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  • 特開-傾斜地対応杭打機 図1
  • 特開-傾斜地対応杭打機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033270
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】傾斜地対応杭打機
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/00 20060101AFI20230303BHJP
   E21B 7/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
E02F5/00 Z
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139481
(22)【出願日】2021-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】721008187
【氏名又は名称】松尾 悠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 悠
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA03
2D129BA03
2D129DC16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】風力発電、太陽光発電装置の設置場所は平坦な場所から条件の悪い不整地、急傾斜地での設置が増加している。傾斜地で使用した場合、横転事故が多発している。事故を最小限度に抑えると同時に、作業の効率化を図る。
【解決手段】杭打作業部14、旋回体15、走行体16を備えた杭打機17において、旋回体15のリニアシャフト6上部に固定されたパワーパック4が前記リニアシャフトの伸縮移動に伴って移動し、重心位置の変更を行う。また旋回体15のターンテーブル7下面に固定されたスイングアーム8を油圧機構により、走行体リンク12を軸としてスイングし、旋回体15の水平を傾斜地で維持する。また、走行体16に備えられたクローラー10の軌間を伸縮式とし、伸縮シリンダ11によって谷側にクローラー10が伸長、杭打機本体17の重心位置を下げ、スパイク付きアウトリガー9で杭打機本体17を固定し、傾斜地での安定化を図る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体、旋回体、杭打作業部を有する杭打機において、前記杭打機は、旋回体上部のリニアシャフト上に固定されたエンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等をまとめたパワーパックと、走行体片側に備えられた走行体リンクと、一端が旋回体下部のターンテーブル下面に固定され、他端が前記走行体リンクに連結されたスイングアームと、前記走行体リンクを備えた走行体に備え付けられた伸縮シリンダに接続されたクローラーと、前記クローラー側面にスパイク付アウトリガーを備えたことを特徴とする傾斜対応杭打機。
【請求項2】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記パワーパックは油圧機構によるリニアシャフトの伸縮移動に伴ってパワーパック自体も移動し、パワーパックの重心位置の移動を可能とすることを特徴とした傾斜対応杭打機。
【請求項3】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記スイングアームは、油圧機構により、前記走行体リンクを軸として、前記旋回体を上下に移動させ、前記旋回体の水平保持を可能とすることを特徴とした傾斜対応杭打機。
【請求項4】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記スイングアームが旋回体上部から走行体リンクにかけて、曲線を描く形状を特徴とした傾斜対応杭打機。
【請求項5】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記スイングアームによる上下移動により、前記パワーパックの水平出しが可能となり、傾斜地において、前記パワーパックに含まれるエンジンのエンジンオイルの片寄、オイルタンク、燃料タンク内部の液体のオーバーフローを防止することを特徴とした傾斜対応杭打機。
【請求項6】
請求項1の傾斜対応杭打機において、スイングアームはその形状故に、前記走行体とクローラーに囲まれた部分に格納されることを特徴とした傾斜対応杭打機。
【請求項7】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記スパイク付きアウトリガーは、走行時、クローラー内部に格納されていることを特徴とする傾斜対応杭打機。
【請求項8】
請求項1の傾斜対応杭打機において、前記伸縮シリンダにより、クローラー軌間を広げ重心位置を下げ、また、前記スパイク付きアウトリガーを軟弱地番での作業の際、油圧機構により左右に伸長、打ち込むことでさらなる安定性を有することを特徴とする傾斜対応杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地における、杭打ち作業の効率化、および、安全性の向上を目指す杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱化石燃料の動きに対応し、風力発電、太陽光発電等の設置が推進されてきた。その中でも、太陽光発電に関する発電装置の設置場所は、海外では大きな平原等を主として設置されてきた。日本国内では元々、ゴルフ場であった平坦な場所を利用して設置している。しかし、近年の開発では、前記のような平坦な場所だけでなく、日本特有の急峻な土地を設置場所とし、条件の悪い不整地、急傾斜地での開発行為も行われている。
従来の杭打機は杭打作業部、旋回体、走行体で構成され、欧米で普及してきた技術である。その技術は平坦地での利用を前提としていた。そのため、傾斜地での使用の際、エンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等、合計700kgを超える重量物が、旋回体上部にそれぞれ固定され、重心位置も固定された状態での作業を強いられてきた。さらに旋回体自体を動かすアクチュエーター等も備えられておらず、旋回体自体の水平を出すことが難しい状況である。さらに前記走行体についても、クローラー幅の変更が出来ず、地盤への杭打機本体の固定器具も存在していない。このような杭打機を傾斜地で使用した場合、横転事故が多発し、最悪の場合、人身に被害が及ぶ場合がある。さらに、水平を出して杭打作業を主に行っている点で、作業効率にも影響を及ぼしている。
【0003】
しかし、多くの企業が欧米製の杭打機に懸念を示しつつも、急速に広まっていった太陽光発電の需要に対応すべく、欧米製の杭打機を使用して現場では作業を行っているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、急傾斜地などで、前記杭打機本体を固定し、重心位置の低下を行い、さらに、旋回体自体を水平に保ちつつ、旋回体上部のエンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等をパワーパックとして、重心位置の移動を可能にし、日本特有の急峻な土地での太陽光発電設備の設置を安全に行えるようにし、作業の効率化を図るものとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明はなされたものであり、つまり、旋回体上部に備えられたエンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等はパワーパックとしてまとめ、旋回体上部のリニアシャフト上に固定し、リニアシャフトの伸縮に伴って移動する構造と成す。また、前記旋回体下部に固定されたターンテーブル下面に、スイングアームの一端を固定し、そのスイングアームのもう一端を走行体片側に固定されたリンクを介して、旋回体と走行体が連結された構造と成す。また、走行体に備えられた伸縮シリンダにより、クローラーを走行体側面へと伸長可能な構造と成す。また、クローラー側面に備えられたスパイク付きアウトリガーで杭打機本体を地盤へと固定可能な構造と成す。
【発明の効果】
【0006】
本発明はこのように構成させたことにより、下記の効果を有する。
【0007】
請求項1のようにリニアシャフトによってパワーパックの重心位置移動を可能とし、スイングアームの上下動による旋回体の移動、走行体に格納された伸縮シリンダの伸長による、クローラーの走行体側面に対する伸長可能構造による軌間調整機能とスパイク付きアウトリガーの稼働、これらの動きにより、従来の欧米製杭打機と比較し、傾斜地での作業において、安全性の確保が格段に行いやすくなり、作業の効率化も促進される。
【0008】
請求項2のように、リニアシャフトを伸縮することで、リニアシャフトに固定されたパワーパック自体も同じように動かすことができる。これにより、従来の欧米製杭打機では、固定されていたエンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等を移動することができ、旋回体上部の重心位置の移動ができるようになる。例えば、傾斜地において、杭打機本体の横転防止、安定性の向上を図りたいときは、山側斜面へとリニアシャフトを伸長、同時に、パワーパック全体の重心位置も山側斜面へと移動することができる。
【0009】
請求項3のように、スイングアームを、上下に移動させることで旋回体自体を上下に移動することが可能となる。これにより、傾斜地での作業において、旋回体自体を水平に保つことが可能となり、従来の欧米製杭打機に比べ横転防止能力、安定性が格段に上がる。
【0010】
請求項4のように、スイングアームが曲線を描く形状をしていることで、旋回体の重量を支えることが可能となる。具体的には応力の集中が発生しないよう、ターンテーブルから走行体リンクまで加重を流すことにより、耐久性の向上に寄与している。
【0011】
請求項5のように、スイングアームの上下移動により旋回体の水平出しが可能となることで、旋回体上部に固定されたパワーパックに含まれるエンジン内部のオイルや、オイルタンクのオイルなど、液体の片寄を防止することができる。具体的には、従来の欧米製杭打機では、傾斜地での作業において、旋回体が傾斜に比例して大きくなってしまい、例えば、エンジン内部のエンジンオイルの片寄によるエンジンの焼付き、オイルタンク内のオイルや燃料タンク内の燃料が偏ってしまいオーバーフローに繋がっていたが、スイングアームの上下移動により旋回体を傾斜地においても水平に保つことが可能となり、パワーパックに含まれる各種液体の片寄を防止、故障の防止へとつなげることができる。
【0012】
請求項6のように、スイングアームは曲線を描いた形状故に、通常の平坦地での走行時は走行体とクローラーに囲まれた部分に完全に格納することが可能である。そのため、走行作業等に支障をきたすことはない。
【0013】
請求項7のように、スパイク付きアウトリガーは走行時、クローラーの内部に格納することができる。このため、走行を阻害することなく、傾斜地等の軟弱地盤において、操縦者の希望するタイミングで稼働することが可能である。
【0014】
請求項8のように、伸縮シリンダがクローラーの軌間を走行体側面方向へと広げることにより、杭打機本体の重心位置を下げることができる。これにより、傾斜地での安定性をさらに確保することが可能となる。また、傾斜地であり、、尚且つ軟弱地盤である場合には、スパイク付きアウトリガーを稼働させることで、クローラーの側面より伸長したスパイク付きアウトリガーが軟弱地盤へと打ち込まれ、杭打機本体を固定、傾斜地での安定性と作業の効率性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の杭打機を傾斜地で使用した場合の側面を示した説明図ある。また、図2は、本発明の平坦地での側面を示した説明図である。杭打機本体17は杭打作業部14、旋回体15、走行体16を備えている。杭打作業部14は打設機1または掘削機2と、前記打設機1または掘削機2を上下に移動させるリーダ3で構成されている。旋回体15上部にはリニアガイド5、リニアシャフト6を備えている。リニアシャフト6は油圧機構を介してリニアガイド5に内蔵されている。そのリニアガイド5は旋回体15上部に固定されている。平坦地での走行や杭打機17本体の搬送の際などの場合、リニアシャフト5は、リニアガイド6の内部に油圧機構を用いて収納することが可能である。リニアシャフト収納後、杭打機本体17は図2のような形になる。図1のリニアシャフト5上部にはエンジン、オイルタンク、燃料タンク、バッテリー等をまとめたパワーパック4が固定されている。リニアシャフト5の伸縮に伴って、リニアシャフト上部のパワーパックは図1のアルファベットAの矢印の方向に動くことができる。旋回体15の下部にはターンテーブル7が固定されている。また、リニアシャフト6の一端はリンク13を介して杭打作業部18と連結されている。これらパワーパック4、リニアガイド5、リニアシャフト6、ターンテーブル7、リンク13を構成要素として、旋回体15は成り立つ。スイングアーム8の一端は旋回体15下部のターンテーブル7の下面に固定されている。もう一端は走行体16の片側に取り付けられた走行体リンク12を介して、走行体16に連結されている。走行体16内部には格納された伸縮シリンダ11がある。この伸縮シリンダ11の一端はクローラー10に固定されている。さらに、平坦地での走行の際や杭打機17本体の搬送の際などの場合、図2のように、スパイク付きアウトリガー9はクローラー内部に格納されている。スパイク付きアウトリガー9、伸縮シリンダ11はそれぞれに内蔵された油圧機構により稼働する。
【0016】
次に本発明の作用について説明する。先ず、作業者が傾斜地において杭打作業部14を稼働させ杭打作業を行うとき、走行体16に格納された伸縮シリンダ11を油圧機構によって、クローラー10を図1の矢印Cの走行体側面方向に伸長し、クローラー10軌間を拡大する。また、クローラー10の内部に収納されたスパイク付きアウトリガー9も油圧機構によりクローラー10側面より伸長、地盤に向けて打ち込むことができる。
【0017】
次に、スイングアーム8を油圧機構により稼働させることで、走行体リンク12を支点として、旋回体15を図1の矢印Bのように、上下移動することができる。
【0018】
また、リニアシャフト6は油圧機構により図1の矢印Aの方向に伸縮可能とする。リニアシャフト6の図1山側方向への伸長により、リニアシャフト6自体に固定されたパワーパック4全体も、リニアシャフト4に伴って山側の方向へ移動する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の杭打機を傾斜地で使用した場合の側面を示した説明図である。
図2】本発明の平坦地での側面を示した説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 打設機
2 掘削機
3 リーダ
4 パワーパック
5 リニアガイド
6 リニアシャフト
7 ターンテーブル
8 スイングアーム
9 スパイク付きアウトリガー
10 クローラー
11 伸縮シリンダ
12 走行体リンク
13 リンク
14 杭打作業部
15 旋回体
16 走行体
17 杭打機本体
図1
図2