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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033261
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】巻線機及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/096 20160101AFI20230303BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
H01F41/096
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139467
(22)【出願日】2021-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】519231946
【氏名又は名称】森川 渡
(74)【代理人】
【識別番号】100143410
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】森川 渡
【テーマコード(参考)】
5E002
5H615
【Fターム(参考)】
5E002AA09
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP13
5H615QQ02
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で汎用性が高く、コアを揺動させることなく、ノズルを極の周りを旋回させて巻線を行うことができ、特に大型のコアに好適に適用することができる巻線機及び巻線方法を提供する。
【解決手段】巻線機Mは、ノズル保持手段1と、ノズル移動手段2と、ノズルの位置を補正する補正手段3と、を備え、巻線を行うときに、補正手段3により、ノズル10の回動角及び線材Wの送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極aの中心を含むコアCの径方向と垂直方向(Y方向)にノズル10を移動させて、ノズル10の長手方向にコアの回動中心軸Caが位置するように、ノズル10の位置を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を保持するノズルを、リング状に形成されたヨーク部から半径方向に突出する複数の極を有するコアの極の周りに旋回させて、極への巻線を行う巻線機において、
前記ノズルを保持するノズル保持手段と、
前記ノズル保持手段を介して、前記ノズルの先端を極の周りに旋回させて巻線を行うノズル移動手段と、
巻線を行うときに、前記ノズルの長手方向に前記コアの回動中心軸が位置するように、前記ノズル保持手段を介して前記ノズルの位置を補正する補正手段と、
を備え、
前記補正手段は、
前記ノズルの先端が前記コアの周方向に回転するときに、前記ノズル移動手段と独立して、前記ノズルの回動角及び線材の送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極の中心を含む前記コアの径方向と垂直方向にノズルを移動させることを特徴とする巻線機。
【請求項2】
前記ノズル保持手段は、ノズルを保持するノズル保持具と、前記ノズル保持具を介してノズルを回転させるスプラインシャフトと、を備え、
前記ノズル移動手段は、
前記ノズルを前記コアの径方向及び径方向と垂直方向に移動させる水平移動手段と、
前記ノズルを前記コアの軸方向に移動させる垂直移動手段と、
ラックとピニオンと、を備え、前記スプラインシャフトを介して前記ノズルを回転させる回転手段と、を備え、
前記回転手段は、前記スプラインシャフトが挿通され、前記スプラインシャフトに対応するスプラインナット及び前記ピニオンが固定される回転軸を備え、
前記補正手段は、前記スプラインシャフトを挿通し、前記回転軸及び前記スプラインナットを回転可能に支持していることを特徴とする請求項1に記載の巻線機。
【請求項3】
前記コアがインナーローター型モータのコアであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線機。
【請求項4】
線材を保持するノズルを、リング状に形成されたヨーク部から半径方向に突出する複数の極を有するコアの極の周りに旋回させて、極への巻線を行う巻線方法において、
巻線を行うときに、前記ノズルの長手方向に前記コアの回動中心軸が位置するように、前記ノズル先端がコアの周方向に回転するときに、前記ノズルの回動角及び線材の送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極の中心を含む前記コアの径方向と垂直方向に独立してノズルを移動させることを特徴とする巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に大型のコアの極に対し巻線を行う巻線機及び巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用モータや電動工具用モータに使用されるDCブラシレスモータなどに用いられる、外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーローター型モータのコアに巻線を行う巻線機として、線材を案内するノズルを上下に駆動し、コアをその中心を軸とした回転方向に揺動させることにより線材を巻線する巻線機が広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、モータの用途の多様化に伴い、洗濯機、エアコンコンプレッサ、エレベータなどに用いるコアは、外径が大きい、高さがある等、大型化し、重量も大きくなっている。このようなコアは素早く揺動させることができないので、上記技術では、効率の良い巻線を行うことができない。
【0004】
そこで、コアは固定し、ノズルを巻線を行う極の周りに旋回させて巻線を行う要請があった。ここで、ノズルを極の周りに旋回させる場合、コアの中心とノズルの回動中心とが一致しないと、回転半径が異なるため、ノズルが極に衝突してしまう。
【0005】
そこで、上記の問題を解決すべく、カム溝を有するカムによりノズルを案内し、巻線を行う巻線機が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-169455号公報
【特許文献2】特開2008-17572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の技術では、円板状のカムの中心をノズルの回転中心とし、複数のノズルを同心円上に配置しており、構造が複雑になるとともに、ノズルはカム溝の範囲でしか移動できず、汎用性が低い。また、カムは機構上ガタが生じやすく、巻線精度が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、コアの極に対し巻線を行う巻線機において、簡単な構造で汎用性が高く、コアを揺動させることなく、ノズルを極の周りを旋回させて巻線を行うことができ、特に大型のコアに好適に適用することができる巻線機及び巻線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、線材を保持するノズルを、リング状に形成されたヨーク部から半径方向に突出する複数の極を有するコアの極の周りに旋回させて、極への巻線を行う巻線機において、前記ノズルを保持するノズル保持手段と、前記ノズル保持手段を介して、前記ノズルの先端を極の周りに旋回させて巻線を行うノズル移動手段と、巻線を行うときに、前記ノズルの長手方向に前記コアの回動中心軸が位置するように、前記ノズル保持手段を介して前記ノズルの位置を補正する補正手段と、を備え、前記ノズルの先端が前記コアの周方向に回転するときに、前記ノズル移動手段と独立して、前記ノズルの回動角及び線材の送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極の中心を含む前記コアの径方向と垂直方向にノズルを移動させる、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の巻線機において、前記ノズル保持手段は、ノズルを保持するノズル保持具と、前記ノズル保持具を介してノズルを回転させるスプラインシャフトと、を備え、前記ノズル移動手段は、前記ノズルを前記コアの径方向及び径方向と垂直方向に移動させる水平移動手段と、前記ノズルを前記コアの軸方向に移動させる垂直移動手段と、ラックとピニオンと、を備え、前記スプラインシャフトを介して前記ノズルを回転させる回転手段と、を備え、前記回転手段は、前記スプラインシャフトが挿通され、前記スプラインシャフトに対応するスプラインナット及び前記ピニオンが固定される回転軸を備え、前記補正手段は、前記スプラインシャフトを挿通し、前記回転軸及び前記スプラインナットを回転可能に支持する、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の巻線機において、前記コアがインナーローター型モータのコアである、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、線材を保持するノズルを、リング状に形成されたヨーク部から半径方向に突出する複数の極を有するコアの極の周りに旋回させて、極への巻線を行う巻線方法において、巻線を行うときに、前記ノズルの長手方向に前記コアの回動中心軸が位置するように、前記ノズル先端がコアの周方向に回転するときに、前記ノズルの回動角及び線材の送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極の中心を含む前記コアの径方向と垂直方向に独立してノズルを移動させる、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巻線機及び巻線方法によれば、補正手段により、巻線を行うときに、ノズル移動手段と独立して、ノズルの回動角及び線材の送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極の中心を含むコアの径方向と垂直方向にノズルを移動させて、ノズルの長手方向にコアの回動中心軸が位置するように、ノズルの位置を補正することができる。これにより、本発明の巻線機では、簡単な構造でノズルとコアとの衝突を避け、コアを揺動させることなく、ノズルを極の周りを旋回させて巻線を行うことができる。本発明の巻線機及び巻線方法は、ノズルの配置に制限がないため汎用性も高く、インナーローター型モータのコアの巻線や大型のコアの巻線に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】巻線機の構成を示す側面説明図である。内部構造の理解のため、一部透視図としてある。
図2】巻線機の構成を示す正面説明図である。
図3】ノズルの回転機構を説明するための一部縦断面説明図である。
図4】巻線工程を示す説明図である。図4(a)、(b)ともに、上図はコアを上方から見たときのノズルとコアとの位置関係を示す説明図であり、下図はコアの内側から見たノズルの旋回状態を示す模式図である。
図5】巻線工程を示す説明図である。図5(a)、(b)ともに、上図はコアを上方から見たときのノズルとコアとの位置関係を示す説明図であり、下図はコアの内側から見たノズルの旋回状態を示す模式図である。
図6】ノズル位置を補正する補正量の算出方法を示す説明図である。図6(a)は巻線開始時の補正量を説明する図、図6(b)は線材を送ったときの補正量を説明する図である。
図7】アウターローター型モータのコアの極への巻線工程を示す説明図である。
図8】アウターローター型モータのコアの極への巻線工程を示す説明図である。
図9】ノズル位置を補正する補正量の算出方法を示す説明図である。図9(a)は巻線開始時の補正量を説明する図、図9(b)は線材を送ったときの補正量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る巻線機について、図1-3を参照して説明する。
【0016】
以下、リング状に形成されたヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーローター型モータのコアCの極aに対し線材Wの巻線を行う巻線機を例に説明する。巻線機Mは、線材Wを保持するノズル10を、コアCの極aの周りに旋回させて、極aへの巻線を行う巻線機である。
【0017】
巻線機Mは、線材Wを巻線するためのノズルを保持するノズル保持手段1と、ノズルの先端を極の周りに旋回させるノズル移動手段2と、ノズルの位置を補正する補正手段3と、各装置の動作を制御する図示しない制御装置と、を備えている。
【0018】
ノズル保持手段1は、線材Wを案内するためのノズル10、一端にノズル10を保持するノズル保持具11及びスプラインシャフト12を備えている。ノズル10は、ノズル保持具11により、線材Wを極aに巻き付ける先端部がコアCの径方向外方へ向き、長手方向がコアCの内側から外側に向かうように保持される。
【0019】
スプラインシャフト12は、鉛直方向に延伸し、長手方向に貫通し線材Wを案内するするガイド部12aを有する管状部材であり、上端と下端とにそれぞれ線ガイド12b、12cを備えている。スプラインシャフト12には上部から線ガイド12bを介して線材Wがガイド部12aに挿通され、当該線材Wは下部の線ガイド12cからノズル10に供給される。
【0020】
ノズル移動手段2は、本体20、ノズル前後移動装置21、ノズル左右移動装置22、ノズル上下移動装置23及びノズル回転装置24を備えて、これらが台座Dに設けられている。ここで、ノズル前後移動装置21及びノズル左右移動装置22が「水平移動手段」に、ノズル上下移動装置23が「垂直移動手段」に、ノズル回転装置24が「回転手段」に、それぞれ相当する。
【0021】
ノズル前後移動装置21は、本体20の下部20aに設けられており、ノズル前後移動用モータ21aと、ノズル前後移動用モータ21aにより駆動されるノズル前後移動用ボールねじ21bと、ノズル前後移動用ボールねじ21bに接続され前後に水平移動される前後リニアガイド21cと、を備えている。
【0022】
ここで、「前後方向」とは、図中X方向のことをいう。ノズル前後移動装置21により本体20を前後方向に移動させることができる。
【0023】
ノズル左右移動装置22は、台座Dに載置されており、ノズル前後移動装置21の下部でノズル前後移動装置21に接続されている。ノズル左右移動装置22は、ノズル左右移動用モータ22aと、ノズル左右移動用モータ22aにより駆動されるノズル左右移動用ボールねじ22bと、ノズル左右移動用ボールねじ22bに接続され左右に水平移動される左右リニアガイド22cと、を備えている。
【0024】
ここで、「左右方向」とは、図中Y方向のことをいう。ノズル左右移動装置22によりノズル前後移動装置21を介して本体20を左右方向に移動させることができる。
【0025】
ノズル上下移動装置23は、ノズル上下移動用モータ23aと、ノズル上下移動用モータ23aにより駆動されるノズル上下移動用ボールねじ23bと、ノズル上下移動用ボールねじ23bに接続され上下に移動される上下リニアガイド23cと、リニアガイド23dと、スプラインシャフト12の上部を回転可能に保持するベアリング23eと、を備えている。
【0026】
ここで、「上下方向」とは、図中Z方向のことをいう。ノズル上下移動用モータ23aは本体20の上端20bから張り出して設けられている。上下リニアガイド23cは本体20の側面部20cに設けられており、リニアガイド23d及びベアリング23eを介してスプラインシャフト12を上下に移動可能に保持する。ノズル上下移動装置23によりノズル保持手段1を上下方向に移動させることができる。また、リニアガイド23dは、スプラインシャフト12をY方向に移動可能としている。
【0027】
ノズル回転装置24は、本体20の側面部20cであって、ノズル上下移動装置23の下方に設けられている。ノズル回転装置24は、ノズル回転用モータ24aと、ノズル回転用モータ24aにより駆動されるノズル回転用ボールねじ24bと、ノズル回転用ボールねじ24bに接続され本体20の側面部20cに設けられており、左右に水平移動される回転用リニアガイド24cと、回転用リニアガイド24cに設けられたラック24dと、ラック24dと接続されたピニオン24eと、を備えている。
【0028】
スプラインナット25は、スプラインシャフト12のノズル側に設けられている。
【0029】
回転軸26は、スプラインナット25を覆う第1固定部26aと、スプラインシャフト12を覆ってスプラインシャフト12とピニオン24eとの間に延設される第2固定部26bと、からなる。
【0030】
回転軸26は、第1固定部26aにおいてスプラインナット33に固定されており、第2固定部26bにおいてメカロック24fによりピニオン24eに固定されている。
つまり、回転軸26、ピニオン24e及びスプラインナット25は図4斜線部に示すように一体で回転可能に構成されている。
【0031】
ここで、「回転方向」とは、スプラインシャフト12を中心とした回転方向であり、図中R方向のことをいう。
【0032】
ノズル回転装置24では、ノズル回転用モータ24aを駆動して、ラック24dの移動によりピニオン24eを回転させると、ピニオン24eに接続されている回転軸26を介してスプラインナット25を回転させることができる。これにより、スプラインシャフト12を回転させることにより、ノズル10をコアCの周方向に回転させ、コアCに対する姿勢を変更することができる。また、スプラインシャフト12は、回転軸26に固定されていないため、自由に上下動することができる。
【0033】
補正手段3は、本体20に設けられ、ノズル左右補正用モータ30と、ノズル左右補正用モータ30により駆動されるノズル左右補正用ボールねじ31と、ノズル左右補正用ボールねじ31に接続され左右に移動される左右補正用リニアガイド32と、を備えている。
【0034】
左右補正用リニアガイド32は、本体20の側面部20cに設けられており、本体部32aに、スプラインシャフト12を挿通し、回転軸26の第1固定部26a及びスプラインナット25を回転可能に支持するベアリング32bを備えている。
【0035】
補正手段3は、上記構成により、ノズル左右移動装置22とは独立に、スプラインシャフト12を左右に移動させることができる。つまり、ノズル左右移動装置22とは独立に、ノズル10をY方向に移動させることができる。
【0036】
コア割出装置40は、台座Dに取り付けられており、コア保持具40aと、コア割出用モータ40bと、を備えている。
【0037】
コア保持具40aは、上部が開口し、その開口部でコアCを、コアCの回転中心線Caがコア割出用モータ40bの回転中心線と一致した位置に保持する。
【0038】
コア割出用モータ40bは、コアCをコア保持具40aを介して鉛直方向の回転中心を中心に水平方向に回動し、コアCの割り出しを行う。
【0039】
巻線機Mを用いてインナーローター型モータのコアCの各極aに線材Wを巻線する方法について図4-6を参照して説明する。なお、図4-6において、簡単のため、コアCの一部とノズル10のみ図示し、その他の構成は省略した。以下、各装置の動作の制御や座標の取得等は図示しない制御装置により行われる。
【0040】
図4に示すように、コアCは、インナーローター型コアであり、ヨークYから半径方向内側に向かって巻線を行うための極aが所定の間隔で設けられている。ここで、極は12箇所設けられている場合を例示し、極a1-a12の一部のみ図示した。隣接する極の間にはスロットSLが形成されている。
【0041】
図4上図はコアCを上方から見た図であり、図4下図は、コアCの内側から極aを見た図である。ここで、Nはノズル10の回転中心、CaはコアCの中心を通る回転中心線をそれぞれ示す。ここで、ノズル10の回転中心Nは、スプラインシャフト12の回転中心となる。ΔYは、Y方向への補正量であり、図左方向を正方向とする。下図破線は、ノズル10の軌跡を示す。
【0042】
まず、コア割出装置40により、巻線を行う極aを割り出す。ここでは、極aの中心線K(コアCの径方向)がX方向になる場合を示す。
【0043】
そして、ノズル10を、巻線を行う極aと隣接する極aとの間のスロットSLの上方に、長手方向がコアCの径方向と一致するように配置する。このとき、ノズル10の長手方向への延長線上にコアCの回転中心線Caが存在する、つまり、ノズル10の長手方向への延長線とコアCの回転中心線Caとが交差することになる。ここで、コアCを上方から見てノズル10の長手方向と極aの中心線Kとがなす角をθとする。
【0044】
ここで、ノズル10の上記所定の位置への配置は、ノズル移動手段2であるノズル前後移動装置21、ノズル左右移動装置22、ノズル上下移動装置23及びノズル回転装置24により行う。このとき、ノズル10を、長手方向がコアCの径方向と一致するように配置するため、ノズルの10の回転中心NはY方向では中心線KからΔY1だけずれている。図4(a)上図に示すように、線材W(径d)の一端はコアCの係止部(図示せず)でからげなどにより固定されている。
【0045】
図6(a)に示すように、XY平面を考え、原点をCa(0,0)とし、Nの座標を(L1、ΔY1)とすると、ΔY1は以下の関係式より求められる。
【0046】
(数1)
ΔY1=L1tanθ
【0047】
ノズル10の上記所定の位置への配置は、ノズル移動手段2と補正手段3とを組み合わせて行うこともできる。
【0048】
巻線を始めるときは、図4(a)に示すように、ノズル上下移動装置23によりノズル10を鉛直方向に下降させる。
【0049】
ノズル10の先端が極aの下端に到達すると、図4(b)に示すように、ノズル上下移動装置23に加えノズル回転装置24を協働させて、ノズル10が略円弧上の軌跡を描くようにする。
【0050】
ここで、ノズル回転装置24により、ノズル10を極aの中心線Kとなす角が-θとなるまで回転させるが、Y方向への補正を行わないとノズル10の長手方向がコアCの径方向と一致しない。そのため、そのままノズル10を上昇させるとノズル10が極aに衝突してしまう。
【0051】
そこで、ノズル10が極a1と極a2との間のスロットSLを上昇するまでに、補正手段3により、ノズル10の回転角に応じて、ノズル10をY方向への-ΔY1まで(図中右方向)移動させる補正を行う。ここで、スプラインシャフト12はリニアガイド23dによりY方向に移動可能に構成されているので、補正手段3は、ノズル左右移動装置22と独立で、スプラインシャフト12をY軸方向に移動させてノズル10の位置を補正することができる。
【0052】
続いて、図5(a)に示すように、ノズル上下移動装置23によりノズル10を鉛直方向で上昇させる。
【0053】
続いて、図5(b)に示すように、ノズル回転装置24によりノズル10を左方向にノズル10を極aの中心線Kとなす角がθとなるまで回転移動させる。このとき、整列巻きを行うために、線材Wを極aに1周巻き付ける毎にノズル前後移動装置21によりコアCの径方向にノズル10を所定ピッチ(例えば線材Wの径d)で移動させる。
【0054】
このとき、ピッチ移動量dに対応して、ノズル10の回転中心がN’に移動し、NのX座標が所定ピッチ分変化する。この変化量をΔXとすると、図6(b)に示すように、補正量ΔY2は以下の関係式より求められる。
【0055】
(数2)
ΔY2=(L1-ΔX)tanθ
【0056】
このように、ノズル10を駆動して、ノズル上下移動装置23によるスロットSL内の往復上下動(Z方向)と、ノズル回転装置24による、回転中心Nを中心とし、極aの中心線Kに対し角度±θで往復するノズル10の揺動(R方向)及び補正手段3によるY方向への補正と、を組み合わせて、極aの周りを旋回させることにより、極aに線材Wを巻線することができる。
【0057】
(変更例)
なにかあれば
【0058】
(実施形態の効果)
本発明の巻線機M及び巻線方法によれば、補正手段3により、巻線を行うときに、ノズル移動手段2と独立して、ノズル10の回動角及び線材Wの送り量に基づいて算出される補正量分だけ、巻線を行う極aの中心を含むコアCの径方向と垂直方向(Y方向)にノズル10を移動させて、ノズル10の長手方向にコアの回動中心軸Caが位置するように、ノズル10の位置を補正することができる。これにより、巻線機Mでは、カムなどを用いない簡単な構造でノズル10とコアCとの衝突を避け、コアCを揺動させることなく、ノズル10を極aの周りを旋回させて巻線を行うことができる。本発明の巻線機M及び巻線方法は、ノズル10の配置に制限がないため汎用性も高く、インナーローター型モータのコアの巻線や大型のコアの巻線に好適に適用することができる。
【0059】
補正手段3は、ノズル左右移動装置22と独立で、スプラインシャフト12をY軸方向に移動させて補正可能である。補正を行うときに、台座Dに固定されているノズル左右移動装置22を駆動させないので、重量物であるモータ自体を移動させずに巻線を行いことができる。これにより、巻線を行うときに巻線機でガタが生じにくくなるので、巻線速度及び巻線精度を向上させることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
本発明の巻線機及び巻線方法は、リング状に形成されたヨーク部から半径方向外側に突出する複数の極を有するアウターローター型モータのコアCの極aに対し線材Wの巻線を行うときにも適用することができる。
【0061】
巻線方法を以下に示す。なお、図7、8では図中右方向を正方向とする。
【0062】
まず、コア割出装置40により、巻線を行う極aを割り出す。
【0063】
そして、ノズル移動手段2により、ノズル10を、巻線を行う極aと隣接するスロットSLの上方に、長手方向がコアCの径方向と一致するように配置する。このとき、ノズル10の長手方向への延長線上にコアCの回転中心線Caが存在する。また、ノズル10を、長手方向がコアCの径方向と一致するように配置するため、インナーローター型コア同様、ノズルの10の回転中心NはY方向では中心線KからΔY1だけずれている。
【0064】
(数1)
ΔY1=L1tanθ
【0065】
巻線を始めるときは、図7(a)に示すように、ノズル上下移動装置23によりノズル10を鉛直方向に下降させる。
【0066】
ノズル10の先端が極aの下端に到達すると、図7(b)に示すように、ノズル上下移動装置23に加えノズル回転装置24を協働させて、ノズル10が略円弧上の軌跡を描くようにする。
【0067】
このとき、ノズル10がスロットSLを上昇するまでに、補正手段3により、ノズル10の回転角に応じて、ノズル10をY方向への-ΔY1まで(図中左方向)移動させる補正を行う。
【0068】
続いて、図8(a)に示すように、ノズル上下移動装置23によりノズル10を鉛直方向で上昇させる。
【0069】
続いて、図8(b)に示すように、ノズル回転装置24によりノズル10を右方向にノズル10を極aの中心線Kとなす角がθとなるまで回転移動させる。このとき、整列巻きを行うために、線材Wを極aに1周巻き付ける毎にノズル前後移動装置21によりコアCの径方向にノズル10を所定ピッチ(例えば線材Wの径d)で移動させる。
【0070】
このとき、ピッチ移動量dに対応して、ノズル10の回転中心がN’に移動し、NのX座標が所定ピッチ分変化する。この変化量をΔXとすると、図9(b)に示すように、補正量ΔY2は以下の関係式より求められる。
【0071】
(数2)
ΔY2=(L1+ΔX)tanθ
【0072】
このように、アウターローター型モータのコアCの極aに対し線材Wの巻線を行うことができる。アウターローター型モータのコアの巻線には通常フライヤー及びフォーマーが必要であるが、本発明の巻線機によれば、それらが不要であり、巻線機を小型化することができる。また、1台の巻線機でインナーローター型モータ、アウターローター型モータのコアの巻線に対応可能であり、汎用性に優れている。
【符号の説明】
【0073】
1…ノズル保持手段
10…ノズル
11…ノズル保持具
12…スプラインシャフト
12a…ガイド部
12b…線ガイド
12c…線ガイド
2…ノズル移動手段
20…本体
20a…下部
20b…上端
20c…側面部
21…ノズル前後移動装置
21a…ノズル前後移動用モータ
21b…ノズル前後移動用ボールねじ
21c…前後リニアガイド
22…ノズル左右移動装置
22a…ノズル左右移動用モータ
22b…ノズル左右移動用ボールねじ
22c…左右リニアガイド
23…ノズル上下移動装置
23a…ノズル上下移動用モータ
23b…ノズル上下移動用ボールねじ
23c…上下リニアガイド
23d…リニアガイド
23e…ベアリング
24…ノズル回転装置
24a…ノズル回転用モータ
24b…ノズル回転用ボールねじ
24c…回転用リニアガイド
24d…ラック
24e…ピニオン
24f…メカロック
25…スプラインナット
26…回転軸
26a…固定部
26b…固定部
3…補正手段
30…ノズル左右補正用モータ
31…ノズル左右補正用ボールねじ
32…左右補正用リニアガイド
32a…本体部
32b…ベアリング
33…スプラインナット
40…コア割出装置
40a…コア保持具
40b…コア割出用モータ
a…極
C…コア
Ca…コアの回転中心線
K…極の中心線
M…巻線機
N…ノズルの回転中心
SL…スロット
Y…ヨーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9