IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社CICSの特許一覧 ▶ 今堀 良夫の特許一覧

特開2023-33358アミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法用化合物
<>
  • 特開-アミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法用化合物 図1
  • 特開-アミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法用化合物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033358
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】アミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法用化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/04 20060101AFI20230303BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20230303BHJP
【FI】
C07F5/04 C
C07F5/02 C CSP
A61P25/28
A61K31/69
A61K41/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212261
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019071539の分割
【原出願日】2019-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2018072607
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018200404
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510213233
【氏名又は名称】株式会社CICS
(71)【出願人】
【識別番号】594148210
【氏名又は名称】今堀 良夫
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今堀 良夫
(72)【発明者】
【氏名】伏見 有貴
(72)【発明者】
【氏名】竹吉 艶子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】柏原 賢一
(57)【要約】
【課題】アミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑内での貯留性を有し、一方、脳内老人斑以外の部位には残留しにくい特性を持つホウ素担体化合物を提供する。
【解決手段】フラボン誘導体、クロモン誘導体、クマリン誘導体、オーロン誘導体、カルコン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体及びスチルベン誘導体において、ホウ素-10原子を各誘導体に含有するアミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患に対するホウ素中性子捕捉療法用化合物及びその用途。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IV):
【化1】

〔式中、R、R、R及びRの1つは、ジヒドロキシボリル基又は4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基を表し、その他は水素原子を表し、あるいは、RとR、RとR、又はRとRは共同して-B(OH)-OCH-を表し、その他の2つは水素原子を表し;Rは2-ジメチルアミノフェニル基、2-メチルアミノフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ジメチルアミノフェニル基、3-メチルアミノフェニル基、3-アミノフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、5-ジメチルアミノピリジン-2-イル基、5-メチルアミノピリジン-2-イル基、5-メトキシピリジン-2-イル基、6-ジメチルアミノピリジン-3-イル基、6-メチルアミノピリジン-3-イル基又は6-メトキシピリジン-3-イル基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
一般式(IV)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である請求項1記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
一般式(IV)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である請求項1記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
一般式(IV)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基又は4-アミノフェニル基である請求項1記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
一般式(IV)において、R及びRが水素原子であり、R及びRの一方がジヒドロキシボリル基又は4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基であり、他方が水素原子であり、あるいは、RとRが共同して-B(OH)-OCH-を表す請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
一般式(III):
【化2】

〔式中、R、R、R及びRの1つは、ジヒドロキシボリル基又は4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基を表し、その他は水素原子を表し、あるいは、RとR、RとR、又はRとRは共同して-B(OH)-OCH-を表し、その他の2つは水素原子を表し;Rは2-ジメチルアミノフェニル基、2-メチルアミノフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ジメチルアミノフェニル基、3-メチルアミノフェニル基、3-アミノフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、5-ジメチルアミノピリジン-2-イル基、5-メチルアミノピリジン-2-イル基、5-メトキシピリジン-2-イル基、6-ジメチルアミノピリジン-3-イル基、6-メチルアミノピリジン-3-イル基又は6-メトキシピリジン-3-イル基を表し;立体配置はE配置及びZ配置のいずれでもよい。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
一般式(III)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である請求項7記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
一般式(III)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である請求項7記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
一般式(III)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基又は4-アミノフェニル基である請求項7記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
一般式(III)において、R及びRが水素原子であり、R及びRの一方がジヒドロキシボリル基又は4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基であり、他方が水素原子であり、あるいは、RとRが共同して-B(OH)-OCH-を表す請求項7~10のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である請求項7~11のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
一般式(I):
【化3】

〔式中、R、R、R及びRの1つは、ジヒドロキシボリル基又は4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基を表し、その他は水素原子を表し、あるいは、RとR、RとR、又はRとRは共同して-B(OH)-OCH-を表し、その他の2つは水素原子を表し;Rは2-ジメチルアミノフェニル基、2-メチルアミノフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ジメチルアミノフェニル基、3-メチルアミノフェニル基、3-アミノフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、5-ジメチルアミノピリジン-2-イル基、5-メチルアミノピリジン-2-イル基、5-メトキシピリジン-2-イル基、6-ジメチルアミノピリジン-3-イル基、6-メチルアミノピリジン-3-イル基、6-メトキシピリジン-3-イル基、2-ジメチルアミノスチリル基、2-メチルアミノスチリル基、2-メトキシスチリル基、2-ヒドロキシスチリル基、3-ジメチルアミノスチリル基、3-メチルアミノスチリル基、3-メトキシスチリル基、3-ヒドロキシスチリル基、4-ジメチルアミノスチリル基、4-メチルアミノスチリル基、4-アミノスチリル基、4-メトキシスチリル基、4-ヒドロキシスチリル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノスチリル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノスチリル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシスチリル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシスチリル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノスチリル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノスチリル基又は3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシスチリル基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含有するアミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患のホウ素中性子捕捉療法用組成物。
【請求項15】
アミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患がアルツハイマー病又は軽度認知障害である請求項14記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法に用いられる含ホウ素有機化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口の高齢化に伴い認知症患者が増加しており、国内のアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)患者数は250万人を超え、今後更なる増加が危惧される。この疾患は患者のみならず家族にも大きな負担を課するもので、医療面のみではなく社会経済への負担も大きく有効な治療法が望まれるが、現状では一時的な進行遅延や対症療法にしか期待できない。このような状況下、アルツハイマー病の根本的治療に対する社会的要求は高く、その治療法の早急な開発が強く望まれている。
【0003】
アルツハイマー病は病理学的には(1)細胞外アミロイドβ(Aβ)からなる老人斑(Aβ集合体)の沈着と(2)細胞内タウの神経原線維変化を特徴とする疾患である。認知症発症の何年も前から細胞外のアミロイド沈着が見られることが分かっている。また生体内に見られるAβには幾つかの種類があり、中でもAβ1-40(Aβ40)とAβ1-42(Aβ42)が老人斑の沈着の主要素になっていることが近年の研究で明らかになっている。Aβ42は疎水性で凝集性が強く、Aβ40もAβ42凝集に伴ってアミロイド線維形成を促進しAβ集合体を形成する。
【0004】
現在、臨床で使われているアルツハイマー病の治療薬は、コリン分解酵素阻害薬等であり、一時的な症状改善にとどまり根本的な治療にはなり得ていない。近年では新たな手法として、アミロイドβの排除を目指す医薬品開発が進められており、ワクチンなども検討されている。しかしこれらの方策を用いても、アミロイドβ(Aβ)からなるアミロイドβ斑(Aβ集合体)の沈着の除去は極めて困難であることは容易に推測することができる。一方、アルツハイマー病遺伝子変換マウスに対する脳へのX線照射にてAβ集合体の減少と認知機能の改善をもたらしたとの報告がある(非特許文献1)。しかし健常神経細胞への放射線被曝も同時に起こり得るため脳の可塑性機能の温存について影響がないとは断定できない。
【0005】
本発明ではアミロイドβ斑に選択的に結合するホウ素-10原子を含有した化合物をアルツハイマー病などのアミロイドβ疾患患者に投与し、アミロイドβ斑に十分にホウ素濃度が高くなった時点でホウ素中性子捕捉療法を用い、ミクロンレベルで選択的にアミロイドβ斑を断片化させ得る含ホウ素有機化合物に着目した。本発明の化合物では選択的にアミロイドβ斑に結合し、アミロイドβ斑のみを断片化させ、一方、親和性のない神経細胞には障害を与えないためミクログリアによる吸収を促し、ホウ素中性子捕捉療法後に神経回路の再構築を促進する機会を与えるものである。
【0006】
特許文献1には、2-(4-ジメチルアミノフェニル)エテニル基で置換された複素環化合物が、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断、アルツハイマー病の治療等に有用であることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、4-ジメチルアミノ基を有する二環性複素環基で置換されたチオフラビン誘導体(ベンゾチアゾール誘導体)が、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断、アルツハイマー病の治療等に有用であることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、4位がアミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基、3位がハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基をベンゾチアゾール環の2位に有するベンゾチアゾール誘導体が、アミロイド沈着の検出及びアミロイド沈着を特徴とする疾患、障害又は症状の診断等に有用であることが記載されている。
【0009】
特許文献4には、フラボン誘導体、カルコン誘導体、スチリルクロモン誘導体又はクマリン誘導体を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物が記載されている。
【0010】
特許文献5には、4位がアミノ基、又はモノアルキルアミノ基等、3位がフッ素原子で置換されたフェニル基をベンゾチアゾール環の2位に有するベンゾチアゾール誘導体が、アミロイド沈着の検出及びアミロイド沈着を特徴とする疾患等の診断等に有用であることが記載されている。
【0011】
特許文献1~5には、ホウ素原子を含む有機化合物は開示されておらず、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)については言及されていない。
【0012】
Prottiらは、アミロイドβを凝集させて、10B化合物を用いたBNCTを行うと凝集していたアミロイドβが裁断されると報告しているが、10B化合物の具体的構造は明らかにしていない(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004-250407号公報
【特許文献2】特開2004-250411号公報
【特許文献3】国際公開第2004/083195号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/057323号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2013/040183号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Marples B, et al., Cranial irradiation significantly reduces beta amyloid plaques in the brain and improves cognition in a murine model of Alzheimer's Disease (AD), Radiother Oncol, 118(1):43-51(2016)
【非特許文献2】Protti N, et al., BNCT irradiation of protein aggregates to evaluate the potentialities of NCT in the treatment of Alzheimer's Disease, 9th Young Researchers' BNCT Meeting(YBNCT9), S3-1(2017年11月13~15日、京都大学宇治キャンパスおうばくプラザ、抄録)
【非特許文献3】Kondo M, et al., Aberrant plasticity in Alzheimer's disease, Neuroreport, 10(7):1481-1484 (1999).
【非特許文献4】Imahori Y, et al., Neural features of recovery from CNS injury revealed by PET in human brain, Neuroreport, 10(1):117-121 (1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、以上のような技術的背景のもとになされたものであり、アミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑内での貯留性を有し、一方、脳内老人斑以外の部位には残留しにくい特性を持つホウ素担体化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
現在、陽電子放出核種をAβ親和性トレーサに標識したPET検査により画像的な認知機能検査が臨床に用いられており、これらのAβ親和性トレーサ(標識化合物)はAβ42あるいはAβ40と結合することが証明されている。ホウ素-10原子をこれらに化学的結合させることができれば、特異的にAβ42集合体やAβ40集合体にホウ素-10を結合させることができる。このホウ素担体化合物が特異的にAβ集合体に集積し、そこに中性子線を照射することで、2.33MeVのα線が発生する。その飛程がわずか10μm程度のため、ホウ素-10ホウ素担体化合物と結合したAβ集合体のみが選択的に破壊され、Aβ集合体の断片化が起こる(非特許文献2)。中性子(熱中性子)照射とホウ素-10原子を有するホウ素担体化合物との核反応でAβ集合体の断片化が起こることにより活性化されたミクログリア細胞やマクロファージなどが、断片化されたAβを貪食、消失へと導く。一方、Aβ集合体への選択的なホウ素中性子捕捉療法では、親和性のない神経細胞には障害を与えないため、ホウ素中性子捕捉療法後にAβの消失や減少により再び神経シナプスのコンダクタンスが上昇し、神経回路の再構成が期待される。アルツハイマー病では減弱した機能を再構築するため、絶えず前頭葉や連合野を介して神経回路に再構築が起こっていることがヒトで確認されている(非特許文献3)。更に減弱した機能を再構築するため、リハビリテーションを強化することで、失った神経機能の回復が期待される(非特許文献4)。非特許文献1ではマウスモデルでAβ減少が認知機能改善に関係していることを実証しているが、本発明では、ホウ素中性子捕捉療法では飛程が短くホウ素担体化合物は正常細胞には取り込まれないために、神経細胞には悪影響は与えない。更に、Aβ集合体は神経細胞内やグリア細胞内には存在しないため、正常神経細胞への放射線による悪影響はなく正常神経細胞の活性が維持されることになり、その結果、早期の神経機能の回復がより促進されることになる。
【0017】
そこで、本発明者らは、フラボン誘導体、クロモン誘導体、クマリン誘導体、オーロン誘導体、カルコン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体及びスチルベン誘導体にホウ素原子を導入した化合物の合成に成功し、これらの含ホウ素有機化合物が、アミロイドβ蛋白にホウ素-10を蓄積させホウ素中性子捕捉療法を可能にすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)一般式(I):
【化1】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;Rは置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換の芳香族複素環基、又は置換又は非置換のスチリル基を表し、前記Rが2位にある場合は、3位は水酸基又はメトキシ基で置換されていてもよく、前記Rが3位にある場合は、2位は水酸基又はメトキシ基で置換されていてもよい。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(2)一般式(I)におけるRが置換又は非置換のフェニル基である前記(1)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(3)一般式(I)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(2)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(4)一般式(I)におけるRが4-ジメチルアミノスチリル基、4-メチルアミノスチリル基、4-アミノスチリル基、4-ヒドロキシスチリル基、4-メトキシスチリル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシスチリル基である前記(1)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(5)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(1)~(4)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(6)一般式(I)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(1)~(5)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(7)一般式(II):
【化2】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;Rは置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(8)一般式(II)におけるRが置換又は非置換のフェニル基である前記(7)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(9)一般式(II)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(8)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(10)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(7)~(9)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(11)一般式(II)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(7)~(10)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(12)一般式(III):
【化3】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;Rは置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表し;立体配置はE配置及びZ配置のいずれでもよい。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(13)一般式(III)におけるRが置換又は非置換のフェニル基である前記(12)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(14)一般式(III)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(13)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(15)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(12)~(14)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(16)一般式(III)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(12)~(15)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(17)一般式(IV):
【化4】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;Rは置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(18)一般式(IV)におけるRが置換又は非置換のフェニル基である前記(17)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(19)一般式(IV)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(18)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(20)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(17)~(19)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(21)一般式(IV)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(17)~(20)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(22)一般式(V):
【化5】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;Rは置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(23)一般式(V)におけるRが置換又は非置換のフェニル基である前記(22)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(24)一般式(V)におけるRが4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(23)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(25)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(22)~(24)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(26)一般式(V)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(22)~(25)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(27)一般式(VI):
【化6】
〔式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジ(C1-5アルキル)アミノ基、(C1-5アルキル)アミノ基、アミノ基、ニトロ基、置換又は非置換のC1-5アルキル基、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、又はホウ素原子を含有する置換基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つはホウ素原子を含有する置換基を表し;R10は置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(28)一般式(VI)におけるR10が置換又は非置換のフェニル基である前記(27)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(29)一般式(VI)におけるR10が4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である前記(28)に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(30)ホウ素原子がホウ素-10もしくはホウ素-11又は両者の混合体である前記(27)~(29)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(31)一般式(VI)におけるRとR、RとR、又はRとRが共同してホウ素原子を含有する置換基を表す前記(27)~(30)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体。
(32)前記(1)~(31)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体を含有するアミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患のホウ素中性子捕捉療法用組成物。
(33)アミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患がアルツハイマー病又は軽度認知障害である前記(32)に記載の組成物。
(34)アミロイドβ疾患のモデル動物又は患者に、前記(1)~(31)のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体を投与した後、当該モデル動物又は患者の脳中に含まれる前記化合物、又はその薬学的に許容される塩、錯体もしくは配糖体の分布又はホウ素濃度を調べる工程を含むアミロイドβ疾患のホウ素中性子捕捉療法。
【発明の効果】
【0019】
前記の一般式(I)~(VI)において、ホウ素原子を有しない化合物は、アミロイドβ蛋白に対し高い結合特異性を有し、これまで陽電子放出核種(炭素-11、フッ素-18等)あるいはヨウ素-123で標識されたこれらの化合物による、それぞれPETやSPECTの診断薬として長年開発されてきた。
【0020】
一方、これまで、これらの化合物は診断薬としての開発研究はなされてきたものの、ホウ素担体として中性子捕捉療法に応用するという試みは皆無である。これら化合物は低分子量のため血液脳関門の透過性も高く、脂溶性もあり十分実用性が高いと考えられる。本発明はこれらの化合物をホウ素化しホウ素-10の担体として使用し、アミロイドβ蛋白凝集体にホウ素-10を送り込み、その凝集体の中で熱中性子や熱外中性子によりBNCT反応を起こし、アルツハイマー病等の治療に貢献できる化合物を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は中性子照射時(BNCT)の容器の配置を示す図である。
図2図2はSDS-PAGE法の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明において、「ホウ素原子」とは、例えば、ホウ素-10原子、ホウ素-11原子、ホウ素-10,11原子混合体である。
【0024】
本発明において、「ホウ素原子を含有する置換基」とは、少なくとも一つのホウ素原子を含有する置換基であれば、制限はなく、好ましくは、次式:
-B(OR)(OR’)
〔式中、R及びR’は、互いに独立して、水素原子、置換又は非置換の脂肪族炭化水素(例えば、C1-5アルキル基、C2-5アルケニル基、C2-5アルキニル基)、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表し、R及びR’は、アルキレン連結基、アリール連結基、又はこれらの組み合わせからなる連結基を介して互いに連結してもよい。〕
で示される基、次式:
-B(OR)-O-(CH
〔式中、Rは水素原子、置換又は非置換の脂肪族炭化水素(例えば、C1-5アルキル基、C2-5アルケニル基、C2-5アルキニル基)、置換又は非置換のC1-5アルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基を表し、nは1又は2を表す。〕
で示される2価の基、及び前記基を有する置換基である。
【0025】
「ホウ素原子を含有する置換基」としては、-B(OH)、又は-B(OH)を含む基(例えば、次式:-L-B(OH)(ここで、Lは2価の炭化水素基、例えばC1-5アルキレン基、C2-5アルキレン基、フェニレン基を表す。)で示される基)、及びそれらのピナコール体、並びに-B(OH)-OCH-を含む基が特に好ましい。-B(OH)-OCH-を含む化合物としては、例えば、ベンゾオキサボロール(1,3-ジヒドロ-2,1-ベンゾオキサボロール-1-オール)誘導体が挙げられる。
【0026】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0027】
本発明において、「C1-5アルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基である。
【0028】
本発明において、「C1-5アルケニル基」とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、1-プロペニル基、イソプレニル基である。
【0029】
本発明において、「C2-5アルキニル基」とは、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基である。
【0030】
前記「C1-5アルキル基」、「C1-5アルケニル基」及び「C2-5アルキニル基」は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、メトキシ基等から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0031】
本発明において、「C1-5アルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基である。
【0032】
前記「C1-5アルコキシ基」は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、メトキシ基等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。置換されたC1-5アルコキシ基としては、例えば、2-フルオロエトキシ基、3-フルオロプロポキシ基、4-フルオロブトキシ基、5-フルオロペントキシ基が挙げられる。
【0033】
本発明において、「ジ(C1-5アルキル)アミノ基」とは、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基である。
【0034】
本発明において、「(C1-5アルキル)アミノ基」とは、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基である。
【0035】
本発明において、「アリール基」とは、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などである。
【0036】
本発明において、「芳香族複素環基」とは、例えば、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基などである。
【0037】
前記「アリール基」及び「芳香族複素環基」、並びに一般式(I)においてRで表される「スチリル基」は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、C1-5アルキル基、C1-5アルコキシ基等から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
置換されたアリール基としては、例えば、2-ジメチルアミノフェニル基、2-メチルアミノフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ジメチルアミノフェニル基、3-メチルアミノフェニル基、3-アミノフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-アミノフェニル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシフェニル基が挙げられる。
【0039】
置換された芳香族複素環基としては、例えば、5-ジメチルアミノピリジン-2-イル基、5-メチルアミノピリジン-2-イル基、5-メトキシピリジン-2-イル基、6-ジメチルアミノピリジン-3-イル基、6-メチルアミノピリジン-3-イル基、6-メトキシピリジン-3-イル基が挙げられる。
【0040】
置換されたスチリル基としては、例えば、2-ジメチルアミノスチリル基、2-メチルアミノスチリル基、2-メトキシスチリル基、2-ヒドロキシスチリル基、3-ジメチルアミノスチリル基、3-メチルアミノスチリル基、3-メトキシスチリル基、3-ヒドロキシスチリル基、4-ジメチルアミノスチリル基、4-メチルアミノスチリル基、4-アミノスチリル基、4-メトキシスチリル基、4-ヒドロキシスチリル基、3-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノスチリル基、3-ヒドロキシ-4-メチルアミノスチリル基、3-ヒドロキシ-4-メトキシスチリル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシスチリル基、3,5-ジヒドロキシ-4-ジメチルアミノスチリル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メチルアミノスチリル基、3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシスチリル基が挙げられる。
【0041】
一般式(I)において、Rで表される基は、クロモン骨格の2位及び3位のいずれに存在してもよく、前記Rが2位にある場合は、3位は水酸基又はメトキシ基で置換されていてもよく、前記Rが3位にある場合は、2位は水酸基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0042】
で表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基、4-ジメチルアミノスチリル基、4-メチルアミノスチリル基、4-アミノスチリル基、4-ヒドロキシスチリル基、4-メトキシスチリル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシスチリル基が好ましく、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-アミノスチリル基、4-メチルアミノスチリル基及び4-ジメチルアミノスチリル基が更に好ましい。
【0043】
一般式(II)において、Rで表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基が好ましく、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基及び4-ジメチルアミノフェニル基が更に好ましい。
【0044】
一般式(III)において、Rで表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基が好ましく、4-メチルアミノフェニル基及び4-ジメチルアミノフェニル基が更に好ましい。
【0045】
一般式(IV)において、Rで表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基が好ましい。
【0046】
一般式(V)において、Rで表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基が好ましい。
【0047】
一般式(VI)において、R10で表される基としては、4-ジメチルアミノフェニル基、4-メチルアミノフェニル基、4-アミノフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基及び4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基が好ましい。
【0048】
一般式(I)~(VI)で示される化合物は、例えば、次のようにして合成することができる。
【0049】
一般式(I)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-メチルアミノフェニル基又は4-ジメチルアミノフェニル基である化合物(フラボン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0050】
【化7】
【0051】
フラボン骨格の形成はベーカー・ベンカタラマン転位により行った。この合成過程において、ヒドロキシアセトフェノンをベンゾイルクロリドによりベンゾイルエステル(1)に変換し、アルカリ処理を行うことによって、1,3-ジケトン(2)に変換した。このジケトン体を酸で処理することにより、フラボン誘導体(3)を得た。ニトロ基の還元の後、生成したアミノ基のモノメチル化及びジメチル化はいずれも常法に従い行った。またフラボン誘導体のホウ素化はそれぞれのブロモ体(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用いピナコールボランと塩基(例えば、トリエチルアミン、4-メチルモルホリン)存在下でパラジウム触媒(Pd(dppf)ClあるいはPd(PPhCl)との反応により、ピナコールボラン体(7,8)に変換した。また、4-メトキシベンゾイルクロリドによるベンゾイルエステルの場合には、ピナコールボラン体に変換した後に、三臭化ホウ素により4-メトキシ基の脱メチル化により4’-ヒドロキシフラボンの6-ピナコールボラン体が得られる。
【0052】
ピナコールボラン体(7,8)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(9,10)が得られる。ピナコールエステルの脱保護は、その他、フェニルボロン酸でエステル交換する方法(塩酸酸性下、例えばpH3)、過ヨウ素酸ナトリウムで分解する方法、トリフルオロボレートやアミノエステル型ボレートを経由する方法等、それ自体公知の方法により行うことができる(以下同様)。
【0053】
一般式(I)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-メチルアミノスチリル基又は4-ジメチルアミノスチリル基である化合物(スチリルクロモン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0054】
【化8】
【0055】
スチリルクロモン誘導体は、ヒドロキシアセトフェノンと4-ニトロ桂皮酸クロリドを出発原料に用いて、フラボン誘導体と同様の反応を用いて合成を行った。スチリルクロモン誘導体のホウ素化はそれぞれのブロモ体(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用いピナコールボランと塩基(例えば、トリエチルアミン、4-メチルモルホリン)存在下でパラジウム触媒(Pd(dppf)ClあるいはPd(PPhCl)との反応により、ピナコールボラン体(17,18)に変換した。また、4-メトキシ桂皮酸クロリドによるベンゾイルエステルの場合には、ピナコールボラン体に変換した後に、三臭化ホウ素により4-メトキシ基の脱メチル化により4’-ヒドロキシスチリルクロモンの6-ピナコールボラン体が得られる。
【0056】
ピナコールボラン体(17,18)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(19,20)が得られる。
【0057】
一般式(II)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-メチルアミノフェニル基である化合物(クマリン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0058】
【化9】
【0059】
クマリン誘導体の合成は、5-ブロモ-2-ヒドロキシベンズアルデヒドと4-ニトロフェニル酢酸を出発原料に用いて行い、ニトロ基の還元、アミノ基のモノメチル化及びジメチル化はいずれも常法に従い行った。ホウ素化はフラボン誘導体やスチリルクロモン誘導体と同様にクマリン誘導体のブロモ化合物(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用い同様の方法でピナコールボラン体(24)が得られる。
【0060】
ピナコールボラン体(24)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(25)が得られる。
【0061】
一般式(III)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-ジメチルアミノフェニル基である化合物(オーロン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0062】
【化10】
【0063】
第1工程は、強アルカリ触媒による芳香族アルデヒドとケトンとの縮合反応であり、生成物はα,β-不飽和ケトンが生じるクライゼン=シュミット反応により合成された。本反応では6-ブロモベンゾフラン-3(2H)-オンと4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを出発原料に用いて行い、強塩基触媒の下、ワンステップ反応で6-ブロモ-4’-ジメチルアミノオーロン(26)の合成が可能になった。ホウ素化はフラボン誘導体やスチリルクロモン誘導体と同様の方法に従い行った。また、6-ブロモベンゾフラン-3(2H)-オンと、4-ヒドロキシベンズアルデヒドあるいは4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)もしくは3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(3-ヒドロキシアニスアルデヒド、イソバニリン)等を出発原料として同反応により各種オーロン骨格の合成が可能となり、ホウ素化は各種オーロン誘導体のブロモ化合物(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用い同様の方法でピナコールボラン体(27)が得られる。
【0064】
ピナコールボラン体(27)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(28)が得られる。
【0065】
一般式(IV)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-ジメチルアミノフェニル基である化合物(カルコン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0066】
【化11】
【0067】
カルコン誘導体は、アセトフェノンとベンズアルデヒドとのアルドール縮合で合成され、その際に塩基が触媒となる。4-ブロモアセトフェノンと4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドとのアルカリ金属水酸化物存在下での縮合反応により、カルコンの基本骨格を形成した。アミノ基のジメチル化はベンズアルデヒドとして、4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを原料として用いることによりカルコン誘導体のブロモ化誘導体(29)はワンポット反応での合成が可能になる。ホウ素化はブロモ体(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用い、前記と同様の方法でピナコールボラン体(30)が得られる。また4-ブロモアセトフェノンと、4-ヒドロキシベンズアルデヒドあるいは4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)もしくは3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(3-ヒドロキシアニスアルデヒド、イソバニリン)を出発原料として同反応により各種カルコン骨格の合成が可能となり、ホウ素化は各種カルコン誘導体のブロモ化合物(あるいは塩素体、ヨウ素体、もしくはトリフラート体)を用い同様の方法でピナコールボラン体が得られる。
【0068】
ピナコールボラン体(30)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(31)が得られる。
【0069】
一般式(V)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、Rが4-メチルアミノフェニル基である化合物(ベンゾチアゾール誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0070】
【化12】
【0071】
最初に2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オールの活性水素をトリメチルシリル化(TMS化)した。シリル化のしやすさは、アルコール>フェノール>カルボン酸>アミン>アミドの順になり、アミンには反応しないように緩和な条件(室温)で行い、そのあとにN-メチルアミノ基をBOC化した(化合物34)。その後、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)でトリメチルシリル基の脱保護を行い、2-(4-(N-メチルアミノ-N-tert-ブトキシカルボニル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(35)を得た。これら反応はワンポットで行うことができた。その後、6位の水酸基に対してトリフルオロメタンスルホン酸無水物でトリフラート化を行い、ピナコールボランによるホウ素化を行った(化合物37)。またトリフラート体の代わりに、ブロム体、塩素体、ヨウ素体を用いればワンステップでピナコールボランによるホウ素化が行える。
【0072】
ピナコールボラン体(38)をアセトニトリル中、加熱下、トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体(39)が得られる。
【0073】
一般式(VI)において、R、R及びRが水素原子、Rが-B(OH)、R10が4-メチルアミノフェニル基である化合物(スチルベン誘導体)を合成する場合を例にとり、以下に合成経路を記載する。下記式中の番号は実施例における化合物番号を示す。
【0074】
【化13】
【0075】
一般式(I)~(VI)等で示される化合物の代わりに、薬学的に許容される塩、錯体又は配糖体を使用することも可能である。薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを例示できる。薬学的に許容される錯体又は配糖体としては、可溶化のための錯体又は配糖体などを例示できる。例えば、可溶化促進のため、ホウ酸残基(-B(OH)で表される基)に対してはフルクトースなどのヘキソース類又はソルビトールなどの糖アルコールなどの錯体として用いてもよい。ベンゾオキサボロール(1,3-ジヒドロ-2,1-ベンゾオキサボロール-1-オール)誘導体もフルクトースなどのヘキソース類又はソルビトールなどの糖アルコールなどの錯体として用いてもよい。また経口投与も可能である。
【0076】
可溶化のための錯体の一例として、生理学的pHの水中でのホウ酸残基とフルクトースとの錯体構造を以下に示す。
【0077】
【化14】
【0078】
また、可溶化のための配糖体としては、例えば、一般式(I)~(VI)で示される化合物中に存在する水酸基に単糖、オリゴ糖、多糖等の糖をグリコシド結合させたものが挙げられる。具体的には、一般式(I)において、Rが2位にあり、3位が水酸基であるフラボノール誘導体の水酸基に糖がグリコシド結合したものを例示することができる。
【0079】
本発明の組成物はアミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患の中性子捕捉療法に用いられる。アミロイドβ又は病的アミロイド蛋白関連疾患とは、特に、アミロイドβ蛋白(Aβ42やAβ40)の蓄積によって起きる疾患をいい、主にアルツハイマー病であり、その初期の軽度認知障害(MCI)などを意味するが、他にもダウン症候群、脳アミロイドアンギオパチー、更には脳以外の全身性アミロイドーシスなどの疾患も含まれる。
【0080】
本発明の組成物の投与方法は特には限定されず、化合物の種類、ホウ素側鎖の種類(例えばピナコール体、ホウ酸残基の単糖類等の錯体形成)などに応じて適宜決めることができるが、通常は、皮内、腹腔内、静脈、動脈、又は脊髄液への注射又は点滴等によって投与する。本発明の組成物の投与量は特に限定されず、化合物の種類、ホウ素側鎖の種類などに応じて適宜決めることができる。成人の場合、一般式(I)~(VI)で示される化合物を中性子捕捉療法1回の当たりアミロイドβ蛋白の中でホウ素-10の濃度が1~500ppmになるように投与するのが好ましく、更に、20~40ppmになるように投与するのが好ましい。
【0081】
前記のように本発明の組成物は、通常、注射又は点滴によって投与するので、注射液や点滴液に通常含まれる成分を含んでいてもよい。このような成分としては、液体担体(例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ヒト血清アルブミンなど)、抗菌剤、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカインなど)、緩衝液(例えば、トリス-塩酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウムなど)を例示できる。
【0082】
本発明のホウ素中性子捕捉療法用組成物は、アミロイドβ疾患の診断薬との組み合わせで用いることができる。アミロイドβ疾患の診断薬によるスクリーニング後に使用することもできる。例えば、アルツハイマー病などにアミロイドβ疾患の診断薬を投与し、その後、脳中に含まれる一般式(I)~(VI)で示される化合物の分布又は量を推定し、その結果、コントロールとの間に有意な差異が検出されれば治療に用いることもできる。すなわち、陽電子標識核種やヨウ素-123を有するアミロイドβ疾患診断薬と組み合わせることができる。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0084】
〔実験試薬・機器〕
TLCはシリカゲル70 TLCプレート-ワコー社製(蛍光剤不含タイプ)5cm x 20cm)を用い、各化合物に適した展開溶媒で分析した。1H-NMRは、使用装置 JNM-ECX400A 5mm TH5AT/FG2Dプローブを用い、テトラメチルシランを内部標準物質として測定した。質量分析は、JEOL JMS-DX302を用いて測定した。試薬はSigma-Aldrich, Inc、東京化成工業株式会社等の特級試薬、あるいは海外化学薬品メーカーの特注品を用いた。
【0085】
(実施例1)フラボン誘導体の合成
(1)4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(1)の合成
【化15】
4-ニトロベンゾイルクロリド(3.71 g, 20.0 mmol, MW=185.56)のピリジン溶液(100 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(4.30 g, 20.0 mmol, MW=215.04)を加えた。室温で1時間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(化合物1)を得た。収量6.75 g(収率92.7 %, MW=364.15)
【0086】
(2)1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(2)の合成
【化16】
化合物1(6.75 g, 18.5 mmol, MW=364.15)をピリジン(120 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(1.59 g, 28.3 mmol, MW=56.11)を加え、30分間撹拌後に氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物2)を得た。収量5.83 g(収率86.5%, MW=364.15)
【0087】
(3)6-ブロモ-4’-ニトロフラボン(3)の合成
【化17】
化合物2(5 g, 13.7 mmol, MW=364.15)、濃硫酸(1.25 mL)、酢酸(100 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し目的物である6-ブロモ-4’-ニトロフラボン(化合物3, MW=346.13)を得た。収量4.46 g(収率94.1%)
【0088】
(4)6-ブロモ-4’-アミノフラボン(4)の合成
【化18】
化合物3(1.43 g, 4.13 mmol, MW=346.14)のエタノール(100 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(3.93 g, 20.7 mmol, MW=189.60)を加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(700 mL)を加え、酢酸エチル 700 mL(350 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-アミノフラボン(化合物4, MW=316.15)を得た。収量 1.06 g(収率81.2%)
【0089】
(5)6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(5)の合成
【化19】
化合物4(326 mg, 1.031 mmol: MW=316.15)とパラホルムアルデヒド(167 mg, 5.57 mmol, MW=30.0)のメタノール溶液(16.3 mL)に撹拌しながら28%ナトリウムメチラートメタノール溶液(0.293 mL, MW=54.02)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(195 mg, 5.15 mmol: MW=37.83)を少しずつ加えて、更に2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(3/5)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(化合物5, MW=330.18)を得た。収量 91.6 mg(収率26.9%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.37(d,J=2.4Hz, 1H), 7.99(d,J=8.8Hz,2H),7.81(dd,J1=8.8Hz, J2=2.4Hz,1H),7.48(d,J=9.2Hz,1H),7.46(d,J=8.8Hz,2H),6.85(s,1H), 2.91(S,3H). MS m/z 329.
【0090】
(6)6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボン(6)の合成
【化20】
化合物4(190 mg, 0.60 mmol: MW=316.15)とパラホルムアルデヒド(180 mg, 6 mmol, MW=30.0)の酢酸溶液(30 mL)にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(189 mg, 3.01 mmol, MW=62.84)を撹拌しながら加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液150 mLを加え、クロロホルム160 mL(80 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物6, MW=344.20)を黄色結晶として得た。収量 153 mg(収率74.2%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.35(d,J=2.4Hz,1H),7.97(d,J=8.8Hz,2H),7.80 (dd,J1=8.8Hz,J2=2.4Hz,1H),7.48(d,J=9.2Hz,1H),7.36(d,J=8.8Hz,2H),6.87(s,1H),3.07(s,6H).MS m/z 343.
【0091】
(7)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-メチルアミノフラボン(7)の合成
【化21】
化合物5(59.8 mg, 0.18 mmol, MW=330.18)のジオキサン(1.5mL)溶液に、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(2 mg: 2.4 mmol: MW=816.64)を加え、4-メチルモルホリン(22μl: 0.20 mmol, MW=101.15, d=0.92)と4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(以後、ピナコールボランと記す)(60μl: 0.42 mmol: MW=127.98, d=0.89)をゆっくり滴下した。アルゴン気流下、85℃で5時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-メチルアミノフラボン(化合物7, MW=377.24)を得た。収量 30 mg(収率44.2%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.32(d,J=2.5Hz,1H),7.76(d,J1=8.9Hz,2H),7.72(dd,J1=8.7Hz,J2=2.5,1H),7.41(d,J=8.9Hz,1H),6.74(d,J=8.9Hz,2H),6.69(s,1H), 2.94(s,3H),1.26(s,12H). MS m/z 377.
【0092】
(8)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノフラボン(8)の合成
【化22】
化合物6(62 mg, 0.18 mmol, MW=344.20)のジオキサン(1.5mL)溶液に、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(2 mg)を加え、4-メチルモルホリン(22μl: 0.20 mmol, MW=101.15, d=0.92)とピナコールボラン(60μl: 0.42 mmol: MW=127.98, d=0.89)をゆっくり滴下した。アルゴン気流下、85℃で5時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物8, MW=391.27)を得た。収量 26 mg(収率36.9%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.34(d,J=2.8Hz,1H), 7.74(d,J=8.8Hz,2H),7.72(dd,J1=8.8hz, J2=2.4,1H),7.41(d,J=8.8Hz,1H),6.69(d,J=8.9Hz,2H),6.68(s,1H),3.09(s, 6H),1.26(s,12H). MS m/z 391.
【0093】
(9)6-ジヒドロキシボリル-4’-メチルアミノフラボン(9)の合成
【化23】
化合物7をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体9を得た。
【0094】
(10)6-ジヒドロキシボリル-4’-ジメチルアミノフラボン(10)の合成
【化24】
化合物8をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体10を得た。
【0095】
(実施例2)スチリルクロモン誘導体の合成
(1)(E)-2-アセチル-4-ブロモフェニル=3-(4-ニトロフェニル)アクリレート(11)の合成
【化25】
trans-4-ニトロシンナモイルクロリド(5 g, 23.6 mmol, MW=211.60)のピリジン溶液(92 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(5.07 g, 23.6 mmol, MW=215.04)を加えた。室温で120分反応させた後、氷冷下1 N塩酸150mLに注ぎ撹拌させた。析出した沈殿を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である化合物11(MW=390.18)を得た。収量8.86 g(収率96.2%)
【0096】
(2)1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)ペント-4-エン-1,3-ジオン(12)の合成
【化26】
化合物11(5g, 12.8 mmol, MW=390.18)をピリジン(120 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(2.2 g, 39.2 mmol, MW=56.11)を加え、30分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈殿を濾取し、目的物12(MW=390.18)を得た。収量4.21 g(収率84.2%)
【0097】
(3)6-ブロモ-4’-ニトロスチリルクロモン(13)の合成
【化27】
化合物12(4.0 g, 10.3 mmol, MW=390.18)、濃硫酸(5.57 mL)、酢酸(69.6 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物13(MW=372.17)を得た。収量3.53 g(収率 92.5%)
【0098】
(4)6-ブロモ-4’-アミノスチリルクロモン(14)の合成
【化28】
化合物13(1.85g, 4.97 mmol, MW=372.17)のエタノール(150 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(6.42 g, 33.9 mmol, MW=189.60)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液(500 mL)を加え、酢酸エチル500 mL(250 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物14(MW=342.19)を得た。収量1.20 g(収率 70.5%)
【0099】
(5)6-ブロモ-4’-メチルアミノスチリルクロモン(15)の合成
【化29】
化合物14(530 mg, 1.55 mmol, MW=342.19)とパラホルムアルデヒド(173 mg, 5.75 mmol, MW=30.0)のメタノール溶液(11.2 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(336μl)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(202 mg, 5.34 mmol, MW=37.83)を少しずつ加えて、更に2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を、クロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物15(MW=356.21)を得た。収量378 mg(収率68.5%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ8.31(d,J=2.4Hz,1H),7.73(dd,J1=9.2Hz,J2=2.8Hz,1H),7.53(d, J=16Hz,1H),7.44(d,J=6.4Hz,2H),7.41(d,J=8.8Hz,1H),6.61(d,J=8.4Hz,2H),6.55(d,J=16Hz,1H), 6.25(s,1H),2.91(s,3H). MS m/z 355.
【0100】
(6)6-ブロモ-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン(16)の合成
【化30】
化合物14(200 mg, 0.584 mmol, MW=342.19)とパラホルムアルデヒド(175 mg, 5.83 mmol, MW=30.0)の酢酸溶液(10 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(220 mg, 3.51 mmol, MW=62.84)をゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液60 mLを加え、クロロホルム60 mL(30 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し化合物16(MW=370.24)を得た。 収量156.1 mg(収率 72.2%) 1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ8.30(d,J=2.4Hz,1H),7.73(dd,J1=9.2Hz,J2=2.8,1H),7.76(d,J=16.0Hz,1H),7.45(d,J=6.4Hz,2H),7.40(d,J=8.8Hz,1H),6.56(d,J=8.4Hz,2H),6.54(d,J=16.0Hz,1H),6.25(s,1H),3.05(s,3H). MS m/z 369.
【0101】
(7)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-メチルアミノスチリルクロモン(17)の合成
【化31】
アルゴン気中で、化合物15(150 mg, 0.42 mmol, MW=356.21)のジオキサン(4.0 mL)溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)(21.0 mg: 30 mmol: MW=701.90)を加え、引き続きトリエチルアミン(177μl)とピナコールボラン(92.4μl)をゆっくり滴下した。100℃で8時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-メチルアミノスチリルクロモン(化合物17, MW=403.28)を得た。収量 70 mg(収率41.3 %)
1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ8.31(d, J=2.4Hz, 1H), 7.73(dd, J1=8.6Hz, J2=2.6Hz, 1H), 7.52(d, J=15.2Hz, 1H), 7.44(d, J=6.8Hz, 2H), 7.40(d, J=8.8Hz, 1H), 6.61(d, J=8.8Hz, 2H), 6.54(d, J=15.6Hz, 1H), 6.25(s, 1H), 2.90(s, 3H), 1.26(s, 12H). MS m/z 403.
【0102】
(8)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン(18)の合成
【化32】
アルゴン気中で、化合物16(55.5 mg, 0.15 mmol, MW=370.24)のジオキサン(1 mL)溶液に、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(5 mg)加え、4-メチルモルホリン(25μl: 0.23 mmol, MW=101.15, d=0.92)とピナコールボラン(45μl 0.31 mmol, MW=127.98, d=0.89)とをゆっくり滴下した。85℃で6時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン(化合物18 MW=417.31)を得た。収量 30.4 mg(収率48.5%)1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ8.32(d,J=2.4Hz,1H),7.96(dd,J1=8.6Hz, J2=2.6,1H),7.51(d,J=15.2Hz,1H),7.42(d,J=6.8Hz,2H),7.34(d,J=8.8Hz,1H),6.62(d,J=8.8Hz,2H),6.56(d,J=15.6Hz,1H),6.25(s,1H),3.04(s,3H),1.24(s,12H). MS m/z 417.
【0103】
(9)6-ジヒドロキシボリル-4’-メチルアミノスチリルクロモン(19)の合成
【化33】
化合物17をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体19を得た。
【0104】
(10)6-ジヒドロキシボリル-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン(20)の合成
【化34】
化合物18をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体20を得た。
【0105】
(実施例3)クマリン誘導体の合成
(1)6-ブロモ-3-(4-ニトロフェニル)クマリン(21)の合成
【化35】
5-ブロモサリチルアルデヒド(2g, 9.95 mmol, MW=201.02)、4-ニトロフェニル酢酸(1.87g ,10.32 mmol, MW=181.15)、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(5.13g, 20 mmol, MW=255.48)をアセトニトリル(100 mL)に溶解させた。トリエチルアミン(3.3 mL, 23.8mmol, MW=101.19, d=0.73)を加えた後、加熱還流を3時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、半固体状の残渣に希塩酸を加えて吸引濾過、沈殿を濾取し、目的物21(MW=346.13)を得た。収量2.14 g(収率62.2%)
【0106】
(2)6-ブロモ-3-(4-アミノフェニル)クマリン(22)の合成
【化36】
化合物21(600 mg, 1.73 mmol, MW=346.13)をエタノール(100 mL)に溶解させ、塩化スズ(II)(1.52g, 8.0 mmol, MW=189.60)を加えて加熱還流を2時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、0.1 N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行った。酢酸エチル相を回収し、酢酸エチルを減圧留去して目的物22(MW=316.15)を得た。収量251 mg(収率46%)
【0107】
(3)6-ブロモ-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリン(23)の合成
【化37】
化合物22(135 mg, 0.43 mmol, MW=316.15)をメタノール(7.5 mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(69.3 mg, 2.31 mmol, MW=30.0)とナトリウムメチラートメタノール溶液(0.135 mL)を加えて加熱還流を行った。0.5時間後、水素化ホウ素ナトリウム(85.5 mg, 2.26 mmol, MW=37.83)を少しずつ加えて、更に2時間還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物23(MW=330.18)を得た。収量46.9 mg(収率33%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.32(d,J=9.2Hz,2H),7.90(d,J=8.8Hz,2H),7.85(s,1H),7.74(d, J=2.4Hz,1H),7.69(dd,J1=8.8Hz,J2=2.4,1H), 7.30(d, J=8.8Hz,1H), 2.84(s,3H). MS m/z 329.
【0108】
(4)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリン(24)の合成
【化38】
アルゴン気中、化合物23(20 mg,61μmol, MW=330.18)のジオキサン(900μl)溶液に、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)(2 mg)加え、引き続きピナコールボラン(34μl)と4-メチルモルホリン(12.8μl)をゆっくり滴下した。80℃で加熱還流を6時間行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリン(化合物24, MW=377.24)を得た。収量12.6 mg(収率55%)1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.42(d,J=9.2Hz,2H),7.97(d,J=8.8Hz,2H),7.91(s,1H),7.74(d,J=2.4Hz,1H),7.69(dd,J1=8.8Hz,J2=2.4,1H),7.31(d,J=8.8Hz,1H),2.88(s,3H),1.25(s,12H). MS m/z 377.
【0109】
(5)6-ジヒドロキシボリル-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリン(25)の合成
【化39】

化合物24をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体25を得た。
【0110】
(実施例4)オーロン誘導体の合成
(1)6-ブロモ-4’-ジメチルアミノオーロン(26)の合成
【化40】
6-ブロモベンゾフラン-3(2H)-オン(100 mg, 0.47 mmol, MW=213.03)をメタノール(2.0 mL)に溶かし、氷冷下で10分攪拌した、その後、固体のままで4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(77.6 mg, 0.52 mmol, MW=149.19)を加え、更に氷冷下15分攪拌した。水酸化カリウム(134 mg, 2.4 mmol, MW=56.11)を精製水(2 mL)に溶解させ、反応溶液に加え室温で3時間攪拌した。20 mLの精製水とクロロホルム30 mL(15 mL x 2回)で抽出した。更にクロロホルム層を30 mLの精製水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、反応溶媒を減圧留去し、適量のメタノール(14mL)中で再結晶させた。目的物26(MW=344.20)を得た。収量78.5 mg(収率48.5%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.83(d,J=9.2Hz,2H),7.66(d,J=8.0Hz,1H),7.53(d,J=1.2Hz,1H),7.34(dd,J1=8.0Hz,J2=1.6Hz,1H),6.94(s,1H),6.83(d,J=8.4Hz,2H), 3.04(s,6H). MS m/z 343.
【0111】
(2)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノオーロン(27)の合成
【化41】
アルゴン気中、化合物26(8 mg,0.023mmol, MW=344.20)のジオキサン(800μl)とクロロホルム(100μl)溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)(1.5 mg)加え、トリエチルアミン(8.4μl)とピナコールボラン(8.8μl)をゆっくり滴下した。撹拌しながら90℃で22時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/9)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノオーロン(化合物27, MW=391.27)を得た。収量5.4 mg(収率60%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.91(d,J=9.2Hz,2H),7.74(d,J=8.0Hz,1H),7.61(d,J=1.2Hz,1H),7.40(dd,J1=8.0Hz,J2=1.6Hz,1H),7.02(s,1H),6.83(d,J=8.4Hz,2H),3.09(s,6H),1.25 (s,12H). MS m/z 391.
【0112】
(3)6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノオーロン(28)の合成
【化42】
化合物27をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体28を得た。
【0113】
(実施例5)カルコン誘導体の合成
(1)(E)-1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)プロパン-2-エン-1-オン(29)の合成
【化43】
4-ブロモアセトフェノン5.0 g(25.1 mmol, MW=199.05)をエタノール(25 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(75.35 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド3.79 g(25.1 mmol, MW=151.12)を固体のまま加え、更に氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、ジクロロメタン(85 mL)を加え、析出した油状溶液を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である化合物29(MW=330.22)を得た。収量3.17 g(収率38.2%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.87(d,J=8.4Hz,2H),7.79(d,J=15.6Hz,1H),7.62(d,J=8.4Hz,2H), 7.55(d,J=6.8Hz,2H),7.27(d,J=14.8Hz,1H),6.70(d,J=8.4Hz,2H),3.06(s,6H). MS m/z 329.
【0114】
(2)4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4-(ジメチルアミノ)カルコン(30)の合成
【化44】
アルゴン気中で化合物29(515 mg,1.56mmol, MW=330.22)のジオキサン(4mL)溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)(28.3 mg)加え、引き続きピナコールボラン(220μl)と4-トリエチルアミン(420μl)をゆっくり滴下した。撹拌しながら90℃で3時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/9)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4-(ジメチルアミノ)カルコン(化合物30, MW=377.28)を得た。収量372mg(収率66%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.92(d,J=8.4Hz,2H),7.82(d,J=15.6Hz,1H),7.68(d,J=8.4Hz,2H), 7.55(d,J=6.8Hz,2H),7.38(d,J=14.8Hz,1H),6.74(d,J=8.4Hz,2H),3.09(s,6H),1.25(s,12H). MS m/z 377.
【0115】
(3)4’-ジヒドロキシボリル-4-(ジメチルアミノ)カルコン(31)の合成
【化45】
化合物30をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体31を得た。
【0116】
(実施例6)ベンゾチアゾール誘導体の合成
(1)2-(4-(メチルアミノ)フェニル)-6-(トリメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール(33)の合成
【化46】
アルゴン気中で、2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(Ark Pharm, Inc. IL, USA)(化合物32)256mg(1mmol, MW=256.32)をジクロロメタン5mLに溶かしトリエチルアミン278.8μl(2 mmol, MW=101.19, d=0.73)を加えた後に、クロロトリメチルシラン126.9μl(1mmol, 108.64, d=0.86)を滴下した。室温下で撹拌を2時間行い、10時間室温放置して反応を終えた(化合物33)。
【0117】
(2)2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)-6-(トリメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール(34)の合成
【化47】
アルゴン気中で、化合物33にトリエチルアミン280μl(2 mmol, MW=101.19, d=0.726)、二炭酸ジ-tert-ブチル 240μl(1mmol, MW=218.25, d=0.95)を加え、室温にて1時間反応させ化合物34を得た。TLCでN-tert-ブトキシカルボニル化が起こったことを確認した。
【0118】
(3)2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(35)の合成
【化48】
アルゴン気中で、化合物34に、テトラブチルアンモニウムフルオリド 300μl(0.3 mmol, MW=261.47, 1mmol/mLテトラヒドロフラン溶液)を加え室温で30分撹拌し、トリメチルシリル基を脱保護させ、析出した結晶を減圧留去し、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(化合物35, MW=356.47)を得た。なお、本実施例の(1)~(3)まではワンポット反応であり、各反応終了後にTLCで確認した。トータル収量100mg(収率26.8%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.95(d,J=8.8Hz,1H),7.90(d,J=6.8Hz,2H),7.67(d,J=2.4Hz,1H),7.24(dd,J1=8.6Hz,J2=2.2Hz,1H),6.65(d,J=8.8Hz,2H),2.91(s,3H),1.58(s,9H). MS m/z 356.
【0119】
(4)2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)-6-トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾ[d]チアゾール(36)の合成
【化49】
アルゴン気中で、化合物35(95mg, 0.266mmol, MW=356.47)に2,6-ジ-tert-ブチルピリジン(450μl, 2.05mmol, MW=191.32, d=0.87)とジクロロメタン超脱水(1mL)を加え撹拌し、氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(60μl, 0.36mmol, MW=282.13, d=1.68)をゆっくり滴下し、室温で30分反応させた。反応終了後、反応溶液に0.5N水酸化ナトリウム水溶液5mLと10%のクエン酸を加え精製水で洗浄し、ジクロロメタン10mLで抽出した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)-6-トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾ[d]チアゾール(化合物36, MW=488.58)を得た。収量118mg(収率92%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.05(d,J=9.1Hz,1H),7.98(d,J=8.7Hz,2H),7.68(d,J=2.3Hz,1H), 7.27(dd,J=9.1,J2=2.3Hz,1H),6.78(d,J=8.7Hz,2H),2.94(s,3H),1.58(s,9H). MS m/z 488.
【0120】
(5)2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)ベンゾ[d]チアゾール(37)の合成
【化50】
アルゴン気中、化合物36(41.2 mg, 0.084mmol, MW=488.58)のジオキサン(660μl)溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)(5.5 mg)加え、ピナコールボラン(40μl)とトリエチルアミン(64μl)をゆっくり滴下した。撹拌しながら100℃で3時間加熱還流し、反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である2-(4-(N-メチル-N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)ベンゾ[d]チアゾール(化合物37, MW=466.44)を得た。収量12.7 mg(収率35%)1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.13(d,J=8.8Hz,2H),8.06(d,J=8.8Hz,1H),7.77(d,J=2.4Hz,1H),7.50(d,J=8.4Hz,2H),7.33(dd,J1=8.8Hz,J2=2.4,1H),2.95(s,3H),1.56(s,9H),1.24(s,12H). MS m/z 466.
【0121】
(6)2-(4-(N-メチルアミノ)フェニル)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)ベンゾ[d]チアゾール(38)の合成
【化51】
化合物37をアセトニトリル中、トリフルオロ酢酸で処理することにより、化合物38を得た。
【0122】
(7)2-(4-(N-メチルアミノ)フェニル)-6-ジヒドロキシボリルベンゾ[d]チアゾール(39)の合成
【化52】
化合物38をアセトニトリル中、80℃において2%トリフルオロ酢酸で処理することにより、ホウ酸体39を得た。
【0123】
(実施例7)スチルベン誘導体の合成
(1)p-ビニルフェニルボロン酸DAN保護型(40)の合成
【化53】
p-ビニルフェニルボロン酸149mg(1mmol,MW=148.0, Wako 329-84401)に、1,8-ジアミノナフタレン156mg(1mmol,MW=158.2)を粉末のまま混合し、10mLのトルエン(超脱水)を加え溶解し、90分間還流した。TLC(シリカゲル)で反応を確かめ化合物40を得た(収率99%)。
【0124】
(2)4-N-BOC-N-メチル-4’-ボロノスチルベン-DAN保護型(41)の合成
【化54】
N-BOC-N-メチル-4-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン(MW=333.21, Wako322-52381)を397mg(1.2mmol)秤量し、パラジウム触媒として36mgの酢酸パラジウムを加え、塩基として炭酸ナトリウムを213mg(2mmol)加えた。それらを5 mLのDMFに溶解し、化合物40に加え、酸素環境下にて50℃、5時間撹拌しながら反応を行って、化合物41を得た(収率40%, TLC評価)。
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ 7.76(d,J=8.4Hz,2H), 7.61(d,J=8.0Hz,2H), 7.48(d,J=8.0Hz,2H), 7.24(d,J=8.4, 2H), 7.13(d,J=7.2Hz,2H), 7.05(d,J=8.0Hz,2H), 6.79-6.72(m,2H), 6.42(d,J=8.0Hz,2H), 6.03(s,2H), 3.26(s,3H), 1.45(s,9H). MS m/z 475.
【0125】
(3)スチルベン誘導体(42)の合成
【化55】
化合物41をTHFに溶解し、1N 塩酸を加え、室温下、12時間反応させて化合物42を得た。
【0126】
(実施例8)ベンズオキサボロール誘導体の合成
【化56】
【0127】
(1)(1,3-ジヒドロ-2,1-ベンゾオキサボロール-1-オール)-4-(ジメチルアミノ)カルコン(43)の合成
【化57】
5-アセチル-2-(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸 環状モノエステル176mg(1mmol, MW=176)をエタノール(10 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(3 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド151mg(1mmol, MW=151.12)を固体のまま加え、氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、ジクロロメタン(10 mL)を加え、析出した油状溶液を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である化合物43(MW=307.16)を得た。収量67.5mg(収率22%)
1H NMR(400MHz, CDCl3)δ7.72(d,J=15.6Hz,1H), 7.62(d,J=8.4Hz,2H), 7.48(dd,J1=7.4,J2=1.2,1H), 7.37(dd,J1=9.8,J2=7.2,2H), 7.27(d,J=14.8Hz,1H), 6.70(d,J=8.4Hz,2H), 5.12 (s,2H), 3.08 (s,6H). MS m/z 307.
【0128】
(2)(1,3-ジヒドロ-2,1-ベンゾオキサボロール-1-オール)-4-(ジメチルアミノ)フラボン(45)の合成
【化58】
5-アセチル-4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸 環状モノエステルと4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドによるアルドール縮合により化合物44を合成し、続いてI2酸化による環化反応により(1,3-ジヒドロ-2,1-ベンゾオキサボロール-1-オール)-4-(ジメチルアミノ)フラボン(45)を合成できた。
【0129】
(実施例9)凝集アミロイドβと各種含ホウ素リガンドの断片化実験
(1)凝集アミロイドβの調製方法
アミロイドβモノマー 300μg, Beta-Amyloid (1-42) Human Cat#AS-24224 (AnaSpec, Inc. CA, USA) に3.2mMに調整した緩衝液を200μL加えた。緩衝液は39 mgの2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール 999 (分子量 121.14, Fujifilm)を100 mLの蒸留水に加え3.2mMに調整した。アミロイドβモノマーを凝集させるために超音波にて3時間かけて基本凝集し、その後4℃(冷蔵庫内)で42時間スターラーで撹拌、更に4℃(冷蔵庫内)で48時間静置した。
【0130】
(2)BNCT(熱外中性子による中性子照射)による断片化実験
調製された凝集アミロイドβと表1の各含ホウ素リガンド(DMSOに溶解)を検査対象として36℃で3時間のインキュベーションを行い、ホウ素リガンド溶解補助剤DMSOのみを含む前記緩衝溶液をリファレンスとして、その後に加速器を用いた中性子捕捉療法機器(CICS-1, CICS社製, 東京)により熱外中性子による中性子照射を行った。各含ホウ素リガンド及びホウ酸のホウ素-10は照射時の濃度を20ppmになるように調整した。照射量は30分間の照射で3.0 Gy (物理線量)とした。照射時の機器や容器の配置は図1に示す。
【0131】
【表1】
A:ホウ酸
B:6-ジヒドロキシボリル-4’-ジメチルアミノフラボン
C:6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン
D:4’-ジヒドロキシボリル-4-(ジメチルアミノ)カルコン
【0132】
(3)断片化実験の評価
BNCTによる凝集アミロイド βの断片化実験はSDS-PAGE法を用いて行った。結果は図2に示されるように、リファレンス及びホウ酸(A)では250kDa以上のオリゴマーやフィブリルの断片化は起こらなかった。
【0133】
一方、6-ジヒドロキシボリル-4’-ジメチルアミノフラボン(B)、6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン(C)及び4’-ジヒドロキシボリル-4-(ジメチルアミノ)カルコン(D)では250kDa以上のオリゴマーやフィブリルは消失や減少傾向がみられ断片化が起こったことが示唆された。
【0134】
以上より、表1に示される各含ホウ素リガンド(B、C、D)は凝集アミロイドβの巨大分子構造を破壊することがSDS-PAGE法(図2)により示された。ホウ酸(A)では効果は認められなかった。4’-ジヒドロキシボリル-4-(ジメチルアミノ)カルコン(D)では断片化効果はやや弱い傾向を示した。
【符号の説明】
【0135】
A ホウ酸
B 6-ジヒドロキシボリル-4’-ジメチルアミノフラボン
C 6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロリル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン
D 4’-ジヒドロキシボリル-4-(ジメチルアミノ)カルコン
R DMSOのみのリファレンス
図1
図2