルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)を添加することを含む、反芻動物のデンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法であって、前記ヒドロラーゼは、(a)ペプシン存在下のpH6におけるヒドロラーゼの活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記ヒドロラーゼは第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)このヒドロラーゼは反芻動物の消化室に存在する消化酵素と協働して、デンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法が開示される。
【0028】
第2の実施形態では、少なくとも1つのGLCH酵素は、第一胃または第四胃で見出される条件に相当する条件下で、生デンプンを加水分解することができる。
【0029】
第3の実施形態では、ヒドロラーゼは、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択される。好ましくは、群は、
アルファ-アミラーゼとグルコアミラーゼからなる。
【0030】
第4の実施形態では、アルファ-アミラーゼは、GH13ファミリーのメンバーであるか、またはアルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1);プルラナーゼ(EC 3.2.1.41);シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19);シクロマルトデキストリナーゼ(EC 3.2.1.54);トレハロース-6-リン酸ヒドロラーゼ(EC3.2.1.93);オリゴ-アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.10);マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133);ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135)、アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);マルトテトラオース生成アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.60)、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68);グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70);マルトヘキサオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.98);マルトトリオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.116);分枝酵素(EC 2.4.1.18);トレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.16);4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25);マルトペンタオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.-);アミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4);スクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7);マルト-オリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ(EC 3.2.1.141);イソマルツロースシンターゼ(EC 5.4.99.11);マルト-オリゴシルトレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.15);アミロ-アルファ-1,6グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33);およびアルファ-1,4-グルカン:リン酸アルファ-マルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.16)からなる群から選択される。
【0031】
第5の実施形態では、グルコシダーゼは、GH13もしくはGH31ファミリーのメンバーであるか、またはアルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);アルファ-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22);アルファ-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.24);アルファ-1,3-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.84);スクラーゼ-イソマルターゼ(EC 3.2.1.48)(EC 3.2.1.10);アルファ-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.177);アルファ-グルカンリアーゼ(EC 4.2.2.13);イソマルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.1-);オリゴ糖アルファ-1,4-グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.161);スルホキノボシダーゼ(EC 3.2.1.-)からなる群から選択される。
【0032】
第6の実施形態では、グルコアミラーゼはGH15ファミリーのメンバーであるか、またはグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3);グルコデキストラナーゼ.(EC 3.2.1.70);アルファ-トレハラーゼ(EC 3.2.1.28);およびデキストランデキストリナーゼ(EC 2.4.1.2)からなる群から選択される。
【0033】
第7の実施形態では、反芻動物におけるデンプン消化率を増加させ、グルコース収率を増加させ、乾物の消化を増加させ、かつ醗酵中のガス生成を増加させる方法であって、(i)反芻動物用の飼料添加物としての、少なくとも1つのGLCH酵素(ここで、前記酵素は(a)ペプシン存在下、pH6での酵素活性と比較して、ペプシン存在下、3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記酵素は第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)この酵素は膵臓アミラーゼと協働して、グルコース収率を増加させる)と、(ii)少なくとも1つのプロテアーゼとを含む酵素組成物を飼料に添加することを含む方法が開示されている。
【0034】
第9の実施形態では、少なくとも1つのGLCH酵素は、生デンプンを加水分解することができる。
【0035】
第10の実施形態では、GLCH酵素は、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、およびアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択される。好ましくは、酵素はアルファ-アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群から選択される。
【0036】
第11の実施形態では、少なくとも1つのGLCH酵素は、アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1);プルラナーゼ(EC 3.2.1.41);シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19);シクロマルトデキストリナーゼ(EC 3.2.1.54);トレハロース-6-リン酸ヒドロラーゼ(EC3.2.1.93);オリゴ-アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.10);マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133);ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135);アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.1.2.1.20);マルトテトラオース生成アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.60);イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68);グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70);マルトヘキサオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.98);マルトトリオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.116);分枝酵素(EC 2.4.1.18);トレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.16);4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25);マルトペンタオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.-);アミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4);スクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7);マルト-オリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ(EC 3.2.1.141);イソマルツロースシンターゼ(EC 5.4.99.11);マルト-オリゴシルトレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.15);アミロ-アルファ-1,6グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33);およびアルファ-1,4-グルカン:リン酸アルファ-マルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.16)からなる群から選択される。
【0037】
第12の実施形態では、グルコシダーゼはアルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);アルファ-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22);アルファ-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.24);アルファ-1,3-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.84);スクラーゼ-イソマルターゼ(EC 3.2.1.48)(EC 3.2.1.10);アルファ-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.177);アルファ-グルカンリアーゼ(EC 4.2.2.13);イソマルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.1-);オリゴ糖アルファ-1,4-グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.161);スルホキノボシダーゼ(EC 3.2.1-)からなる群から選択される。
【0038】
第13の実施形態では、グルコアミラーゼは、GH15グリコシルヒドロラーゼファミリーから選択される。
【0039】
第14の実施形態では、プロテアーゼは酸性プロテアーゼまたは中性メタロプロテアーゼからなる群から選択され、好ましくは、プロテアーゼは真菌性アスパラギン酸プロテアーゼまたは細菌中性メタロプロテアーゼである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、ペプシンおよびAFPプロテアーゼの存在下、AkAAアルファ-アミラーゼによるトウモロコシ粉からのグルコースおよびマルトースの放出を示す(実施例2)。
図2図2は、AkAAアルファ-アミラーゼおよびパンクレアチンによるトウモロコシ粉からのグルコース、マルトースおよびマルトトリオースの放出、ならびにAkAAとパンクレアチンの、グルコース放出の増加およびマルトトリオース放出の減少における相乗効果を示す(実施例4)。
図3図3は、pH2.5のペプシンおよびpH6.7のパンクレアチンの存在下、トウモロコシ粉に対するAtAAアルファ-アミラーゼの活性、ならびにAtAAおよびパンクレアチンを同時添加した場合の、マルトトリオースの完全な変換を示す(実施例5)。
図4図4は、第一胃液と共にインキュベートした場合の、アルファ-アミラーゼAkAAおよびAcAAの安定性、ならびにそれらと、グルコアミラーゼTrGAおよびCS4ならびにアスパラギン酸プロテアーゼとの混合物の安定性を示す(実施例6)。
図5図5は、ペプシンの存在下、pH3.2~6.0で試験したAkAAおよびAcAAアルファ-アミラーゼの活性を示す(実施例7)。
図6図6は、パンクレアチンの存在下、アルファ-アミラーゼAkAA、AcAA、およびグルコアミラーゼTrGA、CS4、およびアスパラギン酸ペプチダーゼAFPを含有する酵素カクテルの活性を示す(実施例8)。
図7図7は、コーンスターチ顆粒の加水分解の増加における、グルコアミラーゼとパンクレアチンとの相互作用を示す(実施例10)。
図8図8は、コーンスターチの加水分解の増加における、グルコアミラーゼとパンクレアチンとの相互作用を示す(実施例10)。
図9図9は、固定量のパンクレアチンの存在下、酵母マルターゼ(アルファ-グルコシダーゼ)によるコーンスターチ顆粒からのグルコースの放出を示す(実施例13)。
図10図10は、第一胃液中での5つのアルファ-グルコシダーゼの安定性およびグルコースの放出におけるパンクレアチンとの相互作用を示す(実施例15)。
図11図11は、pH6.0でのグルコースの放出における、5つのアルファ-グルコシダーゼとパンクレアチンとの相互作用を示す(実施例16)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
引用した全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
本開示では、多数の用語および略語を使用する。他に特に明記されない限り、下記の定義が適用される。
【0043】
1つの要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」および「the」は、その要素または成分の事例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であるものとする。このため「a」、「an」および「the」は、1つまたは少なくとも1つを含むと読むべきであり、要素または成分の単数語形は、その数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
【0044】
用語「~を含む(comprising)」は、特許請求の範囲で言及された特徴、整数、工程または成分の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分もしくはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。用語「~を含む(comprising)」は、用語「~から実質的になる(consisting essentially of)」および「~からなる(consisting of)」によって包含される実施形態を含むものとする。同様に、用語「~から実質的になる(consisting essentially of)」は、用語「~からなる(consisting of)」によって包含される実施形態を含むものとする。
【0045】
存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、かつ結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が示された場合、示された範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」などの範囲を含むと解釈すべきである。
【0046】
本明細書において数値と関連して使用する用語「約」は、その用語がその状況において他に特に定義されていない限り、数値の±0.5の範囲を指す。例えば、語句「約6のpH値」は、pH値が他に特に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0047】
本明細書を通して明示されたあらゆる最高数値限度は、それより低いあらゆる数値限度を、そのようなより低い数値限度が本明細書に明示的に記載されているかのように含むものとする。本明細書を通して明示されたあらゆる最低数値限度は、それより高いあらゆる数値限度を、そのようなより高い数値限度が本明細書に明示的に記載されているかのように含むであろう。本明細書を通して明示されたあらゆる数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に含まれるそれより狭いあらゆる数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が本明細書に明示的に記載されているかのように含むであろう。
【0048】
用語アルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼまたはアルファ-1,4;1,6-グリコシドヒドロラーゼは、本明細書中で互換的に使用される(「GLCH」)。
それらは、オリゴマーまたはポリマー分子のアルファ-1,4結合および/またはアルファ-1,6結合を加水分解できる酵素を指し、これらのグリコシドヒドロラーゼは、(a)ペプシン存在下のpH6でのこれらの酵素の活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)このような酵素は第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)これらの酵素は膵臓アミラーゼと協働して、グルコース収率を増加させる。これらの酵素は1つまたは2つの炭水化物結合モジュールを有し、生デンプンを加水分解できることが好ましい。これらのグリコシドヒドロラーゼ酵素は、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよび/またはアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択されることが好ましい。
【0049】
用語「グリコシドヒドロラーゼ」は、「グリコシダーゼ」および「グリコシルヒドロラーゼ」と互換的に使用される。グリコシドヒドロラーゼは、複合糖類(多糖類)のグリコシド結合の加水分解を補助する。グリコシダーゼは、グリコシルトランスフェラーゼと共に、グリコシド結合の合成および切断用の主要な触媒機構を形成する。グリコシドヒドロラーゼは、O-またはS-グリコシドの加水分解を触媒する酵素としてEC3.2.1に分類されている。グリコシドヒドロラーゼは、加水分解反応の立体化学的結果にしたがって分類することもできる。したがって、それらは、保持酵素または反転酵素のいずれかとして分類することができる。グリコシドヒドロラーゼは、さらにそれらがオリゴ糖鎖/多糖鎖の(通常は非還元型の)末端または中間で機能するかどうかに依存して、それぞれ外部または内部で作用するものとして分類することもできる。グリコシドヒドロラーゼは、さらにまた配列または構造に基づく方法によって分類できる。それらは、典型的にはそれらが作用を及ぼす基質名にちなんで命名される。
【0050】
用語「グリコシルトランスフェラーゼ」は、単糖類間のグリコシド結合の形成を触媒する酵素を指す。
【0051】
用語「グリカン」および「多糖」は、本明細書では互換的に使用される。グリカンは、多糖もしくはオリゴ糖、または、例えば、炭水化物がオリゴ糖だけであっても、糖タンパク質、糖脂質もしくはプロテオグリカンなどの複合糖質の炭水化物部分を意味する。グリカンは、単糖残基のホモポリマーまたはヘテロポリマーであってもよい。それらは線状または分岐状分子であってもよい。グリカンは、糖タンパク質およびプロテオグリカンのようにタンパク質に結合した状態で見出すことができる。一般に、それらは細胞の外表面に見出される。O-およびN-結合グリカンは真核生物では極めて一般的であるが、原核生物においてもそれほど一般的ではないが見出すことができる。
【0052】
用語「アルファ-アミラーゼ」は、アルファ-1,4-D-グルカングルカノヒドロラーゼおよびグリコゲナーゼと互換的に使用される。アルファ-アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)は、通常、しかし常にではないが、機能するにはカルシウムが必要である。
これらの酵素は、オリゴ糖および多糖におけるアルファ-1,4-グルコシド結合のエンド型加水分解を触媒する。アルファ-アミラーゼは、デンプン、グリコーゲン、ならびに関連する多糖類およびオリゴ糖類に不規則に作用し、アルファ-立体配置の還元基を放出する。
【0053】
用語「低pH活性アルファアミラーゼ(「LpHAA」)は、pH6.0でのその活性と比較して、3.0以下のpHで少なくとも20%の活性を有するアルファアミラーゼを指す。用語「グルコアミラーゼ」(EC3.2.1.3)は、グルカン1,4-アルファ-グルコシダーゼ、アミログルコシダーゼ、ガンマ-アミラーゼ、リソソームアルファ-グルコシダーゼ、酸マルターゼ、エキソ-1,4-アルファ-グルコシダーゼ、グルコースアミラーゼ、ガンマ-1,4-グルカングルコヒドロラーゼ、酸マルターゼ、および1,4-アルファ-D-グルカンヒドロラーゼと互換的に使用される。この酵素は、アミロースおよびアミロペクチンの非還元末端で、最後のアルファ-1,4-グリコシド結合を切断してグルコースを生成する。また、アルファ-1,6-グリコシド結合も切断する。
【0054】
用語「アルファ-グルコシダーゼ」(E.C.3.2.1.20)は、マルターゼ、グルコインベルターゼ、グルコシオスクラーゼ、マルターゼ-グルコアミラーゼ、アルファ-グルコピラノシダーゼ、グルコシドインベルターゼ、アルファ-D-グルコシダーゼ、アルファ-グルコシドヒドロラーゼ、アルファ-1,4-グルコシダーゼ、およびアルファ-D-グルコシドグルコヒドロラーゼと互換的に使用される。この酵素は、末端の非還元(1-4)結合アルファ-グルコース残基を加水分解して、単一のアルファ-グルコース分子を放出する。アルファ-グルコシダーゼは、ベータ-グルコースに対立するものとして、アルファ-グルコースを放出する炭水化物-ヒドロラーゼである。
【0055】
用語「飼料」は、家畜の飼育で動物に与えられる製品に関して使用される。用語「飼料」および「動物飼料」は、互換的に使用される。好ましい実施形態では、食料または飼料は、非反芻動物および反芻動物が消費するためのものである。
【0056】
本明細書では、用語「直接給餌微生物」(「DFM」)は、生きている(生存できる)天然型微生物源である。DFMのカテゴリーには、バチルス属(Bacillus)属、乳酸菌および酵母が含まれる。バチルス属(Bacillus)は、胞子を形成するユニークなグラム陽性桿菌である。これらの胞子は極めて安定であり、熱、水分およびpH範囲などの環境条件に耐えることができる。これらの胞子は、動物に摂取されると活性な栄養細胞に成長し、粗挽き粉およびペレット化飼料に使用することができる。乳酸菌は、病原体に対して拮抗性である乳酸を生成するグラム陽性球菌である。乳酸菌は、やや熱に弱いと思われるので、それらはペレット化飼料では使用されない。乳酸菌の種類には、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)およびストレプトコッカス属(Streptococcus)が含まれる。酵母は細菌ではない。これらの微生物は、植物群の真菌に属する。
【0057】
用語「プロテアーゼ」は、本明細書では、ペプチド結合を切断できる酵素を指す。用語「プロテアーゼ」、「ペプチダーゼ」および「プロテイナーゼ」は、互換的に使用できる。プロテアーゼは、動物、植物、細菌、古細菌およびウイルスに見出すことができる。タンパク質分解は、現在は6つの幅広い群、すなわちアスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸性プロテアーゼおよびメタロプロテアーゼに分類されている酵素により達成できる。
【0058】
特に、用語「プロテアーゼ」は、微生物、例えば真菌、細菌由来の、または植物もしくは動物由来のタンパク質またはポリペプチドドメインを意味し、それはタンパク質骨格(例えば、E.C.3.4)の種々の位置の1つ以上で、ペプチド結合の切断を触媒する能力を有する。
【0059】
用語「酸性プロテアーゼ」は、酸性条件下でタンパク質を加水分解する能力を有するプロテアーゼを意味する。これは、エンドペプチダーゼまたはエキソペプチダーゼなどの、任意の数のタンパク質加水分解物質を包含することができる。
【0060】
用語「アスパラギン酸プロテアーゼ(aspartic acid protease)」および「アスパラギン酸プロテアーゼ(aspartic acid protease)」は、本明細書中で互換的に使用され、酸性プロテアーゼの一種である。アスパラギン酸プロテアーゼ(aspartyl protease)としても知られるアスパラギン酸プロテアーゼ(aspartic protease)(EC 3.4.23)は、ポリペプチド基質中のペプチド結合を加水分解するための、1個以上の触媒アスパラギン酸塩残基に結合した活性化された水分子である。一般に、それらは、活性部位に2つの高度に保存されたアスパラギン酸塩を有し、酸性pHで最も活性である。
【0061】
略語「AFP」はアスパラギン酸真菌プロテアーゼ、すなわち、真菌生物源由来のアスパラギン酸プロテアーゼを指す。
【0062】
用語「メタロプロテアーゼ」は、その触媒機構が金属を含む任意のプロテアーゼである。ほとんどのメタロプロテアーゼは亜鉛を必要とするが、コバルトを使用するものもある。金属イオンは、3つのリガンドを介してタンパク質に配位される。金属イオンを配位するリガンドは、ヒスチジン、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、リジン、およびアルギニンによって変化し得る。第4の配位位置は、不安定な水分子に取り込まれる。
【0063】
メタロプロテイナーゼには、(a)エキソペプチダーゼ、メタロエキソペプチダーゼ(EC番号3.4.17)および(b)メタロエンドペプチダーゼ(3.4.24)を含む2つのサブグループがある。
よく知られているメタロエンドペプチダーゼには、ADAMタンパク質およびマトリックスメタロプロテイナーゼが含まれる。
【0064】
本明細書では、用語「ペプシン」は、2.0~3.5の低いpHでタンパク質をより小さなペプチドに分解する酵素を指す。すなわち、それはアスパラギン酸ペプチダーゼファミリーA1に属するプロテアーゼである。これは、産生されて胃に分泌され、ヒトおよび動物の消化系での主要な消化酵素の1つであり、食料または飼料中のタンパク質の消化を助ける。
【0065】
本明細書では、用語「反芻動物」は、主に微生物の作用により、消化の前に特殊な胃で栄養素を醗酵させることによって、植物ベースの食物から栄養素を獲得することができる哺乳動物を指す。このプロセスは、通常、醗酵した摂取物(食い戻しとして知られている)を逆流させ、再び咀嚼することを必要とする。植物物質をさらに分解し、消化を刺激するために食い戻しを再咀嚼するプロセスは、反芻と呼ばれる。反芻動物のおよそ150種には、家畜および野生種の両方が含まれる。反芻動物には、畜牛、乳牛、ヤギ、ヒツジ、キリン、ヤク、シカ、ヘラジカ、アンテロープ、バッファローなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書では、用語「反芻動物の消化室」は、第一胃、第二胃、第三胃、第四胃および小腸を指す(McDonald et al.,2011,Animal Nutrition(7th Edition),pages 156-191)。第四胃は、単胃の胃と全くの同等物である。
【0067】
本明細書では、用語「飼料」は、動物飼料の種類を指し、特に、家畜、例えば畜牛、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリおよびブタに餌を与えるために使用される、任意の農産食品である。「飼料」は、特に、動物に与えられる食物(切り取って動物まで運ぶ植物を含む)をいい、動物が自分であさる食物ではない(餌あさりと呼ぶ)。飼料はプロベンダーとも呼ばれ、干し草、わら、サイレージ、圧縮およびペレット化飼料、油および混合飼料、ならびに発芽穀物およびマメ類(例えば、豆芽、新鮮麦芽、または使用済み麦芽)を含む。ほとんどの動物飼料は、植物由来であるが、一部の製造業者は加工飼料に動物由来の成分を添加する。
【0068】
用語「飼料」は、家畜の飼育で動物に与えられる製品に関して使用される。用語「飼料」および「動物飼料」は、互換的に使用される。
【0069】
用語「デンプン」は、「アミラム」と互換的に使用される。それは、グリコシド結合によって連結された多数のグルコース単位からなる高分子炭水化物であり、植物において最も一般的な貯蔵炭水化物である。したがって、「デンプン」は、式(C10(式中、Xは任意の数であり得る)を有するアミロースおよびアミロペクチンからなる植物の複合多糖炭水化物からなる、任意の物質を指し得る。特に、この用語は、限定されないが、穀物、草、塊茎および根、より具体的にはコムギ、オオムギ、トウモロコシ、ライムギ、コメ、モロコシ、ふすま、キャッサバ、キビ、ジャガイモ、サツマイモ、およびタピオカを含む任意の植物ベースの物質を指す。
【0070】
用語「デンプン結合ドメイン(SBD)または炭水化物結合モジュール(CBM)」は、本明細書では互換的に使用される。SBDは9つのCBMファミリーに分けられる。デンプンは、エネルギー源として、多数の各種デンプン分解酵素によって分解される。しかし、僅かにそれらの約10%が生デンプンに結合し、それを分解することができる。これらの酵素は通常、デンプン顆粒への付着を媒介するデンプン結合ドメインと呼ばれる、異なる配列構造モジュールを有する。SBDは、デンプン(多糖)基質またはマルトサッカリド、アルファ-、ベータおよびガンマ-シクロデキストリンなどに優先的に結合するアミノ酸配列を指す。それらは、通常、約10%の微生物デンプン分解酵素に見出される約100アミノ酸残基のモチーフである。
【0071】
用語「触媒ドメイン」は、CBMとは異なるものであり、基質の加水分解のための活性部位を含む、ポリペプチドの構造領域を指す。
【0072】
用語「粒状デンプン」は、生の、すなわち未調理デンプン、例えば糊化を受けていないデンプンを指す。
【0073】
用語「粒状デンプン加水分解(GSH)酵素」および「粒状デンプン加水分解(GSH)活性」は、本明細書では互換的に使用され、動物、特に反芻動物の消化管に見出される条件に相当する消化管関連条件下において、粒状のデンプンを加水分解する能力を有する酵素を指す。
【0074】
用語「糊化」は水および熱の存在下でデンプン分子の分子間結合を切断し、水素結合部位がより多くの水と関わることを可能にすることを指す。これは、デンプン粒子を水に不可逆的に溶解し、粘稠な懸濁液を形成する。
【0075】
用語「重合度(DP)」は、高分子すなわちポリマーまたはオリゴマー分子中のモノマー単位の数を指す。例えば、それは、所与の糖類中のモノマー単位数(n)を指し得る。
DP1の例は、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類である。DP2の例は、マルトースおよびスクロースなどの二糖類である。DP>3は、3超の重合度のポリマーを意味する。
【0076】
用語「単離(された)」は、自然には発生しない形態または環境にある物質を意味する。単離物質の非限定的な例には、(1)天然には存在しない物質、(2)天然ではそれが結びついている天然に存在する成分の1つ以上または全部から、少なくとも部分的に除去されている物質、例えば、限定されないが、宿主細胞、酵素、変異体、核酸、タンパク質、ペプチドまたは補因子;(3)天然に見出される物質に対し、ヒトの手によって改変されている物質;または(4)天然にはそれが結び付いている他の成分に対し、その物質の量を増加させることによって改変されている物質が含まれる。用語「単離核酸分子」、「単離ポリヌクレオチド」および「単離核酸断片」は、互換的に使用され、任意選択的に合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含む、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAのポリマー形態にある単離核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントから構成され得る。
【0077】
核酸またはポリペプチドに適用される用語「精製(された)」は、一般に、当該技術分野においてよく知られた分析手法によって決定された他の成分を実質的に含まない核酸またはポリペプチドを意味する(例えば、精製ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、電気泳動ゲル、クロマトグラフィー溶出液および/または密度勾配遠心分離法に供された媒体において個別のバンドを形成する)。例えば、電気泳動ゲルにおいて実質的に1つのバンドを生じる核酸またはポリペプチドは「精製されて」いる。精製核酸または精製ポリペプチドは、少なくとも約50%純粋であり、通常は、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%(例えば、モルベースでの重量パーセント)以上純粋である。これに関連して、組成物は精製または濃縮手法の適用後に、ある分子の濃度が実質的に増加している場合は、その分子について濃縮されている。「濃縮(された)」という用語は、出発組成物よりより高い相対濃度または絶対濃度で組成物中に存在する、化合物、ポリペプチド、細胞、核酸、または他の特定の物質もしくは成分を指す。
【0078】
用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は本明細書で互換的に使用され、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマー配列を含む。アミノ酸に対しては、本開示全体を通して、生物学的命名法に関するIUPAC-IUB連合委員会に準拠して定義された1文字また3文字コードを使用する。1文字のXは、20種のアミノ酸のいずれかを指す。ポリペプチドが遺伝子コードの縮重に起因して2つ以上のヌクレオチド配列によってコードできることも理解されている。変異は、親アミノ酸の一文字コード、続いて位置番号、その後に、変異アミノ酸の1文字コードによって名付けることができる。例えば、グリシン(G)の87位でのセリン(S)への変異は、「G087S」または「G87S」と表される。改変を記載する場合、位置の後に括弧内に列挙されたアミノ酸が続く場合は、列挙したアミノ酸のいずれかによるその位置での置換のリストを示している。例えば、6(L,I)は、6位をロイシンまたはイソロイシンで置換できることを意味する。
時には、1つの配列内で、置換を定義するためにスラッシュ(/)を使用し、例えば、F/Vは、特定位置がその位置でフェニルアラニンまたはバリンを有する可能性があることを示す。
【0079】
変異は、親アミノ酸の一文字コードに続いて位置番号、その後に、変異アミノ酸の1文字コードによって名付けることができる。例えば、グリシン(G)の87位でのセリン(S)への変異は、「G087S」または「G87S」と表される。
【0080】
タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの「成熟」形という用語は、シグナルペプチド配列およびプロペプチド配列を含まないタンパク質、ポリペプチドまたは酵素の機能的形態を指す。
【0081】
タンパク質またはペプチドの「前駆体」形態という用語は、そのタンパク質のアミノまたはカルボニル末端に作動可能に連結しているプロ配列を有するタンパク質の成熟形態を指す。前駆体はまた、プロ配列のアミノ末端に作動可能に連結している「シグナル」配列を有し得る。前駆体はまた、翻訳後活性に関連する追加のポリペプチド(例えば、タンパク質またはペプチドの成熟形態を残すためにそれから切断されたポリペプチド)を有し得る。
【0082】
「プロ配列」または「プロペプチド配列」は、酵素の適正なフォールディングおよび分泌に必要である、シグナルペプチド配列と成熟酵素配列(例えば、本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼ)との間のアミノ酸配列を指す;それらは時には分子内シャペロンと呼ばれる。プロ配列またはプロペプチド配列の開裂は、プロ酵素として発現されることが多い成熟活性酵素を生じさせる。
【0083】
用語「シグナル配列」および「シグナルペプチド」は、タンパク質の成熟形態もしくは前駆体形態の分泌または直接輸送に関与し得るアミノ酸残基の配列を指す。シグナル配列は、通常、前駆体または成熟タンパク質配列のN末端に位置する。シグナル配列は、内因性であっても外因性であってもよい。シグナル配列は、通常、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列は、通常、タンパク質が輸送された後にシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。目的遺伝子は、シグナル配列を伴って、または伴わずに発現し得る。
【0084】
アミノ酸配列または核酸配列に関連した用語「野生型」は、そのアミノ酸配列もしくは核酸配列が天然の、または天然に存在する配列であることを示す。本明細書では、用語「天然に存在する」は、天然に見出されるもの(例えば、タンパク質、アミノ酸または核酸配列)を指す。逆に、用語「天然に存在しない」は、天然には見出されないもの(例えば、実験室で産生された、または野生型配列の改変で産生された、組換え核酸およびタンパク質配列)を指す。
【0085】
アミノ酸残基の位置に関連して本明細書で使用する場合、「~に対応している」または「~に対応する」または「対応する」は、タンパク質またはペプチド中の列挙された位置におけるアミノ酸残基、あるいはタンパク質またはペプチド中の列挙された残基と類似の、相同の、または同等のアミノ酸残基を指す。本明細書では、「対応する領域」は、一般に、関連タンパク質または参照タンパク質における類似の位置を指す。
【0086】
用語「~に由来する」および「~から得られる」は、問題の生物の菌株によって生成される、または生成可能なタンパク質だけではなく、そのような菌株から単離されたDNA配列によってコードされ、そのようなDNA配列を含有する宿主生物中で産生されたタンパク質も指す。さらに、この用語は、合成および/またはcDNA起源のDNA配列によってコードされ、問題のタンパク質の識別可能な特徴を有するタンパク質を指す。
【0087】
用語「アミノ酸」は、タンパク質またはポリペプチドの基本的化学構造単位を指す。したがって、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対するコドンは、別の疎水性がより低い残基(例えばグリシン)または疎水性がより高い残基(例えばバリン、ロイシンまたはイソロイシン)をコードするコドンによって置換され得る。同様に、1つの負荷電の残基を別の負荷電の残基で(例えば、アスパラギン酸をグルタミン酸で)または1つの正荷電の残基を別の正荷電の残基で(例えばリシンをアルギニンで)置換するような変化もまた、機能的に同等の生成物を産生すると予測できる。多くの場合に、タンパク質分子のN末端およびC末端部分に変化を生じさせるようなヌクレオチドの変化もまた、そのタンパク質の活性を変化させるとは予測されないであろう。提案された改変のそれぞれは、コードされた生成物の、生物学的活性が保持されているかどうかを決定するのと同様に、当該技術分野におけるルーチン的技能の範囲に十分含まれる。
【0088】
用語「コドン最適化(された)」は、それが、各種宿主の形質転換のための核酸分子の遺伝子またはコード領域を指すときには、DNAがコードするポリペプチドを変化させずに、宿主生物の典型的なコドン使用を反映するよう、核酸分子の遺伝子またはコード領域内のコドンを改変することを意味する。
【0089】
用語「遺伝子」は、コード配列に先行する調節配列(5’非コード配列)および後続する配列(3’非コード配列)を含む、特定のタンパク質を発現する核酸分子を指す。「ネイティブ遺伝子」は、それ自体の調節配列と共に天然に見出される遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然遺伝子ではなく、天然には一緒に見出されることのない調節配列とコード配列を含む任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列とコード配列、または同一起源に由来するが、天然に見出される方法とは異なる方法で配列された調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性遺伝子」は、生物のゲノム内でその天然の場所にある天然遺伝子を意味する。「外来」遺伝子は、宿主生物内で通常は見出されないが、遺伝子導入によって宿主生物中に導入されている遺伝子を意味する。外来遺伝子は、非天然生物内に挿入された天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含むことができる。「トランス遺伝子」は、形質転換手法によってゲノム内に導入されている遺伝子である。
【0090】
用語「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。「好適な調節配列」は、コード配列内の上流(5’非コード配列)、またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置しており、転写、RNAプロセシングもしくは安定性または関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含み得る。
【0091】
用語「作動可能に連結した」は、一方の機能が他方の機能によって影響されるような単一核酸分子上の核酸配列の関連性を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、すなわちコード配列がプロモーターの転写制御下にある場合に、コード配列と作動可能に連結している。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で調節配列に作動可能に連結することができる。
【0092】
用語「調節配列」または「制御配列」は、本明細書では互換的に使用され、生物内の特定の遺伝子の発現を増加または減少させることのできるヌクレオチド配列のセグメントを指す。調節配列の例としては、プロモーター、シグナル配列、オペレーターなどが挙げられるがそれらに限定されない。上述のように、調節配列は、目的のコード配列/遺伝子にセンスまたはアンチセンス方向に作動可能に連結することができる。
【0093】
「プロモーター」または「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写が始まる場所を規定するDNA配列を指す。プロモーター配列は、典型的には転写開始部位のすぐ上流または5’末端に位置する。プロモーターは、それらの全体が天然の、すなわち天然に存在する遺伝子に由来し得るか、または天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成され得るか、または合成DNAセグメントさえも含み得る。当業者であれば、異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞の種類もしくは発達の異なる段階で、または異なる環境もしくは生理的条件に反応して(「誘導性プロモーター」)遺伝子の発現を指示し得ることを理解している。
【0094】
「3’非コード配列」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、例えば転写の終結などのmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする配列を含む。
【0095】
本明細書では、用語「形質転換」は、核酸分子の宿主生物への移動または導入を意味する。核酸分子は、DNAの直鎖形態または環状形態として導入し得る。核酸分子は、自律的に複製するプラスミドであるか、またはそれは産生宿主のゲノムに組み込まれ得る。形質転換された核酸を含有する産生宿主は、「形質転換された」、「組換えの」、もしくは「遺伝子導入の」生物、または「形質転換体」と呼ばれる。
【0096】
本明細書では、用語「組換え」は、例えば、化学合成によって、または遺伝子工学手法による核酸の単離セグメントの操作によって、本来なら別々の、核酸配列の2つのセグメントを人工的に組み合わせることを指す。例えば、1つ以上のセグメントまたは遺伝子が、自然にまたは実験室操作のいずれかで、異なる分子から、同一分子の別の部分から、または人工的配列から挿入されているDNAは、新たな配列の導入を遺伝子にもたらし、次に生物にもたらす。用語「組換えの」、「遺伝子導入の」、「形質転換された」、「遺伝子操作された」または「外来遺伝子発現のために改変された」は、本明細書では互換的に使用される。
【0097】
用語「組換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」、「組換え発現コンストラクト」および「発現カセット」は、本明細書では互換的に使用される。組換えコンストラクトは、天然には一緒に見出されるとは限らない、核酸断片、例えば、調節配列およびコード配列の人工的な組み合わせを含む。例えば、コンストラクトは、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列を含み得るか、または同一起源に由来するが、天然に見出されるのとは異なる方法で配列された調節配列およびコード配列を含み得る。そのようなコンストラクトは、それだけで使用し得るか、またはベクターと共に使用し得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者にはよく知られているように、宿主細胞を形質転換するために使用する方法に依存する。例えばプラスミドベクターを使用することができる。熟練した職人は、宿主細胞を成功裡に形質転換し、選択し、そして増殖させるために、ベクター上に存在しなければならない遺伝要素をよく知っている。熟練した職人は、また、異なる、独立した形質転換イベントは、異なる発現レベルとパターンをもたらすこと(Jones et al.,(1985)EMBO J 4:2411-2418;De Almeida et al.,(1989)Mol Gen Genetics 218:78-86)、したがって、所望の発現レベルとパターンを示す菌株を得るために、多重イベントは通常スクリーニングされることも認識するであろう。そのようなスクリーニングは、DNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、PCR、実時間定量PCR(qPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、タンパク質発現の免疫ブロッティング、酵素もしくは活性分析、および/または表現型分析を含む、標準の分子生物学的、生化学的および他の分析法により行い得る。
【0098】
用語「生成宿主」、「宿主」および「宿主細胞」は、本明細書では互換的に使用され、ヒトであろうと非ヒトであろうと、遺伝子を発現するために、組換えコンストラクトが安定的に、または一過性に導入される任意の生物またはその細胞を指す。この用語は、増殖中に発生する変異に起因して親細胞と同一でない、親細胞の任意の子孫を含む。
【0099】
用語「パーセント同一性」は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野では、「同一性」は、場合によっては、一連のそのような配列間のマッチするヌクレオチドまたはアミノ酸の数によって決定される、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、限定されないが、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,NY(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);and Sequence Analysis Primer(Gribskov, M. and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,NY(1991)に記載された方法を含む、既知の方法によって容易に計算することができる。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に入手できるコンピュータープログラムに成文化されている。
【0100】
本明細書では、「%同一性」、「パーセント同一性」または「PID」は、タンパク質配列の同一性を指す。パーセント同一性は、当該技術分野で知られた標準的手法を使用して決定し得る。有用なアルゴリズムとしては、BLASTアルゴリズム(Altschul et al.,J Mol Biol,215:403-410,1990;およびKarlin and Altschul,Proc Natl Acad Sci USA,90:5873-5787,1993を参照されたい)が挙げられる。BLASTプログラムは、数種の検索パラメーターを使用するが、そのほとんどはデフォルト値に設定される。NCBI BLASTアルゴリズムは、生物学的類似性に関して最も関連する配列を見出すが、20未満の残基のクエリ配列には推奨されない(Altschul et al.,Nucleic Acids Res,25:3389-3402,1997;and Schaffer et al.,Nucleic Acids Res,29:2994-3005,2001)。核酸配列検索用の典型的なデフォルトBLASTパラメーターとしては、隣接ワード閾値(Neighboring words threshold)=11;E値カットオフ=10;スコアリングマトリックス(Scoring Matrix)=NUC.3.1(マッチ=1、ミスマッチ=-3);ギャップオープニング(Gap Opening)=5;およびギャップエクステンション(Gap Extension)=2が挙げられる。アミノ酸配列検索用の典型的なデフォルトBLASTパラメーターとしては、ワードサイズ(Word size)=3;E値カットオフ=10;スコアリングマトリックス(Scoring Matrix)=BLOSUM62;ギャップオープニング(Gap Opening)=11;およびギャップエクステンション(Gap Extension)=1が挙げられる。パーセント(%)アミノ酸配列同一性値は、マッチした同一残基の数を、プログラムによって最適/最大アラインメントに加えられたギャップを含む、「参照」配列の総残基数で除すことによって決定される。BLASTアルゴリズムは、「参照」配列を「クエリ」配列と呼ぶ。
【0101】
本明細書では、「相同タンパク質」または「相同酵素」は、一次、二次および/または三次構造において明確な類似性を有するタンパク質を指す。タンパク質相同性は、タンパク質がアラインされた場合の、直鎖アミノ酸配列の類似性を指すことができる。タンパク質配列の相同性検索は、NCBI BLASTのBLASTPおよびPSI-BLASTを使用し、0.001の閾値(E-値カットオフ)で実施することができる。(Altschul SF,Madde TL,Shaffer AA,Zhang J,Zhang Z,Miller W,Lipman DJ.Gapped BLAST and PSI BLAST a new generation of protein database search programs.Nucleic Acids Res 1997 Set 1;25(17):3389-402)。この情報を使用して、タンパク質配列を分類することができる。系統樹は、アミノ酸配列を使用して構築することができる。
【0102】
配列アラインメントおよびパーセント同一性の計算はLASERGENE bioinformatics computing suite(DNASTAR Inc.,Madison,WI)のMegalignプログラム、Vector NTI v.7.0(Informax,Inc.,Bethesda,MD)のAlignXプログラム、またはEMBOSS Open Software Suiteを使用して実施することができる(EMBL-EBI;Rice et al.,Trends in Genetics 16,(6):276-277(2000))。配列の多重アラインメントはCLUSTALアラインメント法(CLUSTALW;例えばバージョン1.83など)(Higgins and Sharp,CABIOS,5:151-153(1989);Higgins et al.,Nucleic Acids Res.22:4673-4680(1994);およびEuropean Bioinformatics Institute経由でEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手できるChenna et al.,Nucleic Acids Res 31(13):3497-500(2003))を使用してデフォルトのパラメーターで行うことができる。CLUSTALWタンパク質アラインメントについての好適なパラメーターとしては、ギャップイグジスタンスペナルティ(GAP Existence penalty)=15、ギャップエクステンション(GAP extension)=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=-1、タンパク質GAPDIST=4およびKTUPLE=1が挙げられる。一実施形態では、高速または低速アラインメントは、低速アラインメントのデフォルト設定が使用される。あるいは、CLUSTALW法(例えば、バージョン1.83)を使用するパラメーターは、さらにKTUPLE=1、ギャップペナルティ(GAP PENALTY)=10、ギャップエクステンション(GAP extension)=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、ウィンドウ=5およびトップ・ダイアゴナルズ・セイブド(TOP DIAGONALS SAVED)=5も使用するよう変更することができる。
【0103】
本明細書では、ある態様の特徴として、各種ポリペプチドのアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列が開示される。ある実施形態では、本明細書に開示した配列と、少なくとも約70~85%、85~90%または90%~95%同一である、これらの配列の変異体を使用し得る。あるいは、ある実施形態の変異ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、本明細書に開示した配列と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有することができる。変異アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、開示した配列と同一の機能または開示した配列の機能の少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。
【0104】
ポリペプチドに関する用語「変異体」は、1つ以上の自然に生じた、または人為的なアミノ酸の置換、挿入または欠失を含むという点で、特定の野生型、親または参照ポリペプチドと異なるポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、ヌクレオチド配列が特定の野生型、親または参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドを指す。野生型、親または参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの同一性は、文脈から明らかになるであろう。
【0105】
用語「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、細胞の中央代謝の一部でない遺伝子をしばしば運ぶ、追加の染色体要素を指し、通常、二本鎖DNAの形態をとる。
そのような要素は、直鎖または環状形態の、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、任意の起源に由来する、自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であり得、これらの中では、多くのヌクレオチド配列が、目的のポリヌクレオチドを細胞に導入することができる固有のコンストラクトに連結しているか、組み換えられている。「形質転換カセット」は、遺伝子を含み、かつ、遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特定のベクターを指す。用語「発現カセット」および「発現ベクター」は、本明細書では互換的に使用され、遺伝子を含み、かつ遺伝子に加えて宿主内でその遺伝子の発現を可能にする要素を有する特定ベクターを指す。
【0106】
本明細書では、用語「発現」は、前駆体または成熟形のいずれかの形態の、機能的最終産物(例えば、mRNAまたはタンパク質)の産生を指す。発現は、またmRNAのポリペプチドへの翻訳を指し得る。
【0107】
遺伝子の発現は、遺伝子の転写およびmRNAの前駆体または成熟タンパク質への翻訳を含む。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の産生を意味する。「共抑制」は、同一または実質的に類似の外来または内因性遺伝子の発現を抑制することができる、センスRNA転写物の生成を意味する(米国特許第5,231,020号明細書)。「成熟」タンパク質は、翻訳後プロセシングされたポリペプチド、すなわち、一次翻訳産物中に存在する任意のプレペプチドまたはプロペプチドが除去されているポリペプチドを指す。「前駆体」タンパク質は、mRNAの翻訳の一次産物、すなわちプレペプチドおよびプロペプチドが依然存在している産物を指す。プレペプチドおよびプロペプチドは、細胞内局在化シグナルであり得るが、これには限定されない。「安定形質転換」は、核ゲノムおよびオルガネラゲノムの両方を含む、宿主生物のゲノム内へ核酸断片を移動させることを指し、遺伝的に安定な遺伝形質をもたらす。対照的に、「一過性形質転換」は、宿主生物の核またはDNA含有オルガネラ内への核酸断片の移動を指し、組み込まれた遺伝形質または安定な遺伝形質を伴わない遺伝子の発現をもたらす。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」生物と呼ばれる。
【0108】
発現ベクターは、当該技術分野で知られた、好適な産生宿主の形質転換に有用な、任意の数のベクターまたはカセットの一つとすることができる。通常、ベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指令する配列、選択可能なマーカーおよび自律複製または染色体への組込みを可能にする配列を含むであろう。好適なベクターには、一般に、転写開始制御配列を有する遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNA断片の3’領域が含まれる。どちらの制御領域も、形質転換された産生宿主細胞の遺伝子および/または産生宿主にネイティブな遺伝子に相同の遺伝子に由来することができる(そのような制御領域がそのように由来する必要はないのだが)。
【0109】
本明細書では、「相同タンパク質」または「相同酵素」は、一次、二次および/または三次構造において明確な類似性を有するタンパク質を指す。タンパク質の相同性は、タンパク質がアラインされた場合の、直鎖アミノ酸配列の類似性を指すことができる。タンパク質配列の相同性検索は、NCBI BLASTのBLASTPおよびPSI-BLASTを使用し、0.001の閾値(E-値カットオフ)で実施することができる(Altschul SF,Madde TL,Shaffer AA,Zhang J,Zhang Z,Miller W,Lipman DJ.Gapped BLAST and PSI BLAST a new generation of protein database search programs.Nucleic Acids Res 1997 Set 1;25(17):3389-402)。この情報を使用して、タンパク質配列を分類することができる。系統樹は、アミノ酸配列を使用して構築することができる。アミノ酸配列は、Vector NTI Advance suiteなどのプログラムに入力することができ、ガイドツリーは、Neighbor Joining(NJ)法(齋藤および根井、Mol Biol Evol,4:406-425,1987)を使用して作成することができる。ツリーの構築は、木村の配列距離補正を使用し、ギャップを含む位置を無視して計算することができる。AlignXなどのプログラムは、系統樹上に示された分子名に続く括弧内に計算距離値を提示することができる。
【0110】
分子間の相同性についての理解は、分子の進化史ならびに分子の機能に関する情報を明らかにすることができる;新規に配列決定したタンパク質が、既に特性解析されたタンパク質と相同であれば、新規なタンパク質の生化学的機能を強く示すものとなる。2つの実体間の最も基本的な関係は相同性である。2つの分子は、それらが共通の祖先に由来していれば、相同であるといわれる。相同分子もしくはホモログは、パラログとオルトログの2つのクラスに分類することができる。パラログは、1つの種内に存在するホモログである。パラログは、多くの場合、それらの詳細な生化学的機能が相違する。オルトログは、異なる種に存在するホモログであり、極めて類似したまたは同一の機能を有する。タンパク質スーパーファミリーは、共通の祖先を推察することができる、タンパク質の最大のグループ(系統群)である。通常、この共通の祖先は、配列アラインメントと機構類似性に基づいている。スーパーファミリーは、通常、数種のタンパク質ファミリー(そのファミリー内での配列類似性を示す)を含む。「タンパク質クラン」という用語は、通常、MEROPSプロテアーゼ分類系に基づくプロテアーゼスーパーファミリーに対し使用される。
【0111】
CLUSTAL Wアルゴリズムは、配列アラインメントアルゴリズムの別の例である(Thompson et al.,Nucleic Acids Res,22:4673-4680,1994を参照されたい)。CLUSTAL Wアルゴリズムのデフォルトパラメーターには、ギャップオープニングペナルティ(Gap opening penalty)=10.0;ギャップエクステンションペナルティ(Gap extension penalty)=0.05;タンパク質重量マトリックス(Protein weight matrix)=BLOSUMシリーズ;DNA重量マトリックス(DNA weight matrix)=IUB;ディレイ発散数列(%)(Delay divergent sequences %)=40;ギャップ分離距離(Gap separation distance)=8;DNAトランジション重量(DNA transitions weight)=0.50;親水性残基のリスト=GPSNDQEKR;負のマトリックスの使用(Use negative matrix)=OFF;トグル残基特異的ペナルティ(Toggle Residue specific penalties)=ON;トグル親水性ペナルティ(Toggle hydrophilic penalties=ON;およびトグルエンドギャップ分離ペナルティ(Toggle end gap separation penalty)=OFFが含まれる。CLUSTALアルゴリズムでは、いずれか一方の末端で発生する欠失が含まれる。
例えば、500個のアミノ酸からなるポリペプチドの一方の末端(またはポリペプチド内)で5個のアミノ酸が欠失した変異体は、「参照」ポリペプチドに対して、99%(495/500同一残基×100)のパーセント配列同一性を有する。そのような変異体は、ポリペプチドに対し「少なくとも99%の配列同一性」を有する変異体に包含される。
【0112】
本明細書では、用語「機能分析」は、酵素の活性の指標を提供する分析を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、酵素が通常の能力で機能する能力について分析する分析システムを指す。
【0113】
反芻動物は、それらの微生物/酵素消化システムにより、粗飼料をタンパク質およびエネルギーに変換する独特の能力を有する。したがって、反芻動物は、地球の生態学および食物連鎖において重要な役割を果たす。
【0114】
反芻動物と非反芻動物との主な違いは、反芻動物は第一胃、第二胃、第三胃、第四胃からなる4区画の胃を有することである。第四胃は、単胃と全くの同等物である。(McDonald et al.,2011,Animal Nutrition(7th Edition),pages 156-191)。
【0115】
第一胃は最大の区画であり、150~200リットル(40~50ガロン)の容積がある。
【0116】
消化系には数十億の微生物がいる。それらは、ウシが飼料中の栄養素を消化して利用するのを助ける。効率的な飼料利用および高い乳量を達成するには、細菌に最適な条件を与えなければならない。飼料を消化するのは細菌である。実際、ウシに給餌することは、その第一胃内の微生物に給餌することを含む。
【0117】
醗酵プロセスは、第一胃および第二胃で起こる。ウシの第一胃は大きな醗酵槽のようなものである。200種超の異なる細菌および20種の原生動物は、ウシが線維状飼料原料および非タンパク質性窒素源を利用するのを助ける。
【0118】
醗酵とは、微生物が炭水化物を揮発性脂肪酸およびガスに変換するときのことである。
このプロセスは、ウシがセルロース線維をエネルギーに変換することを可能にする。
【0119】
醗酵中に第一胃内で生成されるガス(500~1500リットル/日)(150~400ガロン)のうち、20~40%はメタンと二酸化炭素からなる。醗酵ガスが生成することは、かなりのエネルギー損失があることを表す。イオノフォアなどの特定の醗酵改質剤は、これらのガスエネルギー損失を低減することによって、反芻動物のエネルギー効率を改善する。
【0120】
醗酵ガスはおくびによって排出される。おくびが不可能または無効な場合に、ウシは鼓脹に苦しむことがある。飼料が第一胃に入ると、第一胃の内容物の上部に浮かぶ第一胃マット上に層状になる。第一胃壁の律動的な収縮により、新たに食べられた物質はマットの後方域に蓄積する。第一胃マットは、15%の乾物含量を有する未消化物質からなる。細菌は飼料に付着し、醗酵性物質を徐々に消化する。ウシが反芻すると、前方層の食い戻しが戻される。唾液が口内に分泌され、歯の噛み砕く作用によって、微生物に曝される表面はより大きくなる。
【0121】
細菌が働き、反芻プロセスが続くにつれて、飼料粒子は小さくなる。それらは徐々に液体を吸収し、第一胃の底部に沈む。反芻胃の底部の第一胃内容物は、5%の乾物含有量を有する。
【0122】
第一胃は毎分1回収縮する。収縮は、第一胃内の液体および固体内容物を混合して醗酵を刺激し、停滞を避ける。収縮はまた、第一胃内容物のマットまたは液体部分のいずれかに捕捉されたガスを放出するのに役立つ。醗酵ガスはおくびによって排出される。このプロセスが支障をきたすと、鼓脹を生じることがある。適切なサイズおよび密度の供給粒子は、第一胃の収縮によって第二胃内の液体中へと分離される。その後の収縮は、これらの粒子および液体内容物の一部を反芻胃から第三胃に押し出す。
【0123】
第一胃と第二胃は基本的に1つの区画であるが、異なる機能を有する。醗酵作用の多くは第一胃で起こるが、第二胃は第三胃への通過の、または逆流の開始領域として働く。
理想的な第一胃のpH値は6~7である。第一胃微生物は、この範囲内で最も健康である。pH値が過度に変化すると、ある種の微生物が排除され、飼料の利用が低下する。セルロース(干し草、サイレージなど)を消化する微生物は、pH値が6.0未満では、増殖することができないか、セルロースを醗酵させることができない。第一胃のpHが6未満に低下する場合、第一胃はアシドーシスであると考えられる。反芻動物のアシドーシスは急性であって、pHの急激で激しい低下を伴うことがある。高産生群でより一般的なのは、第一胃の低pHの慢性的、間欠的期間を特徴とする、無症状アシドーシスである。
【0124】
上で言及したように、飼料中のデンプンの消化性は非常に変動しやすく、デンプンおよび飼料マトリックスの両方の物理的構造を含む多くの因子に依存する。
【0125】
反芻動物の食餌におけるデンプンの消化性、特に生デンプンの加水分解は、反芻動物用の飼料添加物としての、少なくとも1つのアルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)を使用することによって改善できることが見出されており、前記ヒドロラーゼは、(a)ペプシン存在下のpH6での酵素の活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記ヒドロラーゼは、第一胃、第二胃、第三胃および第四胃を含む、反芻動物の少なくとも2つの消化室で活性であり、かつ(c)このヒドロラーゼは、反芻動物の消化室に存在する消化酵素と協働して、グルコース収率を増加させ、デンプン消化率を増加させる。
【0126】
さらに別の態様では、反芻動物におけるデンプン消化率を増加させ、グルコース収率を増加させ、乾物の消化を増加させ、かつ醗酵中のガス生成を増加させるための、(i)反芻動物用の飼料添加物としての、少なくとも1つのGLCH酵素(ここで、前記酵素は(a)ペプシン存在下のpH6での酵素活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記酵素は第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)この酵素は膵臓アミラーゼと協働して、グルコース収率を増加させる)と、(ii)少なくとも1つのプロテアーゼとを含む酵素組成物を飼料に添加することを含む方法が記載されている。
【0127】
反芻動物の消化室に存在するいくつかの消化酵素であって、それらと共にヒドロラーゼが作用し、グルコース収率を増加させる酵としては、反芻動物の微生物デンプン分解酵素、ペプシンまたはパンクレアチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
ヒドロラーゼは、第一胃または第四胃で見出される条件に相当する条件下で、生デンプンを加水分解することができることが好ましい。
【0129】
ヒドロラーゼはアルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択することができるか、またはヒドロラーゼは、アルファ-アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群から選択される。
【0130】
本明細書に記載の方法では、市販されているか否かにかかわらず、任意の好適なアルファ-アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)を使用することができる。
【0131】
例示的なアルファ-アミラーゼには、野生型アルファ-アミラーゼ、その変異体もしくは断片、または例えば、ある微生物源からの触媒ドメインおよび別の微生物源からのデンプン結合ドメインに由来する遺伝子操作されたハイブリッドアルファ-アミラーゼが含まれるが、これらに限定されない。このようなハイブリッドを作製するのに有用であり得る、他のアルファ-アミラーゼの非限定的な例は、バチルス属(Bacillus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、リゾプス属(Rhizopus)、フザリウム属(Fusarium)、ペニシリウム属(Penicillium)、ニューロスポラ属(Neurospora)およびフミコーラ属(Humicola)に由来することができる。
【0132】
粒状デンプン加水分解活性(GSH)を有するアルファ-アミラーゼ、またはGSH活性を有するように組換え操作されたアルファ-アミラーゼも挙げることができる。そのようなGSH活性は、これらの酵素が、デンプン、特に糖蜜等を含有する任意の飼料中に存在し得る任意の粒状(生)デンプンを、より多く分解するので有利である。GSH活性を有するアルファ-アミラーゼとしては、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)(例えば、AkAA)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(例えば、AnAA)、A.クラバツス(A.clavatus)(AcAA)、A.テレウス(A.terreus)(AtAA)、およびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(例えば、TrAA)から得られるアルファ-アミラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
アルファ-アミラーゼ、AkAA、AcAA、およびAtAAは、2つの炭水化物結合ドメインを有し、その一方は炭水化物結合モジュール/ドメインファミリー20(CBM20またはCD20)に属し、他方は、時に二次結合部位(SBS)と呼ばれる。SBSおよびCBMは、1)酵素をその基質に向けて標的化すること、2)基質を活性部位溝に誘導すること、3)基質破壊、4)処理能を高めること、5)アロステリック調節、6)反応産物を通過させること、および/または7)親微生物の細胞壁に固着することによって機能するようである。
【0134】
これらの推定機能の多くは、CBMの非触媒結合に起因する機能と一致する。CBMとは対照的に、SBSは触媒部位に対して固定された位置を有し、それらを多かれ少なかれ特定の機能を取り込むのに適したものにする(Cuyvers S.,Dornez E.,Delcour J.A.,Courtin C.M.(2012),Occurrence and functional significance of secondary carbohydrate binding sites in glycoside hydrolases.Crit.Rev.Biotechnol.32,93-107)。
【0135】
GSH活性を有し得るいくつかの市販のアルファ-アミラーゼ、または炭水化物加水分解プロセスで使用される酵素は市販されており、例えば、Novo Nordisk A/Sから入手可能なTERMAMYL(登録商標)120-L、LCおよびSC SAN SUPER(登録商標)、SUPRA(登録商標)、ならびにLIQUEZYME(登録商標)SC、VereniumからのFUELZYME(登録商標)LF、そしてDanisco,US,Inc.,Genencor Divisionから入手可能なCLARASE(登録商標)L、SPEZYME(登録商標)FRED、SPEZYME(登録商標)XTRA、GC626、およびGZYME(登録商標)G997を参照されたい。
【0136】
他の実施形態では、アルファ-アミラーゼが、pH6.0でのその活性と比較して、pH3.0以下で20%の活性を有する、酸に安定なアルファ-アミラーゼであることが望ましい。
【0137】
アルファ-アミラーゼは、アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1);プルラナーゼ(EC 3.2.1.41);シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19);シクロマルトデキストリナーゼ(EC 3.2.1.54);トレハロース-6-リン酸ヒドロラーゼ(EC3.2.1.93);オリゴ-アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.10);マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133);ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135);アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);マルトテトラオース生成アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.60);イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68);グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70);マルトヘキサオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.98);マルトトリオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.116);分枝酵素(EC 2.4.1.18);トレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.16);4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25);マルトペンタオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.-);アミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4);スクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7);マルト-オリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ(EC 3.2.1.141);イソマルツロースシンターゼ(EC 5.4.99.11);マルト-オリゴシルトレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.15);アミロ-アルファ-1,6グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33);およびアルファ-1,4-グルカン:リン酸アルファ-マルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.16)からなる群から選択することができる。
【0138】
本明細書に記載の方法では、市販されているか否かにかかわらず、任意の好適なアルファ-アミラーゼ(E.C.3.2.1.3)を使用することができる。
【0139】
グルコアミラーゼ(同意語、アミログルコシダーゼ(GA))(E.C.3.2.1.3)の好適性は、マルトースに対する活性に依存する。したがって、好適なグルコアミラーゼは、2%(w/v)マルトース、pH6.0および40℃で分析したときに、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(TrGA)から得られたグルコアミラーゼの活性と比較して、タンパク質ベースで、マルトースに対して少なくとも20%の活性を有するべきである。TrGAは、デンプンからのグルコース生成能力のために、第一世代バイオエタノール処理において広く使用されている(2008年の米国特許、米国特許第7413879B2号明細書、Trichoderma reesei glucoaylase and homolog)。STARGEN(商標)002は、DuPontによって販売されている、エタノール製造用の粒状デンプン加水分解酵素製品である。
【0140】
消化管の血流によって吸収されるのはグルコースであり、それに対応する二量体のマルトースではないので、マルトースのグルコースへの加水分解速度は動物栄養にとって重要である。
【0141】
したがって、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ(AnGA)は、マルトースに対する活性が低いために、本明細書に記載の方法で使用するには不適当なグルコアミラーゼである。グルコアミラーゼは、結合のための多くのサブサイトを活性部位の近くに有していることが知られている。サブサイト理論は、グルコアミラーゼの基質親和性を分析するために開発された。この理論の仮定の1つは、基質が生産モードまたは非生産モードのいずれかで酵素に結合できるということである。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ(AnGA)の低い活性は、マルトースが非生産モードでAnGAに結合している可能性のためではないかと考えられる。(Swanson et al.,1977,Biotechnol.Bioeng.19:1715-1718)。
【0142】
例示的なグルコアミラーゼには、野生型グルコアミラーゼ、その変異体もしくは断片、または例えば、ある微生物源からの触媒ドメインおよび別の微生物源からのデンプン結合ドメインに由来することができる、遺伝子操作されたハイブリッドグルコアミラーゼが含まれるが、これらに限定されない。ハイブリッドグルコアミラーゼは、例えば、ある生物からのGA(例えば、タラロマイセス属(Talaromyces)GA)由来の触媒ドメイン、および異なる生物(例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)GA)由来のデンプン結合ドメイン(SBD)を有するグルコアミラーゼを含む。
【0143】
そのようなハイブリッドグルコアミラーゼは、ある生物からのGA(例えば、タラロマイセス属(Talaromyces)GA)由来の触媒ドメイン、および異なる生物(例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)GA)由来のデンプン結合ドメイン(SBD)を並べたペプチドを使用して作製することもできる。
【0144】
そのようなハイブリッドグルコアミラーゼの例としてはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)G1およびG2グルコアミラーゼ(例えば、Boel et al.,(1984)EMBO J.3:1097-1102;国際公開第92/00381号パンフレット、同第00/04136パンフレットおよび米国特許第6,352,851号明細書を参照されたい);アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(例えば、国際公開第84/02921号パンフレットを参照されたい);アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼ(例えば、Hata et al.,(1991)Agric.Biol.Chem.55:941-949を参照されたい)およびアスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus shirousami)(例えば、Chen et al.,(1996)Prot.Eng.9:499-505;Chen et al.(1995)Prot.Eng.8:575-582;およびChen et al.,(1994)Biochem J.302:275-281を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
いくつかのグルコアミラーゼは、細菌、植物、および/または真菌によって内因的に発現される。例えば、いくつかのグルコアミラーゼは、糸状菌のいくつかの株によって産生される。
【0146】
グルコアミラーゼは粒状デンプン加水分解活性(GSH)を有するか、またはGSH活性を有するように組換え操作されていることが好ましい。そのようなGSH活性は、これらの酵素が、デンプン、特に糖蜜等を含有する任意の飼料中に存在し得る任意の粒状(生)デンプンを、より多く分解するので有利である。
【0147】
本明細書に開示の方法で使用できるグルコアミラーゼは、タラロマイセス属(Talaromyces)株((例えば、T.エメルソニイ(T.emersonii)、T.レイセッタヌス(T.leycettanus)、T.デュポンティ(T.duponti)およびT.テルモフィルス(T.thermophilus)グルコアミラーゼ(例えば、国際公開第99/28488号パンフレット;米国再発行特許第32,153号明細書;米国特許第4,587,215号明細書を参照されたい));トリコデルマ属(Trichoderma)の株(例えば、T.リーゼイ(T.reesei))、および、配列番号4に対し少なくとも約80%、約85%、約90%および約95%の配列同一性を有し、米国特許出願公開第2006-0094080号明細書に開示されているグルコアミラーゼ;リゾプス属(Rhizopus)の株(例えば、(R.ニベウス(R.niveus)およびR.オリザエ(R.oryzae));ムコール属(Mucor)の株およびフミコーラ属(Humicola)の株、((例えば、H.グリセア(H.grisea)(例えば、Boel et al.,(1984)EMBO J.3:1097-1102;国際公開第92/00381号パンフレット;同第00/04136号パンフレット;Chen et al.,(1996)Prot.Eng.9:499-505;Taylor et al.,(1978)Carbohydrate Res.61:301-308;米国特許第4,514,496号明細書;同第4,092,434号明細書;同第4,618,579号明細書;Jensen et al.,(1988)Can.J.Microbiol.34:218-223および国際公開第2005/052148号パンフレットの配列番号3を参照されたい))から得られるものを含む。いくつかの実施形態では、グルコアミラーゼは、国際公開第05/052148号パンフレットに記載の配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%および約99%の配列同一性を有する。本発明で有用な他のグルコアミラーゼとしては、アテリア・ロルフシイ(Athelia rolfsii)およびその変異体(例えば、WO04/111218参照)およびペニシリウム属(Penicillium)の複数の種(例えば、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum))から得られるものが挙げられる。
【0148】
商業的に入手可能なグルコアミラーゼには、Spirizyme Ultra、Spirizyme(登録商標)Achieve、Spirizyme(登録商標)Fuel、Spirizyme(登録商標)EXCEL、DISTILLASE(登録商標)、OPTIDEX(登録商標)L-400およびG ZYME(登録商標)G990 4X、GC480、G-ZYME(登録商標)480、FERMGEN(登録商標)1-400(Danisco US,Inc,Genencor Division)、CU.CONC(登録商標)(新日本化学工業株式会社、日本)、GLUCZYME(登録商標)(天野エンザイム株式会社、日本(例えば、Takahashi et al.,(1985)J.Biochem.98:663-671を参照されたい))が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用される二次酵素は、リゾプス属(Rhizopus)の一種によって産生されるグルコアミラーゼ(例えば、E.C.3.2.1.3)の3つの形態、すなわち、「Gluc1」(MW 74,000)、「Gluc2」(MW 58,600)および「Gluc3」(MW 61,400)を含む。
【0149】
任意の好適なアルファ-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.20)を、本明細書中に記載されているように使用することができる。
【0150】
上記のように、アルファ-グルコシダーゼは、その加水分解モードで、マルトース、イソマルトースおよびマルトサッカリドからグルコースを放出する。それはまた、グルコース単位を、グルコース、マルトース、イソマルトースおよびマルトサッカリドを含むアクセプター分子に、または合成モードにある任意の他の好適な分子に、特により高い基質濃度で、かつ高い生成物濃度で転移することができる。消化管では、生成した生成物グルコースが吸収により除去されるので、合成モードまたは転移反応は最小である。
【0151】
プロテアーゼ(ペプチダーゼまたはプロテイナーゼとも呼ばれる)は、ペプチド結合を切断することができる酵素である。プロテアーゼは複数回進化しており、異なるクラスのプロテアーゼが、完全に異なる触媒機構によって同一の反応を実施することができる。プロテアーゼは、動物、植物、細菌、古細菌およびウイルスに見出すことができる。
【0152】
タンパク質分解は、現在は6つの幅広い群、すなわちアスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸性プロテアーゼおよびメタロプロテアーゼに分類されている酵素により達成できる。
【0153】
好ましくは、プロテアーゼは酸性プロテアーゼであり、より好ましくは酸性真菌プロテアーゼである。
【0154】
本開示では、任意の酸性または中性プロテアーゼを使用することができる。例えば、酸性真菌プロテアーゼには、A.ニガー(A.niger)、A.アワモリ(A.awamori)、A.オリザエ(A.oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、およびM.ミエヘイ(M.miehei)などの、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ムコール属(Mucor)、およびリゾプス属(Rhizopus)から得られるプロテアーゼが含まれる。AFPは、細菌、植物および真菌源の異種または内因性タンパク質発現に由来することができる。AFPはトリコデルマ属(Trichoderma)株から分泌されることが好ましい。
【0155】
例示的な酸性プロテアーゼには、野生型酸性プロテアーゼ、その変異体もしくは断片、または例えば、ある微生物源からの触媒ドメインおよび別の微生物源からのデンプン結合ドメインに由来する、遺伝子操作されたハイブリッド酸性アミラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
別の態様では、プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ(同意語、メタロペプチダーゼ)、より好ましくは細菌性メタロプロテアーゼとすることができる。
【0157】
別の態様では、本明細書に記載の、任意のグリコシドヒドロラーゼ活性を有する任意のポリペプチド(任意の融合タンパク質などを含む)をコードするヌクレオチド配列を含む、任意の単離された、組換えの、実質的に純粋な、合成的に得られた、または天然に存在しない核酸を、上で検討してきた。本明細書に記載の、任意のグリコシドヒドロラーゼをコードする、ポリヌクレオチドを含むベクターもまた興味深い。当業者には、ベクターが任意の好適な発現ベクターであってよいこと、およびベクターの選択は、それが挿入される細胞のタイプに依存して変動し得ることは明白であろう。好適なベクターには、pGAPT-PG、pRAX1、pGAMD、pGPT-pyrG1、pC194、pJH101、pE194およびpHP13(Harwood and Cutting[eds.],Chapter 3,Molecular Biological Methods for Bacillus,John Wiley&Sons[1990]を参照されたい。Perego,Integrational Vectors for Genetic Manipulations in Bacillus subtilis,in Sonenshein et al.,[eds.]Bacillus subtilis and Other Gram-Positive Bacteria:Biochemistry,Physiology and Molecular Genetics,American Society for Microbiology,Washington,D.C.[1993],pp.615-624もまた参照されたい。
)およびp2JM103BBIが含まれる。
【0158】
発現ベクターは、当該技術分野で知られた、好適な産生宿主の形質転換に有用な、任意の数のベクターまたはカセットの一つとすることができる。典型的には、ベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指令する配列、選択可能なマーカーおよび自律複製または染色体への組込みを可能にする配列を含むであろう。好適なベクターには、一般に、転写開始制御配列を有する遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNA断片の3’領域が含まれる。どちらの制御領域も、形質転換された産生宿主細胞の遺伝子および/または産生宿主にネイティブな遺伝子に相同の遺伝子に由来することができる(そのような制御領域がそのように由来する必要はないのだが)。
【0159】
転写終結を制御するDNA断片もまた、好ましい産生宿主細胞にネイティブな各種遺伝子に由来してよい。ある実施形態では、終結制御領域の包含は任意選択的である。ある実施形態では、発現ベクターは、好ましい宿主細胞に由来する終結制御領域を含む。
【0160】
発現ベクターは、産生宿主、特に微生物産生宿主の細胞中に含めることができる。産生宿主細胞は、真菌ファミリーまたは細菌ファミリー内で見出され、かつ広範囲の温度、pH値および溶媒耐性にわたって増殖する微生物宿主とすることができる。例えば、任意の細菌、藻類、例えば糸状菌などの真菌および酵母は、発現ベクターを好適に受け入れられるものと考えられる。
【0161】
産生宿主細胞内への発現ベクターの包含は、細胞内、細胞外または細胞の内側および外側の両方の組み合わせで存在できるよう、目的のタンパク質を発現させるのに使用し得る。細胞外発現は、細胞内発現により生成したタンパク質の回収方法よりも、醗酵生成物からの所望のタンパク質の回収を容易にする。
【0162】
組換え発現ベクターは、組換えDNA法を受けるのに好都合であり、ヌクレオチド配列の発現を導くことができる任意のベクター、例えばプラスミドもしくはウイルスであってよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される産生宿主とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、直鎖または閉じた環状のプラスミドであってよい。ベクターは、自律複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製からは独立している、例えば、プラスミド、染色体外要素、微小染色体または人工染色体であるベクターであってよい。ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含有し得る。あるいは、ベクターは、産生宿主内に導入されると、ゲノム内に取り込まれ、それを既に組み込んでいる染色体と一緒に複製されるベクターであってよい。このようなベクターの、いくつかの非限定的な例は、Fungal Genetics Stock Center Catalogue of Strains(FGSC,<www.fgsc.net>)により提供されており、好適な発現ベクターおよび/または組込みベクターのさらなる例は、Sambrooket al.,(1989)supra、Ausubel(1987)supra、van den Hondelet al.(1991)in Bennett and Lasure(Eds.)MORE GENE MANIPULATIONS IN FUNGI,Academic Press.396-428および米国特許第5,874,276号明細書により提供されている。
特に有用なベクターには、pTREX、pFB6、pBR322、PUCI8、pUCI00およびpENTR/Dが含まれる。細菌の細胞で使用する好適なプラスミドとしては、E.コリ(E.coli)で複製可能なpBR322およびpUC19、ならびに例えばバチルス属(Bacillus)で複製可能なpE194が挙げられる。
【0163】
産生宿主細胞での生産に関して簡潔には、Sambrooket al.,(1989)supra、Ausubel(1987)supra、van den Hondelet al.(1991)in Bennett and Lasure(Eds.)MORE GENE MANIPULATIONS IN FUNGI、Academic Press(1991)pp.70-76 and 396-428;Nunberg et al(1984)Mol.Cell BioI.4:2306-2315;Boel et al.,(1984)30 EMBO J.3:1581-1585;Finkelstein in BIOTECHNOLOGY OF FILAMENTOUS FUNGI,Finkelstein et al.Eds.Butterworth-Heinemann,Boston、MA(1992),Chap.6;Kinghornet al.(1992)APPLIED MOLECULAR GENETICS OF FILAMENTOUS FUNGI,Blackie Academic and Professional,Chapman and Hall,London;Kelleyet al.,(1985)EMBO J.4:475-479;Penttilaet al.,(1987)Gene61:155-164;および米国特許第5,874,276号明細書を参照することができる。好適なベクターのリストは、Fungal Genetics Stock Center Catalogue of Strains(FGSC,www at fgsc.net)の中に見出すことができる。好適なベクターには、例えば、Invitrogen Life Technologies and Promegaから入手できるものが含まれる。真菌宿主細胞で使用するための、好適な特定のベクターには、pFB6、pBR322、pUC 18、pUC100、pDON(商標)201、pDONR(商標)221、pENTR(商標)、pGEM(登録商標)3ZおよびpGEM(登録商標)4Zが含まれる。
【0164】
ベクターシステムは、単一のベクターもしくはプラスミド、または宿主細胞のゲノムもしくはトランスポゾンに導入されるべき全DNAを一緒に含有している、2つ以上のベクターもしくはプラスミドであってよい。
【0165】
ベクターは、形質転換細胞の容易な選択を可能にするために、1つ以上の選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーは遺伝子であり、その産物は、バイオサイドまたはウイルス耐性などを提供する。選択マーカーの例としては、抗菌剤耐性を付与するマーカーが挙げられる。本発明では、amdS、argBおよびpyr4として当該技術分野で知られているマーカーを含む、栄養マーカーもまた利用される。トリコデルマ属(Trichoderma)の形質転換に有用なマーカーは、当該技術分野において知られている(例えば、Finkelstein,chapter 6,in Biotechnology of Filamentous Fungi,Finkelstein et al.,EDS Butterworth-Heinemann,Boston MA(1992)およびKinghorn et al.,(1992)Applied Molecular Genetics of Filamentous Fungi,Blackie Academic and Professional,Chapman and Hall,Londonを参照されたい)。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、レプリコン、さらに組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能にする、抗生物質耐性をコードする遺伝子、および異種配列の挿入を可能にする、プラスミドの非必須領域内の固有の制限部位も含むであろう。選択された特定の抗生物質耐性遺伝子は重要ではない;当該技術分野で知られている多数の耐性遺伝子はいずれも好適である。原核生物の配列は、それらが好ましくはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)内でのDNAの複製もしくは組み込みを干渉しないように選択される。
【0166】
ベクターは、細胞のゲノムから独立して、産生宿主ゲノム内へのベクターの安定な組み込み、または産生宿主内でのベクターの自律的複製を許容する要素も含み得る。宿主細胞ゲノム内への組み込みのために、ベクターは、アスパラギン酸プロテアーゼをコードするヌクレオチド配列、または相同もしくは非相同組換えによるゲノム内へベクターを安定に組み込むための任意の他の要素に依存し得る。
【0167】
自律的複製のために、ベクターは、ベクターが産生宿主内で自律的に複製することを可能にする、複製起源をさらに含むことができる。
【0168】
グリコシドヒドロラーゼをコードするヌクレオチド配列の複数のコピーを、その産生を増加させるために、産生宿主に挿入し得る。ヌクレオチド配列のコピー数の増加は、産生宿主のゲノム内へその配列の少なくとも1つの追加のコピーを組み込むことによって、または増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることによって得ることができ、そうすることで、適切な選択用薬剤の存在下で産生宿主細胞を培養することにより、ヌクレオチド配列の追加のコピーを選択することができる。
【0169】
任意のグリコシドヒドロラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、ベクターが染色体構成要素として、または自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、産生宿主内に導入される。ヌクレオチド配列は産生宿主内で安定に維持され易いので、組み込みは、有利であると一般に考えられている。産生宿主染色体内へのベクターの組み込みは、上記で考察したように、相同もしくは非相同組換えにより引き起こし得る。
【0170】
例示的なベクターには、pGXT(公開PCT出願、国際公開第2015/017256号パンフレットに記載されたpTTTpyr2ベクターと同一)が含まれる。さらにまた、バクテリオファージλおよびM13、ならびにpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、およびMBP、GSTおよびLacZなどの融合発現システムを含む標準的な細菌性発現ベクターを挙げることができる。単離に便利な方法を提供するために、組換えタンパク質にエピトープタグ、例えば、c-mycを添加することもできる。
【0171】
好適な発現ベクターおよび/または組込みベクターの例は、Sambrook et al.,(1989)supra,Bennett and Lasure(Eds.)More Gene Manipulations in Fungi,(1991)Academic Press pp.70-76 and pp.396-428およびその引用文献;米国特許第5,874,276号明細書およびFungal Genetic Stock Center Catalogue of Strains,(FGSC,www.fgsc.net.)で提供される。有用なベクターは、PromegaおよびInvitrogenから入手し得る。いくつかの特定の、有用なベクターには、pBR322、pUC18、pUC100、pDON(商標)201、pENTR(商標)、pGEN(登録商標)3ZおよびpGEN(登録商標)4Zが含まれる。しかし、同等に機能し、当該技術分野で知られている、または知られるようになる他の形態の発現ベクターもまた使用できる。したがって、本明細書で開示したDNA配列を発現させる際には、多種多様な宿主/発現ベクターの組み合わせを使用できる。有用な発現ベクターは、例えば、SV40の既知の各種誘導体、公知の細菌性プラスミドなどの、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメント、例えばcol E1、pCR1、pBR322、pMb9、pUC19およびそれらの誘導体を含むE.コリ(E.coli)由来のプラスミド、広い宿主範囲のプラスミド、例えば、RP4、ファージDNA、例えばファージラムダの数多くの誘導体、例えばNM989および他のDNAファージ、例えばM13および糸状一本鎖DNAファージ、2.muプラスミドなどの酵母プラスミドまたはそれらの誘導体からなり得る。
【0172】
産生宿主は、細菌、真菌および藻類などの任意の好適な微生物を選択することができる。典型的には、その選択は、目的のグリコシドヒドロラーゼをコードする遺伝子に依存するであろう。
【0173】
好適な産生宿主の例には、細菌、真菌、植物細胞などが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、産生宿主はE.コリ(E.coli)、ストレプトミケス属(Streptomyces)、ハンゼニュラ属(Hansenula)、トリコデルマ属(Trichoderma)(特にT.リーゼイ(T.reesei))、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、アスペルギルス属(Aspergillus)(特にA.ニガー(A.niger))、植物細胞および/またはバチルス属(Bacillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、またはアスペルギルス属(Aspergillus)の胞子から選択され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示した方法および組成物に、組換えグリコシドヒドロラーゼ酵素を使用し得る。好ましい態様では、本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを含む食料または飼料添加物が提供される。
【0175】
所望のグリコシドヒドロラーゼを大量に発現する、細菌および糸状菌(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)またはトリコデルマ属(Trichoderma))細胞系列を生成するには、多数の標準の遺伝子導入法を使用することができる。トリコデルマ属(Trichoderma)のセルラーゼ産生株にDNAコンストラクトを導入する公開された方法のいくつかには、Lorito,Hayes,DiPietro and Harman,(1993)Curr.Genet.24:349-356;Goldman,VanMontagu and Herrera-Estrella,(1990)Curr.Genet.17:169-174;およびPenttila,Nevalainen,Ratto,Salminen and Knowles,(1987)Gene 6:155-164が含まれ、また、米国特許第6,022,725号明細書、同第6,268,328号明細書およびMolecular Industrial Mycology,Eds,Leong and Berka,Marcel Dekker Inc.,NY(1992)pp 129-148のNevalainen et al.,The Molecular Biology ofTrichodermaand its Application to the Expression of Both Homologous and Heterologous Genes」も参照されたく;アスペルギルス属(Aspergillus)については、Yelton,Hamer and Timberlake,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474が含まれ、フザリウム属(Fusarium)については、Bajar,Podila and Kolattukudy,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8202-8212が含まれ;ストレプトミケス属(Streptomyces)についてはHopwood et al.,1985,Genetic Manipulation ofStreptomyces:Laboratory Manual,The John Innes Foundation,Norwich,UKおよびFernandez-Abalos et al.,Microbiol 149:1623-1632(2003)が含まれ、バチルス属(Bacillus)についてはBrigidi,DeRossi,Bertarini,Riccardi and Matteuzzi,(1990)FEMS Microbiol.Lett.55:135-138)が含まれる。
【0176】
しかし、宿主細胞内へ外来ヌクレオチド配列を導入する手順としてよく知られたものであれば、いかなる手順も使用することができる。これらには、リン酸カルシウム遺伝子導入法、ポリブレン法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、バイオリスティック法、リポソーム法、マイクロインジェクション法、プラズマベクター法、ウイルスベクター法、およびクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは宿主細胞内への他の外来遺伝子物質を導入するための他のよく知られた方法の使用が含まれる(例えば、上記のSambrook et al.を参照されたい)。米国特許第6,255,115号明細書に記載のアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介遺伝子導入法も有用である。必要なのは、使用される特定の遺伝子組換え手順が、その遺伝子を発現することのできる宿主細胞内へ、少なくとも1つの遺伝子を成功裡に導入できるものであるということだけである。
【0177】
使用した宿主細胞に応じて、転写後および/または翻訳後修飾がなされ得る。転写後および/または翻訳後修飾の1つの非限定的な例は、ポリペプチドの「クリッピング」または「切断」である。例えば、これは、酵素活性を有する成熟ペプチドへと、さらなる翻訳後プロセシングに供されるプロペプチドの場合のように、グリコシドヒドロラーゼに不活性または実質的不に不活性な状態から活性状態への移行をもたらし得る。別の例では、このクリッピングは、本明細書に記載の成熟グリコシドヒドロラーゼの生成をもたらし、さらにN末端またはC末端アミノ酸を除去して、酵素活性を保持する切断型の生成をもたらし得る。
【0178】
転写後または翻訳後修飾の他の例としては、ミリストイル化、グリコシル化、切断、脂質化およびチロシン、セリンまたはトレオニンのリン酸化が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、タンパク質が受け得る転写後または翻訳後修飾のタイプは、タンパク質がその中で発現する宿主生物に左右され得ることを理解するであろう。
【0179】
アスペルギルス属(Aspergillus)およびトリコデルマ属(Trichoderma)の形質転換方法は、例えば、Yelton et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474;Berka et al.,(1991)in Applications of Enzyme Biotechnology,Eds.Kelly and Baldwin,Plenum Press(NY);Cao et al.,(2000)Sci.9:991-1001;Campbellet al.,(1989)Curro Genet.16:53-56;Pentilla et al.,(1987)Gene61:155-164);de Groot et al.,(1998)Nat.Biotechnol.16:839-842;米国特許第6,022,725号明細書;同第6,268,328号明細書および欧州特許第238 023号明細書に記載がある。トリコデルマ属(Trichoderma)での異種タンパク質の発現は、米国特許第6,022,725号明細書;同第6,268,328号明細書;Harkki et ale(1991);Enzyme Microb.Technol.13:227-233;Harkkiet al.,(1989)Bio Technol.7:596-603;欧州特許第244,234号明細書;同第215,594;およびNevalainenet al.,「The Molecular Biology of Trichoderma and its Application to the Expression of Both Homologous and Heterologous Genes」,in MOLECULAR INDUSTRIAL MYCOLOGY,Eds.Leong and Berka,Marcel Dekker Inc.,NY(1992)pp.129-148)に記載がある。フザリウム属(Fusarium)株の形質転換については、国際公開第96100787号パンフレットおよびBajar et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8202-28212を参照されたい。
【0180】
発現ベクターが細胞内に導入された後、遺伝子導入細胞または形質転換細胞は、プロモーター配列の制御下、遺伝子の発現に好都合な条件下で培養される。一部の例では、プロモーター配列は、cbh1プロモーターである。大バッチの形質転換細胞は、Ilmen et al 1997(「Regulation of cellulase gene expression in the filamentous fungus Trichoderma reesei」Appl.Envir.Microbiol.63:1298-1306)の記載のように培養できる。
【0181】
宿主トリコデルマ属(Trichoderma sp.)の一種の菌株内へのDNAの取込みは、カルシウムイオン濃度に左右される。一般に、約10~50mMのCaClが取込み液中で使用される。追加の好適な化合物として、緩衝系、例えば、TE緩衝液(10mMのTris、pH7.4;1mMのEDTA)または10mMのMOPS、pH6.0およびポリエチレングリコールが挙げられる。ポリエチレングリコールは、細胞膜を融合させると考えられており、したがって、培地の内容物がトリコデルマ属(Trichoderma sp.)の一種の菌株細胞質内に送達されることを許容すると考えられる。この融合は、宿主染色体内に組み込まれたプラスミドDNAの複数のコピーをそのまま残すことが多い。
【0182】
通常、トリコデルマ属(Trichoderma)の一種の形質転換は、典型的には10~10/mL、特に2×10/mLの密度で透過性処理を受けているプロトプラストまたは細胞を使用する。体積100μLのこれらのプロトプラストまたは細胞を、適切な溶液(例えば、
1.2Mのソルビトールおよび50mMのCaCl)中で、所望のDNAと混合し得る。一般には、高濃度のPEGが取込み溶液に加えられる。プロトプラスト懸濁液には0.1~1体積の25%のPEG4000を加えることができる;しかし、プロトプラスト懸濁液には約0.25体積を加えることが有用である。例えば、ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウムなどの添加物もまた、形質転換を促進するために取込み溶液に加えられてよい。他の真菌宿主細胞に対しても類似の手順を利用できる。例えば、米国特許第6,022,725号明細書を参照されたい。
【0183】
細胞を培養するのに使用する培地は、宿主細胞を増殖させ、本明細書に記載した任意のグリコシドヒドロラーゼを発現させるのに適した任意の従来の培地であり得る。好適な培地および培地成分は、商業的供給業者から入手可能であるか、公開されたレシピ(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログに記載されたような)にしたがって調製し得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、組換え微生物の使用済み全醗酵ブロスの調製は、目的の酵素の発現をもたらす、当該技術分野で知られた任意の培養法を使用して達成することができる。したがって、醗酵は、好適な培地中で、かつ酵素の発現または単離が可能な条件下における、振盪フラスコ培養、実験室用または産業用醗酵槽内での、小規模または大規模醗酵(連続、バッチ、流加バッチもしくは固体醗酵を含む)を含むと理解することができる。本明細書では、用語「使用済み全醗酵ブロス」は、培養培地、細胞外タンパク質(例えば、酵素)および細胞バイオマスを含む醗酵物質の未分画内容物であると定義される。用語「使用済み全醗酵ブロス」は、さらに当該技術分野でよく知られた方法を使用して溶解または透過化されている細胞バイオマスも含むと理解される。
【0185】
宿主細胞は、本明細書に記載の任意のグリコシドヒドロラーゼを発現させる、好適な条件下で培養し得る。酵素の発現は、酵素が連続的に生成されるように構成的であってよく、または発現を開始するためには刺激を必要とする誘導性であってよい。誘導性発現の場合には、タンパク質生成は、必要とされる場合は、例えば、培養培地への誘導物質、例えば、デキサメタゾンまたはIPTGまたはソホロースの添加によって開始することができる。
【0186】
ポリペプチドはまた、例えばTNT(商標)(Promega)ウサギ網状赤血球系などのインビトロの無細胞系内で組換え技術により産生することができる。発現宿主はまた、好気性条件下で、その宿主に適切な培地中で培養することができる。宿主のニーズおよび所望のアルファ-グルコシダーゼの生成に応じて、例えば、約25℃~約75℃(例えば、30℃~45℃)の、その宿主にとって適切な温度で産生が行われている状況で、振盪または撹拌と通気の組み合わせを提供することができる。培養は、約12~約100時間以上(および、例えば24~72時間などの、それらの間の任意の時間値)にわたって行うことができる。典型的には、培養ブロスはここでも、本明細書に記載のグルコシドヒドロラーゼのような、目的の酵素の生成に対して、宿主が必要とする培養条件に応じて、約4.0~約8.0のpHにある。その後は、産生宿主および形質転換細胞を、従来型の栄養培地中で培養することができる。形質転換宿主細胞のための培養培地は、プロモーターを活性化するため、および形質転換細胞を選択するために適宜修飾されてよい。例えば温度、pHなどの特定の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞のために使用される条件であってよく、当業者には明らかであろう。さらに、好ましい培養条件は、Sambrook、(1982)supra;Kieser,T,MJ.Bibb,MJ.Buttner,KF Chater,およびD.A.Hopwood(2000)Practical Streptomyces Genetics.John Innes Foundation,Norwich UK;Harwood,et al.,(1990)Molecular Biological Methods forBacillus,John Wileyなどの科学文献および/またはAmerican Type Culture Collection(ATCC;www.atcc.org)からの科学文献に見出し得る。
【0187】
当該技術分野においてよく知られている醗酵方法はいずれも、本明細書に記載の形質転換または誘導真菌株を醗酵させるために好適に使用することができる。
【0188】
古典的なバッチ醗酵は、培地の組成が醗酵の開始時に設定され、醗酵中にその組成が変更されない閉鎖系である。醗酵の開始時に、培地には所望の生物が植菌される。言い換えると、全醗酵工程は、全体を通して醗酵系にいかなる成分の追加もせずに行われる。
【0189】
あるいは、バッチ醗酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」として適格である。さらに、醗酵工程を通して例えばpHや酸素濃度などの因子を制御するための頻回な試みが実施される。典型的には、バッチ系の代謝産物およびバイオマス組成は、醗酵が停止する時点まで常に変化する。バッチ培養物内では、細胞は静的誘導期を経由して高増殖対数期へ進行し、最終的には増殖率が減少もしくは停止する静止期に進む。未処理のまま放置すると、静止期にある細胞は最終的には死滅することになる。一般に、対数期にある細胞は、生成物の大量生産に貢献する細胞である。標準バッチ系に対する好適な変形形態は、「流加バッチ醗酵」系である。典型的なバッチ系のこの変形形態では、醗酵の進行につれて基質が徐々に加えられる。流加バッチ系は、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を抑制することが知られているとき、および/または醗酵培地中に限定量の基質を有することが所望される場合に有用である。フェドバッチ系内で実際の基質濃度を測定することは困難であるので、このためpH、溶存酸素およびCO2などの排気ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチおよび流加バッチ醗酵は、当該技術分野においてよく知られている。
【0190】
連続醗酵は、また別の既知の醗酵方法である。連続醗酵は、定義された醗酵培地がバイオリアクターに連続的に加えられ、プロセシングのために等量の馴化培地が同時に除去される開放系である。連続醗酵では、一般に、培養物は一定密度に維持され、細胞は主として対数期増殖が維持される。連続醗酵は、細胞増殖および/または生成物濃度に影響を及ぼす1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、炭素源もしくは窒素源などの制限栄養因子を一定比率に維持することができ、他の全てのパラメーターの調節を可能にする。他の系では、増殖に影響を及ぼす多数の因子は連続的に変化することができるが、培地濁度によって測定される細胞濃度は一定に維持される。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとする。したがって、流出培地に起因する細胞の減少は、醗酵中の細胞増殖率に対してバランスが取られなければならない。連続醗酵工程のための栄養分および増殖因子を調節する方法ならびに生成物生成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の分野でよく知られている。
【0191】
分離技術および濃縮手法は当該技術分野において知られており、従来方法を使用して本発明のアルファ-グルコシダーゼポリペプチドを含む濃縮液またはブロスを調製することができる。
【0192】
醗酵後には醗酵ブロスが得られ、酵素含有溶液を得るために、従来の分離手法により微生物細胞および残留醗酵原料を含む各種懸濁固体を除去する。ろ過、遠心分離、精密ろ過、回転真空ドラムろ過、限外ろ過、遠心分離後に行われる限外ろ過、抽出またはクロマトグラフィーなどが一般に使用される。
【0193】
時には、回収を最適化するために、目的のポリペプチドを含む溶液またはブロスを濃縮することが望ましい場合がある。未濃縮溶液またはブロスの使用は、典型的には、濃縮または精製酵素沈降物を回収するためのインキュベーション時間を増加させるであろう。
【0194】
酵素含有溶液は、所望の酵素濃度が得られるまで、従来の濃縮手法を使用して濃縮することができる。酵素含有溶液の濃縮は、本明細書で考察した手法のいずれかによって達成し得る。濃縮および精製方法の例としては、回転真空ろ過および/または限外ろ過が挙げられるがそれらに限定されない。
【0195】
本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼは、本明細書に記載したように、当該技術分野で知られている各種試験を使用して活性について試験することができる。例えば、活性は、酵素を糖タンパク質またはオリゴ糖および必要に応じて水と混合することによって試験できる。活性は、反応生成物の分析によって測定することができ、この反応生成物は、例えば、薄層クロマトグラフィーによって、または単糖およびオリゴ糖分析用のカラムを使用するHPLCによって、グルコース定量化のためのグルコースオキシダーゼ-ペルオキシダーゼおよび一般的な還元糖分析用の3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)試薬を使用した結合酵素分析によって、分離および可視化することができる反応生成物である(以下の実施例を参照されたい)。
【0196】
さらに、本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼは、カプセル化されているか否かにかかわらず、粒状であり得る。
【0197】
本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼは、1つ以上の追加の酵素と組み合わせて使用し得ると考えられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の酵素は、エステラーゼ、ホルムアミダーゼ、-ガラクトシダーゼ、例えば、アルファまたはベータ-ガラクトシダーゼ、エキソグルカナーゼ、グルカンリアーゼ、エンドグルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコシダーゼ、例えば、アルファまたはベータ-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペプチダーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ(D-ヘキソース:(3/4オキシドレダクターゼ、EC 1.1.3.5)、酸性ホスファターゼおよび/もしくはその他、またはそれらの組み合わせを含む。これらには、例えば、組成物または飼料の粘度を調節する酵素が含まれる。
【0198】
本明細書で論じる、任意のGLCH酵素、好ましくはアルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼは、直接供給される微生物と組み合わせて使用し得る。DFMのカテゴリーには、バチルス属(Bacillus)、乳酸菌および酵母が含まれる。バチルス属(Bacillus)は、胞子を形成する独特のグラム陽性桿菌である。これらの胞子は極めて安定性であり、熱、水分およびpH範囲などの環境条件に耐えることができる。これらの胞子は、動物に摂取されると活性な栄養細胞に成長し、食事およびペレット飼料に使用することができる。乳酸菌は、病原体に対して拮抗性である乳酸を生成するグラム陽性球菌である。乳酸菌は、ある程度熱に敏感であると思われるので、それらはペレット化飼料では使用されない。乳酸菌の種類には、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)およびストレプトコッカス属(Streptococcus)が含まれる。酵母は細菌ではない。これらの微生物は、植物群の真菌に属する。
【0199】
本明細書で論じる、任意のGLCH酵素、好ましくはアルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼは、アシドーシスを減じるため、または第一胃の原生動物を減じるために、好適な獣医学的薬剤と組み合わせて使用し得る。
【0200】
このような獣医学的薬物は、モネンシンおよびその誘導体などのイオノフォアを含み得る。
【0201】
毒素結合剤は飼料中の毒素に結合し、動物をそれらの悪影響から保護するように設計される。したがって、本明細書で論じた任意のGLCH酵素はまた、毒素結合剤または毒素吸着剤と組み合わせて使用してもよい。毒素結合剤の例は、異なる水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩(HSCAS)、ベントナイト、ゼオライト、クレー、酵母細胞壁および毒素分解酵素を含むが、これらに限定されないマイコトキシン結合剤である。
【0202】
別の態様では、本明細書中で論じた任意のGLCH酵素はまた、ハーブ、エセンシャルオイル、および凝固防止剤と組み合わせて使用し得る。
【0203】
エセンシャルオイルは、植物由来の揮発性芳香化合物を含有する濃縮された疎水性液体である。エセンシャルオイルは揮発性油、エーテル性油、エーテロレア(aetherolea)としても知られ、または単に、それらが抽出された植物の油(例えば、クローブの油)としても知られる。油は植物の香り、すなわち油が得られた植物の特徴的な香りの「エッセンス」を含むという意味で「エセンシャル」である。本明細書で使用する、エセンシャルという用語は、必須アミノ酸または必須脂肪酸という用語(所与の生体によって栄養的に必要とされるのでそう呼ばれている)のように必須を意味するものではない。エセンシャルオイルは、一般に、蒸留によって、しばしば水蒸気の使用によって抽出される。他のプロセスとしては、圧搾、溶媒抽出、アブソルートオイル抽出、樹脂タッピング、およびコールドプレスが挙げられる。それらは、香料、化粧品、石けんおよび他の製品中で使用され、食料および飲料の風味付け、ならびに香料および家庭用クリーニング製品の香り付けに使用される。
【0204】
動物飼料は、例えばトウモロコシ、コムギ、モロコシ、大豆、カノーラ、ヒマワリなどの植物材料、もしくはこれらの植物材料の混合物、または反芻動物のための植物性タンパク質源を含み得る。成長、飼料摂取量および飼料効率などの動物性能パラメーターだけではなく、さらに改善された均質性は、動物畜舎のアンモニア濃度を低下させ、したがって福祉を改善し、かつ動物の健康状態が改善されるであろうと考えられる。より詳しくは、本明細書では、「動物性能」は、飼料効率および/または動物の体重増加によって、および/または飼料転換率によって、および/または飼料中の栄養素の消化率(例えば、アミノ酸消化率)および/または飼料中の可消化エネルギーもしくは代謝エネルギーによって、および/または窒素の保持によって、および/または動物の壊疽性腸炎の悪影響を回避する能力によって、および/または対象の免疫応答によって決定することができる。
【0205】
用語「動物飼料」、「飼料」、「飼料原料」および「家畜飼料」は、互換的に使用され、a)穀物類、例えば、小穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギおよびそれらの組み合わせ)および/または大粒穀類、例えばトウモロコシもしくはソルガム;b)穀物類からの副産物、例えば、トウモロコシグルテンミール、可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(DDGS)(特に、トウモロコシをベースとする可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(cDDGS)、ふすま、コムギミドリングス、コムギショーツ、米ヌカ、籾殻、カラスムギ殻、パーム核および柑橘パルプ;c)大豆、ヒマワリ、ピーナッツ、ルピナス、エンドウマメ、ソラマメ、ワタ、カノーラ、魚粉、乾燥血漿タンパク質、肉骨粉、ジャガイモタンパク、ホエイ、コプラ、ゴマなどの起源から得られたタンパク質;d)植物源および動物源から得られた油脂類;ならびに/あるいはe)ミネラル類およびビタミン類を含む群から選択される1つ以上の飼料材料を含むことができる。
【0206】
飼料、機能性飼料などの飼料として、またはその調製において使用する場合、本発明の酵素もしくは飼料添加用組成物は、栄養学上許容される担体、栄養上許容される希釈剤、栄養上許容される賦形剤、栄養上許容されるアジュバント、栄養上許容される有効成分の1つ以上と共に使用し得る。例えば、タンパク質、ペプチド、スクロース、ラクトース、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、ソルビン酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ソルビン酸マグネシウム、次亜塩素酸ナトリウム、メチルパラベンおよびプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を挙げることができよう。
【0207】
1つの好ましい実施形態では、本発明の酵素または飼料添加用組成物は、飼料原料を形成するために飼料成分と混合される。本明細書では、用語「飼料成分」は、飼料原料の全部または一部を意味する。飼料原料の一部は、飼料原料の1つの構成要素または飼料原料の2つ以上、例えば、2つもしくは3つもしくは4つ以上の構成要素を意味し得る。一実施形態では、用語「飼料成分」は、プレミックスもしくはプレミックス構成要素を包含する。好ましくは、飼料は、家畜飼料またはそのプレミックス、配合飼料またはそのプレミックスであってよい。
【0208】
本発明による飼料添加用組成物は、配合飼料、配合飼料成分と混合してよく、または配合飼料のプレミックスに、または家畜飼料、家畜飼料成分もしくは家畜飼料のプレミックスに混合してよい。
【0209】
本明細書に記載の任意の「飼料原料」は、a)穀物類、例えば、小穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、ライコムギおよびそれらの組み合わせ)および/または大粒穀物、例えばトウモロコシもしくはソルガム;b)穀物類からの生成物、例えば、トウモロコシグルテンミール、ウエットケーキ(特に、トウモロコシをベースとするウエットケーキ)、穀類蒸留粕(DDG)(特に、トウモロコシをベースとする穀類蒸留粕(cDDG))、可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(DDGS)(特に、トウモロコシをベースとする可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(cDDGS))、ふすま、コムギミドリングス、コムギショーツ、米ヌカ、籾殻、カラスムギ殻、パーム核および柑橘パルプ;c)大豆、ヒマワリ、ピーナッツ、ルピナス、エンドウマメ、ソラマメ、ワタ、カノーラ、魚粉、乾燥血漿タンパク質、肉骨粉、ジャガイモタンパク、ホエイ、コプラ、ゴマなどの起源から得られたタンパク質;d)植物源および動物源から得られた油脂類;e)ミネラル類およびビタミン類を含む群から選択される1つ以上の飼料材料を含み得る。
【0210】
本明細書では、用語「家畜飼料」は、(動物が自身で探し回らなければならないというよりむしろ)動物に提供される任意の食料を意味する。家畜飼料は、切断された植物を包含する。さらに、家畜飼料には、サイレージ、圧縮およびペレット化飼料、油および混合飼料ならびにさらに胚芽穀粒およびマメ類が含まれる。
【0211】
家畜飼料は、トウモロコシ(トウモロコシ)、アルファルファ(ルーサン)、オオムギ、ミヤコグサ、アブラナ、チョーモエリア(Chau moellier)、ケール、ナタネ(カノーラ)、ルタバガ(スウェーデンカブ)、カブ、クローバー、タチオランダゲンゲ、ムラサキツメクサ、サブタレニアンクローバー、シロツメクサ、ウシノケグサ、スズメノチャヒキ、キビ、カラスムギ、ソルガム、大豆、木(木の牧草用に短く刈り込んだ木の芽)、コムギおよびマメ類から選択される1つ以上の植物から得ることができる。
【0212】
用語「配合飼料」は、ミール、ペレット、ナッツ、ケーキまたはクランブルの形態にある市販飼料を意味する。配合飼料は、各種原材料および添加物からブレンドし得る。これらのブレンドは、対象動物の特定の要件にしたがって配合される。
【0213】
配合飼料は、1日に必要な栄養素の全部を提供する完全飼料、食料の一部(タンパク質、エネルギー)を提供する濃縮物、またはミネラル類およびビタミン類などの追加の微量栄養素だけを提供するサプリメントであってよい。
【0214】
配合飼料で使用される主成分は、トウモロコシ、コムギ、カノーラミール、ナタネミール、ルーピン、大豆、ソルガム、カラスムギおよびオオムギを含む飼料用穀物である。
【0215】
好適には、本明細書で言及したプレミックスは、微量成分、例えば、ビタミン類、ミネラル類、化学保存料、抗生物質、醗酵生成物および他の必須成分から構成される組成物であり得る。プレミックスは、通常は市販食料にブレンドするための好適な組成物である。
【0216】
一実施形態では、飼料原料は、トウモロコシ、DDGS(例えば、cDDGS)、コムギ、ふすま、またはそれらの任意の組み合わせを含む、またはそれらからなる。
【0217】
一実施形態では、飼料成分は、トウモロコシ、DDGS(例えば、cDDGS)、コムギ、ふすま、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、飼料原料は、トウモロコシ、DDGS(例えば、cDDGS)またはそれらの組み合わせを含む、またはそれらからなる。
【0218】
本明細書に記載の飼料原料は、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%または少なくとも60重量%のトウモロコシおよび大豆ミールまたはトウモロコシおよび高脂肪大豆、またはコムギミールもしくはヒマワリミールを含有し得る。
【0219】
例えば、飼料原料は、約5~約40%のトウモロコシDDGSを含有し得る。家禽類に対しては、飼料原料は、平均して約7~15%のトウモロコシDDGSを含有し得る。ブタに対しては、飼料原料は、平均して5~40%のトウモロコシDDGSを含有し得る。
飼料原料は、さらに単一穀粒としてのトウモロコシを含有し得、その場合には、飼料原料は約35%~約80%のトウモロコシを含み得る。
【0220】
混合穀粒を含む、例えばトウモロコシおよびコムギを含む飼料原料では、飼料原料は、少なくとも10%のトウモロコシを含み得る。
【0221】
これに加えて、またはこれに代えて、飼料原料はまた、高線維飼料原料を提供するために、少なくとも1つの高線維飼料物質および/または少なくとも1つの高線維飼料材料の少なくとも1つの副産物を含み得る。高線維飼料材料の例としては、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、穀粒類からの副産物、例えばトウモロコシグルテンミール、トウモロコシグルテン飼料、ウエットケーキ、穀類蒸留粕(DDG)、可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(DDGS)、ふすま、コムギミドリングス、コムギショーツ、米ヌカ、籾殻、カラスムギ殻、パーム核および柑橘パルプが挙げられる。一部のタンパク質源も、ヒマワリ、ルーピン、ソラマメおよびワタなどの起源から得られる高線維タンパク質であるとみなし得る。一態様では、本明細書に記載の飼料原料は、例えば可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(DDGS)、特にcDDGS、ウエットケーキ、穀類蒸留粕(DDG)、特にcDDG、ふすま、およびコムギからなる群から選択される少なくとも1つの高線維物質、および/またはその少なくとも1つの高線維飼料材料の少なくとも1つの副産物を含む。一実施形態では、本発明の飼料原料は、例えば可溶性物質添加乾燥穀類蒸留粕(DDGS)、特にcDDGS、ふすまおよびコムギからなる群から選択される少なくとも1つの高線維物質および/またはその少なくとも1つの高線維飼料材料の少なくとも1つの副産物を含む。
【0222】
飼料は、以下のペレット、ナッツもしくは(ウシ用)ケーキ;作物または作物残渣:トウモロコシ、大豆、ソルガム、カラスムギ、オオムギコプラ、ムギワラ、籾殻、サトウダイコン廃棄物;魚粉;肉骨粉ミール;糖蜜;油かすおよび圧搾ケーキ;オリゴ糖;保存飼料植物:サイレージ;海草;全粒または圧砕、製粉などにより調製された種子および穀物;発芽穀物およびマメ類;酵母抽出物を含む配合飼料およびプレミックスの1つ以上であり得る。
【0223】
本明細書で使用される用語「飼料」は、いくつかの実施形態ではペットフードを包含する。ペットフードは、ペットによる消費が意図される、ドッグフードまたはキャットフードなどの、植物または動物物質である。ドッグフードおよびキャットフードなどのペットフードは、犬用粗挽き穀物などの乾燥形態、またはウェットな缶詰形態のいずれかであり得る。キャットフードは、アミノ酸のタウリンを含有することができる。
【0224】
動物飼料はまた、フィッシュフードを含むことができる。フィッシュフードは、通常、飼育魚の健康を良好に保つために必要な多量養素、微量元素およびビタミン類を含有する。フィッシュフードは、フレーク、ペレットもしくはタブレット形態であり得る。その一部が急速に沈降するペレット形態は、大型魚または水域の底で餌を取る種のために使用されることが多い。一部のフィッシュフードはまた、観賞魚の発色を人工的に改善するために、ベータカロテンまたは性ホルモンなどの添加物も含有する。
【0225】
さらに別の態様では、動物飼料は、バードフードを包含する。バードフードは、バードフィーダーで使用する餌と、ペットの鳥に給餌するために使用する餌の両使用の餌を含む。典型的には、バードフードは種々の種子を含むが、スエット(牛脂もしくは羊脂)もまた包含し得る。
【0226】
本明細書では、用語「接触した」は、本明細書に記載のようなグリコシドヒドロラーゼ(またはグリコシドヒドロラーゼを含む組成物)の、生成物(例えば、飼料)への間接的または直接的適用をいう。使用し得る適用方法の例としては、飼料添加用組成物を含む物質中で生成物を処理する方法、飼料添加用組成物を生成物と混合することにより直接適用する方法、飼料添加用組成物を生成物の表面に噴霧する方法、または生成物を飼料添加用組成物の調製物中に浸漬する方法が挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、本発明の飼料添加用組成物は、好ましくは、生成物(例えば、飼料原料)と混合される。あるいは、飼料添加用組成物は、飼料原料のエマルションまたは原料成分に含め得る。これは、組成物が性能上の利点を付与することを可能にする。
【0227】
用語「熱的に安定な」は、規定の温度へ加熱する前に添加物中で存在した/活性であった酵素の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%または98%の酵素が、室温に冷却された後もまだ存在する/活性であることを意味する。好ましくは、規定温度への加熱前に添加剤中に存在し、活性であった酵素成分の少なくとも約80%が、室温への冷却後も依然として存在し、活性である。
【0228】
本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼ(または本明細書に記載のような、そのようなグリコシドヒドロラーゼを含む酵素組成物)を均質化して粉末を製造することもできる。
【0229】
代替の、好ましい実施形態では、本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼ(または本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを含む酵素組成物)は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/044968号パンフレット(TPT顆粒と呼ぶ)または同第1997/016076号パンフレットまたは同第1992/012645号パンフレットに記載されているように、顆粒に調製することができる。「TPT」は、熱防護技術を意味する。
【0230】
別の態様では、飼料添加用組成物が顆粒に調製される場合、顆粒は、タンパク質コアにコーティングされた水和障壁塩を含む。このような塩コーティングの利点は、耐熱性の改善、貯蔵安定性の改善、および、そうしないと酵素に対して有害効果を有する他の飼料添加物からの保護である。好ましくは、塩コーティングに使用される塩は、0.25超の水分活性、または20℃で60%超の一定湿度を有する。いくつかの実施形態では、塩コーティングは、NaSOを含む。
【0231】
本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼ(または本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを含む酵素組成物)を調製する方法はまた、粉末をペレット化するさらなる工程をも含み得る。粉末は、当該技術分野で知られている他の成分と混合し得る。粉末、または粉末を含む混合物は、ダイスを通過させることができ、得られたストランドは各種長さの好適なペレットに切断される。
【0232】
任意選択により、ペレット形成の前に、ペレット化工程は、蒸気処理、またはコンディショニング段階を含み得る。粉末を含む混合物は、コンディショナー、例えば、蒸気噴射装置を備えるミキサー内に配置することができる。混合物は、コンディショナー内で例えば60~100℃などの規定温度まで加熱されるが、典型的温度は、70℃、80℃、85℃、90℃または95℃であろう。滞留時間は、秒単位から分単位、さらに時間単位にまでも変動することがある。例えば、5秒間、10秒間、15秒間、30秒間、1分間、2分間、5分間、10分間、15分間、30分間および1時間。本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼ(または本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを含む酵素組成物)は、任意の適切な試料材料への添加に好適であることが理解されよう。
【0233】
当業者であれば、異なる動物は異なる飼料原料を必要とすること、および同じ動物であっても、その動物の飼育目的に応じて異なる飼料原料を必要とし得ることを理解できるであろう。
【0234】
任意選択により、飼料原料は、例えば、カルシウムなどの追加のミネラル類および/または追加のビタミン類も含有し得る。いくつかの実施形態では、飼料原料はトウモロコシ大豆ミールミックスである。
【0235】
飼料原料は、典型的には、原料物質が最初に好適な粒経に粉砕され、その後適切な添加物と混合される飼料粉砕機中で製造される。その後、飼料原料はマッシュまたはペレットとして生産され得るが、後者は典型的には、温度を目標レベルにまで上昇させ、次に飼料をダイスに通して特定のサイズのペレットを製造するという方法を含む。ペレットは冷却させられる。続いて、脂肪などの液体添加物および酵素を添加し得る。飼料原料の生産は、特に少なくとも蒸気の使用を含み得る好適な手法によって、ペレット化の前に押出し、または膨張を含む追加の工程も包含することができる。
【0236】
飼料原料は、家禽類(例えば、ブロイラー、産卵ニワトリ、ブロイラー種鳥、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、水鳥)およびブタ(全年齢カテゴリー)などの単胃動物、ウシ(例えば、乳牛もしくは雄牛(子ウシを含む))、ウマ、ヒツジなどの反芻動物、ペット(例えば、イヌ、ネコ)または魚(例えば、無胃魚、有胃魚、淡水魚、例えばサケ、タラ、マスおよびコイ、例えばコイ(koi carp)、シーバスなどの海水魚、ならびにエビ、イガイおよびホタテガイなどの甲殻類)のための飼料原料であり得る。好ましくは、飼料原料はブタ用である。
【0237】
飼料添加用組成物および/またはそれを含む飼料原料は、任意の好適な形態で使用し得る。飼料添加用組成物は、固体もしくは液体調製物またはそれらの代替物の形態で使用し得る。固体調製物の例としては、水和型、スプレー乾燥型または凍結乾燥型であり得る粉末、ペースト、ボーラス、カプセル、ペレット、錠剤、ダストおよび顆粒が挙げられる。
液体調製物の例としては、限定されないが、水溶液、有機溶液または水性有機溶液、懸濁液およびエマルションが挙げられる。
【0238】
いくつかの適用例では、飼料添加用組成物は、飼料と混合し得、または飲料水に入れて投与し得る。
【0239】
飼料添加用組成物は、本明細書で教示するグリコシドヒドロラーゼを、飼料として許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤と混合する工程、および(任意選択により)包装する工程を含む方法によって作製し得る。
【0240】
飼料原料および/または飼料添加用組成物は、少なくとも1種のミネラルおよび/または少なくとも1種のビタミンと組み合わせ得る。このように得られた組成物は、本明細書ではプレミックスと呼び得る。飼料原料は、少なくとも0.0001重量%の飼料添加物を含み得る。好適には、飼料原料は、少なくとも0.0005重量%;少なくとも0.0010重量%;少なくとも0.0020重量%;少なくとも0.0025重量%;少なくとも0.0050重量%;少なくとも0.0100重量%;少なくとも0.020重量%;少なくとも0.100重量%;少なくとも0.200重量%;少なくとも0.250重量%;少なくとも0.500重量%の飼料添加物を含み得る。
【0241】
好ましくは、食料または飼料添加用組成物は、さらに少なくとも1種の生理学上許容される担体を含み得る。生理学上許容される担体は、好ましくは、マルトデキストリン、石灰石(炭酸カルシウム)、シクロデキストリン、コムギまたはコムギ成分、スクロース、デンプン、NaSO、タルク、PVA、およびそれらの混合物の少なくとも1つから選択される。さらなる実施形態では、食料または飼料添加物は、金属イオンキレート剤をさらに含み得る。金属イオンキレート剤は、EDTAまたはクエン酸から選択し得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、食料もしくは飼料添加用組成物は、本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを少なくとも0.0001g/kg、0.001g/kg、少なくとも0.01g/kg、少なくとも0.1g/kg、少なくとも1g/kg、少なくとも5g/kg、少なくとも7.5g/kg、少なくとも10.0g/kg、少なくとも15.0g/kg、少なくとも20.0g/kg、少なくとも25.0g/kgのレベルで含む。
いくつかの実施形態では、食料添加物または飼料添加物は、食料材料または飼料材料に添加される場合、飼料材料が1~500mg/kg、1~100mg/kg、2~50mg/kgまたは2~10mg/kgの範囲で本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼを含むようなレベルで含む。本発明のいくつかの実施形態では、食料材料または飼料材料は、飼料材料または食料材料1kg当たり、少なくとも100、1000、2000、3000、4000、5000、10000、20000、30000、50000、100000、500000、1000000または2000000単位のグリコシドヒドロラーゼを含む。
【0243】
範囲には、上記で考察した下限および上限範囲の任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。
【0244】
本明細書に記載の任意のグリコシドヒドロラーゼおよび本明細書に記載の組成物を含む配合物は、配合物が確実に活性酵素を含むような、任意の好適な方法で作製し得る。そのような配合物は、液体、乾燥粉末または顆粒である得る。好ましくは、飼料添加用組成物は、飼料ペレット上または飼料ペレット中に添加するのに好適な固体形態である。
【0245】
乾燥粉末または顆粒は、高剪断造粒、ドラム造粒、押出し、球形化、流体層凝集、流体層スプレー乾燥などの当業者であれば既知の手段によって調製し得る。
【0246】
本明細書に記載のグリコシドヒドロラーゼおよび組成物は、コーティング、例えば、カプセル化され得る。一実施形態では、コーティングは酵素を熱から防護し、熱防護材であると見なすことができる。一実施形態では、コーティングは酵素を低pHから防護する。
Eudragit(登録商標)は、使用できるコーティング材料の1つの例である。
【0247】
本明細書に記載の飼料添加用組成物は、国際公開第2007/044968号パンフレット(TPT顆粒と呼ばれる)または同第1997/016076号パンフレットまたは同第1992/012645号パンフレット(これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載の乾燥粉末または顆粒に調製することができる。
【0248】
一実施形態では、動物飼料はコア;活性物質;および少なくとも1つのコーティングを含む飼料組成物の顆粒に調製され得、その顆粒の活性物質は、a)飼料ペレット化工程、b)蒸気加熱飼料前処理工程、c)貯蔵、d)非ペレット化混合物中の成分としての貯蔵、ならびにe)微量ミネラル、有機酸、還元糖、ビタミン類、塩化コリン、および酸性または塩基性の飼料基剤ミックスまたは飼料プレミックスを生じる化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む飼料基剤ミックスまたは飼料プレミックス中の成分としての貯蔵の1つ以上から選択された条件後に、少なくとも50%の活性、少なくとも60%の活性、少なくとも70%の活性、少なくとも80%の活性を維持する。
【0249】
顆粒に関して、少なくとも1つのコーティングは、顆粒の少なくとも55w/w%を構成する水分水和材料を含み得、かつ/または少なくとも1つのコーティングは2種のコーティングを含み得る。これら2種のコーティングは、水分水和コーティングおよび水分障壁コーティングであり得る。いくつかの実施形態では、水分水和コーティングは、顆粒の25w/w%~60w/w%であり得、水分障壁コーティングは顆粒の2w/w%~15w/w%であり得る。水分水和コーティングは、無機塩、スクロース、デンプンおよびマルトデキストリンから選択され得、水分障壁コーティングは、ポリマー、ガム、ホエイおよびデンプンから選択され得る。
【0250】
顆粒は、飼料ペレット化工程を使用して製造することができ、飼料前処理工程は、85℃~95℃などの70℃~95℃で数分間まで実施され得る。
【0251】
飼料添加用組成物は、コア;活性物質、すなわち顆粒が成分である場合に貯蔵後および蒸気加熱ペレット化工程の後で少なくとも80%の活性を維持する顆粒の活性物質;水分障壁コーティング;および顆粒の少なくとも25w/w%である水分水和コーティングを含む動物飼料用の顆粒に調製し得、この顆粒は蒸気加熱ペレット化工程の前で0.5未満の水分活性を有する。
【0252】
顆粒は、ポリマーおよびガムから選択された水分障壁コーティングを有し得、水分水和材料は無機塩であり得る。水分水和コーティングは、顆粒の25w/w%~45w/w%であり得、水分障壁コーティングは顆粒の2w/w%~10w/w%であり得る。
【0253】
顆粒は、85℃~95℃で数分間まで実施し得る蒸気加熱ペレット化工程を使用して生成し得る。
【0254】
あるいは、本組成物は、消費に好適な液体調製物の形態であり、そのような液体消費は以下の緩衝液、塩、ソルビトールおよび/またはグリセロールの1つ以上を含有する。
【0255】
また、飼料添加用組成物は、粉砕コムギなどの担体基質上に、例えば酵素をスプレーすることによって調製し得る。
【0256】
一実施形態では、飼料添加用組成物は、プレミックスとして調製し得る。ほんの一例ではあるが、プレミックスは、1種以上のミネラル類および/または1種以上のビタミン類などの1種以上の飼料成分を含み得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、グリコシドヒドロラーゼは、生理学的に受容可能なキャリア中に加えられるであろう。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子などの、大きくてゆっくりと代謝される高分子であり得る。医薬上許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩などの鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩などの有機酸の塩を使用できる。治療用組成物中の医薬上許容される担体は、さらに水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含有し得る。さらに、そのような組成物中には、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質などの補助物質が存在し得る。そのような担体は、医薬組成物を患者が摂取するための錠剤、ピル剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤および懸濁剤として調製することを可能にする。いったん調整されると、本発明の組成物は、反芻動物に直接投与することができる。
【0258】
本明細書で開示した組成物および方法の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
1.反芻動物用の飼料への飼料添加物として、少なくとも1つのアルファ-1,4/1,6-グリコシドヒドロラーゼ(GLCH)を添加することを含む、デンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法であって、前記ヒドロラーゼは、(a)ペプシン存在下のpH6でのヒドロラーゼの活性と比較して、ペプシン存在下の3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記ヒドロラーゼは第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)このヒドロラーゼは反芻動物の消化室に存在する消化酵素と協働して、デンプン消化率およびグルコース収率を増加させる方法。
2.少なくとも1つのGLCH酵素は、第一胃または第四胃で見出される条件に相当する条件下で、生デンプンを加水分解することができる、実施例1のヒドロラーゼ。
3.前記ヒドロラーゼは、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施例1のヒドロラーゼ。
4.前記ヒドロラーゼは、アルファ-アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群から選択される、実施例2のヒドロラーゼ。
5.アルファ-アミラーゼは、GH13ファミリーのメンバーであるか、またはアルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1);プルラナーゼ(EC 3.2.1.41);シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19);シクロマルトデキストリナーゼ(EC 3.2.1.54);トレハロース-6-リン酸ヒドロラーゼ(EC3.2.1.93);オリゴ-アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.10);マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133);ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135);アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);マルトテトラオース生成アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.60);イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68);グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70);マルトヘキサオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.98);マルトトリオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.116);分枝酵素(EC 2.4.1.18);トレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.16);4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25);マルトペンタオース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.-);アミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4);スクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7);マルト-オリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ(EC 3.2.1.141);イソマルツロースシンターゼ(EC 5.4.99.11);マルト-オリゴシルトレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.15);アミロ-アルファ-1,6グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33);およびアルファ-1,4-グルカン:リン酸アルファ-マルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.16)からなる群から選択される、実施形態3または4のヒドロラーゼ。
6.グルコシダーゼは、GH 13もしくはGH31ファミリーのメンバーであるか、またはアルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);アルファ-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22);アルファ-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.24);アルファ-1,3-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.84);スクラーゼ-イソマルターゼ(EC 3.2.1.48)(EC 3.2.1.10);アルファ-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.177);アルファ-グルカンリアーゼ(EC 4.2.2.13);イソマルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.-);オリゴ糖アルファ-1,4-グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.161);スルホキノボシダーゼ(EC 3.2.1.-)からなる群から選択される、実施例3または4のヒドロラーゼ。
7.グルコアミラーゼは、GH15ファミリーのメンバーであるか、またはグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3);グルコデキストラナーゼ.(EC 3.2.1.70);アルファ-トレハラーゼ(EC 3.2.1.28);およびデキストランデキストリナーゼ(EC 2.4.1.2)からなる群から選択される、実施形態3または4のヒドロラーゼ。
8.反芻動物におけるデンプン消化率を増加させ、グルコース収率を増加させ、乾物の消化を増加させ、かつ醗酵中のガス生成を増加させる方法であって、(i)反芻動物用の飼料添加物としての、少なくとも1つのGLCH酵素(前記酵素は(a)ペプシン存在下、pH6での酵素活性と比較して、ペプシン存在下、3以下のpHで、少なくとも20%の活性を有し、(b)前記酵素は第一胃、第四胃、および小腸を含む、反芻動物の3つの消化室の少なくとも2つの中で活性であり、かつ(c)この酵素は膵臓アミラーゼと協働して、グルコース収率を増加させる)と、(ii)少なくとも1つのプロテアーゼとを含む酵素組成物を飼料に添加することを含む方法。
9.少なくとも1つのGLCH酵素は、生デンプンを加水分解することができる、実施形態8の酵素組成物。
10.前記GLCH酵素は、アルファ-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルファ-グルコシダーゼからなる群から選択される、実施例8の酵素組成物。
11.前記酵素は、アルファ-アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群から選択される、実施例9の酵素組成物。
12.少なくとも1つのGLCH酵素は、アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.1);プルラナーゼ(EC 3.2.1.41);シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19);シクロマルトデキストリナーゼ(EC 3.2.1.54);トレハロース-6-リン酸ヒドロラーゼ(EC3.2.1.93);オリゴ-アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.10);マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133);ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135);アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);マルトテトラオース-生成アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.60);イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68);グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70);マルトヘキサオース-生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.98);マルトトリオース-生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.116);分枝酵素(EC 2.4.1.18);トレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.16);4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25);マルトペンタオース-生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.-);アミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4);スクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7);マルト-オリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ(EC 3.2.1.141);イソマルツロースシンターゼ(EC 5.4.99.11);マルト-オリゴシルトレハロースシンターゼ(EC 5.4.99.15);アミロ-アルファ-1,6-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33);およびアルファ-1,4-グルカン:リン酸アルファ-マルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.16)からなる群から選択される、実施形態10または11の酵素組成物。
13.グルコシダーゼは、アルファ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20);アルファ-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22);アルファ-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.24);アルファ-1,3-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.84);スクラーゼ-イソマルターゼ(EC 3.2.1.48)(EC 3.2.1.10);アルファ-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.177);アルファ-グルカンリアーゼ(EC 4.2.2.13);イソマルトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.-);オリゴ糖アルファ-1,4-グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.161);スルホキノボシダーゼ(EC 3.2.1.-)からなる群から選択される、実施形態10または11の酵素組成物。
14.グルコアミラーゼはGH15グリコシルヒドロラーゼファミリーから選択される、実施形態10または11の酵素組成物。
15.プロテアーゼは、酸性プロテアーゼまたは中性メタロプロテアーゼからなる群から選択される、実施形態8の酵素組成物。
16.プロテアーゼは、真菌性アスパラギン酸プロテアーゼまたは細菌性中性メタロプロテアーゼである、実施形態15の酵素組成物。
【実施例0259】
本明細書で他に特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、およびHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,N.Y.(1991)は、本開示で使用する用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0260】
以下の実施例で本開示をさらに定義する。これらの実施例は、ある実施形態を示しているが、単に説明のためにのみ提供されていると理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者であれば、本開示の本質的な特徴を確証することができ、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適応させるために様々な変化や修飾を加えることができる。
【0261】
実施例1
以下の実施例で使用する材料
表1に掲げたタンパク質試料を以下の実施例で使用した。表1は、酵素の種類、供給源生物(既知である場合)、およびサンプルについての内部供給源または商業的供給源、ならびに配列についての特許参考文献を示す。
【0262】
【表1】
【0263】
実施例2
酸性アスパラギン酸プロテアーゼ豚ペプシンおよびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)AFPの存在下におけるAkAAアミラーゼによるトウモロコシ粉の加水分解
反応混合物は、1mLのトウモロコシ粉スラリー(20w/w%、pH3.2)、AkAA(209mg/mL)20μL、ブタペプシン(Sigma、P7000、10000U/mL-水)50μL、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)からのAFP(5mg/mL)5μLおよび50μL、ならびに最終容量1.07mLまでの水を含有した。反応は、200rpmで振盪しながら40℃で5時間行った。反応の最後に、30μLの反応上清を0.23mLの水と混合し、0.22μmメンブランフィルターを通してろ過した。濾液(40μL)を、Aminex HPX-87N HPLCカラム(Bio-Rad)により、0.6mL/分の流量、78℃で15分間、水を溶離剤として使用し、HPLC分析に供した。グルコースおよびマルトースのピークを、インラインRI(示差屈折率)検出器を用いて検出し、ピーク面積はChromeleonソフトウェア(Dionex)を用いて、製造業者の指示に従って積分した。
【0264】
反芻動物に対する飼料酵素の活性は、それが第四胃および小腸で機能することが想定されている場合、ペプシンによって影響を受けるべきではない。
【0265】
図1は、ペプシンおとびAFPのいずれも、pH3.2でのトウモロコシ粉からのグルコース(G1)およびマルトース(G2)の放出に負の影響を与えなかったことを示す。
pH3.2は、特に飼料の摂取後に第四胃で起こり得るpH値の1つである(Constable et al.,2005.Effect of suckling cow’s milk or milk replacer on abomasal luminal pH in dairy calves,J.Vet.Intern.Med.19:97-102)。実際、AkAAを含有する反応混合物へペプシンおよびAFPを添加すると、G1の放出がそれぞれ4および22%増加した。ペプシン単独では、トウモロコシ粉からのG1およびG2の放出はほとんどまたは全くなかったが、AFP単独ではG1をいくらか放出したが、G2は放出しなかった。AkAAを含有する反応混合物に添加されたAFPは、G1の放出を増加させただけでなく、G2よりもG1の量を増加させ、AFPはグルコース、すなわち単量体(G1)の放出に、より有利であることを示した。動物が血流中に直接吸収できるのはG1である。
【0266】
第一胃および第四胃に見られる条件に相当する条件下では、2つのアスパラギン酸プロテアーゼが、顆粒周りのタンパク質および顆粒内に存在するタンパク質を加水分解することにより、コーンスターチ顆粒をAkAAにより接近させ得たと考えられる(Mu-Forster et al.,1996.Physical association of starch biosynthetic enzymes with starch granules of maize endosperm granule-associated forms of starch synthase I and starch branching enzyme II,Plant Physiol.111:821-829;Mu-Forster et al.,1998.Surface localization of zein storage proteins in starch granules from maize endosperm,proteolytic removal by thermolysin and in vitro cross-linking of granule-associated polypeptides.Plant Physiol.116:1563-1571)。ペプシンは、胃および第四胃で産生される主要なタンパク質分解酵素である。それは、内部のペプチド結合を切断することによってタンパク質を消化するのであるが、その最適なpHは2~4である。AFPはT.リーゼイ(T.reesei)由来の細胞外エンドペプチダーゼであり、その最適pH範囲は3~4.5である(表1)。
【0267】
実施例2および他の実施例で使用したトウモロコシは、特に明記されていない限り、88.2%の乾物(DM)、9.3%の粗タンパク質(CP)、2.0%の酸性デタージェント繊維(ADF)、アミラーゼ(aNDF)で処理した6.6%の中性デタージェント繊維、78.5%の非繊維性炭水化物(NFC)、89.0%の全消化性栄養素(TDN)からなるものであった。
【0268】
実施例3
ルーメン液の存在下におけるAkAAアミラーゼの安定性
動物飼料酵素添加物が反芻動物に有効であるためには、酵素が、第一胃液中および第一胃条件下でかなり高い安定性を有することが重要である。表2のデータは、グルコースおよびマルトースの放出がルーメン液量の増加によって有意に影響されなかったことから、AkAAは40℃で4.5時間インキュベートされた無細胞ルーメン液の存在下で安定であることを示している。
【0269】
使用したAkAAは209mg/mLの総タンパク質濃度を有し、pHを3.2に調整した8%(w/w)のスラリーで、コメデンプン顆粒(Sigma S7260)を水中で調製した。プレインキュベーション混合物と混合した後、pHはpH5.3になった。
牧草(41.66%)、全大麦(14.79%)、トウモロコシ(16.78%)、乾燥テンサイパルプおよびサトウダイコン残渣ケーキ(3.02%)、粉砕大麦(6.66%)、菜種粉(4.88%)、大豆粉(4.46%)、Komix(ビタミンおよびミネラルのミックス、0.2%)、Roed Suplex Caps(ビタミンミックス0.05%)、Suplex E‐5000(ビタミンEおよびセレン、0.03%)、チョーク(0.07%)、塩(0.06%)および水(7.33%)の混合飼料を与えた乳牛から採取した、無細胞ルーメン液はpH6.1であった。ルーメン液は、Department of Animal Science,Aarhus University(Blichers Alle 20,DK-8830 Tjele,Denmark)から提供された。反応で放出された糖を、実施例2に記載したように、Bio-Rad社のAminex HPX-87N HPLCカラムを用いたHPLCで分析した。
【0270】
【表2】
【0271】
実施例4
パンクレアチンに対するAkAAの安定性、およびグルコース収率の増加およびマルトトリオース収率の減少におけるパンクレアチンとAkAAの併用の効果
反応混合物は、0、5、10および20μLのブタパンクレアチン(Sigma P7545、0.1%NaCl中で調製した25mg/mL)、AkAA(209mg/mL)20μL、5mMのCaClを有する0.1MのMes(pH6.7)60μL、Tween80(0.01w/v%)を含有した。0.1%のNaCl溶液を加えて、最終反応容量を0.12mLとした。反応混合物を40℃で3時間インキュベートし、次いで、基質である1.5mLのトウモロコシ粉スラリー(10w/w%)を添加し、さらに40℃で13時間インキュベートした。得られた上清を8.33倍に希釈し、実施例2に記載したように、40μLをRI検出器によりグルコース、マルトースおよびマルトトリオースについてHPLCで分析した。
【0272】
図2は、AkAAが第一胃小腸の条件をシミュレートする条件下で活性であったことを示す。それは、試験したブタパンクレアチン(Pan)の3種の用量で、付加的効果および補完的効果の両方を示した。AkAAにPanを含有させると、グルコースおよびマルトースの産生を増加させ、そしてマルトリオースの生成/蓄積を減少させるが、これは、グルコースが直接吸収され得る一方で、マルトースは腸粘膜アルファ-グルコシダーゼ(マルターゼ)によって加水分解され得るので、栄養学的に有利である(Nichols et al.,1998.Human small intestinal maltase-glucoamylase cDNA cloning,homology to sucrase-isomaltase,J.Biol.Chem.273:3076-3081)。パンクレアチンは、動物、特に単胃動物および反芻動物の主要な消化酵素カクテルである。それは、ブタ膵臓の外分泌細胞によって産生される、トリプシン、アミラーゼおよびリパーゼ、リボヌクレアーゼ、ならびにプロテアーゼなどの酵素成分を含有する。このように、パンクレアチンは、タンパク質、デンプンおよび脂肪を加水分解することを可能にする酵素の組み合わせである。
【0273】
実施例5
ペプシンおよびパンクレアチンの存在下におけるトウモロコシ粉に対するAtAAアミラーゼの活性
ペプシン反応のために、反応混合物は、60mMグリシン-HCl(pH2.5)中で調製された10%(w/w)(Sigma S4126)のコーンスターチスラリー0.1mL、ペプシン10μL(Sigma P7000、水中10000U/mL)、およびAtAAアミラーゼ0.6μL(16.76mg/mL)を有した。40℃で3時間、反応を行った。サンプルを遠心分離した。上清を希釈し、ろ過し、実施例2に記載したように、糖分析のためにRI検出器を用いてHPLCで分析した。パンクレアチン反応は、コーンスターチスラリーを0.1MのMes(pH6.7)中で調製し、5μLの25mg/mLブタパンクレアチン(Pan)(Sigma P7545、0.1%NaClに溶解)を添加した以外は、ペプシン反応と同じであった。
【0274】
図3は、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)アルファ-アミラーゼAtAA(AtAmy1)が、pH2.5のペプシンまたはpH6.7のパンクレアチンのいずれの存在下で試験した場合にも活性であったことを示す。さらに、AtAAおよびパンクレアチンは、すべてのマルトトリオースを、動物によって直接吸収され得るグルコースに基本的に変換する際に補完的な効果を示した。
【0275】
実施例6
第一胃液の存在下におけるAkAAおよびAcAAアミラーゼによるコーンスターチの加水分解
240μLの細胞を含まない第一胃液を10μLの酵素試料、すなわちAkAA(209mg/mL)、AcAA(172mg/mL)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)GA(TrGA)およびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)AFP(223mg/mL)を含むAkAA、またはTrGA変異体CS4およびAFP(125mg/mL)(表1)を含むAcAAと混合し、40℃で4時間インキュベートし、続いて、5mMのCaCl(pH4.5)を含有する0.1M酢酸塩に溶解した250μLのコーンスターチ(Sigma S4126)スラリーを添加し、さらに30分間インキュベートした。反応の最後に、反応試料をろ過し、上清を用い、Yuら(Yu et al,1997.Methods for the assay of 1,5-anhydro-D-fructose and alpha-1,4-glucan lyase.Carbohydr.Res.305:73-82)の方法を少し修正して、アルカリ性3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)試薬を使用した全還元糖検出分析を行った。すなわち、希釈した反応試料10μLを、120μLのDNS試薬を含む96ウェルPCRプレートに移した。プレートを95℃で5分間インキュベートし、続いて5分間の冷却で20℃とし、その後、100μLのこれらの混合物を新しい96ウェルプレートに移し、これを使用して分光光度計により550nmの光学密度を測定した。
【0276】
図4は、第一胃液中でインキュベーションを行った後で試験した4つの酵素試料すべてで、トウモロコシ加水分解活性が極めて僅かに減少したことを示す。トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)GAおよびその変異体(CS4)ならびにトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)AFP酵素の存在は、AkAAおよびAcAAアミラーゼ試料の両者によって触媒される基質の全加水分解に有益な効果を有した。アミラーゼ/グルコアミラーゼ/プロテアーゼの両方の酵素混合物は、全タンパク質の29:70:1の比で調製した。図4に示すように、アミラーゼAkAA、AcAAおよびそれらとグルコアミラーゼTrGAおよびCS4ならびにアスパラギン酸プロテアーゼAFPとの混合物は、第一胃液中で40℃、4時間のプレインキュベーションを行い、その後、コーンスターチと共に40℃、pH4.5で30分間インキュベートした後では、全活性の13%未満が失われた(未処理の混合物と比較した場合)。
【0277】
シミュレートした第一胃条件下におけるこれらの結果は、これら2つのアミラーゼ、ならびにグルコアミラーゼおよびアスパラギン酸ペプチダーゼとのそれらの混合物が、反芻動物の消化管内で生き残れたことを示す。
【0278】
実施例7
異なるpH条件下におけるペプシンの存在下のAkAAおよびAcAAアミラーゼの活性 反応混合物は、全て5mMのCaClを有する、0.1Mグリシン-HCl(pH3.2)、0.1M酢酸塩(pH4.1、4.7)または0.1M Mes(pH6.0)中で調製した1.0mLのトウモロコシ粉スラリー(20w/w%)、25μLのAkAA(209mg/mL)またはAcAA(172mg/mL)、25μLのペプシン(Sigma P7000、水中10000U/mL)を含有した。反応は40℃で2時間行った。反応の最後に、遠心分離によって得た上清を0.45μmフィルターでろ過し、20倍に希釈した。希釈した試料を、実施例6に詳述するように、全還元糖について分析した。
【0279】
図5は、ペプシンの非存在下または存在下で、pH3.2、4.1、4.7および6.0でインキュベートした、AkAAおよびAcAA試料によるトウモロコシ粉の加水分解を示す。AkAAおよびAcAAにより放出された全還元糖の量として測定されたアミラーゼ活性は、ペプシンの非存在下と比較して、ペプシンの存在下で有意には影響されなかった。さらに、70%の同一性を共有するこれら2つのアミラーゼは、反芻動物の消化管で見られる条件に相当する条件下で、例えば、第四胃の酸性の条件(pH3.2)、上部小腸の条件(pH4.1~4.7)、ならびに小腸および第一胃で見られる条件に相当する条件(いずれもpH6.0またはpH6.0付近)の1つで活性であることが示される。したがって、AkAAおよびAcAAアミラーゼは、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、B.リケノホルミス(B.licheniformis)、B.スブチリス(B.subtilis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびA.オリザエ(A.oryzae)由来のアルファ-アミラーゼなどの、単胃飼料添加物として現在使用されている他のアミラーゼよりも、第一胃関連pHでより活性であるように見える(Monteiro de Souza et al.,Application of microbial alpha-amylase in industry -a review.Brazilian Journal of Microbiology(2010)41:850-861)。
【0280】
実施例8
パンクレアチン存在下におけるエンド/エキソグルカンヒドロラーゼおよびエンドプロテアーゼ混合物の活性
反応混合物は、1.0mLのトウモロコシ粉スラリー(20w/w%、0.1M Mes中、5mM CaCl pH6.0)、25μLのAkAA+TrGA+AFP(223mg/mL)またはAcAA+CS4+AFP(125mg/mL)の酵素カクテル、25μLのブタパンクレアチン(Sigma P7545、0.1%NaCl中で調製した25mg/mL)を含有した。反応は40℃で2時間行った。反応の最後に、遠心分離によって得た上清を0.45μmフィルターでろ過し、20倍に希釈した。希釈した試料を、実施例6に詳述するように、全還元糖について分析した。図6は、パンクレアチンの存在下、40℃、pH6.0でトウモロコシ粉(20w/w%)と共に2時間インキュベートした後、AkAA+TrGA+AFPの酵素混合物およびAcAA+CS4+AFPの酵素混合物が、還元糖産生をそれぞれ4.2倍および3.8倍増加させたことを示す。この研究は、第一胃および第四胃を生き残って通過した、AkAA+TrGA+AFPおよびAcAA+CS4+AFP混合物が、パンクレアチン酵素と相乗的に作用して糖の放出を促進し得ることを示す。
【0281】
AkAA(実施例4)と同様に、AcAAもパンクレアチンと相乗的に作用することが見出された。表3は、AcAAをパンクレアチンと一緒に投与した場合、還元力(DNS値)の発生は、pH6.0のとき、2つの酵素によって個別に生じた還元力の合計の1.6倍であり、pH6.7では、対応する値は1.25倍であることを示す。
【0282】
反応混合物は、40℃で2時間、5mMのCaClを有する0.1MのMes(pH6.0および6.7)中に1mLの20w/v%のコーンスターチスラリーを含み、25μLのブタパンクレアチン(2.5w/v%)を含むか、または含まず、25μLのAcAA(17.2mg/mL)を含んだ。生成した還元糖を実施例6に記載したように分析した。
【0283】
【表3】
【0284】
実施例9
pH6.0と比較した場合の、pH2.5でのペプシンの存在下における、エンド-、エキソ-グルカンヒドロラーゼおよびエンドプロテアーゼ混合物AFPの還元糖放出活性
表4は、pH6.0と比較した場合の、pH2.5でのペプシンの非存在下および存在下での、AkAA、AcAA、TrGA、CS4およびAFP混合物の活性を示す。pH2.5における活性は、実験条件下で両酵素カクテルについてpH6.0に対して20%を超えることが分かる。酵素カクテル中の酵素が、比較的低いpHが優勢である反芻動物の胃または第四胃に見られる条件に相当する条件下で、安定かつ活性であるのが有利であろう。
【0285】
反応混合物は、5mMのCaClを有する0.1Mのグリシン-HCl(pH2.5)中の、または5mMのCaClを有する0.1M Mes-NaOH(pH6.0)中の1.0mLのコーンスターチスラリー(10w/w%)、25μLのAkAA+TrGA+AFP(223mg/mL)またはAcAA+CS4+AFP(125mg/mL)の酵素カクテルおよび25μLのペプシン(10000U/mL)を含有した。反応は、300rpmで振盪しながら40℃で2時間行った。反応の最後に、0.45μmフィルターの96ウェルフィルタープレート中、3500rpmで5分間遠心分離することにより、酵素および生成物から基質を分離した。濾液を2倍に希釈し、実施例6に記載したように還元糖値について分析した。
【0286】
【表4】
【0287】
実施例10
パンクレアチン存在下の小腸消化条件下におけるグルコアミラーゼによるコーンスターチの加水分解
反応混合物は、0.1M Mes(pH6.0)中の、0.5mLのコーンスターチスラリー(Sigm S4126)またはトウモロコシ粉スラリー(10w/v%)、50μLのパンクレアチン(反応混合物中の最終濃度0.25%)および最終体積0.56mLで400ppmのグルコアミラーゼを含有した。反応は、300rpmで振盪しながら40℃で1時間行った。反応の最後に、ベンチトップ遠心分離機を用いてデンプン顆粒から遠心分離により上清を得、実施例6に記載のようにDNS試薬法により全還元糖について分析した。すなわち、10μLの上清または希釈した上清を、96ウェルPCRプレート中で100μLのDNS試薬と混合した。次いで、PCRプレートを95℃で5分間インキュベートし、続いて5分間冷却して20℃にした。反応混合物90μLを96ウェル読み取りプレートに移し、550nmの吸光度をDNS値として測定した。
【0288】
コーンスターチを基質とした図7、およびトウモロコシ粉を基質とした図8は、CS4、TrGA、Brew1、AfuGAおよびFvGA(詳細については表1を参照されたい)の5つの全てのグルコアミラーゼが、DNS値で示されるように、還元糖を産生する際にパンクレアチンと相乗的に作用することを示している。グルコアミラーゼ(GA)(1,4-アルファ-D-グルカングルコヒドロラーゼ(EC 3.2.1.3))は、アルファ-1,4およびアルファ-1,6-グルコシド結合の加水分解を触媒して、デンプンおよび関連する多糖およびオリゴ糖の非還元末端からベータ-D-グルコースを放出する(Sauer et al.2000.Glucoamylase:structure/function relationships,and protein engineering,Biochim.Biophys.Acta,1543:275-293)。したがって、ある種のアルファ-グルコシダーゼとは対照的に、GAはまた、生デンプンを、またアルファ-グルカンおよびそのオリゴマーに見られるアルファ-1,4、およびアルファ-1,6-グルコシド結合を加水分解することができる。
【0289】
図7および8は、ブタパンクレアチンおよび5つ全てのGAが、コーンスターチ顆粒を加水分解する一定の能力を有すること、その中でFvGAがpH6.0、40℃で最も高い活性を有することを示している。反応混合物は、GAおよびブタパンクレアチンの両者を含有する場合に、有意な相乗作用が観察された。このような相乗作用は、Sigmaから購入したパンクレアチン製品中に存在する膵臓アルファ-アミラーゼに起因し得るだけでなく、コーンスターチ顆粒の表面上および顆粒内に存在し得る任意のタンパク質と相互作用することができ、同じくこのパンクレアチン製品中に存在するプロテアーゼに多分に起因し得ると考えられる。
【0290】
この実施例は、グルコアミラーゼが膵臓消化酵素と相乗的に作用して、本明細書に記載の化学組成を有するトウモロコシからグルコースを生成できることを示している(実施例2を参照されたい)。この実験で使用した5つのGA、および上記実施例2~9で使用した3つのアルファアミラーゼAkAA、AcAA、およびAtAAは全て、ファミリー20(CBM20)に属する炭水化物結合モジュールを有する(Christiansen et al.,2009.The carbohydrate-binding module family 20 - diversity,structure,and function,FEBS Journal,276:5006-5029;Janeceka et al.,2011。Structural and evolutionary aspects of two families of non-catalytic domains present in starch and glycogen binding proteins from microbes,plants and animals.Enzyme and Microbial Technology,49:429-440)。これらの酵素は、炭水化物結合モジュールの他にも、追加の炭水化物結合部位を有し得る(Sorimachi et al.,1997.Solution structure of the granular starch binding domain ofAspergillus nigerglucoamylase bound tobeta-cyclodextrin,Structure,5:647-661)。これらの炭水化物結合モジュールおよび炭水化物結合部位は、デンプン顆粒およびマルトサッカリドに対する活性に必要であり得、したがって、パンクレアチンと組み合わせた場合、相乗効果に寄与する。
【0291】
実施例11
第一胃条件下におけるグルコアミラーゼによるコーンスターチの加水分解
表5は、デンプン基質の非存在下、第一胃液中で4時間のインキュベーションを行った後の、5つのグルコアミラーゼの残留活性が、65%の活性を残すAfuGAを除いて、少なくとも80%であることを示している。反芻動物の飼料用酵素として、40℃で4時間は、第一胃液中でかなりの安定性を有することが必要である。
【0292】
したがって、これらの酵素は40℃で4時間、第一胃液中で安定であり、活性を保持していたので、反芻動物の飼料用酵素としての有用であることを示している。
【0293】
プレインキュベーション混合物は、0.25mLの無細胞第一胃液、5つのグルコアミラーゼを400ppmでそれぞれ5μL含有した。プレインキュベーションは、48ウェルプレート中、300rpmで振盪しながら40℃で4時間行った。対照えは、プレインキュベーション時間はゼロであった。プレインキュベーション後、0.1M Mes(pH6.0)中の0.25mLのコーンスターチ(Sigma S4126)スラリー(10w/v%)を加え、振盪しながら40℃で30分間反応させた。ベンチトップ遠心分離機を用いて、デンプン顆粒から遠心分離することにより上清を得、実施例10に記載のようにDNS法により全還元糖について分析した。
【0294】
【表5】
【0295】
実施例12
pH6.0と比較した場合の、pH2.5でのペプシン存在下の5つのグルコアミラーゼの活性
酵素は、比較的低いpHが優勢である第一胃の胃または第四胃に見られる条件を模擬する条件下で、安定かつ活性であることは有利であると考えられる。pH2.5における活性は、デンプン質食を基準にするとpHが約6の、第一胃および小腸における活性と比較して、この低pH消化室の消化率において有意性を有するのに十分なだけの、かなり高い値でなければならない。表6は、5つの全グルコアミラーゼが、pH6.0でのそれらの活性と比較して、pH2.5で20%を超える活性を有することを示している。したがって、第一胃、第四胃および小腸におけるバランスのとれた活性は、デンプン室栄養素を消化する機会を増加させるであろう。
【0296】
反応混合物は、48ウェルのマイクロプレート中に、グリシン-HCl(60mM pH2.5)またはMes-NaOH(100mM、pH6.0)中で調製した0.5mLのトウモロコシ粉スラリー(10w/v%)、50μLのブタペプシン(最終濃度1000U/mL)および5μLのグルコアミラーゼ(最終濃度400ppm)を含有した。反応は40℃で60分間行った。放出された還元糖は、実施例10に記載のようにDNS試薬によって分析した。pH6.0での活性を100%として用いる。
【0297】
【表6】
【0298】
実施例13
小腸シミュレーション条件下、パンクレアチン存在下での酵母アルファ-グルコシダーゼによるコーンスターチからのグルコース放出
反応混合物は、全体積0.56mL中に、5mM CaClを含有する0.1M Mes(pH6.0)に懸濁した0.5mLのコーンスターチ(Sigma S4126)スラリー(10w/v%)、0、10、20または35μLの酵母アルファ-グルコシダーゼ(E-MALTS、1000U/mL、Megazymeから購入したもので、マルターゼとも呼ぶこともできる)、0~25μLのブタパンクレアチン(1%のNaCl中2.5w/v%、Sigmaカタログ番号P7545から購入)、および0~60μLの水を含んだ。振盪インキュベーター中、反応混合物を40℃で60分間、48ウェルプレートに入れてインキュベートした。ベンチトップ遠心分離機を用いて3500rpmで10分間、プレートを遠心分離し、未消化デンプン顆粒を分離した。グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOPOD)ベースの、グルコース分析キットを使用したグルコース分析を行うために、得られた上清を96ウェルプレートに移した。
【0299】
GOPODグルコース分析のために、8μLの上清を、Megazyme(K-GLUC 09/14)からの240μLのGOPOD試薬を有する96ウェル読み取りプレートに移した。プレートを50℃で20分間インキュベートし、Megazymeからの指示に従って510nmの吸光度を読み取った。
【0300】
パンクレアチン製品(Sigma P7545)は、膵臓アルファ-アミラーゼ、リパーゼ、リボヌクレアーゼ、およびトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼを含むいくつかのプロテアーゼを含むことはよく知られている。ブタおよびウシアルファ-アミラーゼによる食餌性デンプンの加水分解生成物は、主にマルトースである(Banks et al,1976.The action pattern of bovine pancreatic alpha-amylase.Intl J.Biochem.,7:107-110)。単胃動物および反芻動物を含む動物は、小腸膜結合酵素を使用してマルトースを加水分解することが知られている(Nichols et al.,1998.Human Small Intestinal Maltase-glucoamylase cDNA Cloning,homology to sucrase-isomaltase,J.Biol.Chem.273:3076-3081)。自由に動く酵素は、膜結合(固定化)酵素よりも触媒効果が大きい。
【0301】
図9は、パンクレアチンが存在しないと、0、10、20~35μLを投与した酵母アルファ-グルコシダーゼは、コーンスターチ顆粒からのグルコース放出を増加させられなかったことを示している。
【0302】
しかしながら、2.5μLのパンクレアチンの存在下では、グルコースは放出され、10μLのアルファ-グルコシダーゼの添加により、放出グルコース量は2倍になった。アルファ-グルコシダーゼの用量の増加とともに、グルコース収率はさらに増加した。これは、酵母アルファ-グルコシダーゼが、パンクレアチン中に存在する酵素と相乗的に作用し、コーンスターチからグルコースを放出したことを示す。プロテアーゼは、デンプン顆粒の表面に存在するタンパク質および顆粒内部に存在するタンパク質を加水分解することができるので、パンクレアチン中に存在するプロテアーゼは、この相乗作用をある程度促進することができると考えられる。デンプン顆粒上およびデンプン顆粒内部のこれらのタンパク質は、デンプン消化に悪影響を及ぼす可能性がある(McAllister et al.,1993.Effect of the protein matrix on the digestion of cereal grains by ruminal microorganisms.J.Anim.Sci.71:205-212)。
【0303】
実施例13で使用されたアルファ-グルコシダーゼは、Megazyme International Ireland(EC 3.2.1.20、CAZyファミリー:GH13、タンパク質データベースエントリ:P53341,P38158,CAS:9001-42-7)から購入した、サッカロミケス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の、高度に精製された形態である。この実施例は、フリーの微生物アルファ-グルコシダーゼが、膵臓消化酵素と良好な相乗作用を有することを示す。しかし、この酵母アルファ-グルコシダーゼは、第一胃および第一胃第四胃(ruminal abomasum)で見出される条件に相当する条件下で不安定であり、かつ不活性であることが見出された。この酵母アルファ-グルコシダーゼが、第一胃小腸で機能し得るには、ペプシンの存在下、そのような低pH下でそれを安定化させるために、そのコーティングまたはタンパク質工学などのさらなる努力が必要であろうと考えられる。
【0304】
実施例14
小腸の模擬条件下、パンクレアチン存在下における真菌アルファ-グルコシダーゼによるコーンスターチからのグルコース放出
3つの真菌アルファ-グルコシダーゼ:TG L-2000、Aclglu1およびNfiglu1(表1)を、ペプシン、パンクレアチンおよび第一胃液の存在下、安定性および活性について試験した(下記表7.1、7.2および7.3)。表7.1~7.3は、3種類のアルファ-グルコシダーゼすべてが、コーンスターチからのグルコース放出の増加に際して、パンクレアチンとの相乗作用があったことを示している。
【0305】
パンクレアチンとの相乗作用試験は以下のように行った。5mMのCaClを有する0.1M Mes(pH6.0)中の0.5mLのコーンスターチ(Sigma S4126)スラリー(10w/v%)を、0または2.5μLのアルファ-グルコシダーゼTG L-2000(3.1mg/mL)および0または2.5μLのブタパンクレアチン(Sigma P7545、1%NaCl中2.5w/v%)と共にインキュベートした。反応は40℃で1時間行った。次いで、反応混合物を0.22μmフィルターでろ過した。濾液中の放出されたグルコースの、Megazymeグルコース分析キット(GOPOD)(K-GLUC 09/14)を用いた(上記実施例13に記載したように)分析は、以下のように実施した。96ウェルプレート中で8μLのろ液を0.24mLのGOPOD試薬と混合し、50℃で20分間インキュベートした後、510nmで読み取った。グルコース放出の定量として、510nmで測定したOD単位を使用した。
【0306】
ペプシンとパンクレアチン(Pan)との相乗作用試験を以下のように行った。プレインキュベーション混合物は、0.1mLのグリシン-HCl(pH3.0)、5mMのCaCl2、25μLのブタペプシン(Sigma P7000、5000U/mL)および2.5μLのTG L-2000を含有した。この混合物を4℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、0.1M Mes(pH6.0)中の0.5mLコーンスターチスラリー(10w/v%、)および2.5μLパンクレアチン(2.5%)を加え、さらに40℃で1時間インキュベートした。放出されたグルコースの分析は、Megazymeグルコース分析キットを用いてパンクレアチン研究に関して上述したように行った。
【0307】
第一胃デンプンヒドロラーゼとの安定性および相互作用の研究は、以下のように行った: 0.24mLの無細胞第一胃液と共に、2.5μLのアルファ-グルコシダーゼTG L-2000および40℃で4時間のインキュベーション。インキュベーションの終わりに、0.1M酢酸塩(pH4.5)中の0.25mLのコーンスターチ(10w/v%)を加え、さらに40℃で30分間インキュベートした。放出されたグルコースを、パンクレアチン研究について上で記載したように、Megazymeグルコース分析キットを用いて分析した。
【0308】
個別に使用したアルファ-グルコシダーゼと豚パンクレアチンは、コーンスターチからの制限された量のグルコースを放出した(表7.1)。アルファ-グルコシダーゼTG L-2000とパンクレアチンの組み合わせは、2つの酵素調製物のそれぞれによる個別のグルコース放出の合計より5.2倍高いグルコース量を放出した(表7.1)。同様に、Aclglu1およびNfiglu1を同じ条件下でパンクレアチンと組み合わせた場合、グルコース放出の増加は、Aclglu1とパンクレアチンまたはNfiglu1とパンクレアチンによる個々の放出の合計と比較して、それぞれ8.3倍(表7.2)および7.8倍(表7.3)であった。
【0309】
3つのアルファ-グルコシダーゼのペプシン安定性を、ペプシンの存在下、pH3.0で試験した(表7.1)。2.5μLのアルファ-グルコシダーゼTG L-2000とパンクレアチンの組み合わせは、基質の非存在下、pH3.0、40℃で、ペプシンと共に2時間の事前インキュベーションを行った後でさえ、グルコース放出を7.3倍増加させたことは明らかである(表7.1)。同じ条件下で試験したアルファ-グルコシダーゼAclglu1およびNfiglu1では、組み合わせによるグルコース放出の増加は4.1倍(表7.2)および6.9倍(表7.3)であった。3つのアルファ-グルコシダーゼは、全てペプシン安定性を示したが、その理由はペプシンとのプレインキュベーションにもかかわらず、分析混合物中でパンクレアチンと組み合わせたとき、それらの全てが、依然相乗効果を示したからである。
【0310】
同様に、第一胃液中の3種類のアルファ-グルコシダーゼの相乗作用と安定性を評価した(表7.1-7.3)。表7.1は、第一胃液に添加したアルファ-グルコシダーゼTG L-2000では、グルコース放出はアルファ-グルコシダーゼTG L-2000および第一胃液によって個別に放出されたグルコースの合計と比較して2.0倍増加し、第一胃液中でプレインキュベーションを行うと、TG L-2000存在下のグルコース放出は、また、アルファ-グルコシダーゼ非存在下での放出と比較して2.0倍増加したことを示し(表7.1)、これはアルファ-グルコシダーゼTGL-2000が第一胃液中で安定であることを意味する。アルファ-グルコシダーゼAclglu1およびNfiglu1では、それらの存在は、第一胃液との「プレインキュベーション不実施とプレインキュベーション実施」(表7.2~7.3)のそれぞれで、2.0および2.8倍のグルコース放出の増加をもたらした。
【0311】
【表7】
【0312】
【表8】
【0313】
【表9】
【0314】
実施例15
第一胃液中における真菌アルファ-グルコシダーゼの安定性、およびグルコース放出におけるパンクレアチンとの相互作用
プレインキュベーション混合物は、24ウェルプレートのウェル中で混合した、2.5μLおよび240μLの無細胞第一胃液に溶解した各50μgの真菌アルファ-グルコシダーゼ:TG L-2000、Aclglu1、Nfiglu1、TauSec098、およびTauSec099(表1)を含んだ。対照には、アルファ-グルコシダーゼを加えなかった。混合物を40℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、0.1M Mes中に溶解した250μLのコーンスターチスラリー(10w/v%、Sigma S4126)、5mMのCaCl(pH6)および2.5μLのパンクレアチン(0.1%NaCl中のSigma P7545、2.5w/v%)を加え、40℃で30分間の反応を行った(n=4)。遠心分離後に得られた上清を10倍に希釈し、Megazymeのグルコース分析キットを用いて、実施例13に記載したように放出されたグルコースを定量した。
【0315】
図10は、第一胃液中の5つのアルファ-グルコシダーゼの40℃、4時間のプレインキュベーションが「プレインキュベーション不実施」の処置と比較して、活性の損失を引き起こさなかったことを示している。プレインキュベーション不実施のサンプルよりも、プレインキュベーションしたサンプルでより多くのグルコースが放出されたようである(図10)。これは、これらのアルファ-グルコシダーゼが、残存レベルのデンプン基質を有する第一胃液中に存在する、デンプンヒドロラーゼと相互作用していることの示唆なのかもしれない。
【0316】
実施例16
コーンスターチからのグルコースの放出における、pH6.0での5つのアルファ-グルコシダーゼとパンクレアチンの相乗作用
反応混合物は、5mMのCaCl、を含有する0.1M Mes(pH6.0)中の、0.5mLのコーンスターチ(Sigma S4126)スラリー(10w/v%)、2.5μL容積の50μgアルファ-グルコシダーゼ、および0または2.5μLのパンクレアチン溶液(Sigma P7545、0.1%NaCl中2.5w/v%)を含んだ。対照では、アルファ-グルコシダーゼを加えなかった。40℃で60分間反応を行い(n=4)、実施例13に記載のグルコース分析キットを用いて放出されたグルコースを定量した。
【0317】
図11は、パンクレアチンのみを使用し、追加の酵素を使用しない対照では、グルコースの産生は限定的であった(0.67mg/mL-反応混合物)ことを示している。アルファ-グルコシダーゼのみを使用した場合、グルコースの放出を示したTG L-2000(0.80mg/mL-反応混合物)を除いて、グルコース放出は低かった。アルファグルコシダーゼおよびパンクレアチンの両方を一緒に使用した場合、グルコース放出は、使用したアルファグルコシダーゼの量に依存して11~20倍の範囲で増加した。これは、5つのアルファ-グルコシダーゼのいずれかとパンクレアチンが使用される場合に得ることができる、コーンスターチからのグルコース放出における相乗効果を示す。
【0318】
実施例17
pH2.5およびpH6.0においてペプシンで処理したアルファ-グルコシダーゼの活性
反応混合物は、2.5μL、75μLペプシン(Sigma P7000、ストック溶液5000U/mL)中の50μgの5つのアルファ-グルコシダーゼ、すなわちTG L-2000、Aclglu1、Nfiglu1、TauSec098およびTauSec099(表1)、および5mM CaCl pH2.5を有する0.1Mグリシン-HCl中、または5mM CaCl pH6.0を有する0.1M Mes-NaOH中の1.5mLマルトース(21.5mg/mL)を含有した。40℃で30分間反応を行った。反応の終わりに、反応混合物を10回希釈し、上記実施例13に記載したように、Megazymeからのグルコース分析キットを用いて、グルコース放出を分析した。
【0319】
【表10】
【0320】
表8は、pH6.0と比較してpH2.5で84%の活性を示すNfiglu1を除いて、4つのグルコシダーゼの全てが、ペプシンの存在下でpH6.0よりもpH2.5でより活性であったことを示している。これらの酵素は40℃で4時間、第一胃液中で安定であり、活性を保持しており、したがって、反芻動物の飼料用酵素としての有用であることを示している。
【0321】
実施例18
トウモロコシの第一胃醗酵における乾物消化およびガス産生を増加させるための、メタロペプチダーゼP14LおよびP7Lと組み合わせたグルコアミラーゼの使用
4種のグルコアミラーゼ(CS4、TrGA、AfuGA、FvGA)および2種のメタロペプチダーゼ/プロテアーゼ(P14L、P7L)およびそれらの組み合わせの、0、3、7、9、12、および24時間のインキュベーション/醗酵における、乾物消化(DMD)およびガス産生に対する影響を、以下に記載のように評価した。グルコアミラーゼおよびプロテアーゼは両者とも、0.25mg/gの濃度で適用した。
【0322】
第一胃液のインビトロバッチ培養の基質としてデントトウモロコシを使用し、4種のグルコアミラーゼ(CS4、TrGA、AfuGA、FvGA)および2種のメタロペプチダーゼ/プロテアーゼ(P14L、P7L)およびそれらの組み合わせの、第一胃微生物醗酵に対する影響を評価した。実験は、以前に確立され発表されたプロトコールに基づき行った(Adesogan,A.T.,Krueger,N.A.,and Kim,S.C.2005.Anim.Feed Sci.Technol.123:211-223)。このインビトロのバッチ醗酵システムで使用したデントトウモロコシは、88.8%の乾物(DM)、9.3%の粗タンパク質(CP)、3.2%の酸性デタージェント繊維(ADF)、アミラーゼ(aNDF)で処理した8.3%の中性デタージェント繊維、76.9%の非繊維性炭水化物(NFC)、88.0%の全消化性栄養素(TDN)を有した。それを4mmに粉砕した。全ての酵素についてデントトウモロコシ1g当たり0.25mgの酵素タンパク質を3つの個別の実験で適用し、1つの処理についてこれを4回繰り返し、醗酵またはインキュベーションは39℃で0、3、7、9、12、および24時間継続した。粉砕したデントトウモロコシを、1回の実験当たり6回繰り返して秤量し、F57フィルターバッグ(ANKOM Technology,Macedon,NY)に入れた。ボトルに入れる前に、0.1Mクエン酸-リン酸緩衝液(pH6.0)で酵素を希釈し、F57バッグ中の粉砕デントトウモロコシ0.5gに加えた(Krueger,N.A.,and A.T.Adesogan.2008.Anim.Feed Sci.Tech.145:84-94;Goering,H.K.and P.J.Van Soest.1970.Agric.Handbook No.379.ARS USDA,Washington,DC,pp.20)。F57フィルターバッグを、Uline Tabletop Poly Bag Sealer(Impulse(登録商標)type AIE-200)で密封し、その後直ちに、160mLの血清ボトルである醗酵容器に入れた。フィルターバッグのみからなるブランクボトル、および酵素を含まずに、粉砕デントトウモロコシのみを含む対照も含めた。トータル混合飼料(TMR)を摂取してから2~3時間後に、3頭の乳を出すホルスタイン乳牛であって、第一胃にカニューレを挿入した乳牛から第一胃液を代表的に吸引した。フィステル装着乳牛に給餌されたTMR成分組成物は、乾物基準で、38.2%のトウモロコシサイレージ、27.3%の粉砕された殻抜きトウモロコシ、44%の粗タンパク質を含む14.5%の大豆粉、9.1%の柑橘パルプ、4.5%のFeedlotプレミックス、4.0%のアルファルファヘイミッドブルーム、1.8%のエネルギーブースター(MS Specialty Nutrition,Dundee,IL)、0.5%のNovasil(BASF,Germany)、合計100%からなった。
【0323】
採取した第一胃液を4層のチーズクロスでろ過し、あらかじめ温めた人工唾液(39℃)と混合した。人工唾液の成分は、CaCl・2HO、MnCl・4HO、CoCl・6HO、FeCl・6HOのミクロミネラル溶液、NaHPO・12HO、KHPO、MgSO・7HOのマクロミネラル溶液、(NHHCOおよびNaHCOの緩衝溶液、トリプチカーゼペプトン溶液(トリプトン、Sigma-Aldrich,St Louise,MO,USA)、酸化還元指示薬レサズリンおよびシステインHCl、1M NaOH、NaS・9HOおよび蒸留水を含む還元溶液を含んだ。第一胃液と人工唾液の体積比は1:2である。フィルターバッグを含む160mLの血清ボトルに緩衝第一胃液(52mL)を加え、ゴム栓でボトルを閉じ、アルミニウムシールで密封した。強制空気インキュベーター中、39℃で0、3、7、9、12、および24時間、ボトルをインキュベートした。インキュベーションの最後に、60℃で48時間、残渣を含むフィルターバッグをオーブン乾燥し、DMDを定量するために秤量した。ボトル内のガス圧を圧力トランスデューサーで測定し、0、3、7、9、12および24時間のインキュベーションで後からガス容量に変換した。ガス圧力をガス体積に変換するために次の式を使用した:
ガス体積(mL)=(ガス圧力(psi)×4.8843)+3.1296
【0324】
この式は、160mLの血清ボトルを用いた実験条件に基づいて定式化され、表9.1~9.2の全ての実験に用いた。
【0325】
統計的分析:実施例18の全ての実験について、収集したデータを、SASのGLIMMIX手順(バージョン9.1;SAS Institute,Cary、NC)を用いて分析した。実験は、各実験を1つのブロックとみなして、完全な無作為ブロック設計として設計した。異なる用量で酵素を試験した場合、モデルでは用量を固定効果として使用した。応答変数には、インビトロDMDおよびガス産生を含めた。実験は1つのランダム因子と考えた。このモデルの固定効果は、インキュベーション後の異なる時間で測定された、醗酵パラメーターのサンプリング時間を含んだ。最終分析を実施する前に、SASのUNIVARIATE手順を使用して、外れ値および正規性について残差を検査した。処理効果はP<0.05で有意とされ、一方、傾向は0.05≦P≦0.10と定義された。
【0326】
4種のグルコアミラーゼ(CS4、TrGA、AfuGA、FvGA)および2種のメタロペプチダーゼ/プロテアーゼ(P14L、P7L)ならびにそれらの組み合わせの、0、3、7、9、12、および24時間のインキュベーション/醗酵における、乾物消化(DMD)およびガス産生に対する評価結果を表9.1.1~表9.1.4に示す。グルコアミラーゼおよびプロテアーゼは両者とも、0.25mg/gの濃度で適用した。
【0327】
CS4+/-P14L処理:インキュベーションまたは醗酵の0、3、および7時間の時点で補給した、CS4に対する応答で、DMDへの効果は明確には観察されなかった(表9.1.1)。しかし、DMDは、9、12、および24時間のインキュベーションにより、それぞれ56、36、および25%改善された(P<0.05)。同様に、プロテアーゼP14Lは、9、12、および24時間のインキュベーションにより、DMDをそれぞれ79、59、および32%改善した(P<0.05)。CS4とP14Lの併用は、9、12、および24時間のインキュベーションにより、DMDをそれぞれ109、86、および45%改善した(P<0.05)。
【0328】
TrGA+/-P14L処理:DMDは、9時間のインキュベーションにより、TrGAおよびP14Lでそれぞれ62%および79%増加した(表9.1.2)。両酵素の組み合わせで、9時間のインキュベーションでは、対照と比較してDMDを124%に増加させた(P<0.01)。
【0329】
AfuGA+/-P14L処理:第一胃醗酵パラメーターに対するAfuGAとP14Lの併用の効果を表9.1.3に示す。DMDは、AfuGA、P14L、および両者との7、9、12、および24時間のインキュベーションで増加した(P<0.05)。両酵素の併用は、7、9、12、および24時間のインキュベーションでDMDをそれぞれ119、146、108、および60%増加させ、効果の大きさは単独で提供される酵素よりも大きかったことから、両酵素の併用効果は明らかである(P<0.05)。
【0330】
FvGA+/-P14L処理:第一胃醗酵パラメーターに対するFvGAとP14Lの併用の影響を表9.1.4に示す。インキュベーションの0、3、7時間の時点で補給したFvGAに対する応答で、DMDに対する効果は観察されなかったが、DMDは9時間のインキュベーションでFvGA、P14L、およびそれらの併用により、それぞれ42、79、および93%改善された(P<0.01)。
【0331】
4種のグルコアミラーゼ、メタロペプチダーゼP14Lおよびそれらの併用はすべて、少なくとも12および24時間のインキュベーションで醗酵ガス産生を有意に増加させることが見出された(P<0.05)(表9.1.1~9.14)。
【0332】
CS4、TrGA、AfuGA、FvGA+/P7L処理:0、3、7、9、12、および24時間のインキュベーション/醗酵で、4種類のグルコアミラーゼ(CS4、TrGA、AfuGA、FvGA)とメタロペプチダーゼ/プロテアーゼP7Lの併用が、DMDに及ぼす影響を表9.2.1~9.2.4に示す。表9.1.1~9.1.4のように、グルコアミラーゼおよびプロテアーゼは両者とも、0.25mg/gの濃度で適用した。
【0333】
観察された結果に基づけば、インキュベーション時間にかかわらず、P7Lと併用した4種のグルコアミラーゼの相乗効果または追加効果が観察される。CS4とP7Lの組み合わせによる追加効果は、0、3、7、9、12、および24時間のインキュベーションでそれぞれ49、112、72、60、55、および19%DMDを改善した(表9.2.1;P<0.01)。TrGAとP7Lの併用で、DMDはまた、0、3、7、9、12および24時間でそれぞれ41、109、73、64、60および25%増加した(表9.2.2;P<0.01)。
【0334】
AfuGA(表9.2.3)とP7Lの併用は、0、3、7、9、12、および24時間でそれぞれ23、116、85、66、58、および21%DMDを改善した(P<0.01)。P7Lと併用したFvGAの有効性は3、7、9、および12時間のインキュベーションでDMDの改善に有効であったが、対照と比較した場合、0および24時間では効果は観察されなかった(表9.2.4)。DMDの改善は、4種のグルコアミラーゼ、プロテアーゼP7Lおよびそれらの組み合わせの全てについて、インキュベーションのほとんどの時点で観察された、より大きな累積ガス容量によってさらに支持された(P<0.05)(表9.2.1~9.2.4)。
【0335】
【表11】
【0336】
【表12】
【0337】
【表13】
【0338】
【表14】
【0339】
【表15】
【0340】
【表16】
【0341】
【表17】
【0342】
【表18】
【0343】
実施例19
グルコアミラーゼによるマルトースの加水分解
通常、動物に吸収されるのはグルコースである。マルトースは、2単位のグルコースから形成される二糖類である。したがって、マルトースが吸収されるには、グルコースモノマーに加水分解される必要がある。グルコアミラーゼが、飼料添加酵素として使用するための他の好ましい特性に加えて、基質マルトースに対して高い触媒活性を有することは有利である。好ましくは、グルコアミラーゼは、本明細書に記載の試験条件下でのTrGAの活性と比較して、基質マルトースに対して少なくとも20%の活性を有するべきである。
【0344】
マルトースに対するグルコアミラーゼ活性を以下のように測定した。5mM CaClを含有する50mM Mes-NaOH(pH6.0)中に、2%(w/v)または8%(w/v)マルトース(M-5885、Sigma)および10μgグルコアミラーゼを含有する反応混合物を、96ウェルマイクロプレート中で、最終容量を0.05mLとして調製した。各グルコアミラーゼ-マルトース反応を3回繰り返した。
【0345】
反応は40℃で20分間行い、これはグルコース放出に関して直線範囲であった。反応を95℃で5分間、PCR装置中で行った。室温(23℃)に冷却した後、反応混合物10μLを、1mL当たり0.5~0.9mgグルコースの範囲の濃度に希釈し、マイクロプレート中で0.24mLのGOPOD試薬(D-グルコース分析キット、Megazymeから購入したGOPODフォーマット)と混合した。その後、混合物を50℃で20分間インキュベートし、510nmの吸光度を読み取った。製造業者からのグルコース標準を使用して、較正用標準曲線を作成した。
【0346】
表10のデータは、試験した全てのグルコアミラーゼが、インビボ消化条件で見出されるものと類似または近い条件、例えば、6.0のほぼ中性のpHで、マルトースに対して活性を有することを示している。
【0347】
AnGAは、これらの試験条件下で基質マルトースに関してはAnGAが例外であったことが観察された。したがって、AnGAは、本明細書に記載される使用に好適なグルコアミラーゼではない。
【0348】
【表19】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11