(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033369
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20230303BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230303BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20230303BHJP
A23B 7/157 20060101ALI20230303BHJP
A23L 3/358 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01P3/00
A01N25/02
A23B7/157
A23L3/358
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000267
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2019007257の分割
【原出願日】2007-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2006231280
(32)【優先日】2006-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394014423
【氏名又は名称】三慶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】合田 学剛
(57)【要約】
【課題】食品加工の前処理殺菌剤として人体に安全でかつ取扱い易く、しかも二酸化塩素の発生の少ない亜塩素酸を生成し、殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法を提供することである。
【解決手段】食品加工の前処理殺菌剤として人体に安全でかつ取扱い易く、しかも二酸化塩素の発生の少ない亜塩素酸を生成し、殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法である。塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸又はその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸に還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより、亜塩素酸を生成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工の前処理段階の食品及びその関連設備の殺菌・消毒に使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品加工の前処理段階の食品、例えば、野菜や果物などの生鮮食料品やこれらの食品を加工・製造する際の関連施設、例えば、容器、加工・調理用機械、工場設備等の殺菌や消毒において、主に塩素酸化物(塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、二酸化塩素など)が用いられている。このうち、塩素や次亜塩素酸は、有機化合物と反応すると、発ガン性物質であるトリハロメタンが生じてくることが指摘されている。このため、最近の健康志向も相俟って、トリハロメタンの弊害が少なく、且つ、殺菌効果も高い米国で開発された酸性化亜塩素酸塩(AC:Acidified Chlorite)が注目されている。
【0003】
上記酸性化亜塩素酸塩(AC)を得るためには、亜塩素酸ナトリウム水溶液にGRAS(Generally Recognized As Safe:一般に安全とされた物質)の酸を加え、pH値を2.3~3.2に調整する必要がある。
【0004】
しかしながら、上記酸性化亜塩素酸塩(AC)の主成分である亜塩素酸は、安定性に欠けるため、調整後短時間で分解し、殺菌力が大幅に低下してしまう。このため、上記酸性化亜塩素酸塩(AC)を使用する場合には、その直前に調整操作が必要となる。
【0005】
このため、手間がかかるとともに、調整時に二酸化塩素ガスが発生することがあり、これを吸引した場合には人体に悪影響を及ぼす危険性が高く、また、食品加工・調理用装置等を腐蝕してしまうという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第6,524,624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記欠点に鑑みてなされたものであって、その目的は、亜塩素酸を含む水溶液を長期的に安定させることによって、取扱いを容易にするとともに、二酸化塩素の発生を抑え、人体に安全でかつ殺菌力にも優れた食品加工の前処理殺菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第1の特徴は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸又はその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより、亜塩素酸を生成することにある。
【0009】
また、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第2の特徴は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸又はその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を
発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸又は無機酸塩のうちのいずれか単体、または2種類以上の単体若しくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から7.0までの範囲内に調整することにある。
【0010】
さらに、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第3の特徴は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸又はその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸又は無機酸塩若しくは有機酸又は有機酸塩のうちのいずれか単体又は2種類以上の単体若しくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から7.0の範囲内に調整することにある。
【0011】
さらにまた、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第4の特徴は、塩素酸ナトリウム水溶液に、該水溶液のpH値を2.3から3.4内に維持させることができる量及び濃度の硫酸又はその水溶液を加えて反応させることにより、塩素酸を発生させ、次いで該塩素酸の還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量の過酸化水素を加えることにより亜塩素酸を生成させた水溶液に、無機酸又は無機酸塩のうちのいずれか単体又は2種類以上の単体若しくはこれらを併用したものを加えた後、無機酸又は無機酸塩若しくは有機酸又は有機酸塩のうちのいずれか単体又は2種類以上の単体若しくはこれらを併用したものを加え、pH値を3.2から7.0の範囲内に調整することにある。
【0012】
また、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第5の特徴は、前記第2から第4までのいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における無機酸が、炭酸、燐酸、ほう酸又は硫酸であることにある。
【0013】
さらにまた、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第6の特徴は、前記第2から第5までのいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における無機酸塩が、炭酸塩、水酸化塩、燐酸塩又はホウ酸塩であることにある
【0014】
また、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第7の特徴は、前記第6の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであることにある。
【0015】
さらに、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第8の特徴は、前記第6又は第7の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における水酸化塩が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることにある。
【0016】
さらにまた、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第9の特徴は、前記第6から第8のいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における燐酸塩が、燐酸水素二ナトリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、燐酸水素二カリウム又は燐酸二水素カリウムであることにある。
【0017】
また、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第10の特徴は、前記第6から第9のいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法におけるホウ酸塩が、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムであることにある。
【0018】
さらに、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第11
の特徴は、前記第3から第10のいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における有機酸が、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸又は乳酸であることにある。
【0019】
さらにまた、本発明に係る殺菌剤として使用する亜塩素酸を含む水溶液の製造方法の第12の特徴は、前記第3から第11のいずれか1の特徴における亜塩素酸を含む水溶液の製造方法における有機酸塩が、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム又は乳酸カルシウムであることにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い殺菌力を持つ亜塩素酸が長時間維持されるため、使用直前に調整操作を行う必要がなくなるとともに、保存も可能となる。また、二酸化塩素の発生を抑制することも可能となり、人体にも安全で、安心して使用することができる。
【0021】
また、亜塩素酸を長期間維持することが可能となることから、酸性領域下であらかじめ製造された亜塩素酸を含む水溶液を商品として流通させることも十分に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】検体作成日の検体Aの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図2】検体作成日から10日目の検体Aの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図3】検体作成日から20日目の検体Aの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図4】検体作成日から30日目の検体Aの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図5】検体作成日の検体Bの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図6】検体作成日から10日目の検体Bの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図7】検体作成日から20日目の検体Bの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図8】検体作成日から30日目の検体Bの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図9】検体作成日の検体Cの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図10】検体作成から1時間後の検体Cの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図11】検体作成から1日後の検体Cの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図12】検体作成日から5日目の検体Cの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図13】検体作成日の検体Dの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図14】検体作成日から10日目の検体Dの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図15】検体作成日から20日目の検体Dの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図16】検体作成日から30日目の検体Dの分光光度計による測定結果を示すものである。
【
図17】実施例2、3及び4に係る亜塩素酸を含む水溶液と従来例であるASCとのpHの日数変化を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図及び表を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。
【実施例0024】
本発明の実施例1は、殺菌剤に利用する亜塩素酸(HClO2)を含む水溶液の製造方法である。本製造方法では、塩素酸ナトリウム(NaClO3)の水溶液に、硫酸(H2SO4)又はその水溶液を加えて酸性条件にすることで得られた塩素酸(HClO3)を、還元反応により亜塩素酸とするために必要な量の過酸化水素を過剰に加えて反応させることにより、亜塩素酸(HClO2)を生成する。この製造方法の基本的な化学反応は、下記のA式、B式で表わされる。
【0025】
【0026】
A式では塩素酸ナトリウム(NaClO3)水溶液のpH値が2.3~3.4内に維持
できる量及び濃度の硫酸(H2SO4)又はその水溶液を加えることで塩素酸を得ると同時にナトリウムイオンを除去することを示している。
【0027】
次いで、B式では、塩素酸(HClO3)は、過酸化水素(H2O2)で還元され、亜
塩素酸(HClO2)が生成されることを示している。このとき、過酸化水素(水)の添加量は、還元反応に必要とされる量と同等、もしくはそれ以上の量が必要となる。それ未満の量にすると二酸化塩素のみが発生してくるからである。
【0028】
【0029】
なお、万が一、二酸化塩素が発生した場合、C~F式の反応を経て、亜塩素酸が生成される。
【0030】
ところで、生成された亜塩素酸(HClO2)は、複数の亜塩素酸分子同士が互いに分解反応を起したり、塩化物イオン(Cl-)や次亜塩素酸(HClO)及びその他の還元物の存在により、早期に二酸化塩素ガスや塩素ガスへと分解してしまうという性質を有している。そのため、殺菌剤として有用なものにするためには、亜塩素酸(HClO2)の状態を長く維持できるように調製する必要がある。
【0031】
そこで、上記実施例1の方法により得られた亜塩素酸(HClO2)を含む水溶液に無機酸、無機酸塩、有機酸または有機酸塩をいずれか単体、または2種類以上の単体若しくはこれらを併用したものを加えることによって、遷移状態を作り出し、分解反応を遅らせることで長時間にわたって亜塩素酸(HClO2)を安定的に維持することができる水溶液の製造方法が必要となり、実施例2、実施例3、及び実施例4ではそれを示している。