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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033262
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】油差し
(51)【国際特許分類】
   F16N 3/06 20060101AFI20230303BHJP
   F16K 15/04 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
F16N3/06
F16K15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139469
(22)【出願日】2021-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】500476509
【氏名又は名称】河内 義明
(72)【発明者】
【氏名】河内 義明
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA04
3H058BB28
3H058CA03
3H058CB04
3H058DD17
3H058EE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】微小隙間の大きさを、前記ゴミが挟まることなく通過可能な大きさにしても、滴下抽出を可能にする。
【解決手段】注油用の油を可動体室内に引き込む通路と、その引き込んだ油を溜める油受けを設け、その溜めた油が本体容器をへこませた時に、微小隙間の通過流体となるようにした。本体容器をへこませた時の微小隙間の通過流体が、空気から油になったので、微小隙間の大きさを前記ゴミが挟まることなく通過可能な大きさにしても、チェック弁が閉弁して滴下抽出が可能となった。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋付きの本体容器をへこませることにより本体容器内の空気が加圧され本体容器内に充填された油は、該油の中に一端を差し込んだ油抽出用パイプから該油抽出用パイプの他端に接続された蓋内の油抽出用通路を経て、該油抽出用通路と連通する蓋の側面に設けられたノズルの抽出口から抽出される油差しにおいて、前記油抽出用通路の下方で前記蓋の下側に設け下端に下端開口部を有した内筒である可動体室を形成する筒体と、前記可動体室の天井の中心を通り可動体室と前記油抽出用通路とを連通する第一通路と、前記可動体室の内壁との間に微小隙間を保有し上下動可能であって上昇させられると前記第一通路と可動体室との連通状態を遮断する可動体と、前記油抽出用通路から前記第一通路を経由して前記可動体室に流入して来る油を溜めて可動体室を浸漬させるために前記筒体の下端面から下方に隙間をあけて筒体を覆うように形成された油受けと、前記筒体の下端面から下方に前記油受けとの間に隙間をあけて設けた連通用室と、該連通用室と前記本体容器内の空気部とを連通させる第二通路を備えたチェック弁を設けたことを特徴とする油差し。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油差しの本体容器内に充填された油が、気温の上昇により、本体容器内の空気が膨張して加圧空気が発生することによって、抽出口から押し出されるのを防止するために、膨張空気を本体容器内から大気中に排出するチェック弁を設けた油差しに関するものである。
【背景技術】
【0002】
気温の上昇により本体容器内に発生した膨張空気を、大気中に排出する機能を持つチェック弁を設けた油差しの発明はすでにある。(例えば、特許文献1)
特許文献1によれば、オイル(以後油という)が充填された本体容器と、該本体容器の上端開口部を被覆し内部に本体容器内と本体容器の外部とを連通する連通孔(以後油抽出用通路という)を有するキャップ(以後蓋という)と、該蓋の側面から水平方向に延長され前記油抽出用通路と外気とが通じるノズルと、一端が前記油に浸され他端が前記油抽出用通路に接続されるように前記蓋に取り付けられる吸い上げチューブ(以後油抽出用パイプという)を備えた油差しにおいて、前記蓋の下側に気温の上昇により本体容器内で発生する膨張空気を大気中に排出する機能を持った空気抜き弁(以後チェック弁という)を設けている油差しである。
【0003】
前記チェック弁は、前記蓋の下側に突設された筒体と、前記筒体内(以後可動体室という)に微小間隙(以後微小隙間という)を介して移動自在に収納されたボール(以後可動体という)と、前記筒体の下端部に設けたスリットと、前記可動体室内の天井面から上方に貫通する空気穴と、該空気穴を中心として前記可動体室の天井に前記可動体の外周形状に倣うように形成された球面部(以後弁座という)とにより構成されている。
【0004】
本体容器を握ってへこませることをしていない通常状態では、可動体は自重によりスリットの所まで下降しているので、可動体は弁座から離れて空気が通過できる状態(以後開弁という)であり、本体容器内の空気は本体容器内と連通する可動体室を経由して空気穴から大気に開放されている。
本体容器を握ってへこませると、本体容器内の体積が減少し、本体容器内の空気は圧力が急上昇する。
この本体容器内の急速に加圧された空気は、筒体の下端部に設けたスリットから可動体室と可動体との間の微小隙間を経て、空気穴を通り大気中に排出される。
この時、微小隙間を通過しようとする空気により、微小隙間部に通過抵抗が発生する。
この通過抵抗により、可動体は押し上げられる力を受ける。
この可動体を押し上げる力が、可動体の自重よりも大きくなれば、可動体は弁座に向けて押し上げられる。
可動体が弁座に向けて押し上げられて弁座に着座(以後閉弁という)して、可動体が可動体室と空気穴との連通状態を遮断すると、本体容器内の空気は大気との連通状態が遮断されて、本体容器内は密閉状態になる。
弁座が閉弁した後も本体容器をへこませ続けると、本体容器に加わった押圧力は、本体容器内の空気から油に伝達され、加圧された油は、油抽出用パイプから蓋内の油抽出用通路を通ってノズルに流入し、ノズルの先端の抽出口から外部に抽出される。
【0005】
油差しを使用していない保管時に、外気温が時間をかけてゆっくりと上昇すると、本体容器内の空気が膨張し、本体容器内の空気はゆっくり加圧される。
このため、膨張空気は、スリットから微小隙間を経て空気穴にゆっくりと流れる。
この時、微小隙間の通過流体である膨張空気はゆっくりと流れるので、微小隙間部には通過抵抗がほとんど発生せず、この通過抵抗の大きさでは可動体を可動体の自重に抗して押し上げることはできない。
したがって、可動体によって弁座を閉弁することはなく、弁座は開弁しているので、膨張空気は空気穴から大気中に排出される。
すなわち、油差しを使用していない保管時に外気温が上昇しても、チェック弁を設けてあるので、本体容器内の圧力と大気圧が常時均一となるように平衡し、油が抽出口から押し出されることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-196288号公報(図2図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の空気穴は上を向いて大気中に開口しているので、空気穴の下方にあるチェック弁には、大気中の落下して来るゴミが侵入して来る。
また、油の抽出時にへこませていた本体容器が元に戻る途中では、抽出口と空気穴の二ヶ所から大気を吸入するので、チェック弁には大気中の浮遊ゴミも侵入して来る。
チェック弁内には微小隙間があり、微小隙間の大きさよりも前記ゴミの方が大きいと、ゴミが微小隙間に挟まり、可動体の動きを阻害する。
このため、微小隙間の大きさと、空気穴から侵入して来る前記ゴミの大きさとを比較検討する必要がある。
【0008】
先に、微小隙間の大きさを求める。
微小隙間の大きさは、1滴ずつの抽出というような、微小量の油の抽出(以後滴下抽出という)ができなくてはならないことから求められる。
滴下抽出を可能にするためには、容器本体を滴下抽出しようとする時と同じ速度でゆっくりへこませた場合に、滴下流量に相当する容器本体内の空気が微小隙間部を通過するが、その時に発生する微小隙間部の通過抵抗により可動体が可動体の自重に抗して上昇させられ、弁座を閉弁させることが必要である。
【0009】
滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の実際の大きさを求めるには、可動体の形状と材質と大きさを設定しなければならないので、可動体を外径が3ミリの鉄球と設定し検証する。
また、滴下抽出とは、約100&#13219;/秒の抽出流量を指すものとする。
以後、断らない限りこの設定条件にて、説明を進める。
滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさを求めるには、下記するハーゲン ポアズイユの環状隙間内の流れの式を使用する。
前記環状隙間とは、微小隙間と同じ意味である。
δ&sup3;=12QμL/πdΔp
δ:微小隙間の大きさ=(可動体室の内径―可動体の外径3ミリ)÷2
Q:通過流量(滴下抽出時の場合)=約100&#13219;/秒
μ:通過流体の粘度(空気の場合、20℃時)=約1.82×10&#8315;&#8309;&#13225;秒
L:通過流体が流れる方向の、平行する微小隙間の長さ
d:可動体を収容する可動体室の内径=3ミリ鉄球の外形寸法+2δ
Δp:可動体を可動体の自重に抗して上昇させる時に必要な、微小隙間部の通過抵抗=3ミリ鉄球の重量÷3ミリ鉄球の中心部横断面積=約155&#13225;
【0010】
前記式中の、通過流体が流れる方向の平行する微小隙間の長さ(L)について説明する。
可動体を収容する可動体室の円筒内壁は垂直な壁であるが、可動体は球形であるので、両者の間を通過流体が流れる方向の平行する微小隙間の長さはゼロである。
しかしながら、通過流体が流れる方向の微小隙間の大きさは、最も狭い微小隙間部から離れるにしたがって徐々に大きくなるため、わずかではあるが、平行する微小隙間の長さに相当する長さがあると想定する。
この、平行する微小隙間の長さに相当する長さは、計算では求められないので、実験品を製作して求める。
【0011】
実験品の油差しに設けるチェック弁は、特許文献1の構造と同じ構造にすべきであるが、微小隙間の大きさが非常に小さいので、小さい制作誤差でも通過抵抗に大きく影響してしまう。
これに対して、後記する本発明のチェック弁は、チェック弁を閉弁させる時の微小隙間の通過流体が、特許文献1では空気であるのに対して、本体容器内の注油用の油である。
油は空気よりも高粘度であるため、本発明のチェック弁は、特許文献1のチェック弁よりもチェック弁を閉弁させるために必要な微小隙間部の通過抵抗を、微小隙間の大きさを大きくしても得やすくなっている。
このため、微小隙間の大きさを特許文献1の場合よりも大きくできる本発明のチェック弁は、通過抵抗に影響する制作誤差を特許文献1の場合よりも大きくすることができて、製作が容易である。
実験品を後記する本発明の油差しに設けるチェック弁の構造としても、可動体の形状と寸法と材質とか、滴下抽出状態で実験する等のその他の条件は変えないとすれば、本発明のチェック弁と特許文献1のチェック弁に共通する、平行する微小隙間の長さに相当する長さが求められる。
よって、実験品は、後記する本発明の油差しに設けるチェック弁の構造にて実験する。
【0012】
本発明の油差しに設けるチェック弁の構造による実験品と実験条件、および実験の結果は次の通りである。
1.可動体は、外径3ミリの鉄球である。
2.微小隙間の通過流体である油は、本体容器内の注油用の油である。
該油は、潤滑油系マシーン油で、粘度がISO-VG46相当品とする。
油の粘度(20℃時)は約9600×10&#8315;&#8309;&#13225;秒である。
3.滴下抽出とは、約100&#13219;/秒の抽出流量とする。
4.実験時の気温は、20℃である。
実験の結果、微小隙間の大きさは、0.3ミリまで大きくしても、滴下抽出が可能であった。
このことから、通過流体が流れる方向の平行する微小隙間の長さに相当する長さ(L)は、約0.40ミリであると、前記ハーゲン ポアズイユの環状隙間内の流れの式から求められた。
【0013】
通過流体が流れる方向の平行する微小隙間の長さに相当する長さ(L)が約0.40ミリと判明したので、特許文献1の油差しの場合の、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさが求められる。
前記ハーゲン ポアズイユの環状隙間内の流れの式中の、微小隙間の通過流体の粘度(μ)が油の粘度約9600×10&#8315;&#8309;&#13225;秒から空気の粘度約1.82×10&#8315;&#8309;&#13225;秒に変わるだけであるから、特許文献1の油差しの場合の、滴下抽出をさせるための微小隙間の大きさは0.018ミリ以下にする必要があることが判明する。
【0014】
次に、空気穴から侵入して来て、チェック弁内の微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの大きさと種類について調査する。
風などにより舞い上げられた大気中の浮遊ゴミは、インターネットに公開されている下記資料により、その種類と大きさが分かる。
「大気中の塵埃粒子」(http://www.cambridgefilter.com/wp/wpcontent/uploads/2015/11/
taiki.pdf)と、「花粉」(https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/bikaseki/2-kafun.
html)の資料によれば、大気中の浮遊ゴミの中で身近に多く存在し、しかも大きさが大きいものとしては、0.02~0.10ミリの大きさの、硬い植物の花粉がある。
植物の花粉は、大きさが約0.10ミリを超える物もあるが、大きさが約0.10ミリを超えると、大気中を浮遊しないで、急速に落下してしまうと言われている。
【0015】
段落0009から段落0013にて、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさは、0.018ミリ以下にする必要があることが判明したのに対し、段落0014にて、空気穴から侵入して来て、微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの大きさは、0.02~0.10ミリの大きさの、硬い植物の花粉があることが判明した。
よって、特許文献1の油差しは、空気穴から侵入し微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの方が、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさよりも大きいので、前記ゴミが微小隙間に挟まり、可動体の動きを阻害する。
可動体の動きが前記ゴミにより阻害されると、本体容器をへこませたときに、微小隙間部を通過する空気によって発生する通過抵抗により、可動体を上昇させることができなくなる。
可動体を上昇させることができなくなれば、可動体により弁座を閉弁できなくなり、本体容器内の空気を加圧できず、油の抽出ができなくなる問題が発生する。
【0016】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、微小隙間の大きさを油差しの外部から侵入して来て微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミが微小隙間に挟まることなく通過可能な大きさにしても、本体容器を滴下抽出するときと同じ速度でへこませた場合に、可動体が上昇させられて弁座を閉弁することにより、本体容器内を加圧することが可能となって油の滴下抽出ができるチェック弁を設けた油差しを提供することを目的とする。
また本発明は、気温の上昇によって本体容器内に発生する膨張空気を大気中に排出することにより、膨張空気が本体容器内の油を抽出口から押し出すことを防止することができるチェック弁を設けた油差しを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は蓋付きの本体容器をへこませることにより本体容器内の空気が加圧され本体容器内に充填された油は、該油の中に一端を差し込んだ油抽出用パイプから該油抽出用パイプの他端に接続された蓋内の油抽出用通路を経て、該油抽出用通路と連通する蓋の側面に設けられたノズルの抽出口から抽出される油差しにおいて、前記油抽出用通路の下方で前記蓋の下側に設け下端に下端開口部を有した内筒である可動体室を形成する筒体と、前記可動体室の天井の中心を通り可動体室と前記油抽出用通路とを連通する第一通路と、前記可動体室の内壁との間に微小隙間を保有し上下動可能であって上昇させられると前記第一通路と可動体室との連通状態を遮断する可動体と、前記油抽出用通路から前記第一通路を経由して前記可動体室に流入して来る油を溜めて可動体室を浸漬させるために前記筒体の下端面から下方に隙間をあけて筒体を覆うように形成された油受けと、前記筒体の下端面から下方に前記油受けとの間に隙間をあけて設けた連通用室と、該連通用室と前記本体容器内の空気部とを連通させる第二通路を備えたチェック弁を設けた油差しとしている。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次のような効果が得られる。
本発明では、油差しの外部から入って来る大気中の浮遊ゴミは、ノズルの抽出口からだけである。
該抽出口はほぼ横向きに開口しているので、抽出口からは大気中の落下して来るゴミは入って来ない。
しかしながら、油を抽出した後に、へこませていた本体容器が元に戻る途中では、本体容器内の圧力が大気圧よりも低くなるので、抽出口から大気を吸入する。
抽出口から吸入する大気中の浮遊ゴミは、ノズルから油抽出用通路を通り、第一通路を経由して、微小隙間に到達する。
大気中の浮遊ゴミの中で身近に多く存在し、しかも大きさが大きいものとしては、風などにより舞い上げられる、0.02~0.10ミリの大きさの、硬い植物の花粉があることは、段落0014にて説明してある。
植物の花粉は、大きさが約0.10ミリを超えるものもあるが、大きさが約0.10ミリを超えると、大気中を浮遊しないで、急速に落下してしまうと言われているので、大気中の浮遊ゴミの最大の大きさとしては、0.10ミリとしてよいことになる。
よって、油差しの外部から侵入して来て、微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの最大の大きさは、0.10ミリである。
【0019】
次に、滴下抽出をさせるために必要な、微小隙間の大きさについて記す。
本発明では、油を抽出した後に、へこませていた本体容器が元に戻るときに、本体容器内の圧力が大気圧よりも低下することによって、ノズル内および油抽出用通路内に残っていた油が本体容器内に戻ろうとするが、その油の一部が油抽出用通路から第一通路を経由して可動体室に流入してくる構造になっている。
この油抽出用通路から第一通路を経由して可動体室に流入してくる油は、可動体室に連通する連通用室と、連通用室に連通する第二通路に溜まり、更に流入してくると第二通路の出入口からあふれて本体容器内に流れ落ちる。
へこませていた本体容器が元に戻り終えると、第二通路の出入口の高さまで、第二通路内と第二通路に連通する連通用室内と可動体室内に油が溜まった状態を維持する。
油を滴下抽出しようとして本体容器を滴下抽出時と同じ速度でへこませると、本体容器内の空気が加圧され、この加圧された空気により、第二通路内の油は押し下げられ、第二通路から連通用室を経由して連通する可動体室内の油は押し上げられて、微小隙間を滴下抽出流量と同量の油が通過しようとする。
滴下抽出流量と同量の油が微小隙間を通過しようとするときに発生する通過抵抗により可動体は可動体の自重に抗して押し上げられて、第一通路が可動体室に抜ける部分に形成されている弁座を閉弁するように、微小隙間の大きさを決める。
弁座が閉弁すると、本体容器内の空気は大気との連通状態が遮断され、本体容器内は密閉状態になる。
弁座が閉弁した後も本体容器をへこませ続けると、本体容器内の空気が更に加圧され、この加圧された空気により本体容器内に充填されている油は、油抽出用パイプから蓋内の油抽出用通路を通りノズルに流入し、ノズルの先端の抽出口から外部に滴下抽出される。
【0020】
段落0012にて記した通り、微小隙間の大きさを0.3ミリまで大きくした実験品の実験では、滴下抽出が可能であった。
よって、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさを、特許文献1の油差しでは約0.018ミリ以下にする必要があったのを、本発明では0.3ミリまで大きくすることができた。
【0021】
段落0018から、抽出口から侵入して来て微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの最大の大きさは0.10ミリであることが判明した。
また、段落0019と段落0020から、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさは0.3ミリまで大きくすることができたことが実験から判明した。
よって、抽出口から侵入して来て微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの最大の大きさである0.10ミリに対し、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間の大きさを0.3ミリまで大きくすることができたので、前記大気中の浮遊ゴミは微小隙間に挟まることなく通過する。
前記侵入してきた大気中の浮遊ゴミが微小隙間に挟まらないので、可動体の動きは阻害されない。
微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミの最大の大きさは0.10ミリであるとしたが、これは身近に多く存在する硬い植物でありほぼ球体の花粉を基としている。
0.10ミリを超える大きさの大気中の浮遊ゴミとしては、羽毛とか衣服から出る糸などの細長い形状で軽量のゴミも存在するので、概ゴミが微小隙間に挟まらないようにするためには、微小隙間の大きさを最大の0.3ミリにするのが安全である。
【0022】
次に、気温の上昇により本体容器内に発生する膨張空気を、大気中に排出することができるか確認する。
気温が時間をかけてゆっくりと上昇して、本体容器内の空気が膨張し加圧空気が発生した時は、ゆっくりと膨張した空気が第二通路内の油を押し下げ、第二通路から連通用室を経由して連通する可動体室内の油は押し上げられて、微小隙間をゆっくりと通過する。
この時の微小隙間を通過する油の流量が、滴下抽出時の流量約100&#13219;/秒を超えてしまうと、微小隙間に発生する通過抵抗によって可動体は可動体の自重に抗して押し上げられて弁座が閉弁してしまい、本体容器内に発生する膨張空気を、チェック弁を通して大気中に排出することができなくなるので、確認する必要がある。
確認するにあたり、設定条件を下記のようにした。
1.本体容器内の空気の量を100&#13220;とする。
2.気温は、15℃から30℃に、15℃上昇したとする。
3.気温が15℃上昇するまでの経過時間は、朝から昼までの6時間とする。
本体容器内の空気の量100&#13220;が、15℃から30℃に、15℃上昇した場合の空気の量100&#13220;の増加量(V)は、シャルルの法則により求められる。
シャルルの法則では、一定圧力下では一定量の気体の体積は絶対温度に比例するから、空気の増加量(V)を下記式より求められる。
V=気温30℃時の本体容器内の空気の量―気温15℃時の本体容器内の空気の量
=100&#13220;(30+273)÷(15+273)-100&#13220;≒5.2&#13220;
この本体容器内の空気100&#13220;の増加量(V)である5.2&#13220;と同量の油が、朝から昼までの6時間かけて微小隙間を通過する。
この時の微小隙間を通過する油の流量は、5.2&#13220;÷6時間≒0.24&#13219;/秒となる。
滴下抽出をさせるときには、滴下抽出流量と同じ流量の油が微小隙間を通過しようとしたときに発生する通過抵抗により、チェック弁を閉弁させるように微小隙間の大きさを設定してあるが、滴下抽出流量は100&#13219;/秒であるので、この100&#13219;/秒よりも少流量の0.24&#13219;/秒では、チェック弁が閉弁することはない。
チェック弁が閉弁することはないので、微小隙間を通過する油に続いて、微小隙間を通過する油を押していた膨張空気が微小隙間を通過する。
微小隙間を通過した膨張空気は、第一通路を通り油抽出用通路に到り、ノズルの抽出口を経て大気中に排出される。
【0023】
以上のことから本発明は,微小隙間の大きさを抽出口から吸入して微小隙間に到達する大気中の浮遊ゴミが微小隙間に挟まることなく通過可能な大きさにしても、本体容器を滴下抽出するときと同じ速度でへこませた場合に、可動体が上昇させられて弁座を閉弁することにより、本体容器内を加圧することが可能となって、油の滴下抽出ができるチェック弁を設けた油差しであるので、課題を解決した。
また本発明は, 気温の上昇によって本体容器内に発生する膨張空気を大気中に排出することにより、膨張空気が本体容器内の油を抽出口から押し出すことを防止することができるチェック弁を設けた油差しであるので、段落0016の課題を解決した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1の、全体の形態を示す断面図
図2図1の中のチェック弁の拡大図
図3図2の中のA-A線部の断面図
図4図2の状態から、本体容器をへこませた時の、チェック弁内の状態図
図5図4の状態時に、油を抽出中の油差し全体の状態図
図6図4の状態から、へこませた本体容器が元に戻る途中の、チェック弁内の状態図
図7図6の状態から、へこませた本体容器が元に戻り終えた後の、チェック弁内の状態図
図8図7の状態から、本体容器をへこませて油を抽出中のチェック弁内の状態図
図9図7の状態時に、気温の上昇が始まった時の、チェック弁内の状態図
図10図9の状態から、更に気温の上昇があった時の、チェック弁内の状態図
図11図7の状態時に、気温の下降が始まった時の、チェック弁内の状態図
図12図11の状態から、更に気温の下降があった時の、チェック弁内の状態図
図13】チェック弁を設けていない、一般的な油差しの断面図
図14】本発明の実施例2の形態を示す、チェック弁部の断面図
図15】本発明の実施例3の形態を示す、チェック弁部の断面図
図16】本発明の実施例4の形態を示す、チェック弁部の断面図
図17】本発明の実施例5の形態を示す、チェック弁部の断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例0025】
以下、図1から図12に示す本発明の第一の実施の形態を、詳細に説明する。
図1は、全体の形態を示す断面図である。
本体容器1は、上端部が開口しているプラスチック等の弾性部材からなり、内部に注油用の油Cが充填されている。
蓋2は、本体容器1の上端開口部を密閉し、本体容器1に着脱自在に固定されている。
蓋2を取り付けた本体容器1内には、油Cと油Cの上方に空気Bが収容されている。
ノズル4は、蓋2の側面に取り付けられ、ノズル4の先端の抽出口4aから油Cを抽出するために、蓋2内の油抽出用通路2aを介して一端を油Cに浸した油抽出用パイプ3に連通されている。
油抽出用パイプ3は、蓋2の下面から下方に設ける継手部2mに取り付け固定されている。
以上の構成要素は、図13に示すチェック弁が付いていない油差しと同様に、本体容器1をへこませることにより、本体容器1内の空気Bを加圧して、油Cを油抽出用パイプ3から油抽出用通路2aを経て、ノズル4の抽出口4aから抽出させるための構成要素である。
図13に示すチェック弁が付いていない油差しでは、図1のチェック弁付き油差しと同一使用目的の構成部品は同一名称と同一符号を使用して、重複する説明を省略する。
【0026】
チェック弁6は、油抽出用通路2aの下方で、蓋2の下側に設けられており、本体容器1内の空気Bと大気に通ずる油抽出用通路2aとに連通している。
チェック弁6は、チェック弁6が開弁時には気温上昇により本体容器1内に発生する膨張空気を大気に逃がすために設ける。
またチェック弁6は、油Cを抽出しようとして本体容器1をへこませたときに閉弁し、前記膨張空気を大気に逃がす通路を遮断することによって、本体容器1内の空気Bを加圧するために設ける。
【0027】
図2は、図1の中のチェック弁6部の拡大図である。
図3は、図2の中のA-A線部の断面図である。
図2および図3により、チェック弁6の構成を説明する。
筒体2dは、油抽出用通路2aの下方で、蓋2の下側に設ける。
可動体室2cは、筒体2dの下端面2kに下端開口部2hを有する内筒である。
第一通路2bは、可動体室2cの天井2gの中心を通り、可動体室2cと油抽出用通路2aとを連通するように設ける。
可動体5は、可動体室2cの内壁との間に微小隙間Dを保有し、可動体室2c内を上下動させられる。
可動体5の材質は、油Cよりも比重が大きい金属等とする。
弁座2fは、第一通路2bが可動体室2cに抜ける部分に形成され、可動体5が上昇させられて弁座2fを閉弁すると、第一通路2bと可動体室2cとの連通状態が遮断状態になる。
可動体5は、本発明の実施例1では球体形で表しているが、円柱形であっても、弁座2fを閉弁できる形状であれば同じ機能が得られる。
油受け7は、筒体2dの下端面2kから下方に隙間をあけて筒体2dを覆うように形成して、油抽出用通路2aから第一通路2bを経由して可動体室2cに流入して来る油を、可動体室2c内に溜めるために設ける。
連通用室Eは、筒体2dの下端面2kから下方に隙間をあけて筒体2dを覆うように油受け7を設けたことにより得た部屋であり、可動体室2cと本体容器1内の空気B部に通じる第二通路2eとを連通させるために設けた。
【0028】
可動体受け7aは、図7に示す弁座2f部が開弁状態時に、可動体5が可動体室2cの下部まで下降してしまうのを防止し、可動体5の下降端の位置を決めるために設ける。
可動体5の下降端の位置は、可動体5により弁座2fを閉弁するときに、素早く閉弁することが求められるので、下降端の位置の可動体5が弁座2fの近くで下降停止するようにする。
本発明の実施例1では、可動体受け7aを、油受け7の底部の中心から上方に突出する棒状形とし、油受け7と一体形とした。
出入口2iは、第二通路2eが本体容器1内の空気B部に抜ける部分の開口部である。
本発明の実施例1では、図3に示すように、第二通路2eは筒体2dの周壁外面に設けた凹溝を、油受け7の周壁で覆った通路である。
図3に示す筒体2dの周壁外面に設けた凹溝状の第二通路2eの形態は、油受け7の内壁面に凹溝を設け、筒体2dの外周壁で覆った形態としても、連通用室Eを通じて可動体室2cと本体容器1内の空気B部を連通することができる。
【0029】
本発明は以上のような構成で、図1から図12を参照しながら、本発明の実施例1の動作説明をする。
図1は、本体容器1内に油Cを充填した後、本体容器1の上端開口部を密閉するために蓋2を取り付けた状態であり、図2に示すようにチェック弁6内には、油はまだ溜まっていない。
【0030】
図3は、図2の中のA-A線部の断面図である。
【0031】
図4は、図1図2のチェック弁6内に油が無い状態から、始めて本体容器1をへこませて油Cを抽出した時の、チェック弁6内の状態図である。
本体容器1をへこませたことにより、加圧された本体容器1内の空気Bは、出入口2iから第二通路2eに入り、連通用室Eから可動体室2cを経て微小隙間Dを通過しようとする。
この時、微小隙間D部を空気Bが通過しようとするが、微小隙間D部に発生する通過抵抗により、可動体5は押し上げる力を受けて上昇させられる。
可動体5が上昇すると、図4に示すように可動体5が弁座2fを閉弁し、本体容器1内の空気Bと大気との連通状態が遮断され、本体容器1内は密閉状態となる。
本体容器1内が密閉状態となった後も、本体容器1を更にへこませ続けると、本体容器1内の空気Bは更に加圧される。
この更に加圧された空気Bにより、本体容器1内に充填されている油Cは、図5に示すように油抽出用パイプ3から蓋2内の油抽出用通路2aを通りノズル4に流入し、ノズル4の先端の抽出口4aから外部に抽出される。
本発明では微小隙間Dの大きさを、油差しの外部から侵入して来て微小隙間Dに到達する大気中の浮遊ゴミが挟まることなく通過可能な大きさにするので、本体容器1をゆっくりとへこませると可動体5を上昇させるのに必要な微小隙間D部の通過抵抗が得にくい。
よって、可動体5を上昇させるに必要な微小隙間D部の通過抵抗を得るために、微小隙間D部の通過流体である空気Bの流速を早くする必要があり、本体容器1を急速にへこませなければならない。
この本体容器1を急速にへこませるのは、滴下抽出を可能とするための前準備として、これ一度だけである。
【0032】
図5は、図4の状態時に、油Cを抽出中の油差し全体の状態図である。
【0033】
図6は、図4の状態から、へこませた本体容器1が元に戻る途中のチェック弁6内の状態図である。
へこませた本体容器1が元に戻る途中では、本体容器1内の圧力が大気圧よりも低下し、ノズル4内および油抽出用通路2a内に残っていた油は、油抽出用パイプ3を通る通路および、第一通路2bから可動体室2c内を通り、連通用室Eを経由して連通する第二通路2eを通る通路の二つの通路にて本体容器1内に戻る。
【0034】
図7は、図6の状態から、へこませた本体容器1が元に戻り終えた後の、チェック6内の状態図である。
図7は、可動体室2c内と、可動体室2cに連通する連通用室Eと、連通用室Eに連通する第二通路2e内に、第二通路2eの出入口2iの高さまで、油が溜まった状態の図である。
図7の状態が、一回以上油Cを抽出した後の、油差しを保管している時の通常状態である。
【0035】
図8は、図7の状態から、本体容器1をへこませて、油Cを抽出中のチェック弁6内の状態図である。
油Cを抽出しようとして本体容器1をへこませると、本体容器1内の空気Bが加圧され、この加圧された空気Bが、出入口2iから第二通路2eに入り、第二通路2e内に溜まっている油を押し下げる。
第二通路2e内に溜まっている油を押し下げることにより、第二通路2eから連通用室Eを経由して連通する可動体室2cの内に溜まっている油は、押し上げられて微小隙間Dを通過しようとする。
油が微小隙間Dを通過しようとすることによって発生する通過抵抗により、可動体5は押し上げられる力を受ける。
この可動体5を押し上げる力が、可動体5の自重よりも大きくなったときに、可動体5は上昇させられて弁座2fを閉弁する。
弁座2fが閉弁すると、本体容器1内の空気Bは大気との連通状態が遮断されるので、弁座2fが閉弁した後も本体容器1をへこませ続けると、本体容器1内の空気Bが更に加圧される。
この更に加圧された空気Bにより本体容器1内に充填されている油Cは、油抽出用パイプ3から蓋2内の油抽出用通路2aを通りノズル4に流入し、ノズル4の先端の抽出口4aから外部に抽出される。
【0036】
この時、本体容器1をへこませ開始から、油Cの抽出開始までの時間が短時間であることが望ましいので、次の対策をする。
第一の対策として、本体容器1のへこませ開始から、可動体5の動き出しを素早くさせる。
可動体5の動き出しを素早くさせるために、図7に示すように、第二通路2eの出入口2iを微小隙間Dのある位置よりも高く設けるようにする。
このことにより、図7に示す一回以上油を抽出した後の、油差しを保管している時の通常状態時には、出入口2iの高さまで溜まっている油が微小隙間D部を浸した状態にしている。
第二通路2eの出入口2iを微小隙間Dのある位置よりも低く設けてしまうと、一回以上油を抽出した後の、油差しを保管している時の通常状態時には、出入口2iの高さまで溜まっている油が微小隙間D部を浸すことができない。
油が微小隙間D部を浸すことができないことによって、出入口2iの高さまで溜まっている油の油面から、微小隙間Dまでの間に空気が在ることになる。
この状態時に、油Cを抽出しようとして本体容器1をへこませると、本体容器1内に発生する加圧空気により、前記空気が押されて微小隙間Dを通過して無くなり、その後に油が微小隙間Dを通過しようとするが、本体容器1のへこませ開始から可動体5の上昇開始までの時間的遅れが発生してしまう。
この時間的遅れが発生しないように、第二通路2eの出入口2iを微小隙間Dのある位置よりも高く設けて、油が微小隙間D部を浸した状態にする。
第二の対策として、弁座2fを閉弁するための可動体5の動き出しから、可動体5による弁座2fの閉弁までの時間を素早くさせる。
そのために、図7に示す弁座2f部が開弁状態時に、可動体5が可動体室2cの下部まで下降してしまうのを防止するように可動体受け7aを設け、可動体5が弁座2fの近くで下降停止するように、可動体5の下降端の位置を決めるようにした。
可動体5の下降端の位置と弁座2fの距離が近いほうが、可動体5による弁座2fの閉弁が素早くできる。
本発明の実施例1では、可動体受け7aを、油受け7の底部の中心から上方に突出する棒状形とし、油受け7と一体形とした。
【0037】
図9は、図7の状態時に、気温の上昇が始まった時のチェック弁6内の状態図である。
気温が時間をかけてゆっくりと上昇することにより、本体容器1内の空気Bが膨張し、本体容器1内の圧力は大気圧よりもゆっくりと上昇する。
この、ゆっくりと膨張した空気Bは、出入口2iから第二通路2eに入り第二通路2e内の油を押し下げ、第二通路2eから連通用室Eを経由して連通する可動体室2c内の油はゆっくりと押し上げられて、微小隙間Dを通過しようとする。
この可動体室2cの内の油がゆっくりと押し上げられて微小隙間Dを通過しようとするときの通過流量が、滴下抽出時の油の流量100&#13219;/秒よりも少流量でないと、チェック弁6が閉弁してしまい、油に続いてやってくる膨張空気を大気に排出することができない。
そのため、前記可動体室2cの内の油がゆっくりと押し上げられて微小隙間Dを通過しようとするときの通過流量を確認する必要がある。
段落0022から、微小隙間Dを通過しようとするときの通過流量は、滴下抽出時の油の流量100&#13219;/秒よりも少流量の0.24&#13219;/秒であることが判明しているので、チェック弁6が閉弁することはない。
チェック弁6が閉弁しないで開弁していることによって、可動体室2c内にあった油は、微小隙間Dを通過して、第一通路2bから油抽出用通路2aに押し上げられる。
【0038】
油抽出用通路2aに押上げられた油は、図1に示すように抽出口4aが油抽出用通路2aよりも高い位置にある形態にすれば、図9に示すごとく抽出口4a方向とは反対方向に流れ、油抽出用パイプ3を通って下降し、本体容器1内の油Cに戻る。
【0039】
図10は、図9の状態から更にゆっくりと気温の上昇があった時の、チェック弁6内の状態図である。
図9の状態から更に気温の上昇があると、本体容器1内に発生した膨張空気が出入口2iから第二通路2eに入り、第二通路2e内の油を更に押し下げて行く。
その後、図10に示すように、膨張空気が第二通路2eの下端部2jから連通用室Eを通り筒体2dの下端開口部2hに達すると、膨張空気は可動体室2c内へ流入し、膨張空気は気泡となって可動体室2c内の油中を上昇する。
その後、前記気泡は微小隙間Dを通過し、第一通路2b内を上昇して、大気に通ずる油抽出用通路2aに開放される。
その結果、気温の上昇により本体容器1内に発生した膨張空気は大気に開放されるので、本体容器1内の空気Bの圧力は大気圧と略同圧となるから、油Cは油抽出パイプ3から油抽出用通路2aを経て、ノズル4の抽出口4aから押し出されることはない。
【0040】
図11は、図7の状態時に、ゆっくりとした気温の下降が始まった時の、チェック弁6内の状態図である。
気温が下降すると、本体容器1内の空気Bが収縮し、本体容器1内の圧力が大気圧よりも下降するので、抽出口4aから大気が流入する。
この流入する大気は、油抽出用通路2aから油抽出用パイプ3を通る通路および、油抽出用通路2aから第一通路2bと可動体室2c内を通り、連通用室Eを経由して連通する第二通路2eを通る通路の二つの通路にて本体容器1内に向けて流入する。
前記抽出口4aから油抽出用通路2aを通り、第一通路2bに流入して来るゆっくりとした流れの大気は、可動体室2c内の油をゆっくりと押し下げる。
可動体室2c内の油がゆっくりと押し下げられると、可動体室2cと連通用室Eを経由して連通する第二通路2eの内の油はゆっくりと押されて上昇し、第二通路2eの出入口2iからあふれて本体容器1内に流れ落ちる。
【0041】
図12は、図11の状態から更に気温の下降があった時の、チェック弁6内の状態図である。
図11の状態から更に気温の下降があると、第一通路2bに流入してきたゆっくりとした流れの大気が可動体室2c内の油を押し下げて行き、図12に示すように、流入してきた大気が筒体2dの下端開口部2hから連通用室Eを経由して連通する第二通路2eの下端部2jに達すると、流入してきた大気は第二通路2eへ流入し、流入してきた大気は気泡となって第二通路2e内の油中を上昇する。
その後、前記気泡は第二通路2eの出入口2iに達して、本体容器1内の空気Bに開放される。
【0042】
以上、本発明のチェック弁6を設けた油差しの構成と動作説明をしてきたが、この動作を満足させるためには、可動体5を可動体室2c内で、油差しの外部から侵入して来る大気中のゴミに阻害されずに、上下動させることが可能でなければならない。
そのために、油差しの外部から侵入してきて来て、微小隙間Dに到達する大気中のゴミの大きさを調査し、微小隙間Dの大きさと比較する必要がある。
微小隙間Dの大きさに対して、微小隙間Dに到達する前記ゴミの大きさの方が大きい場合には、微小隙間Dにゴミが挟まり、可動体5の動きが阻害されるので、確認が必要である。
【0043】
先に、油差しの外部から侵入して来て、微小隙間Dに到達する大気中のゴミの大きさと種類について調査する。
段落0018から、微小隙間Dに到達する大気中の浮遊ゴミの中で身近に多く存在し、しかも大きさが大きいものとしては固い植物の花粉があり、その最大の大きさは0.10ミリであることが判明している。
【0044】
次に、微小隙間Dの大きさを求める。
微小隙間Dの大きさは、滴下抽出ができなくてはならないことから求められる。
段落0012から、実験品の実験の結果、微小隙間Dの大きさは、0.3ミリまで大きくしても、滴下抽出が可能であることが判明している。
【0045】
段落0018から、抽出口4aから侵入して来て微小隙間Dに到達する大気中の浮遊ゴミの最大の大きさは0.10ミリであることが判明し、段落0012から、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間Dの大きさは0.3ミリまで大きくすることができたことが実験で判明した。
よって、抽出口4aから侵入して来て微小隙間Dに到達する大気中の浮遊ゴミの大きさよりも、滴下抽出をさせるために必要な微小隙間Dの大きさの方が大きいので、前記侵入して来る大気中の浮遊ゴミは微小隙間Dに挟まることなく通過する。
前記侵入して来る大気中の浮遊ゴミが微小隙間Dに挟まることなく通過するので、チェック弁6内の可動体5を、可動体室2c内で問題なく上下動させることが可能であることが判明した。
【0046】
以上のことから、従来のチェック弁付き油差しでは、油Cを抽出するために本体容器1をへこませてチェック弁6を閉弁させる時の微小隙間Dの通過流体が本体容器1内の空気Bであったが、本発明のチェック弁6を設けた油差しでは、これを注油用の油Cになるようにしたことによって、次のような効果が得られた。
微小隙間Dの大きさを油差しの外部から侵入して来て微小隙間Dに到達する大気中の浮遊ゴミが微小隙間Dに挟まることなく通過可能な大きさにしても、本体容器1を滴下抽出する速度でゆっくりへこませた場合に、チェック弁6が閉弁して本体容器1内を加圧することができるから、油Cは油抽出用パイプ3から蓋2内の油抽出用通路2aを通りノズル4に流入し、ノズル4の先端の抽出口4aから滴下抽出することができるという効果が得られた。
【0047】
次に本発明の異なる実施の形態について説明する。
なお、これらの本発明の異なる実施の形態の説明に当たって、前記本発明の実施例1と同一使用目的の構成部分には、同一名称と同一符号を付して重複する説明を省略する。
【実施例0048】
図13は、本発明の実施例2の形態を示す、チェック弁6部の断面図である。
図13の本発明の実施例2の形態において、前記本発明の実施例1の形態と主に異なる点は、連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通するために設ける第二通路2eを、別の場所に設けたことである。
実施例2の場合には、第二通路2eを筒体2dの周壁内に設けて、前記実施例1と同様に連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通しているので、本発明の実施例1と同等の効果がある。
【実施例0049】
図14は、本発明の実施例3の形態を示す、チェック弁6部の断面図である。
図14の本発明の実施例3の形態において、前記本発明の実施例1および実施例2の形態と主に異なる点は、連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通するために設ける第二通路2eを、別の場所に設けたことである。
実施例3の場合には、第二通路2eを油受け7の周壁内に設けて、前記実施例1と同様に連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通しているので、本発明の実施例1と同等の効果がある。
【実施例0050】
図15は、本発明の実施例4の形態を示す、チェック弁6部の断面図である。
図15の本発明の実施例4の形態において、前記本発明の実施例1から実施例3の形態と主に異なる点は、連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通するために設ける第二通路2eを、別の場所に設けたことである。
実施例4の場合には、第二通路2eを油受け7の底部に下方へ抜ける穴を設け、この穴に連通するように油受け7の下部から突設する略U字形のチューブ7bの内径部の通路を第二通路2eとし、前記実施例1と同様に連通用室Eと本体容器1内の空気B部とを連通しているので、本発明の実施例1と同等の効果がある。
【実施例0051】
図16は、本発明の実施例5の形態を示す、チェック弁6部の断面図である。
図16の本発明の実施例5の形態において、前記本発明の実施例1から実施例4の形態と主に異なる点は、蓋2内の油抽出用通路2aの下方で蓋2の下側に蓋2と一体形状で設けていた筒体を、個別に製作した筒体2dとした。
個別に製作する筒体2dに、可動体5と油受け7を組み込んでチェック弁6とし、チェック弁の無い油差しに取り付け固定する形態とした。
この取り付け固定する方法としては、ネジ嵌合による固定とか、圧入嵌合による固定または、接着剤で固定する方法があるが、図16ではネジ嵌合による固定方法を示した。
図16では、蓋2の油抽出用通路2aの下側に、筒体2dを取り付けるためのメネジを設けた。
筒体2dは、上部に蓋2へ取り付けるためのオネジを設け、さらに可動体室2cの天井の中心を通り上方に抜ける第一通路2bを設けた。
実施例5の場合には、本発明の実施例1と同じ構成要素を備えているので、実施例1と同等の効果が得られる。
実施例5は、チェック弁の無い油差しを、チェック弁付きの油差しに改造する場合に、チェック弁6だけを入手すればよいので、安価に改造できる効果がある。
【符号の説明】
【0052】
1: 本体容器
2: 蓋
2a: 油抽出用通路
2b: 第一通路
2c: 可動体室
2d: 筒体
2e: 第二通路
2f: 弁座
2g: 可動体室の天井
2h: 下端開口部
2i: 出入口
2j: 第二通路の下端部
2k: 筒体の下端面
2m: 継手部
3: 油抽出用パイプ
4: ノズル
4a: 抽出口
5: 可動体
6: チェック弁
7: 油受け
7a: 可動体受け
7b: 略U字形のチューブ
B: 本体容器内の空気
C: 油
D: 微小隙間
E: 連通用室

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17