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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003335
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ナット装置用間座
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20221228BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20221228BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20221228BHJP
   F16B 3/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 Z
F16B7/20 Z
F16B3/00 H
F16B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104445
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 幹史
【テーマコード(参考)】
3J039
3J062
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB01
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA25
3J062BA26
3J062BA40
3J062CD22
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】ホルダ内での回転を規制できるナット装置用間座を提供する。
【解決手段】ナット装置用間座は、筒状のホルダ内に配置された複数のナット部の間に介在するナット装置用間座である。ホルダの内周面及びナット部の外周面のうち一方には、径方向に突出する凸部が設けられている。ホルダの内周面及びナット部の外周面のうち他方には、径方向に窪み、凸部が嵌合する凹部が設けられている。ナット装置用間座は、環状の間座本体と、間座の外周面には、ホルダの内周面に設けられた凸部又は凹部に対応する間座用凹部又は間座用凸部が設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のホルダ内に配置された複数のナット部の間に介在するナット装置用間座であり、
前記ホルダの内周面及びナット部の外周面のうち一方には、径方向に突出する凸部が設けられ、
前記ホルダの内周面及びナット部の外周面のうち他方には、径方向に窪み、前記凸部が嵌合する凹部が設けられ、
前記ナット装置用間座は、
環状の間座本体と、
前記間座の外周面には、前記ホルダの前記内周面に設けられた前記凸部又は前記凹部に対応する間座用凹部又は間座用凸部が設けられている
ナット装置用間座。
【請求項2】
筒状のホルダ内に配置された複数のナット部の間に介在するナット装置用間座であり、
前記ナット部は、
環状を成すナット本体と、
前記ナット本体を軸方向に貫通し、棒状部材が挿入されるナット用保持穴と、
を有し、
前記ナット装置用間座は、
環状の間座本体と、
前記間座本体を前記軸方向に貫通し、前記棒状部材が挿入される間座用保持穴を有し、
前記間座用保持穴は、互いに周方向に離隔しつつ複数設けられている
ナット装置用間座。
【請求項3】
前記間座本体の一部を軸方向に窪ませて成るS溝用凹部を有し、
前記S溝用凹部は、前記軸方向から視て前記ナット部に設けられたS溝と重なる
請求項1又は請求項2に記載のナット装置用間座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット装置用間座に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、回転運動を直線運動に、又は直線運動を回転運動に効率良く変換する装置である。下記特許文献のボールねじ装置のナットは、複数の部品から成るナット装置となっている。このナット装置は、複数のナット部と、筒状のホルダと、ナットの間に配置されるナット装置用間座(以下、単に「間座」と称する場合がある)を備える。ナット部は、環状を成している。また、ナット部の内周面には、1巻の内周軌道面と、内周軌道面の始点と終点とを繋ぐ循環部と、が設けられている。複数のナット部と複数の間座は、ねじ軸が延在する軸方向に交互に配列した状態で、ホルダの内部に配置される。ホルダの端面には、ナット固定部品が固定され、ナット部及び間座がホルダの内部から脱落しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-142376号公報
【特許文献2】特開2009-35216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のナット装置では、ホルダに対して間座の位相が位置決めされていない。よって、ホルダの内部で間座が回転し、騒音や振動が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、回転を規制できるナット装置用間座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の第1態様に係るナット装置用間座は、筒状のホルダ内に配置された複数のナット部の間に介在するナット装置用間座である。前記ホルダの内周面及び前記ナット部の外周面のうち一方には、径方向に突出する凸部が設けられている。前記ホルダの内周面及び前記ナット部の外周面のうち他方には、径方向に窪み、前記凸部が嵌合する凹部が設けられている。前記ナット装置用間座は、環状の間座本体と、前記間座の外周面には、前記ホルダの前記内周面に設けられた前記凸部又は前記凹部に対応する間座用凹部又は間座用凸部が設けられている。
【0007】
ナット装置用間座は、間座用凹部(又は間座用凸部)がホルダの凸部(又は凹部)に嵌合し、ホルダに回転しないように固定される。よって、騒音や振動の発生が抑制される。また、ナット部を固定するための凸部(又は凹部)を利用としているため、ホルダに対し特別な加工等を要求しない。よって、ナット装置の製造が容易となる。
【0008】
本開示の第2態様に係るナット装置は、筒状のホルダ内に配置された複数のナット部の間に介在するナット装置用間座である。前記ナット部は、環状を成すナット本体と、前記ナット本体を軸方向に貫通し、棒状部材が挿入されるナット用保持穴と、を有する。前記ナット装置用間座は、環状の間座本体と、前記間座本体を前記軸方向に貫通し、前記棒状部材が挿入される間座用保持穴を有する。前記間座用保持穴は、互いに周方向に離隔しつつ複数設けられている。
【0009】
ナット部材とナット装置用間座は、棒状部材により連結する。よって、複数のナット部材のうち1つでもホルダに固定できれば、間座はホルダ内で回転せず、騒音や振動の発生が抑制される。また、間座の間座用保持穴は、周方向に複数設けられている。よって、間座に対して軸方向の両側に配置されたナット部と連結するための第2棒状部材を、互いに異なる間座用保持穴に嵌合させる。これにより、間座に対し軸方向の一方側に配置されたナット部のS溝と、軸方向の他方側に配置されたナット部のS溝は、ねじ軸の中心から視て異なる方向に配置できる。以上から、ナット部の位相を管理することができる。
【0010】
第1態様及び第2態様のナット装置用間座の望ましい態様として、前記間座本体の一部を軸方向に窪ませて成るS溝用凹部を有する。前記S溝用凹部は、前記軸方向から視て前記ナット部に設けられたS溝と重なる。
【0011】
ホルダ内で、ナット部は、軸方向に配置されたナット装置用間座から軸方向の荷重を受ける。一方、ボールがナット部のS溝を転動する場合、ねじ軸の外周軌道面から離脱している。つまり、ナット本体のうちのS溝と重なる部分は、ボールを介してねじ軸に支持されておらず、支持剛性が低い。よって、高荷重が作用すると変形する可能性がある。そして、前記構成によれば、ナット部のナット本体のうちS溝が設けられた部分は、間座のS溝用凹部と重なっているため、間座から軸方向の荷重を受けない。よって、ナット本体の変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のナット装置用間座は、ホルダ内での回転が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。
図2図2は、実施形態1のホルダを斜視した斜視図である。
図3図3は、実施形態1のナット部を斜視した斜視図である。
図4図4は、図1のIV-IV線矢視断面図である。
図5図5は、図1のV-V線矢視断面図である。
図6図6は、図1のVI-VI線矢視断面図である。
図7図7は、実施形態1の間座の斜視図である。
図8図8は、図1のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9図9は、変形例1に係るナット装置においてホルダとナット部の断面図である。
図10図10は、変形例1に係るナット装置においてホルダと間座の断面図である。
図11図11は、変形例2のホルダの斜視図である。
図12図12は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。
図13図13は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。
図14図14は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第3ナット部と重なるように切った断面図である。
図15図15は、変形例2において2つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。
図16図16は、変形例2において2つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。
図17図17は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。
図18図18は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。
図19図19は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第3ナット部と重なるように切った断面図である。
図20図20は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第4ナット部と重なるように切った断面図である。
図21図21は、実施形態2のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。
図22図22は、実施形態2のホルダを第1方向から視た側面図である。
図23図23は、実施形態2のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。
図24図24は、変形例3のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。
図25図25は、変形例4に係る間座の斜視図である。
図26図26は、変形例4に係る間座の側面図である。
図27図27は、実施形態3のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。
図28図28は、実施形態3のホルダを第1方向から視た側面図である。
図29図29は、実施形態3のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。図2は、実施形態1のホルダを斜視した斜視図である。図3は、実施形態1のナット部を斜視した斜視図である。図4は、図1のIV-IV線矢視断面図である。図5は、図1のV-V線矢視断面図である。図6は、図1のVI-VI線矢視断面図である。図7は、実施形態1の間座の斜視図である。図8は、図1のVIII-VIII線矢視断面図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態1に係るボールねじ装置100は、ナット装置101と、外周面に外周軌道面102aが設けられたねじ軸102と、複数のボール103と、を備える。以下の説明で、ねじ軸102と平行な方向を軸方向と称する。
【0017】
本実施形態のボールねじ装置100は、ナット装置101が図示しないハウジングに回転自在に固定される。ナット装置101には、図示しないモータで生成された回転運動が伝達され、ねじ軸102の中心軸O周りに回転する。これにより、ねじ軸102の一端102bが第1方向X1、又はねじ軸102の他端102cが指す第2方向X2に移動する。なお、上記したボールねじ装置100の使用方法は一例であり、ねじ軸102にモータからの回転運動が伝達され、ナット装置101が第1方向X1又は第2方向X2に移動するように使用してもよい。若しくは、直線運動を回転運動に変換するように使用してもよい。
【0018】
図1に示すように、ナット装置101は、ホルダ1と、ホルダ1の内部に収容される複数のナット部2と、ナット部2の間に配置される複数の間座3と、ホルダ1からナット部2及び間座3の脱落を防止する蓋部4、5を備える。
【0019】
図2に示すように、ホルダ1は、筒状のホルダ本体10と、凸部11と、を備える。ホルダ本体10の内周面12及び外周面13は、軸方向から視て円形状となっている。つまり、ホルダ本体10は円筒状を成している。凸部11は、ホルダ本体10の内周面12に設けられた突起であり、軸方向に延在している。凸部11は、軸方向から視て四角形状を成している。よって、凸部11は、周方向を向く一対の側面11a、11aを有している。凸部11の軸方向の長さは、ホルダ本体10の軸方向の長さよりも短い。このため、ホルダ本体10の内周面12のうち第1方向X1の端部は、凸部11が設けられていない円形状の第1嵌合部14となっている。また、ホルダ本体10の内周面12のうち第2方向X2の端部には、凸部11が設けられていない円形状の第2嵌合部15となっている。
【0020】
図1に示すように、実施形態において、ナット部2は、3つ設けられている。以下、第1方向X1から第2方向X2に配列する順に、第1ナット部2A、第2ナット部2B、第3ナット部2Cと称する。次に、第1ナット部2A、第2ナット部2B、及び第3ナット部2Cの詳細を説明するが、第1ナット部2Aと第2ナット部2Bと第3ナット部2Cは、同一形状である。よって、第1ナット部2Aを代表例として挙げ、第2ナット部2Bと第3ナット部2Cの説明は省略する。
【0021】
図3に示すように、ナット部2は、環状を成すナット本体20と、内周軌道面21と、S溝22と、凹部23と、備える。ナット本体20は、軸方向から視て、内周面及び外周面が円形状を成している。内周軌道面21は、ねじ軸102の外周軌道面102aと対向するらせん溝である。そして、内周軌道面21と外周軌道面102aとの間はボール103が転動する軌道を成している。また、内周軌道面21は、1巻分となっている。S溝22は、内周軌道面21の終点に到達したボール103を、内周軌道面21の始点に戻す循環部である。なお、S溝22によれば、コマ式を採用した場合よりもナット本体20の軸方向の厚みを薄くすることができる。また、ナット本体20の外周面の研磨が可能となり、ホルダ1に精度良く嵌合させることができる。凹部23は、ナット本体20の外周面の一部を径方向に内側に窪ませることで形成された空間である。
【0022】
凹部23は、軸方向から視て四角形状を成し、凸部11の断面形状と同一である。凹部23の周方向の両側には、径方向に延びる一対の側面23a、23aが設けられている。本実施形態の凹部23は、ナット部2の数に対応して3つ設けられている。3つの凹部23は、120°間隔で配置されている。よって、3つの凹部23は、互いに周方向に離隔して配置されている。
【0023】
3つの凹部23のうち1つの凹部23は、中心軸Oを中心にS溝22と点対称となる位置、つまりS溝22から180°回転させた位置に配置されている。このため、S溝22は、中心軸Oから視て凹部23のそれぞれと重ならないように(異なる位相となるように)配置されている。なお、S溝22と凹部23とが同位相となると、S溝22と凹部23との間の肉厚が小さくなり、強度が極端に弱くなる可能性がある。よって、本実施形態のナット部2は、十分な強度を有している。
【0024】
以下、3つの凹部23のうち、S溝と180°位相がずれている凹部23を第1凹部23Aと称する。そして、ナット部2を第1方向X1から視て、第1凹部23Aから左回り方向(図2の矢印Aを参照)に配置される順に、第2凹部23B、第3凹部23Cと称する。
【0025】
次に、各ナット部2とホルダ1との関係を図4から図6を参照しながら説明する。なお、各ナット部2において中心軸Oから視てS溝22が配置される方向を明確にするため、S溝22と重なる領域にドットを付している。
【0026】
図4から図6に示すように、各ナット部2の凹部23には、ホルダ1の凸部11が嵌合している。そして、各凹部23の一対の側面23a、23aは、凸部11の一対の側面11a、11aと当接している。このため、各ナット部2は、回転不能にホルダ1に固定されている。
【0027】
また、凸部11が嵌合する各ナット部2の凹部23は、それぞれ異なっている。詳細には、図4に示すように、ホルダ1の凸部11は、第1ナット部2Aの第2凹部23Bに嵌合している。図5に示すように、ホルダ1の凸部11は、第2ナット部2Bの第1凹部23Aに嵌合している。図6に示すように、ホルダ1の凸部11は、第3ナット部2Cの第3凹部23Cに嵌合している。よって、第1ナット部2Aと第2ナット部2Bと第3ナット部2Cのそれぞれは、凸部11と嵌合する凹部23がそれぞれ異なっている。このため、各ナット部2のS溝22は、120°間隔で配置され、中心軸Oから視て異なる方向となっている。
【0028】
図1に示すように、間座3は、ナット部2の間に配置され、ナット部2の軸方向の位置を調整するためのものである。なお、間座3を弾性体で製造したり、若しくは間座3の厚みを調整したりすることで、各ナット部2に予圧を与えるように組み付けてもよく、本開示において特に限定はない。図7に示すように、間座3は、環状の間座本体30と、1つの間座用凹部31と、を備える。間座本体30は、平板状となっている。なお、本開示においては、特に間座本体30の形状に限定はなく、いわゆる皿ばねなど、円錐状となっていてもよい。間座用凹部31は、間座本体30の外周部を窪ませて成る空間である。間座用凹部31は、軸方向から視て凸部11と同一形状であり、四角形状を成している。間座用凹部31の周方向両側には、径方向に延びる一対の側面31a、31aが設けられている。図8に示すように、間座用凹部31には、ホルダ1の凸部11が嵌合している。そして、間座用凹部31の一対の側面31a、31aは、凸部11の一対の側面11a、11aと当接している。このため、各間座3は、回転不能にホルダ1に固定されている。
【0029】
図1に示すように、蓋部4、5は、円盤状の部品である。蓋部4、5の外径は、ホルダ本体10の内径よりも僅かに大きい。そして、蓋部4、5は、ホルダ本体10の第1嵌合部14、第2嵌合部15に圧入され、ホルダ1と一体化している。
【0030】
以上、実施形態1の間座3は、筒状のホルダ1内に配置された複数のナット部2の間に介在するナット装置用間座である。ホルダ1の内周面12及びナット本体20の外周面のうち一方には、径方向に突出する凸部11が設けられている。ホルダ1の内周面12及びナット本体20の外周面のうち他方には、径方向に窪み、凸部11が嵌合する凹部23が設けられている。なお、本実施形態では、ホルダ1の内周面12に凸部11が設けられ、ナット本体20の外周面に凹部23が設けられている。間座3は、環状の間座本体30と、間座3の外周面には、ホルダ1の内周面に設けられた凸部11に対応する間座用凹部31が設けられている。
【0031】
実施形態1の間座3によれば、間座用凹部31がホルダ1の凸部11に嵌合し、ホルダ1に回転しないように固定される。よって、騒音や振動の発生が抑制される。また、ナット部2を固定するための凸部11を利用としているため、ホルダ1に対し特別な加工等を要求しない。よって、ナット装置101の製造が容易となる。
【0032】
以上、実施形態1について説明したが、本開示は実施形態1で示したものに限定されない。実施形態1のホルダ1は凸部11が設けられているが、本開示の間座は、ホルダ1に凹部が設けられていても適用することができる。そのほか、ナット装置101においては、凸部11が取り外し可能となっているものがある。以下、変形例1では、ホルダ1の方に凹部23が設けられたナット装置101に適用した場合の間座について説明する。変形例2では、凸部11が取り外し可能なナット装置101に適用した場合を説明する。
【0033】
(変形例1)
図9は、変形例1に係るナット装置においてホルダとナット部の断面図である。図10は、変形例1に係るナット装置においてホルダと間座の断面図である。図9に示すように、変形例1のナット装置101Aのホルダ41は、1つの凸部11(図2参照)を備えていない点で実施形態1のホルダ1と相違する。また、ホルダ41は、3つの凹部43、44、45を備えている点で、実施形態1のホルダ1と相違する。3つの凹部43、44、45は、120°間隔で配置されている。一方で、変形例1のナット装置101Aのナット部42は、3つの凹部(図3参照)を備えていない点で実施形態1のナット部2と相違する。また、ナット部42は、凸部46を備えている点で、実施形態1のナット部2と相違する。
【0034】
このような変形例1において、図9に示すように、3つのナット部42のうち1つ目のナット部42の凸部46を、ホルダ41の凹部43に嵌合させる。特に図示しないが、2つ目のナット部42の凸部46を、ホルダ41の凹部44に嵌合させる。特に図示しないが、3つ目のナット部42の凸部46を、ホルダ41の凹部45に嵌合させる。これにより、各ナット部42のS溝22の位置を、中心軸Oから視て異なる方向とすることができる。以上から、変形例1のナット装置101Aであっても各ナット部2の位相を管理することができる。
【0035】
図10に示すように、変形例1に係る間座3Aは、間座本体30と、間座用凸部32と、を備えている。間座用凸部32は、間座本体30の外周部から径方向の外側に突出している。間座用凸部32は、ホルダ41の凹部43、44、45と同一形状である。そして、間座用凸部32をホルダ41の凹部43、44、45のいずれか(図面においては、凹部43に嵌合している状態を図示)に嵌合させることで間座3の回転が規制される。
【0036】
(変形例2)
図11は、変形例2のホルダの斜視図である。図12は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。図13は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。図14は、変形例2において3つのナット部を備えるナット装置を第3ナット部と重なるように切った断面図である。図15は、変形例2において2つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。図16は、変形例2において2つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。図17は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第1ナット部と重なるように切った断面図である。図18は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第2ナット部と重なるように切った断面図である。図19は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第3ナット部と重なるように切った断面図である。図20は、変形例2において4つのナット部を備えるナット装置を第4ナット部と重なるように切った断面図である。
【0037】
図11に示すように、変形例2のナット装置101Bは、ホルダ1の代わりにホルダ51を備えている。なお、変形例2のナット部2は、実施形態1と同じものであり、説明を省略する。
【0038】
図11に示すように、ホルダ51は、円筒状のホルダ本体52と、棒状部材53と、を備える。ホルダ本体52の内周面54には、凸部用凹部55が設けられている。凸部用凹部55は、軸方向に延びており、軸方向から視て四角形状を成している。凸部用凹部55は、4つ設けられている。4つの凸部用凹部55は、90°間隔で配置されている。
【0039】
棒状部材53は、四角柱状の部品である。棒状部材53は、凸部用凹部55に嵌合されている。棒状部材53の断面形状は、ホルダ51の凸部用凹部55よりも大きい。言い換えると、図12に示すように、棒状部材53は、径方向の外側の半分が凸部用凹部55に嵌合し、径方向の内側の半分がホルダ本体52の内周面よりも径方向内側に突出する。よって、凸部用凹部55と棒状部材53とが協同し凸部を構成している。なお、棒状部材53の軸方向の両端部は、ホルダ51に圧入された蓋部4、5(図1参照)と当接し、軸方向に移動しない。
【0040】
また、図11に示す棒状部材53は、軸方向に連続しているが、軸方向に分割された複数の棒状部材を使用してもよい。つまり、棒状部材53を軸方向に4分割し、4つの凸部用凹部55のそれぞれに嵌合させてもよい。
【0041】
上記した構成によれば、ナット部2の数に対応してナット部2の位相を適切に管理できる。以下、ナット部2の数に対応したナット部2の配置(位相)について、図12から図20を参照しながら説明する。
【0042】
最初に、ナット装置101Bのナット部2が3つの場合(第1ナット部2A、第2ナット部2B、第3ナット部2Cを備える場合)を説明する。なお、説明の都合上、4つの凸部用凹部55を、第1凸部用凹部55A、第2凸部用凹部55B、第3凸部用凹部55C、及び第4凸部用凹部55Dと称する。
【0043】
図12から図14に示すように、棒状部材53は、軸方向に連続してもの使用する。棒状部材53をホルダ本体52の第1凸部用凹部55Aに嵌合させる。図12に示すように、第1ナット部2Aの第2凹部23Bに、棒状部材53を嵌合させる。図13に示すように、第2ナット部2Bの第1凹部23Aに、棒状部材53を嵌合させる。図14に示すように、第3ナット部2Cの第3凹部23Cに、棒状部材53を嵌合させる。これにより、各ナット部2のS溝22は、120°間隔で配置される。
【0044】
次にナット装置101Bのナット部2が2つの場合(第1ナット部2A、第2ナット部2Bを備える場合)を説明する。図15図16に示すように、棒状部材53は、2つに分割された第1棒状部材53A、第2棒状部材53Bを使用する。図15に示すように、第1棒状部材53Aを第1凸部用凹部55Aに嵌合させる。図16に示すように、第2棒状部材53Bを第3凸部用凹部55Cに嵌合させる。よって、第1棒状部材53Aと第2棒状部材53Bの位置が180°異なるように配置する。
【0045】
図15に示すように、第1ナット部2Aの第1凹部23Aに第1棒状部材53Aを嵌合させる。図16に示すように、第2ナット部2Bの第1凹部23Aを嵌合させる。これにより、各ナット部2のS溝22は、180°間隔で配置され、周方向に均等に配置される。なお、第1棒状部材53Aの第2方向X2の端面は、第2ナット部2Bの第1方向X1の端面に当接する(図16の仮想線参照)。第2棒状部材53Bの第1方向X1の端面は、第1ナット部2Aの第2方向X2の端面に当接する(図15の仮想線参照)。よって、第1棒状部材53A、第2棒状部材53Bは軸方向に移動しない。
【0046】
次にナット装置101Bのナット部2が4つの場合(第1ナット部2A、第2ナット部2B、第3ナット部2C、第4ナット部2Dを備える場合)を説明する。図17から図20に示すように、棒状部材53は、4つに分割された第1棒状部材53A、第2棒状部材53B、第3棒状部材53C、第4棒状部材53Dを使用する。図17に示すように、第1棒状部材53Aを第1凸部用凹部55Aに嵌合させる。図18に示すように、第2棒状部材53Bを第2凸部用凹部55Bに嵌合させる。図19に示すように、第3棒状部材53Cを第3凸部用凹部55Cに嵌合させる。図20に示すように、第4棒状部材53Dは第4凸部用凹部55Dに嵌合させる。つまり、90°間隔で、第1棒状部材53A、第2棒状部材53B、第3棒状部材53C、第4棒状部材53Dを配置する。
【0047】
図17に示すように、第1ナット部2Aの第1凹部23Aに第1棒状部材53Aを嵌合させる。図18に示すように、第2ナット部2Bの第1凹部23Aに第2棒状部材53Bを嵌合させる。図19に示すように、第3ナット部2Cの第1凹部23Aに第3棒状部材53Cを嵌合させる。図20に示すように、第4ナット部2Dの第1凹部23Aに第4棒状部材53Dを嵌合させる。これにより、各ナット部2のS溝22は、90°間隔で配置される。
【0048】
上記したナット装置101Bにおいては、実施形態1と同じ間座3(図7参照)が用いられる。上記したが間座3は、1つの間座用凹部31を備える。そして、棒状部材53が1つの場合(ナット部2が3つの場合、図12から図14参照)、棒状部材53に間座用凹部31を嵌合させる。また、棒状部材53が2つの場合(ナット部2が2つの場合、図15図16参照)、第1棒状部材53A又は第2棒状部材53Bに間座用凹部31を嵌合させる。また、棒状部材53が4つの場合(ナット部2が4つの場合、図17から図20参照)、軸方向に隣り合うナット部2の凹部23に嵌合する棒状部材に間座用凹部31を嵌合させる。これにより、間座3の回転が規制される。
【0049】
次の実施形態2では、ナット装置が異なる場合の間座について説明する。
【0050】
(実施形態2)
図21は、実施形態2のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。図22は、実施形態2のホルダを第1方向から視た側面図である。図23は、実施形態2のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。図21に示すように、実施形態2のナット装置101Cは、筒状のホルダ60と、1つの蓋部61と、複数のナット部70と、棒状部材80と、複数の間座90と、を備える。
【0051】
実施形態2のホルダ60は、ホルダ本体62と、ホルダ本体62の内周面62aで第1方向X1の端部から径方向内側に突出する突出部63と、突出部63を軸方向に貫通するホルダ用保持穴64と、ホルダ本体62の内周面62aで第2方向X2の端部に設けられた雌ねじ部65と、を備える。よって、実施形態2のホルダ60は、凸部11(図1図2参照)を備えていない点で実施形態1のホルダ1と相違する。また、実施形態2のホルダ60は、突出部63、ホルダ用保持穴64、及び雌ねじ部65を備えている点で、実施形態1のホルダ1と相違する。
【0052】
図22に示すように、ホルダ本体62の内周面62aと外周面62bは円形状を成している。突出部63は、ホルダ本体62の内周面62aに沿って周方向に延在し、環状を成している。ホルダ用保持穴64は、棒状部材80の断面形状を同一形状であり、軸方向から視て非円形状を成している。
【0053】
本実施形態において、ホルダ本体62と突出部63は、単一の材料を加工することで製造されており、一体となっている。つまり、ホルダ本体62と突出部63は、分離不能であり、部品点数が削減している。なお、本開示は、ホルダ本体62と突出部63が分離不能のものに限定されない。言い換えると、突出部63とホルダ本体62とが別体であってもよい。これによれば、ホルダ本体の内周側に突出部が設けられていないため、ホルダ本体62の内周側の加工が容易となる。よって、ホルダ本体62の内径を精度良く加工できる。また、ホルダ本体62の製造が容易となり、コストの削減を図れる。なお、ホルダ本体62に対する突出部の固定は、ホルダ本体の内周面と突出部の外周面にねじ溝を形成し、ホルダ本体62に突出部を螺合させる方法が挙げられる。または、軸方向にボルトで締め付け、ホルダ本体62の端面に突出部を固定させる方法が挙げられる。若しくは、ホルダ本体62の内周側に突出部を圧入し、嵌合によって固定される方法が挙げられる。
【0054】
図21に示すように、雌ねじ部65は、ホルダ本体62の内周面62aに設けられたねじ溝である。そして、蓋部61の外周面のねじ溝が螺合し、蓋部61がホルダ本体62に固定される。
【0055】
図23に示すように、実施形態2のナット部70は、ナット本体71と、内周軌道面72と、S溝73と、1つのナット用保持穴74と、を備える。実施形態2のナット部70は、複数の凹部23(図3参照)を備えていない点で、実施形態1のナット部2と相違する。また、実施形態2のナット部70は、1つのナット用保持穴74を備える点で、実施形態1のナット部2と相違する。
【0056】
ナット用保持穴74は、軸方向から視て棒状部材80の断面形状と同一形状である。ナット用保持穴74は、ナット本体71の外周面を径方向内側に窪ませて成る。ナット用保持穴74は、ナット用保持穴74は、中心軸Oを中心にS溝73と点対称となる位置(180°回転させた位置)に配置される。なお、3つのナット部70に関し、第1方向X1から第2方向X2に向かって順に、第1ナット部70A、第2ナット部70B、第3ナット部70Cと称する。
【0057】
図23に示すように、実施形態2の間座90は、間座本体91と、複数の間座用保持穴92と、を備える。よって、実施形態2の間座90は、間座用保持穴92の数が単数でなく複数になっている点で、実施形態1の間座3と相違する(図7参照)。
【0058】
本実施形態の間座用保持穴92は、ナット部70の個数に対応して3つ設けられている。3つの間座用保持穴92は、120°間隔で配置されている。以下、3つの間座用保持穴92に関し、第1間座用保持穴92A、第2間座用保持穴92B、第3間座用保持穴92Cと称する。間座用保持穴92は、間座本体91の外周面を径方向内側に窪ませて成る。本実施形態の間座用保持穴92は、軸方向から視て棒状部材80の断面形状を同一形状である。
【0059】
棒状部材80は、断面形状が非円形状を成す部品であり、軸方向に5つに分割されている。以下、第1方向X1から第2方向X2に向かって順に第1棒状部材81、第2棒状部材82、第3棒状部材83、第4棒状部材84、第5棒状部材85と称する。以下、第1棒状部材81をホルダ用棒状部材と称する場合がある。また、第2棒状部材82、第3棒状部材83、第4棒状部材84、第5棒状部材85を総称して、ナット用棒状部材と称する場合がある。
【0060】
第1棒状部材81は、第1方向X1の端部がホルダ60のホルダ用保持穴64に嵌合し、第2方向X2の端部が第1ナット部70Aのナット用保持穴74に嵌合している。これにより、第1ナット部70Aは、ホルダ60に回転しないように固定される。また、第1方向X1から視て中心軸Oからホルダ用保持穴64が上方にあるとした場合、第1ナット部70AのS溝73は、中心軸Oの下方に配置される(図22のドット領域を参照)。
【0061】
第2棒状部材82は、第1方向の端部が第1ナット部70Aのナット用保持穴74に嵌合し、第2方向の端部が第1間座90Aの第1間座用保持穴92Aに嵌合している。これにより、第1間座90Aは、ホルダ60に回転しないように固定される。
【0062】
第3棒状部材83は、第1方向X1の端部が第1間座90Aの第3間座用保持穴92Cに嵌合し、第2方向X2の端部が第2ナット部70Bのナット用保持穴74に嵌合している。これにより、第2ナット部70Bは、ホルダ60に回転しないように固定される。また、第1方向X1から視て中心軸Oからホルダ用保持穴64が上方にあるとした場合、第2ナット部70BのS溝73は、中心軸Oの左上の方に配置される(図22のドット領域を参照)。
【0063】
第4棒状部材84は、第1方向X1の端部が第2ナット部70Bのナット用保持穴74に嵌合し、第2方向X2の端部が第2間座90Bの第3間座用保持穴92Cに嵌合している。これにより、第2間座90Bは、ホルダ60に回転しないように固定される。
【0064】
第5棒状部材85は、第1方向の端部が第2間座90Bの第2間座用保持穴92Bに嵌合し、第2方向の端部が第3ナット部70Cのナット用保持穴74に嵌合している。これにより、第3ナット部70Cは、ホルダ60に回転しないように固定される。また、第1方向X1から視て中心軸Oからホルダ用保持穴64が上方にあるとした場合、第3ナット部70CのS溝73は、中心軸Oの右上の方に配置される(図22のドット領域を参照)。
【0065】
図21に示すように、第1ナット部70Aの第1方向X1の端面は、ホルダ60の突起に当接している。また、第3ナット部70Cの第2方向X2の端面は、蓋部と当接している。よって、各ナット70部及び間座90はホルダ本体から脱落しない。
【0066】
以上、実施形態2のナット装置101Cでは、第1ナット部70A、第2ナット部70B、第3ナット部70Cは、120°間隔で位相がずれた状態で配置されている。よって、各ナット部のS溝は、120°間隔で配置され、周方向に均等に配置される。
【0067】
以上、実施形態2の間座90は、筒状のホルダ60内に配置された複数のナット部70の間に介在するナット装置用間座である。ナット部70は、環状を成すナット本体71と、ナット本体71を軸方向に貫通し、棒状部材80の一端が挿入されるナット用保持穴75と、を有する。ナット装置用間座は、環状の間座本体91と、間座本体91を軸方向に貫通し、棒状部材80が挿入される間座用保持穴92を有する。間座用保持穴92は、互いに周方向に離隔しつつ複数設けられている。
【0068】
実施形態2によれば、ナット部70の位相を管理しつつ、各間座90の回転を規制することができる。
【0069】
図24は、変形例3のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。なお、実施形態2おいて、棒状部材80の断面形状を非円形状としたが、本開示は特に限定されない。例えば、図24の実施形態2の変形例3のナット装置101Dに示すように、棒状部材80Aとして、円柱状の部材を使用してもよい。そして、棒状部材80Aの形状変更に対応して、ホルダ用保持穴(図24で不図示)、ナット用保持穴75及び間座用保持穴93は、軸方向に貫通する円形状の貫通孔としてもよい。
【0070】
また、実施形態2の棒状部材80は、1つの棒状部材で軸方向に隣り合う2つの部品を連結するようになっているが、本開示の棒状部材で軸方向に連続する3つの部品を連結するようにしてもよい。具体的には、図24に示すように、変形例3の棒状部材80Aは、軸方向に3つの分割されており、第1棒状部材81Aと第2棒状部材82Aと第3棒状部材83Aを備える。第1棒状部材81Aは、ホルダ用保持穴(図24で不図示)と、第1ナット部70Aのナット用保持穴75と、第1間座90Aの間座用保持穴93Bと、を貫通している。第2棒状部材82Aは、第1間座90Aの間座用保持穴93Aと、第2ナット部70Bのナット用保持穴75と、第2間座90Bの間座用保持穴93Aと、を貫通している。第3棒状部材83Aは、第2間座90Bの間座用保持穴93Cと、第3ナット部70Cのナット用保持穴75と、を貫通している。このような棒状部材80Aであっても、各ナット部70の位相を管理しつつ、各ナット部70及び各間座90を回転しないようにホルダに固定できる。
【0071】
図25は、変形例4に係る間座の斜視図である。図26は、変形例4に係る間座の側面図である。次に実施形態2の間座90を変形させた例について説明する。変形例4に係る間座95は、間座本体91と、3つの間座用保持穴92と、複数のS溝用凹部96を備える。よって、変形例4の間座95は、S溝用凹部96を備える点で実施形態2の間座90と相違する。S溝用凹部96は、間座本体91において軸方向を向く側面の一部を窪ませて成る。
【0072】
S溝用凹部96は、120°間隔で設けられている。S溝用凹部96は、間座本体91の両側面(第1方向X1を向く側面91aと第2方向X2を向く側面91b)に設けられている。よって、間座95は、合計6つのS溝用凹部96を備えている。また、S溝用凹部96は、間座用保持穴92に対し、中心軸Oを中心に点対称となる位置(180°回転させた位置)にある。なお、S溝73はナット用保持穴74から180°回転させた位置にある。よって、ナット部70と間座95とが棒状部材80で連結されると、S溝73は、周方向に配置された3つのS溝用凹部96のうち1つと軸方向に重なる。
【0073】
S溝用凹部96は、周方向に延在している。S溝用凹部96の周方向の一端と中心軸Oを結ぶ仮想線L1と、S溝用凹部96の周方向の他端と中心軸Oを結ぶ仮想線L2と、が成す角度はθ1である。また、S溝73の周方向の一端と中心軸Oを結ぶ仮想線L3と、S溝73の周方向の他端と中心軸Oを結ぶ仮想線L4と、が成す角度はθ2である。そして、角度θ1は、角度θ2よりも大きい。つまり、S溝用凹部96の周方向の長さは、軸方向から視たS溝73の周方向の長さよりも長い。よって、軸方向から視ると、S溝73は、S溝用凹部96の領域内に収まっている(図26のS溝73の仮想線を参照)。
【0074】
以上、変形例4によれば、間座95と軸方向に隣り合うナット部70は、間座本体91の側面91a(又は側面91b)から軸方向の押圧荷重を受けるものの、ナット部70の周方向のうちS溝73が設けられている部分は、S溝用凹部96と対向し、押圧荷重が作用しない。
【0075】
以上、変形例4の間座95は、間座本体91の一部を軸方向に窪ませて成るS溝用凹部96を有する。S溝用凹部96は、軸方向から視てナット部70に設けられたS溝73と重なる。
【0076】
ここで、ボールねじ装置100においてボール103がS溝73を転動する際、ボール103はねじ軸102の外周軌道面102a(図1参照)から離脱する。このため、ナット本体71の周方向のうちS溝73が設けられている部分は、ボール103を介してねじ軸102に支持されておらず、支持剛性が低い。そして、変形例4の間座95によれば、ナット部70の周方向のうちS溝73が設けられている部分に押圧荷重が作用しない。よって、ナット部70の周方向のうちS溝73が設けられている部分の変形が回避される。
【0077】
上記した実施形態2と変形例3と変形例4において、ナットは1つの棒状部材によって固定される例を説明したが、次に、ナットが複数の棒状部材で固定される実施形態3について説明する。
【0078】
(実施形態3)
図27は、実施形態3のボールねじ装置を軸方向に切った断面図である。図28は、実施形態3のホルダを第1方向から視た側面図である。図29は、実施形態3のナット部、間座、及び棒状部材を分解した分解斜視図である。実施形態3のナット装置101Eは、ホルダ110と、蓋部111と、3つのナット部120と、3つの棒状部材130と、2つの間座140と、を備える。
【0079】
実施形態3のホルダ110は、ホルダ本体112と、突出部113と、複数のホルダ用保持穴114(図25参照)と、雌ねじ部115と、を備える。よって、実施形態3のホルダ110は、1つのホルダ用保持穴64(図21参照)の代わりに複数のホルダ用保持穴114を有している点で、実施形態2のホルダ60と相違する。
【0080】
図25に示すように、実施形態3のホルダ用保持穴114は、120°間隔で配置され、周方向に等間隔となっている。3つ設けられている点で、実施形態2と相違する。3つのホルダ用保持穴114は、120°間隔で配置されている。ホルダ用保持穴114は、軸方向から視て円形状を成し、棒状部材130の断面形状と同一形状である。
【0081】
ナット部120は、ナット本体121と、内周軌道面122と、S溝123と、3つのナット用保持穴124を備える。よって、実施形態3のナット部120は、1つのナット用保持穴74(図22参照)に変えて3つのナット用保持穴124を有している点が実施形態2のナット部70と相違する。ホルダ用保持穴114は、120°間隔で配置されている。軸方向から視て円形状を成し、棒状部材の断面形状と同一形状となっている。
【0082】
実施形態3の間座140は、実施形態2の間座90と同じものである。間座140は、環状の間座本体141と、3つの間座用保持穴142と、を備える。間座用保持穴142は、120°間隔で配置されている。間座本体141は、軸方向から視て円形状を成し、棒状部材の断面形状と同一形状となっている。
【0083】
棒状部材130は、円柱状の部品である。棒状部材130の軸方向の長さは、軸方向に配列したホルダ110の突出部113と3つのナット部120と2つの間座140を併せた軸方向の長さと同じである。よって、実施形態3の棒状部材130は、実施形態2の棒状部材よりも長尺であり、軸方向に分割されていない。
【0084】
棒状部材130のそれぞれは、ナット部120のナット用保持穴124と間座140の間座用保持穴142とを貫通している。そして、棒状部材130の第1方向の端部は、ホルダ110のホルダ用保持穴114に嵌合している。これにより、各ナット部120及び間座140は、ホルダ110に対し回転しないように固定される。
【0085】
また、3つのナット部120(第1ナット部120A、第2ナット部120B、及び第3ナット部120C)は、120°間隔で位相がずれた状態で配置されている。よって、各ナット部のS溝は、120°間隔で配置され、周方向に均等に配置される。また、各ナット部と各間座は、複数の棒状部材で固定され、固定強度が高い。
【0086】
実施形態3のナット装置101Eによっても、中心軸Oから視て異なる方向にS溝123を配置でき、ナット部120の位相を管理することができる。
【0087】
なお、実施形態3では、ナット部120の数が3つの場合を説明したが、本開示においては、ナット部120の数を例えば2つや4つに変更してもよい。また、ナット部120の数を変更した場合、そのナット部120の数の変更に対応して、棒状部材130とナット用保持穴124とホルダ用保持穴114も変更し、ナット部120の数と同数にする必要がある。
【0088】
以上、各実施形態及び各変形例を説明したが、本開示においてS溝用凹部96の形状、大きさについては特に限定されない。例えば、変形例4のS溝用凹部96は、間座95の側面91a、91bのうち、内周側を窪ませているが、外周側も窪ませてもよい。また、変形例4のS溝用凹部96は、実施形態1や変形例1で示した間座3、3Aに適用してもよい。また、1つの側面に対して設けられるS溝用凹部96の個数についても、ナット部の数に合わせて適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0089】
1、41、51、60、110 ホルダ
2、42、70、120 ナット部
3、90、95、140 間座(ナット装置用間座)
4、5、111 蓋部
10、52、62、112 ホルダ本体
11、46 凸部
20、71、121 ナット本体
21、72、122 内周軌道面
22、73、123 S溝
23、43、44、45 凹部
30、91、141 間座本体
31 間座用凹部
53、80、80A 棒状部材
55 凸部用凹部
63 突出部
64、114 ホルダ用保持穴
74、124 ナット用保持穴
81、81A 第1棒状部材
82、82A 第2棒状部材
83、83A 第3棒状部材
84 第4棒状部材
85 第5棒状部材
92、142 間座用保持穴
96 S溝用凹部
100 ボールねじ装置
101、101A、101B、101C、101D、101E ナット装置
102 ねじ軸
103 ボール
130 棒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29